特許第6182280号(P6182280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6182280摩擦攪拌点接合装置及び摩擦攪拌点接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182280
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】摩擦攪拌点接合装置及び摩擦攪拌点接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20170807BHJP
   B23K 103/16 20060101ALN20170807BHJP
【FI】
   B23K20/12 340
   B23K20/12 344
   B23K20/12 346
   B23K20/12 310
   B23K20/12 364
   B23K103:16
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-564684(P2016-564684)
(86)(22)【出願日】2015年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2015006227
(87)【国際公開番号】WO2016098341
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2016年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-253049(P2014-253049)
(32)【優先日】2014年12月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 豪生
(72)【発明者】
【氏名】田村 純一
(72)【発明者】
【氏名】上向 賢一
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−196681(JP,A)
【文献】 特開2012−121027(JP,A)
【文献】 特開2009−082977(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/024474(WO,A1)
【文献】 特開2015−186869(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0044406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
B23K 103/16
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線に沿って進退移動する回転工具を備え、重ね合された第1部材と第2部材との接触部分にシーラント材が塗布された被接合物に前記回転工具の先端部を押圧し、前記被接合物との接触部を回転させることにより、当該被接合物を摩擦熱で軟化させ、攪拌して被接合物を接合する摩擦攪拌点接合装置であって、
円柱状に形成されているピン部材と、
円筒状に形成され、前記ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、
前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、前記ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、
円筒状に形成され、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が内部に挿通されているクランプ部材と、
前記ピン部材、前記ショルダ部材、及び前記クランプ部材を、それぞれ前記軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、
制御器と、を備え、
前記制御器は、前記クランプ部材が前記被接合物を押圧する前に、前記ピン部材及び前記ショルダ部材の少なくとも一方の部材が前記被接合物を押圧するように、前記進退駆動器を制御する予備動作を実行し、その後、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が前記被接合物を攪拌するように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を制御する接合動作を実行する、摩擦攪拌点接合装置。
【請求項2】
前記制御器は、前記予備動作において、前記ピン部材、前記ショルダ部材、及び前記クランプ部材の順に前記被接合物を押圧するように、前記進退駆動器を制御する、請求項1に記載の摩擦攪拌点接合装置。
【請求項3】
回転軸線に沿って進退移動する回転工具を備え、重ね合された第1部材と第2部材との接触部分にシーラント材が塗布された被接合物に前記回転工具の先端部を押圧し、前記被接合物との接触部を回転させることにより、当該被接合物を摩擦熱で軟化させ、攪拌して被接合物を接合する摩擦攪拌点接合方法であって、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の部材にシーラント材を塗布し、前記シーラント材を挟むように、前記第1部材及び前記第2部材を接触させる(A)と、
