(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のバッテリーケースのような樹脂成形品においては、重量物を収容するとともに、車両走行時の振動等が発生するので、十分な強度の確保が必要である。このことに対し、特許文献1では、高密度ポリエチレンやポリカーボネート等の耐衝撃性樹脂を用いて成形しているが、これらを用いたとしても、強度を高めるためには肉厚を厚くしなければならず、軽量化の妨げになる。
【0006】
そこで、樹脂成形品にリブ状の突出部を形成して全体的に薄肉化を図って軽量にしながら、十分な強度を確保することが考えられる。しかしながら、特許文献1では、電磁波遮蔽シートの端部同士を突き合わせたり、端部同士を重ねたりすることによって電磁波遮蔽シートの繋ぎ部分の処理を行っているので、突出部が形成された場合に、その突出部に対して電磁波遮蔽シートをどのようにして貼り付けるかが問題となる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リブ状の突出部を形成した樹脂成形品に複数枚の電磁波遮蔽シートを配設して電磁波の遮蔽性を持たせる場合に、これら電磁波遮蔽シートを電磁波の漏れがないように配設することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、電磁波遮蔽シートを成形品本体の板状部に沿うように配設し、この電磁波遮蔽シートの端部は、板状部から突出する突出部の側面に沿うように配設した。
【0009】
第1の発明は、樹脂材を成形してなるとともに、板状部と、該板状部から突出する突出部とが設けられた
射出成形品からなる成形品本体と、
上記成形品本体に配設される複数枚の電磁波遮蔽シートとを備えた樹脂成形品において、
上記電磁波遮蔽シートは上記板状部に沿って配設され
るとともに上記成形品本体にインサート成形されており、該電磁波遮蔽シートの端部は、上記突出部の突出方向に沿うように配設され
、
上記成形品本体の上記突出部内部には、上記成形品本体の成形時に上記電磁波遮蔽シートを所定位置で保持するための保持部材が埋め込まれていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、突出部の形成により成形品本体が補強されるので、樹脂成形品が軽量、かつ、高強度なものとなる。そして、電磁波遮蔽シートが成形品本体の板状部に沿うように配設されているので、成形品本体の板状部からの電磁波の漏れが防止される。また、電磁波遮蔽シートの端部が突出部に沿っているので、板状部に対して立ち上がるように配設されることになる。電磁波遮蔽シートの立ち上がっている部分に電磁波が当たることで突出部からの電磁波の漏れが防止される。
【0011】
また、電磁波遮蔽シートを成形品本体に接着する作業を別途行わなくても、電磁波遮蔽シートを成形品本体の成形時に同時に一体化することが可能になる。
【0012】
また、成形品本体の成形時に、金型内における突出部を成形する部位に電磁波遮蔽シートを配置した状態で、保持部材によって電磁波遮蔽シートが所定位置に保持される。これにより、樹脂材の流動による電磁波遮蔽シートの位置ずれが抑制されるので、電磁波遮蔽シートの端部を突出部に沿うように確実に配設することが可能になる。
【0013】
第
2の発明は、第
1の発明において、上記成形品本体は、コーナー部を有する箱体であり、上記電磁波遮蔽シートは、上記コーナー部にも配設されており、上記成形品本体には、上記コーナー部に対応する部位に、上記電磁波遮蔽シートの余長分を吸収するための余長吸収部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、電磁波遮蔽シートを立体形状にあらかじめ成形していなくても、平坦な電磁波遮蔽シートを成形品本体のコーナー部に沿うように変形させることでコーナー部に配設することが可能になる。このときにできた電磁波遮蔽シートの余長分が成形品本体の余長吸収部によって吸収される。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、電磁波遮蔽シートを成形品本体の板状部に沿って配設し、電磁波遮蔽シートの端部を成形品本体の突出部に沿うよう配設したので、樹脂成形品に複数枚の電磁波遮蔽シートを配設して電磁波の遮蔽性を持たせる場合に、電磁波が漏れないようにすることができる。
【0016】
また、電磁波遮蔽シートを成形品本体にインサート成形したので、電磁波遮蔽シートの接着作業を不要にしながら、電磁波遮蔽シートを成形品本体と一体化することができる。
【0017】
