(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凸部は、前記貫通穴を中心とした円弧状の第1側部と、上記第1の側部の両端から前記円形部の周縁側に向かって形成された第2側部及び第3側部と、前記貫通穴を中心とした円弧状に形成され上記第2側部の端と上記第3側部の端とをつなぐ第4側部と、上記第1側部,上記第2側部,上記第3側部及び上記第4側部で囲われた領域を塞ぐ天井部と、から構成され、
上記第2側部と上記第3側部との間隔は、前記円形部の貫通穴側より周縁側が広くなるように形成されていることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の送風機。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係るハブ1の斜視図、
図2はハブ1の正面図、
図3はハブ1の背面図、
図4はハブ1の側面図、
図5(A)〜(C)は
図2のa−a線,b−b線及びc−c線に沿ったハブ1の端面図である。
【0018】
ハブ1は、輪郭が円形のプレート状に形成された円形部10と、一方の開口の縁が円形部10の周縁につながった筒部20と、から構成されている。円形部10と筒部20とは角部30でつながっており、図示例では、角部30の表面は湾曲面として形成されている。これらの円形部10と筒部20と角部30とは一体に形成される。
【0019】
円形部10は、
図5(C)に示すように、中心から所定の距離までの円の領域を占める中央部11と、その周りで円形部10の周縁までの領域を占めるリング状の外周部12と、を備えている。外周部12は段差部13を介して中央部11につながっている。
【0020】
外周部12は、筒部20の軸を
図5(C)に一点鎖線Xで表すと、ハブ内側からハブ外側へ向けて中央部11から離れるよう、ハブ外側に配置されている。これにより中央部11の平坦な面S1と外周部12の平坦な面S2とは軸X方向に位置がずれて配置される。
【0021】
中央部11は、中心に後述するモーターのシャフトの先端部を通す貫通穴14を備えている。
【0022】
外周部12は複数の凸部15を備えている。
図6はハブの部分斜視図であり、特に凸部15を拡大して表している。この図に示すように、凸部15は、円形部10の表側の面がハブ外側へ膨らんだように形成されている。
【0023】
図示例では、凸部15は、枠型に連なる4つの側部(以下、それぞれ第1側部15A,第2側部15B,第3側部15C,第4側部15Dと呼ぶ)と、これら4つの第1側部15A〜第4側部15Dで囲われた領域を塞ぐ天井部15Eと、を備える。4つの第1側部15A〜第4側部15Dは外周部12の面からハブ外側へ突出している。
【0024】
第1側部15Aと、第4側部15Dとは、円形部10の段差部13や周縁が形成する円に沿った円弧状に形成されている。第2側部15Bと、第3側部15Cとは、円形部10の貫通穴側から周縁側へ向けて直線状に形成されている。
【0025】
第2側部15Bと、第3側部15Cとは、貫通穴側から円形部10の周縁側へ向けて、外周部12の面からの高さが次第に高くなるように形成されている。凸部15は貫通穴14側より円形部10の周縁側が高く形成されている。さらに、第2側部15Bと第3側部15Cとの間隔は、貫通穴側から円形部10の周縁側へ向けて、広くなる。凸部15の幅は貫通穴14側より円形部10の周縁側が広く形成されている。
【0026】
天井部15Eの周縁は4つの第1側部15A〜第4側部15Dと一体に形成されて、天井部15Eの周縁を構成する各縁部分において、貫通穴側に配置される縁部と円形部10の周縁側に配置される縁部とが第1側部15Aと第4側部15Dの形状に倣って円弧状に形成され、それらの両端をつなぐように残りの縁部がそれぞれ直線状に形成されている。天井部15Eの輪郭は台形状に形成されている。
【0027】
天井部15Eは、
図5(C)に示す外周部12の平坦な面S2を基準とすると
図5(A)に示すように傾斜した面S3として形成されている。この面S3は、貫通穴側から円形部10の周縁側へ向けて外周部12の面S2から次第に離れるように、つまり高くなる勾配を有する。この天井部15Eと第4側部15Dとが成す角部C(
図5(A)参照)が最も高くなるように形成される。
