【文献】
杉林 堅次,皮膚適用外用剤と経皮吸収型製剤,製剤の達人による製剤技術の伝承 下巻 非経口投与製剤の製剤設計と製造法,2013年 5月20日,207−219
【文献】
International Journal of Pharmaceutics,1999年,Vol.186,p.141-148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態であるケトプロフェン含有パップ剤について、以下に詳述する。
【0015】
なお、本明細書において、「皮膚症状」とは、ケトプロフェンに起因し、光線過敏症として現れる皮膚刺激のことを意味する。
【0016】
本発明の一実施形態であるケトプロフェン含有パップ剤は、支持体と、上記支持体上に膏体層を備えるパップ剤であって、上記膏体層は、上記膏体層の全質量を基準として、1.5〜2.5質量%のケトプロフェン、1.5〜2.5質量%の4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(以下、BM−DBMともいう)及び12〜18質量%のプロピレングリコールを含む。
【0017】
本実施形態に係る支持体としては、不織布または編布が好ましく、所定の伸長回復率を有する不織布または編布が特に好ましい。ここで、伸長回復率とは、「JIS L 1096:2010 織物及び編物の生地試験方法」にしたがって測定される値である。所定の伸長回復率を有する不織布または編布を用いることで、関節等の可動部に貼付した際に、貼付部位の動きに応じて、支持体が伸縮するため、好ましい。支持体としては、50%伸長後の伸長回復率が70〜90%であってもよく、73〜98%であってもよい。
【0018】
支持体として編布を用いる場合には、例えば編目を丸編、経(たて)編、緯(よこ)編等により集合させて布状に加工した編布も使用できる。編布は、緯編の編布と経編の編布に大別され、緯編の編布としては、平編(メリヤス編、ジャージー)、ゴム編(リブ編)、パール編(ガータ編)、スムース編(両面編)によるものが挙げられる。経編の編布としては、デンビー編、バンダイク編、コード編、アトラス編、多軸挿入編によるものが挙げられる。このような編布はいずれも好適に用いられるが、平編による編布が特に好ましい。編布の好ましい例としては、ポリエステル系、ナイロン系、ポリプロピレン系、レーヨン系等の材料を1種または2種以上組み合わせてなる編布が挙げられ、中でも薬物との相互作用が少ない、ポリエチレンテレフタレートを材料とする編布がより好ましい。
【0019】
また、支持体が、編布又は不織布である場合、水を含有する膏体を織布に展延すると、膏体層に含有される成分または膏体層から離漿により遊離した成分が、織布の編目を通して染み出してくる虞があるため、編布の目付が80〜150g/m
2であることが好ましく、95〜125g/m
2であることがより好ましい。目付をこのような範囲することにより、膏体層に含有される成分または膏体層から離漿により遊離した成分が基布の隙間を通して染み出すことなく展延できる傾向があり、かつ基布と膏体の間の投錨性を維持することができる。
【0020】
編布は、50%モジュラス(50%伸長時荷重)がコース方向で2〜8N/5cm、ウェール方向で50%モジュラスが2〜12N/5cmであるのが好ましい。編布におけるコース方向およびウェール方向について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1は、緯編の編布における、コース方向およびウェール方向を示す斜視図であり、
図2は、経編の編布における、コース方向およびウェール方向を示す斜視図である。
図1および
図2におけるXで表される方向がコース方向であり、編地のよこ方向を意味する。
図1および
図2におけるYで表される方向はウェール方向であり、編地のたて方向を意味する。なお、モジュラスの測定方法はJIS L 1096:2010による。コース方向またはウェール方向で2N/5cmより低い50%モジュラスであると膏体を塗布する際に編布が延びて編目に粘着剤が染み込む虞がある。また、編布の50%モジュラスが、コース方向で8N/5cmまたはウェール方向で12N/5cmより高いと伸縮性が劣り、屈曲部へ適用した際に皮膚の伸張に追随しにくくなる場合がある。
【0021】
また、編布の50%伸長モジュラスが、支持体として使用する大きさに切断される前の、ロール状に巻き取られた状態において、縦方向(長軸方向ともいう。)で2〜12N/5cm、横方向(短軸方向または幅方向ともいう。)で2〜8N/5cmであることが好ましい(50%伸長モジュラスの測定方法は、JIS L 1096:2010による。)。縦方向および横方向の少なくとも一方での50%伸長モジュラスが2N/5cmより低いと膏体を塗布する際に編布が延びて編目に粘着剤が染み込み、パップ剤としての機能が低下する場合がある。また、編布の50%伸長モジュラスが、縦方向で12N/5cmまたは横方向で8N/5cmより高いと伸縮性が劣り、屈曲部へ適用した際に皮膚の伸張に追随しにくくなる場合がある。