また、成形品本体の成形時に電磁波遮蔽シートを所定位置で保持するための保持部材を突出部内部に埋め込むようにしたので、電磁波遮蔽シートの端部を突出部に沿うように確実に配設することができ、電磁波の漏れを防止できる。
【0018】
第
2の発明によれば、平坦な電磁波遮蔽シートを成形品本体のコーナー部に沿うように変形させてコーナー部に配設する場合に、電磁波遮蔽シートの余長分が成形品本体の余長吸収部によって吸収されるので、あらかじめ立体形状に成形された高コストの電磁波遮蔽シートを用意することなく、平坦で安価な電磁波遮蔽シートを用いることができ、低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1は、
参考例1に係る樹脂成形品1で構成されたバッテリーケースAの側面図であり、
図2はバッテリーケースAの平面図である。バッテリーケースAは、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載される走行用バッテリー(図示せず)を収容する大型のものである。自動車の種類としては、例えば乗用車やトラック等である。
【0022】
バッテリーケースAは、2つの樹脂成形品1,1を上下に組み合わせて構成される。下側の樹脂成形品1は、全体として上方に開放する凹状に形成され、この内部に走行用バッテリーが収容される。上側の樹脂成形品1は、全体として下方に開放する凹状に形成され、下側の樹脂成形品1の開放部分を上方から覆うように構成されている。上側及び下側の樹脂成形品1,1は、略同じ構造及び形状であるため、以下、上側の樹脂成形品1について説明する。
【0023】
図3にも示すように、樹脂成形品1は、樹脂材を矩形箱状に射出成形してなる成形品本体10と、成形品本体10に配設される第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7(
図4にも示す)とを備えている。成形品本体10は、4つのコーナー部10aを有する矩形箱体であり、バッテリーケースAの上壁部となる板状部11と、板状部11の周縁部から下方へ延びる周壁部12と、第1〜第3リブ21〜23(突出部)と、複数のコーナーリブ24,25,26とで構成されている。成形品本体10を構成する樹脂材は、特に限定されるものではなく、各種樹脂材を使用することができる。
【0024】
板状部11は、矩形状であり、略平坦に形成されている。周壁部12は、下側へ行くほど樹脂成形品1の外方に位置するように傾斜している。周壁部12の下縁部には、樹脂成形品1の外方に延出して該周壁部12の全周に亘って延びるフランジ12aが形成されている。
【0025】
第1リブ21は、
図1や
図2に示すように、成形品本体10の長手方向(左右方向)中央部よりも右側寄りに位置している。第2リブ22は、成形品本体10の長手方向中央部に位置している。第3リブ23は、成形品本体10の長手方向中央部よりも左側寄りに位置している。
【0026】
第1リブ21は、周壁部12の両外側面からそれぞれ成形品本体10の外方へ突出して該周壁部12の上下方向に延びる一対の第1側部リブ21a、21aと、板状部11の外面から成形品本体10の外方(上方)へ突出して成形品本体10の長手方向と直交する方向に延びる第1上面リブ21bとで構成されている。第1側部リブ21aの下端は、フランジ12aに連なっている。また、第1上面リブ21bの両端部は、第1側部リブ21a、21aの上端部に連なっている。従って、第1リブ21は、周壁部12の一方の外側面から板状部11の外面、周壁部12の他方の外側面に亘って連続した1つのリブとなっている。
【0027】
第2リブ22及び第3リブ23は第1リブ21と同じ形状であり、第2リブ22は第2側部リブ22a、22aと第2上面リブ22bとで構成され、また、第3リブ23は第3側部リブ23a、23aと第3上面リブ23bとで構成されている。第1〜第3リブ21〜23は、板状部11及び周壁部12を成形する際に同時に一体成形されたものである。
【0028】
第1〜第3リブ21〜23を形成することで、成形品本体10の板状部11や周壁部12の肉厚を厚くしなくても成形品本体10の強度を向上できるので、軽量、かつ、高剛性な成形品本体10を得ることができる。特に、第1〜第3リブ21〜23の第1〜第3側部リブ21a〜23aがフランジ12aに連なっていることで、フランジ12aの剛性も高めることが可能になっている。さらに、第1〜第3リブ21〜23は、成形品本体10の板状部11と周壁部12とに一体化しているので、板状部11と周壁部12とが第1〜第3リブ21〜23により連結されることになり、成形品本体10の剛性をより一層高めることができる。
【0029】
