(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182262
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】抗がん剤を含む安定な水溶性医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20170807BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20170807BHJP
A61K 47/16 20060101ALI20170807BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20170807BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61K47/16
A61K9/19
A61K47/26
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-518852(P2016-518852)
(86)(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公表番号】特表2016-521731(P2016-521731A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2013062412
(87)【国際公開番号】WO2014198337
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】500415715
【氏名又は名称】シントン・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ザルデク,ボレク
(72)【発明者】
【氏名】ファン・オイペン,ヤコブス・テオドルス・ヘンリクス
【審査官】
高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/030598(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第1552713(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/519
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(1)
【化1】
の抗がん剤と、
可溶な量の化学式(2)
【化2】
のメグルミン、若しくは、可溶な量の化学式(3)
【化3】
のトロメタミンと
を含む固形医薬組成物であって、
前記可溶な量のメグルミンは、抗がん剤に対して80〜110質量%であり、前記可溶な量のトロメタミンは、抗がん剤に対して50〜75質量%である、固形医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記賦形剤が、糖アルコール、有利にはマンニトールである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
非晶形である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
注入液体によって輸液中に再構成するに有用な凍結乾燥粉末である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
単回用量の前記抗がん剤を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物を製造するための方法であって、
溶液を形成するために、水を含む溶媒中で、二塩基酸の形態の化学式(1)の抗がん剤に、可溶な量の化学式(2)のメグルミン若しくは可溶な量の化学式(3)のトロメタミンを混合するステップを含む、方法。
【請求項8】
前記溶液に少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を加えることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
pHを7.0〜9.0の値、好ましくは7.5〜8.5の値に調整することをさらに含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
有利には凍結乾燥によって、前記溶媒を除去する次のステップをさらに含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記可溶な量のメグルミンが、抗がん剤に対して80〜110質量%であるか、前記可溶な量のトロメタミンが、抗がん剤に対して50〜75質量%である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
抗がん剤(pemetrexed)である、N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン-5-イル)エチル]ベンゾイル]-L-グルタミン酸(N−[4−[2−(2−amino−4,7−dihydro−4−oxo−1H−pyrrolo[2,3−d]pyrimidin-5-yl)ethyl]benzoyl]-L-glutamic acid)という一般名称の化学式(1)
