(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0018】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、
図1〜
図3に示すように、流体の流路となる複数のセル2を区画形成する隔壁1を備えたハニカム構造体100である。ここで、
図1は、本発明の複合ハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。この隔壁1は、多孔質材料からなるものである。即ち、隔壁1には、複数の細孔が形成されている。
【0019】
図2は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の一方の端面側を示す平面図である。
図3は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
図1〜
図3においては、一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する外周壁3とを有する筒状のハニカム構造体100の例を示す。
【0020】
本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の平均細孔径の値をx(μm)、隔壁の気孔率の値をy(%)とした場合に、xとyとの関係が、y≦−8.33x+86.66を満たす。そして、上記隔壁の平均細孔径xは、
1.1≦x≦1.7の範囲であり、上記隔壁の気孔率yは、
47.6≦y≦
68.4の範囲である。以下、「y≦−8.33x+86.66」を、「式(1)」という。
【0021】
このように構成された本実施形態のハニカム構造体は、耐熱衝撃性に優れたものである。特に、本実施形態のハニカム構造体によれば、ライトオフ性能、触媒担持性能、A軸圧縮強度の各性能のうちの少なくともいずれか1つを、従来のハニカム構造体と比較して著しく低下させることなく、耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0022】
なお、本実施形態のハニカム構造体においては、「隔壁の平均細孔径の値」は、水銀圧入法により測定した値である。また、「隔壁の気孔率の値」も、水銀圧入法により測定した値である。隔壁の平均細孔径及び気孔率は、水銀ポロシメーター(例えば、Micromeritics社製、商品名:Autopore 9500)で測定することができる。
【0023】
上記したxとyとの関係が、y>−8.33x+86.66であると、触媒担持後の耐熱衝撃性、及びA軸圧縮強度のいずれかの性能が低いものとなる。
【0024】
また、xとyとの関係が、上記式(1)を満たす場合であっても、隔壁の平均細孔径x及び隔壁の気孔率yが、上述した数値範囲以外であると、ライトオフ性能、触媒担持性能、及び強度のうちのいずれかの性能が低下してしまうことがある。
【0025】
本実施形態のハニカム構造体においては、
47.6≦y≦
68.4かつ
1.1≦x≦1.7を満たす。即ち、隔壁の気孔率yが、
47.6≦y≦
68.4の範囲であり、且つ隔壁の平均細孔径xが、
1.1≦x≦1.7の範囲である。
【0026】
本実施形態のハニカム構造体においては、A軸圧縮強度が5.0MPa以上であることが好ましい。このように構成することによって、耐熱衝撃性に優れるとともに、強度にも優れたものとなる。なお、本実施形態のハニカム構造体においては、A軸圧縮強度が7.0MPa以上であることが更に好ましい。
【0027】
A軸圧縮強度とは、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されている圧縮強度(MPa)のことである。具体的には、ハニカム構造体に、その流路方向に圧縮荷重を負荷したときの破壊強度であり、ハニカム構造体が破壊されるときの圧力を「A軸圧縮強度」とする。また、本明細書において、単に「ハニカム構造体の強度」というときは、「ハニカム構造体のA軸圧縮強度」のことを意味する。
【0028】
また、本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁が、コージェライトからなる。このように構成することによって、A軸圧縮強度が高く、且つ耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体とすることができる。なお、隔壁を構成するコージェライトには、通常含まれる不純物が含まれていてもよい。また、隔壁が、炭化珪素、アルミニウムチタネート、ゼオライト、及びムライトからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスを含むものの場合において、本実施形態の構成を採用することにより、A軸圧縮強度が高く、且つ耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体とすることができる。