3つのコーナーリブ24,25,26は1組とされ、成形品本体10の4つのコーナー部10aにそれぞれ設けられている。各コーナーリブ24は、各コーナー部10a近傍において成形品本体10の側面から成形品本体10の外方へ突出して上下方向に延びている。各コーナーリブ25は、各コーナー部10aから対角線の延長方向に突出して上下方向に延びている。各コーナーリブ26は、各コーナー部10a近傍において成形品本体10の端面から成形品本体10の外方へ突出して上下方向に延びている。つまり、コーナーリブ24,25,26は、成形品本体10のコーナー部10aにおいて放射状に突出している。
【0030】
コーナーリブ24,25,26の下端部は、フランジ12aに連なっている。また、コーナーリブ24,25,26の上端部は、周壁部12の上端部に位置している。また、コーナーリブ24,25,26は、上側へ行くほど成形品本体10からの突出量が少なくなっている。上記コーナーリブ24,25,26を設けることにより、成形品本体10のコーナー部10a近傍の強度がより一層向上している。
【0031】
尚、この
参考例1では、各コーナー部10aに3つのコーナーリブ24,25,26を設けているが、これに限らず、図示しないが、コーナーリブ24,25,26のうち、任意の1つ又は2つを設けてもよいし、各コーナー部10aに4つ以上のコーナーリブを設けてもよい。
【0032】
第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7は、従来から電磁波遮蔽用として使用されているものを用いることができるので、詳細な説明は省略するが、例えばアルミニウム薄膜を薄い樹脂材で挟んだシートを使用することができる。第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7を構成する樹脂は、成形品本体10の樹脂と同質のものが好ましい。例えば、ポリプロピレン樹脂やポリアミド樹脂を用いることができる。また、第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7としては、フィルム状のものを用いることもできる。第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7がメッシュ状のものや繊維状のものであってもよい。また、それらを組み合わせてもよい。
【0033】
第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7は、例えば幅が0.5m程度の長尺帯状の電磁波遮蔽シートを裁断して得られたものであり、従って、平坦な形状となっている。また、第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7は、成形品本体10の成形時に、その金型のキャビティ内で保持された状態で成形品本体10と同時に成形されるもの、即ち、インサート成形されるものである。
【0034】
図1や
図2に示すように、第1〜第4電磁波遮蔽シートS1〜S4は、成形品本体10の外面において右側から左側に順に配設される。第1電磁波遮蔽シートS1は、成形品本体10のフランジ12aの上面の右側から周壁部12の外面、板状部11の外面、第1リブ21に亘って配設されている。
図4に示すように、第1電磁波遮蔽シートS1の左端部は、第1リブ21の突出方向に沿って右側面に配設されており、その先端部は第1リブ21の右側面において第1リブ21の高さ方向中間部に位置している。
【0035】
第1電磁波遮蔽シートS1は、平坦であるため、成形品本体10のコーナー部10aに沿わせて曲げていくと、コーナー部10aに対応する部分に余長分が生じ、これがシワとなる。第1電磁波遮蔽シートS1におけるコーナー部10a近傍に生じた余長分は、コーナーリブ24,25,26の成形時に、コーナーリブ24,25,26に沿うように配設されて吸収される。つまり、コーナーリブ24,25,26は、第1電磁波遮蔽シートS1の余長分を吸収するための余長吸収部である。コーナーリブ24,25,26の突出高さ及び厚みは、第1電磁波遮蔽シートS1の余長分の長さに対応するように設定すればよい。
【0036】
また、第2電磁波遮蔽シートS2は、成形品本体10の第1リブ21の左側面から板状部11の外面、第2リブ22の右側面に亘って配設されている。第2電磁波遮蔽シートS2の右端部は、第1リブ21の突出方向に沿って左側面に配設されており、その先端部は第1リブ21の左側面において第1リブ21の高さ方向中間部に位置している。第2電磁波遮蔽シートS2の左端部は、図示しないが、第2リブ22の右側面に沿うように配設されており、先端部は第2リブ22の右側面において第2リブ22の高さ方向中間部に位置している。
【0037】
