特許第6182301号(P6182301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182301
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ワイピング装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 9/16 20060101AFI20170807BHJP
   B41F 35/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B41F9/16
   B41F35/02
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-175732(P2012-175732)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2013-56531(P2013-56531A)
(43)【公開日】2013年3月28日
【審査請求日】2015年7月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-177467(P2011-177467)
(32)【優先日】2011年8月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 周洋
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−067296(JP,A)
【文献】 特開2007−021973(JP,A)
【文献】 特開2000−202984(JP,A)
【文献】 米国特許第4009657(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 9/00 − 9/18
B41F 35/00 − 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持された凹版胴と、
前記凹版胴の周面に付着した余剰インキを除去する胴洗浄装置と、
前記胴洗浄装置に洗浄用のワイピング液を供給するワイピング液供給装置と
を備え、
前記ワイピング液供給装置は、
前記胴洗浄装置から排出されるワイピング廃液を貯留する廃液タンクと、
清浄なワイピング液を貯留する新液タンクと、
前記新液タンクから前記胴洗浄装置へ清浄なワイピング液を供給する第1のポンプと、 前記廃液タンクに貯留されたワイピング廃液が沈殿物と上澄み液とに分離した後の当該上澄み液を前記胴洗浄装置へ供給する第2のポンプと
を備え
前記上澄み液は、前記胴洗浄装置における粗除去が行われる部位に供給され、
前記清浄なワイピング液は、前記胴洗浄装置における仕上除去が行われる部位に供給されることを特徴とするワイピング装置。
【請求項2】
前記廃液タンク内のワイピング廃液の沈殿物を清浄化処理することによりワイピング液を再生する廃液処理装置と、
前記廃液処理装置により再生されたワイピング液を前記新液タンクへ戻す第3のポンプと
を備えることを特徴とする請求項1に記載のワイピング装置。
【請求項3】
前記胴洗浄装置は、
前記凹版胴と対接して当該凹版胴の周面に付着したインキの余剰インキをワイピングするワイピングローラと、
前記ワイピングローラの周面上の余剰インキを除去するインキ除去装置と、
余剰インキを除去した際に生じるワイピング廃液を一時的に貯留するワイピングタンクと
を備えることを特徴とする請求項1に記載のワイピング装置。
【請求項4】
前記インキ除去装置は、
前記ワイピングローラの回転方向上流側に設けられて、前記ワイピングローラの周面に当接する第1のワイピングパッドと、
前記第1のワイピングパッドよりも前記ワイピングローラの回転方向下流側に設けられて、前記ワイピングローラの周面に当接する第2のワイピングパッドと
を備え、
前記新液タンク内の清浄なワイピング液は、前記第1のポンプを介して前記第2のワイピングパッドおよび前記第2のワイピングパッドの近傍の前記ワイピングローラの周面の少なくとも一方に供給され、
前記廃液タンク内の上澄み液は、前記第2のポンプを介して前記第1のワイピングパッドおよび前記第1のワイピングパッドの近傍の前記ワイピングローラの周面の少なくとも一方に供給される
ことを特徴とする請求項3に記載のワイピング装置。
【請求項5】
