(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182363
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】膨張弁
(51)【国際特許分類】
F25B 41/06 20060101AFI20170807BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20170807BHJP
F16K 31/68 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
F25B41/06 N
B60H1/32 613B
F16K31/68 S
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-120316(P2013-120316)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-238206(P2014-238206A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 武志
(72)【発明者】
【氏名】村上 隼人
【審査官】
伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−164208(JP,A)
【文献】
特開平11−325307(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102692106(CN,A)
【文献】
特開2005−156046(JP,A)
【文献】
特開2012−047393(JP,A)
【文献】
特開2005−226940(JP,A)
【文献】
特開2010−014369(JP,A)
【文献】
特開2013−142506(JP,A)
【文献】
特開2013−195036(JP,A)
【文献】
特開2013−242129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/06
B60H 1/32
F16K 31/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサで凝縮した高圧の冷媒を導入する入口ポート、前記入口ポートより小径の小径部を介して前記入口ポートに連通する弁室、前記弁室の上側に設けられたオリフィス、前記オリフィスで膨張した冷媒を外部に向けて導出する出口ポート及びエバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する通路を有する弁本体と、前記オリフィスを開閉するように前記弁室内に配置された弁体と、前記弁体を駆動して前記オリフィスの開度を制御する弁体駆動装置と、前記弁体を前記オリフィスに向けて付勢するように前記弁室内に配置される付勢ばねとを備える膨張弁であって、
前記付勢ばねは、前記小径部の上縁より上側から前記小径部の下縁より下側に延在し、
前記弁室内の前記付勢ばねと前記弁体との間には、前記付勢ばねのばね力を前記弁体に伝えるように介在するばね受けが設けてあり、
前記ばね受けは、前記弁体を支持する部分と、前記付勢ばねの上端を支持する部分と、前記付勢ばねの内側空間を閉塞する円柱状の垂下体とが一体的に形成されており、
前記垂下体は前記小径部の上縁より上側から前記小径部の下縁より下側近傍にまで形成され、前記垂下体の下面から下側は空間となっていることを特徴とする膨張弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルに用いられる感温式の膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に搭載される空調装置等に用いる冷凍サイクルについては、設置スペースや配管を省略するために、冷媒の通過量を温度に応じて調整する感温式の温度膨張弁が使用されている。
【0003】
図2はこの種の膨張弁の従来構造を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
膨張弁1は弁本体10を有し、弁本体10には、コンプレッサ側から供給される高圧の冷媒が導入される入口ポート20が設けられ、入口ポート20は小径部21を介して弁室22に連通する。入口ポート20には弁体60により開閉される弁座24が形成され、弁座24と弁体60により流量が制御された冷媒はオリフィス26を通り、出口ポート28からエバポレータ側へ送り出される。
【0004】
エバポレータからコンプレッサ側へ戻る冷媒は、弁本体10に設けられる戻り通路30を通過する。戻り通路30を通過する冷媒は開口部32を介して弁体駆動装置40側へ侵入し、冷媒の温度情報を弁体駆動装置40側へ伝達する。
弁体駆動装置40は作動流体が封入される作動圧力室を有し、圧力の変動はダイアフラムの変位に変換されて作動棒50に伝達される。
【0005】
作動棒50は弁体60を操作して弁開度を制御する。球状の弁体60はばね受け70により支持される。ばね受け70は弁室22を封止するプラグ90との間に設けられる付勢ばね80により支持される。プラグ90はナット状の部材であって、そのねじ込み量を調節することで、弁体60の閉弁方向の付勢力を調整することができる。
この種の膨張弁は下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−47393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の膨張弁1にあっては、小径部21から弁室22に導入される高圧の液冷媒は付勢ばね80の隙間を通って内側のばね内部空間82に流入して流れが乱れ、騒音の発生原因となっていた。
そこで本発明の目的は、上述した不具合を解消する膨張弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の膨張弁は、コンデンサで凝縮した高圧の冷媒を導入する入口ポート、
前記入口ポートより小径の小径部を介して前記入口ポートに連通する弁室、
前記弁室
の上側に設けられたオリフィス、
前記オリフィスで膨張した冷媒を外部に向けて導出する出口ポート及びエバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する通路を有する弁本体と、前記オリフィスを開閉する
ように前記弁室内に配置された弁体と、前記弁体を駆動して前記オリフィスの開度を制御する弁体駆動装置と、前記弁体を前記オリフィスに向けて付勢するように前記弁室内に配置される付勢ばねとを備え、
前記付勢ばねは、前記小径部の上縁より上側から前記小径部の下縁より下側に延在し、前記弁室内の前記付勢ばねと前記弁体との間には前記付勢ばねのばね力を前記弁体に伝えるように介在するばね受けが設けてあり、前記ばね受け
は、前記弁体を支持する部分と、前記付勢ばねの上端を支持する部分と、前記付勢ばねの内側空間を閉塞する円柱状の垂下体
とが一体的に形成されており、前記垂下体は前記小径部の上縁より上側から前記小径部の下縁より下側近傍にまで形成され、前記垂下体の下面から下側は空間となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の膨張弁は以上の構成を備えることにより、冷媒がばねの隙間からばねの内部空間に流入することがなく、流れの乱れにより発生する騒音が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の膨張弁の好適な一実施形態を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【
図2】従来の膨張弁の構造を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の膨張弁の好適な一実施形態について
図1を参照しつつ説明する。
【0012】
本発明の膨張弁1aについては、
図2で説明した従来構造の膨張弁1と同様の構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0013】
本発明の膨張弁1aも弁室22内に配設される弁体60をばね受け100を介して付勢ばね80で支持する構成を有する。
【0014】
このばね受け100は円柱状の垂下体110を有し、垂下体110は付勢ばね80の内側の空間を閉塞する。ばね受け100の円柱状の垂下体110は、少なくとも小径部21の開口の下端部よりもプラグ90側に伸びる長さ寸法を有する。この垂下体110の存在によって小径部21から弁室22内に流入する高圧の液冷媒が、付勢ばね80の内部に流入することが防止され、冷媒の流れは乱れることなくスムーズに弁座24側へ送られる。
【0015】
この作用により、弁室22内における高圧の液冷媒の流れの乱れの発生が防止され、乱れによる騒音の発生原因が除去できる。
【0016】
本発明の膨張弁1aは以上のように、付勢ばねの内側に挿入される円柱状の垂下体110を有するばね受け100を備えることで、簡素な構成により冷媒の通過音を低減することができる。
【符号の説明】
【0017】
1,1a 膨張弁
10 弁本体
20 入口ポート
21 小径部
22 弁室
24 弁座
26 オリフィス
28 出口ポート
30 戻り通路
32 開口部
40 弁体駆動装置
50 作動棒
60 弁体
70 ばね受け
80 付勢ばね
82 ばね内部空間
90 プラグ
100 ばね受け
110 垂下体