(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、光学素子と有機EL素子が一体的に形成された有機EL複合光学素子の従来の製造方法において、下記のような課題があった。
【0008】
光学素子の形成プロセス後に有機EL素子を形成するため、又は、有機EL素子の形成プロセス後に光学素子を形成するため、有機EL複合光学素子の製造プロセスが長くなるという問題があった。
【0009】
また、光学部材上に有機EL層を形成する場合、光学部材における有機EL層形成面は平坦である必要がある。有機EL層は、例えば10nm(ナノメートル)程度の薄膜層なので、有機EL層配置面に凹凸があると発光不良となるからである。
【0010】
また、光学素子の形成と有機EL素子の形成において、製造条件の共通化を図る必要がある。例えば、光学素子の生産設備と有機EL素子の生産設備において取り扱う基板のサイズ及び形状を同一にすることや、使用する材料に起因するプロセス温度の制限などがある。
これらの問題に起因して、有機EL複合光学素子の歩留まりが低下するという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、光学素子と有機EL素子が一体的に形成された有機EL複合光学素子の歩留まりを向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる有機EL複合光学素子の製造方法は、有機EL素子形成用基板の一表面上に上記基板とは反対側に光を出射する有機EL素子を
なす部分を有する有機EL層を形成する有機EL層形成工程と、光学素子が形成された光学部材の有機EL層配置面に接着層を介して上記有機EL層を貼り付けて、上記光学部材、上記接着層、上記有機EL層、上記有機EL素子形成用基板がその順に積層された有機EL複合光学素子を形成する貼り付け工程と、を含む。
【0013】
本発明の有機EL複合光学素子の製造方法において、上記有機EL層形成工程で、上記有機EL素子形成用基板の上記有機EL層配置面に剥離用の表面処理をした後に上記有機EL層を形成するようにしてもよい。
【0014】
また、上記有機EL層形成工程で、上記有機EL素子形成用基板としてフレキシブル性を有するものを用いるようにしてもよい。
【0015】
また、上記貼り付け工程は、上記光学部材に上記有機EL層を貼り付けた後に上記有機EL層から上記有機EL素子形成用基板を剥離する工程を含んで、上記光学部材、上記接着層、上記有機EL層がその順に積層された有機EL複合光学素子を形成するようにしてもよい。
【0016】
さらに、上記光学部材は、基材と、上記基材の上記有機EL層配置面に形成された凹部と、上記凹部の内壁に形成された光反射膜と、光透過性を有する材料からなり、上記凹部内に上記光反射膜を介して埋め込まれた光導波路と、を備え、上記有機EL層において、上記有機EL素子は、上記有機EL層が上記光学部材の上記有機EL層配置面に配置された状態で、上記凹部の形成領域の一部分を覆わないように上記光導波路上に配置され、かつ上記光導波路の上面を介して上記光導波路内に光を放射する位置に配置されており、上記光学部材において、上記有機EL素子が上記凹部を覆っていない領域は、上記有機EL素子が出射した光を上記凹部外へ出射する光出射口を構成し、上記有機EL層は、上記光出射口の上に配置される部分に光透過性の膜を備えている例を挙げることができる。ただし、本発明において、光学部材及び有機EL層の構造及び配置はこれらに限定されない。
【0017】
また、上記有機EL素子形成用基板を含む有機EL複合光学素子を形成する本発明の局面において、上記光学部材は、基材と、上記基材の上記有機EL層配置面に形成された凹部と、上記凹部の内壁に形成された光反射膜と、光透過性を有する材料からなり、上記凹部内に上記光反射膜を介して埋め込まれた光導波路と、を備え、上記有機EL層において、上記有機EL素子は、上記有機EL層が上記光学部材の上記有機EL層配置面に配置された状態で、上記凹部の形成領域の一部分を覆わないように上記光導波路上に配置され、かつ上記光導波路の上面を介して上記光導波路内に光を放射する位置に配置されており、上記光学部材において、上記有機EL素子が上記凹部を覆っていない領域は、上記有機EL素子が出射した光を上記凹部外へ出射する光出射口を構成し、上記有機EL層は、上記光出射口の上に配置される部分に光透過性の膜を備え、上記有機EL素子形成用基板は光透過性の材料で形成されている例を挙げることができる。ただし、本発明において、光学部材及び有機EL層の構造及び配置はこれらに限定されない。
【0018】
本発明にかかる有機EL複合光学素子は、有機EL素子形成用基板と、上記有機EL素子形成用基板の一表面上に形成され、上記基板とは反対側に光を出射する有機EL素子を
なす部分を有する有機EL層と、光学素子が形成された光学部材と、を備え、上記有機EL層は上記光学素子の有機EL層配置面に接着層を介して貼り付けられており、上記光学部材、上記接着層、上記有機EL層、上記有機EL素子形成用基板がその順に積層されているものである。
【0019】
本発明の有機EL複合光学素子において、上記有機EL素子形成用基板の上記有機EL層の形成面に剥離用の表面処理が施されているようにしてもよい。
【0020】
また、上記有機EL素子形成用基板としてフレキシブル性を有するものが用いられているようにしてもよい。
【0021】
また、上記有機EL層から上記有機EL素子形成用基板が剥離されており、上記光学部材、上記接着層、上記有機EL層がその順に積層されているようにしてもよい。
【0022】