円柱状に形成されているピン部材、及び円筒状に形成され、前記ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材の少なくとも一方の部材が前記被接合物を押圧する(B)と、
円筒状に形成され、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が内部に挿通されているクランプ部材が前記被接合物を押圧する(C)と、
前記ピン部材及び前記ショルダ部材が前記被接合物を攪拌する(D)と、を備える、摩擦攪拌点接合方法。
【請求項4】
前記(B)は、前記ピン部材が前記被接合物を押圧する(B1)と、(B1)の後、前記ショルダ部材が前記被接合物を押圧する(B2)と、を備える、請求項3に記載の摩擦攪拌点接合方法。
【請求項5】
前記(A)、前記(B)、前記(C)、及び前記(D)がこの順で実行される、請求項3又は4に記載の摩擦攪拌点接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌点接合装置及び摩擦攪拌点接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車両、航空機等の輸送機器においては、金属材料を連結するときには、抵抗スポット溶接又はリベット接合が用いられていた。しかしながら、近年では、摩擦熱を利用して金属材料を接合する方法(摩擦攪拌点接合方法)が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されている摩擦攪拌点接合方法では、略円柱状のピン部材と、該ピン部材を内挿するための中空を有する略円筒状のショルダ部材と、クランプ部材と、を備えていて、ピン部材とショルダ部材が、被接合物の一部を攪拌することで、被接合物を接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−196682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、厳しい環境で使用される航空機等のリベット作業においては、耐食性を確保するために、被接合物間にシーラント材(シール材)を塗布することが求められる。そこで、本発明者等は、被接合物間にシーラント材を塗布して、摩擦攪拌点接合装置により、接合を行う方法について、鋭意検討したところ、以下に示す方法により、好適な精度で良好な接合品質を実現し得ることを見出し、本発明を想到した。
【0006】
本発明は、複動式の摩擦攪拌点接合法において、シーラント材を塗布した被接合物を接合する場合に、良好な接合品質を実現し得る、摩擦攪拌点接合装置及び摩擦攪拌点接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る摩擦攪拌点接合装置は、回転軸線に沿って進退移動する回転工具を備え、重ね合された第1部材と第2部材との接触部分にシーラント材が塗布された被接合物に前記回転工具の先端部を押圧し、前記被接合物との接触部を回転させることにより、当該被接合物を摩擦熱で軟化させ、攪拌して被接合物を接合する摩擦攪拌点接合装置であって、円柱状に形成され、軸線周りの回転と該軸線に沿った方向への進退移動とが可能なように構成されているピン部材と、円筒状に形成され、前記ピン部材が内部に挿通されており、前記軸線周りの回転と該軸線に沿った方向への進退移動とが可能なように構成されているショルダ部材と、前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、前記軸線周りに回転させる回転駆動器と、円筒状に形成され、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が内部に挿通されており、前記軸線方向に進退移動可能に構成されているクランプ部材と、前記ピン部材、前記ショルダ部材、及び前記クランプ部材を、それぞれ前記軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、前記進退駆動器及び前記回転駆動器を制御する制御器と、を備え、前記制御器は、前記クランプ部材が前記被接合物を押圧する前に、前記ピン部材及び前記ショルダ部材の少なくとも一方の部材が前記被接合物を押圧するように、前記進退駆動器を制御する予備動作を実行し、その後、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が前記被接合物を攪拌するように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を制御する攪拌動作を実行する。
【0008】
これにより、シーラント材を塗布した被接合物を接合する場合であっても、シーラント材が接合される部分から押し出されるため、シーラント材が被接合物の塑性流動部に流入(混入)することが抑制され、良好な接合品質を実現し得る。
【0009】
また、本発明に係る摩擦攪拌点接合方法は、回転軸線に沿って進退移動する回転工具を備え、重ね合された第1部材と第2部材との接触部分にシーラント材が塗布された被接合物に前記回転工具の先端部を押圧し、前記被接合物との接触部を回転させることにより、当該被接合物を摩擦熱で軟化させ、攪拌して被接合物を接合する摩擦攪拌点接合方法であって、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の部材にシーラント材を塗布し、前記シーラント材を挟むように、前記第1部材及び前記第2部材を接触させる(A)と、円柱状に形成されているピン部材、及び円筒状に形成され、前記ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材の少なくとも一方の部材が前記被接合物を押圧する(B)と、円筒状に形成され、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が内部に挿通されているクランプ部材が前記被接合物を押圧する(C)と、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が前記被接合物を攪拌する(D)と、を備える。