【化1】
の化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の化合物は、欧州特許第432677号明細書に初めて記載された。
【0003】
抗がん剤は、薬学的に活性な化合物であり、例えば、悪性胸膜中皮腫や非小細胞肺がんの治療に使用される。
【0004】
上記化学式(1)の抗がん剤は、2つのカルボン酸基(carboxylic group)を含む二価の酸(二塩基酸(diacid))であり、塩基を有する様々なタイプの塩を形成し得る。他方で、抗がん剤は、塩基性窒素を有し、その結果、様々な酸を有する酸付加塩を形成し得る。市販の製品で販売されている、例えば、Eli Lilly社のブランド名ALIMTAは、有効成分(active substance)として抗がん剤の水和した2ナトリウム塩を含み、単回投与用の薬瓶で使用される静脈内注入のための無菌の凍結乾燥された粉末として供給される。凍結乾燥された抗がん剤の2ナトリウムの組成物の調製は、米国特許第7,138,521号明細書に記載される。
【0005】
米国特許第7,138,521号明細書には、また、特有のX線回折パターンを有する、抗がん剤の2ナトリウムの、安定した結晶性七水和物の形態が記載されている。この特許では、抗がん剤の2ナトリウムは、七水和物の形態で存在することができ、これは既に知られている2.5水和物よりもさらに安定であることが述べられており、また、2.5水和物の結晶形(crystalline form)を超える七水和物の結晶形の初期(primary)の利益は、その安定性であり、また、関連した物質の構造(formation)に関することが示されている。それはまた、七水和物は、昇温、低湿度、及び/又は、真空の処理をされると、水の喪失によって2.5水和物の結晶形に変質(convert)することを示す。
【0006】
上記の特許では、昇温や低湿度等に暴露すると、抗がん剤の2ナトリウムの異なる多形相(polymorphic form)の間で変質するので課題が生じ得ることが示されている。製剤のプロセスは、様々な上記で言及した不利(adverse)な条件を含み、その結果、最終製品の安定性に影響を与える可能性がある。
【0007】
抗がん剤が、今までのところ、医薬組成物、そのフリー二塩基酸の形態(free diacid form)(化学式(1))で使用されていない主な理由としては、一見したところ、抗がん剤の二塩基酸は、単に、水にやや溶けにくい(sparingly soluble)という事実であるようだ。それゆえ、それは非経口用途のために処方される水溶性組成物として使用することはできなかった。
【0008】
上記化学式(1)の抗がん剤の二塩基酸は、薬剤(medicine)での使用の可能性を実際に有しており、これは安定した化合物と明確に定義されており、それは、標準プロセスによって調製され、かつ、所望のレベルの純度に精製され得るものである。このように、例えば、2.5〜3.5のpHを有する、水とエタノールの混合物からの、抗がん剤の二塩基酸の形成(formation)や単離(isolation)は、米国特許第7,138,521号明細書に記載されている。5のpHを有する水溶液からの、抗がん剤の二塩基酸の形成や単離は、米国特許第5,416,211号明細書に記載されている。2.8〜3.1のpHを有する水溶液からの、抗がん剤の二塩基酸の形成や単離は、米国特許第6,262,262号明細書に記載されている。
【0009】
抗がん剤の二塩基酸の様々な結晶形は、それらを得るための方法と同様に、米国特許第8,088,919号明細書、欧州特許第2351755号明細書、及び、欧州特許第2129674号明細書に記載されている。
【0010】
高純度の抗がん剤の二塩基酸は、国際公開第2008/021410号に記載される方法によって得られ得る。
【0011】
要するに、抗がん剤の二塩基酸を、安定した水溶性の医薬組成物に調製(formulate)することは、望ましい。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、抗がん剤を含む新規の固形医薬組成物に関する。この組成物は、製剤処方(pharmaceutical formulation)、特に凍結乾燥製剤を製造する目的において十分に安定であり、非経口投与に使用する目的で水に十分に可溶である。
【0013】
第一の態様において、本発明は、化学式(1)
【化2】
の抗がん剤と、可溶な量(solubilizing amount)の化学式(2)
【化3】
のメグルミン(Meglumine)、若しくは、可溶な量の化学式(3)
【化4】
のトロメタミン(Tromethamine)とを含む固形医薬組成物であって、
前記可溶な量のメグルミンは、抗がん剤に対して80〜110質量%であり、前記可溶な量のトロメタミンは、抗がん剤に対して50〜75質量%である、固形医薬組成物に関する。
【0014】