さらに、上記光学部材は、基材と、上記基材の上記有機EL層配置面に形成された凹部と、上記凹部の内壁に形成された光反射膜と、光透過性を有する材料からなり、上記凹部内に上記光反射膜を介して埋め込まれた光導波路と、を備え、上記有機EL層において、上記有機EL素子
をなす部分は、上記有機EL層が上記光学部材の上記有機EL層配置面に配置された状態で、上記凹部の形成領域の一部分を覆わないように上記光導波路上に配置され、かつ上記光導波路の上面を介して上記光導波路内に光を放射する位置に配置されており、上記光学部材において、上記有機EL素子が上記凹部を覆っていない領域は、上記有機EL素子が出射した光を上記凹部外へ出射する光出射口を構成し、上記有機EL層は、上記光出射口の上に配置される部分に光透過性の膜を備えている例を挙げることができる。
【0023】
また、上記有機EL素子形成用基板を含む本発明の有機EL複合光学素子の態様において、上記光学部材は、基材と、上記基材の上記有機EL層配置面に形成された凹部と、上記凹部の内壁に形成された光反射膜と、光透過性を有する材料からなり、上記凹部内に上記光反射膜を介して埋め込まれた光導波路と、を備え、上記有機EL層において、上記有機EL素子
をなす部分は、上記有機EL層が上記光学部材の上記有機EL層配置面に配置された状態で、上記凹部の形成領域の一部分を覆わないように上記光導波路上に配置され、かつ上記光導波路の上面を介して上記光導波路内に光を放射する位置に配置されており、上記光学部材において、上記有機EL素子が上記凹部を覆っていない領域は、上記有機EL素子が出射した光を上記凹部外へ出射する光出射口を構成し、上記有機EL層は、上記光出射口の上に配置される部分に光透過性の膜を備え、上記有機EL素子形成用基板は光透過性の材料で形成されている例を挙げることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の有機EL複合光学素子の製造方法は、有機EL層形成工程において有機EL素子形成用基板の一表面上に形成された有機EL層を、光学素子が形成された光学部材の有機EL層配置面に接着層を介して貼り付けることによって有機EL複合光学素子を形成する。
本発明の有機EL複合光学素子では、有機EL素子形成用基板の一表面上に形成された有機EL層が、光学素子が形成された光学部材の有機EL層配置面に接着層を介して貼り付けられている。
したがって、本発明の有機EL複合光学素子及びその製造方法は、有機EL層と光学部材とを別々の工程でそれぞれ形成できるので、有機EL層の形成工程と光学部材の形成工程について、生産設備や基板の共通化や、使用する材料に起因するプロセス温度の制限などをなくすことができる。また、本発明の有機EL複合光学素子及びその製造方法は、光学部材の有機EL層配置面に接着層を介して有機EL層を貼り付けるので、光学部材の有機EL層配置面に凹凸がある場合であっても、その凹凸を接着層の厚みによって吸収することができ、有機EL層における断線を防止できる。これらにより、本発明の有機EL複合光学素子及びその製造方法は、従来の製造方法に比べて、有機EL層と光学部材のそれぞれについて製造プロセスを簡単にすることができ、歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、有機EL複合光学素子及びその製造方法の一実施例を説明するための概略的な正面断面図及び側面断面図である。
図1(5)は有機EL複合光学素子の一実施例を示す。この実施例は、有機EL複合光学素子として、固体光源と感光体ドラムで構成される、光を操作する機能を有していない高密度固体光源プリンタの固体光源を製造する例を説明する。ただし、本発明の対象となる有機EL複合光学素子は固体光源に限定されない。
まず、
図1(5)を参照して有機EL複合光学素子の構造について説明する。
【0027】
有機EL複合光学素子1は、光学部材3、接着層5、有機EL層7がその順に積層されて形成されている。
光学部材3は、基板(基材)3a、有機EL層配置面3b、凹部3c、光反射膜3d、光導波路3e及び光出射口3fを備えている。同一の基板3aに複数の凹部3cが形成されている。
【0028】
凹部3cは基板3aの有機EL層配置面3bに形成されている。凹部3cの寸法は、例えば、深さが0.3〜5μm(マイクロメートル)、長さが100μm〜10mm(ミリメートル)、幅が10〜40μmである。また、複数の凹部3cはピッチPで配列されている。ピッチPは、例えば、印刷密度が2500dpi(dots per inch)印刷機に適用される場合は約10μmで、1200dpi印刷機に適用される場合は約20μmで、600dpi印刷機に適用される場合は約40μmである。
【0029】
光反射膜3dは凹部3cの内壁に形成されている。光反射膜3dは例えばアルミニウム材料によって形成されている。光反射膜3dの膜厚は、例えば0.1〜0.5μmである。なお、光反射膜3dの材料は、アルミニウム材料に限定されず、銀等の他の金属材料であってもよい。
【0030】
光導波路3eは凹部3c内に光反射膜3dを介して埋め込まれている。光導波路3eは光透過性を有する材料で形成されている。光導波路3eの材料は例えば高屈折率材料である。その高屈折率材料は、例えば、Al
2O
3材料(屈折率:Nd=1.670)、TiO
2材料(屈折率:Nd=2.403)、Nb
2O
5材料(屈折率:Nd=2.314)、Ta
2O
5材料(屈折率:Nd=2.150)、高屈折率樹脂材料(屈折率:Nd=1.65)、ゾル−ゲル樹脂(屈折率:Nd=1.60)である。なお、光導波路3eの材料は、これらの高屈折率材料に限定されず、光透過性を有する材料であればよい。