【0010】
これにより、シーラント材を塗布した被接合物を接合する場合であっても、シーラント材が接合される部分から押し出されるため、シーラント材が被接合物の塑性流動部に流入(混入)することが抑制され、良好な接合品質を実現し得る。
【0011】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施形態の詳細な説明から明らかにされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る摩擦攪拌点接合装置及び摩擦攪拌点接合方法によれば、シーラント材を塗布した被接合物を接合する場合であっても、良好な接合品質を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す摩擦攪拌点接合装置の制御構成を模式的に示すブロック図である。
図3図3は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4A図4Aは、図1に示す摩擦攪拌点接合装置による摩擦攪拌点接合の各工程の一例を模式的に示す工程図である。
図4B図4Bは、図1に示す摩擦攪拌点接合装置による摩擦攪拌点接合の各工程の一例を模式的に示す工程図である。
図4C図4Cは、図1に示す摩擦攪拌点接合装置による摩擦攪拌点接合の各工程の一例を模式的に示す工程図である。
図5図5は、本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するために必要となる構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している場合がある。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0015】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置は、第1部材と第2部材が接触する部分にシーラント材が塗布されている被接合物を部分的に攪拌することにより接合する複動式の摩擦攪拌点接合装置であって、円柱状に形成されているピン部材と、円筒状に形成され、ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、ピン部材及びショルダ部材を、ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、円筒状に形成され、ピン部材及びショルダ部材が内部に挿通されているクランプ部材と、ピン部材、ショルダ部材、及びクランプ部材を、それぞれ軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、回転駆動器及び進退駆動器を制御する制御器と、を備え、制御器は、クランプ部材が被接合物を押圧する前に、ピン部材及びショルダ部材の少なくとも一方の部材が被接合物を押圧するように、進退駆動器を制御する予備動作を実行し、その後、ピン部材及びショルダ部材が被接合物を攪拌するように、回転駆動器及び進退駆動器を制御する接合動作を実行する。
【0016】
ここで、「押圧する」とは、被接合物の当接する部分からシーラント材を押し出すができる圧力を被接合物に加圧することをいい、例えば、1000N〜7000Nの圧力(以下、押圧力という)を被接合物にかけることをいう。
【0017】
このため、制御器は、ピン部材、ショルダ部材、及びクランプ部材を(同時に)被接合物に当接させ、その後、ピン部材、ショルダ部材、及びクランプ部材の順に、被接合物を押圧するように、進退駆動器を制御してもよい。また、制御器は、クランプ部材を被接合物に当接させ、その後、ピン部材、ショルダ部材、及びクランプ部材の順に、被接合物を押圧するように、進退駆動器を制御してもよい。なお、「当接する」とは、押圧力よりも小さい圧力を被接合物にかけることをいい、例えば、1000Nよりも小さい圧力を被接合物にかけることをいう。
【0018】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置では、制御器は、予備動作において、ピン部材、ショルダ部材、及びクランプ部材の順に被接合物を押圧するように、進退駆動器を制御してもよい。
【0019】
以下、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
[摩擦攪拌点接合装置の構成]
図1は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の概略構成を示す模式図である。なお、図1においては、図における上下方向を摩擦攪拌点接合装置における上下方向として表している。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50は、ピン部材11、ショルダ部材12、工具固定器52、進退駆動器53、クランプ部材13、裏当て支持部55、裏当て部材56、及び回転駆動器57を備えている。