【0022】
このような編布に本発明の膏体を展延することにより、より長時間貼付が可能となる。
【0023】
支持体としては、ゴム編の両面編みの編布であることがより好ましく、当該編布の目付けが95〜125g/m
2であり、かつ厚みが450〜650μmであることが特に好ましい。ゴム編の編布は、コース方向に表目と裏目が編まれるので、基本的に表裏はない。また、ゴム編の変化組織としては、片畦編、両畦編等が挙げられる。ゴム編の編布は、伸縮性に優れ、粘着剤層の投錨性が向上するという観点から、支持体として好適に用いることができる。また、ゴム編は丸編であっても平形に編む態様であってもよい。ゴム編の編布は横方向の伸縮性に優れる傾向がある。また、編布の厚みが上記範囲であると、パップ剤の伸縮性及び柔軟性がより優れたものとなる。
【0024】
このような編布を支持体として用いたパップ剤は、より長時間貼付が可能となる。編布に膏体液を展延するときは、編布に膏体を浸入させる範囲が、編布の厚み方向の23〜40%の範囲となるように展延することが好ましい。編布における膏体の浸入が上記範囲であると、支持体の膏体層と接する面の反対側の面から、膏体液中の水分が染み出すことがない。また、上記方法で展延して得られたパップ剤は、ODT(occlusive dressing technique)効果を発揮することにより、ケトプロフェンの皮膚透過性及びBM−DBMの皮膚移行性がさらに優れる。
【0025】
なお、厚さ0.55〜0.8mm程度の支持体を用いると、膏体層に含有される成分の染み出しをより抑制できる傾向がある。また、厚さ0.4〜0.65mm程度の支持体を用いると、皮膚に貼付した際にパップ剤の厚みに起因する高低差が小さくなるため、使用中に剥がれ落ちることが少なく、衣服の着脱等の日常生活への影響も少ない。
【0026】
本実施形態に係る膏体層は、ケトプロフェン、BM−DBM及びプロピレングリコールを含む水性膏体である。
【0027】
パップ剤の膏体層の質量は、320〜650g/m
2であることが好ましく、380〜550g/m
2であることがより好ましい。膏体層の質量が320〜650g/m
2であることにより、フィット感が良く、より長期間の付着性を向上することができる。膏体層の質量が上記範囲であれば、パップ剤全体の厚みを小さくすることができる。
【0028】
本実施形態に係る膏体層の厚みは、0.4〜1.0mmであることが好ましく、0.5〜0.8mmであることがより好ましく、0.6〜0.7mmであることが更に好ましい。また、本実施形態に係る膏体層の厚みは、0.2〜1.0mmであってもよく、0.3〜0.8mmであってもよく、0.4〜0.7mmであってもよい。パップ剤全体の厚みが1.0mm以下であると、皮膚に追従しやすく、皮膚に貼付した際にパップ剤の厚みに起因する高低差が小さくなるため、衣服等で擦れた場合であっても剥離しにくい傾向にある。
【0029】
本明細書において、ケトプロフェンとは、化学式(1)で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を意味する。ケトプロフェンは、R−体及びS−体の2種の光学異性体が存在する。本実施形態に係るケトプロフェンは、どちらか1つの光学異性体を使用してもよく、2種類の光学異性体を任意の割合で混合して使用してもよい。
【化1】
【0030】
ケトプロフェンの薬学的に許容可能な塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の無機塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン塩などが挙げられる。
【0031】
本実施形態に係る膏体層において、ケトプロフェンの含有量は、上記膏体層全体の質量を基準として、1.5〜2.5質量%であり、1.8〜2.2質量%であることが好ましい。
【0032】
本明細書において、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(BM−DBM)とは、化学式(2)で表される化合物を意味する。
【化2】
【0033】
本実施形態に係る膏体層において、BM−DBMの含有量は、上記膏体層全体の質量を基準として、1〜5質量%であり、1〜3質量%であることが好ましく、1.5〜2.5質量%であることがより好ましい。BM−DBMの含有量が1質量%以上であると、紫外線等の光線の照射によるケトプロフェンの光分解を抑制することができる。
【0034】
