(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1のケーシングカッタ用のケーシングビットは、ビット本体の上部に2つの超硬チップが固定されているが、それらの頂部はケーシングパイプの回転方向に対して同一線上にあり、掘削ポイントは1箇所であるため、硬質な地盤等を掘削する際に、上記1箇所の頂部に荷重が集中し、超硬チップの欠けが発生する可能性がある。
【0005】
また、上述の特許文献1に示すケーシングビットによると、
図20(a)に示すように、仮にケーシングパイプ先端に、外刃と内刃の2種類を交互に配置したとしても、その掘削軌跡Y1,Y2は、
図20(b)、
図18(b)に示すように、ケーシングパイプ40内外周面40a,40bより相当程度内側(距離Z1,Z2)に位置するため、硬質地盤等の掘削作業が円滑に行われない可能性があり、或いは、掘削後のケーシングパイプの引き抜き作業等において、切断した鉄筋等にケーシングパイプ側面が当接して大きな騒音を発生する等の課題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、ケーシングビットの超硬チップに複数の頂部(掘削ポイント)を設けることにより、掘削ポイントの数を増やして荷重を分散し、超硬チップの欠けを防止したケーシングビットを提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、ケーシングビットに設けた傾斜した凹部に超硬チップを嵌合固定することにより、超硬チップの脱落を防止し得るケーシングビットを提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、上記ケーシングビットを利用することで、掘削軌跡を例えば三条とすることにより、掘削幅(又は掘削径)を広くし得てスムーズな掘削作業及びケーシングパイプの引き抜き作業を実現したケーシングパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明は、
第1に、超硬チップを嵌合固定し得る凹部を有する頭部と、ケーシングパイプに固定するための脚部とを有するケーシングビットにおいて、上記頭部にはケーシングパイプの回転方向に沿う左端部と右端部の2か所に各々凹部が設けられ、これら凹部の各々に超硬チップが固定されており、左右の上記超硬チップの各々には、上記回転方向に交差する上記頭部の前後の幅方向に2か所ずつの頂部が突出形成されており、左右の上記超硬チップにおける計4か所の上記頂部の内、左端部の上記超硬チップの前側の上記頂部と右端部の上記超硬チップの前側の上記頂部は、上記頭部の前側に位置する左右方向の稜線に沿って設けられており、左端部の上記超硬チップの後側の上記頂部と右端部の上記超硬チップの後側の上記頂部は、上記頭部の後側に位置する左右方向の稜線に沿って設けられて
おり、上記脚部は上記ケーシングパイプの外側に位置する外側脚部と、上記ケーシングパイプの内側に位置する内側脚部とから構成されており、上記ケーシングビットは、左右の上記両超硬チップにおける上記前側の各頂部と上記後側の各頂部が、上記頭部の前後の幅方向に対して、上記外側脚部寄りに設けられた外刃のケーシングビットと、左右の上記両超硬チップにおける上記前側の各頂部と上記後側の各頂部が、上記頭部の前後の幅方向に対して、上記内側脚部寄りに設けられた内刃のケーシングビットの2種類のケーシングビットにより構成されているものであることを特徴とするケーシングビットにより構成される。
【0010】
このように構成すると、頭部の左右に設けられた超硬チップの各々に、2か所の頂部が形成されているので、掘削対象物に当接する掘削ポイントが、1つの超硬チップにおいて2か所(左右の超硬チップで計4か所)存在し、掘削時の荷重が分散され、超硬チップの欠損を防止することができる。また、左右の超硬チップの各頂部が頭部の左右方向の稜線に沿って設けられているので、複数の上記ケーシングビットをケーシングパイプ先端に固定してケーシングカッタを構成したとき、例えば三条の掘削軌跡を容易に構成することができ、掘削径(又は掘削幅)を容易に広くし得るケーシングビットを構成することができる。
【0012】
このように構成すると、ケーシングパイプの先端部に、外刃のケーシングビットと内刃のケーシングビットを交互に固定することにより、各外刃の各前側の頂部の位置をケーシングパイプの外面に近接させ、各内刃の各後側の頂部の位置をケーシングパイプの内面に近接させることができ、これにより、内側の掘削径(第2の掘削軌跡)及び外側の掘削径(第1の掘削軌跡)をケーシングパイプの内外径に近接させることができ、掘削径(又は掘削幅)を拡大してケーシングパイプによる円滑な掘削及び引き抜きを実現し得るケーシングビットを構成することができる。
【0013】
第
2に、上記頭部の左右端部に形成された上記凹部は、上記頭部の中心線より左方向及び右方向に所定の開き角度で各々傾斜した状態で凹状に設けられており、これら凹部に上記超硬チップを嵌合固定したものであることを特徴とする上記第
1記載のケーシングビットにより構成される。
【0014】
このように構成すると、超硬チップは、左右の凹部の開き角度に応じて、中心線より左右開き方向に傾斜した状態で上記各凹部に嵌合固定されているので、当該ケーシングビットをケーシングパイプに固定して、当該超硬チップを鉛直下向きとした状態での掘削作業時において、超硬チップの凹部からの脱落を効果的に防止することができる。
【0015】
第
3に、上記外刃のケーシングビットは、前側の上記頂部が後側の上記頂部より若干高く形成されており、上記内刃のケーシングビットは、後側の上記頂部が前側の上記頂部より若干高く形成されているものであることを特徴とする請求項
1記載のケーシングビットにより構成される。
【0016】
上記外刃の前側の頂部が後側の頂部より若干高く形成された構成における「若干」とは、例えば約1.2mm(T2)である。上記内刃の後側の頂部が前側の頂部より若干高く形成された構成における「若干」とは、例えば1.2mm(T2)である。このように構成すると、掘削径(掘削幅)の拡大のため、ケーシングビットをケーシングパイプの外側又は内側に傾斜した状態で固定した際、複数の各頂部を掘削対象物(地盤等)に均等に当接させることができ、掘削径(又は掘削幅)を拡大したときに効果的な掘削性能を発揮することができる。
【0017】
第
4に、上記第
1又は
3に記載のケーシングビットをケーシングパイプ先端に固定したケーシングパイプであって、ケーシングパイプの先端周縁に沿って複数設けられた凹溝に各々ホルダーを固定し、各ホルダーに上記ケーシングビットの外刃と内刃を上記脚部を以って交互に固定し、上記各外刃の各前側の上記頂部によって最外周の第1の掘削軌跡を形成し、上記各内刃の各後側の上記頂部によって最内周の第2の掘削軌跡を形成し、上記各外刃の各後側の上記頂部と上記各内刃の各前側の上記頂部によって、上記第1の掘削軌跡と上記第2の掘削軌跡の中間位置における第3の掘削軌跡を形成し得るように構成したものであることを特徴とするケーシングパイプにより構成される。
【0018】
このように構成すると、内側の掘削径(第2の掘削軌跡)及び外側の掘削径(第1の掘削軌跡)をケーシングパイプの内外径に近接させることができ、また、第1、第2の掘削軌跡の中間位置においても頂部により掘削して第3の掘削軌跡を形成することができ、掘削径(又は掘削幅)を拡大することにより円滑な掘削及び引き抜きを実現し得るケーシングパイプを実現することができる。
【0019】
第
5に、上記外刃の上記ケーシングビットは、上記凹溝において、その頂部側を上記ケーシングパイプの外側に若干傾斜させた状態で当該凹溝に固定し、上記内刃の上記ケーシングビットは、上記凹溝において、その頂部側を上記ケーシングパイプの内側に若干傾斜させた状態で当該凹溝に固定したものであることを特徴とする請求項
4記載のケーシングパイプにより構成される。
【0020】
上記外刃の頂部側を上記ケーシングパイプの外側に若干傾斜させる構成の「若干」は、例えば回転中心軸(Q)に対して外側に例えば2度傾斜させることをいい、上記内刃の頂部側を上記ケーシングパイプの内側に若干傾斜させる構成の「若干」は、例えば回転中心軸(Q)に対して内側に例えば2度傾斜させることをいう。このように構成すると、内外の掘削径をさらに拡大することができ、掘削径を拡大することにより円滑な掘削及び引き抜きを実現し得るケーシングパイプを実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述のように、掘削対象物に当接する掘削ポイント(頂部)が、1つの超硬チップにおいて2か所存在するので、掘削時の荷重が分散され、超硬チップの欠損を防止し得るケーシングビットを実現することができる。
【0022】
また、左右の超硬チップの各頂部が頭部の左右方向の稜線に沿って設けられているので、複数の上記ケーシングビットをケーシングパイプ先端に固定してケーシングカッタを構成したとき、例えば三条の掘削軌跡を容易に構成することができ、掘削径(又は掘削幅)を容易に広くし得るケーシングビットを実現することができる。
【0023】