【0022】
ピン部材11、ショルダ部材12、工具固定器52、進退駆動器53、クランプ部材13、及び回転駆動器57は、C型ガン(C型フレーム)で構成される裏当て支持部55の上部に設けられている。また、裏当て支持部55の下部には、裏当て部材56が設けられている。ピン部材11、ショルダ部材12及びクランプ部材13と、裏当て部材56と、は互いに対向する位置で裏当て支持部55に取り付けられている。なお、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13と、裏当て部材56と、の間には、被接合物60が配置される。
【0023】
ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13は、回転工具固定器521及びクランプ固定器522から構成される工具固定器52に固定されている。具体的には、ピン部材11及びショルダ部材12は、回転工具固定器521に固定されていて、クランプ部材13は、クランプ固定器522に固定されている。そして、回転工具固定器521は、回転駆動器57を介して、クランプ固定器522に支持されている。
【0024】
また、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13は、ピン駆動器531、ショルダ駆動器532、及びクランプ駆動器533から構成される進退駆動器53によって、上下方向に進退駆動される。
【0025】
ピン部材11は、円柱状に形成されていて、図1には、詳細に図示されないが、回転工具固定器521により支持されている。また、ピン部材11は、回転駆動器57により、ピン部材11の軸心に一致する軸線Xr(回転軸)周りに回転し、ピン駆動器531により、矢印P1方向、すなわち軸線Xr方向(図1では上下方向)に沿って、進退移動可能に構成されている。ピン駆動器531は、ピン部材11に加圧力を与える構成であればよく、例えば、ガス圧、油圧、サーボモータ等を用いた機構を好適に用いることができる。
【0026】
ショルダ部材12は、中空を有する円筒状に形成されていて、回転工具固定器521により支持されている。ショルダ部材12の中空内には、ピン部材11が内挿されている。換言すると、ショルダ部材12は、ピン部材11の外周面を囲むように配置されている。
【0027】
また、ショルダ部材12は、回転駆動器57により、ピン部材11と同一の軸線Xr周りに回転し、ショルダ駆動器532により、矢印P2方向、すなわち軸線Xr方向に沿って進退移動可能に構成されている。ショルダ駆動器532は、ショルダ部材12に加圧力を与える構成であればよく、例えば、ガス圧、油圧、サーボモータ等を用いた機構を好適に用いることができる。
【0028】
このように、ピン部材11及びショルダ部材12(回転工具)は、本実施の形態ではいずれも同一の回転工具固定器521によって支持され、いずれも回転駆動器57により軸線Xr周りに一体的に回転する。さらに、ピン部材11及びショルダ部材12は、ピン駆動器531及びショルダ駆動器532により、それぞれ軸線Xr方向に沿って進退移動可能に構成されている。なお、本実施の形態1においては、ピン部材11は単独で進退移動可能であるとともに、ショルダ部材12の進退移動に伴っても進退移動可能となっているが、ピン部材11及びショルダ部材12がそれぞれ独立して進退移動可能に構成されてもよい。
【0029】
クランプ部材13は、ショルダ部材12と同様に、中空を有する円筒状に形成されていて、その軸心が軸線Xrと一致するように設けられている。クランプ部材13の中空内には、ショルダ部材12が内挿されている。
【0030】
すなわち、ピン部材11の外周面を囲むように、円筒状のショルダ部材12が配置されていて、ショルダ部材12の外周面を囲むように円筒状のクランプ部材13が配置されている。換言すれば、クランプ部材13、ショルダ部材12及びピン部材11が、それぞれ同軸心状の入れ子構造となっている。
【0031】
また、クランプ部材13は、クランプ駆動器533により、矢印P3方向(矢印P1及びP2と同方向)に進退可能に構成されている。クランプ駆動器533は、クランプ部材13に加圧力を与える構成であればよく、例えば、ガス圧、油圧、サーボモータ等を用いた機構を好適に用いることができる。
【0032】
ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13は、それぞれ先端面11a、先端面12a、及び先端面13aを備えている。また、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13は、進退駆動器53により進退移動することで、先端面11a、先端面12a、及び先端面13aは、それぞれ、被接合物60の表面に当接し、被接合物60を押圧する。
【0033】
裏当て部材56は、本実施の形態1においては、平板状の被接合物60の裏面を当接するように平坦な面(支持面56a)により、支持するように構成されている。裏当て部材56は、摩擦攪拌点接合を実施できるように被接合物60を適切に支持することができるものであれば、その構成は特に限定されない。裏当て部材56は、例えば、複数の種類の形状を有する裏当て部材56が別途準備され、被接合物60の種類に応じて、裏当て支持部55から外して交換できるように構成されてもよい。
【0034】
