(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記車速検出手段の検出出力により、車両の走行状態が検出された時に、ブレーキペダルからの荷重指令出力が、荷重検出手段の検出荷重出力に対して乖離しても、直動機構のブレーキ荷重を変動させない不感帯を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電動ブレーキ装置。
【背景技術】
【0002】
電動モータで摩擦パッドをブレーキディスクへ押し付け、押し付けたパッドに荷重を掛けて制動するタイプの電動ブレーキとして、例えば、特許文献1と2に記載のものがある。
これらの電動ブレーキは、電動モータの回転を直線運動に変換する直動機構を備えている。直動機構には、直線変換方法としてボールネジ機構を備えたもの(特許文献1)や遊星歯車減速機構を備えたもの(特許文献2)などがある。
そして、これらの電動ブレーキでは、制動力を制御するためには、荷重検出センサを設ける必要がある。
このような荷重検出センサを、例えば、
図1の本願実施形態の電動ブレーキ2の磁気式荷重センサを用いて説明する。本願の磁気式荷重センサ24は、
図1、
図4に示すように、軸方向に間隔をおいて対向する円環板状のフランジ部材40と支持部材41及び、磁界を発生する磁気ターゲット42と磁気センサ43で構成されている。この支持部材41は、フランジ部材40の軸方向の後方に位置するように回転軸20に取り付けられており、この回転軸20の直交方向で磁気センサ43と磁気ターゲット42が対向するように配置されている。
そのため、直動機構6が摩擦バッド5をブレーキディスク7へ押し付けると、直道機構6に作用する反力によって、フランジ部材40に支持部材41へ向かう軸方向の荷重が作用する。すると、フランジ部材40が外周部を支点として軸方向に撓み、その撓みによって磁気ターゲット42と磁気センサ43の相対位置が軸方向に変化する。そのため、磁気センサ43の出力信号に基づいて摩擦パッド5に掛かる荷重を検出するというものである。
したがって、この検出値と目標値(ブレーキペダルの踏み込み量)との差がゼロとなるように電動モータ1を作動して制動力を制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の電動ブレーキでは、車両の停車中(例えば、信号待ち)に操縦者がブレーキ操作を行うと、停車中にも関わらず、前記ブレーキ操作の目標値と荷重検出センサの検出値との差がゼロとなるように電動モータを作動させる。この電動モータ出力は、「回転数×トルク」で与えられるため、電力消費に繋がり電費が悪化する。
特に、上記のような直動機構を用いる電動ブレーキでは、ブレーキの解除操作は電動モータを停止(オフ)するのではなく、モータを逆転させて摩擦パッドと、摩擦パッドを押し付けたブレーキディスクとの係合を解消する。このように、ブレーキの作動と解除の両方で電力を使用するので、不要なブレーキ操作は電費を極めて悪化させる問題がある。
【0005】
そこで、この発明の課題は、不要なブレーキ操作を行っても電費を悪化させないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、この発明では、電動モータで駆動される回転軸の回転を直動機構で直線運動に変換して摩擦パッドをブレーキディスクに押しつける電動ブレーキと、前記ブレーキディスクに加わる荷重を検出する荷重検出手段の検出出力と、ブレーキペダルからのブレーキ荷重指令出力と、車両速度を検出する車速検出手段の検出出力が入力され、前記入力に基づいて電動モータを制御する制御手段で構成される電動ブレーキ装置において、車速検出手段の検出出力により、車両の停車状態が検出されたときに、ブレーキペダルからの荷重指令出力が、荷重検出手段の検出荷重出力に対して乖離しても、直動機構のブレーキ荷重を変動させない不感帯(デッドバンド)を設ける構成を採用することができる。
【0007】
