(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<調味液>
本実施形態に係る調味液は、卵とじ料理において卵と食材と共に用いられる調味液であって、B型粘度計を用いて測定される液温60℃、回転開始から120秒後における粘度をη
60としたとき、η
60が15mPa・s以上、950mPa・s以下である。
以下、詳細に説明する。
【0013】
調味液のη
60は、15mPa・s以上、950mPa・s以下である。調味液のη
60を15mPa・s以上とすることで、調味液の流動を抑制し、卵が熱変性し凝固する前に、卵と調味液が混合するのを適度に抑制することができる。一方、調味液のη
60を950mPa・s以下とすることで、調味液の粘性によるねっとり感による口あたりの低下を抑制することができる。
また、調味液の対流をさらに抑制し、調味液と卵との混合を一層抑制したり、卵が一部のみ凝固し粒が発生することを低減させる観点から、η
60は、20mPa・s以上であることが好ましく、30mPa・sであることがより好ましく、40mPa・s以上であることがさらに好ましい。これにより、ボリューム感があり卵の形状、質感が良好な卵とじ料理が得られる。
ここで、上記の卵の粒とは、加熱により調味液が対流することにより、凝固をし始めた卵の表面のみが小さな粒状となって卵本体から剥がれることによって発生するものである。このような卵の粒は、食感を損ね、さらには微細な卵の粒が調味液中に拡散することで、卵とじ料理の外観を損ねることとなる。また、例えば丼物とした場合、白飯に卵の粒がまとわりつき、粒が大きめのものはざらつき感、粒が小さめのものはねとつき感を与えることとなる。また、卵の粒が発生することで卵本体が目減りすることとなるため、卵とじ料理全体として具材感、ボリューム感が低減することにもなる。
一方、調味液のねとつきを抑制し、卵とじ料理の口あたりを一層良好にする観点から、η
60は、900mPa・s以下であることが好ましく、850mPa・s以下であることがより好ましい。
すなわち、従来、調味液の粘度を高くすると、卵と調味液との混合は発生しにくくなる一方でねっとりし食感を損ねるといったトレードオフの関係にあったが、本実施形態の調味液は、調味液のη
60を高度に制御することで、卵と調味液との混合を抑制しつつ、口あたりの低下を抑制し、食感が良好な卵とじ料理を実現するものである。
【0014】
調味液のη
60は、たとえば調味液を構成する各原料の種類や原料そのものが有する粘性、これらの配合割合を高度に調整することによって所望の範囲内に制御することが可能となる。たとえば、増粘剤は種類によって得られる粘性の特徴が異なるため、増粘剤の組み合わせやその種類に応じた配合量を調整することが重要となる。
【0015】
また、B型粘度計を用いて測定される液温25℃、回転開始120秒後における粘度をη
25としたとき、η
25が15mPa・s以上、1,400mPa・s以下であることが好ましい。調味液と卵とを加熱調理器具に投入する際の温度下においても混合を効果的に抑制する観点から、η
25は、20mPa・s以上であることがより好ましい。一方、調味液のねとつきを効果的に抑制し、卵とじ料理の口あたりを良好にする観点から、η
25は、1,200mPa・s以下であることがより好ましい。
【0016】
調味液の粘度の測定は、以下のようにして行われる。
たとえばB型粘度計により、適切なローターを使用して測定することができる。B型粘度計としては、たとえば「TVB−10M型粘度計(東機産業株式会社製)」を用いることができる。また、ローターは、たとえばM1、M2、M3、およびM4から適切なものを選択することができる。M1は、回転数12rpmにおける測定上限粘度が500mPa・s、回転数30rpmにおける測定上限粘度が200mPa・s、回転数60rpmにおける測定上限粘度が100mPa・sである。M2は、回転数12rpmにおける測定上限粘度が2,500mPa・s、回転数30rpmにおける測定上限粘度が1,000mPa・s、回転数60rpmにおける測定上限粘度が500mPa・sである。M3は、回転数12rpmにおける測定上限粘度が10,000mPa・s、回転数30rpmにおける測定上限粘度が4,000mPa・s、回転数60rpmにおける測定上限粘度が2,000mPa・sである。M4は、回転数12rpmにおける測定上限粘度が50,000mPa・s、回転数30rpmにおける測定上限粘度が20,000mPa・s、回転数60rpmにおける測定上限粘度が10,000mPa・sである。