前記第1のワイピングパッドに指向して取り付けられ、前記第2のポンプを介して前記廃液タンク内の上澄み液を噴射する第1の噴射ノズルと、
前記第2のワイピングパッドおよび前記第2のワイピングパッド近傍の前記ワイピングローラの周面の少なくとも一方に指向して取り付けられ、前記第1のポンプを介して前記新液タンク内の清浄なワイピング液を噴射する第2の噴射ノズルと、
前記第1のワイピングパッドよりも前記ワイピングローラの回転方向上流側の周面に指向して取り付けられ、前記第2のポンプを介して前記廃液タンク内の上澄み液を噴射する第3の噴射ノズルと
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のワイピング装置。
【請求項6】
前記胴洗浄装置は、
前記凹版胴に供給されたインキの余剰インキを除去するワイピングローラと、
前記ワイピングローラと接触して当該ワイピングローラ上の前記余剰インキを除去する第1のワイピングパッドと、
前記ワイピングローラにおける前記第1のワイピングパッドより前記ワイピングローラの回転方向下流側に設けられ、前記ワイピングローラと接触して当該ワイピングローラ上の前記余剰インキを除去する第2のワイピングパッドと、
前記第1のワイピングパッドよりも前記ワイピングローラの回転方向上流側または前記第1のワイピングパッドが前記ワイピングローラと対接する対接部分に対して供給できるように、前記ワイピングローラまたは前記第1のワイピングパッドに前記上澄み液を供給する第1のワイピング液供給装置と、
前記第1のワイピング液供給装置よりも前記ワイピングローラの回転方向下流側の箇所で、前記第2のワイピングパッドよりも前記ワイピングローラの回転方向上流側または前記第2のワイピングパッドが前記ワイピングローラと対接する対接部分に対して供給できるように、前記ワイピングローラまたは前記第2のワイピングパッドに前記清浄なワイピング液を供給する第2のワイピング液供給装置と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のワイピング装置。
【請求項7】
さらに、前記第1のワイピング液供給装置よりも前記ワイピングローラの回転方向下流側の箇所で、前記第1のワイピングパッドに前記上澄み液を供給する第3のワイピング液供給装置を備えることを特徴とする請求項6に記載のワイピング装置。
【請求項8】
前記清浄なワイピング液を用いる洗浄は、前記上澄み液を用いた洗浄の後に実施されることを特徴とする請求項1ないし請求項7のうちいずれか一つに記載のワイピング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、余剰インキを除去するワイピング装置に関し、特に凹版印刷機に用いて好適なワイピング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、凹版印刷機においては、特特開2000−127349号(例えば、特許文献1参照)に示すように、インキ装置によって凹版胴の周面に装着された凹版面にインキを転移させ、転移されたインキのうちの絵柄部分以外の箇所に付着した余剰インキをワイピング装置により除去する。次に、凹版胴と圧胴との間を通過するシートに対して、凹版面に残された絵柄部分のインキを転移させることにより印刷を施す。
【0003】
従来のワイピング装置は、凹版胴の凹版面に対接した状態で回転し、凹版胴の凹版面上の余剰インキを拭き取るワイピングローラと、このワイピングローラ上に付着したインキを洗浄するブラシやブレード等のワイピングローラ洗浄部材と、ワイピング液を溜めておける液槽とを備える。
【0004】
上述したワイピング装置においては、ワイピングローラを洗浄する際、ワイピングローラ洗浄部材とともにワイピング液が使用される。ワイピング液によるインキの溶解作用とワイピングローラ洗浄部材による拭取作用又は掻取作用とによってワイピングローラが洗浄される。
【0005】
凹版印刷機では、オフセット印刷機とは異なる特性を持つ凹版印刷用インキが使用されること、およびワイピングローラによる凹版面の拭取効果を維持するためにワイピングローラ上の凹版印刷用インキを確実に除去する必要がある。このため、特開平10−337855号(例えば、特許文献2参照)に示すように、ワイピング液として強アルカリ性の苛性ソーダが使用される。
【0006】