【0029】
本実施形態のハニカム構造体における隔壁の厚さについて
は、0.064〜0.165mmであ
り、0.076〜0.114mmであることが特に好ましい。このように構成することによって、強度が高く、且つ圧力損失が低減されたハニカム構造体とすることができる。
【0030】
「隔壁の厚さ」とは、ハニカム構造体をセルの延びる方向に垂直に切断した断面における、隣接する二つのセルを区画する壁(隔壁)の厚さのことを意味する。「隔壁の厚さ」を測定する方法としては、例えば、画像解析装置(ニコン社製、商品名「NEXIV、VMR−1515」)によって測定する方法を挙げることができる。
【0031】
本実施形態のハニカム構造体の形状は、特に限定されないが、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の柱形状、等が好ましい。
図1〜
図3においては、ハニカム構造体100が円筒形状の場合の例を示す。本明細書においては、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、及び多角形の柱形状を称して「筒状」ということがある。また、
図1〜
図3に示すハニカム構造体100は、外周壁3を有するものであるが、外周壁3を有していないものであってもよい。外周壁3は、ハニカム構造体100を作製する過程において、ハニカム成形体を押出成形する際に、隔壁1とともに形成されたものであってもよい。また、押出成形時には外周壁3を形成しなくともよい。例えば、外周壁3は、セラミックス材料をハニカム構造体100の外周に塗工して形成することもできる。
【0032】
本実施形態のハニカム構造体において、セル形状(ハニカム構造体の流路方向(セルが延びる方向)に直交する断面におけるセル形状)としては、特に制限はなく、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、或いはこれらの組合せを挙げることができる。四角形の中でも、正方形、長方形が好ましい。
【0033】
本実施形態のハニカム構造体においては、セル密度
が46〜93個/cm
2であ
る。このように構成することによって、ハニカム構造体の強度を維持しつつ、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0034】
本実施形態のハニカム構造体においては、耐熱衝撃性試験により測定される耐熱衝撃温度が、650℃以上であることが好ましく、700℃以上であることが更に好ましく、750℃以上であることが特に好ましい。なお、本実施形態のハニカム構造体の耐熱衝撃性試験により測定される耐熱衝撃温度の上限値については特に限定されないが、上記式(1)を満たし、かつ実用的な形状・サイズであるものについて、実質的には900℃を超えることは稀である。このように、本実施形態のハニカム構造体は、上記式(1)を満たすことから、650℃以上という優れた耐熱衝撃温度を実現することができる。
【0035】
耐熱衝撃温度は、耐熱衝撃性の評価の指標となる温度であり、以下の方法によって測定することができる。室温よりも所定値(例えば700℃)高い温度に保たれた電気炉の中に、室温のハニカム構造体を入れ、JASO規格M−505−87に規定された方法にて耐熱衝撃性試験を実施する。各水準毎に3個のハニカム構造体を試験に供する。判定基準としては、3個のハニカム構造体の全てについて、クラックの発生及びその他異常がなく、かつ打音検査で濁音が聞こえない場合を、耐熱衝撃温度が所定値以上とする。また、1個以上のハニカム構造体について、クラックの発生があった場合、或いは、打音検査で濁音が聞こえた場合を、耐熱衝撃温度が所定値未満とする。なお、電気炉の温度を変更することにより、測定する耐熱衝撃温度を選択することができる。
【0036】
本実施形態のハニカム構造体を製造する際には、隔壁の平均細孔径x(μm)と隔壁の気孔率y(%)との関係が、上記式(1)を満たすように、例えば、ハニカム構造体を製造する原料の選定を行うことが好ましい。例えば、ハニカム構造体を製造する原料の粒子径を調節することにより、隔壁の平均細孔径x(μm)と隔壁の気孔率y(%)との関係が、上記式(1)を満たすようなハニカム構造体を製造することができる。Sを破壊強度、νをポアソン比、Eをヤング率、αを熱膨張係数とした場合、激しい急冷による熱衝撃破壊抵抗係数Rは、「式(2):R=S(1−ν)/Eα」で表されると報告されている。上記式(2)は、「社団法人 日本セラミックス協会編 “セラミックスの機械的性質”技報堂(1979)」に記載されている。上記式(2)を鑑みるに、つまり高い耐熱衝撃温度を得るには、触媒担持前と触媒担持後において共に、破壊強度を大きく、且つ、ポアソン比、ヤング率、及び熱膨張係数を小さくすることが必要である。