なお、本実施の形態1におけるピン部材11、ショルダ部材12、工具固定器52、進退駆動器53、クランプ部材13、裏当て支持部55、及び回転駆動器57の具体的な構成は、前述した構成に限定されず、広く摩擦攪拌接合の分野で公知の構成を好適に用いることができる。例えば、ピン駆動器531及びショルダ駆動器532は、摩擦攪拌接合の分野で公知のモータ及びギア機構等で構成されていてもよい。
【0035】
また、裏当て支持部55は、本実施の形態1においては、C型ガンで構成されているが、これに限定されない。裏当て支持部55は、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13を進退移動可能に支持するとともに、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13に対向する位置に裏当て部材56を支持することができれば、どのように構成されていてもよい。
【0036】
さらに、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50は、摩擦攪拌点接合用ロボット装置(図示せず)に配設される形態を採用している。具体的には、裏当て支持部55が、ロボット装置のアームの先端に取り付けられている。このため、裏当て支持部55も摩擦攪拌点接合用ロボット装置に含まれるとみなすことができる。裏当て支持部55及びアームを含めて、摩擦攪拌点接合用ロボット装置の具体的な構成は特に限定されず、多関節ロボット等、摩擦攪拌接合の分野で公知の構成を好適に用いることができる。
【0037】
なお、摩擦攪拌点接合装置50(裏当て支持部55を含む)は、摩擦攪拌点接合用ロボット装置に適用される場合に限定されるものではなく、例えば、NC工作機械、大型のCフレーム、及びオートリベッター等の公知の加工用機器にも好適に適用することができる。
【0038】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50は、二対以上のロボットが、摩擦攪拌点接合装置50における裏当て部材56以外の部分と、裏当て部材56と、を正対させるように構成されていてもよい。さらに、摩擦攪拌点接合装置50は、被接合物60に対して安定して摩擦攪拌点接合を行うことが可能であれば、被接合物60を手持ち型にする形態を採用してもよく、ロボットを被接合物60のポジショナーとして用いる形態を採用してもよい。
【0039】
[摩擦攪拌点接合装置の制御構成]
次に、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50の制御構成について、図2を参照して具体的に説明する。
【0040】
図2は、図1に示す摩擦攪拌点接合装置の制御構成を模式的に示すブロック図である。
【0041】
図2に示すように、摩擦攪拌点接合装置50は、制御器51、記憶器31、及び入力器32を備えている。
【0042】
記憶器31は、各種データを読み出し可能に記憶するものであり、記憶器31としては、公知のメモリ、ハードディスク等の記憶装置等で構成される。記憶器31は、単一である必要はなく、複数の記憶装置(例えば、ランダムアクセスメモリ及びハードディスクドライブ)として構成されてもよい。制御器51等がマイクロコンピュータで構成されている場合には、記憶器31の少なくとも一部がマイクロコンピュータの内部メモリとして構成されてもよいし、独立したメモリとして構成されてもよい。
【0043】
なお、記憶器31には、データが記憶され、制御器51以外からデータの読み出しが可能となっていてもよいし、制御器51等からデータの書き込みが可能になっていてもよいことはいうまでもない。
【0044】
入力器32は、制御器51に対して、摩擦攪拌点接合の制御に関する各種パラメータ、あるいはその他のデータ等を入力可能とするものであり、キーボード、タッチパネル、ボタンスイッチ群等の公知の入力装置で構成されている。本実施の形態1では、少なくとも、被接合物60の接合条件、例えば、被接合物60の厚み、材質等のデータが入力器32により入力可能となっている。
【0045】
制御器51は、摩擦攪拌点接合装置50を構成する各部材(各機器)を制御するように構成されている。具体的には、制御器51は、進退駆動器53を構成するピン駆動器531、ショルダ駆動器532、及びクランプ駆動器533と、回転駆動器57と、を制御する。これにより、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13の進出移動又は後退移動の切り替え、進退移動時のピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13における、先端位置の制御、移動速度、及び移動方向等を制御することができる。また、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13の被接合物60を押圧する押圧力を制御することができる。さらに、ピン部材11及びショルダ部材12の回転数を制御することができる。
【0046】
制御器51の具体的な構成は、特に限定されず、本実施の形態1では、制御器51は、マイクロコンピュータで構成されていて、CPUを備えている。制御器51は、CPUが記憶器31に格納された所定の制御プログラムを読み出し、これを実行することにより、進退駆動器53及び回転駆動器57の動作に関する演算を行うように構成されている。なお、制御器51は、単独の制御器で構成される形態だけでなく、複数の制御器が協働して、摩擦攪拌点接合装置50の制御を実行する制御器群で構成される形態であっても構わない。
