【実施例】
【0080】
以下、本発明の実施形態について、実施例を参照しながら、説明する。具体的には、本発明の実施形態に係るキッチンペーパー(実施例1、実施例2、実施例3)及び市販のキッチンペーパーとエンボス構造が同じキッチンペーパーの試作品(比較例1、比較例2)を用いて、本発明の効果を確認した。
【0081】
[実施例1]
実施例1には、
図1〜
図3に示すネステッド形式の積層構造を備えるキッチンペーパーを用いた。
【0082】
実施例1では、まず、
図1〜
図3に示すクレープ紙3、5の単位エンボスが正三角形状のエンボスパターン(エンボス凸部7A、17A、及びエンボス凸部9A、19A)に対応する凸エンボスパターンが形成された2つのアクリル板を用意する。
【0083】
これらのアクリル板の凸エンボスパターンをそれぞれクレープ紙3、5に型押して、エンボス凸部7A、17Aに対応するエンボス凹部7B、17Bが形成されたクレープ紙3、およびエンボス凸部9A、19Aに対応するエンボス凹部9B、19Bが形成されたクレープ紙5を作製した。
【0084】
なお、クレープ紙3、5には、原紙の繊維原料がパルプ100質量%のものを用いた。また、クレープ紙3、5には、坪量が21.2g/m
2、紙厚が121μmのものを用いた。
【0085】
これらのクレープ紙3、5を、
図1〜3に示すように、エンボス凸部7A、17Aの頂部と非エンボス部11、21が対向し、エンボス凸部9A、19Aの頂部と非エンボス部13、23が対向するように位置を合わせながら積層した。また、エンボス凸部9Aと非エンボス部13は、上述の接着剤15、25により接着した。得られたものはネステッド形式の積層構造を有し、これを実施例1のキッチンペーパーとした。
【0086】
なお、実施例1では、エンボス凹部7Bとエンボス凹部9Bとは、X方向(凸エンボスロールの軸心方向)に並び、重心G1と重心G2との距離が2.4mmとなるように配置されている。また、エンボス凹部17Bとエンボス凹部19Bとは、重心G3と重心G4との距離が2.4mmとなるように配置されている。さらに重心G1と重心G2が並ぶ直線L1と重心G3と重心G4が並ぶ直線L2とは、Y方向(凸エンボスロールの回転方向)に並び、直線L1と直線L2との距離は、2.7mmとなっている。
【0087】
なお、実施例1では、後述の比較例1及び比較例2のようなラインは設けられていない。
【0088】
実施例1に関するその他の条件は、表1に示す。
【0089】
[実施例2]
実施例2では、
図5に示す単位エンボスが台形形状のエンボスパターン(エンボス凹部107B、117B、及びエンボス凸部109A、119A)に対応する凸エンボスパターンが形成された2つのアクリル板を用意する。
【0090】
これらのアクリル板の凸エンボスパターンをクレープ紙103に型押して、エンボス凹部107B、117Bが形成されたクレープ紙103を作製した。なお、クレープ紙103の裏面に積層されるクレープ紙(エンボス凸部109A、119Aが形成されるクレープ紙)は、クレープ紙103と同様に作製する。
【0091】
そして、クレープ紙103と裏面のクレープ紙とを、実施例1と同様に積層して、得られたネステッド形式の積層構造のキッチンペーパーを実施例2とした。
【0092】
実施例2に関するその他の条件は、実施例1と同じである(表1参照)。
【0093】
[実施例3]
実施例3では、
図6に示す単位エンボスが凧型形状のエンボスパターン(エンボス凹部207B、217B、及びエンボス凸部209A、219A)に対応する凸エンボスパターンが形成された2つのアクリル板を用意する。
【0094】
これらのアクリル板の凸エンボスパターンをクレープ紙203に型押して、エンボス凹部207B、217Bが形成されたクレープ紙203を作製した。なお、クレープ紙203の裏面に積層されるクレープ紙(エンボス凸部209A、219Aが形成されるクレープ紙)は、クレープ紙203と同様に作製する。
【0095】
そして、クレープ紙203と裏面のクレープ紙とを、実施例1と同様に積層して、得られたネステッド形式の積層構造のキッチンペーパーを実施例3とした。
【0096】