特定の態様において、その組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤、有利には(advantageously)糖アルコール、より有利にはマンニトールをさらに含む。
【0015】
特定の態様において、その組成物は、非晶形(amorphous form)である。
【0016】
特定の態様において、その医薬組成物は、注入液体(infusion liquid)によって輸液(infusion solution)中に再構成(reconstitution)するに有用な凍結乾燥粉末である。
【0017】
第二の態様において、本発明は、抗がん剤を含む、固形の水溶性医薬組成物を製造するための方法であって、溶液を形成するために、水を含む溶媒中で、二塩基酸の形態の化学式(1)の抗がん剤に、可溶な量の化学式(2)のメグルミン若しくは可溶な量の化学式(3)のトロメタミンを混合するステップと、その後に溶媒を除去するステップとを含む。一実施態様としては、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤は、前記溶液に加えられる。一実施態様としては、前記溶媒は、凍結乾燥によって除去される。
【0018】
特定の態様としては、前記可溶な量のメグルミンは、抗がん剤に対して80〜110質量%であり、前記可溶な量のトロメタミンは、抗がん剤に対して50〜75質量%である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、化学式(1)の抗がん剤を含む、固形の水溶性医薬組成物に関する。この組成物の製造において、抗がん剤は、その二塩基酸の形態で使用される。すなわち、本発明では、出発原料としていかなる抗がん剤の塩も使用しない。医薬組成物の製造に使用する前に、抗がん剤を塩に変質する必要はないという事実は、利点である。なぜなら、抗がん剤は比較的不安定な化合物であり、出発の生成物(starting product)の製造に影響を与えるプロセスステップの数を減少させることによって、分解(degradation)のポテンシャルが減少する。抗がん剤の二塩基酸は、貯蔵させる間、2ナトリウム塩よりも安定であり、このため、それは技術的な面で有利な出発原料である。
【0020】
明細書中及び特許請求の範囲の中で、用語「抗がん剤(pemetrexed)」及び「抗がん剤の二塩基酸(pemetrexed diacid)」は、特に言及されない限り、同等の意味で用いられる。両方とも化学式(1)に対応する。
【0021】
上述したように、抗がん剤は、本質的には水にやや溶けにくい。驚くべきことに、良い安定性を有する、固形の水溶性医薬組成物を、抗がん剤の二塩基酸に可溶な量のメグルミン若しくはトロメタミンを混合することによって製造し得ることを見出した。メグルミン、化学式(2)の((2R,3R,4R,5S)−6−(メチルアミノ)ヘキサン−1,2,3,4,5−ペントール)((2R,3R,4R,5S)−6−(Methylamino)hexane−1,2,3,4,5−pentol)は、ソルビトールから誘導されたアミノアルコールである。トロメタミン、化学式(3)の2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール(2−amino−2−hydroxymethyl−propane−1,3−diol)は、アミノアルコールであり、これは生化学の分野で広く用いられている。両者の化合物は、既知であり、市販されており、薬学的に許容可能である。低い毒性と他の有益な特性のため、それらが非経口の用途において適切であると思われている。
【0022】
このように、本発明によれば、固形の水溶性組成物は、抗がん剤と可溶な量のメグルミン若しくはトロメタミンとを含む。「可溶な量のメグルミン」は、典型的には、抗がん剤に対して80〜110質量%であり(抗がん剤(二塩基酸)1g当たり0.8〜1.1g)、有利には抗がん剤に対して90〜105質量%(抗がん剤(二塩基酸)1g当たり0.9〜1.05g)である。「可溶な量のトロメタミン」は、典型的には、抗がん剤に対して50〜75質量%であり(抗がん剤(二塩基酸)1g当たり0.5〜0.75g)、有利には抗がん剤に対して55〜70質量%(抗がん剤(二塩基酸)1g当たり0.55〜0.7g)である。
【0023】
組成物は、非経口投与における投薬形態(剤形、dosage form)を有利に構成(formulate)し得る。上記の目的において、組成物が非晶形であることは利点である。特定の態様において、医薬組成物は、注入液体によって輸液中に再構成するに有用な凍結乾燥粉末として構成される。
【0024】