【0031】
凹部3cにおいて光導波路3eが埋め込まれていない部分(空洞)が設けられている。この空洞は光出射口3fを構成している。複数の光出射口3fは、例えば直線上に配列されている。光出射口3fのピッチは凹部3cのピッチPと同じである。
【0032】
なお、光出射口3fを構成する空洞部分に光透過性の埋め込み材料が形成されていてもよい。この埋め込み材料は、光導波路3eと同じ材料(高屈折率材料)であってもよいし、光導波路3eとは異なる材料であってもよい。ここで、光導波路3eとは異なる材料の屈折率は、光導波路3eの材料の屈折率に比べて、大きくてもよいし、小さくてもよいし、同じであってもよい。この埋め込み材料の材料は光透過性を有するものであれば問われない。また、光出射口3fの位置に光導波路3eが埋め込まれていてもよい。
【0033】
有機EL層配置面3b上に光透過性の材料からなる接着層5が設けられている。接着層5の材料は、例えば厚みが0.01〜0.5μmのフルオレン系の紫外線硬化樹脂(屈折率:1.62)又はポリアミドイミド系熱硬化樹脂(屈折率:1.85)である。接着層5の材料の他の例は、例えば厚みが0.1〜10μmのアクリレート化合物を主成分としたものである。接着層5の屈折率と厚みは、光発光部から光導波路層3へ光が高効率で伝播できるように最適光学設計されている。
【0034】
有機EL層7は接着層5によって有機EL層配置面3bに貼り付けられている。有機EL層7は
複数の層からなり、接着層5側から順に、陽極7a、正孔輸送層7b、発光層(有機層)7c、電子輸送層7d、陰極7eを備えている。陰極7eは、凹部3cの形成領域の一部分を覆わないように、具体的には光出射口3fを覆わないように、光導波路3e上に配置されている。電子輸送層7d上に、陰極7eの形成領域を除いてパターニング層7fが配置されている。
【0035】
陽極7a、正孔輸送層7b、発光層(有機層)7c、電子輸送層7d及び陰極7eが積層されている部分は有機EL素子を構成している。これらの有機EL素子は光導波路3eの上面を介して光導波路3e内に光を放射する。光出射口3fは有機EL素子が凹部3cを覆っていない領域に設けられている。光出射口3fは有機EL素子が出射した光を凹部3c外へ出射するために設けられている。
【0036】
陽極7aは透明導電膜であり、例えばITO(酸化インジウムスズ)によって形成されている。正孔輸送層7b、発光層7c及び電子輸送層7dは有機材料によって形成されている。陰極7eは例えばアルミニウムによって形成されている。
【0037】
陽極7a、正孔輸送層7b、発光層7c及び電子輸送層7dは、隣り合う有機EL素子間で連続して形成されている。陽極7aは光反射膜3dとは接着層5によって絶縁されていている。
陽極7a、正孔輸送層7b、発光層7c、電子輸送層7d及びパターニング層7fは光透過性の材料で形成されている。
【0038】
なお、有機EL素子の構造及び配置は、
図1に示されたものに限定されず、光導波路3eの上面を介して光導波路3e内に光を放射する構造及び配置であれば、どのような構造及び配置であってもよい。
例えば、陽極7a、正孔輸送層7b、発光層7c及び電子輸送層7dのうちのいずれか1層、複数層又は全部は、隣り合う有機EL素子間で互いに分離されていてもよい。発光層7cが隣り合う有機EL素子間で互いに分離されている場合には、隣り合う発光層7cは互いに異なる波長(色)の光を発光するものであってもよい。
【0039】
有機EL層7に形成された有機EL素子から出射された光(破線矢印を参照。)は、接着層5を介して光導波路3eに入射し、光反射膜3dで反射され、かつ、高屈折率材料の光導波路3eを伝播する。すなわち、光は、光反射膜3dで反射されながら、高屈折率材料の光導波路3eの内部を光ファイバーの原理で伝播する。光導波路3eの内部を伝播された光は、光導波路3eの端面から光出射口3fへ出射される。
【0040】
光導波路3eから出射される光は特定の強度分布と角度成分を保有して出射される。光出射口3fへ出射された光は、光出射口3fの直下にある光反射膜3dで反射され、光出射口3fから上方に出射される。光出射口3fから出射された光は、接着層5及び有機EL層7を介して、有機EL層7(パターニング層7f)の上面から有機EL複合光学素子1外へ出射される。
【0041】
有機EL複合光学素子1において、有機EL層7の陽極7aの表面(光学部材3と対向する面)と光学部材3の光導波路3eの表面(有機EL層7と対向する面)のいずれか一方又は両方に反射防止膜が形成されていてもよい。これらの反射防止膜は有機EL素子の発光光が効率よく光導波路3eに進入しやすいようにする機能を有する。
【0042】
また、光出射口3fの上方の領域に位置するパターニング層7fの表面(電子輸送層7dとは反対側の面)に反射防止膜が形成されていてもよい。この反射防止膜は光出射口3fから出射された光が効率よく有機EL複合光学素子1外へ出射されるようにする機能を有する。
【0043】
これらの反射防止膜は、例えばSiO
2材料とAl
2O
3材料を使用した3層膜構成の反射防止膜である。ただし、この反射防止膜の構成はこれに限定されない。
【0044】
なお、光学部材3において、光導波路3eの表面に配置される反射防止膜は、少なくとも光導波路3eの表面に配置されていればよく、光導波路3eの表面のみに配置されていてもよいし、光導波路3eの表面から有機EL層配置面3b上にわたって配置されていてもよい。
【0045】