実施例3に関するその他の条件は、実施例1と同じである(表1参照)。
【0097】
[比較例1]
比較例1には、
図11〜
図13に示すティップ トゥ ティップ形式の積層構造を備えるキッチンペーパーを用いた。なお、
図11〜
図13では、
図1〜
図3に対応する符号に500を加えた数の符号を付して説明を一部省略する。
【0098】
比較例1では、まず
図11〜
図13に示すクレープ紙503、505の単位エンボスが略正方形のエンボスパターン(エンボス凸部507A、517A、エンボス凸部509A、519A)に対応する凸エンボスパターンが形成された2つのアクリル板を用意する。
【0099】
これらのアクリル板の凸エンボスパターンをそれぞれクレープ紙503、505に型押しすることにより、クレープ紙503には、エンボス凸部507A、517Aと該エンボス凸部507A、517Aに対応するエンボス凹部507B、517Bとが表裏に複数形成される。また、クレープ紙505には、エンボス凸部509A、519Aと該エンボス凸部509A、519Aに対応するエンボス凹部509B、519Bとが表裏に複数形成される。
【0100】
なお、クレープ紙503、505には、実施例1のクレープ紙3、5と同じ条件の原紙を用いた。
【0101】
これらのエンボス加工されたクレープ紙503、505を、
図11〜
図13に示すように、エンボス凸部507A、517Aの頂部とエンボス凸部509A、519Aの頂部が対向し、非エンボス部513、523とクレープ紙505の非エンボス部511、521とが対向するように位置を合わせながら積層した。また、エンボス凸部507A、517Aの頂部とエンボス凸部509A、519Aの頂部とは、実施例1で用いた接着剤と同じ接着剤515、525により接着した。
【0102】
得られたキッチンペーパー501の表面(クレープ紙503側)には、エンボス凸部507A、517Aに対応するエンボス凹部507B、519Bが形成される。一方、キッチンペーパー501の裏面(クレープ紙505側)には、エンボス凸部509A、519Aに対応するエンボス凹部509B、519Bが形成される。得られたものはティップ トゥ ティップ形式の積層構造を有し、これを比較例1のキッチンペーパーとした。
【0103】
比較例1のキッチンペーパーでは、各エンボス凸部の平面視の形状が点対称な形状(略正方形)である。また、比較例1では、
図11に示すようにエンボスブロックBL1間にラインLN1が設けられている。
【0104】
なお、
図12に示すように、比較例1では、エンボス凹部507Bは重心G501と重心G502との距離が3.8mmとなるように配置されている。また、エンボス凹部517Bも、重心間の距離が3.8mmとなるように配置されている。さらに重心G501と重心G502が並ぶ直線L501と直線L502を挟むもう一つの直線L501のとの距離は、3.7mmとなっている。
【0105】
比較例1に関するその他の条件は、表1に示す。
【0106】
[比較例2]
比較例2には、
図14〜
図16に示すネステッド形式の積層構造を備えるキッチンペーパーを用いた。なお、
図14〜
図16では、
図1〜
図3に対応する符号に600を加えた数の符号を付して説明を省略する。
【0107】
比較例2では、まず、
図14〜
図16に示すクレープ紙603、605の単位エンボスが三角形状のエンボスパターン(エンボス凸部607A、617A、エンボス凸部609A、619A)に対応する凸エンボスパターンが形成された2つのアクリル板を用意する。
【0108】
これらのアクリル板のエンボスパターンをそれぞれクレープ紙に型押しすることにより、エンボス凸部607A、617Aに対応するエンボス凹部607B、617Bが形成されたクレープ紙603、およびエンボス凸部609A、619Aに対応するエンボス凹部609B、619Bが形成されたクレープ紙605を作製した。
【0109】
なお、クレープ紙603、605には、実施例1と同じ条件の原紙を用いた。
【0110】
これらのクレープ紙603、605を、
図14〜