本発明の組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。特に、凍結乾燥した製剤処方を製造するのに役立つ、本発明の目的のための薬学的に許容可能な賦形剤は、好ましくは水溶性であり、以下の1つ以上を含んでもよい。すなわち、例えばブドウ糖、ショ糖、マンノース、ラクトース、トレハロースなどのうちの1つ又は複数の糖や、例えばマンニトール、キシリトールなどのうちの1つ又は複数の糖アルコール類を含む希釈剤又は充填剤(bulking agent);チオメルサール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムのうちの1つ又は複数を含む抗菌性防腐剤;塩酸又は水酸化ナトリウムなどのpH調整剤;アセテート、クエン酸塩、酒石酸塩、リン酸塩、安息香酸エステル、及び重炭酸塩バッファー(buffer)のうちの1つ又は複数を含むバッファー;エデト酸2ナトリウム(disodium edetate)などのキレート試薬;アスコルビン酸、グルタチオン、L−システイン、リポ酸などを含む酸化防止剤;塩化ナトリウム、塩化カリウム、ブドウ糖、マンニトール及びラクトースのうちの1つ又は複数を含む等張化要因(tonicity contributor)のうちの1つ又は複数である。糖又は糖アルコールの添加は、抗がん剤製剤の安定化を改善し得る。このように、本発明の様々な態様において、適当な凍結乾燥した製剤処方は、好ましくは少なくとも1つの糖又は糖アルコール、有利にはマンニトールを含み得る。
【0025】
様々な有益な実施態様において、糖又は糖アルコールは、抗がん剤1g当たり0.1g〜2gの量で存在する。
【0026】
この固形製品は、残留水(residual water)及び/又は有機溶媒を含んでいてもよい。典型的には、その製品は、10%以下の揮発性成分を含む。
【0027】
本発明によれば、医薬組成物の単位量(unit dose)は、典型的には50〜1500mgの抗がん剤(二塩基酸の形態として計算された)を含む。有利には、その単位量は、100mg、250mg、500mg又は1000mgの抗がん剤を含む。このように、特定の態様において、本発明は、一回の服用量の本発明の組成物を含有する薬瓶(vial)又は類似した容器を含む。長期間の間、抗がん剤のような薬剤の無菌貯蔵(sterile storage)に適合するいかなる適当な無菌の薬瓶又は容器も使用し得る。適切な容器は、ガラスの薬瓶、ポリプロピレン又はポリエチレンの薬瓶、又は、他の特別な目的の容器であり得る。
【0028】
本発明の更なる態様では、キット、及び/又は、ここに記述される抗がん剤を含有する組成物を保持するための医薬容器を含む。キットは、少なくとも1つの薬学的に許容可能な薬瓶又は容器を含み、これらは、1つ又は複数の投与用量の抗がん剤を含有する製剤/組成物を含有するとともに、薬(drug)を保存及び/又は投与するための他の薬学的に必要な材料を含有し、さらに、保管と使用のための指示書(instruction)、注入希釈剤等を備える注入バッグ又は容器をも含む。
【0029】
本発明によれば、固形で水溶性の、抗がん剤の医薬組成物は、溶液を形成するために、水を含む溶媒中で、二塩基酸の形態の化学式(1)の抗がん剤に、可溶な量の化学式(2)のメグルミン若しくは可溶な量の化学式(3)のトロメタミンを混合するステップと、その後に溶媒を除去するステップとを含む方法によって製造され得る。上記の溶媒は、それ自体が水であってもよく、又は、水と、特に、凍結乾燥に影響されやすい薬学的に許容可能な共溶媒との混合物を含んでいてもよい。このような共溶媒は、当技術分野において知られており、例えば第3級ブタノール(tert. butanol)がある。水は、薬学的に許容可能な品質でなければならない。典型的には、認可された薬局方(Pharmacopoeia)で定められるように、「注射用の(for injections、注入用の)」品質の水を使用する。
【0030】
溶液中の抗がん剤の最終的な濃度は、特に限定されるものではなく、溶媒の最終的な除去の必要性を含む技術的な側面によって管理される。このように、実際には、制限ではなく適切な、溶液中の抗がん剤の濃度は、10〜40mg/mlであり、好ましくは15〜30mg/mlである。「可溶な量の」メグルミン若しくはトロメタミンは、いくつかの態様において、所望の最終濃度に依存する。同じ技術的な理由から、メグルミンの可溶な量は、抗がん剤に対して80〜110質量%、有利には90〜105質量%であり、トロメタミンの可溶な量は、抗がん剤に対して50〜75質量%、有利には55〜70質量%である。
【0031】
方法は、典型的には、それぞれの成分(抗がん剤の酸(pemetrexed acid、ペメトレキセド酸)と可溶化剤(solubilizer))を測定することと、好ましくは撹拌下で、水溶媒にそれらを溶解することを含む。都合の良いことに、水は、適当な技術によって、例えば、不活性ガスを水に飽和させたり、超音波等で脱気したりすることによって、最初に酸素の除去が行われる。
【0032】
溶解のプロセスは、好ましくは、窒素やアルゴンなどの不活性ガスの雰囲気下で行われる。
【0033】
溶解は、典型的には周囲大気の温度(ambient temperature)で実施される。
【0034】
実際に、水溶媒でメグルミン若しくはトロメタミンの溶液を調製し、その溶液に抗がん剤を加えることは、有益である。
【0035】
さらに、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤は、上記の溶液に加えられ得る。そのような賦形剤の包括的でないリストは、上述されている。賦形剤は、溶媒系中に十分に溶解すべきである。上記のように、典型的な賦形剤は、糖又は糖アルコール、有利にはマンニトールであり、それは、いくつかの実施形態において、抗がん剤1gにつき0.1g〜2gの量で存在してもよい。