本実施形態においては、たとえばM1〜M4のうちの小さい番号のローターを優先的に使用し、測定上限粘度を超える場合に順次大きな番号のローターを選択することができる。なお、測定粘度の数値によっては、他のTVB−10型粘度計を選択することも可能である。
また、調味液が、例えばカツオ、昆布、シイタケの粉末といった不溶性物質を含む場合は、不溶性物質を濾過等により予め除去した後に、粘度の測定を行う。
【0017】
また、粘弾性計を用いて、30℃から90℃まで加熱(昇温速度0.05℃/秒、せん断速度1(1/秒))したとき60℃において測定される粘度η
DMAが、8mPa・s以上であることが好ましく、11mPa・s以上であることがより好ましく、15mPa・s以上であることがさらに好ましい。
ここで、30℃から90℃まで加熱(昇温速度0.05℃/秒、せん断速度1(1/秒))する条件は、卵とじ料理の調理を模擬した条件であり、これを適切に制御することで、より一層卵と調味液との混合を抑制できる。また60℃とは、30℃から90℃まで所定の条件で加熱する間の温度であって、卵が凝固し始める温度である。かかる60℃における調味液の粘度を制御することで、卵が凝固する前に調味液と混合してしまうことをより確実に抑制できる。
なかでも、調味液の粘度が低粘度である場合は、調味液の流動をより適切に制御する必要が生じることがある。すなわち、粘度が低い場合、同程度の粘度であっても粘性の質の違いによって対流に対する制御が変動する場合がある。そのため、η
60に加え、上記のような条件における粘度η
DMAを制御することが重要となる。低粘度とは、例えば、η
60が18mPa・s以下のときである。
【0018】
また、粘弾性計を用いて、30℃から90℃まで加熱(昇温速度0.05℃/秒、せん断速度1,000(1/秒))したとき60℃において測定される粘度η
DMA1000が、8mPa・s以上であることが好ましく、11mPa・s以上であることがより好ましい。これにより、激しく加熱されたような場合でも、調味液の流動を抑制し、より一層卵と調味液との混合を制御できる。
【0019】
粘弾性計を用いた粘度η
DMA、粘度η
DMA1000は、以下のようにして測定される。
粘弾性計として、粘弾性測定装置(アントンパール株式会社製、MCR102)を用い、共軸円筒型治具を使用し、せん断速度を1または1,000(1/s)とし、温度を30℃から90℃(昇温速度率0.05℃/s)に昇温させた時の粘度(mPa・s)を測定する。
【0020】
調味液のL
*a
*b
*表色系におけるb
*値は、卵の色味をきれいに見せる観点から、4.4以上であることが好ましく、4.9以上であることがより好ましい。なかでも、卵とじ料理の食材としてカツを用いた場合、卵とのコントラストが良好になり、より一層見栄えが良好となる。一方、美味しそうな卵の印象を与える観点から、当該b
*値は、9以下であることが好ましく、7.5以下であることがより好ましい。
当該L
*a
*b
*表色系におけるb
*値は、着色料の選択、醤油などのその他成分の選択及び配合量によって調整される。
【0021】
また、調味液のL
*a
*b
*表色系におけるL
*値は、卵の色味をきれいに見せる観点から、6.0以上であることが好ましく、9.0以上であることがより好ましく、一方、食欲を増進させる観点から、18以下であることが好ましい。
【0022】
L
*a
*b
*表色系におけるこれらの値は、以下のようにして測定できる。