図16に示すように、エンボス凸部607A、617Aの頂部と非エンボス部611、621が対向し、エンボス凸部609A、619Aの頂部と非エンボス部613、623が対向するように位置を合わせながら積層した。また、エンボス凸部607A、617Aの頂部と非エンボス部611、621は、実施例1で用いた接着剤と同じ接着剤により接着した。得られたものはネステッド形式の積層構造を有し、これを比較例2のキッチンペーパーとした。
【0111】
また、比較例2では、各エンボス凹部の平面視の形状が非点対称な形状(略正三角形)であるが、X方向に見たときにエンボス凹部607B、609Bの重心G601、G602は直線上に並んでいない。すなわち、エンボス凹部607B、607Bの間には、重心G602が直線L601上から直線L602側にずれるようにエンボス凹部609Bが配置されている。
【0112】
また、エンボス凹部617B、619Bの重心G603、G604が直線上に並んでいない。すなわち、エンボス凹部619B、619Bの間には、重心G603が直線L602上から直線L601側にずれるようにエンボス凹部617Bが配置されている。
【0113】
なお、比較例2では、エンボス凹部607B、607Bは、重心G601と重心G601との距離が4.8mmとなるように配置されている。また、エンボス凹部619B、619Bは、重心G604と重心G604との距離が4.8mmとなるように配置されている。さらに重心G601と重心G602が並ぶ直線L601と重心G603と重心G604が並ぶ直線L602との距離は、2.7mmとなっている。また、直線L602ともう一つの直線L601との距離は、2.0mmとなっている。
【0114】
比較例2に関するその他の条件は、表1に示す。
【0115】
これらの実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2について、荷重時の減衰性、及び荷重時の油吸収性を測定した。各測定方法は、下記のとおりである。
【0116】
[原紙]
<坪量>
試験で使用する原紙の坪量は(g/m
2)は、JIS P 8124(1998)により算出する。
<紙厚>
原紙の紙厚(μm/1枚)を測定する。原紙の紙厚の測定方法は、原紙をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定する。
【0117】
測定の具体的な手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、該ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせる。次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろし、そのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにする。この厚みの測定時の荷重は、120μmの際に約70gfである。なお、厚みの測定値は、測定を10回行って得られる平均値とする。
【0118】
[荷重時の減衰試験]
まず、実施例1〜実施例3、比較例1、比較例2の試験片として、2枚のクレープ紙を1組にしてそれぞれ12cm×12cmの寸法に裁断した試験片を用意する。試験片は、
図9に示すように、裁断した試験片を10組重ね、その上にプラスチック製の板(約12cm×12cm、厚み0.8mm、重さ14.1g)を載せ、
図9の左側に示すようにJIS1級金尺を用いて試験片の高さを測定する。測定箇所は、プラスチック製の板の上端とし、測定値を試験片の高さとする。このときの試験片の高さを、初期厚みとする。
【0119】
初期厚みを測定した後、試験片に載せたプラスチック製の板の上に、さらに錘186g(約12cm×12cm、厚み12mm)を載せ、
図9の右側に示すようにJIS1級金尺を用いて試験片の高さを測定する。測定箇所は、初期厚みと同様に、プラスチック製の板の上端とし、測定値を試験片の高さとする。このときの試験片の高さを、荷重時の厚みとする。
【0120】
測定した初期厚みと荷重時の厚みとから荷重時の減衰率(潰れ率)を算出する。荷重時の減衰率は、下記式より算出する。
【0121】
・荷重時の減衰率(%)=(初期厚み−荷重時の厚み)÷初期厚み×100