【0036】
最終的な段階において、溶液のpHは、任意選択的に、所望の値、典型的には7.0〜9.0の値、好ましくは7.5〜8.5の値に調整される。pH調整剤は、いかなる適当な薬学的に許容可能な酸、塩基、塩又はそれらの組合せであってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態において、得られた溶液は濾過され滅菌されて、薬瓶に満たされ、この薬瓶は、1つ当たりに所望の量の抗がん剤を備える。
【0038】
次のステップにおいて、溶媒は組成物から除去される。典型的には、水は、適当な条件下で凍結乾燥(凍結乾燥(freeze−drying)すること)によって取り除かれる。凍結乾燥は、約0.5〜約50Paの範囲の真空下で、約−10〜約−50℃の温度で実施される。
【0039】
有利な実施形態において、凍結乾燥プロセスの対象は、上で示したように調整された薬瓶の中身である。結果として、凍結乾燥プロセスは、単位量の抗がん剤、典型的には、二塩基酸の形態として計算された、50〜1500mgの抗がん剤、有利には100mg、250mg、500mg又は1000mgの抗がん剤を含む、固形医薬品組成物を得る。
【0040】
方法全体の最後のステップにおいて、薬瓶は適当なストッパーで閉じられ、ラベルをつけられ、適当な容器に詰められる。
【0041】
本発明の組成物及び製剤は、特に非経口投与に適している。そのような投与において、組成物は、適切な液体媒体による使用の前に、再構成(reconstitute)される。媒体は、滅菌水、pH緩衝液、塩化ナトリウム溶液又はブドウ糖溶液を含んでいてもよい。
【0042】
本発明の組成物は、特に哺乳類において抗がん剤に敏感な病気を治療するために、医薬(medicine)に用いられ得る。このように、本発明のさらに他の態様において、哺乳類における抗がん剤に敏感な病気を治療する方法を提供する。抗がん剤に敏感な病気は、特に限定されるものではないが、悪性胸膜中皮腫や非小細胞肺がんなどのがんが含まれる。使用又は方法は、必要に応じて哺乳類に、ここに記載されるような、効果的な量の抗がん剤含有組成物を投与することを含む。
【実施例】
【0044】
<実施例1>
(抗がん剤とメグルミン(単位当たり50mgの抗がん剤)を含む固形医薬組成物)
窒素の不活性雰囲気下で、抗がん剤の二塩基酸(750mg)を、25mlの注入用の水でメグルミン(活性物質に関連した2.2モルの等価物:754.0mg)の溶液に溶解した。透明な(clear)黄色がかった溶液は、簡単に形成された。その後、マンニトール(750mg)を加え、撹拌中で溶解した。溶液のpHは、1Mの塩酸によって約7.5に調整され、溶液の質量は、注入用の水によって30gに調整された。溶液は、PVDFフィルタ0.2ミクロンでろ過され、2gずつ透明な10Rの薬瓶に保管され、表に示したプログラムを用いて凍結乾燥された。
【0045】
【表1】
【0046】
[安定性]
安定性の試験は、本実施例の組成物を、市販の製品ALIMTA(100mgと500mg)と比較するために実施された。抗がん剤を含む製剤に存在する不純物は、安定性の試験の実施により、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって検出された。そのクロマトグラフィーは、適当な波長(典型的には227nm)での紫外線検出器を備えており、正規化されたピークエリアレスポンス(「PAR」)の原則(basis)で計算された。許容可能な制限として、対応するサンプリングポイントで十分な安定性を示しても、本発明の組成物において全ての個々のディグラデント(degradants)のピークの合計が、全体のPARの2%を超えてはならない。いずれの個々のディグラデントのピークサイズも、全体のPARの1%を超えてはならない。下の表において、「UN」は未知の不純物を意味する。不純物A、B、C及びDは、構造が知られている(Ph.Eur.)。
【0047】
結果を表に示す:
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4A】
【0051】
【表4B】
【0052】
実施例1の凍結乾燥された組成物は、安定性の観点から、市販の抗がん剤の2ナトリウムの組成物と完全に同等であると結論づけることができる。
【0053】
<実施例2>
(抗がん剤とトロメタミン(単位当たり50mgの抗がん剤)を含む固形医薬組成物)
窒素の不活性雰囲気下で、抗がん剤の二塩基酸(750mg)を、25mlの注入用の水でトロメタミン(活性物質に関連した2.1モルの等価物:446.4mg)の溶液に溶解した。その後、マンニトール(750mg)を加え、撹拌中で溶解した。溶液のpHは、1Mの塩酸によって約7.5に調整され、溶液の質量は、注入用の水によって30gに調整された。溶液は、PVDFフィルタ0.2ミクロンでろ過され、2gずつ透明な10Rの薬瓶に保管され、表に示したプログラムを用いて凍結乾燥された。
【0054】
【表5】