また、ケーシングビットを外刃と内刃により構成することにより、掘削径(又は掘削幅)を拡大してケーシングパイプによる円滑な掘削及び引き抜きを実現し得るケーシングビット実現成することができる。
【0024】
また、超硬チップは中心線より左右開き方向に傾斜した状態で各凹部に嵌合固定されているので、超硬チップの凹部からの脱落を効果的に防止することができる。
【0025】
また、ケーシングビットをケーシングパイプの外側又は内側に傾斜した状態で固定した際、複数の各頂部を掘削対象物に均等に当接させることができ、掘削径(又は掘削幅)を拡大したときに効果的な掘削性能を発揮することができるケーシングビットを実現することができる。
【0026】
また、内側の掘削径(第2の掘削軌跡)及び外側の掘削径(第1の掘削軌跡)をケーシングパイプの内外径に近接させることができ、また、第1、第2の掘削軌跡の中間位置においても頂部により掘削して第3の掘削軌跡を形成することができ、掘削径(又は掘削幅)を拡大することにより円滑な掘削及び引き抜きを実現し得るケーシングパイプを実現することができる。
【0027】
また、ケーシングビットをケーシングパイプに固定する際、各ケーシングビットを内外方向に傾斜して固定することにより、内外の掘削径による掘削幅をさらに拡大することができ、掘削径(又は掘削幅)を拡大することにより円滑な掘削及び引き抜きを実現し得るケーシングパイプを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るケーシングビット及びケーシングパイプについて詳細に説明する。
【0030】
図1、
図2に本発明に係るケーシングビット1の外刃1aを、
図3、
図4に上記ケーシングビット1の内刃1bを示す。これらの図において、2はケーシングビット本体であり、当該本体2は、2つの超硬チップ3,4が固定された頭部2aと、該頭部2aから一定間隔T1を隔てて2枚の平行板状に形成された二股の脚部2b,2b’とにより全体として一体に形成されている。尚、取付孔7を有する上記脚部2bを外側脚部、螺子孔8を有する上記脚部2b’を内側脚部ともいう。尚、上記
図1,2に示す外刃1aと
図3,4に示す内刃1bは本体2における頂部3a,3b、4a,4bの位置が異なるのみで、その他の構成は同一なので、同一部分、対応部分については同一符号を付し、同時に説明する。
【0031】
上記頭部2aには
図5に示すように、その左端部と右端部に、中心線Pから左右方向にθ1度(例えば30度)ずつ傾斜して左右対称に凹部5,6が凹設され、上記脚部2b,2b’には各々同一水平中心軸Sを共有する取付孔7と螺子孔8が水平に貫通形成されている。
【0032】
また、以下の説明において、
図1(c)、
図3(c)における矢印A,B方向、即ち、当該ケーシングビット1がケーシングパイプ18先端に取り付けられた状態において、ケーシングパイプ18の回転方向に沿う方向を「左右方向」、上記脚部2b,2b’における上記取付孔7が形成された側を「外」(ケーシングパイプ18の外周側)又は「前」、上記螺子孔8が形成された側を「内」(ケーシングパイプ18の内周側)又は「後」と定義する。また、ケーシングビット1において、上記超硬チップ3,4側を「上」、脚部2b,2b’側を「下」と定義する。
【0033】
そして、
図1、
図2に示すように、
図1(b)、(d)のケーシングビットの図において、超孔チップ3,4の2つの前側の頂部3a,4a及び2つの後側の頂部3b,4bが共に外側寄りに位置するケーシングビット1を外刃1aといい、
図3、
図4に示すように、
図3(b)、(d)のケーシングビットの図において、超硬チップ3,4の前側の頂部3a,4a及び後側の頂部3b,4bが共に内側寄りに位置するケーシングビット1を内刃1bという。
【0034】
上記ケーシングビット1の頭部2aには(
図5に外刃1a用のケーシングビット本体2を示す)、上記凹部5,6が、当該ケーシングビット本体2の幅方向(前後方向)に亘って貫通形成されており、これら凹部5,6間の頭部2aには、上記超硬チップ3,4の各2つの頂部3a,3b、4a,4bに連なる左右方向の稜線9a,9bを有する2つの山部9a’,9b’が形成されている(
図1(d)、
図2(d)、
図5(d)参照)。
【0035】
上記超硬チップ3は、上記凹部5内に嵌合可能な略直方体形状の基部3’と、当該基部3’上部に一体に形成され、前側の頂部3aと後側の頂部3bの2つの頂点を有する刃部3”とから構成されている(
図1(c)、
図3(c)参照)。
【0036】