【0028】
凸部15はこれらの4つ第1側部15A〜第4側部15Dと天井部15Eとで構成されているので、円形部10の裏側の面において、凸部15に対応する部分は、
図5(A)に示すように、ハブ外側へ凹んだ窪み16として形成されている。
【0029】
凸部15は、角部Cの位置に、言い換えれば円形部10の裏側の面に形成された窪み内で最も深くなる位置に、ハブ内側からハブ外側へ通じる穴18を有する。穴18は、
図2及び
図6に示すように、第4側部15Dに沿った円弧状のスリットとして形成されている。また、この穴18は、第4側部15Dの長さ方向の両端部分を除いた中間領域にだけ形成されている。
【0030】
本実施形態では、第4側部15Dが形成する円弧の角度は60度に設定され、穴18が形成する円弧の角度は25度に設定されているので、穴18の全長は角部Cの全長よりも短い。また、本実施形態では、貫通穴14を中心として30度の領域に一つの凸部15を設け、6つの凸部15を円形部の全周の半分である180度の領域内に配置している。
【0031】
このように形成される各凸部15は、
図2及び
図3に示すように貫通穴14を中心として、円形部10の外周部11に等角度の間隔で配置されている。
【0032】
これらの各凸部15は、外周部12の段差部13に隣接した位置から外周部12の外周縁寄りの位置まで、例えば円形部10の半径方向を基準とすると、本実施形態では外周部の領域の6割〜9割程度を占めるように寸法が設定される。
【0033】
このように構成されたハブ1は、実施例の詳細を後述するが、モーターのシャフトに取り付けられて羽根などと共に回転する部材として利用される。
【0034】
利用時に、例えば、
図5(A)及び(B)中のUpを鉛直上方としてハブ1の筒部20の
他方の開口、つまり開放した口部21を上に向けた姿勢で利用される。この使用例において、各凸部15が、ハブ内側からハブ外側へ向けて突出しているため、この凸部15の内側の領域が油や水などの液体を溜める部分(以下、溜め部と呼ぶ)として利用できる。
【0035】
また、各凸部15は、貫通穴側から円形部10の周縁側へ向けて、幅が次第に広がるように形成されているので、多くの油を溜め、かつ、それらを穴18からハブ1の外へ排出することができる。
【0036】
各凸部15の深さが、貫通穴側から円形部10の周縁側へ向けて次第に深くなるように形成されているので、油や水などの液体をシャフト側から離すことができる。さらに、窪み16としての各凸部15において、最も深くなる部分に穴18を備えているため、溜め部に油や液体などの滞留を防止できる。
【0037】
このように本実施形態に係るハブ1によれば、水や油等の液体がハブ内に浸入しても、水や油等の液体を効果的に排出することができる。
【0038】
さらに、シャフトと連結する中央部11が、排出機能を有する外周部12と高さを違えて、
図5(A)及び(B)に示す例では、中央部11が外出部12よりも高い位置に設定されるため、油や水などの液体がハブ内の底、つまり窪み16としての凸部15から離れているため、シャフトへ付着し、それが固化した影響の抑制を期待できる。
【0039】
このように本実施形態に係るハブ1によれば、水や油等の液体がハブ内に浸入しても、モーターのシャフトへの接触を効果的に抑制できる。
【0040】
また、各凸部15の最も突出した部位に穴18を設けたので、油や水などの液体が穴18からハブ内へ浸入することも抑制できる。
【0041】
さらに、各凸部において、各凸部の一部にだけ、油や水などの液体を抜くための穴部18を設けたので、ハブの剛性を確保しつつ、効果的に排出機能を確保することができる。
【0042】
[第1実施例]
図7(A)は本発明の第1実施例のプロペラ送風機100の斜視図、
図7(B)はプロペラ送風機100の分解斜視図である。
図8(A)はプロペラ送風機100の正面図、
図8(B)はプロペラ送風機100の側面図、
図8(C)はプロペラ送風機100の背面図である。
図9は
図8(A)のd−d線に沿ったプロペラ送風機100の断面図である。
【0043】
プロペラ送風機100は、モーター50と、モーター50のシャフト53に固定される第1の羽根車110と、を備えている。
【0044】
モーター50は、