また、パターニング層7fの表面に形成される反射防止膜は、少なくとも光出射口3fの上方の領域に位置するパターニング層7fの表面に配置されていればよく、その領域のみに配置されていてもよいし、その領域のパターニング層7fの表面から他の領域のパターニング層7fの表面及び陰極7eの表面にわたって形成されていてもよい。
【0046】
図2は、
図1(1)を拡大して示す、有機EL層形成工程を説明するための概略的な正面断面図及び側面断面図である。
図1及び
図2を参照して、本発明の有機EL複合光学素子の製造方法の一実施例を説明する。
図1におけるカッコ数字(1)〜(5)は以下に説明される工程(1)〜(5)に対応している。なお、本発明の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0047】
(1)
図2も参照して説明する。有機EL素子形成用基板9の一表面上に、基板9とは反対側に光を出射する有機EL素子を
なす部分を有する有機EL層7を形成する。有機EL層7は、基板9上に、陰極7e及びパターニング層7f、電子輸送層7d、発光層7c、正孔輸送層7b、陽極7aの順に形成される。有機EL層7の形成は、通常の有機EL素子形成プロセスによって行なわれる。
【0048】
基板9としてフレキシブル性を有するものを用いる。基板9は、例えば、厚みが0.5mm以下のガラス基板もしくはシリコン基板、又は厚みが0.7mm以下の樹脂シートである。ただし、基板9の厚み及び材料はこれらに限定されない。
【0049】
有機EL層7が形成される基板9の面に剥離用の表面処理を施す。この剥離用の表面処理は基板9と有機EL層7との密着力を低減するために行なわれる。この剥離用の表面処理は、例えばフッ素系の蒸気処理によって行なわれる。ただし、剥離用の表面処理は、フッ素系の蒸気処理に限定されず、後述する工程(4)で有機EL層7から基板9を剥離可能にする処理であれば、どのような処理であってもよい。
【0050】
剥離用の表面処理が施された基板9に有機EL層7を形成する。有機EL層7の形成は、通常の有機EL素子形成プロセスによって行なわれる。ここで、有機EL層7を形成する前に、剥離用の表面処理が施された基板9の有機EL層形成面に反射防止膜を形成し、反射防止膜上に有機EL層7を形成するようにしてもよい。また、有機EL層7の陽極7aの上に反射防止膜をさらに形成してもよい。
【0051】
(2)基板3a、有機EL層配置面3b、凹部3c、光反射膜3d、光導波路3e及び光出射口3fを備えた光学部材3の有機EL層配置面3bに、接着層5を介して有機EL層7を貼り付ける。接着層5は、光学部材3の有機EL層配置面3bに凹凸がある場合であっても、その凹凸を接着層5の厚みによって吸収する。これにより、有機EL層7における断線を防止できる。
【0052】
図1(2)において接着層5は光学部材3側に形成されているが、接着層5は有機EL層7側に形成されてもよい。接着層5の形成方法は、例えば、インクジェット塗布法、スプレー法、塗布法や、シート状の接着層を貼り付ける方法を挙げることができる。なお、光学部材3において有機EL層配置面3bに反射防止膜が形成されていてもよい。
【0053】
(3)上記工程(2)が完了すると、光学部材3、接着層5、有機EL層7、有機EL素子形成用基板9がその順に積層された積層構造体が形成される。
【0054】
(4)有機EL層7から有機EL素子形成用基板9を剥離する。上記工程(1)において、基板9の有機EL層7の形成面には剥離用の表面処理を施されているので、有機EL層7から基板9を剥離することは可能である。この際、基板9のフレキシブル性が有効に働く。
【0055】
(5)上記工程(4)が完了すると、光学部材3、接着層5、有機EL層7がその順に積層された有機EL複合光学素子1が形成される。
【0056】
この実施例は、光学部材3と有機EL層7とを別々の工程でそれぞれ形成した後、これらを貼り合わせているので、光学部材3の形成工程と有機EL層7の形成工程について、生産設備や基板の共通化や、使用する材料に起因するプロセス温度の制限などをなくすことができる。また、この実施例は、光学部材3の有機EL層配置面3bに接着層5を介して有機EL層7を貼り付けているので、光学部材3の有機EL層配置面3bに凹凸がある場合であっても、その凹凸を接着層5の厚みによって吸収することができ、有機EL層7における断線を防止できる。これらにより、この実施例は、従来の製造方法に比べて、有機EL層7と光学部材3のそれぞれについて製造プロセスを簡単にすることができ、歩留まりを向上させることができる。
【0057】
次に、光学部材3の形成工程の一例を簡単に説明しておく。ただし、光学部材3の形成工程は下記の工程に限定されない。
【0058】
基板3aの材料は、例えば、石英(ガラス材料)、ポリメチルペンテン(樹脂材料)又はシリコンである。ただし、以下に説明する工程は、基本的には、基板3aの材質に依存しないプロセスである。
【0059】
基板3aの有機EL層配置面3bにフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて凹部3cを形成する。基板3aの材料がガラス材料又は樹脂材料であるときは、例えばRIE(反応性イオンエッチング)ドライエッチングが用いられる。基板3aの材料がシリコン材料であるときは、例えばウエットエッチング又はRIEドライエッチングが用いられる。ウエットエッチングを使用する場合は、シリコンからなる基板3aの(100)面をエッチングして結晶異方性エッチング(アルカリ)を行う。エッチング溶液は、例えば、EDP溶液、KOH溶液、TMAH溶液である。エッチング条件は通常の半導体プロセスと同様である。
【0060】