上記前側の頂部3aは左右方向から上記頂部3aに向かう上り傾斜の稜線10とこれに交差し上記頂部3aに向かう上り傾斜の稜線11の交わる最も高い頂点位置に突設されており、これにより上記頂部3aに向かう4つの傾斜面10’が形成されている。上記後側の頂部3bは左右方向から上記頂点3bに向かう上り傾斜の稜線12とこれに交差し上記頂点3bに向かう上り傾斜の稜線13の交わる最も高い頂点位置に突設されており、これにより上記頂部3bに向かう4つの傾斜面11’が形成されている。
【0037】
そして、上記超硬チップ3の上記基部3’を上記凹部5に嵌合したとき、上記頂部3a,3bは上記中心線Pよりθ1度(例えば30度)左方向に傾斜して位置し、かつ、上記稜線10と上記稜線12の位置は、各々上記山部9a’,9b’の稜線9a,9bの位置と一致し、両頂部3a,3bから下り傾斜の稜線10,12が上記稜線9a,9bに連続すると共に、上記傾斜面10’,11’が各々上記2つの山部9a’,9b’の面に連続する2つの傾斜した山部を形成するように構成されている。
【0038】
ただし、外刃1aは、
図6(b)に示すように、上記前側の頂部3aは上記後側の頂部3bよりT2(例えば約1.2mm)だけ高く形成されている。一方、内刃1bは、
図7(b)に示すように、上記後側の頂部3bは上記前側の頂部3aよりT2(例えば約1.2mm)だけ高く形成されている。
【0039】
上記超硬チップ4は、上記超硬チップ3と線対称形状に設けられており、その形状は上記超硬チップ3と同様である。即ち、上記超硬チップ4は、上記凹部6内に嵌合可能な略直方体形状の基部4’と、当該基部4’上部に一体に形成され、前側の頂部4aと後側の頂部4bの2つの頂点を有する刃部4”とから構成されている(
図1(c)、
図3(c)参照)。
【0040】
上記前側の頂部4aは左右方向から上記頂部4aに向かう上り傾斜の稜線14とこれに交差し上記頂部4aに向かう上り傾斜の稜線15の交わる最も高い頂点位置に上記頂部3aと同一高さに突設されており、これにより上記頂部4aに向かう4つの傾斜面14’が形成されている。上記後側の頂部4bは左右方向から上記頂部4bに向かう上り傾斜の稜線16とこれに交差し上記頂部4bに向かう上り傾斜の稜線17の交わる最も高い頂点位置に上記頂部3bと同一高さに突設されており、これにより上記頂部4bに向かう4つの傾斜面15’が形成されている。
【0041】
そして、上記超硬チップ4の上記基部4’を上記凹部6に嵌合したとき、上記頂部4a,4bは上記中心線Pよりθ1度(例えば30度)右方向に傾斜して位置し、かつ、上記稜線14と上記稜線16の位置は、各々上記山部9a’,9b’の稜線9a,9bの位置と一致し、両頂部4a,4bから下り傾斜の稜線14,16が上記稜線9a,9bに連続すると共に、上記傾斜面14’,15’が各々上記2つの山部9a’,9b’の面に連続する2つの傾斜した山部を形成するように構成されている。
【0042】
ただし、外刃1aは、
図6(b)に示すように、上記前側の頂部4aは上記後側の頂部4bよりT2(例えば1.2mm)だけ高く形成されている。一方、内刃1aは、
図7(b)に示すように、上記後側の頂部4bは上記前側の頂部4aよりT2(例えば1.2mm)だけ高く形成されている。
【0043】
よって、上記外刃1a、内刃1b共に、左右の上記超硬チップ3,4の各々には、上記回転方向に交差する上記頭部2aの前後の幅方向に2か所ずつの頂部3a,3b、4a,4bが突出形成されており、左右の上記超硬チップ3,4における計4か所の上記頂部の内、左端部の上記超硬チップ3の前側の上記頂部3aと右端部の上記超硬チップ4の前側の上記頂部4aは、上記頭部2aの前側に位置する左右方向の稜線(10,9a,14)に沿って設けられており、左端部の超硬チップ3の後側の頂部3bと右端部の超硬チップ4の後側の頂部4bは、上記頭部2aの後側に位置する左右方向の稜線(12,9b,16)に沿って設けられている。
【0044】
そして、上記外刃1aは
図1(b)、(d)に示すように、上記左右の上記両超硬チップ3,4における上記前側の各頂部3a,4aと上記後側の各頂部3b,4bが、上記頭部2aの前後の幅方向に対して、共に、上記外側脚部2b寄りに設けられており、上記内刃1bは
図3(b)、(d)に示すように、上記左右の上記両超硬チップ3,4における上記前側の各頂部3a,4aと上記後側の各頂部3b,4bが、上記頭部2aの前後の幅方向に対して、上記内側脚部2b’寄りに設けられている。
【0045】
また、上記外刃1aは(
図1参照)、上記ケーシングビット本体2の上記頭部2a上において、外側寄りの左右方向同一直線(10, 9a,14)上に、超硬チップ3,4による最も高い位置にあって左右方向の開き角度が互いにθ1度(例えば30度)の同一高さの2つの頂部3a,4aが形成されており、中央部寄りの左右方向同一直線(12,9b,16)上に、超硬チップ3,4による最も高い位置にあって左右方向の開き角度が互いにθ1度(例えば30度)の同一高さの2つの頂部3b,4bが形成された構成となっている。
