特許第6182312号(P6182312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182312
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ショットブラスト装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 3/14 20060101AFI20170807BHJP
   B24C 5/06 20060101ALI20170807BHJP
   B24C 9/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B24C3/14
   B24C5/06 C
   B24C9/00 L
   B24C9/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-264615(P2012-264615)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-108494(P2014-108494A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】512312392
【氏名又は名称】株式会社フジミ
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】江口 光春
(72)【発明者】
【氏名】大内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】武田 誠
【審査官】 宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−085431(JP,A)
【文献】 特開2003−117830(JP,A)
【文献】 特開昭60−156582(JP,A)
【文献】 特開2003−025226(JP,A)
【文献】 実開昭51−012088(JP,U)
【文献】 特開平06−031434(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201907065(CN,U)
【文献】 中国実用新案第201147901(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 1/00−9/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット内に被処理製品を吊り下げ、かつ当該被処理製品を自転させながら、ショット材を投射することにより被処理製品を研掃処理するショットブラスト装置であって、
前記キャビネットの内部空間Sは水平断面形状が2n+2角形(nは2以上の整数)に形成されると共に、当該キャビネットを構成する複数の側面の内の2つの側面には、前記ショット材をキャビネット内に投射する投射口が形成されており、
当該投射口が設けられる側面は、何れかの側面の両側に存在する面同士であり、
当該投射口が形成される側面と、当該投射口が形成された面に対向する面以外の面に、前記被処理製品を前記キャビネット内に出し入れする搬入出口が形成されていることを特徴とする、ショットブラスト装置。
【請求項2】
前記投射口にはショットを回転翼で投射する投射装置が設けられており、
当該投射装置は、それぞれ回転翼の回転の向きが異なる、請求項1に記載のショットブラスト装置。
【請求項3】
前記キャビネットの内面は、弾力性を有する弾性シートで覆われており、前記搬入出口は上下方向にスライドするシャッターにより開閉自在に形成されている、請求項1〜の何れか一項に記載のショットブラスト装置。
【請求項4】
前記搬入出口には、前記シャッターが閉鎖されているか否かを確認するセンサーが設けられており、当該搬入出口がシャッターにより閉塞されていなければ、ショット材が投射されない、請求項3に記載のショットブラスト装置。
【請求項5】
前記キャビネット内には、被処理製品を吊下げる為のハンガーを着脱自在に係止しており、
当該ハンガーは、キャビネット内に保持される保持部が端部に形成された主軸と、当該主軸を基端として延伸する、被処理製品を吊下げるフック部分を備えており、
前記保持部はキャビネット内に軸周りに回動自在に設置され、
前記フック部分における基端はハンガーの回転中心の外側に存在すると共に、当該フック部分はハンガーの回転中心に向かって延伸している、請求項1〜4の何れか一項に記載のショットブラスト装置。
