(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
架台の上部に設けられた上部ベースにロボットが取り付けられ、前記上部ベースより下方に配置されたワークに対し、前記ロボットの先端部に固定されたツールにて加工、計測、その他の処理を行うロボットシステムにおいて、
前記ツールに接続されたケーブルを、前記上部ベースに備えたケーブル挿通孔の内側に通してからU字状に曲げて下方に向かわせて前記上部ベースに備えたケーブル端部支持部に固定し、
前記上部ベースから上方に起立した昇降ガイドレールと、
前記昇降ガイドレールに上下動可能に案内され、前記ケーブルの一部を保持したケーブル保持スライダと、
前記ケーブル保持スライダを位置制御するケーブル取回用サーボモータと、
前記ロボットの駆動源であるロボット駆動用サーボモータのティーチングポイントと前記ケーブル取回用サーボモータのティーチングポイントとを対応付けて記憶し、ティーチングプレイバックにより前記ロボット及び前記ケーブル保持スライダを駆動することが可能なコントローラとを備えたことを特徴とするロボットシステム。
一端部が前記ケーブル保持スライダに固定される一方、他端部が前記ケーブル端部支持部に固定されて、前記ケーブルをU字状に湾曲した形状に維持するケーブルキャリアを備えたことを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
第1の水平方向に平行に延びかつ前記ケーブルを挟んで対峙した1対の第1ローラーと、前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向に平行に延びかつ前記ケーブルを挟んで対峙し、前記1対の第1ローラーに対して上下方向で重なるように配置された1対の第2ローラーとを前記上部ベースに回転可能に支持して、
前記ケーブル挿通孔は、1対ずつの前記第1及び前記第2のローラーに囲まれていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載のロボットシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来のロボットシステムにおけるツールを、例えば、レーザー加工用のレーザートーチや、三次元測定用の測定子に置き換えた場合、ツールに接続されたケーブル(光ファイバケーブルや通信ケーブル)が、上部ベースの下方に大きく垂れ下がって、ツールの移動を妨げる虞があった。また、ツールの移動に伴う過度な屈曲や引っ張りによってケーブルが破損する虞があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ケーブルによってツールの移動が妨げられたり、ケーブルが破損することを防止することが可能なロボットシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るロボットシステムは、架台の上部に設けられた上部ベースにロボットが取り付けられ、上部ベースより下方に配置されたワークに対し、ロボットの先端部に固定されたツールにて加工、計測、その他の処理を行うロボットシステムにおいて、ツールに接続されたケーブルを、上部ベースに備えたケーブル挿通孔の内側に通してからU字状に曲げて下方に向かわせて上部ベースに備えたケーブル端部支持部に固定し、上部ベースから上方に起立した昇降ガイドレールと、昇降ガイドレールに上下動可能に案内され、ケーブルの一部を保持したケーブル保持スライダと、ケーブル保持スライダを位置制御するケーブル取回用サーボモータと、ロボットの駆動源であるロボット駆動用サーボモータのティーチングポイントとケーブル取回用サーボモータ
のティーチングポイントとを対応付けて記憶し、ティーチングプレイバックによりロボット及びケーブル保持スライダを駆動することが可能なコントローラとを備えたところに特徴を有する。
【0007】
ここで、本発明における「ケーブル」とは、電気やレーザー光を伝送するものだけでなく、中空構造で内部を流体が通過可能なもの(ホースやチューブ)を含む意味である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のロボットシステムにおいて、一端部がケーブル保持スライダに固定される一方、他端部がケーブル端部支持部に固定されて、ケーブルをU字状に湾曲した形状に維持するケーブルキャリアを備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のロボットシステムにおいて、ツールは、レーザートーチであり、ケーブルは、レーザー光を案内する光ファイバであるところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載のロボットシステムにおいて、第1の水平方向に平行に延びかつケーブルを挟んで対峙した1対の第1ローラーと、第1の水平方向と直交する第2の水平方向に平行に延びかつケーブルを挟んで対峙し、1対の第1ローラーに対して上下方向で重なるように配置された1対の第2ローラーとを上部ベースに回転可能に支持して、ケーブル挿通孔は、1対ずつの第1及び第2のローラーに囲まれているところに特徴を有する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載のロボットシステムにおいて、上部ベースは、メインベースと、メインベースの上方に配置され、メインベースに対して鉛直軸を中心にして正逆にそれぞれ30度以内の角度で回転可能に支持されたサブベースとからなり、ケーブル挿通孔は、メインベースに設けられる一方、ケーブル端部支持部がサブベースに設けられたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1のロボットシステムは、ツールに接続されたケーブルを、上部ベースに備えたケーブル挿通孔の内側に通してからU字状に曲げて下方に向かわせて上部ベースに備えたケーブル端部支持部に固定してあり、そのケーブルの一部が、ケーブル保持スライダに保持されている。ケーブル保持スライダは、上部ベースから上方に起立した昇降ガイドレールによって上下動可能に案内され、ケーブル取回用サーボモータによって位置制御される。
【0013】
そして、ロボットの駆動源であるロボット駆動用サーボモータのティーチングポイントと、ケーブル取回用サーボモータのティーチングポイントとを対応付けて記憶し、ティーチングプレイバックによりロボットとケーブル保持スライダが駆動されるので、ツールの移動中や移動先において、ケーブルの過不足が生じないように、適度な遊び(弛み)を維持した状態でケーブルを取り回すことが可能になる。これにより、ケーブルによってツールの移動が妨げられたり、ケーブルが破損することを防止することができる。
【0014】
ここで、本発明における「ツール」としてレーザートーチを備え、「ケーブル」としてレーザー光を案内する光ファイバを備えていてもよい(請求項3の発明)。また、ツール及びケーブルはこれに限定するものではなく、例えば、「ツール」としてガストーチを備え、「ケーブル」としてガスホースを備えていてもよい。また、例えば、「ツール」として三次元測定用の測定子を備え、「ケーブル」としてレーザー光を案内する光ファイバを備えていてもよい。さらに、「ツール」として塗装ガンを備え、「ケーブル」として塗料ホースを備えていてもよい。
【0015】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、ケーブルは、ケーブル保持スライダとケーブル端部支持部との間で、ケーブルキャリアにより、U字状の湾曲形状に維持されるから、ケーブルの過度な屈曲を防止すると共に、ケーブル保持スライダをスムーズに上下動させることが可能になる。
【0016】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、ケーブル挿通孔は1対の第1ローラーと、1対の第2ローラーとに囲まれており、ケーブルがケーブル挿通孔内を移動する際に、ケーブルと接触したローラーが従動回転するから、ケーブル挿通孔との擦れによるケーブルの摩耗を抑えることができる。
【0017】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、メインベースに対するサブベースの回転は、正逆それぞれ30度以内に制限されているので、メインベースに対してサブベースが旋回して、それらメインベースとサブベースとの間でケーブルが捻れたとしても、過剰な負荷にならないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る一実施形態を
図1〜
図12に基づいて説明する。
図1に示した本実施形態のロボットシステム100は、例えば、ワークをレーザー加工(例えば、溶接、溶断又は穿孔)するためのレーザー加工機であって、レーザートーチ90を先端部に備えたロボット10と、レーザー光を発振するレーザー発振器101とを備えている。ロボット10は、5つの駆動軸を有しており、これら5つの駆動軸のうち、2つの駆動軸はツイストスライド機構によって構成されている。ツイストスライド機構は、工場の架台102に固定される固定ベース11と、固定ベース11にスライド可能に連結された直動ベース20と、直動ベース20に対して旋回可能に連結された旋回ベース30とを備えている(