また、第3電磁波遮蔽シートS3は、成形品本体10の第2リブ22の左側面から板状部11の外面、第3リブ23の右側面に亘って配設されている。第3電磁波遮蔽シートS3の右端部は、第2リブ22の左側面に沿うように配設されており、その先端部は第2リブ22の左側面において第2リブ22の高さ方向中間部に位置している。第3電磁波遮蔽シートS3の左端部は、図示しないが、第3リブ23の右側面に沿うように配設されており、先端部は第3リブ23の右側面において第3リブ23の高さ方向中間部に位置している。
【0038】
また、第4電磁波遮蔽シートS4は、成形品本体10の第3リブ23の左側面から板状部11の外面、フランジ12aの上面の左側に亘って配設されている。第4電磁波遮蔽シートS4の右端部は、第3リブ23の左側面に沿うように配設されており、その先端部は第3リブ23の左側面において第3リブ23の高さ方向中間部に位置している。第4電磁波遮蔽シートS4もコーナー部10aに沿うように曲げるので余分ができる。第4電磁波遮蔽シートS4におけるコーナー部10a近傍に生じた余長分も、コーナーリブ24,25,26の成形時に、コーナーリブ24,25,26によって吸収される。
【0039】
この
参考例1では、樹脂成形品1が大型で、1枚の電磁波遮蔽シートで成形品本体10の全体を覆うことができないので、長尺帯状のシート材を裁断した第1〜第4電磁波遮蔽シートS1〜S4によって成形品本体10の略全体を覆うようにしている。このようにする場合には、第1〜第4電磁波遮蔽シートS1〜S4のつなぎ目部分ができることになるが、このつなぎ目部分に第1〜第3リブ21〜23を形成している。
【0040】
この
参考例1では、第1〜第4電磁波遮蔽シートS1〜S4のつなぎ目部分に対応するように第1〜第3リブ21〜23を設けている。電磁波遮蔽シートが3枚の場合にはリブは2つでよく、また、電磁波遮蔽シートが2枚の場合にはリブは1つでよい。つまり、リブの数は、電磁波遮蔽シートの数から1を引いた数であればよい。
【0041】
図4に示すように、第5電磁波遮蔽シートS5は、第1リブ21を、第1電磁波遮蔽シートS1の左端部及び第2電磁波遮蔽シートS2の右端部と共に覆うように配設される。すなわち、第5電磁波遮蔽シートS5は、第1リブ21の基端部近傍から右側面に沿って第1リブ21の先端部まで延びた後、第1リブ21の左側面に沿って基端部近傍まで延びている。これにより、第1リブ21の基端部近傍を含めた全体が第5電磁波遮蔽シートS5によって覆われることになる。また、第5電磁波遮蔽シートS5は、第1電磁波遮蔽シートS1の左端部及び第2電磁波遮蔽シートS2の右端部に対し厚み方向に重なるので、第1電磁波遮蔽シートS1、第2電磁波遮蔽シートS2及び第5電磁波遮蔽シートS5の間に隙間が形成されることはない。
【0042】
第6電磁波遮蔽シートS6及び第7電磁波遮蔽シートS7は、第5電磁波遮蔽シートS5と同様に、第2リブ22及び第3リブ23をそれぞれ覆うように配設されている。
【0043】
次に、上記のように構成された樹脂成形品1を製造する要領ついて説明する。まず、
図5に示すような上側金型100と下側金型101とを備えた成形装置を用意する。この成形装置は射出成形装置であり、上側金型100と下側金型101とが接離するようになっている。上側金型100には、溶融樹脂をキャビティR(
図6に示す)に射出するためのゲート100bが設けられている。
【0044】
上側金型100の成形面100aは、樹脂成形品1の板状部11及び周壁部12の内面と、フランジ12aの下面とを成形するものである。下側金型101の成形面101aは、樹脂成型品1の板状部11及び周壁部12の外面と、フランジ12aの上面と、第1〜第3リブ21〜23と、コーナーリブ24,25,26とを成形するものである。下側金型101の成形面101aには、第1〜第3リブ21〜23を成形するための凹部101bが、第1〜第3リブ21〜23の位置に対応して形成されている。
図5では第1リブ21成形用の凹部のみ示している。
【0045】
まず、上側金型100と下側金型101とを型開き状態にした後、下側金型101に第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7をセットする。このとき、第5〜第7電磁波遮蔽シートS5〜S7を、第1〜第4電磁波遮蔽シートS1〜S4よりも先にセットする。
図5に基づいて第5電磁波遮蔽シートS5のセット要領について説明すると、第5電磁波遮蔽シートS5を凹部101bに押し込み、凹部101bの内面に沿うように形を整える。この凹部101bに押し込まれた第5電磁波遮蔽シートS5の端部は、凹部101bから出て成形面101aの平坦面(板状部11を成形する面)に沿うように位置する。第6電磁波遮蔽シートS6及び第7電磁波遮蔽シートS7も同様にセットする。