破壊強度を大きく、且つ、ポアソン比、及びヤング率が小さなハニカム構造体とするためには、平均細孔径が小さく且つ気孔率を高くする必要がある。また、触媒担持後の熱膨張係数を小さくするには、以下の(a)〜(c)の要件を満足することが重要である。(a)触媒担持前のハニカム構造体の熱膨張係数を小さく保つ。(b)熱膨張係数が大きな触媒層とハニカム構造体の接着強度を抑える様、気孔径を小さく且つ気孔率を低くする。(c)ハニカム構造体(ハニカム基材)表面に露出している細孔の大きさ、当該細孔の量、及び隔壁内部の細孔との連通性を抑える。本発明では、ハニカム構造体を製造する原料の配合、原料の粒度、また、焼成時における焼成条件などを調整することで、上述した気孔率y(%)及び平均細孔径x(μm)だけでなく、上記知見によって、以下のようなハニカム構造体を得ることができる。即ち、本実施形態のハニカム構造体においては、上記知見により、細孔連通性、コージェライトの結晶成長、マイクロクラック量、ハニカム基材表面に露出している細孔の大きさ、当該細孔の量、隔壁内部の細孔との連通性を制御することが好ましい。これにより、触媒担持性、ライトオフ性、耐熱衝撃性に優れ、実用可能なキャニング強度を有したハニカム構造体を得ることができる。
【0037】
本実施形態のハニカム構造体は、ハニカム構造体のセルのいずれか一方の開口部を封止するように配置された目封止部を備えたものであってもよい。このように構成されたハニカム構造体は、排ガス中に含まれる粒子状物質を除去するためのフィルタとしても用いることができる。
【0038】
また、本実施形態のハニカム構造体は、隔壁上や隔壁の細孔内に触媒を担持してハニカム触媒体とし、内燃機関等から排出される排ガスの浄化に利用することができる。即ち、本実施形態のハニカム構造体は、触媒を担持するための触媒担体として好適に用いられる。
【0039】
触媒の種類については特に制限はないが、γアルミナと貴金属、希土類酸化物からなる三元触媒を挙げることができる。上記貴金属としては、白金(Pt)、ロジウム(Rh)等を挙げることができる。上記希土類としては、セリア、ジルコニア等を挙げることができる。
【0040】
隔壁に担持する触媒の量については特に制限はない。例えば、触媒の担持量は、10〜300g/Lであることが好ましく、50〜250g/Lであることが更に好ましい。上記「担持量(g/L)」は、触媒担体としてのハニカム構造体の容積1L(1リットル)当たりに担持される触媒の質量(g)のことである。
【0041】
触媒が担持されたハニカム触媒体は、金属製の缶体内に、保持材(マット)を介して保持した状態で、排ガス処理装置として用いられる。金属製の缶体内に収納されたハニカム触媒体(即ち、排ガス処理装置)が、自動車等の排気系(排気路)に搭載される。
【0042】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本実施形態のハニカム構造体を製造する方法(ハニカム構造体の製造方法)の一例について説明する。本実施形態のハニカム構造体の製造方法としては、坏土調製工程と、成形工程と、焼成工程と、を備えた製造方法を挙げることができる。坏土調製工程は、セラミックス原料を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る工程である。成形工程は、坏土調製工程にて得られた坏土を、ハニカム形状に成形してハニカム成形体を得る工程である。焼成工程は、成形工程にて得られたハニカム成形体を乾燥し、焼成して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたハニカム構造体を得る工程である。
【0043】
上記坏土調製工程においては、得られるハニカム構造体の隔壁の平均細孔径xと気孔率yが、上記式(1)を満たすように、成形原料として用いられるセラミックス原料の粒子径や配合処方を調製することが好ましい。また、成形原料に添加する造孔材の粒子径を調製してもよい。
【0044】
例えば、セラミックス原料の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、6μm以下であることが更に好ましい。セラミックス原料の平均粒子径とは、セラミックス原料の粒子径の分布におけるメジアン径(d50)のことである。
【0045】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について、各製造工程毎に更に詳細に説明する。
【0046】
(2−1)坏土調製工程:
まず、本実施形態のハニカム構造体の製造する際には、セラミックス原料を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る(坏土調製工程)。
【0047】