また、使用済みのワイピング液を濾過し、一定特性のワイピング液を新たに生成するワイピング液処理方法及びその装置が特開2001−104994号(例えば、特許文献3参照)に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−127349
【特許文献2】特開平10−337855
【特許文献3】特開2001−104994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、引用文献3に示すワイピング液処理方法では、特定の特性を持つワイピング液を再生成するまでに所定数の処理工程を要し、ワイピング液の再利用に専用の装置を必要としていた。このため、ワイピングローラによる凹版胴の洗浄処理を、コストをかけることなく、容易かつ効率的に行うことはできなかった。
【0009】
本発明の目的は、簡易な構成で凹版胴を効率的に洗浄することができるワイピング装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明においては、回転自在に支持された凹版胴と、前記凹版胴の周面に付着した余剰インキを除去する胴洗浄装置と、前記胴洗浄装置に洗浄用のワイピング液を供給するワイピング液供給装置とを備え、前記ワイピング液供給装置は、前記胴洗浄装置から排出されるワイピング廃液を貯留する廃液タンクと、清浄なワイピング液を貯留する新液タンクと、前記新液タンクから前記胴洗浄装置へ清浄なワイピング液を供給する第1のポンプと、前記廃液タンクに貯留されたワイピング廃液が沈殿物と上澄み液とに分離した後の当該上澄み液を前記胴洗浄装置へ供給する第2のポンプとを備え、前記上澄み液は、前記胴洗浄装置における粗除去が行われる部位に供給され、前記清浄なワイピング液は、前記胴洗浄装置における仕上除去が行われる部位に供給されるようにする。
【0011】
また、本発明においては、前記廃液タンク内のワイピング廃液の沈殿物を清浄化処理することによりワイピング液を再生する廃液処理装置と、前記廃液処理装置により再生されたワイピング液を前記新液タンクへ戻す第3のポンプとを備えるようにする。
【0012】
さらに、本発明において、前記胴洗浄装置は、前記凹版胴と対接して当該凹版胴の周面に付着したインキの余剰インキをワイピングするワイピングローラと、前記ワイピングローラの周面上の余剰インキを除去するインキ除去装置と、余剰インキを除去した際に生じるワイピング廃液を一時的に貯留するワイピングタンクとを備えるようにする。
【0013】
さらに、本発明において、前記インキ除去装置は、前記ワイピングローラの回転方向上流側に設けられて、前記ワイピングローラの周面に当接する第1のワイピングパッドと、前記第1のワイピングパッドよりも前記ワイピングローラの回転方向下流側に設けられて、前記ワイピングローラの周面に当接する第2のワイピングパッドとを備え、前記新液タンク内の清浄なワイピング液は、前記第1のポンプを介して前記第2のワイピングパッドおよび前記第1のワイピングパッドの近傍の前記ワイピングローラの周面の少なくとも一方に供給されるようにする。
【0014】
さらに、本発明においては、前記第1のワイピングパッドに指向して取り付けられ、前記第2のポンプを介して前記廃液タンク内の上澄み液を噴射する第1の噴射ノズルと、前記第2のワイピングパッドおよび前記前記第2のワイピングパッド近傍の前記ワイピングローラの周面の少なくとも一方に指向して取り付けられ、前記第1のポンプを介して前記新液タンク内の清浄なワイピング液を噴射する第2の噴射ノズルと、前記第1のワイピングパッドよりも前記ワイピングローラの回転方向上流側の周面に指向して取り付けられ、前記第2のポンプを介して前記廃液タンク内の上澄み液を噴射する第3の噴射ノズルとを備えるようにする。
さらに、本発明において、前記胴洗浄装置は、前記凹版胴に供給されたインキの余剰インキを除去するワイピングローラと、前記ワイピングローラと接触して当該ワイピングローラ上の前記余剰インキを除去する第1のワイピングパッドと、前記ワイピングローラにおける前記第1のワイピングパッドより前記ワイピングローラの回転方向下流側に設けられ、前記ワイピングローラと接触して当該ワイピングローラ上の前記余剰インキを除去する第2のワイピングパッドと、前記第1のワイピングパッドよりも前記ワイピングローラの回転方向上流側または前記第1のワイピングパッドが前記ワイピングローラと対接する対接部分に対して供給できるように、前記ワイピングローラまたは前記第1のワイピングパッドに前記上澄み液を供給する第1のワイピング液供給装置と、前記第1のワイピング液供給装置よりも前記ワイピングローラの回転方向下流側の箇所で、前記第2のワイピングパッドよりも前記ワイピングローラの回転方向上流側または前記第2のワイピングパッドが前記ワイピングローラと対接する対接部分に対して供給できるように、前記ワイピングローラまたは前記第2のワイピングパッドに前記清浄なワイピング液を供給する第2のワイピング液供給装置とを備えるようにする。