【請求項6】
ダイキャストにより製造された被処理製品を搬送する搬送路と、当該搬送路で搬送された被処理製品を研掃処理するショットブラスト装置とを含んで構成されたダイキャスト製品製造システムであって、
前記ショットブラスト装置は請求項1〜5の何れか一項に記載のショットブラスト装置が使用され、当該ショットブラスト装置は、キャビネット内に吊り下げられる被処理製品が1又は2個であることを特徴とするダイキャスト製品製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットとも称される粒状のショット材をダイカスト鋳造品等のワーク(被処理製品)に投射してバリの除去等を行うショットブラスト装置に関し、特に装置全体をコンパクトにしながらも斑なく短時間で研掃処理を行う事ができるようにしたショットブラスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ショットブラスト装置としては、ワーク(被処理製品)をキャビネット(投射室)内に吊り下げて、研掃位置で回転させてブラスト処理するハンガー式ショットブラスト装置が知られている。
【0003】
このようなハンガー式ショットブラスト装置としては、例えば特許文献1(特開2010−082727号公報)が提案されている。この特許文献1では、ハンガー式ショットブラスト装置でありながら、複数のワーク(被処理製品)をキャビネット(投射室)内に収容して処理することのできるショット処理装置が提案されている。
【0004】
即ち、この特許文献2に係るショット処理装置は、1個ないし複数個の被処理製品の筒状部を保持できるシャフトを備えたショット処理用治具と、該ショット処理用治具を回転保持する治具回転保持手段と、前記ショット処理用治具および治具回転保持手段が密閉される構造を有する投射室本体と、投射室本体に設置され被処理製品の方向に向けてショット材を投射する投射装置と、前記投射装置にて投射されたショット材を回収し繰り返し投射装置に供給するショット材循環手段とを備えて構成されている。
【0005】
また、従前においてはワークをハンガーコンベヤのハンガーに掛けて連続的に研掃する設備も提案されている。例えば特許文献2(実開平6−9864号公報)では、製品をハンガーコンベヤのハンガーに掛けて連続的に研掃する設備における研掃室の製品入り口および出口にそれぞれ配設される装置であって、箱体を成し製品入り口および製品出口をそれぞれ有しかつこれら製品入・出口のうち一方が前記研掃室を構成するキャビネットに連通する入り口本体または出口本体と、この入り口本体7または出口本体の内部に支持軸を介して水平面内で回転可能に配設され上下方向へ指向する回転体と、この回転体に放射状に装着された上下方向へ指向する複数の仕切り板と、前記支持軸に嵌着され前記ハンガーコンベヤの移送用チェンと係合する鎖車と、前記入り口本体または出口本体の内面に取り付けられ前記仕切り板の外側端にそれぞれ係合可能な複数のゴム板とを具備したハンガー式ショットブラスト設備における製品入・出口装置が提案されている。
【0006】
更に特許文献3(特開2011−83889号公報)には、被処理製品を吊金具で吊って前記開口部から被処理製品セット位置へ搬入、搬出するための製品搬送装置を具備する、所謂モノレール式ショットブラスト処理装置が提案されている。この文献では、鋳造工程で砂が付着した鋳造品、又は、酸化スケールの付着した金属製品などの表面を満遍なく処理すること、作業工程を減らすこと、及び、処理後にショット材をキャビネット外部へと飛散させることなく、被処理製品を搬出可能なショットブラスト処理装置及びその処理方法を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平05−016135号公報
【特許文献2】特開2010−082727号公報
【特許文献3】特開2011−83889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ハンガー式ショットブラスト装置に関して、近年では処理能力を向上させる目的から、前記特許文献2に開示されているように、ハンガーコンベヤを使用して、ハンガーに掛けたワークを連続的に研掃する設備が主流になっている。また、特許文献3に開示されているように、モノレール式ショットブラスト処理装置を使用して、製造ラインに組み込むことも提案されている。
【0009】