成形原料に含有されるセラミックス原料としては、コージェライト化原料が好ましい。コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。また、成形原料に含有されるセラミックス原料を、コージェライト、炭化珪素、アルミニウムチタネート、ゼオライト、及びムライトからなる群から選択される少なくとも1種とすることもできる。
【0048】
また、成形原料は、上記セラミックス原料に、造孔材、分散媒、有機バインダー、無機バインダー、界面活性剤等を更に混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0049】
造孔材としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、でんぷん、カーボン、発泡樹脂、吸水性樹脂、又はこれらを組み合わせたものを使用することが好ましい。また、造孔材の平均粒子径は、0.5〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることが更に好ましい。造孔材の平均粒子径とは、造孔材を構成する粒子の粒子径の分布におけるメジアン径(d50)のことである。また、造孔材の添加量としては、主原料系(例えば、成形原料に含有されるセラミックス原料)100質量部に対して、0.1〜55質量部であることが好ましく、0.5〜50質量部であることが更に好ましく、1〜40質量部であることが特に好ましい。
【0050】
分散媒としては、水を用いることができる。分散媒の添加量は、セラミックス原料100質量部に対して、30〜150質量部であることが好ましい。
【0051】
有機バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又はこれらを組み合わせたものとすることが好ましい。また、有機バインダーの添加量は、セラミックス原料100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。
【0052】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸(例えば、ラウリン酸カリ石鹸)、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の添加量は、セラミックス原料100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましい。
【0053】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0054】
(2−2)成形工程:
次に、得られた坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を得る(成形工程)。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0055】
ハニカム成形体の形状は、特に限定されず、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の柱形状、等が好ましい。
【0056】
(2−3)乾燥工程:
次に、得られたハニカム成形体を乾燥する(乾燥工程)。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組み合わせて行うことが好ましい。
【0057】
(2−4)焼成工程:
次に、乾燥したハニカム成形体を、焼成して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたハニカム構造体を得る(焼成工程)。このようにして、隔壁中に、従来のハニカム構造体に比して大きな気孔が形成されたハニカム構造体を良好に製造することができる。
【0058】
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われるものである。焼成条件(温度、時間、雰囲気)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1350〜1450℃が好ましく、1380〜1440℃が更に好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、3〜10時間が好ましい。なお、焼成を行う際には、1000℃から最高温度−10℃における昇温速度を、10〜300℃/時間とし、最高温度−10℃から最高温度までの昇温速度を、1〜50℃/時間とすることが好ましい。1000℃から最高温度−10℃、及び最高温度−10℃から最高温度までの各昇温速度を、上記数値範囲とすることにより、焼成での生産性を維持しながらハニカム構造体の平均細孔径を任意に制御することができ、且つ、過昇温による焼成での溶け不良の発生を抑制することができる。仮焼、本焼成を行う装置は、特に限定されないが、電気炉、ガス炉等を用いることができる。なお、「最高温度−10℃」とは、焼成時における最高温度よりも10℃低い温度のことである。