なお、荷重時の減衰率は、1回の測定で得られた初期厚みおよび荷重時の厚みから算出した。実施例1〜実施例3、比較例1、比較例2における初期厚み(mm)、荷重時の厚み(mm)及び荷重時の減衰率(%)を、参考までに表1に示す。
【0122】
[油吸収性の測定]
油吸収性の試験方法は、荷重時の減衰試験と同様に、試験片を12cm×12cmに裁断する。電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製のHR300等)を用いて、
図10に示すプラスチック製のシート(約12cm×12cm、厚み0.2mm、重さ2.7g、材質ポリプロピレン)、試験片、錘(直径約82mm、厚み10mm、重さ59g、材質アクリル)、下紙(コピー用紙を約12cm×12cmに裁断したものを5枚)の各重量を測定する。測定後、プラスチック製のシートの上に試験片を載せ、試験片の中央に錘を載せる。なお、錘には厚み方向に貫通する孔が設けられている。孔の直径は、約12mmである。
【0123】
その後、ピペット(Thermo scientific社製、FinnpetteF2、 0.5〜5ml)で2.3ml(約2.0g)の油(常温のサラダ油)(日清オイリオグループ株式会社製の日清サラダ油)を錘の孔から滴下する。このとき滴下位置(エンボス部)は、
図10に示すように試験片の中心位置に固定しておく。
【0124】
滴下2分後、錘を取り除き、重量を測定する。その後、プラスチック製のシートを取り除き重量を測定する。そして、試験片の重量を測定し、下紙に置きなおしてから、さらに5分後、試験片の重量(最終保持した油量)、下紙の油量(保持できなかった油量)を測定する。
【0125】
実施例1〜実施例3、比較例1、比較例2において、
図10に示すように試験片吸油量(g)、裏抜け量(g)、戻り量(g)、滴下油量(g)、試験片最終保持量(g)、最終裏抜け量(g)、裏抜け総量(g)、滴下油量に対する試験片吸油量(%)、裏抜け量(%)、戻り量(%)、試験片最終保持量(%)、最終裏抜け量(%)、裏抜け総量(%)を測定し、表1に示した。
【0126】
試験片吸油量(g)等の各項目は、下記に列挙する式により算出した。
【0127】
・試験片吸油量(g)=滴下2分後の試験片重量−試験片重量
・裏抜け量(g)=滴下2分後のプラスチック製のシート重量−プラスチック製のシート重量
・戻り量(g)=滴下2分後の錘重量−錘重量
・滴下油量(g)=試験片吸油量+裏抜け量+戻り量
・試験片最終保持量(g)=5分後の試験片重量−試験片重量
・最終裏抜け量(g)=5分後の下紙の重量−下紙の重量
・裏抜け総量(g)=裏抜け量+最終裏抜け量
・試験片吸油量(%)=試験片吸油量÷滴下油量×100
・裏抜け量(%)=裏抜け量÷滴下油量×100
・戻り量(%)=戻り量÷滴下油量×100
・試験片最終保持量(%)=最終保持量÷滴下油量×100
・最終裏抜け量(%)=最終裏抜け量÷滴下油量×100
・裏抜け総量(%)=裏抜け総量÷滴下油量×100
なお、試験片吸油量(g)、裏抜け量(g)、戻り量(g)、滴下油量(g)、試験片最終保持量(g)、最終裏抜け量(g)、裏抜け総量(g)の各測定値は、測定を3回行って得られる平均値とする。これらの試験片吸油量(g)等から、試験片吸油量(%)、裏抜け量(%)、戻り量(%)、試験片最終保持量(%)、最終裏抜け量(%)、裏抜け総量(%)を算出した。
【0128】
【表1】
[荷重時の減衰率の比較]
表1から荷重時の減衰試験の結果を比較すると、実施例1〜実施例3では、初期厚みが、比較例1、比較例2より薄くなっている。これに対して、荷重時の減衰率(潰れ率)は、比較例1、比較例2より小さくなっている。この結果は、実施例1〜実施例3が荷重に対して潰れ難いことを示している。特に、同じネステッド形式の積層構造を備える比較例2に対しても、実施例1〜実施例3は潰れ難いことを示している。
【0129】
[油吸収性の比較]
表1から油吸収性の結果を比較すると、実施例1〜実施例3では、滴下油量に対する試験片の吸油量、および最終保持量のいずれも、比較例1、比較例2に対して高くなっている。また、滴下油量に対する試験片の戻り量は、比較例1、比較例2に対して低くなっている。これらの結果は、実施例1〜実施例3の油保持性能が高いことを示している。特に、同じネステッド形式の積層構造を備える比較例2に対して、実施例1〜実施例3は高い油保持性能を示している。