【0046】
その後、第1〜第4電磁波遮蔽シートS1〜S4をセットする。第1電磁波遮蔽シートS1の端部を下側金型101の凹部101bに押し込み、第5電磁波遮蔽シートS5に重ねる。また、第2電磁波遮蔽シートS2の端部を下側金型101の凹部101bに押し込み、第5電磁波遮蔽シートS5に重ねる。第2〜第4電磁波遮蔽シートS2〜S4も同様にセットする。
【0047】
次いで、
図6に示すように、上側金型100と下側金型101とを型締めする。これにより、上側金型100の成形面100aと下側金型101の成形面101a、101bとの間に成形品本体10を成形するためのキャビティRが形成される。
【0048】
しかる後、
図7に示すように、キャビティRに溶融樹脂を射出する。溶融樹脂は第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7がセットされた成形面101a、101bとは反対側の成形面100a側から射出されるので第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7が移動することはなく、第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7は射出された溶融樹脂によって下側金型101の成形面101a、101bに押し付けられる。溶融樹脂が第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7に接触した際、第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7の樹脂材層が加熱されて成形面101a、101bに沿うように成形される。溶融樹脂は、上側金型100の成形面100aと下側金型101の成形面101a、101bとによって成形されて固化し、これと同時に第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7と一体化して第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7が成形品本体10に貼り付けられた樹脂成形品1が得られる。
【0049】
上記樹脂成形品1においては、成形品本体10に第1〜第3リブ21〜23を形成したので、成形品本体10を補強することができる。これにより、樹脂成形品1が軽量、かつ、高強度なものとなる。
【0050】
そして、第1〜第4電磁波遮蔽シートS1〜S4が成形品本体10の板状部11及び周壁部12に沿って配設されているので、板状部11及び周壁部12からの電磁波の漏れが防止される。さらに、第1〜第4電磁波遮蔽シートS1〜S4の端部が第1〜第3リブ21〜23の側面に沿うように配設されているので、板状部11に対して立ち上がるようになる。第1〜第4電磁波遮蔽シートS1〜S4の立ち上がっている部分に電磁波が当たることで第1〜第3リブ21〜23からの電磁波の漏れが防止される。
【0051】
以上説明したように、この
参考例1に係る樹脂成形品1によれば、第1〜第3リブ21〜23を有する板状部11を第1〜第4電磁波遮蔽シートS1〜S4で覆うことによって電磁波の遮蔽性を持たせる場合に、電磁波が漏れないようにすることができる。
【0052】
この
参考例1では、特に第1〜第3リブ21〜23を第5〜第7電磁波遮蔽シートS5〜S7で隙間無く覆うようにしているので、第1〜第3リブ21〜23からの電磁波の漏れが確実に防止される。
【0053】
また、第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7を成形品本体10にインサート成形したので、第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7の接着作業を不要にしながら、第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7を成形品本体10と一体化することができる。
【0054】
また、平坦な第1、第4電磁波遮蔽シートS1、S4を成形品本体10のコーナー部10aに沿うように変形させてコーナー部10aに配設する場合に、第1、第4電磁波遮蔽シートS1、S4の余分が成形品本体10のコーナーリブ24,25,26に収容されるので、あらかじめ立体形状に成形された高コストな電磁波遮蔽シートを用意することなく、平坦で安価な電磁波遮蔽シートを用いることができ、低コスト化を図ることができる。
【0055】
また、
図8に示す
実施形態のように、成形品本体10の第1〜第3リブ21〜23の内部には、成形品本体10の成形時に第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7を所定位置で保持するための保持部材60を埋め込むようにしてもよい。この保持部材60は、