【実施例】
【0059】
以下、本発明のハニカム構造体を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0060】
(
参考例1)
参考例1においては、セラミックス原料として、コージェライト化原料を用い、このコージェライト化原料に、造孔材としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を加えて坏土を調製し、得られた坏土を押出成形してハニカム成形体を得、得られたハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を作製した。
【0061】
具体的には、タルク、カオリン、焼カオリン、水酸化アルミニウム、ベーマイト、及び溶融シリカを混合してコージェライト化原料を調製した。表1に、
参考例1におけるコージェライト化原料の配合処方を示す。
参考例1におけるコージェライト化原料の配合処方は、「バッチNo.2」である。また、表2に、コージェライト化原料を構成する各原料の平均粒子径を示す。各原料の平均粒子径とは、各原料の粒子径の分布におけるメジアン径(d50)のことである。
【0062】
次いで、このコージェライト化原料に、分散媒、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を加えて混合、混練して可塑性の成形原料を得た。得られた可塑性の成形原料を、真空土練機でシリンダー状の坏土を成形し、この坏土を、押出し成形機に投入してハニカム状に成形することにより、ハニカム成形体を得た。
【0063】
得られえたハニカム成形体の寸法は、ハニカム成形体を焼成した後の焼成体(即ち、ハニカム構造体)において、端面の直径が93mmであり、セルの延びる方向の長さが90mmであった。また、隔壁の厚は、114μm、セル密度は62個/cm
2であった。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
次いで、得られた成形体を、乾燥した後、表3に示す焼成条件Aにより焼成してハニカム構造体(
参考例1)を作製した。表3に焼成条件を示す。
【0067】
【表3】
【0068】
得られたハニカム構造体(
参考例1)の、気孔率(%)、平均細孔径(μm)、及び熱膨張係数(10
−6/℃)を測定した。気孔率、及び平均細孔径は、水銀圧入法により測定した値である。
【0069】
得られたハニカム構造体(
参考例1)について、A軸圧縮強度(MPa)、触媒担時性、運転開始200秒後の排ガス中HC量(−)、触媒担持前耐熱衝撃性、触媒担持後耐熱衝撃性の評価を、下記の方法により行った。また、運転開始200秒後の排ガス中HC量(−)の評価結果より、ライトオフの評価を行った。表4〜表7に、A軸圧縮強度、触媒担時性、運転開始200秒後の排ガス中HC量(−)、ライトオフ、触媒担持前耐熱衝撃性、及び触媒担持後耐熱衝撃性の評価結果を示す。また、表8〜表10に、後述する比較例1〜36の、A軸圧縮強度、触媒担時性、運転開始200秒後の排ガス中HC量(−)、ライトオフ、触媒担持前耐熱衝撃性、及び触媒担持後耐熱衝撃性の評価結果を示す。
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
[A軸圧縮強度]
A軸圧縮強度とは、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されている圧縮強度(MPa)のことである。具体的には、ハニカム構造体に、その流路方向に圧縮荷重を負荷したときの破壊強度であり、ハニカム構造体が破壊されるときの圧力を「A軸圧縮強度」とする。隔壁の変形の影響を受け難いので、材料強度を代表する。
【0078】
[触媒担時性]
ハニカム構造体に、触媒成分を含む触媒スラリーをコートして、触媒担持性能の評価を行った。具体的には、まず、ハニカム構造体に、三元触媒(白金(Pt)とロジウム(Rh)との割合(Pt:Rh)が4:1となるように調整された白金族金属を担持したγアルミナを含む触媒)を、水、及び分散剤を用いてスラリー化した。次に、得られた触媒スラリーを用いて、ハニカム構造体に触媒を担持して触媒担持したハニカム構造体を得た。触媒の担持は、以下の方法によって行った。まず、触媒スラリー中にハニカム構造体を浸漬して、ハニカム構造体に触媒スラリーを付着させる。次に、ハニカム構造体に付着した余分な触媒スラリーを、圧縮空気によって吹き飛ばす。次に、触媒スラリーを付着させたハニカム構造体を加熱乾燥する。上記触媒スラリーの付着、圧縮空気による吹き飛ばし、加熱乾燥を、乾燥後の触媒がハニカム構造体に100g/Lコートされるまで繰り返し実施することで、触媒担持したハニカム構造体を得た。用いた触媒の粒径は5μmであった。その後、100℃から900℃までの加熱と、900℃から100℃までの冷却とを1サイクルとする加熱冷却を、周波数200Hz、加速度20Gの振動を与えながら100サイクル実施する加熱加振試験を実施した。試験後の重量減が担時した触媒量の1%未満の場合を「合格(○)」とし、1%以上の場合を「不合格(×)」とした。