まず、測色色差計の試料台に黒色のキャップをかぶせ、試料台を遮光した状態でゼロ合わせを行う。次いで、試料台に標準白板をおいて標準合わせを行う。その後、専用の丸形セルに試料となる調味液を入れ、そのセルを黒色キャップで遮光して反射測定を行う。
【0023】
調味液の比重が1.10以上1.40以下であることが好ましく、1.13以上1.35以下とすることがより好ましく、1.15以上1.30以下とすることがさらに好ましい。下限値以上とすることにより、調味液の比重が通常の溶き卵の比重よりも大きくなり、加熱調理器具への卵及び調味液の投入の順序に寄らず、卵と調味液とが二層に分かれやすくなり、η
60との相乗効果により両者の混ざり合いを抑制して卵とじ料理の卵の発色を一層良好にさせることができる。一方、上限値以下とすることにより、卵とじの料理の食感を良好に保持できる。なお、当該比重は、調味液の液温が25℃のときのものとする。例えば、調味液を所定の容積となるように正確に測りとり、その重量を測定して、水に対する比重を算出する。
【0024】
調味液のブリックス値は、20以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、35以上であることがさらに好ましい。ブリックス値を下限値以上とすることでη
60との相乗効果により、加熱調理器具投入時や加熱時の調味液と卵との混ざり合いを一層抑制しつつ、より良好な卵とじ料理の食感が得られる。一方、卵とじ料理の味および食感を良好にする観点から、当該ブリックス値は、80以下であることが好ましい。
【0025】
ブリックス値は、糖度計を用いて測定することができる。
なお、ブリックス値とは、一般には、糖度を示す値であり、屈折糖度計により測定される値であって、屈折率を20℃におけるショ糖溶液の重量百分率濃度に換算した値をいう。単位は、「%」、「°」と表される場合もあるが、本実施形態においては単位の記載は省略する。
【0026】
調味液は、一般に食品に使用できる範囲内において、以下の成分を含むことができる。
【0027】
増粘剤は、調味液の粘度を上昇させ、卵と調味液の投入時や加熱時の対流を抑制することで卵と調味液の混ざり合いを抑制する観点から用いられる。
増粘剤としては、食品添加物に指定される増粘安定剤を用いることができる。具体的には、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、及びヒドロキシプロピルデンプン等の澱粉類、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、及びメチルセルロースといった指定添加物:アウレオバシジウム培養液、アグロバクテリウムスクシノグリカン、アマシードガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸、ウェランガム、エレミ樹脂、カシアガム、ガティガム、カードラン、カラギナン、加工ユーケマ藻類、精製カラギナン、ユーケマ藻末、カラヤガム、カロブビーンガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、キチン、キトサン、グァーガム、グァーガム酵素分解物、グルコサミン、酵母細胞壁、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、タラガム、デキストラン、トラガントガム、トロロアオイ、納豆菌ガム、微小繊維状セルロース、ファーセレラン、フクロノリ抽出物、プルラン、ペクチン、マクロホモプシスガム、モモ樹脂、ラムザンガム、レバンといった既存添加物:オクラ抽出物、海藻セルロース、褐藻抽出物、グルテン、グルテン分解物、コンニャクイモ抽出物、サツマイモセルロース、ダイズ多糖類、ナタデココ、マンナン、レンネツトカゼインといった一般飲食添加物が挙げられる。
これらは一種または二種以上を混合して用いてもよい。なかでも、加熱時の対流を抑制し卵と調味液との混合を高度に制御する観点から、デンプン、キサンタンガムであることが好ましい。
【0028】
