(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182336
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】水路のライニング構造
(51)【国際特許分類】
E02B 5/02 20060101AFI20170807BHJP
E02B 8/06 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
E02B5/02 Q
E02B8/06
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-62096(P2013-62096)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185480(P2014-185480A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】山野井 雅
(72)【発明者】
【氏名】玉木 照行
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−278135(JP,A)
【文献】
特開昭61−186604(JP,A)
【文献】
特表昭58−501186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/02
E02B 8/06
E02B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流方向で幅寸法が変化し、その幅方向の一端側に偏って水が流れる台形状の水路に、平面形状が矩形で水路幅方向に並べられる複数の矩形ライニング部材と、この矩形ライニング部材の列の両端縁と水路の側面との間を埋める台形の平面形状を有する2つの台形ライニング部材とからなり、一定の水流方向寸法で水路幅方向に延びる帯状のライニングブロックを、水路の床面を覆うように水流方向に複数連続させて配置した水路のライニング構造において、
前記各ライニングブロックのうちの少なくとも一つで、水路幅方向の一端側の台形ライニング部材と水路側面との間隙が、他端側の台形ライニング部材と水路側面との間隙よりも小さくなるように、両側の台形ライニング部材の幅方向寸法を設定し、他端側の台形ライニング部材と水路側面との間隙が一端側よりも広くなるのを許容して、各ライニングブロックの間で同一種類の台形ライニング部材を複数使用したことを特徴とする水路のライニング構造。
【請求項2】
前記水路が等脚台形状に形成されており、前記各ライニングブロックの複数の矩形ライニング部材は水路幅方向中心に対して対称に配置されており、前記各ライニングブロックのうちの少なくとも一つで、水路幅方向の一端側の台形ライニング部材として、他端側の台形ライニング部材よりも幅方向寸法の大きいものが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の水路のライニング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取水ダムの排砂路等の水路を保護するためのライニング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
取水ダムの排砂路等、山間部にある水路の路床をコンクリートで形成すると、その路床の表面が水とともに流れてくる土砂の衝突にさらされ続けることによって摩耗し、路床の寿命が周辺部材よりも極端に短くなってしまう。また、摩耗した路床の補修も容易ではない。このため、水路の新設時や更新時には、一般に、水路の床面を金属製の板状ライニング部材で覆って水路を保護するライニング構造が敷設されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このライニング構造は、通常、複数の板状ライニング部材からなり、一定の水流方向寸法で水路幅方向に延びる帯状ライニングブロックを、水流方向に複数連続させて配置している。そして、その板状ライニング部材としては、鋳造によって製造され、裏面に固定のための脚部を設けられたものが用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−278135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなライニング構造が敷設される水路には、ストレート部(水流方向で幅寸法が一定の部分)のほかに、水流方向で幅寸法が一定割合で変化する台形部を有するものがある。
【0006】