【0046】
また、上記内刃1bは(
図3参照)、上記ケーシングビット本体2の上記頭部2a上において、内側寄りの左右方向同一直線(12,9b,16)上に、超硬チップ3,4による最も高い位置にあって左右方向の開き角度が互いにθ1度(例えば30度)の同一高さの2つの頂部3b,4bが形成されており、中央部寄りの左右方向同一直線(10,9a,14)上に、超硬チップ3,4による最も高い位置にあって左右方向の開き角度が互いにθ1度(例えば30度)の同一高さの2つの頂部3a,4aが形成された構成となっている。
【0047】
そして、外刃1aにおいては、上述のように、上記前側の頂部3a,4aの高さは上記後側の頂部3a,4aの高さより若干高く(T2)なるように構成されている(
図6(b)、
図1(c)参照)。これは、当該外刃1aのケーシングビット本体2をケーシングパイプ18に固定するとき、ケーシングビット1(1a)を
図11(b)に示すように、θ2度(例えば2度)外側に傾斜して固定するが、その場合、上記前側の頂部3a,4aと後側の頂部3b,4bとが、同一高さに位置し、各頂部3a,3b、4a,4bが切削面Rに対して均等に当接し得るようにするためである。上記各超硬チップ3,4の上記各凹部5,6への接着はいわゆるろう付けによるものである。
【0048】
上述のように、上記内刃1bは、
図3(b)に示すように、上記外刃1aと比較して、2つの前側頂部3a,4a及び後側頂部3b,4bが全体としてケーシングビット本体2の内側寄りに位置している点、上記外刃1aとは逆に、後側の頂部3b,4bが前側の頂部3a,4aより若干高く(T2)なるように構成されている点を除いては、上記
図1に示す外刃1aとしてのケーシングビット本体2と同様である。
【0049】
そして、上記内刃1bの後側の頂部3b,4bが前側の頂部3a,4aより高いのは、当該ケーシングビット本体2をケーシングパイプ18に固定するとき、ケーシングビット1(1b)を
図13(b)に示すように、θ2度(例えば2度)内側に傾斜して固定するが、その場合、上記前側の頂点3a,4aと後側の頂点3b,4bとが、同一高さに位置し、各頂部3a,3b、4a,4bが切削面Rに対して均等に当接し得るようにするためである。
【0050】
次に、上述のように構成されたケーシングビット1のケーシングパイプ18への取り付け構造について説明する。
【0051】
図6、
図7に示すように、ケーシングパイプ18の先端部の外周に連続的に凹設された複数の凹溝26にホルダー20を溶接により嵌合接合し、当該ホルダー20の嵌合凹部19に、上記ケーシングビット1の脚部2b,2b’を装着し、ボルト30を上記取付孔7に外側から挿入し、上記凹部19の貫通孔22を介して上記螺子孔8に螺合することにより、当該ケーシングビット1を上記ケーシングパイプ18先端に固定する。
【0052】
上記ホルダー20は
図8、
図9に示すように、外刃1a用、内刃1b用ともに同一形状であり、長方形板状の本体21の上面21dから下方向に向けて方形状の同一形状の凹部19,19が、当該本体21の両面に形成されており、当該凹部19の中央部には当該板面を貫通する貫通孔22が形成されている。また、上記凹部19,19によってホルダー20の両面には「コ」字状の外面25及び内面25’が形成されている。
【0053】
上記本体21の左右側面21a,21b及び底面21cの縁部は各々面取りされ、上記左右側面21a,21bに向かうテーパ状の溶接用開先23,23、上記底面21cに向かうテーパ状の溶接用開先24,24が各々形成されている。このように構成することにより、当該ホルダー20を上記凹溝26に固定する際、当該ホルダー20を上記ケーシングパイプ18の中心軸Nに平行な線(鉛直線N’、
図11、
図13参照)に対して、外側方向(矢印C方向、
図11(b)参照)又は内側方向(矢印D方向、
図13(b)参照)に傾斜した状態で、容易に固定し得るように構成している。
【0054】
図10、
図12に示すように、上記ホルダー20は、その左右側面21a,21b及び底面21bを上記ケーシングパイプ18の上記凹溝26に溶接により固定する(溶接部Wをハッチングにて示す)。この場合、外刃1aを固定するホルダー20は