増粘剤の含有量は、調味液全体に対し、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜8質量%であることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、卵と調味液との混合を抑制しつつ、上記上限値以下とすることにより、卵とじ料理の食感を良好に維持できる。
【0029】
酸性剤は、酸味の調整のほか、調味液のpHを酸性側にすることで腐敗を抑止する観点から用いられる。
酸性剤としては、酸味を付与するために用いられる酸味料、pHを調整するために用いられるpH調整剤等が挙げられる。酸味料としては、例えば、食酢(醸造酢)、果汁等が挙げられる。pH調整剤として、例えば、酢酸、アジピン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸等が挙げられる。これらは一種または二種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、卵とじ料理の風味を向上させる観点から、食酢(醸造酢)であることが好ましい。
【0030】
また、カツオ、昆布、シイタケ、煮干し及びこれらの抽出物、並びに醤油から選ばれる一種または二種以上を含むことが好ましい。これにより、卵とじ料理の美味しさを引き立たせることができる。また、当該カツオ、昆布、シイタケ、煮干しは、乾燥させ、加工された粉末をそのまま用いてもよい。
また上記以外に、あじ、さば、いか、あゆ、鮭、えび、かに、あさり、はまぐり、しじみ、かき、及びほたて等の魚介類の抽出物を含んでもよく、卵とじ料理の風味を損なわない範囲で、薬味、香辛料などを含んでもよい。
【0031】
また、食塩、砂糖、みりん、味噌、ソース、ブイヨン等の調味料、糖類、色素(着色料)、香料、機能性素材、及び酸化防止剤等の添加物を用いることができる。
【0032】
調味液は、これらの成分を任意の水と共に公知の方法で均一に混合することによって製造できる。
【0033】
<卵とじ料理>
卵とじ料理は、上記の調味液と、凝固卵と、食材と、を含むものである。
本実施形態において卵とは、凝固する前の状態を意図し、生卵、加工卵のいずれであってもよい。また、卵の卵黄と卵白による黄色と白色のコントラストが得られ、より良好な外観となる観点から、生卵であることが好ましい。卵としては、一般に食用に供されるものであればよく、例えば、鶏、鶉、アヒル等の卵が挙げられるが、黄色みの発色、風味、入手しやすさの観点から鶏卵が好ましい。
凝固卵とは、卵が加熱により凝固したものであり、卵のすべてが完全に固まっている場合に限られず、一部が半凝固している場合や一部が生に近い状態である場合も含む。また、食材のすべてが凝固卵で覆われる場合に限られず、食材の少なくとも一部に凝固卵が付着していればよい。
【0034】
食材としては、加熱によって溶融せず、固形状のものであれば特に限定されないが、野菜類、根菜類、きのこ類、海草類、魚介類、肉類、乳製品及びこれらの材料から調理された調理品や加工品などを挙げることができる。
【0035】
また卵とじ料理は、上記の調味液と食材とともに卵でとじられた調理品を米飯の上にのせた丼物であってもよい。当該丼物としては、特に限定されないが、例えば、親子丼、カツ丼、及びたまご丼等が挙げられる。中でも、調味液と食材とが適切に混じり合い、卵の発色を良好に保持させつつも、食感を良好にできる観点から、カツ丼であることが好ましい。すなわち、従来のカツ丼の調味液は、良好な食感を得る観点から粘度を有さないものであったのに対し、本実施形態の調味液によれば、η
60を高度に制御することで良好な食感とともに卵の発色がきれいなカツ丼を得ることができる。
【0036】
<卵とじ料理の製造方法>
卵とじ料理の製造方法は、容器に前記調味液、前記卵および前記食材を入れる工程と、前記容器を加熱して前記卵を凝固させる工程と、を含む。
【0037】
調味液、卵、及び食材を容器に入れる順番は特に限定されず、すべてを同時に容器に入れてもよい。調味液と卵の混合を効果的かつ簡便に抑制する観点から、調味液の後に卵を入れることが好ましい。