図9に示すように、上側金型100と下側金型101とを型開きした状態で、下側金型101の凹部101bに第1電磁波遮蔽シートS1、第2電磁波遮蔽シートS2及び第5電磁波遮蔽シートS5をセットした後、その凹部101bに挿入する。保持部材60は、
図10に示すように、波型に成形された樹脂製の弾性板材で構成することができる。保持部材60を成形品本体10と同じ合成樹脂で形成することによって保持部材60と成形品本体10とを密着させることができるので、保持部材60を設けたことよる強度低下を防止できる。
【0056】
この保持部材60の波型が連続する方向が凹部101bの延びる方向(リブの長手方向)となるように、保持部材60を凹部101bに挿入すると、保持部材60の弾性力によって第1電磁波遮蔽シートS1、第2電磁波遮蔽シートS2及び第5電磁波遮蔽シートS5を凹部101bの内面に押し付けることができる。これにより、第1電磁波遮蔽シートS1、第2電磁波遮蔽シートS2及び第5電磁波遮蔽シートS5が所定位置に保持されるので、溶融樹脂の流動によって移動することはない。また、保持部材60における凹部101bの底部に相当する部分(第1〜第3リブ21〜23の先端部に相当する部分)には、樹脂通路となる複数の切欠部60aが形成されている。この切欠部60a内を溶融樹脂が流れることで成形性が良好になる。
図10に仮想線で示すように、切欠部60aの代わりに、貫通孔やスリットを設けてもよい。また、
図10に仮想線で示すように、保持部材60の切欠部60aと反対側に切欠部を設けてもよい。
【0057】
この
実施形態では、成形品本体10の成形時に第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7を所定位置で保持するための保持部材60を第1〜第3リブ21〜23の内部に埋め込むようにしたので、第1〜第7電磁波遮蔽シートS1〜S7を第1〜第3リブ21〜23の側面に沿うように確実に配設することができ、電磁波の漏れを防止できる。
【0058】
また、
図11に示す
参考例2のように、第5電磁波遮蔽シートS5を凹部101bに挿入しないで、第1電磁波遮蔽シートS1の左端部及び第2電磁波遮蔽シートS2の右端部が第1リブ21の側面に沿って配設されるように凹部101bに挿入してインサート成形し、そのインサート成形品を脱型した後(
図11の(a)に示す)、第5電磁波遮蔽シートS5を、第1電磁波遮蔽シートS1及び第2電磁波遮蔽シートS2に熱溶着や、接着剤による接合によって貼り付けるようにしてもよい(
図11の(b)に示す)。成形品本体10の剛性を高めるために高いリブが形成された場合、金型内で第5電磁波遮蔽シートS5をセットすることが難しくなるのに加えて、シール性が低下する恐れがあるが、第5電磁波遮蔽シートS5をインサート成形後の成形品に後貼りすることにより、第1〜第3リブ21〜23の高さが高い場合に対応するように第5電磁波遮蔽シートS5を確実に重ねることができるので、電磁波のシールド性が向上する。また、作業が容易になり、電磁波遮蔽シートのラップ代を少なくすることができる。
【0059】
また、
図12に示す
参考例3のように、第5電磁波遮蔽シートS5を省略し、第1電磁波遮蔽シートS1を第2電磁波遮蔽シートS2側まで延ばすようにすることもできる。この
参考例3では、電磁波遮蔽シートの数を少なくしながら、第1〜第3リブ21〜23からの電磁波の漏れを確実に防止することができる。
【0060】
また、
図13に示す
参考例4のように、コーナーリブ24,25,26を省略してもよい。この場合、成形品本体10のコーナー部10aに配設される第1電磁波遮蔽シートS1及び第4電磁波遮蔽シートS4をコーナー部10aの形状に対応するように三次元形状にあらかじめ成形しておく。
【0061】
また、
図14に示す
参考例5のように、成形品本体10の内面に内側第1リブ31及び内側第2リブ32(突出部)を設けてもよい。つまり
、図4の第1リブ21が成形品本体10の内側へ突出するように表裏が逆になった状態である。内側第1リブ31は、周壁部12の両内側面からそれぞれ成形品本体10の内方へ突出して該周壁部12の上下方向に延びる一対の第1側部リブ31a、31aと、板状部11の内面から成形品本体10の内方へ突出して成形品本体10の長手方向と直交する方向に延びる第1底面リブ31bとで構成されている。第1底面リブ31bの両端部は、第1側部リブ31a、31aの端部に連なっている。
【0062】