このような構成を採用することにより、車両が停車していることが検出された場合は、ブレーキペダルからの荷重指令出力と、停車中の荷重検出手段の検出荷重出力を比較して、その差が乖離していても不感帯の幅であれば、ブレーキペダルを操作してもブレーキ荷重を変動させずに荷重を維持する。このようにすることにより、停車後のブレーキペダルの不必要な操作による電力消費を抑えることができる。
【0008】
このとき、上記不感帯を車両の走行時にも設けるとともに、その不感帯の幅は、車両の停車状態の不感帯の幅より狭いものとする構成を採用することができる。
【0009】
このような構成を採用することにより、不感帯を用いて走行中にブレーキの作動にゆとり(遊び)を持たせることで、不必要なペダル操作による電力消費を抑える。また、その幅は、ブレーキ動作に遅れが生じないように、車両の停車状態の幅よりも狭いものである。
【0010】
また、このとき、上記車両の停車状態の継続時間を検出するタイマ手段を備え、停車状態の経過時間に基づいて、不感帯の幅を変化させるという構成を採用することができる。
【0011】
このような構成を採用することにより、タイマ手段で計時する停車時間が長くなれば、操縦者がブレーキペダルの踏み込み位置を維持することが次第に難しくなり、ペダルの動揺が大きくなる。そのため、不感帯の幅を変化させて(例えば、広げて)、ブレーキペダルの操作でブレーキを作動し難くすることで電力消費を抑える。
【0012】
また、その際、上記車速検出手段が、車輪に設けられた車輪速センサである構成としたり、前記車速検出手段が、加速度センサである構成としたりすることができる。
【0013】
このとき、上記車両停車状態の判定を、車両速度を検出する車速検出手段の検出出力が所要時間の間ゼロであるという構成を採用することができる。
【0014】
このような構成を採用することにより、速度0を一定時間検出することで、その間に、例えば、車輪がロックして車両が慣性による走行をしても車両を停止させることができる。
【0015】
このとき、上記直動機構の直動部が、遊星ローラネジ機構、ボールネジ機構、滑りネジ機構、ボールランプ機構のいずれかである構成を採用することができる。また、上記いずれかの電動ブレーキ装置は、自動車のブレーキとして装備できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、上記のように構成したことにより、電動ブレーキ装置の電力消費を抑え、電費を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
この形態の電動ブレーキ装置は、
図1に示すように、電動モータ1で駆動される電動ブレーキ2と、制御手段3で構成されており、車両(主に4輪自動車)搭載用のものである。
【0019】
電動ブレーキ2は、キャリパボティ4と摩擦パッド5及び直動機構6で構成されている。
キャリパボディ4は、
図1に示すように、車輪と一体に回転するブレーキディスク7を間に挟んで対向するインナー部材8とアウター部材9をブリッジ10で連結した形状となっており、インナー部材8に設けた取り付け孔11に直道機構6を収容する構成になっている。
また、キャリパボディ4は、直動機構6の作動時の反力で、ブレーキディスク7の軸方向へスライド可能となるように、図示しないサスペンションに固定されたベース部材で支持されている。
【0020】
摩擦パッド5は、キャリパボディ4のアウター部材9に取り付けられるアウター側パッド5aと、インナー部材8の直道機構6に取り付けられるインナー側パッド5bで構成されている。
【0021】
直道機構6は、
図2及び
図3に示すように、回転軸20と、回転軸20の外周の円筒面に転がり接触する複数の遊星ローラ21と、これらの遊星ローラ21を囲むように配置された外輪部材22と、遊星ローラ21を自転可能に保持するキャリヤ23とで構成され、外輪部材22の軸方向の後方に磁気式荷重センサ24を配置した構成となっている。
【0022】