図11(a)に示すように、その外面25が上記ケーシングパイプ18の外面18aに一致するように、上記凹溝26の幅T3(ケーシングパイプ18の厚さ)における外側寄りの位置に溶接固定する(溶接部W)。そして、上記ホルダー20の上記凹部19,19に上記ケーシングビット1の脚部2b,2b’を、上記頂部3a,4aが外側寄りとなるように嵌合し、上記貫通孔7からボルト30を上記貫通孔22を介して螺子孔8に螺合することにより、当該ビット1を上記ホルダー20に固定する(
図11(a)参照)。このように構成することにより、上記ケーシングパイプ18の外面18aから、前側の頂部3a,4aによる、外側の第1の切削軌跡X1までの距離T4をできるだけ短くすることができる。
【0055】
又、外刃1aを固定するホルダー20は
図11(b)に示すように、その外面25が上記ケーシングパイプ18の外面18aに一致するように、上記凹溝26の幅T3における外側寄りの位置に溶接固定し、かつ上記ホルダー20を、
図11(a)の位置から、上記ホルダー20の下端の回転中心点Qを基準(回転中心)として、上面21d側を外側方向(矢印C方向)にθ2度(例えば2度)傾斜した状態で、当該ホルダー20を上記凹溝26に溶接固定する(溶接部W)。そして、上記ホルダー20の上記凹部19,19に上記ケーシングビット1(1a)の脚部2b,2b’を、上記頂部3a,4aが外側寄りとなるように嵌合し、上記取付孔7からボルト30を上記貫通孔22を介して螺子孔8に螺合することにより、当該ビット1を上記ホルダー20に固定する(
図11(b)参照)。即ち、ケーシングビット1(1a)を上記回転中心点Qを中心として、その頂部側を外側に若干(θ2度)傾斜して固定する。
【0056】
このように構成すると、上記ケーシングパイプ18の外面18aから、前側の頂部3a、4aによる、外側の第1の切削軌跡X1までの距離T4’をより短く(T4’<T4)することができる。
【0057】
この場合、上記頂部3a,4aによる掘削径M1(掘削半径)をケーシングパイプ18の外径Q1(外半径)にできるだけ近づけることができ(
図16(a))、従来のケーシングカッタに比べて掘削半径を拡大することができる。
【0058】
また、内刃1bを固定するホルダー20は
図13(a)に示すように、その内面25’が上記ケーシングパイプ18の内面18bに一致するように、上記凹溝26の幅T3における内側寄りの位置に溶接固定する(溶接部W)。そして、上記ホルダー20の上記凹部19,19に上記ケーシングビット1の脚部2b,2b’を、上記頂部3b,4bが内側寄りとなるように嵌合し、上記貫通孔7からボルト30を上記貫通孔22を介して螺子孔8に螺合することにより、当該ビット1を上記ホルダー20に固定する(
図11(a)参照)。このように構成することにより、上記ケーシングパイプ18の内面18bから、後側の頂部3b,4bによる、内側の第2の切削軌跡X2までの距離T5をできるだけ短くすることができる。
【0059】
又、内刃1bを固定するホルダー20は
図13(b)に示すように、その内面25’が上記ケーシングパイプ18の内面18bに一致するように、上記凹溝26の幅T3における内側寄りの位置に溶接固定し、かつ上記ホルダー20を、
図13(a)の位置から、上記ホルダー20の下端の回転中心点Qを基準(回転中心)として、内側方向(矢印D方向)にθ2度(例えば2度)傾斜した状態で、当該ホルダー20を上記凹溝26に溶接固定する(溶接部W)。そして、上記ホルダー20の上記凹部19,19に上記ケーシングビット1(1b)の脚部2b,2b’を、上記頂部3b,4bが内側寄りとなるように嵌合し、上記貫通孔7からボルト30を上記貫通孔22を介して螺子孔8に螺合することにより、当該ビット1を上記ホルダー20に固定する(
図13(b)参照)。即ち、ケーシングビット1(1b)を上記回転中心点Qを中心として、その頂部側を内側に若干(θ2度)傾斜して固定する。
【0060】
このように構成すると、上記ケーシングパイプ18の内面18bから、後側の頂部3b,4bによる、内側の第2の切削軌跡X2までの距離T5’をより短く(T5’<T5)することができる。
【0061】
この場合、上記頂部3b,4bによる掘削径M2(掘削半径)をケーシングパイプ18の内径Q2(内半径)にできるだけ近づけることができる。結果として、上記外刃1aの上記構成と相俟って、掘削可能な外半径M1(第1の掘削軌跡X1)と内半径M2(第2の掘削軌跡X2)により構成される掘削幅H(
図16(b)参照)を、ケーシングパイプ18の内外面18b,18a間の距離T3に極力近づけることができ(
図16(b)、
図18(a)参照)、これにより掘削幅Hを広くして、円滑な掘削及びケーシングパイプ18の引き抜きを実現し得る。
【0062】