さらに、本発明において、前記第1のワイピング液供給装置よりも前記ワイピングローラの回転方向下流側の箇所で、前記第1のワイピングパッドに前記上澄み液を供給する第3のワイピング液供給装置を備えるようにする。
さらに、本発明において、前記清浄なワイピング液を用いる洗浄は、前記上澄み液を用いた洗浄の後に実施されるようにする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、未使用のワイピング液を貯蔵する新液タンクから胴洗浄装置へワイピング液を供給することに加えて、回収された使用済みのワイピング液を貯蔵する廃液タンクに貯留されたワイピング廃液の上澄み液を胴洗浄装置へ供給する。このため、使用済みワイピング液の再利用を可能とするとともに、再処理工程および装置を必要とすることなく凹版胴を効率的に洗浄することができる。
【0016】
また本発明によれば、廃液タンク内のワイピング廃液の沈殿物を清浄化処理することによりワイピング液を再生し、その再生されたワイピング液を新液タンクへ戻すことができる。
【0017】
さらに本発明によれば、凹版胴と対接して当該凹版胴の周面に付着したインキの余剰インキをワイピングローラによりワイピングし、当該ワイピングローラの周面上の余剰インキをインキ除去装置により除去するとともに、余剰インキを除去した際に生じるワイピング廃液を一時的にワイピングタンクに貯留することができる。
【0018】
さらに本発明によれば、インキ除去装置は、ワイピングローラの回転方向上流側に設けられた第1のワイピングパッドがワイピングローラの周面に当接され、第1のワイピングパッドよりもワイピングローラの回転方向下流側に設けられた第2のワイピングパッドが、ワイピングローラの周面に当接され、新液タンク内の清浄なワイピング液が第1のポンプを介して第2のワイピングパッドおよび第2のワイピングパッドの近傍のワイピングローラの周面の少なくとも一方に供給され、廃液タンク内の上澄み液が第2のポンプを介して第1のワイピングパッドおよび第1のワイピングパッドの近傍のワイピングローラの周面の少なくとも一方に供給されることができる。
【0019】
さらに本発明によれば、第1のワイピングパッドに指向して取り付けられた第1の噴射ノズルから第2のポンプを介して廃液タンク内の上澄み液を噴射し、第2のワイピングパッドおよび第2のワイピングパッド近傍のワイピングローラの周面の少なくとも一方に指向して取り付けられた第2の噴射ノズルから第1のポンプを介して新液タンク内の清浄なワイピング液を噴射し、第1のワイピングパッドよりワイピングローラの回転方向上流側の周面に指向して取り付けられた第3の噴射ノズルから第2のポンプを介して廃液タンク内の上澄み液を噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る一実施の形態における凹版印刷機の構成を示す側面図である。
図2図1に示すワイピング装置を拡大した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(1)凹版印刷機の構成
図1に示す凹版印刷機1において、シートとしての紙2が積載されたシート供給装置としての給紙装置3には、給紙装置3のサッカ機構により上層から一枚ずつ送り出された紙2を搬送するフィーダーボード4が連絡される。フィーダーボード4には、フィーダーボード4上の紙2をくわえて揺動するスイング装置5が配設される。
【0023】
スイング装置5には、周方向に沿って等間隔に配設された3個のくわえ爪を有する3倍胴としての圧胴6が対向配置された渡し胴7を介して連絡される。圧胴6および渡し胴7は、一対のフレームに回転自在に支持される。渡し胴7には、圧胴6のくわえ爪と同様なくわえ爪が設けられ、スイング装置5から受け渡された紙2は渡し胴7のくわえ爪から圧胴6のくわえ爪にくわえ替えされる。