【0130】
また、実施例1〜実施例3では、滴下油量に対する裏抜け量、最終裏抜け量、裏抜け総量のいずれも、比較例1、比較例2に対して低くなっている。この結果は、実施例1〜実施例3では油の裏抜けがし難い(染み出し難い)ことを示している。特に、同じネステッド形式の積層構造を備える比較例2に対しても、実施例1〜実施例3は油の裏抜けがし難いことを示している。
【0131】
[積層構造の比較]
ここで、実施例1と比較例1、比較例2との積層構造について比較すると、まずティップ トゥ ティップ形式の積層構造を有する比較例1に対して、実施例1はネステッド形式の積層構造を有するため、潰れ難くなっている(
図3、
図13参照)。これは、上述の荷重時の減衰試験の結果からも裏付けられている。
【0132】
また、ネステッド形式の積層構造を有する比較例2に対して、実施例1もネステッド形式の積層構造を有するものであるが、実施例1の直線L1と比較例2の直線L601の断面を比較した場合、比較例2のエンボス凸部609Aの幅d601よりも実施例1のエンボス凸部9Aの幅d1の方が大きい(
図2、
図3、
図15、
図16参照)。そのため、比較例2の構造に対して実施例1の構造は、荷重に対して強度が高い部分が重心G1、G2が並ぶ方向に同じ割合で配置されているため、潰れ難くなっているものと考えられる。
【0133】
一方、実施例1の直線L2と比較例2の直線L602の断面を比較した場合、比較例2のエンボス凸部617Aの幅d602より実施例1のエンボス凸部17Aの幅d2が大きい。そのため、比較例2の構造に対して実施例1の構造は、荷重に対して強度が高い部分が重心G3、G4が並ぶ方向に同じ割合で配置されているため、さらに潰れ難くなっているものと考えられる。
【0134】
また、比較例2では、直線L601と直線L602の断面を比べた場合、エンボス凸部609Aの幅d601とエンボス凸部619Aの幅d603とは寸法が異なっている(
図16(A)、(B)参照)。これに対して、実施例1では、直線L1と直線L2の断面を比べた場合、エンボス凸部9Aの幅d1とエンボス凸部19Aの幅d3とは寸法が略同一である(
図3(A)、(B)参照)。
【0135】
そのため、実施例1では、荷重に対して強度が低いエンボス空間と荷重に対して強度が高いエンボス凸部9Aが重心G1、G2が並ぶ方向に同じ割合でバランスよく配置されている。また、荷重に対して強度が低いエンボス空間と荷重に対して強度が高いエンボス凸部19Aが重心G3、G4が並ぶ方向に同じ割合でバランスよく配置されている。そのため、キッチンペーパー全体でエンボス空間が潰れ難くなっているものと考えられる。
【0136】
さらに、実施例1の直線L1と比較例2の直線L601の断面を比較した場合、比較例2ではエンボス凸部607Aとエンボス凸部609Aの間の幅d604に比べてエンボス凸部609Aの幅d601の寸法が小さい(
図16(A)参照)。一方、実施例1では、エンボス凸部7Aとエンボス凸部9Aの間の幅d4とエンボス凸部9Aの幅d1とは略同一の寸法である(
図3(A)参照)。
【0137】
そのため、実施例1では、エンボス凸部7Aとエンボス凸部9Aの間に形成される強度が弱いエンボス空間と強度が強いエンボス凸部9Aとが、重心G1、G2が並ぶ方向に同じ割合で配置されているため、より潰れ難くなっているものと考えられる。
【0138】
実施例1の直線L2と比較例2の直線L602の断面を比較した場合も、比較例2ではエンボス凸部619Aとエンボス凸部617Aの間の幅d605に比べてエンボス凸部617Aの幅d602の寸法が小さい(
図16(B)参照)。一方、実施例1では、エンボス凸部19Aとエンボス凸部17Aの間の幅d5とエンボス凸部17Aの幅d2とは略同一の寸法である(
図3(B)参照)。
【0139】
そのため、実施例1では、エンボス凸部19Aとエンボス凸部17Aの間に形成される強度が弱いエンボス空間と強度が強いエンボス凸部17Aとが、重心G3、G4が並ぶ方向に同じ割合で配置されているため、より潰れ難くなっているものと考えられる。