また、凹部3cの形成についてNIP(ナノインプリント)技術を用いることができる。予め所望の形状を有する金型を用意する。金型には、所望の凹凸形状の反転構造を金型に形成する。この金型を使用し金型形状をNIP樹脂で基板上に転写する。この方法を用いれば、凹凸形状、三角形形状、非球面形状などの形状を自由度高く製作することができる。製作可能な金型の大きさは例えば直径8インチ以下であれば特に制限はない。製作可能なピッチ精度は、微細加工精度も数100nm〜数mmまで制御可能である。基板上に金型で形状を形成した後、ドライエッチング法を用いて樹脂形状を基板に転写することによって、所望の形状を形成することができる。
【0061】
真空蒸着法又はスパッタリング法を用いて、凹部3cの内壁に例えばアルミニウム材料からなる光反射膜3dを成膜する。
凹部3c内に光反射膜3dを介して高屈折率材料を埋め込んで光導波路3eを形成する。埋め込み方法と埋め込み材料は、例えば、(a)真空蒸着法又はスパッタリング法によるAl
2O
3材料(屈折率:Nd=2.05)、In
2O
3材料(屈折率:Nd=2.00)、ITO材料(屈折率:Nd=2.00)、(b)塗布法による高屈折率樹脂材料(屈折率:Nd=1.65)、(c)塗布後に熱硬化させたゾル−ゲル材料(屈折率:Nd=1.60)である。
【0062】
光反射膜3d上及び光導波路3e上に反射防止膜を形成する。反射防止膜は基板3aの有機EL層配置面3bにも形成されていてもよい。ただし、反射防止膜は必ずしも必要ではない。
フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、光導波路3eの一部分をエッチングし、光導波路3eに光出射口3fを形成する。
これにより、光学部材3が形成される。
【0063】
図3は、
図1(5)に示された有機EL複合光学素子1を固体光源として用いた画像形成装置の概念図である。
画像形成装置は、有機EL複合光学素子1と、光伝送手段11と、感光体ドラム13と、を備えている。
【0064】
有機EL複合光学素子1から出射された光は、光伝送手段11に設けられたアレイ状のマイクロレンズ11aによって集光されて感光体ドラム13に露光される。なお、光伝送手段11はマイクロレンズ11aを備えたものに限定されず、例えばファイバーレンズやロッドレンズ等の光伝送手段であってもよい。
【0065】
有機EL複合光学素子1は、非常にコンパクトな構造であり、微細加工で製作すれば、印刷のドット間ピッチを10μm以下に微細加工することが可能である。例えば、高精度印刷(25.4mm/10μm=約2500dpi)が可能となる。さらに、ドット間ピッチを5μm以下に微細加工することも可能で、超高精度印刷(25.4mm/5μm=5080dpi)が可能となる。この精度は、現在市販されている印刷機の中では、写真印刷機精度に匹敵する。
【0066】
図4は、有機EL複合光学素子及びその製造方法の他の実施例を説明するための概略的な正面断面図及び側面断面図である。
図1と同じ部分には同じ符号が付されている。
まず、
図4(3)を参照して有機EL複合光学素子の構造について説明する。
【0067】
この実施例の有機EL複合光学素子15は、
図1(5)に示された有機EL複合光学素子1と比較して、有機EL層7上に有機EL素子形成用基板17を備えている点で異なる。有機EL複合光学素子15のその他の構成は有機EL複合光学素子1と同じである。有機EL素子形成用基板17は光透過性の材料で形成されている。
【0068】
有機EL層7に形成された有機EL素子から出射された光は、接着層5を介して光導波路3eに入射し、光導波路3e、光出射口3f、接着層5、有機EL層7及び有機EL素子形成用基板17を介して、有機EL素子形成用基板17の上面から有機EL複合光学素子15外へ出射される。
【0069】
有機EL複合光学素子15において、
図1(5)を参照して説明した有機EL複合光学素子1と同様に、有機EL層7の陽極7aの表面、光学部材3の光導波路3eの表面、光出射口3fの上方の領域に位置するパターニング層7fの表面に、反射防止膜が形成されていてもよい。
【0070】
図4を参照して、本発明の有機EL複合光学素子の製造方法の他の実施例を説明する。
図4におけるカッコ数字(1)〜(3)は以下に説明される工程(1)〜(3)に対応している。なお、本発明の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0071】
(1)有機EL素子形成用基板17の一表面上に、基板17とは反対側に光を出射する有機EL素子を
なす部分を有する有機EL層7を形成する。有機EL層7は、基板17上に、陰極7e及びパターニング層7f、電子輸送層7d、発光層7c、正孔輸送層7b、陽極7aの順に形成される。有機EL層7の形成は、通常の有機EL素子形成プロセスによって行なわれる。ここで、有機EL層7を形成する前に、基板17の有機EL層形成面に反射防止膜を形成し、反射防止膜上に有機EL層7を形成するようにしてもよい。また、有機EL層7の陽極7aの上に反射防止膜をさらに形成してもよい。
【0072】
基板17は光透過性の材料で形成されている。基板17は、例えば、厚みが0.2〜0.5mmのガラス基板もしくはシリコン基板、又は、厚みが0.3〜0.6mmの樹脂シートである。ただし、基板17の厚み及び材料はこれらに限定されない。
【0073】
(2)基板3a、有機EL層配置面3b、凹部3c、光反射膜3d、光導波路3e及び光出射口3fを備えた光学部材3の有機EL層配置面3bに、接着層5を介して有機EL層7を貼り付ける。接着層5は、光学部材3の有機EL層配置面3bに凹凸がある場合であっても、その凹凸を接着層5の厚みによって吸収する。これにより、有機EL層7における断線を防止できる。接着層5の厚みは、例えば0.01〜0.5μmである。