【0047】
そして、制御器51は、被接合物60の接合を開始するときに、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13の順に、被接合物60を押圧するように、進退駆動器53を制御する。
【0048】
[摩擦攪拌点接合方法(摩擦攪拌点接合装置の動作)]
次に、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50の動作について、図3図4A図4B、及び図4Cを参照して具体的に説明する。なお、図4A図4B、及び図4Cにおいては、被接合物60として、2枚の金属板61、62を用い、金属板62の上面(金属板61との接触面)に、シーラント材63を塗布し、これらを重ねて点接合にて連結する場合を例に挙げている。
【0049】
図3は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。図4A図4B、及び図4Cは、図1に示す摩擦攪拌点接合装置による摩擦攪拌点接合の各工程の一例を模式的に示す工程図である。
【0050】
なお、図4A図4B、及び図4Cにおいては、摩擦攪拌点接合装置の一部を省略し、矢印rは、ピン部材11及びショルダ部材12の回転方向を示し、ブロック矢印Fは、金属板61、62に加えられる力の方向を示す。また、裏当て部材56からも金属板61、62に対して力が加えられているが、説明の便宜上、図4A図4B、及び図4Cには図示していない。さらに、ショルダ部材12には、ピン部材11及びクランプ部材13との区別を明確とするために、網掛けのハッチングを施している。
【0051】
まず、図4(A)に示すように、裏当て部材56の上面に金属板(第2部材)62を載置し、シーラント材63を塗布する。シーラント材63としては、例えば、ポリサルファイド系合成ゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴム、四フッ化エチレンゴム樹脂等の樹脂等を用いることができる。ついで、シーラント材63を挟むように、金属板62の上面に金属板(第1部材)61を載置する(工程(A))。
【0052】
次に、制御器51は、予備動作を実行する。具体的には、図3及び図4(A)に示すように、制御器51は、ピン部材11が予め設定された第1押圧力P1で被接合物60の表面60c(金属板61の上面)を押圧するように、進退駆動器53を駆動する(ステップS101;工程(B1))。ここで、第1押圧力は、任意に設定することができ、予め実験等で設定され、例えば、2000〜15000Nであってもよく、ピン部材11の直径及び被接合物60の厚みから適切に決定される。
【0053】
これにより、ピン部材11と裏当て部材56が、金属板61、シーラント材63、及び金属板62を挟み込む。そして、ピン部材11が被接合物60の表面60cを押圧することにより、鉛直方向から見て、ピン部材11の先端面11aと重なる部分近傍に位置するシーラント材63が、元の位置よりも外側に押し出される。このため、シーラント材63は、被接合物60の周面からはみ出る。
【0054】
次に、制御器51は、ショルダ部材12が予め設定された第2押圧力で被接合物60の表面60cを押圧するように、進退駆動器53を駆動する(ステップS102;工程(B2))。ここで、第2押圧力は、任意に設定することができ、予め実験等で設定され、例えば、2000〜15000Nであってもよく、ショルダ部材12の内外径及び被接合物60の厚みから適切に決定される。
【0055】
これにより、ピン部材11及びショルダ部材12と、裏当て部材56とが、金属板61、シーラント材63、及び金属板62を挟み込む。そして、ピン部材11に加えて、ショルダ部材12が被接合物60の表面60cを押圧することにより、鉛直方向から見て、ショルダ部材12の先端面12aと重なる部分近傍に位置するシーラント材63が、当該部分よりも外側に押し出され、被接合物60の周面からはみ出る。
【0056】
次に、制御器51は、クランプ部材13が予め設定された第1押圧力で被接合物60の表面60cを押圧するように、進退駆動器53を駆動する(ステップS103;工程(C))。ここで、第3押圧力は、任意に設定することができ、予め実験等で設定され、例えば、2000〜15000Nであってもよく、クランプ部材13の内外径及び被接合物60の厚みから適切に決定される。
【0057】
これにより、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13と、裏当て部材56と、が、金属板61、シーラント材63、及び金属板62を挟み込む。そして、ピン部材11及びショルダ部材12に加えて、クランプ部材13が被接合物60の表面60cを押圧することにより、鉛直方向から見て、クランプ部材13の先端面13aと重なる部分近傍に位置するシーラント材63が、当該部分よりも外側に押し出され、被接合物60の周面からはみ出る。なお、シーラント材63の一部は、被接合物60の周縁部に存在し、被接合物60の接合面をシールすることができる。
【0058】