本実施形態に係る膏体層において、プロピレングリコールの含有量は、上記膏体層全体の質量を基準として、5〜20質量%であり、10〜20質量%であることが好ましく、12〜18質量%であることがより好ましく、14〜16質量%であることが特に好ましい。プロピレングリコールの含有量が5質量%以上であると、ケトプロフェンの薬理効果を奏しつつ、BM−DBMの皮膚移行性を高めることができる。また、プロピレングリコールの含有量が10質量%以上であると、ケトプロフェンの薬理効果を奏しつつ、BM−DBMの皮膚移行性をより高めることができる。
【0035】
本実施形態に係るケトプロフェン含有パップ剤は、D−ソルビトールをさらに含んでもよい。
【0036】
本実施形態に係る膏体層において、D−ソルビトールの含有量は、上記膏体層全体の質量を基準として、10〜20質量%であり、12〜18質量%であることが好ましく、14〜16質量%であることがより好ましい。D−ソルビトールの含有量が10質量%以上であると、ケトプロフェンの薬理効果を奏しつつ、BM−DBMの皮膚移行性をより高めることができる。
【0037】
膏体層には、その他の成分をさらに添加してもよい。その他の成分としては、粘着剤、水溶性ポリマー、溶解剤、抗酸化剤、保湿剤、清涼化剤、無機粉体、着色料、着香料等が挙げられる。
【0038】
上記粘着剤としては、パップ剤の付着力を高めることができるものであれば、特に制限はなく、当業者に一般的に知られたものを用いることができる。粘着剤としては、ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2−エチルヘキシル)等のアクリレート系樹脂エマルジョンを使用することができ、具体的には、ウルトラゾールW−50(アイカ工業(株)製、商品名)等のウルトラゾールシリーズ、プライマルN−580NF(日本アクリル化学(株)製、商品名)等のプライマルシリーズ及びニカゾールTS−620(日本カーバイド工業(株)製、商品名)等のニカゾールシリーズが挙げられる。本実施形態のBM−DBMを配合するパップ剤は、アクリル系樹脂エマルジョンをさらに配合することにより、粘着性をより高めることができる。
【0039】
上記水溶性ポリマーとしては、パップ剤中の水分を保持できるものであれば、特に制限はなく、当業者に一般的に知られたものを用いることができる。水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメタクリレート、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カラギーナンが挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水溶性ポリマーとしては、ゼラチンまたはポリビニルアルコールが好ましい。
【0040】
上記水溶性ポリマーの含有量は、膏体層全体の質量を基準として、1〜40質量%であることが好ましい。
【0041】
上記溶解剤としては、薬物を溶解できるものであれば、特に制限はなく、例えば、クロタミトン;N−メチルピロリドン;ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジエチル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル等を挙げることができる。これらの溶解剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
上記溶解剤の含有量は、膏体層全体の質量を基準として、0〜30質量%であることが好ましい。
【0043】
上記抗酸化剤としては、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、チモール、没食子酸プロピル等のフェノール誘導体、トコフェロール及びそのエステル誘導体、アスコルビン酸及びそのエステル誘導体が挙げられる。
【0044】
上記抗酸化剤の含有量は、膏体層全体の質量を基準として、0〜10質量%であることが好ましい。
【0045】
上記保湿剤としては、時間の経過に伴う膏体層からの水分の蒸発を抑制できるものであれば、特に制限はない。保湿剤としては、例えば、濃グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、1,3−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,4−ブタンジオール(ブチレングリコール)等の多価アルコールが挙げられる。これらの保湿剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。保湿剤としては、濃グリセリンが好ましい。
【0046】
上記保湿剤の含有量は、膏体層全体の質量を基準として、0〜60質量%であることが好ましい。