【0074】
(3)上記工程(2)が完了すると、光学部材3、接着層5、有機EL層7、有機EL素子形成用基板17がその順に積層された有機EL複合光学素子15が形成される。
【0075】
この実施例は、
図1を参照して説明した実施例と同様に、光学部材3と有機EL層7とを別々の工程でそれぞれ形成した後、これらを貼り合わせているので、従来の製造方法に比べて、有機EL層7と光学部材3のそれぞれについて製造プロセスを簡単にすることができ、歩留まりを向上させることができる。
【0076】
さらに、有機EL複合光学素子15における有機EL素子形成用基板17は、有機EL層7のキャップ層(蓋)として使用できる。これにより、有機EL層7における有機EL素子の長寿命化を実現できる。
さらに、この実施例は、
図1を参照して説明した実施例と比較して、有機EL素子形成用基板を剥離するための前処理及び剥離工程がないので、工数を減少させて、有機EL複合光学素子の低価格化を実現できる。
【0077】
ところで、例えば
図3に示されたように、有機EL複合光学素子から出射させた光を他の光学素子(光伝送手段11)に入射させる場合、有機EL複合光学素子から出射される光の光路を制御する(例えば、結像の位置を遠方に配置したり、隣り合う光源からの迷光を防止するための距離を作ったりする)ために、有機EL複合光学素子と他の光学素子との間に、設計で決定される光学距離が必要となる。通常は、この光学距離を得るために、光学的な中間部材が別途配置される。
【0078】
これに対し、有機EL素子形成用基板17の厚みを所望の厚みに設定し、有機EL複合光学素子15の基板17表面に他の光学素子を接触させて配置するようにすれば、有機EL複合光学素子15と他の光学素子との間に、所望の光学距離を形成できる。したがって、この実施例によって形成された有機EL複合光学素子15を用いることにより、光学的な中間部材(例えば光学距離を確保するための部材やクロストーク防止用の光学部材など)を省略することができる。
【0079】
図5は、有機EL複合光学素子のさらに他の実施例を説明するための概略的な側面断面図である。この実施例の正面断面図は
図1(5)と同じである。
図5において、
図1(5)と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0080】
この実施例の有機EL複合光学素子1では、光出射口3fにおける光導波路3eの端面は、有機EL層配置面3bの垂線に対して凹部3cの開口側で広がる方向に角度θだけ傾斜している。その他の構造は
図1(5)に示された実施例と同じである。
【0081】
光出射口3fにおける光導波路3eの端面が有機EL層配置面3bの垂線に対して凹部3cの開口側で広がる方向に傾斜していることにより、当該端面が有機EL層配置面3bの垂線と平行な場合又は有機EL層配置面3bの垂線に対して凹部3cの開口側で狭まる方向に傾斜している場合に比べて、有機EL素子が発光する光の光利用効率(有機EL複合光学素子1から出射される光の輝度)が向上する。当該端面から光出射口3fへ出射された光は、下部にある光反射膜3dで反射されて開口部から上方に出射される。
【0082】
図6は、有機EL複合光学素子のさらに他の実施例を説明するための概略的な側面断面図である。この実施例の正面断面図は
図1(5)と同じである。
図6において、
図5と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0083】
この実施例は、
図5に示された実施例と比較して、凹部3cが、その底面の光出射口3f直下の部分に凹形状の凹部内凹部3gを備えている点で異なっている。凹部内凹部3gに起因して、光反射膜3dに凹形状が形成されている。この形状により、上方への光集光性が向上する。この実施例は、
図5に示された実施例と比較して、有機EL素子が発光する光の利用効率が向上する。
【0084】
なお、
図6に示された実施例において、光出射口3fにおける光導波路3eの端面はマイクロレンズ15の光軸と平行であってもよい。
【0085】
図7は、有機EL複合光学素子のさらに他の実施例を説明するための概略的な側面断面図である。この実施例の正面断面図は
図1(5)と同じである。
図7において、
図5と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0086】
この実施例は、
図5に示された実施例と比較して、光出射口3fにおける光導波路3eの端面は有機EL層配置面3bの垂線に対して凹部3cの開口側で狭まる方向に傾斜している。
【0087】
この実施例は、界面11aがマイクロレンズ15の光軸に対して凹部3cの開口側で狭まる方向に傾斜していることにより、
図5に示された実施例と比較して、有機EL素子が発光する光の光利用効率が向上する。
【0088】
なお、
図7に示された構成において、光の光利用効率は低下するが、凹部内凹部7g及び凹部内凹部7gに起因する光反射膜3dに凹形状は形成されていなくてもよい。
【0089】
図8は、有機EL複合光学素子のさらに他の実施例を説明するための概略的な側面断面図である。この実施例の正面断面図は
図1(5)と同じである。
図8において、
図1(5)と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0090】
この実施例は、