【0140】
また、実施例1では、直線L1上のエンボス凹部7Bと直線L2上のエンボス凹部19Bとは、正三角形の頂点と頂点が向き合うように配置されており、直線L1上のエンボス凹部9Bと直線L2上のエンボス凹部17Bとは、正三角形状の一辺と一辺が平行になるように配置されている。直線L1上のエンボス凹部7Bの頂点と直線L2上のエンボス凹部19Bの頂点との距離は、直線L1上のエンボス凹部9Bの一辺と直線L2上のエンボス凹部17Bの一辺との距離より短くなる。
【0141】
その結果、実施例1では、直線L1と直線L2との間で、強度が比較的強い三角形の頂点(三角形の幅が相対的に狭い部分)間の距離は相対的に短くなり、強度が比較的弱い三角形の辺(三角形の幅が相対的に広い部分)間の距離は相対的に長くなる。
【0142】
そのため、実施例1では、直線L1と直線L2との間に、強度差のある部分をバランスよく配置することができ、キッチンペーパー全体で、エンボス空間が潰れ難くなるため、荷重による吸収性能の低下を確実に防ぐことができる。
【0143】
また、このような強度差のある部分では、エンボス凹部7Bとエンボス凹部19Bの間に、強度が高い部分を形成することができる一方、エンボス凹部9Bとエンボス凹部17Bとの間では、エンボス空間を広くすることができる。そのため、直線L1と直線L2との間に、強度が高い部分(エンボス凹部7Bとエンボス凹部19Bとが対向する部分)と油分等の保持量が高い部分(エンボス凹部9Bとエンボス凹部17Bとが対向する部分)とを同じ割合でバランスよく配置することができる。その結果、荷重時でもエンボス空間が潰れ難くしながら、油分等の保持量を高く維持することができる。
【0144】
これに対して、比較例2でも、直線L601上のエンボス凹部607Bと直線L602上のエンボス凹部619Bとは、正三角形の頂点と頂点が向き合うように配置されており、直線L601上のエンボス凹部609Bと直線L602上のエンボス凹部617Bとは、正三角形状の一辺と一辺が平行になるように配置されている。
【0145】
しかし、比較例2では直線L601上のエンボス凹部607Bの頂点と直線L602上のエンボス凹部619Bの頂点との距離と、直線L601上のエンボス凹部609Bの一辺と直線L602上のエンボス凹部617Bの一辺との距離とは略同一である。すなわち、直線L601と直線L602との間で、強度が比較的強い三角形の頂点(三角形の幅が相対的に狭い部分)間の距離と、強度が比較的弱い三角形の辺(三角形の幅が相対的に広い部分)間の距離とが略同一である。
【0146】
そのため、比較例2では、直線L601と直線L602との間に、強度差のある部分が生じ難いため、直線L601と直交する方向に対して、エンボス空間が潰れ易くなり、荷重による吸収性能が低下する。
【0147】
また、比較例2では、実施例1のように、エンボス凹部607Bとエンボス凹部619Bとの間に、強度が高い部分を形成することができず、またエンボス凹部609Bとエンボス凹部617Bとの間のエンボス空間を広くすることができない。すなわち、比較例2では、実施例1のように、直線L601と直線L602との間に、強度が高い部分と油分等の保持量が高い部分とを、バランスよく配置することができない。そのため、比較例2では、荷重時にエンボス空間が潰れ易く、また油分等の保持量を高く維持することができない。
【0148】
なお、上述した積層構造の比較における実施例1の効果は、実施例1と同様に各エンボス凹部の平面視の形状が非点対称な形状である実施例2、実施例3でも、ほぼ同等に得られることが想定できる。
【0149】
以上の結果から、本発明のキッチンペーパーは、紙厚を薄くすることができ、吸油速度を速くすることができるネステッド形式の利点を維持しながら、ティップ トゥ ティップ形式および従来のネステッド形式のキッチンペーパーよりも潰れ難く、使用時の油吸収性能に優れていることが判った。
【0150】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。