【0047】
上記清涼化剤としては、例えば、チモール、l−メントール、dl−メントール、l−イソプレゴール等を挙げることができ、l−メントールを用いることが好ましい。
【0048】
上記清涼化剤の含有量は、膏体層全体の質量を基準として、0〜15質量%であることが好ましい。
【0049】
パップ剤は、剥離ライナーを備えていてもよい。剥離ライナーは、膏体層に対して、支持体と反対側の面に積層されている。剥離ライナーを備えていると、保管時において、膏体層の水含有量が低下するのを抑制でき、膏体層へのゴミ等の付着を低減することができる傾向がある。
【0050】
剥離ライナーの素材としては、特に限定されず、当業者に一般的に知られているライナーを用いることができる。剥離ライナーとして紙または樹脂フィルムを使用する場合、その素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ポリウレタン、上質紙およびセルロース誘導体が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。剥離ライナーの素材としては、ポリプロピレンフィルムが好ましい。また、剥離ライナーは、エンボス加工を施したものであってもよい。剥離ライナーがエンボス加工されることによって、横ずれしにくくなる。剥離ライナーの厚みは、20〜100μmであることが好ましい。
【0051】
パップ剤は、パウチの内部で保管されていてもよい。パウチの内部に保管されることで、膏体層の水含有量の低下を抑制することができ、膏体層へのゴミ等の付着を低減することができる。
【0052】
(パップ剤の調製方法)
ケトプロフェン、BM−DBM及びプロピレングリコール、必要に応じてD−ソルビトール及びその他の成分を混合して、一定時間撹拌して膏体を得る。得られた膏体を、パップ剤(14cm×10cm)1枚当たりの膏体質量が所定の質量となるように、剥離ライナー上に均一に展延した後、直ちに支持体をさらに積層させて、パップ剤を調製する。
【実施例】
【0053】
以下に、本発明のパップ剤を実施例及び試験例を用いて、詳細に説明するが、本発明は実施例によって制限されるものではない。また、以下の表に記載の含有量は、特に記載のない限り、質量%を表すものとする。なお、実施例及び比較例におけるパップ剤の調製方法及び評価方法は以下のとおりである。
【0054】
1.ヘアレスマウス皮膚透過性試験(1)
表1に記載の成分を混合した後、一定時間、撹拌して膏体を得た。得られた膏体を、パップ剤(14cm×10cm)1枚当たりの膏体質量が10gとなるように、剥離ライナー上に均一に展延した後、直ちに不織布をさらに積層させて、参考例1及び比較例1のパップ剤を調製した。なお、参考例1及び比較例1のパップ剤を調製するにあたり、膏体層の質量は、10g/140cm
2とした。また、表1中、各成分の含有量は、膏体層全体の質量を基準とした含有量(質量%)で示した。
ヘアレスマウス背部皮膚を剥離し、真皮側をレセプター層側に向け、37℃の温水を外周部に循環させたフロースルーセル(0.785cm
2)に装着した。角質層側に参考例1または比較例1のパップ剤を貼付し、0.8mL/時間の速さで、貼付時から24時間後までの4時間ごとにサンプリングを行った。本試験では、レセプター層として生理食塩水を使用した。
また、表2及び表3に記載の成分を用いて、当業者に周知の方法により、比較例2及び参考例2〜8のテープ剤を調製した。パップ剤の代わりに比較例2及び参考例2〜8のテープ剤を用いて、同様の操作により、皮膚透過性試験を行った。なお、比較例2及び参考例2〜8のテープ剤を調製するにあたり、支持体として織布を使用し、膏体層の質量は、1g/70cm
2とした。表2及び表3中、「SISブロック共重合体」とは、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を意味し、「SBRゴム」とは、スチレン−ブタジエン共重合体を意味する。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
参考例1及び比較例1のパップ剤について、貼付時から24時間後までの間のケトプロフェンの累積皮膚透過量(μg/cm
2)を表4に示した。比較例1のパップ剤は、比較例2のテープ剤と比較して累積皮膚透過量が小さかった。また、参考例1及び比較例1のパップ剤は、互いに同程度の累積皮膚透過量を示した。したがって、比較例1のパップ剤のケトプロフェン含有量を増加させたとしても、累積皮膚透過量が増加しないことが明らかとなった。
【0059】
【表4】
【0060】
2.ヘアレスマウス皮膚透過性試験(2)