内側第2リブ32は、周壁部12の両内側面からそれぞれ成形品本体10の内方へ突出して該周壁部12の上下方向に延びる一対の第2側部リブ32a、32aと、板状部11の内面から成形品本体10の内方へ突出して成形品本体10の長手方向と直交する方向に延びる第2底面リブ32bとで構成されている。第2底面リブ32bの両端部は、第2側部リブ32a、32aの端部に連なっている。
【0063】
この
参考例5では、第1〜第3電磁波遮蔽シートS1〜S3が成形品本体10の内面に配設されている。第1〜第3電磁波遮蔽シートS1〜S3の端部は、上記した
参考例1と同様に、内側第1リブ31及び内側第2リブ32の側面に沿うように配設されている。
【0064】
また、
参考例5の内側第1突出部31及び内側第2突出部32を、
図15に示す
参考例6のように、成形品本体10の内側へ膨出する膨出部(中空リブ状の突出部)で構成してもよい。内側第1突出部31及び内側第2突出部32を膨出部とすることで、成形品本体10の外面における内側第1突出部31に対応する部位には、溝31cが形成され、成形品本体10の外面における内側第2突出部32に対応する部位には、溝32cが形成されることになる。この
参考例6では、第1〜第3電磁波遮蔽シートS1〜S3が成形品本体10の外面に配設されている。第1〜第3電磁波遮蔽シートS1〜S3の端部は、溝31c及び溝32cに挿入するようにする。これにより、第1〜第3電磁波遮蔽シートS1〜S3の端部は、内側第1突出部31及び内側第2突出部32の突出方向に沿うように配設されることになる。
【0065】
また、第1〜第3電磁波遮蔽シートS1〜S3が成形品本体10の内面に配設されていてもよい。
【0066】
また、内側に設けた内側第1突出部31及び内側第2突出部32を、外側に膨出する膨出部(中空リブ状の突出部)としてもよい。
【0067】
また、膨出部が、成形品本体10の外側又は内側のどちらに設けられた場合であっても、第1〜第3電磁波遮蔽シートS1〜S3を成形品本体10の外面側や内面側にどちら側にでも配設することができる。膨出部が、成形品本体10の外側に設けられた場合は、成形品本体10の内部空間を有効に用いることができる。
【0068】
また、
図16に示す
参考例7のように、膨出部を成形品本体10の内側へ突出するように設ける場合には、下側金型101に膨出部を成形するための凸部101cを形成する。そして、第1電磁波遮蔽シートS1を先に下側金型101に配置し、その後、第5電磁波遮蔽シートS5を配置した後、第2電磁波遮蔽シートS2を配置する。これにより、矢印X方向から樹脂が流れた際に、第1電磁波遮蔽シートS1、第2電磁波遮蔽シートS2及び第5電磁波遮蔽シートS5がめくれることはない。
【0069】
また、
図17に示す
参考例8のように、成形品本体10から膨出する膨出部で第1突出部21を構成する場合に、第1電磁波遮蔽シートS1、第2電磁波遮蔽シートS2及び第5電磁波遮蔽シートS5をインサート成形することなく、成形品本体10の成形後に手作業で貼り付けるようにしてもよい。この場合、第1電磁波遮蔽シートS1及び第2電磁波遮蔽シートS2を先に貼り、その後、第5電磁波遮蔽シートS5を貼り付ける。第5電磁波遮蔽シートS5は、第1電磁波遮蔽シートS1及び第2電磁波遮蔽シートS2に対して接着又は溶着することができる。
【0070】
また、
図18に示す
実施形態の変形例のように、膨出部を成形品本体10の内側へ突出するように設ける場合には、下側金型101に膨出部を成形するための凸部101cを形成し、この凸部101cに沿うように第1電磁波遮蔽シートS1、第2電磁波遮蔽シートS2及び第5電磁波遮蔽シートS5を配置し、その後、保持部材70によって第5電磁波遮蔽シートS5を保持するようにしてもよい。保持部材70は、上記保持部材60と同様な材料からなる板材を湾曲成形したものであり、
図19に示すように複数の貫通孔71を有している。これら貫通孔71は溶融樹脂を流通させるためのものである。よって、保持部材70を使用していても剛性が低下することはない。また、保持部材70は、第5電磁波遮蔽シートS5を挟持するための一対の挟持部72,72を有している。挟持部72,72により第5電磁波遮蔽シートS5を挟持することで、第1電磁波遮蔽シートS1及び第2電磁波遮蔽シートS2も凸部101cに保持することができるので、矢印X方向から樹脂が流れた際に、第1電磁波遮蔽シートS1、第2電磁波遮蔽シートS2及び第5電磁波遮蔽シートS5がめくれることはない。
【0071】
また、上記実施形態では、樹脂成形品1がバッテリーケースAの構成部材である場合について説明したが、本発明に係る樹脂成形品1は、バッテリーケースA以外にも、電磁波の遮蔽が必要な部位に用いることができる。
【0072】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。