図9に示すように、ステーター51と、ローター52と、ローター52と共に回転するシャフト53と、シャフト53の両端部を回転自在に支持する第1の軸受54及び第2の軸受55と、これらを収容するケース56と、を備えている。
【0045】
ケース56は、ベース561と、このベース561に被さるカバー562とを備えている。ベース561とカバー562とで囲われた領域内、つまりケース内で、ステーター51と、第1の軸受54及び第2の軸受55と、が固定されている。このステーター51に巻線が設けられ、これらは樹脂で封止されていてもよい。このステーター51の内側の領域で、ローター52が回転自在に配置される。ローター52は中心にシャフト53を通した状態でシャフト53に固定されている。シャフト53はローター52の外部へ現れた部分を第1の軸受54及び第2の軸受55によって支持されている。
【0046】
カバー562は、
図7(B)に示すように、ベース561に対向して設けられステーター51やローター52の上方を覆う円形の天井部562Aと、ステーター51の側面を覆う筒状の側部562Bとで、カップ状に形成されている。
【0047】
天井部562Aは、中央に貫通穴562Cを設けている。カバー562がステーター51などに被さった状態で、シャフト53の先端部がカバー562の外へ突出する。
【0048】
また、天井部562Aの表面には、突出部562Dが、カバー562の貫通穴562Cを中心とした円形状に形成されている。
【0049】
第1の羽根車110は、ハブ1と、ハブ1の筒部20に取り付けられた複数の羽根120と、を備えている。
【0050】
ハブ1は、モーター50の貫通穴562Cから突出したシャフト53の先端部に固定される。
図9に示すように、ハブ1と第2の軸受55との間にはワッシャー57と軸受カラー58とが配置される。ハブ1は、モーター50の貫通穴562Cからモーター50のケース外に一部が突出した軸受カラー58(
図7(B))に載せた状態で、ハブ1の貫通穴14から突き出たシャフト53の先端にカラー59とスプリングワッシャー60を介してナット61で締結して、モーター50に固定される。
図7及び
図9中の符号70は、巻き線に接続したリード線であり、
図8はこのリード線70を省略してモーター50を表している。
【0051】
このように構成されたプロペラ送風機100では、本実施形態のハブ1を備えているので、ハブ1の剛性を確保しつつ、ハブ内の油や水などの液体を送風機の外へ排出することができる。
【0052】
また、ハブ1をモーター50に取り付けた状態で、モーター50の天井部562Aの突出部562Dが、ハブ1の円形部10と共に、ラビリンス80を構成する。ハブ1をモーター50に取り付けた状態で、中央部11と外周部12の境界を成す段差部13が突出部562Dよりもシャフト53に近い位置に配置されて、ハブ1の円形部10とモーター50の天井部562Aとの間の
空間Vが、
図9に示すようにシャフト53に近づくにつれて複雑な通路を成すラビリンス80として構成される。このラビリンス80によっても、シャフト53への油や水などの液体の付着を抑制できる。
【0053】
[第2実施例]
図10は本発明の第2実施例のラジアル送風機200を示す斜視図である。
図11で(A)はラジアル送風機200の正面図、(B)はラジアル送風機200の側面図、(C)はラジアル送風機200の背面図である。
図12は
図11(A)のe−e線に沿ったラジアル送風機200の断面図である。
【0054】
ラジアル送風機200は、モーター50と、モーター50のシャフト53に固定される第2の羽根車210と、を備えている。モーター50の構成は、第1実施例と同じであるため、説明を省略する。なお、
図10及び
図11ではリード線70を省略してモーター50を表している。
【0055】
第2の羽根車210は、ハブ1と、このハブ1に取り付けられる羽根部材220と、を備えている。
【0056】
羽根部材220は、第1の環状部材230と、この第1の環状部材230から離間して設けられる第2の環状部材240と、第1の環状部材230と第2の環状部材240との間に設けられる複数の羽根250と、を備えている。
【0057】
第1の環状部材230は、
図12に示すように、円筒状の取付部231と、この取付部231の一方の開口縁から取付部231の軸方向(