次に、制御器51は、接合動作を実行する(工程(D))。具体的には、制御器51は、予め設定された所定の回転数で、回転駆動器57を駆動させて、ピン部材11及びショルダ部材12を被接合物60の表面60cに当接させた状態で回転させる(ステップS104;工程(D1))。この状態では、ピン部材11及びショルダ部材12共に進退移動しないので、被接合物60の表面60cを「予備加熱」することになる。これにより、金属板61の当接領域における金属材料が摩擦により発熱することで軟化し、被接合物60の表面60c近傍に塑性流動部60aが生じる。
【0059】
次に、制御器51は、ピン部材11又はショルダ部材12が所定の動作をするように、進退駆動器53を制御する(ステップS105)。具体的には、制御器51は、記憶器31に記憶されている所定の制御プログラムに従って、進退駆動器53を制御する。
【0060】
このとき、制御器51は、ピン部材11の先端面の断面積をAp、ショルダ部材12の先端面の断面積をAsとし、ピン部材11の圧入深さをPp、ショルダ部材12の圧入深さをPsとしたときに、次の式(I)
Ap・Pp+As・Ps=Tx ・・・ (I)
で定義されるツール平均位置Txの絶対値を小さくするように、進退駆動器53を制御することが好ましく、ツール平均位置Tx=0となるように、進退駆動器53を制御することがより好ましい。なお、ツール平均位置Txの絶対値を小さくする具体的な制御については、特許文献1に詳細に開示されているため、ここでは、その説明を省略する。
【0061】
次に、制御器51は、ピン駆動器531及び/又はショルダ駆動器532(図1参照)を制御して、ピン部材11を被接合物60の表面60cから後退させることで、ショルダ部材12を被接合物60の表面60cからさらに内部に進入(圧入)させる(図4Bの工程(D2)参照)。このとき、金属材料の軟化部位は、上側の金属板61から下側の金属板62にまで及び、塑性流動部60aのボリュームが増加する。さらに、塑性流動部60aの軟化した金属材料はショルダ部材12により押し退けられ、ショルダ部材12の直下からピン部材11の直下に流動するので、ピン部材11は後退し、ショルダ部材12に対して浮き上がる。
【0062】
次に、制御器51は、ピン駆動器531を制御して、後退させたピン部材11を徐々に金属板61に進入(圧入)させる。これに伴って、ショルダ部材12が金属板61から後退する(図4Cの工程(D3)参照)。なお、当該工程(D3)は、後述する工程(D4)によって金属板61の表面60cが充分整形される場合には、実行されなくともよい。
【0063】
そして、制御器51は、工程(D2)から工程(D4)へ移行する場合には、ピン駆動器531を制御して、ピン部材11を徐々に進入させる。一方、制御器51は、工程(D2)から工程(D3)を経て工程(D4)へ移行する場合には、ピン駆動器531を制御して、ピン部材11を徐々に引き込ませる。このとき、ピン部材11又はショルダ部材12は、いずれも引き込み動作中であっても、その先端による加圧力は維持されている(図4Bの工程(D2)の矢印F及び図4Cの工程(D3)の矢印F参照)。
【0064】
このため、ショルダ部材12が引き込まれる場合には、ピン部材11による回転及び押圧が維持されているので、塑性流動部60aの軟化した金属材料は、ピン部材11の直下からショルダ部材12の直下に流動し、ショルダ部材12の圧入により生じた凹部が埋め戻されていく。
【0065】
一方、ピン部材11が引き込まれる場合には、ショルダ部材12による回転及び押圧が維持されているので、塑性流動部60aの軟化した金属材料は、ショルダ部材12の直下からピン部材11の直下に流動し、その結果、ピン部材11の圧入により生じた凹部が埋め戻されていく。
【0066】
次に、制御器51は、進退駆動器53を制御して、ピン部材11の先端面11a及びショルダ部材12の先端面12aを、互いに段差がほとんど生じない程度に合わせる(面一とする)(図4Cの工程(D4)参照)。これにより、被接合物60の表面60cが整形され、実質的な凹部が生じない程度の略平坦な面が得られる。
【0067】
次に、制御器51は、進退駆動器53を制御して、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13を被接合物60から離し、その後、回転駆動器57を制御して、ピン部材11及びショルダ部材12の回転を停止させ、一連の摩擦攪拌点接合(被接合物60の接合工程)を終了させる(図4Cの工程(E)参照)。これにより、ピン部材11及びショルダ部材12の当接による回転(及び押圧)は金属板61、62に加えられなくなるので、金属板61、62の双方に及ぶ塑性流動部60aでは、塑性流動が停止し、接合部60bとなる。
【0068】
このようにして、2枚の金属板61、62は接合部60bによって連結(接合)される。なお、シーラント材63は、所定期間が経過すると、硬化して、金属板61及び金属板62の接合面がシールされる。
【0069】
このように、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50では、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13の順に、被接合物60の表面60cを押圧することにより、鉛直方向から見て、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13の各先端面と重なる部分近傍からシーラント材63が押し出される。このため、ピン部材11及びショルダ部材12を回転させて、塑性流動部60aを生じさせるときに、シーラント材63が塑性流動部60aに流入(混入)することを抑制することができ、良好な接合品質を実現し得る。