水路のストレート部のライニングブロックは、平面形状が矩形(正方形または長方形)の同一種類のライニング部材を水路幅方向に並べた列の両側または片側に、この列を構成する矩形ライニング部材と異なる幅寸法の矩形ライニング部材を配して、列の端縁と水路の側面との間を埋めるようにしている。このとき、水路幅方向に並べられる矩形ライニング部材およびライニングブロックの端に配される矩形ライニング部材は、それぞれライニング構造全体で同じ種類のものを用い、製造コストを抑えるようにしている。
【0007】
一方、水路の台形部のライニングブロックは、矩形ライニング部材を水路幅方向に並べた列の両側に平面形状が台形のライニング部材を配して、矩形ライニング部材の列と水路の側面との間を埋めるようにしている。その台形ライニング部材は、通常、ライニングブロックごとに水路幅方向の同じ側に配されるものの幅方向寸法が一つひとつ異なっているし、裏面には脚部が設けられているので、水路幅方向の両側で表裏を逆にして同一種類のものを使用することもできない。
【0008】
このため、台形部を有する水路にライニング構造を敷設する場合は、台形ライニング部材を製造する際の鋳型の種類が多数必要となり、製造コストが非常に高くなるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、台形状水路のライニング構造において、台形ライニング部材の種類を少なくして製造コストを削減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、水流方向で幅寸法が変化し、その幅方向の一端側に偏って水が流れる台形状の水路に、平面形状が矩形で水路幅方向に並べられる複数の矩形ライニング部材と、この矩形ライニング部材の列の両端縁と水路の側面との間を埋める台形の平面形状を有する2つの台形ライニング部材とからなり、一定の水流方向寸法で水路幅方向に延びる帯状のライニングブロックを、水路の床面を覆うように水流方向に複数連続させて配置した水路のライニング構造において、前記各ライニングブロックのうちの少なくとも一つで、水路幅方向の一端側の台形ライニング部材と水路側面との間隙が、他端側の台形ライニング部材と水路側面との間隙よりも小さくなるように、両側の台形ライニング部材の幅方向寸法を設定した構成を採用した。
【0011】
すなわち、本願の発明者は、台形状の水路が取水ダムの排砂路等として設けられることが多く、その場合には一般に水路幅方向の一端側に偏って水が流れ、他端側の路床が一端側よりも土砂の衝突による損傷が生じにくいことに着目し、各ライニングブロックのうちの少なくとも一つで、他端側の台形ライニング部材と水路側面との間隙が一端側よりもある程度広くなるのを許容することにより、各ライニングブロックの間で同一種類の台形ライニング部材を複数使用することができ、台形ライニング部材の種類を少なくできるようにしたのである。
【0012】
ここで、前記水路が等脚台形状に形成されている場合は、前記各ライニングブロックの複数の矩形ライニング部材を水路幅方向中心に対して
対称に配置し、前記各ライニングブロックのうちの少なくとも一つで、水路幅方向の一端側の台形ライニング部材として、他端側の台形ライニング部材よりも幅方向寸法の大きいものを配置した構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明によれば、台形状水路のライニング構造を構成する台形ライニング部材の種類を少なくできるので、台形ライニング部材製造時に必要となる鋳型の種類を減らすことができ、ライニング構造全体の製造コストの削減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態のライニング構造を敷設した水路の模式的な平面図
【
図2】
図1のライニング構造を構成する台形ライニング部材の一例の斜視図
【
図3】
図1のライニング構造におけるライニング部材の配置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この実施形態のライニング構造は
図1に示す水路1に敷設される。この水路1は、河川や谷に設けられた取水ダムの堰堤2の上流側に堆積した土砂を排砂ゲート3から下流側へ排出するための排砂路であり、排砂ゲート3の上流側から下流側にかけて設けられている。排砂ゲート3および水路1は、堰堤2の中心からずれた位置に設けられており(
図1中のAは堰堤2中心を通って水流方向に延びる仮想線を示す)、排砂ゲート3から排出される土砂を含んだ水が、
図1中に矢印で示したように、堰堤2の中央側から外側(一端側)に向かって多く流れるようになっている。
【0016】