【0024】
圧胴6には、一対のフレーム23に回転自在に支持され、かつ周方向に沿って3枚の凹版が取り付けられる3倍胴としての凹版胴8が対向配置される。凹版胴8には、周方向に沿って4枚のゴム製のブランケットが取り付けられる4倍胴としてのインキ集合胴9が対向配置される。インキ集合胴9は一対のフレーム24に回転自在に支持される。
【0025】
インキ集合胴9には、圧胴6のブランケットや凹版胴8の凹版面の長さに対応した周面長をなす単一胴の5個のパターンローラ(シャブロン胴)10が周方向にわたって対向配置される。各パターンローラ10は、一対のフレーム24に回転自在に支持される。
【0026】
これらのパターンローラ10に対応して5つのインキ供給装置11が、図1に示す実線位置と二点鎖線位置との間で移動自在に配置されたインカーフレーム25に支持される。各インキ装置11は互いに異なるインキが充填されたインキツボ(図示せず)を有し、各インキツボからの各色インキが各ローラ群および各パターンローラ10を介してインキ集合胴9に供給される。すなわち、凹版印刷機1においては、4倍胴としてのインキ集合胴9にパターンローラ10及びインキ供給装置11のペアが5つ配設される。
【0027】
圧胴6には排紙胴27が対向配置され、排紙胴27には排紙装置22の一方のスプロケット(図示せず)が同軸で設けられる。一方のスプロケット(図示せず)と、排紙装置22の後端部に設けられた他方のスプロケット22aとには、一対の排紙チェーン22bが張架される。排紙チェーン22bには、排紙爪(図示せず)が所定間隔で取り付けられる。排紙チェーン22bの走行方向下流側には、排出装置としての排紙台22cが複数設けられる。
【0028】
凹版胴8には、ワイピング装置21(胴洗浄装置)のワイピングローラ19がワイピングタンク20内に配設された状態で対向配置される。
【0029】
次に、このように構成された凹版印刷機1の動作を説明する。給紙装置3からフィーダーボード4上へ一枚ずつ送り出された紙2は、スイング装置5から渡し胴7を経由して圧胴6のくわえ爪にくわえ替えられて搬送される。また、各インキ供給装置11からのインキは、各パターンローラ10を介してインキ集合胴9に転写されて凹版胴8の凹版面上に供給される。
【0030】
凹版胴8の凹版面上に供給されたインキの余剰分(以下、これを余剰インキと呼ぶ)は、ワイピング装置21のワイピングローラ19によってワイピングされる。紙2が圧胴6と凹版胴8との間を通過するときに、凹版胴8のインキが紙2に転写されて印刷される。次に、紙2が排紙胴27を介して排紙装置22の排紙チェーン22bにより搬送され、排紙台22c上に排紙される。
【0031】
(2)ワイピング装置の構成
図2を用いて凹版印刷機1におけるワイピング装置21を説明する。
【0032】
図1に示すワイピング装置21は、図2に示すように、凹版胴8の下部に対接するワイピングローラ19が収容される本体部31と、洗浄用のワイピング液を供給するワイピング液供給装置47と、ワイピングローラ19の洗浄時に生じるワイピング液の廃液を清浄処理(再生成)する廃液処理装置51と、第1のポンプとしてのポンプ44、ポンプ45、第2のポンプとしてのポンプ46、ポンプ48、第3のポンプとしてのポンプ52を備える。本体部31は、廃液槽としてのワイピングタンク20と、ワイピングローラ19の周面に付着した余剰インキを除去するワイピングパッド32、33(インキ除去装置)およびドレイン41とを備える。
【0033】
第1のワイピングパッドとしてのワイピングパッド32はワイピングローラ19下側の回転方向上流側に設けられ、第2のワイピングパッドとしてのワイピングパッド33はワイピングローラ19下側の回転方向下流側に設けられる。凹版胴8の凹版面に付着した余剰インキをワイピングローラ19がワイピングした際、当該ワイピングローラ19の表面に付着した余剰インキは、ワイピングパッド32及びワイピングパッド33によって除去される。
【0034】
ワイピングパッド32は、パッド本体32aと、パッド本体32a上に取り付けられた金網、スポンジ、金属ブラシ等を含むパッド部材32bとを備える。ワイピングパッド32が回転中のワイピングローラ19に当接することにより、パッド部材32bによってワイピングローラ19の周面に付着した余剰インキが除去される。
【0035】