図1(5)に示された実施例と比較して、光出射口3fの下方で凹部3c内に、有機EL素子が出射した光を光出射口3fで凹部3cの開口側へ反射させるための凸部3hをさらに備えている。凸部3hの材料は、例えば石英材料、アルミノシリケイトガラス、SiO
2を骨格とする重縮合材料(ゾル−ゲル材料)、基板3aと同じ材料、光導波路3eと同じ材料などである。
【0091】
凸部3hの形状は例えば三角柱である。凸部3hの材料として基板3aと同じ材料が用いられる場合、例えば、NIP法を使用することで、予め製作した金型の形状を転写して凹部3cの底面に凸形状を形成し、この凸形状の表面に反射膜を形成することによって、凸部3hが形成される。また、凸部3hの材料として、光導波路3eと同じ材料が用いられる場合、凹部3c内に光透過性の材料を埋め込んで光導波路3eを形成した後、エッチング技術によって光導波路3eの一部分をパターニングして凸形状を製作することによって、凸部3hが形成される。
【0092】
この実施例は、凸部3hを備えていることにより、
図1(5)に示された実施例と比較して、有機EL素子が発光する光の光利用効率が向上する。
なお、凸部3hの材料及び形状は、この実施例に限定されず、有機EL素子が出射した光を光出射口3fで凹部3cの開口側へ反射させることができる材料及び形状であれば、どのような材料及び形状であってもよい。
【0093】
図9は、有機EL複合光学素子のさらに他の実施例を説明するための概略的な側面断面図である。この実施例の正面断面図は
図1(5)と同じである。
図9において、
図8と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0094】
この実施例は、
図8に示された実施例と比較して、凸部3hは、凹部3cの底面に形成された凸部及びその凸部の表面に形成された光反射膜3dによって形成されている。
これにより、凸部3hを形成するための専用の工程や材料を必要とすることなく、凸部3hを形成できる。
【0095】
図10は、有機EL複合光学素子のさらに他の実施例を説明するための概略的な側面断面図である。この実施例の正面断面図は
図1(5)と同じである。
図10において、
図9と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0096】
この実施例は、
図9に示された実施例と比較して、光出射口3fに光導波路3eが存在している。光出射口3fは有機EL素子が形成されていない位置に設けられている。
【0097】
なお、光出射口3fに光導波路3eが存在している構成は、上述の各実施例に適用可能である。
【0098】
図11は、有機EL複合光学素子のさらに他の実施例を説明するための概略的な側面断面図である。この実施例の正面断面図は
図1(5)と同様である。
図11において、
図8と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0099】
この実施例は、
図8に示された実施例と比較して、凹部3cの底面は、凹部3cの深さが光出射口3f側で深くなるように傾斜している。そして、光反射膜3d及び光導波路3eの底面は、凹部3cの底面形状に起因して、光導波路7内で光が光出射口3f側へ反射されやすくなるように傾斜している。これにより、有機EL素子が発光する光の光利用効率が向上されている。
【0100】
なお、当該傾斜が形成されている位置は、凹部3cの形成領域の一部分であってもよい。また、基板3aの上面(有機EL層配置面3b)に対する凹部3cの底面、光反射膜3d及び光導波路3eの底面の傾斜角は任意である。
【0101】
図12は、有機EL複合光学素子のさらに他の実施例を説明するための概略的な側面断面図である。この実施例の正面断面図は
図1(5)と同様である。
図12において、
図8と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0102】
この実施例は、
図8に示された実施例と比較して、凹部3cの底面は、凹部3cの深さが光出射口3f側で深くなるように湾曲している。そして、光反射膜3d及び光導波路3eの底面は、凹部3cの底面形状に起因して、光導波路7内で光が光出射口3f側へ反射されやすくなるように湾曲している。これにより、有機EL素子が発光する光の光利用効率が向上されている。
【0103】
なお、当該湾曲部分が形成されている位置は、凹部3cの形成領域の一部分であってもよい。また、凹部3cの底面、光反射膜3d及び光導波路3eの底面の曲面の形状は任意である。例えば、三角柱である凸部3hの中心軸に向けて光が集まるように、光反射膜3dと光導波路3eの底面との界面が凸部3hの中心軸とする円柱の円弧上に位置している例を挙げることができる。これにより、有機EL素子が発光する光の光利用効率が向上する。
【0104】
なお、凹部3cの底面、光反射膜3d及び光導波路3eの底面が上記のように傾斜又は湾曲している構成は、上述の各実施例に適用可能である。
【0105】
また、
図5から
図12を参照して説明した各実施例において、
図1(5)を参照して説明した有機EL複合光学素子1と同様に、有機EL層7の陽極7aの表面、光学部材3の光導波路3eの表面、光出射口3fの上方の領域に位置するパターニング層7fの表面に、反射防止膜が形成されていてもよい。
【0106】
また、
図5から
図12を参照して説明した各実施例において、
図4(5)を参照して説明した有機EL複合光学素子15と同様に、有機EL層7上に有機EL素子形成用基板を備えていてもよい。
【0107】