回転軸20は、電動モータ1と歯車機構(図示せず)を介して接続されており、電動モータ1の回転が、歯車25を介して入力されることにより回転駆動される。回転軸20は、キャリパボディ4のインナー部材8を貫通して形成された取り付け孔11の後方の開口から一端が突出した状態に挿入され、取り付け孔11からの突出部分に歯車25をスプライン嵌合して回り止めしてある。この歯車25は、取り付け孔11の軸方向の開口を塞ぐようにボルト26で固定した蓋27で覆われている。蓋27には、回転軸20を回転可能に支持する軸受28が組み込まれている。
【0023】
遊星ローラ21は、
図3に示すように、周方向に一定の間隔をおいて設けられた複数の遊星ローラ21からなり、各遊星ローラ21は、回転軸20の外周の円筒面に転がり接触している。そのため、回転軸20が回転すると、遊星ローラ21は、遊星ローラ21と回転軸20の間の摩擦によって回転する。
【0024】
外輪部材22は、
図2に示すように、キャリパボディ4のインナー部材8に設けられた取り付け孔11に収容され、その取り付け孔11の内周で軸方向にスライド可能に支持されている。この外輪部材22の軸方向の前端には、インナー側パッド5bの背面に形成された係合凸部29に係合する係合凹部30が形成され、この係合凸部29と係合凹部30の係合によって、外輪部材22がキャリバボティ4に対して回り止めされている。
【0025】
外輪部材22の内周には、螺旋凸条31が設けられている。また、遊星ローラ21の外周には、螺旋凸条31に係合する円周溝32が設けられている。そのため、遊星ローラ21が回転すると、外輪部材22の螺旋凸条31が円周溝32に案内されて、外輪部材22が軸方向へ移動するようになっている。この形態では、遊星ローラ21の外周にリード角が0度の円周溝32を設けているが、円周溝32の代わりに螺旋凸条31と異なるリード角をもつ螺旋溝を設けても良い。
【0026】
キャリヤ23は、遊星ローラ21を回転可能に支持するキャリヤピン23aと、その各キャリヤピン23aの軸方向前端の周方向の間隔を一定に保持する環状のキャリヤプレート26cと、各キャリヤピン23aの軸方向後端の周方向の間隔を一定に保持する環状のキャリヤ本体23bとからなる。このキャリヤ本体23bとキャリヤプレート23cは、遊星ローラ21を間に軸方向に対向しており、周方向に隣り合う遊星ローラ21の間に配置された連結棒33を介して連結されている。
また、キャリヤ本体23bは、滑り軸受34を介して回転軸20に支持され、回転軸20に対して相対的に回転することが可能となっている。さらに、遊星ローラ21とキャリヤ本体23bの間には、遊星ローラ21の自転がキャリヤ本体23bに伝達するのを遮断するスラスト軸受35が組み込まれている。
そして、各キャリヤピン23aは、周方向に間隔をおいて配置された複数のキャリヤピン23aに外接するように装着された縮径リングバネ36で径方向内方に付勢されている。この縮径リングバネ36の付勢力によって、遊星ローラ21の外周は回転軸20の外周に押さえ付けられ、回転軸20と遊星ローラ21の間の滑りが防止されている。そのため、縮径リングバネ36は、付勢力を遊星ローラ21の軸方向全長にわたって作用させるため、キャリヤピン23aの両端に設けている。
【0027】
磁気式荷重センサ24は、
図4に示すように、軸方向に間隔をおいて対向する円環板状のフランジ部材40と支持部材41及び、磁界を発生する磁気ターゲット42と磁界の強さを検出する磁気センサ43とで構成されている。
【0028】
フランジ部材40は、
図5に示すように、支持部材41に向けて突出する筒部44を有しており、筒部44の外径面は、支持部材41の内径面と径方向に対向している。この筒部44の外径面に形成された面取り部45に磁気ターゲット42が固定され、支持部材41の内径面に形成された溝46に磁気センサ43が固定されている。このとき、フランジ部材40及び支持部材41は鉄などの磁性材で形成されている。
【0029】
支持部材41は、フランジ部材40との対向面に環状壁47が形成され、その環状壁47がフランジ部材40の外径側部分を支持し、フランジ部材40と支持部材41の間隔を保持する。
【0030】