しかしながら、かかる特許文献2や3で提案されている様なショットブラスト装置では、その周辺設備との組み合わせから、設備自体が大型化してしまい、一旦設置した場合には、その場所を変更する事が困難になってしまう。この為、製造ラインの変更が生じた場合には対処が困難であった。
【0010】
そこで本発明では、ショットブラスト装置を小型化し、任意の製造ラインに設置でき、また移動も容易であって、製造ラインの変更にも十分に対応でき、更に製造ラインにインラインで設置できるショットブラスト装置を提供する事を第一の課題とする。
【0011】
また、ショットブラスト装置の小型化に際しては、キャビネットを小型化する事が考えられるが、この場合でもワークに対するショットブラスト処理(以下、「研掃処理」ともいう)の能力を低下させることのないように注意しなければならない。
【0012】
即ち、キャビネットを小型化した場合には、当該キャビネット内における(投射された)ショット材の動向も十分に考慮しなければならず、特にワークに対する研掃処理を均等に行う為には、小型化したキャビネット内に於いても、ショット材がワーク全体に対して均等に当たる様に工夫しなければならない。更に当該ショットブラスト装置の処理能力を考えれば、1回あたりの鋳造サイクルにあった処理時間も短くするのが望ましい。
【0013】
そこで本発明は、小型化したキャビネットに於いても、ワーク全体に対して均等に研掃処理を行う事ができ、更に1回あたりの研掃処理時間を短くすることのできるショットブラスト装置を提供する事を第二の課題とする。
【0014】
更にアルミニウムなどのダイカスト製品の製造に際しては、インゴットの溶解、金型への配湯、鋳造、仕上げ、ショットブラストの工程が行われる。そしてこの工程において、ランナーやオーバーフローなどの部分を取り外す仕上げ工程では、被処理製品(以下、「ワーク」とも言う)が1個ずつ製造ラインに供給されることになる。依って当該ショットブラスト工程においても、被処理製品を1個ごとに研掃処理できれば、製造ラインにおける待ち時間を減じることができ、製造管理も容易に行うことができる。
【0015】
そこで本発明では、ダイカスト製品の製造に際して、ワークを1個ずつ搬送して加工・処理することのできるダイカスト製品の製造ラインを提供することを第三の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、キャビネットを小型化し、当該キャビネット内に自転するハンガーを係止するように構成したショットブラスト装置において、ショット投射機の設置およびキャビネットの形状に新規な工夫を施したショットブラスト装置を提供するものである。
【0017】
即ち本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、キャビネット内に被処理製品を吊り下げ、かつ当該被処理製品を自転させながら、ショット材を投射することにより被処理製品を研掃処理するショットブラスト装置であって、前記キャビネットの内部空間は水平断面形状が2n+2角形(nは1以上の整数)に形成されると共に、当該キャビネットを構成する複数の側面の内の何れか1以上の側面には、前記ショット材をキャビネット内に投射する投射口が形成されているショットブラスト装置を提供する。
【0018】
上記キャビネットの内部空間とは、被処理製品を収容して研掃処理を実施する空間であり、即ちショット材が打ち出される空間である。そして本発明にかかるショットブラスト装置では、当該空間の水平断面形状(即ち横断面形状)が、四角形、六角形、八角形など2n+2角形(nは1以上の整数)となるように形成する。
【0019】
研掃処理を実施するキャビネットの内部空間を、水平断面形状が2n+2角形(nは1以上の整数)となるように形成していることから、何れかの側面からショット材(以下「投射材」とも言う)を投射した場合でも、当該投射したショット材は対向する内壁面に当たり、その跳ね返りにより、被処理製品の反対側に対してもショット材を当てることができる。よって、キャビネットの容積を小さく形成した場合であっても、当該小さい空間を最大限利用して、キャビネット内に設置した被処理製品を効果的に研掃処理することができる。
【0020】
なお本発明においては、当該キャビネットの内部空間の形状、特に水平断面形状を規定するものであり、その外形や、縦断面形状については特に制限するものではない。したがって、当該キャビネットの外形や、縦断面形状については、任意に形成する事ができる。
【0021】