【0038】
容器を加熱して卵を凝固させる方法としては、容器を直火にかける、容器ごとオーブンに入れる等の方法が挙げられるが、大量生産をしても外観・味ともに良好な卵とじ料理を得る観点から、スチームコンベクションオーブンを用いて行われることが好ましい。スチームコンベクションオーブンは、一度に複数の卵とじ料理を調理することができるため、主にホテルや外食産業、惣菜加工などで用いられる。スチームコンベクションオーブンは、ファンにより熱風を強制対流させるオーブンであるため、直火で行われる手鍋料理よりも、調理したい卵及び食材等に熱が伝わるまで時間がかかる。そのため、卵が凝固するまでに時間がかかり、手鍋料理よりも、卵と調味液が混合しやすくなる傾向がある。しかし、本実施形態における調味液によれば、特定の条件を満たすため、スチームコンベクションオーブンを用いても、卵が調味液と混合することを抑制できる。
【0039】
また、加熱時間としては、卵と調味液の風味を保持する観点から、5〜15分であることが好ましい。卵1個に対して、調味液を40〜100g用いることが好ましい。これにより、味、外観のバランスが良好な卵とじ料理が得られる。
【0040】
本実施形態における卵とじ料理の製造方法は、上記のような特定の調味液を用いることで、卵の色がきれいで、卵とじ料理の食感が良好な卵とじ料理が、簡便に得られる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
<1>
卵とじ料理において卵と食材と共に用いられる調味液であって、
B型粘度計を用いて測定される液温60℃、回転開始から120秒後における粘度をη60としたとき、η60が15mPa・s以上、950mPa・s以下である、調味液。
<2>
前記調味液のL*a*b*表色系におけるb*値が4.4以上である、<1>に記載の調味液。
<3>
前記調味液の比重が1.10以上1.40以下である、<1>または<2>に記載の調味液。
<4>
前記調味液のブリックス値が20以上である、<1>乃至<3>いずれか一に記載の調味液。
<5>
粘弾性計を用い、30℃から90℃まで加熱(昇温速度0.05℃/秒、せん断速度1(1/秒))したとき60℃において測定される粘度ηDMAが、8mPa・s以上である、<1>乃至<4>いずれか一に記載の調味液。
<6>
前記調味液が、増粘剤を含む、<1>乃至<5>いずれか一に記載の調味液。
<7>
前記調味液が、カツオ、昆布、シイタケ、煮干し及びこれらの抽出物、並びに醤油から選ばれる一種または二種以上を含む、<1>乃至<6>いずれか一に記載の調味液。
<8>
<1>乃至<7>いずれか一に記載の調味液と、前記卵の凝固卵と、前記食材と、を含む卵とじ料理。
<9>
前記卵とじ料理が、親子丼、カツ丼、及びたまご丼の中から選ばれる、<8>に記載の卵とじ料理。
<10>
<1>乃至<7>いずれか一に記載の調味液を用いて卵とじ料理を製造する方法であって、
容器に前記調味液、前記卵および前記食材を入れる工程と、
前記容器を加熱して前記卵を凝固させる工程と、
を含む、卵とじ料理の製造方法。
<11>
前記卵を凝固させる工程がスチームコンベクションオーブンを用いて行われる、<10>に記載の卵とじ料理の製造方法。
<12>
前記卵1個に対して、前記調味液を40〜100g用いる、<10>または<11>に記載の卵とじ料理の製造方法。
【実施例】
【0042】
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0043】
<実施例及び比較例>
・調味液の作成
表1に示す組成(単位は重量部)で原料を公知の方法で混合後、90℃加熱して調味液を作成し、以下の評価を行った。また、原料は以下のものを使用した。結果を表1に示す。
・着色料(赤)、着色料(黄)の1%水溶液をそれぞれ調製したとき、当該水溶液のL
*a
*b
*表色系におけるL
*値、a
*値、b
*値が表2に示す数値となるものをそれぞれ使用した。
・澱粉:「コーンスターチY」株式会社J−オイルミルズ製