表5に記載の成分を混合した後、一定時間、撹拌して膏体液を得た。得られた膏体液を、パップ剤1枚(14cm×10cm)当たりの膏体質量が7gとなるように、剥離ライナー上に均一に展延した後、直ちに不織布をさらに積層させて、参考例9及び比較例3〜7のパップ剤を調製した。なお、各パップ剤を調製するにあたり、膏体層の質量は、7g/140cm
2とした。
得られた参考例9及び比較例3〜7のパップ剤、ならびに、比較例2のテープ剤について、ヘアレスマウス皮膚透過性試験(1)と同様にして、累積皮膚透過量をそれぞれ算出した。
【表5】
【0061】
参考例9及び比較例3〜7のパップ剤、ならびに、比較例2のテープ剤について、貼付時から24時間後までの間のケトプロフェンの累積皮膚透過量(μg/cm
2)を表6に示した。参考例9のパップ剤を用いた場合、ケトプロフェンの24時間累積皮膚透過量は、比較例2のテープ剤を用いた場合のケトプロフェンの24時間累積皮膚透過量と比較して、高かった。また、比較例4のパップ剤については、膏体層に含有される成分が、支持体を通じて染み出したため、累積皮膚透過量を測定することができなかった。
【表6】
【0062】
3.モルモット皮膚移行性試験
表7に記載の成分を混合した後、一定時間、撹拌して膏体を得た。得られた膏体を、剥離ライナー上に均一に展延した後、直ちに不織布をさらに積層させて、実施例1のパップ剤を調製した。なお、実施例1のパップ剤を調製するにあたり、膏体層の質量は、7g/140cm
2とした。また、アクリレート樹脂エマルジョン1として、ウルトラゾールW−50(アイカ工業(株)製、商品名)を使用し、アクリレート樹脂エマルジョン2として、ニカゾールTS−620(日本カーバイド工業(株)製、商品名)を使用した。
実施例1のパップ剤をモルモットの背部皮膚に4時間適用した後、パップ剤を剥離した。パップ剤を適用した部位の皮膚を切り取り、皮膚片をメタノールで抽出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、得られた皮膚片中のケトプロフェン及びBM−DBMの濃度(μg/cm
2)を算出した。また、ケトプロフェンを2質量%含むテープ剤(比較例2)についても、同様の操作を行い、ケトプロフェン及びBM−DBMの濃度を算出した。
【0063】
【表7】
【0064】
実施例1のパップ剤及び比較例2のテープ剤について、ケトプロフェン及びBM−DBMの濃度を表8に示した。実施例1のパップ剤を用いた場合のケトプロフェンの皮内濃度は、比較例2のテープ剤を用いた場合と比較して、同程度であった。一方、実施例1のパップ剤を用いた場合のBM−DBMの皮内濃度は、比較例2のテープ剤を用いた場合と比較して高かった。したがって、実施例1のパップ剤は、比較例2のテープ剤よりもBM−DBMの皮膚移行性に優れるといえる。
【0065】
【表8】
【0066】
4.光感作性試験
表7に記載の成分を混合した後、一定時間、撹拌して膏体を得た。得られた膏体を、剥離ライナー上に均一に展延した後、直ちに不織布をさらに積層させて、実施例2〜8のパップ剤を調製した。なお、実施例2〜8のパップ剤を調製するにあたり、膏体層の質量は、10g/140cm
2とした。
得られたパップ剤のうち、実施例1、2について、モルモットを用いたAdjuvant and strip法(佐藤ら、西日本皮膚科,42,831−837(1980))を一部変更し、光感作性試験を行った。
すなわち、ハートレー系白色雌モルモット(一群6匹)の頚背部を除毛し、当該頚背部の2cm×2cmの正方形領域の4隅に、実施例1、2のパップ剤または比較例2のテープ剤を貼付し(光感作処置)、1時間後に長波長紫外線(以下、「UVA」ともいう、照射エネルギー:10J/cm
2)を照射した。この光感作処置を、5日間連続して施した。光感作処置の開始日から3週間後に、当該モルモットの腰背部を除毛し、光感作処置を施した部位とは異なる2cm×2cmの正方形領域の4隅に、実施例1、2のパップ剤または比較例2のテープ剤を貼付し、1時間後にUVA(照射エネルギー:10J/cm
2)を照射した(光惹起処置)。UVA照射時から24時間後及び48時間後の皮膚反応(紅斑及び浮腫)を、上記佐藤らの基準に従い評価した。
【0067】
佐藤らの評価基準に従って、得られた皮膚反応スコアの平均値を表9に示した。なお、表9中、「UVA(+)」とは、UVAを照射したことを意味し、「UVA(−)」とは、UVAを照射しなかったことを意味する。
【0068】
実施例1のパップ剤は、皮膚刺激がほとんど認められなかった。また、実施例1のパップ剤は、比較例2のテープ剤と比較しても、ケトプロフェンの皮内濃度が高いにも関わらず、光感作性が改善したことがわかった。さらに、D−ソルビトールを含有する実施例2のパップ剤は、実施例1のパップ剤よりも、より顕著に光感作性が改善した。なお、実施例3〜8についても同様の効果が認められた。
【表9】