前記水路1は、堰堤2よりも上流側の部分および下流端の部分がそれぞれ一定の幅寸法に形成されたストレート部1a、1bとなっており、この2つのストレート部1a、1bの間に、幅寸法が下流側ほど大きくなる等脚台形状の台形部1cが形成されている。そして、そのストレート部1a、1bに従来のライニング構造が敷設され、台形部1cに実施形態のライニング構造が敷設される。各ライニング構造は、水路1の床面を板状の金属製ライニング部材で覆って水路1を保護するものである。
【0017】
図2は、実施形態のライニング構造で用いる台形ライニング部材4の一例を示す。この台形ライニング部材4は、平面形状が台形の板状本体部4aの裏面に4本の脚部4bを有しており、その脚部4bを水路1の床面上に打設されるコンクリート(図示省略)で固定されるようになっている。また、図示は省略するが、他のライニング部材(水路1のストレート部1a、1bに用いられるものを含む)も、この台形ライニング部材4と同じく板状の本体部の裏面に固定用の脚部を有するものであり、配置される部位によって本体部の平面形状や脚部の本数が異なっている。各ライニング部材はいずれも鋳造によって製造される。
【0018】
図3は、前記水路1のライニング構造におけるライニング部材の配置を説明するものである。この
図3では、説明上、ライニング部材の本体部の平面形状や寸法による種類の違いを表す番号を各ライニング部材に付けている。番号の付いていないライニング部材は、それを水路1幅方向で挟むライニング部材と同じ種類のものであることを表している。
【0019】
この水路1のライニング構造は、水路1のストレート部1a、1bと台形部1cのいずれにおいても、複数のライニング部材からなり、一定の水流方向寸法で水路1の幅方向に延びる帯状ライニングブロックを、水流方向に複数連続させて配置している。なお、水流方向で隣接するライニングブロックどうしの間では、ライニング部材の水路1幅方向の配置を変えて、各ライニング部材のコーナー部が3つ以上1箇所に集まらないようにしている。ライニング部材はコーナー部が最も損傷しやすく、そのコーナー部が集まるとさらに損傷しやすくなって、ライニング構造全体の寿命が短くなるからである。
【0020】
水路1の上流側のストレート部1aに敷設されるライニング構造は、台形部1cとの接続部分を除く各ライニングブロックで、平面形状が正方形の同一種類のライニング部材(番号1)を水路1幅方向に並べた列の片側に、この列を構成する番号1のライニング部材と異なる幅寸法の長方形ライニング部材(番号4)を配して、列の端縁と水路上流側ストレート部1aの側面との間を埋めるようにしている。台形部1cとの接続部分のライニングブロックでは、番号1のライニング部材に代えて番号5の長方形ライニング部材を、番号4のライニング部材に代えて番号6の長方形ライニング部材をそれぞれ用いている。
【0021】
また、水路1の下流端のストレート部1bに敷設されるライニング構造は、台形部1cとの接続部分を除く各ライニングブロックで、上流側ストレート部1aと同じ正方形ライニング部材(番号1)を水路1幅方向に並べ、この列の両側に番号2または3の長方形ライニング部材を配して、列の端縁と水路下流側ストレート部1bの側面との間を埋めるようにしている。台形部1cとの接続部分のライニングブロックでは、番号17の長方形ライニング部材のみを水路1幅方向に並べている。ここで、各ライニング部材(番号1、2、3、17)は、いずれのライニングブロックでも水路1幅方向の中心線Bに対して
対称に配置され、施工時の位置決めが容易に行えるようになっている。
【0022】
そして、水路1の台形部1cに敷設される実施形態のライニング構造は、水路下流側ストレート部1bとの接続部分を除く各ライニングブロックで、各ストレート部1a、1bで用いたのと同じ番号1の正方形ライニング部材(一部で番号4の長方形ライニング部材を含む)を水路1幅方向に並べ、この列の両側に台形ライニング部材(番号7〜13)を配して、列の端縁と水路台形部1cの側面との間を埋めるようにしている。水路下流側ストレート部1bとの接続部分のライニングブロックでは、番号1のライニング部材に代えて番号15、16の長方形ライニング部材を用い、一端側に番号14の台形ライニング部材を、他端側に番号18の台形ライニング部材をそれぞれ配している。ここで、各ライニングブロックの矩形ライニング部材(番号1、4、15)はいずれも水路1幅方向の中心線Bに対して
対称に配置され、施工時の位置決めが容易に行えるようになっている。
【0023】
各台形ライニング部材(番号7〜14、18)は、台形板状の本体部が、その底辺を水路1幅方向に向けたときに一方の脚が対向する水路台形部1cの側面と平行となり、他方の脚が底辺と直交するように形成されている。