そして本発明にかかるショットブラスト装置において、投射したショット材の跳ね返りを有効かつ確実に利用する為には、前記キャビネットの内部空間の水平断面形状を六角形(即ち、n=2)に形成することが望ましく、更に投射口を2つの側面に設け、当該投射口が設けられる側面は、各面に対する垂線の交差角が120°となる面同士、即ち何れかの面の両側に存在する面同士である事が望ましい。
【0022】
このように当該水平断面形状を六角形に形成した場合には、投射口が形成された面に対向する面を広くすることができ、その結果、跳ね返るショット材の動向を予想しやすくなり、安定した品質で研掃処理を実施することができる。更に当該水平断面形状を六角形に形成して交角が120°となる向きでショット材を投射する事により、ショット材を投射する側の面及びこれに対向する面(ショット材が当たる面)の組合せの他に、少なくとも2つの面を確保する事ができる。そして、この2つの面の内の少なくとも何れかを、被処理製品をキャビネット内に出し入れする為の搬入出口とすることにより、ショット材を直接搬入出口に向けて投射する事態を無くす事ができ、当該ショット材が搬入出口近傍に蓄積するといった問題を回避する事ができる。
【0023】
そして前記の投射口には、ショット材を投射する為に、当該ショット材を回転翼で投射する投射機が設けられる。そしてキャビネット内に前記投射口が2つ設けられる場合、各投射口に設けられる投射機同士は、それぞれ回転翼の回転の向きが異なる事が望ましい。例えば何れかの投射機の回転翼が上向きに回転する場合、他の投射機の回転翼は下向きに回転するように形成する事ができる。更に何れかの投射機の回転翼が上下方向に回転する場合、他の投射機の回転翼は横方向に回転するように形成する事ができる。この様に形成する事により、当該ショット材を様々な方向に投射することができ、よって被処理製品に対して、様々な方向からショット材を当てることができる。そして当該被処理製品をキャビネット内で回転させる事により、より均等に研掃処理を実施する事ができる。
【0024】
即ち、本発明に係るショットブラスト装置は、ダイキャスト製品の製造ラインに組み込むことができるように、1個ずつ搬送されるワークを加工・処理できるようにキャビネットを小型化したものである。そしてこの様に小型化したキャビネットに於いても均等且つ短時間でワークを研掃できるようにするべく、前記の様にキャビネットの形状や、投射機から投射されるショット材の投射方向を工夫したものである。更に、キャビネットを小型化する事により、研掃処理に使用するショット材の使用量を減じ、また投射機に設けられるモーターも小型化し消費電力を減じる事ができ、よってランニングコストを抑えたショットブラスト装置とするものである。
【0025】
更に本発明に係るショットブラスト装置では、前記キャビネットを構成する何れかの側面には、被処理製品をキャビネット内に出し入れする為の搬入出口を設けると共に、この搬入出口は上下方向にスライドするシャッターにより開閉自在に形成されている事が望ましい。
【0026】
キャビネット内に対するワークの搬入出口は、研掃処理の間中、投射したショット材がキャビネット外に放出されることのないように閉鎖されていることが必要である。そしてこの搬入出口を閉鎖するものとして、蝶番等で止めた何れかの一辺を軸に弧を描いて開閉するドアを設置することも考えられる。しかしながら、かかるドアの開閉に際して、当該ドアは弧を描いて移動することから、当該ドアの内側に付着したショット材も、ドアの移動範囲に広く散乱してしまう事が考えられる。そこで、このような搬入出口の開閉に伴うショット材の散乱を阻止するべく、当該搬入出口は上下方向にスライドするシャッターにより開閉することが望ましい。
【0027】
また本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、ショットブラスト装置において好的に使用することのできる被処理製品のハンガーであって、キャビネット内に被処理製品を係止して軸周りに回転する被処理製品のハンガーを提供する。即ち、ショットブラスト装置におけるキャビネット内に着脱自在に係止される、被処理製品を吊下げる為のハンガーであって、当該ハンガーは、キャビネット内に保持される保持部が端部に形成された主軸と、当該主軸を基端として延伸している被処理製品を吊下げるフック部分を備えており、前記保持部はキャビネット内に軸周りに回動自在に設置され、前記フック部分における基端はハンガーの回転中心の外側に存在すると共に、当該フック部分はハンガーの回転中心に向かって延伸しているハンガー式ショットブラスト装置に使用されるハンガーを提供する。
【0028】