【0079】
[運転開始200秒後の排ガス中HC量]
触媒を担持したハニカム構造体を、排気量2リッターのガソリンエンジン搭載車両の排気系に搭載した。排ガス規制モード(JC−08)走行時に、排気管と接続したパイプから、排ガスをサンプリングし、排ガス中のHC量をモーダルマス法で測定し、運転開始200秒後のHC濃度を得た。HC量の測定は、JC−08の規定に従って行った。後述する比較例1のハニカム構造体を用いた試験におけるHC量を「1.00」とした場合の、各実施例
、参考例及び比較例のハニカム構造体のHC量の比率を求めた。このHC量の比率を、「運転開始200秒後の排ガス中HC量」とした。
【0080】
[ライトオフ]
ライトオフは、上述した「運転開始200秒後の排ガス中HC量」において、HC量が0.99未満の場合を「合格(○)」とし、HC量が0.99以上の場合を「不合格(×)」とした。また、表8、及び表10中の、*1は、材料強度(A軸圧縮強度)が小さくキャニング不可だったことを示す。
【0081】
[触媒担持前耐熱衝撃性]
触媒担持前の耐熱衝撃性試験は、室温よりも700℃高い温度に保たれた電気炉の中に、触媒担持前の室温のハニカム構造体を入れ、JASO規格M−505−87に規定された方法にて耐熱衝撃性試験を実施した。各水準毎に3個のハニカム構造体を試験に供した。判定基準としては、3個のハニカム構造体の全てについて、クラックの発生及びその他異常がなく、かつ打音検査で濁音が聞こえない場合を合格とし、それ以外の場合を、不合格とした。即ち、1個以上のハニカム構造体について、クラックの発生があった場合、或いは、打音検査で濁音が聞こえた場合を不合格とした。
【0082】
[触媒担持後耐熱衝撃性]
触媒担持後のハニカム構造体を、試験対象のハニカム構造体として用い、室温よりも550℃高い温度に保たれた電気炉の中に入れた以外は、上述した触媒担持前耐熱衝撃性の試験と同様に実施した。
【0083】
(参考例2
〜5,7,8,11〜27,31〜49、及び実施
例6,9,10,28〜30)
コージェライト化原料の配合処方(バッチNo.)を表1、表2及び表4〜7に示すように変更し、且つ焼成条件を表3及び表4〜7に示すように変更した以外は、参考例1と同様にして、参考例2
〜5,7,8,11〜27,31〜49、及び実施
例6,9,10,28〜30のハニカム構造体を作製した。
【0084】
(比較例1〜36)
コージェライト化原料の配合処方(バッチNo.)を表1、表2及び表8〜10に示すように変更し、且つ焼成条件を表3及び表8〜10に示すように変更した以外は、
参考例1と同様にして、比較例1〜36のハニカム構造体を作製した。
【0085】
参考例2
〜5,7,8,11〜27,31〜49、実施
例6,9,10,28〜30、及び比較例1〜36のハニカム構造体について、参考例1と同様の方法で、A軸圧縮強度、触媒担時性、運転開始200秒後の排ガス中HC量(−)、及びライトオフの評価を行った。結果を、表4〜表10に示す。
【0086】
また、実施例
、参考例及び比較例のハニカム構造体の気孔率(%)と平均細孔径(μm)との関係を、
図4に示す。
図4は、実施例
、参考例及び比較例のハニカム構造体の気孔率(%)と平均細孔径(μm)との関係を示すグラフである。
図4に示すグラフにおいて、横軸は平均細孔径(μm)を示し、縦軸は気孔率(%)を示す。
【0087】
(結果)
表4〜表7に示すように、参考例1
〜5,7,8,11〜27,31〜49、実施
例6,9,10,28〜30のハニカム構造体は、触媒担持性能に優れ、また、運転開始200秒後の排ガス中HC量も少ないものであった。また、ライトオフも良好な結果を示すものであった。また、参考例1
〜5,7,8,11〜27,31〜49、実施
例6,9,10,28〜30のハニカム構造体は、触媒担体として十分なA軸圧縮強度を示すものであった。
【0088】
参考例1
〜5,7,8,11〜27,31〜49、実施
例6,9,10,28〜30のハニカム構造体は、その熱膨張係数を1.0×10
−6/℃以下に維持したまま、上述した各性能を同時に満足することができるものであった。
【0089】
比較例1〜36のハニカム構造体においては、図
4に示すように、本発明における気孔率(%)と平均細孔径(μm)との関係を満たしていないため、A軸圧縮強度、触媒担持性能、及びライトオフのいずれかの性能が低いものとなった。換言すれば、耐熱衝撃性の向上のために、上記性能のいずれかが犠牲になっており、耐熱衝撃性と上記性能を同時に満足することができなかった。