そして、上記ケーシングパイプ18の各凹溝26には、上記ケーシングビット1の外刃1aと内刃1bとを交互に固定する(
図14、
図15、
図16(a)(b)参照)。さらに、
図17(a)に示すように、上記外刃1aと内刃1bとを交互に固定する際、外刃1aの後側の頂部3b,4bの切削軌跡と、内刃1bの前側の頂部3a,4aの切削軌跡が、同一又は略同一の切削軌跡X3を通るように構成する(
図16(b)、
図17(b)参照)。
【0063】
このように構成することにより、
図16(b)に示すように、上記ケーシングビット1による切削軌跡は、ケーシングパイプ18の回転により、上記各ケーシングビット1の外刃1aの前側の頂部3a,4aによる最外周の第1の切削軌跡X1(半径M1)と、上記ケーシングビット1の内刃1bの後側の頂部3b,4bによる最内周の第2の切削軌跡X2(半径M2)と、上記ケーシングビット1の外刃1aの後側の頂部3b,4bと上記ケーシングビット1の内刃1bの前側の頂部3a,4aによる上記第1の切削軌跡X1と上記第2の切削軌跡X2の間に位置する、中間の第3の切削軌跡X3(半径M3)の三条の切削軌跡X1〜X3が形成されることになる(
図17(b)参照)。
【0064】
従って、
図18(a)に示すように、ケーシングビット1の外刃1aの超硬チップ3,4の前側の頂部3a,4aによって、上記ケーシングパイプ18の外面18aに極めて近い外周位置(上記外面18aより距離T4’の切削軌跡X1)を切削し、かつ、上記ケーシングビット1の内刃1bの超硬チップ3,4の後側の頂部3b,4bによって、上記ケーシングパイプ18の内面18bに極めて近い内周位置(上記内面18bより距離T5’の切削軌跡X2)を切削することができる。即ち、掘削幅H(X2〜X1)をケーシングパイプ18の厚さ(T3)に極力近づけることができ、これによりケーシングパイプ18を円滑かつ容易に打ち込み、かつ引き抜くことができる。
【0065】
尚、掘削径を拡大するとは、主に第1の掘削軌跡X1の半径M1を拡大することにより、外側の掘削径をケーシングパイプ18の外面18aに極力近づけることをいい、掘削幅Hを拡大するとは、第1の掘削軌跡X1の半径M1と第2の掘削軌跡X2の半径M2間の掘削幅Hをケーシングパイプ18の厚さT3に極力近づけることをいう。
【0066】
本発明のケーシングビット1は上述のように構成されているので、本発明における上記ケーシングビット1を
図15、
図16に示すように、ケーシングパイプ18の先端に形成された複数の凹溝26に、各々ホルダー20を、外刃用と内刃用に交互に溶接固定する。即ち、外刃用には、その外面25を上記ケーシングパイプ18の外面18aに合わせた状態で、外側にθ2度(例えば2度)傾斜させた状態で溶接により固定すると共に、内刃用には、その内面25’を上記ケーシングパイプ18の内面18bに合わせた状態で、内側にθ2度(例えば2度)傾斜させた状態で溶接により固定する。上記凹溝26に対する上記外刃用のホルダー20(外側に傾斜)と内刃用のホルダー20(内側に傾斜)の取り付けを交互に行う(
図16(a)参照)。
【0067】
その後、外側に傾斜した外刃用のホルダー20の各凹部9,9に外刃用のケーシングビット1(1a)を取付孔7が外側を向くように各々嵌合装着し、その外側からボルト30を上記取付孔7に挿入螺合して、これらケーシングビット1(1a)を各ホルダー20(1つ置き)に固定する。
【0068】
さらに、内側に傾斜した内刃用のホルダー20の各凹部9,9に内刃用のケーシングビット1(1b)を取付孔7が外側を向くように各々嵌合装着し、その外側からボルト30を上記取付孔7に挿入螺合して、これらケーシングビット1(1b)を各ホルダー20(1つ置き)に固定する。
【0069】
これにより、
図15、
図16に示すように、全ての凹溝26に、外刃1aと内刃1bが交互に装着されたケーシングカッタ(ケーシングパイプ)27を構成することができる。このとき、上記ケーシングビット1の外刃1aはその頂部側が外側にθ2度(2度)傾斜して固定されており、上記ケーシングビット1の内刃1bはその頂部側が内側にθ2度(2度)傾斜して固定されているので、
図16に示すように、ケーシングパイプ18の先端部には、外側に若干傾斜した外刃1aと内側に若干傾斜した内刃1bとが交互に固定された状態となっている。
【0070】
そこで、かかるケーシングカッタ27を使用して、地盤等を掘削する場合は、
図19に示すように、掘削機28の先端に上記各ケーシングビット1の超硬チップ3,4を下向きにして、ケーシングカッタ27を鉛直方向に取り付け、当該ケーシングカッタ27を上記ケーシングパイプ18の中心軸Nを中心に矢印A方向に回転しながら、鉛直方向のガイドパイプ29に沿って、下降し、上記超硬チップ3,4によって地盤又はコンクリートGを掘削しながら、所定の深度まで掘削を行うことができる。