かかるハンガーは、例えば保持部が形成された主軸をクランクシャフトのように凸状に曲折させて形成すると共に、この主軸において凸状に曲折することにより出っ張った部分にフック部分を設けて形成することができる。このように形成したハンガーにおいては、フック部分に被処理製品を吊り下げる際、当該被処理製品が主軸の保持部同士間(即ち回転中心)に存在するように吊り下げることにより、当該被処理製品は、主軸の保持部において回転することができる。したがって、当該主軸の保持部をキャビネットにおける横断面の中心に設けることにより、当該被処理製品は、キャビネット内の中心で回転することができる。
【0029】
そして、例えばキャビネットの内部空間の水平断面形状を六角形に形成し、何れかの面の両側に存在する面に投射口を形成した場合には、当該投射口から投射されるショット材はキャビネットの中心を回転する被処理製品に向かって投射されることになり、被処理製品の表面全体に、ほぼ均等にショット材を当てることができる。したがって、このハンガーを使用したショットブラスト装置により研掃処理を行うことにより、装置全体を小型化しながらも、被処理製品を均等に研掃することができ、且つ短時間で研掃処理を行うことが可能になる。
【0030】
また本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決するために、前記ショットブラスト装置を用いて形成されたダイキャスト製品の製造システムを提供する。
【0031】
即ち、ダイキャストにより製造された被処理製品を搬送する搬送路と、当該搬送路で搬送された被処理製品を研掃処理するショットブラスト装置とを含んで構成されたダイキャスト製品製造システムであって、前記ショットブラスト装置は、前記本発明にかかるショットブラスト装置が使用され、当該ショットブラスト装置は、キャビネット内に吊り下げられる被処理製品が1又は2個であることを特徴とするダイキャスト製品製造システムである。
【0032】
かかるダイキャスト製品製造システムにおいて、ベルトコンベアなどで構成される搬送路に供給される被処理製品は、ランナーやオーバーフローなどの部分を取り外す仕上げ工程が完了した被処理製品であっても、鋳造された被処理製品であっても良いが、少なくとも研掃処理が施されるべき被処理製品である。
【0033】
また、この搬送路によって搬送される被処理製品は、1個ずつ並べられることにより、連続的に被処理製品を搬送することができ、これにより何れかの加工・処理ブースにおいて、被処理製品が留まってしまうといった事態を回避することができる。
【0034】
そして本発明にかかるショットブラスト装置により、被処理製品を1個又は2個ずつ研掃処理することができるのであるから、ダイキャスト製品の製造ライン全体において、何れかのワーク・ステーションにワークが留まってしまうことがなくなる。よって製造工程におけるアイドル時間(待ち時間)を大幅に削減し、工程内リードタイム(=待ち時間+作業時間+移動時間)の短縮化を図ることができる。この為、当該ダイキャスト製品の製造ラインに設置されるショットブラスト装置は、キャビネット内に吊り下げられる被処理製品が1又は2個であり、短時間で少量の被処理製品に対して研掃処理を実施するものであることが必要である。
【発明の効果】
【0035】
上記本発明にかかるショットブラスト装置によれば、ショットブラスト装置を小型化していることから、ダイキャスト製品の製造ラインなどにも設置することができ、特に当該製造ラインにインラインで設置する事が可能になる。よって被処理製品の生産管理・工程管理を簡素化することができる。また、製造ラインを搬送される被処理製品(1個)ごとに研掃処理を実施できることから、工程内リードタイムを大幅に短縮することができる。
【0036】
特に本発明にかかるショットブラスト装置では、このような少量の被処理製品についても研掃処理を実現できるようにキャビネットを小型化しながらも、キャビネット内におけるショット材の動向を考慮した結果、被処理製品の何れかの部位を研掃し過ぎたり、何れかの部位の研掃処理が十分でない等の問題をなくして、被処理製品全体を均等に研掃することができるようになっており、更に研掃時間を大幅に短縮すると共に、一回の研掃処理で使用するショット材の量も大幅に減じることでランニングコストを削減できるようになっている。そして使用するショット材の使用量を減じることで、モーターも小型化が可能であり、その消費電力を抑えて、よりランニングコストを削減することができる。
【0037】