【0070】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50では、シーラント材63が塑性流動部60aに流入(混入)することを抑制できるため、ピン部材11及び/又はショルダ部材12にシーラント材63が付着することが抑制される。このため、被接合物60を連続して接合するような場合に、ピン部材11及び/又はショルダ部材12の先端面が、被接合物60の表面60cを安定して押圧することができる。また、被接合物60の表面60cにシーラント材63が付着することが抑制され、良好な接合品質を実現し得る。
【0071】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置において、制御器が、ピン部材及びショルダ部材が(同時に)被接合物を押圧し、その後、クランプ部材が被接合物を押圧するように、進退駆動器を制御する。
【0072】
以下、本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置と基本的構成は同じであるため、その構成の説明は省略する。
【0073】
[摩擦攪拌点接合方法(摩擦攪拌点接合装置の動作)]
図5は、本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0074】
まず、実施の形態1と同様に、裏当て部材56の上面に金属板62を載置し、シーラント材63を塗布する。ついで、シーラント材63を挟むように、金属板62の上面に金属板61を載置する(図4Aの工程(A)参照)。
【0075】
次に、図5に示すように、制御器51は、ピン部材11及びショルダ部材12が予め設定された第4押圧力P4で被接合物60の表面60c(金属板61の上面)を押圧するように、進退駆動器53を駆動する(ステップS201)。ここで、第4押圧力は、任意に設定することができ、予め実験等で設定され、例えば、2000〜15000Nであってもよい。
【0076】
これにより、ピン部材11及びショルダ部材12と、裏当て部材56とが、金属板61、シーラント材63、及び金属板62を挟み込む。そして、ピン部材11及びショルダ部材12が被接合物60の表面60cを押圧することにより、鉛直方向から見て、ピン部材11の先端面11a及びショルダ部材12の先端面12aと重なる部分近傍に位置するシーラント材63が、当該部分よりも外側に押し出され、被接合物60の周面からはみ出る。
【0077】
次に、制御器51は、クランプ部材13が予め設定された第1押圧力で被接合物60の表面60cを押圧するように、進退駆動器53を駆動する(ステップS202)。
【0078】
これにより、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13と、裏当て部材56とが、金属板61、シーラント材63、及び金属板62を挟み込む。そして、ピン部材11及びショルダ部材12に加えて、クランプ部材13が被接合物60の表面60cを押圧することにより、鉛直方向から見て、クランプ部材13の先端面13aと重なる部分近傍に位置するシーラント材63が、当該部分よりも外側に押し出され、被接合物60の周面からはみ出る。
【0079】
次に、制御器51は、予め設定された所定の回転数で、回転駆動器57を駆動させて、ピン部材11及びショルダ部材12を被接合物60の表面60cに当接させた状態で回転させる(ステップS203)。
【0080】
次に、制御器51は、ピン部材11又はショルダ部材12が所定の動作をするように、進退駆動器53を制御する(ステップS204)。なお、所定の動作は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様の動作を実行するので、その詳細な説明は省略する。
【0081】
このように構成された、本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置50であっても、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様の作用効果を奏する。
【0082】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の形態を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の要旨を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の摩擦攪拌点接合装置及び摩擦攪拌点接合方法は、シーラント材を塗布した被接合物を接合する場合であっても、良好な接合品質を実現し得るため、有用である。
【符号の説明】
【0084】
11 ピン部材
11a 先端面
12 ショルダ部材
12a 先端面
13 クランプ部材
13a 先端面
31 記憶器
32 入力器
50 摩擦攪拌点接合装置
51 制御器
52 工具固定器
53 進退駆動器
55 裏当て支持部
56 裏当て部材
56a 支持面
57 回転駆動器
60 被接合物
60a 塑性流動部
60b 接合部
60c 表面
60d 裏面
61 金属板
62 金属板
63 シーラント材
521 回転工具固定器
522 クランプ固定器
531 ピン駆動器
532 ショルダ駆動器
533 クランプ駆動器
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5