【0071】
このとき、ケーシングビット1において、地盤G等の掘削対象物に当接して掘削を行う頂部(掘削ポイント)が、超硬ビット3,4毎に複数個所(本実施形態では2か所ずつ)存在するため、1つのケーシングビット1においては、計4か所の頂部3a,3b,4a,4bにて地盤等を掘削することができるため、1つのケーシングビット1に対する荷重の集中を分散することができ、超硬チップ3,4の欠けを防止することができる。
【0072】
また前後の幅方向の2か所の頂部(掘削ポイント)3a,3b又は4a,4bを有する超硬チップ3,4を、1つのケーシングビット1に2個設けて両刃ケーシングビット1とし、この両刃のケーシングビット1において、外刃1aと内刃1bを形成し、これらのケーシングビットの外刃1aと内刃1bをケーシングパイプ18の凹溝26に交互に装着することにより、三条の掘削軌跡X1,X2,X3を形成することができ、これにより掘削径(又は掘削幅)を広くすることができると共に、広い掘削幅であっても効果的な掘削動作を行うことができる。
【0073】
また、外側の掘削軌跡X1の径M1をケーシングパイプの外面18aの径Q1に極力近づけることができ、同時に、内側の掘削軌跡X2の径M2をケーシングパイプの内面18bの径Q2に極力近づけることができ、よって掘削幅Hが従来より大となり、当該掘削幅Hをケーシングパイプ18の厚みT3にできるだけ近づけることができる。これにより、ケーシングパイプ18の外周及び内周の際まで超硬チップ3,4の頂部にて掘削できるので、ケーシングパイプ18をより容易に打ち込むことができるし、ケーシングパイプ18の引き抜きも容易に行うことができる。
【0074】
また、掘削途中において、掘削経路に交差(直交)する鉄筋を切断する際、鉄筋を、略ケーシングパイプ18の外周面と内周面の位置に近い超硬チップ3,4の頂部にて切断し得るので、ケーシングパイプ18を引き抜く際、鉄筋の切断端部と、ケーシングパイプ18の内外周面との接触箇所或いは接触面積が低減され、これによりケーシングパイプ18の引き抜きによる騒音を低減することができる。
【0075】
以上のように、本発明によれば、掘削対象物に当接する掘削ポイントが、1つの超硬チップ3,4において2か所ずつ存在するので、掘削時の荷重が分散され、超硬チップの欠損を防止し得るケーシングビットを実現することができる。
【0076】
また、左右の超硬チップ3,4の各頂部が頭部の左右方向の稜線に沿って設けられているので、複数の上記ケーシングビット1をケーシングパイプ18先端に固定してケーシングカッタ27を構成したとき、例えば三条の掘削軌跡X1〜X3を容易に構成することができ、掘削幅Hを広くし得るケーシングビットを実現することができる。
【0077】
また、ケーシングビット1を外刃1aと内刃1bにより構成することにより、掘削経又は掘削幅Hを拡大してケーシングパイプによる円滑な掘削及び引き抜きを実現し得るケーシングビット実現成することができる。
【0078】
また、超硬チップ3,4は中心線Pより左右開き方向に傾斜した状態で各凹部5,6に嵌合固定されているので、掘削時に発生する熱、荷重等による超硬チップの凹部からの脱落を効果的に防止することができる。
【0079】
また、ケーシングビット1をケーシングパイプ18の外側方向又は内側方向に傾斜した状態で固定した際、複数の各頂部を掘削対象物に均等に当接させることができ、掘削径又は掘削幅Hを拡大したときに効果的な掘削性能を発揮することができるケーシングビットを実現することができる。
【0080】
また、内側の掘削径M2(第2の掘削軌跡X2)及び外側の掘削径M1(第1の掘削軌跡X1)による掘削幅Hを、ケーシングパイプ18の厚さT3に近接させることができ、また、第1、第2の掘削軌跡X1,X2の中間位置においても頂部により掘削して第3の掘削軌跡X3を形成することができ、掘削径又は掘削幅Hを拡大することにより円滑な掘削及びケーシングパイプの引き抜きを実現し得るケーシングパイプを実現することができる。
【0081】
また、ケーシングビット1をケーシングパイプ18に固定する際、各ケーシングビットを内外方向に傾斜して固定することにより、掘削幅Hをさらに拡大することができ、これにより円滑な掘削及び引き抜きを実現し得るケーシングパイプを実現することができる。
【0082】
尚、ケーシングビット1の傾斜角度(θ2)は上記実施形態における2度に限らず、現場に応じて適宜の角度に設定することができる。