図1を参照して説明した製造方法の実施例は、上記工程(1)で有機EL層7が形成される有機EL素子形成用基板9の面に剥離用の表面処理を施している。ただし、本発明の有機EL複合光学素子の製造方法は、当該表面処理を行なわなくてもよい。
【0108】
例えば、有機EL素子形成用基板として、有機EL層配置面に有機EL層との密着性が悪い(表面エネルギーが小さい)材料が形成されているものを用いる。これにより、有機EL層配置面に剥離用の表面処理を行なわなくても、有機EL層を光学部材に貼り付けた後に有機EL層から有機EL素子形成用基板を剥離できる。また、有機EL素子形成用基板は、有機EL層の形成工程における処理温度に耐え得る程度の耐熱性をもつことが好ましい。このような材料として例えばポリイミド材料が挙げられる。ただし、このような材料はポリイミド材料に限定されない。有機EL層配置面にポリイミド材料が形成された有機EL素子形成用基板は、ポリイミド材料のみで形成された基板であってもよいし、他の基材に配置されたポリイミド材料層の表面が有機EL配置面を構成する基板であってもよい。
【0109】
また、
図4を参照して説明した製造方法の実施例のように有機EL素子形成用基板17を剥離する工程を含まない場合であっても、本発明の有機EL複合光学素子の製造方法は有機EL層が形成される有機EL素子形成用基板の面に剥離用の表面処理を施してもよい。
【0110】
図1を参照して説明した製造方法の実施例は、上記工程(4)でフレキシブル性を有する有機EL素子形成用基板9を剥離している。ただし、本発明の有機EL複合光学素子の製造方法は、フレキシブル性を有する有機EL素子形成用基板を剥離する工程を含まなくてもよい。この場合、本発明の有機EL複合光学素子の製造方法は、有機EL層が形成される有機EL素子形成用基板の面に剥離用の表面処理を施してもよいし、施さなくてもよい。
【0111】
また、本発明の有機EL複合光学素子の製造方法は、有機EL素子形成用基板がフレキシブル性を有するものでなく、かつ、有機EL層が形成される有機EL素子形成用基板の面に剥離用の表面処理を施さない場合であっても、有機EL素子形成用基板を剥離する工程を含んで、光学部材、接着層、有機EL層がその順に積層された有機EL複合光学素子を形成する局面を含む。
【0112】
以上、本発明の実施例が説明されたが、本発明は、これらに限定されるものではなく、実施例で示された材料、数値、配置等は一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0113】
本発明で用いられる光学部材は上記実施例に示された光学部材3に限定されるものではない。本発明で用いられる光学部材は、光学素子が形成された光学部材であればどのような構造のものであってもよい。例えば、光学部材は、有機EL層に形成された有機EL素子の発光光を有機EL層側とは異なる方向(例えば有機EL層とは反対側)へ出射するものであってもよい。
【0114】
また、本発明において形成される有機EL層の構造は上記実施例に示された有機EL層7に限定されるものではない。本発明において形成される有機EL層は、有機化合物から成る発光層を備え、発光光を光学部材側へ出射する有機EL素子を含んでいるものであれば、どのような積層構造であってもよい。
【0115】
本発明の有機EL複合光学素子及びその製造方法において、光学部材の一例は、基材と、上記基材の上記有機EL層配置面に形成された凹部と、上記凹部の内壁に形成された光反射膜と、光透過性を有する材料からなり、上記凹部内に上記光反射膜を介して埋め込まれた光導波路と、を備えている。この光学部材に対して、有機EL層において、有機EL素子は、上記有機EL層が上記光学部材の上記有機EL層配置面に配置された状態で、上記凹部の形成領域の一部分を覆わないように上記光導波路上に配置され、かつ上記光導波路の上面を介して上記光導波路内に光を放射する位置に配置される。また、上記光学部材において、上記有機EL素子が上記凹部を覆っていない領域は、上記有機EL素子が出射した光を上記凹部外へ出射する光出射口を構成する。また、上記有機EL層は、上記光出射口の上に配置される部分に光透過性の膜を備えている。
【0116】
このような構成に対して、上記凹部の底面の少なくとも一部分は、上記凹部の深さが上記光出射口側で深くなるように傾斜又は湾曲しており、上記凹部の底面形状に起因して、上記光反射膜及び上記光導波路の底面は上記光導波路内で光が上記光出射口側へ反射されやすくなるように傾斜又は湾曲しているようにしてもよい。ただし、上記凹部の底面、上記光反射膜及び上記光導波路の底面は、このように傾斜又は湾曲していなくてもよい。
【0117】
また、上記光学部材は、上記光出射口の下方で上記凹部内に、上記面発光型発光素子が出射した光を上記光出射口側へ反射させるための凸部を備えているようにしてもよい。
【0118】
また、上記光学部材において、上記凹部はその底面の上記光出射口の下方の部分に凹形状の凹部内凹部を備えており、上記光反射膜は上記凹部内凹部の形状に起因して凹部を備えているようにしてもよい。
【0119】
また、上記光学部材において、上記凹部は、その底面の上記光出射口の下方の部分に凹形状の凹部内凹部を備えており、上記光反射膜は上記凹部内凹部の形状に起因して凹部を備えているようにしてもよい。ただし、光出射口の下方位置で凹部の底面及び光反射膜は、平坦であってもよいし、凸形状であってもよい。
【0120】
また、上記光学部材において、上記光出射口における上記光導波路3eの端面は、上記有機EL層配置面の垂線に対して上記光出射口側で広がる方向又は上記光出射口側で狭まる方向に傾斜している例を挙げることができる。ただし、当該端面は、有機EL層配置面の垂線と平行であってもよい。