ワイピングパッド32は、ワイピングローラ19の表面に付着した余剰インキを除去するために、強アルカリ性の苛性ソーダを含むワイピング液を噴射する第1の噴射ノズルとしての噴射ノズル32cを有する。噴射ノズル32cは、パッド部材32bの背面側からワイピング液をワイピングローラ19の周面に供給できるようにパッド本体32aの側面にワイピングパッド32を指向して取り付けられる。噴射ノズル32cからのワイピング液は、パッド部材32bとワイピングローラ19との対接面に向けて噴射される。この実施の形態においては、噴射ノズル32cが本発明でいう「第3のワイピング液供給装置」に相当する。
【0036】
ワイピングパッド32の上方の本体部31には、ワイピングパッド32よりもワイピングローラ19の回転方向上流側のワイピングローラ19の周面に対してワイピング液を噴射する第3の噴射ノズルとしての外部噴射ノズル34が、ワイピングパッド32よりもワイピングローラ19の回転方向上流側の周面に指向して取り付けられている。外部噴射ノズル34からのワイピング液は、ワイピングローラ19の周面に対して直接噴射される。この実施の形態においては、外部噴射ノズル34が本発明でいう「第1のワイピング液供給装置」に相当する。
【0037】
なお、ワイピングパッド32よりもワイピングローラ19の回転方向上流側で外部噴射ノズル34からワイピング液を噴射するようにしたが、これに限らず、ワイピングパッド32のパッド部材32bとワイピングローラ19との対接箇所に直接噴射するようにしても良い。
【0038】
ワイピングパッド33は、ワイピングパッド32よりワイピングローラ19の回転方向下流側に設けられる。ワイピングパッド33は、パッド本体33aと、パッド本体33a上に取り付けられた金網、スポンジ、金属ブラシ等を含むパッド部材33bとを備える。ワイピングパッド32、33が回転中のワイピングローラ19に当接することにより、ワイピングパッド32のパッド部材32bによって余剰インキが除去された後の残余インキがワイピングパッド33のパッド部材32bによって完全に除去される。
【0039】
ワイピングパッド33におけるパッド部材33aの先端位置には、ワイピング液を噴射するための第2の噴射ノズルとしての噴射ノズル33cが取り付けられる。噴射ノズル33cの取り付け位置は、ワイピングパッド32の噴射ノズル32Cよりもワイピングローラ19の回転方向下流側かつパッド部材33bよりもワイピングローラ19の回転方向上流側となる。すなわち噴射ノズル33cは、ワイピングパッド33およびワイピングパッド33近傍のワイピングローラ19の周面の少なくとも一方を指向して取り付けられる。これにより、パッド部材33bとワイピングローラ19との初めての対接面に向けて噴射ノズル33cからワイピング液が噴射される。この実施の形態においては、噴射ノズル33cが本発明でいう「第2のワイピング液供給装置」に相当する。
【0040】
なお、噴射ノズル33cからパッド部材33bとワイピングローラ19との対接箇所にワイピング液を直接噴射するようにしたが、これに限らず、噴射ノズル33cからパッド部材33bよりも回転方向上流側におけるワイピングローラ19の周面にワイピング液を噴射するようにしてもよい。
【0041】
ワイピングパッド32では、噴射ノズル32cおよび外部噴射ノズル34の2箇所からワイピングローラ19の周面にワイピング液を噴射する。この理由は、ワイピングパッド33よりもワイピングローラ19の回転方向上流側に配置されたワイピングパッド32による最初の洗浄段階で、ワイピングローラ19の表面に付着した余剰インキを大量のワイピング液により溶解させて除去し易くする必要があるからである。
【0042】
外部噴射ノズル34および噴射ノズル32cは、凹版胴8から除去された余剰インキが付着したワイピングローラ19の周面に大量にワイピング液を供給して余剰インキの溶解を促進させる。また噴射ノズル32cは、パッド部材32bにワイピング液を噴射することにより、ワイピングローラ19の周面から掻き取った余剰インキがパッド部材32bに目詰まりすることを防止し、常に高い掻き取り効果を維持する。
【0043】
噴射ノズル33cは、ワイピングパッド32のパッド部材32bにより除去し切れなかった余剰インキの残余インキを除去する仕上除去を行うワイピングパッド33のパッド部材33bをワイピング液によって十分に湿らせるように働く。
【0044】