磁気ターゲット42は、
図6に示すように、径方向内端と径方向外端に磁極を有するように半径方向に磁化された2個の永久磁石で構成されている。2個の永久磁石は、逆の極性を有する磁極(N極とS極)が軸方向に並ぶように隣接して配置されている。
【0031】
磁気センサ43は、ここでは、ホールICを用いているが、ホールIC以外のセンサ、例えば、MRセンサやMIセンサなどを用いることも可能である。この磁気センサ43は、磁気ターゲット42の2個の永久磁石の隣り合う磁極の境目の近傍で軸直交方向(図では半径方向)に対向するように配置されており、周方向の位置が合致するようになっている。
【0032】
このような磁気式荷重センサ24は、フランジ部材40と支持部材41の外周に断面円弧状の位置決め溝48、49が形成され、この位置決め溝48、49に共通のキー部材50(
図2参照)を嵌め込むことで、磁気ターゲット42の周方向位置と磁気センサ42の周方向位置が合致するようにフランジ部材40と支持部材41を周方向に位置決めするようになっている。そのため、この磁気式荷重センサ24は、フランジ部材40に支持部材41に向かう方向の軸方向荷重が作用すると、その軸方向荷重に応じてフランジ部材40が外周部を支点として軸方向に撓み、その撓みにより磁気ターゲット42と磁気センサ43の相対位置が変化し、その相対位置の変化に応じて磁気センサ43の出力信号が変化する。したがって、フランジ部材40に作用する軸方向荷重の大きさと、磁気センサ43の出力信号の関係を予め把握しておくことにより、磁気センサ43の出力信号に基づいてフランジ部材40に作用する軸方向荷重の大きさを検出することができる。
【0033】
そして、このような磁気式荷重センサ24は、具体的には、フランジ部材40の軸方向の後方に支持部材41が位置するようにして、
図2に示すように、取り付け孔11の内部に嵌め込まれている。この磁気式荷重センサ24とキャリヤ23の間には、キャリヤ23と一体に公転する間座51と、間座51と磁気式荷重センサ24の間で軸方向荷重を伝達するスラスト軸受52が組み込まれている。フランジ部材40の内周には、回転軸20を回転可能に支持する転がり軸受53が組み込まれている。
【0034】
さらに、磁気式荷重センサ24は、支持部材41の外周縁を取り付け孔11の内周に装着した止め輪54で係止することによって軸方向の後方への移動が規制されている。そして、この磁気式荷重センサ24は、間座51とスラスト軸受52を介してキャリヤ本体23bを軸方向に支持することで、キャリヤ23の軸方向の後方への移動を規制している。また、キャリヤ23は、回転軸20の軸方向の前端に装着された止め輪55で軸方向の前方への移動も規制されている。したがって、キャリヤ23は、軸方向の前方と後方への移動がいずれも規制され、キャリヤ23に保持された遊星ローラ21も軸方向への移動が規制された状態となっている。
【0035】
制御手段3は、ブレーキ制御用のECU (Engine Control Unit)で、マイクロコンピュータを備えており、
図7のように、電動ブレーキ2、車速センサ60、車輪速センサ61、ペダルセンサ62、加速度センサ63が接続されている。
そのため、制御手段3には、各車輪Wの電動ブレーキ2の磁気式荷重センサ24からのブレーキ荷重と、車速センサ60からの車軸の回転数に基づく車速信号が入力される。さらに、車輪速センサ61からは、車輪Wごとの回転数に基づく車輪速度が入力されるとともに、ペダルセンサ(例えば、ストロークセンサ、圧力センサなどで構成される)62からブレーキペダルBの踏み込み量(ストローク)と踏み込み圧に基づく荷重指令出力及び、ABS(Antilock Brake System)の加速度センサ63からの出力が入力するようになっており、これらのセンサ出力に基づいて、電動ブレーキ2の電動モータ1へのコントロール出力(操作変数)を制御する。
【0036】