そして、当該ショットブラスト装置を小型化していることにより、仮に製造ラインの変更や移設があった場合でも迅速に対応することができるようになっている。
【0038】
更に、ショットブラスト装置では、その小型化に際してキャビネットを小型化することが可能であり、投射したショット材の跳ね返りなども利用することにより、被処理製品に対するショットブラスト処理(以下、「研掃処理」ともいう)の能力を低下させることがなく、被処理製品に対する研掃処理を均等且つ迅速に行うことのできるショットブラスト装置を提供できる。
【0039】
更にダイカスト製品の製造に際して、インゴットの溶解、金型への給湯、鋳造、仕上げ、ショットブラストの工程が行われ、仕上げ工程では被処理製品を1個ずつ製造ラインに供給する場合であっても、研掃処理も1個ずつ行うことができるようにすることで、製造ラインにおける待ち時間を減じることができ、製造管理も容易に行うことができるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本実施の形態に係るショットブラスト装置を示す側面透視図
図2】本実施の形態に係るショットブラスト装置のキャビネットの横断面図
図3】本実施の形態に係るショットブラスト装置のキャビネットの縦断面図
図4】他の実施の形態に係るショットブラスト装置のキャビネットの横断面図
図5】本実施の形態に係るショットブラスト装置のキャビネットの正面透視図
図6】他の実施の形態に係るショットブラスト装置のキャビネットの縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかるショットブラスト装置10を具体的に説明する。
この実施の形態にかかるショットブラスト装置10は、図1に示すように、被処理製品であるワークWを収容するキャビネット20と、このキャビネット20における投射口22に設けられたショットの投射装置30と、キャビネット20内に投射されたショット材を回収するショット材回収口24から出てきたショット材をホッパ40に移送するショット搬送装置42と、キャビネット20内で生じたダストを吸い取る集塵機(又は「吸塵機」。以下同じ。)への吸い込み口を備えて構成されている。
【0042】
このように形成されたショットブラスト装置10においては、ホッパ40から供給されたショット材を、投射装置30により、投射口22からキャビネット20の内部空間Sに投射する。特に、本実施の形態において使用するショット材としては、例えば、球径0.3mm〜1.0mmのステンレス球を用いることができる。そしてキャビネット20のサイズを小さくしていることから、使用するショット材の量を大幅に削減することができる。
【0043】
そして投射口22から投射されたショット材は、キャビネット内に吊り下げられたワークWにあたり、ワークWに付着しているバリ等を除去してワークWを研掃する。特に本実施の形態では、アルミダイキャストなどによって成型された鋳造品とすることができ、当該鋳造品は後述するハンガー50に吊り下げた状態で、キャビネット20内にセットされることになる。
【0044】
そして投射されたショット材は、ワークWに当たった後、キャビネット20内に落下することになる。この落下したショット材は、キャビネット20の底面などに形成されたショット材回収口24からキャビネット20の外に移動し、そしてバケットエレベータなどのショット搬送装置42によって、再びホッパ40内に回収される。
【0045】
更に、キャビネット20内に収容されるワークWは、その外面全体を均等に研掃処理する為に、研掃処理中は回転させる事が望ましい。そこで、図1に示すショットブラスト装置10では、キャビネット20の上面には、ワークWを吊下げる軸を軸周りに回転させる為のモーターなどの回動手段23を設置している。また、このキャビネット20内におけるワークWの回転は、その回転数(回転速度)や回転方向を任意に変更できるように構成するのも望ましい。この場合、回転手段の回転数(回転速度)や回転方向を変速機その他の方法で制御する事ができる。
また、この図1において、キャビネット20から排出されるショット材、及びホッパ40から供給されるショット材を、夫々案内する為、配管・チューブ等の移送手段46を設けている。
【0046】
そして、被処理製品となるワークWが例えば鋳物などである場合には、研掃処理に際して、ワークWから取り除かれたバリ等のダストが発生する。そこでこの様なダストをキャビネット20内から迅速に取り出す為に、当該キャビネット20の上面には、集塵機につながる排気管48が設けられている。特にこの実施の形態に係るショットブラスト装置10では、キャビネット20の容積を小さくしている事から、当該集塵機の大きさも小型化する事ができ、これにより当該ショットブラスト装置10の移設などを容易にすることができ、また製造ラインへの設置を可能としている。