【0024】
ここで、水路1の台形部1cの最も上流側(1番目)のライニングブロックでは、左右が入れ替わった以外は同一形状の台形ライニング部材(番号7、9)を両端に配することにより、各台形ライニング部材の一方の脚とこれに対向する水路台形部1cの側面との間隙が同じになるようにしている(実際には、設置時の取付誤差が数mm程度生じる)。同様に、上流側から2番目のライニングブロックでも、左右が入れ替わった以外は同一形状の台形ライニング部材(番号8、10)を両端に配している。
【0025】
一方、上流側から3番目のライニングブロックでは、互いに幅方向寸法の異なる台形ライニング部材(番号8、11)を両端に配している。すなわち、ライニングブロックの他端側に、2番目のライニングブロックで用いられたのと同一種類の台形ライニング部材(番号8)を配し、一端側には番号8のものよりも幅方向寸法が大きい台形ライニング部材(番号11)を配している。番号11の台形ライニング部材は、水路台形部1cの側面との間隙を1、2番目のライニングブロックと同じにする幅方向寸法に形成されている。
【0026】
上記3番目のライニングブロックと同様に、4番目および5番目のライニングブロックでも、他端側に1番目または2番目のライニングブロックで用いられたのと同一種類の台形ライニング部材(番号7、8)を配し、一端側には他端側のものよりも幅方向寸法が大きい台形ライニング部材(番号12、13)を配している。番号12、13の台形ライニング部材は、水路台形部1cの側面との間隙を1、2番目のライニングブロックと同じにする幅方向寸法に形成されている。
【0027】
上述したように、3〜5番目のライニングブロックでは、他端側の台形ライニング部材の幅方向寸法が一端側のものよりも小さいので、
図4に示すように、他端側の水路台形部1cの側面との間隙が1、2番目のライニングブロックよりも若干(実際には7mm程度)広くなっている。
【0028】
そして、最下流側(6番目)のライニングブロックでは、水流方向寸法が他のライニングブロックと異なり、他のライニングブロックで用いたのと同一種類のライニング部材を使用できないため、水路1幅方向の両側で水路台形部1cの側面との間隙が1、2番目のライニングブロックと同じなるように各ライニング部材(番号14〜16、18)を配している。
【0029】
この実施形態のライニング構造は、上記の構成であり、水路1の台形部1cの上流側から3〜5番目のライニングブロックで、他端側の台形ライニング部材と水路台形部1c側面との間隙が一端側よりもある程度広くなるのを許容して、他端側に1番目または2番目のライニングブロックで用いられたのと同一種類の台形ライニング部材を配するようにしたので、他端側に水路台形部1c側面との間隙を一端側と同じにする台形ライニング部材を配する場合に比べて、使用する台形ライニング部材の種類を少なくでき、その分だけ製造コストを削減することができる。
【0030】
そして、水路1の幅方向の一端側では、土砂を含んだ水が他端側よりも多く流れてくるが、各ライニングブロックの台形ライニング部材と水路台形部1c側面との間隙を従来と同程度に小さく設定して、台形ライニング部材の想定外の損傷や寿命の短縮を防止できる一方、他端側では、3〜5番目のライニングブロックの台形ライニング部材と水路台形部1c側面との間隙が一端側よりも大きいものの、流れてくる水に含まれる土砂の衝突による衝撃が小さいため、台形ライニング部材に想定外の損傷が起きたり寿命が短くなったりするおそれの少ないものとなっている。
【0031】
なお、上述した実施形態では下流側ほど幅が広くなる等脚台形状の水路のライニング構造に本発明を適用した例を説明したが、水路の形状は下流側ほど幅が狭くなる台形形状でもよく、またその台形形状は必ずしも等脚でなくてもよい。また、ライニング構造を構成する各ライニング部材は、実施形態のような脚部を持たず、取付や製造上の事情から表裏で形状が異なっているものや、表裏が強度(土砂の衝突にさらされる表面側が裏面側よりも高強度)によって決まっているものでもよい。
【0032】
さらに、本発明は、実施形態のようなダムの堰堤の排砂ゲートの下流側に設けられた台形状水路だけでなく、排砂ゲートの上流側に設けられた台形状水路はもちろん、ダム以外の場所に設けられたものも含めて、幅方向の一端側に偏って水が流れる台形状水路のライニング構造に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 水路
1a、1b ストレート部
1c 台形部
2 堰堤
3 排砂ゲート
4 台形ライニング部材
4a 本体部
4b 脚部