・キサンタンガム:「GRINDSTED XANTHAN 200」ダニスコジャパン株式会社製
【0044】
・卵とじ料理(カツ丼)の作成
得られた調味液を用いて以下の手順でカツ丼を作成し、得られたカツ丼について評価を行った。結果を表1に示す。
まず、深めのホテルパンにカットした調理済みのトンカツ110g、スライスタマネギ40gを並べ、その上から、全体に行き渡るように調味液70gと割卵した鶏卵1個をかけた。次に、予め余熱をしておいたスチームコンベクションオーブン内に、上記ホテルパンをいれ、160℃で7分加熱した。その後、ホテルパンを取り出し、コテで卵とじされたトンカツをすくい、米飯の上にのせて、カツ丼を作成した。
【0045】
<評価>
調味液に関し、以下の基準に従い評価を行った。
・調味液の粘度の測定
粘度の測定は、B型粘度計「TVB−10M」東機産業株式会社製を用いて行った。回転数、ローターは、以下の測定条件A〜Eで示すものを、それぞれの調味液に合わせて選択して使用した。調味液の温度25℃、60℃それぞれについて、ローターの回転開始から120秒後の粘度η
25、η
60(mPa・s)をそれぞれ測定した。測定結果を、測定条件とともに、表1に示した。
なお、表1中の「※」は、測定機の適正測定域を下回るものであったが、測定機に表示された数値である。
・測定条件
A ローターNo.1、60rpm
B ローターNo.1、30rpm
C ローターNo.2、30rpm
D ローターNo.2、6rpm
E ローターNo.3、30rpm
【0046】
・調味液の粘弾性計による測定
粘弾性測定装置(アントンパール株式会社製、MCR102)を用い、共軸円筒型治具(ローターCC27および対応のサンプル供試カップ)を使用し、せん断速度を1または1,000(1/秒)とし、温度を30℃から90℃(昇温速度0.05℃/秒)に昇温させて粘度を測定し、60℃において測定された粘度をそれぞれη
DMA、η
DMA1000(mPa・s)とした。
【0047】
・調味液のブリックス値の測定
ブリックス値の数値範囲0以上、60未満の場合は、糖度計(濃度計)「PR−201α」株式会社アタゴ製と用い、ブリックス値の数値範囲60以上、100以下の場合は、糖度計(濃度計)「PR−301α」株式会社アタゴ製を用いて測定した。
【0048】
・L
*a
*b
*表色系におけるL
*値、a
*値、b
*値の測定
まず、測色色差計「ZE−6000」(日本電子工業株式会社製)を用い、試料台に黒色のキャップをかぶせ、試料台を遮光した状態でゼロ合わせを行った。次いで、試料台に標準白板をおいて標準合わせを行った。その後、専用の丸形セルに試料となる調味液10mlを入れ、そのセルを黒色キャップで遮光して反射測定を行った。測定は5回行い、その平均値を測定値とした。結果を表1に示す。
【0049】
卵とじ料理(カツ丼)に関し、以下の基準に従い評価を行った。結果を表1に示す。
・卵の色味(卵と調味液が混ざらず卵の色がきれい)
○:卵の色が鮮やかで全体的に明るい。
△:卵の色がやや鮮やかで全体的にやや明るい。
×:卵の色が暗い。
【0050】
・卵とじの状態(卵の粒感のなさ)
○:卵と調味液が混ざらず、卵が層状に凝固している。
×:卵が粒状になった状態で固まっている部分がみられる。
【0051】
・卵とじ料理(カツ丼)の食感(口あたり)
○:口あたりがよい。
△:口あたりがややよい。
×:口あたりがよくない(ねとつき感、ざらざら感がある等)。
【0052】
・卵とじ料理(カツ丼)の全体のバランス
上記カツ丼について、5人の専門パネラーに外観の観察・試食してもらい、カツ丼全体について、10段階(5が標準、10が最も見た目が美味しそうで、食感・味がよく、全体のバランスがよい)で評価してもらった。そして、5人の専門パネラーによる評価の平均値を算出し、この小数点第1位を四捨五入したものを評価点とし、以下の基準に従い評価を行った。
○ 評価点が10〜9
△ 評価点が8〜5
× 評価点が4〜1
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】