この形態は、上記のように構成されており、例えば、走行中の車両でブレーキペダルBを踏み込むと、その踏み込みをペダルセンサ62が検出して荷重指令出力を制御手段3へ入力する。制御手段3は、その荷重指令出力の踏み込み量やその踏み込み量の変化量などからブレーキ操作に見合うコントロール出力を算出する。このとき、車速センサ60が検出する車両の速度や各車輪速センサ61が検出する車輪速度から算出できる車両の進行方向なども加味してコントロール出力を算出する。そして、算出したコントロール出力を電動ブレーキ2の電動モータ1へ出力する。
【0037】
電動モータ1は、コントロール出力が入力すると、歯車機構で連結する回転軸20を回転させる。すると、遊星ローラ21がキャリヤピン23aを中心に自転しながら回転軸20を中心に公転する。このとき、螺旋凸条31と円周溝32の係合によって外輪部材22と遊星ローラ21が軸方向へ相対的に移動するが、遊星ローラ21は、キャリヤ23と共に軸方向への移動が規制されている。そのため、遊星ローラ21が移動せずに外輪部材22が軸方向へ移動する。このようにして、直動機構6は、電動モータ1で駆動される回転軸20の回転を外輪部材22の軸方向への直線運動に変換し、外輪部材22はインナー側パッド5bへ軸方向の荷重を付与してブレーキディスク7に押し付けることで制動力を発生させる。
その際、外輪部材22には、軸方向後方への反力が作用し、その反力は、遊星ローラ21、キャリヤ23、間座51、スラスト軸受52を介してキャリパボディ4を軸方向の後方へ動かし、キャリパボディ4のアウター部材9に取り付けられたアウター側パッド5aをブレーキディスク7に押し付ける。このようにして、アウター側パッド5aとインナー側パッド5bでブレーキディスク7を挟持する。
同時に、この外輪部材22に作用した反力は、磁気式荷重センサ24でも受け止められる。その結果、磁気式荷重センサ24はフランジ部材40が軸方向の後方へ撓み、磁気ターゲット42との相対位置が変化する。そのため、その相対位置の変化に応じて磁気センサ43の出力信号42が変化する。
この信号は制御手段3へフィードバックされ、ブレーキペダルBの踏み込み量(荷重指令出力)に対してブレーキ荷重を追従させて、
図8(a)の(ア)のように制御する。
【0038】
そして、上記のようにブレーキが作動して、
図8(b)の(イ)のように、車両が停車したことを制御手段3が車速検出手段である車速センサ60または車輪速センサ11の一方、あるいは両方の出力から検出する。この停車の判定は、例えば、速度0を一定時間検出することで、車両の停車後の慣性が収束するのを待つことが安全上からも好ましい。
また、ここでは、速度検出手段として車速センサ60や車輪速センサ61を用いたが、これらのセンサ60、61に代えて、例えば、ABSの加速度センサ63の出力を積分して速度検出手段として用いることもできる。このようにすると、車速を車輪や車軸の回転からできなく、車体の加速度から検出できる。そのため、加速度が0となったことを検出すれば停車したことがわかるので、速度0を検出する一定時間を短縮できる。
【0039】
また、こうして制御手段3は車両の停車を検出すると、例えば、
図8の(ウ)のように、電動モータ1のコントロール出力(操作変数)を変更する。
すなわち、制御手段3は、車両が停車したことを検出すると、その停車を検出したときのブレーキペダルBの踏み込み量を記憶する。具体的には、ペダルセンサ62からの荷重指令出力を一時的に記憶するとともに、その踏み込み量に対応するフレーキ荷重を保持する。そして、その保持したブレーキ荷重に対するブレーキペダルBの荷重指令出力を設定値として、その設定値の両サイドにブレーキペダルBの荷重指令出力に対する不感帯(デッドバンド)Dを設けた出力特性を用いる。ここで、不感帯Dは、例えば、中心値に定数を加算あるいは減算することで、出力特性をステップ状に変更すればよいので、プログラムの処理により容易に実現できる。
したがって、このような不感帯Dを設けることにより、例えば、信号待や踏切で(サイドブレーキを使わずに)ブレーキペダルBでの停車中に、無意識にブレーキペダルBを緩めたり踏み込んだりしても、停車中のブレーキ荷重は変動しない。