【0047】
特に本実施の形態にかかるショットブラスト装置10では、前記研掃処理を実施するキャビネット20は、水平断面形状が六角形に形成されている。図2は当該キャビネット20の水平断面図であり、図3におけるA−A矢視図である。この図2に示すように、水平断面形状が六角形に形成されたキャビネット20において、ワークWの搬入出口28に対向する面の両側に存在する夫々の面には、ショット材をキャビネット20内に投射する投射口22が形成されている。そして各投射口22には、ショット材を回転翼32などにより付勢して投射する投射装置30が設けられている。
【0048】
投射装置30によって付勢されたショット材は、投射口22からキャビネット20内に打ち出され、本実施の形態では六角筒状に形成されたキャビネット20の軸心方向(中心方向)に向けて投射されている。この時、投射口22が形成されている面は、六角筒における何れかの壁面の両側に存在する面に形成されていることから、各投射口22から投射されるショット材はキャビネット20の軸心位置において120°に交差することになる。
【0049】
以上のように投射口22を形成してショット材を投射することにより、当該ショット材は、直接ワークWの搬入出口28に向かって投射されることはなくなり、ショット材の漏洩などの問題を解消することができ、またワークWの搬入出口28の損傷を阻止することができる。更に、当該ショット材は、交差する向きに投射されることから、何れかの投射口22から投射されたショット材が、他の投射口22に入り込むといった事態を極力回避することができる。
【0050】
各投射口22から中心に向けて投射されたショット材は、被処理製品であるワークWに当たり様々な方向に反射する他、ワークWに当たらなかったショット材は、対向する内面に当たって反射し、当該ワークWの反対側の面を研掃処理することができる。よってこの実施の形態にかかるショットブラスト装置10では、キャビネット20内に2方向からショット材を打ち出しながらも、ワークWにおける4方向において研掃処理を実施できる様に構成されている。
【0051】
また、各投射口22に設けられるそれぞれの投射装置30は、相互に回転翼32の回転方向が逆向きになるように設置されている。即ち、図3に示すように、何れかの投射装置30(図3における左側の投射装置30L)は、上から下に向かってショット材を投射するように回転翼32が回転し、他方の投射装置30(図2における右側の投射装置30R)は、下から上に向かってショット材を投射するように回転翼32が回転している。このような回転翼32の回転方向の違いは、例えば回転翼32を回転させるモーターを相互に逆向きに設置することによっても実現できる。
【0052】
なお、当然のことながら、研掃対象となるワークWの形状次第では、各投射装置30が同じ向きにショット材を投射するように構成することもできる。また、何れかの投射装置30を、回転翼32の回転方向が横向きになるように設置し、他方の投射装置30を、回転翼32の回転方向が縦向きになるように設置することもできる。このようにショット材の投射方向を様々な組み合わせで調整することにより、例えばワークWが穴部や入り組んだ部分を有する場合など、単一の方向からショット材を投射しただけでは十分に研掃できないワークWであっても、隅々まで研掃処理を行うことが可能になる。
【0053】
更に、上記のように投射したショット材が、対向する壁面に当たって、その反射によりワークWの反対側の面を研掃する場合には、図4に示すように、キャビネット20の内面を弾力性を有する弾性シート26等の材料で覆うことも望ましい。例えば、当該キャビネット20の内面を合成ゴム又は天然ゴムからなる弾性シート26で覆うことにより、投射口22から射出されたショット材は、当該弾性シートに跳ね返されて、運動エネルギーの減衰を極力小さくして、ワークWを研掃することができる。また、かかる弾性シート26でキャビネット20の内面をカバーすることにより、ショット材によるキャビネット20の内壁面の磨耗も予防することができ、耐久性に優れたショットブラスト装置10とすることができる。
【0054】