ワイピングパッド32は、ワイピングローラ19の表面に付着した余剰インキを最初に掻き落として除去する粗除去を行う。この場合、外部噴射ノズル34及び噴射ノズル32cにより事前に供給された大量のワイピング液によって余剰インキが熔解されているので掻き取り効果が高くなる。また、噴射ノズル32cからのワイピング液によりパッド部材32bに対する余剰インキの目詰まりが防止されるので、粗除去として常時高い掻き取り効果を維持する。
【0045】
ワイピングパッド33は、ワイピングパッド32のパッド部材32bにより余剰インキが除去された後の残余インキをパッド部材33bにより完全に除去する仕上除去を行う。この場合、余剰インキの残余インキの熔解をワイピング液により促進させながらワイピングローラ19の樹脂製の周面を研磨する。なお、ワイピングローラ19は、ワイピングパッド33で仕上除去された後、ドクターブレード(図示せず)によりワイピングローラ19の周面に付着したワイピング液が除去される。その後、凹版胴8の凹版面に付着した余剰インキがワイピングされる。
【0046】
このため、ワイピングパッド32のパッド部材32bは、粗除去に好適な材質として目の粗い金属ブラシやスポンジが選択される。ワイピングパッド33のパッド部材33bは、仕上除去に好適な材質として目の細かい金属ブラシやスポンジが選択される。但し、2つのパッド部材32b、33bが、同じ材質であっても良い。
【0047】
ワイピング液供給装置47は、洗浄に使用されるワイピング液を貯留する新液タンク47aと、ワイピング液の廃液(以下、ワイピング廃液と呼ぶ)を貯留する廃液タンク47bとを備える。新液タンク47aは、清浄化処理されて再利用されるワイピング液あるいは新規に購入された清浄なワイピング液(以下、ワイピング新液と呼ぶ)を貯留する。廃液タンク47aは、ワイピング廃液を所定時間貯留することにより、ワイピング廃液を上澄み液と沈殿物とに分離した状態で貯留する。
【0048】
本体部31のワイピングタンク20は、ワイピングパッド32、33によってワイピングローラ19の表面に付着した余剰インキを除去した際に出るワイピング廃液35を廃液槽として一時的に貯留する。ワイピングタンク20内のワイピング廃液35は、ドレーン41およびポンプ45を介して廃液タンク47bに戻される。
【0049】
廃液タンク47b内のワイピング廃液35は、貯留状態が所定時間以上経過すると、ワイピング廃液35に含まれているインキ成分が沈殿し、沈殿物と上澄み液とに分離する。分離された上澄み液は、ポンプ46により吸い上げられて外部噴射ノズル34およびワイピングパッド32の噴射ノズル32cに供給される。一方、廃液タンク47b内のワイピング廃液35の沈殿物が含まれた液体(以下、沈殿液と呼ぶ)は、ポンプ48を介して廃液処理装置51へ排出される。
【0050】
廃液処理装置51では、ワイピング液供給装置47の廃液タンク47bから排出されたワイピング廃液35の沈殿液を濾過及び清浄化処理することにより、沈殿液から清浄化処理されたワイピング液を再生する。清浄化処理されたワイピング液は、ポンプ52を介してワイピング液供給装置47の新液タンク47aへ戻される。
【0051】
本実施の形態においては、ワイピング廃液35をそのまま廃棄するのではなく、ワイピング液供給装置47の廃液タンク47bを介して、あるいは廃液タンク47bおよび廃液処理装置51を介して再利用する。これにより、ワイピング液の補充やワイピング廃液35の廃棄といった煩雑な作業を省略して、ワイピングローラ19を効率的に洗浄することができる。
【0052】
(3)ワイピング装置の動作
上述のように構成されたワイピング装置21において、外部噴射ノズル34および噴射ノズル32cの双方を用いて、ワイピングローラ19が凹版胴8から除去した余剰インキに大量のワイピング液を供給する。これにより、噴射ノズル32cだけを用いる場合に比べて、余剰インキの熔解を早く促進させながらワイピングパッド32のパッド部材32bによって余剰インキの粗除去が行われる。
【0053】
これと同時に、噴射ノズル32cは、ワイピングパッド32のパッド部材32bにワイピング液を噴射する。これにより、ワイピングローラ19の周面から掻き取られた余剰インキがパッド部材32bに目詰まりすることを予め防止し、高い掻き取り効果を維持する。
【0054】