すなわち、制御手段3は、ブレーキペダルBを緩めたり踏み込んだりして、ブレーキペダルBからの荷重指令出力が電動ブレーキ2の磁気式荷重センサ24からのブレーキ荷重の検出出力と乖離しても、その乖離が予め決められた範囲であれば、ブレーキ荷重を変更しない。このため、停車中に不要なブレーキ操作が行われても電動モータ1は作動しない。
【0040】
特に、上記のような直動機構6を用いる電動ブレーキ2では、ブレーキ2の解除は、電動モータ1を停止するだけではなく、電動モータ1を逆転させて摩擦パッド5とブレーキディスク7との係合を解消するため、不要なブレーキ操作による電動モータ1の作動を規制する本発明は、電費を向上させる効果が期待できる。
【0041】
なお、上記のような不感帯Dを設けているが、停車中に意図的に大きなブレーキ荷重を要する場合は、ブレーキペダルBを強く踏み込んで、ブレーキペダルBの荷重指令出力が不感帯Dを超えるようにすればよい。逆に、ブレーキペダルBを解放して、ブレーキペダルBの荷重指令出力が不感帯Dより低下すればブレーキの解除もできる。そのため、このような状態をブレーキペダルBの操作範囲で可能とするように不感帯Dの幅は設定することで、通常のブレーキ操作に支障はない。
【実施例1】
【0042】
この実施例1は、不感帯Dを走行時に使用するようにしたものについて
図8(a)を使用して説明する。
この場合、走行時に使用する不感帯dは、車速検出手段である車速センサ60または車輪速センサ61あるいはその両方の出力によって、走行中であることを検出した場合に不感帯dを使用する処理を行う。また、その走行中の不感帯dの設定方法は、例えば、ブレーキペダルBの踏み込みが一定になった際の荷重指令出力を用いる。この一定出力の検出は、荷重指令出力のピークをホールド(ピークホールド回路を使用することもできる)すれば検出できる。
【0043】
このように構成される電動ブレーキ装置では、走行中の減速のためのブレーキペダルBの操作で操作にブレが生じた場合でも、電動ブレーキ2にコントロール出力が出力されないため、不要な動作を行わないようにできる。
そのため、走行中の不感帯dは、車中の不感帯Dのように無意識にブレーキペダルを緩めたり、踏み込んだりする場合のような大きく動揺するようなブレを吸収するものではなく、減速操作の際の小さなブレを吸収する程度のものでなければブレーキ動作に遅れを生じることが考えられる。
したがって、走行中の不感帯dは、
図8(a)に示すように、停車中の不感帯Dの幅(領域)より狭くなっている必要があり、実験や経験などにより適宜決められるものである。
【0044】
このように、走行中に不感帯を設けた制御を行うことで、不要なブレーキ操作による電力消費を抑えて電費を向上させることができる。
ちなみに、車速検出手段である車速センサ60または車輪速センサ61あるいはその両方の出力によって、車両が停車したことが検出された場合は、実施形態で述べた不感帯Dの処理を行う。
【実施例2】
【0045】
この実施例2は、停車時間を計時して不感帯を制御するものについて説明する。
そのため、制御手段3は、
図7の破線で示すように、タイマ手段70を備えた構成となっている。前記タイマ手段70は、停車時間を計時するためのもので、制御手段3が、停車を車速センサ60、車輪速センサ61、加速度センサ63から検出すると、計時を開始する。
タイマ手段70は計時を開始すると、例えば、所定の間隔でタイムアップを出力する。制御手段3は、タイムアップが出力されるごとに不感帯Dの幅を所定幅だけ広げる。こうすることで、操縦者の疲労に対処するのである。
すなわち、操縦者は、停車中にブレーキペダルBを踏み込む時間が長くなると疲労して、ブレーキペダルBを踏み込んでいるときのブレも大きくなると考えられる。そのため、そのブレに合わせて不感帯Dの幅を広げるのである。このとき、不感帯Dの増加幅と増加のタイミングは適宜決められるものである。
その結果、不要なブレーキ操作を規制して、電費を向上させることができる。
ちなみに、不感帯を広げる幅には上限を設けることは当然である。
【実施例3】
【0046】