図5は、本実施の形態におけるショットブラスト装置10のワークWの搬入出口28を示す要部正面図である。特に本実施の形態にかかるショットブラスト装置10では、ワークWの搬入出口28の開閉動作に際して、キャビネット20内のショット材が外部に散乱されることのないように、上下方向にスライド自在に配置されたシャッターによって、当該ワークWの搬入出口28を開閉するように構成している。かかるシャッターは、例えばワークWの搬入出口28の左右方向における開口端面に上下方向に延びる溝を形成し、この溝内に板状のシャッターを保持することにより、上下方向にスライド自在とする事ができる。
【0055】
またショット材は、研掃処理に際してワークWの搬入出口28の近傍に堆積する事も考えられる。そこでこの様な場合には、当該ワークWの搬入出口28の下方に、外側に向かって広がるフランジ状の受け部分(図示せず)を形成し、当該フランジ状の受け部分で、シャッターの上下動(即ち、ワークW搬入出口28の開閉)に際してこぼれ出るショット材を受け、これをキャビネット20内に戻すようにする事が望ましい。
【0056】
更に、このワークWの搬入出口28には、閉鎖されているか否かを確認するセンサーを設けることが望ましい。即ち、ワークW搬入出口28が前記したシャッターなどにより閉塞していなければ、ショット材が投射されない様に形成する事が望ましい。ショットブラスト装置10における研掃処理時の安全性を高める為である。このようなセンサーは例えばシャッターが下りている時に通電するスイッチやセンサーなどを使用する事ができる。
【0057】
図6は、ショットブラスト装置10で好適に使用することのできるハンガー50を使用した例を示す縦断面図である。この図に示すワークWのハンガー50は、クランクシャフト状に形成された主軸52の上下端がキャビネット20内に保持されている。より具体的には、主軸52の上端は、当該主軸52を軸周りに回転させるモーターなどの回動手段23に取り付けられ、下端はキャビネット20の底面に形成された穴内に収容されている。この状態で主軸52が軸周りに回動する事により、主軸52において横方向に凸状に出っ張っている部分54は、当該主軸52の回転中心の周りを回る事になる。
【0058】
そしてこの主軸52の凸状に形成されている箇所54には、当該ハンガー50の回転中心に向かって伸びるフック部分56が形成されている。特に本実施の形態では、当該フック部分56は2ヶ所に形成されており、且つ当該ハンガーの回転中心を超える長さで形成されている。なお、当該フック部分56の先端は、係止したワークWが研掃処理に際して落下することのないように、上向きに曲折させる事もできる。また当該フック部分56を1つ形成しても良い。更に当該主軸52は、モーターの回転軸又は当該回転軸から延伸する軸に対して着脱自在に設けることも望ましい。例えば、当該モーター等の回動手段23の軸部から延伸する先端をリング状に形成すると共に、当該主軸52の上端をリングに係止する鉤状に形成する事もできる。
【0059】
この様に形成したハンガー50を使用する事により、研掃処理に際してハンガー50が軸周りに回転したとしても、ワークWは常に回転中心に存在する事ができ、よって各投射口22とワークWとの距離を大凡一定に保つ事ができる事から、均等に研掃処理を行う事ができる。
【0060】
そして、本実施の形態に係るショットブラスト装置10は、そのキャビネット20の大きさを、図5図6に示すように1つ又は2つのワークWを収容できる大きさに形成する事により、ダイキャスト製品の製造ラインにインラインで組み込んだ場合であっても、搬送路で移送されてくる各ワークW毎に研掃処理を行う事ができ、よってワークWのアイドル時間を大幅に削減する事ができる。
【0061】
更に、この様にキャビネット20の容積を小さくする事により、一回の研掃処理で使用するショット材の量を少なくすることができ、更に研掃処理に際して生じたダストを吸引する為の集塵機を小型化する事ができ、容易に設置・移動する事ができる。
【0062】
更に、上記の様に形成することで、ショットブラスト装置10全体を小型化する事ができ、これにより製造ラインの変更や移設があった場合でも柔軟に対応する事ができる。
【符号の説明】
【0063】
10:ショットブラスト装置, 20:キャビネット, 22:投射口, 23:回動手段, 24:ショット材回収口, 26:弾性シート, 28:搬入出口, 30:投射装置, 32:回転翼, 40:ホッパ, 42:ショット搬送装置, 46:移送手段, 48:排気管, 50:ハンガー, 52:主軸, 56:フック部分, S:内部空間, W:ワーク
図1
図2
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図5
図6