図12のシャフト53の回転軸方向)と直交する方向に広がった環状の羽根支持部232と、から構成されている。
【0058】
羽根支持部232には、羽根250を固定する際に利用する開口が複数設けられている。第2の環状部材240は、
図11(B)に示すように第1の環状部材230の外形の寸法と同じに形成されているが、内周縁(
図12)を構成する円は羽根支持部232の内周縁の半径よりも大きく設定されている。
【0059】
第2の環状部材240は、
図12に示すように内周縁から外周縁までを回転軸側に丸みを有する曲面として形成されている。第2の環状部材240には、羽根250を取付ける際に利用する開口が複数設けられている。
【0060】
羽根250は、例えば長方形状の板片として構成され、上縁部に第1の環状部材230の開口に差し込んで折り曲げる爪251と、下縁部に第2の環状部材240の開口に差し込んで折り曲げる爪252とを備えている。
図10と
図11では爪251,252を曲げた状態を示している。
【0061】
羽根車210では、
図12に示すように、第1の環状部材230の取付部231がハブ1の筒部20に固定される。固定方法としては、例えば、取付部231を構成する円筒形の内部にハブ1の筒部20を圧入して、また接着剤で取付部231の円筒面とハブ1の筒部20の外周面とを接合することで、羽根部材220がハブ1に固定される。
【0062】
羽根車210を構成するハブ1、第1の環状部材230、第2の環状部材240、複数の羽根250は例えばアルミニウム合金,冷間圧延鋼板で構成されている。
【0063】
このように構成されたラジアル送風機200では、本実施形態のハブ1を備えているので、ハブ1の剛性を確保しつつ、ハブ内の油や水などの液体を送風機の外へ排出することができる。
【0064】
[使用方法]
上記のように構成された本実施例のプロペラ送風機100、ラジアル送風機200の使用方法及び作用について説明する。
モーター50のベース561を上側に、ハブ1の円形部10を下側にした姿勢で、例えば工作
機械の主軸冷却用に取付けられる。工作
機械への取り付けの際、ベース561のフランジを工作
機械にねじなどで固定する。
【0065】
送風機の使用時に、例えば工作
機械からのミスト油が羽根車110,210に付着すると、羽根車110,210の回転による遠心力で油は送風機の外側へ飛散する。また、工作
機械からの油がベース561やモーター50のケース56の側面を辿って、ハブ内に入った場合、溜め部で油を溜め、送風機の回転による遠心力で溜め部の底に形成された穴18から油を排出させることができる。なお、送風機の停止時にも、穴18から油を排出できる。このように油がモーター50内へ入ることを防ぐことで、モーター50を長く使用することが期待できる。
【0066】
以上説明したが、本発明の送風機の用途は、工作
機械のモーターの冷却用に限定されるものではない。また、羽根車やその構成部品は樹脂で構成されてもよい。使用方法も、モーターのシャフトを鉛直上方に沿わせた姿勢や、ハブ1の口部21を鉛直上方に向けた姿勢に限定されるものではない。
【0067】
送風機の構成も、上記説明の限定されるものではなく、例えば、プロペラ送風機の周りに枠や、案内板を設けた軸流送風機として構成されてもよい。
【0068】
凸部も、円形部に設ける数、形、大きさ、配置位置を図示例に限定されるものではない。例えば、天井部の輪郭を四角形、三角形などに形成したり、傾斜する角度を図示例以外の角度にしたり、面S2と平行にしたり、複数の凸部の配置間隔を等角度にせずに配置したり、他の形態でも良い。第1側部15A,第4側部15D及び穴18が形成する円弧の長さや角度も、上記説明に限定されるものではない。
【0069】
凸部が設けられる円形部は段差部を備えずに構成されてもよい。羽根120や羽根部材220などの部材の寸法は図示例に限定されるものではなく、羽根の大きさ、形、数、位置、向き等も限定されるものではない。
【0070】
ハブの固定方法も上記説明に限定されるものではなく、ハブをモーターに固定するナットに代えて、例えばねじ穴を側面に備えた筒状のボスとねじとを利用してもよい。ボスはハブの貫通穴に固定される。モーターのシャフトをボスに通した状態でねじをボスに取り付け、ボス内に突出したねじの先端部でシャフトを固定する。