次に、噴射ノズル33cは、仕上除去するためのワイピングパッド33のパッド部材33bにワイピング液を噴射する。これにより、パッド部材33bはワイピング液によって十分に湿らせた状態で、ワイピングローラ19の周面を拭き取って仕上除去を行う。
【0055】
このとき、ワイピングパッド32が粗除去用であるため、ワイピング液供給装置47の廃液タンク47bからワイピング廃液35上澄み液を外部噴射ノズル34及び噴射ノズル32cに供給する。これにより、ワイピングパッド32のパッド部材32bは、ワイピング廃液35の上澄み液を用いて粗除去を行う。
【0056】
一方、ワイピングパッド33が余剰インキの残余インキの仕上除去用であるため、ワイピング液供給装置47の新液タンク47aから清浄なワイピング液を噴射ノズル33cに供給する。これにより、ワイピングパッド33のパッド部材33bは、清浄なワイピング液を用いてワイピングローラ19に対する仕上げの拭き取りを行う。
【0057】
ワイピングパッド32では、安価なワイピング廃液35の上澄み液を大量に使用してワイピングローラ19の表面に付着した余剰インキを粗除去する。これにより、新液タンク47a内の清浄なワイピング液をワイピングパッド32で使用しないため、コストの高い清浄なワイピング液の消費を抑えることができる。
【0058】
一方、ワイピングパッド33では、ワイピング液供給装置47の新液タンク47aから供給された清浄なワイピング液を必要なだけ使用してワイピングローラ19の余剰インキが除去された後の残余インキを完全に除去する。
【0059】
本実施の形態によれば、凹版印刷機1のワイピング装置21は、外部噴射ノズル34および噴射ノズル32cの双方から、ワイピングローラ19の周面に付着している余剰インキに対してワイピング廃液35の上澄み液を大量に供給する。これにより、余剰インキの熔解を早く促進させながらワイピングパッド32によって粗除去が行われる。しかる後、ワイピングローラ19の周面に残存している余剰インキの残余インキには、噴射ノズル33cから清浄なワイピング液が供給される。ワイピング液が十分に湿らされた余剰インキの残余インキは、ワイピングパッド33によりワイピングローラ19の周面を拭き取られて仕上除去が行われる。
【0060】
また、外部噴射ノズル34及び噴射ノズル32cを介してワイピングパッド32に供給する粗除去に必要な大量のワイピング液をワイピング廃液35の上澄み液から確保する。これにより、余剰インキの粗除去用に清浄なワイピング液を使用する必要がないため、低コストで確実に凹版胴8を洗浄することができる。
【0061】
また、ワイピング液供給装置47の廃液タンク47bでワイピング廃液35が沈殿物と上澄み液とに分離して、上澄み液を余剰インキの粗除去用に再利用する。これにより、廃液処理装置51を設けなくてもワイピング液を循環させて再利用することができる。
【0062】
(4)拡張例
なお、上述した実施の形態においては、ワイピング廃液35の上澄み液を2つの外部噴射ノズル34及び噴射ノズル32cからワイピングパッド32に大量に供給する場合を説明したが、1つの又は3個以上の噴射ノズルを介して大量に供給するようにしても良い。
【0063】
また、上述した実施の形態においては、廃液タンク47bでワイピング廃液35が沈殿物と上澄み液とに分離した後の上澄み液をワイピングパッド32へ供給するようにした。しかしながら、本発明はこれに限らず、廃液タンク47bを設ける代わりに、ワイピングタンク20でワイピング廃液35を所定時間貯留した後の上澄み液をワイピングパッド32へ供給するようにしてもよい。また、廃液タンク47bを設けた場合でも、廃液タンク47bからの上澄み液とワイピングタンク20からの上澄み液をワイピングパッド32に供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…凹版印刷機、2…紙、3…給紙装置、4…フィーダボード、5…スイング装置、6…圧胴、7…渡し胴、8…凹版胴、9…インキ集合胴、10…パターンローラ、11…インキ供給装置、19…ワイピングローラ、20…ワイピングタンク、21…ワイピング装置、22…排紙装置、23、24…フレーム、27…排紙胴、31…本体部、32…第1のワイピングパッド、32C、33C…噴射ノズル、33…第2のワイピングパッド、34…外部噴射ノズル、35…ワイピング廃液、41…ドレーン、44、45、46、48、52…ポンプ、47…ワイピング液供給装置、47A…新液タンク、47B…廃液タンク、51…廃液処理装置。
図1
図2