この実施例3は、ブレーキペダルBの「遊び(踏み残り代を含む)」を考慮する事により、操縦者のブレーキ操作に即した制御を行うことを説明する。
ブレーキペダルBの「遊び」は、ブレーキペダルBの機械的な不感帯(デッドバンド)と考えられる。また、この「遊び」は、車両ごとのペダル調整によって微妙に違っているため、ブレーキのペダルBの操作とブレーキの動作との間に差を生じることがある。
そこで、ここでは、ブレーキペダルBの「遊び」を検出して電動ブレーキ2の制御に反映させる方法について説明する。
まず、ブレーキペダルBの遊びを検出する手段としては、ここでは、ペダルセンサ62と電動ブレーキ2の磁気式荷重センサ24を使用する。
すなわち、ブレーキペダルBを操作して、磁気式荷重センサ24が電動ブレーキの作動を検出すると、そのときのペダルストロークから操作開始のストロークを引けば「遊び」を検出できる。
したがって、検出した「遊び」に基づいて、制御手段3は、不感帯Dの幅を制御することで、ブレーキペダルBの「遊び」による差をなくすことができる。そのため、その差による不要なブレーキ操作を規制して、電費を向上させることができるというものである。
【実施例4】
【0047】
この実施例4は、電動ブレーキに用いる直動機構6の他の態様について述べる。
図9は、直動機構6としてボールネジ機構を採用したもので、回転軸20と一体に設けられたネジ軸80と、そのネジ軸80を囲むように設けられたナット81と、ネジ軸80の外周に形成されたネジ溝82とナット81の内周に形成されたネジ溝83の間に組み込まれた複数のボール84と、ナット81のネジ溝83の終点から始点へボール84を囲むように戻すリターンチュブ(図示せず)と、ナット81の軸方向の後方に配置された磁気式荷重センサ24とで構成されている。
この直道機構6は、回転軸20を回転させることによって、ネジ軸80とナット81を相対回転させて、ナット81を軸方向の前方へ移動させてインナー側パッド5bへ軸方向の荷重を加える。このとき、ネジ軸80には、軸方向の後方への反力が作用し、その反力は間座51、スラスト軸受52を介して磁気式荷重センサ24に加わるようになっている。そして、その反力によって磁気式荷重センサ24のフランジ部材40が軸方向の後方に撓み、磁気ターゲット42と磁気センサ43の相対位置が変化する。そのため、磁気センサ43の出力信号は、インナー側パッド5bに加えられる軸方向の荷重の大きさに応じて変化し、この磁気センサ43の出力信号に基づいて、インナー側パッド56の押し圧力を検出することができる。
【0048】
図10は、直動機構6としてボールランプ機構を採用したもので、回転軸20の外周に回り止めされた回転ディスク90と、回転ディスク90の軸方向の前方に対向して配置された直動ディスク91と、直動ディスク91と回転ディスク90の間に挟まれた複数のボール92と、直動ディスク91の軸方向の後方に配置された磁気式荷重センサ24とで構成されている。
この直動機構6は、回転軸20を回転させることによって、直動ディスク91と回転ディスク90を相対回転させて、直動ディスク91を軸方向へ移動させてインナー側パッド5bに軸方向の荷重を加える。
このとき、回転ディスク90には、軸方向の後方への反力が作用し、その反力は、間座51、スラスト軸受52を介して磁気式荷重センサ24に加わる。そして、その反力によって磁気式荷重センサ24のフランジ部材40が軸方向の後方に撓み、磁気ターゲット42と磁気センサ43の相対位置が変化する。そのため、磁気センサ43の出力信号がインナー側パッド5bに加わる軸方向荷重の大きさに応じて変化し、この磁気センサ43の出力信号に基づいて、インナー側パッド5bへの押し圧力を検出することができる。
【0049】
図11に、直動機構6としてすべりネジ機構を採用したもので、
図9のボールネジに代えて台形ネジを採用したものである。他の構成は、
図9のものと同じなので、説明は省略する。
このように、すべりネジ機構を用いる事により、高負荷条件下での使用や上下振動を伴う車両ブレーキでの使用に適したものとなる。