図6参照)。そして、固定ベース11より下方のワーク加工領域で、レーザートーチ90による加工が行われる。なお、本発明に係る「上部ベース」は、本発明の「メインベース」に相当する直動ベース20と、本発明の「サブベース」に相当する旋回ベース30とによって構成されている。
【0020】
図4に示すように、固定ベース11は、平面形状が長方形で上面全体が開放した略箱形状をなしている。固定ベース11の底壁12には、矩形開口部12Aと、矩形開口部12Aの開口縁に沿って互いに平行に延びた1対のガイドレール13,13とが設けられている。矩形開口部12Aは、底壁12の短手方向の中央部に設けられ、長手方向の全体に亘って延びている。また、
図5に示すように、1対のガイドレール13,13は、底壁12の上面に固定され、矩形開口部12Aの長辺と平行に延びている。
【0021】
図4に示すように、直動ベース20は、平面視矩形の平板状をなしており、
図5に示すように、1対のガイドレール13,13の間に架け渡されている。直動ベース20の中央部には、直動ベース20を上下方向に貫通した円形のセンター孔21が形成されている。また、直動ベース20の下面両側部には、1対のスライダ14,14が固定され、これらスライダ14,14が、ガイドレール13,13と係合している。これにより、直動ベース20が固定ベース11に対してスライド可能に連結されている。以下、固定ベース11に対する直動ベース20のスライド方向(図中の矢印H1で示した方向)を、適宜、「第1の水平方向H1」という。
【0022】
図5に示すように、旋回ベース30は、固定ベース11を上下方向に貫通して延びたツイスト筒部31を備えている。ツイスト筒部31は、直動ベース20のセンター孔21及び固定ベース11の矩形開口部12Aに挿通されており、センター孔21の内側に固定されたクロスローラベアリング22を介して、直動ベース20に回転可能に連結されている。
【0023】
1対のガイドレール13,13の上方には、1対のベース駆動用ボール螺子41,41が設けられている。これらベース駆動用ボール螺子41,41は、それぞれガイドレール13,13と平行に延びており、両端部が、固定ベース11のうち第1の水平方向H1で対向した基端壁15と先端壁16(
図4参照)とに支持されている。詳細には、基端壁15には、図示しない1対の減速機ユニットが横並びにして取り付けられており、各ベース駆動用ボール螺子41の一端部が、それら減速機ユニットを介して基端壁15に回転可能に支持されている。また、先端壁16には、図示しない1対のベアリングが横並びにして取り付けられており、各ベース駆動用ボール螺子41の他端部が、それらベアリングを介して先端壁16に回転可能に支持されている。
【0024】
減速機ユニットが取り付けられた基端壁15の外面には、1対のベース駆動用サーボモータ81,81がブラケット81K,81Kを介して横並びに取り付けられている。各ブラケット81Kは、減速機ユニットの端部を囲んだ筒状をなし、各ベース駆動用サーボモータ81の出力回転軸が、ブラケット81K内で各減速機ユニットに連結されている。そして、
図5に示すように、1対のベース駆動用ボール螺子41,41には、それぞれベース駆動用ボールナット42,42が螺合している。これにより、1対のベース駆動用ボールナット42,42を、それぞれ別個に任意の回転位置に移動することが可能となっている。
【0025】
ベース駆動用ボールナット42,42は、以下に説明する「ベース・ナット連結機構」を介して旋回ベース30に連結されている。即ち、
図5に示すように、旋回ベース30には、ツイスト筒部31の外側面から側方に張り出しかつ、直動ベース20に上方から対向した連結プレート32が一体に備えられている。連結プレート32は、第1の水平方向H1と直交する第2の水平方向H2に延びた板状をなしており、その連結プレート32の下面のうち、ツイスト筒部31を挟んだ両側に中継ガイドレール33,33が固定されている。これら中継ガイドレール33,33は、第2の水平方向H2に延びかつ、第1の水平方向H1で対をなしている。
【0026】
図5に示すように、中継ガイドレール33には、それぞれ中継スライダ34が直動可能に係合している。また、
図7に示すように、第1の水平方向H1で対をなした中継スライダ34,34は、共通の中継ベース35に固定されている。
【0027】
図8に示すように、各中継ベース35には、上下方向に貫通したベアリング収容孔36Aが形成されており、その内側にナット連結用ベアリング36が抜け止め状態で嵌合している。一方、ベース駆動用ボールナット42は、上方に突出した中継ピン37を備え、その中継ピン37がナット連結用ベアリング36の内側に嵌合している。これら中継ガイドレール33、中継スライダ34、中継ベース35、ナット連結用ベアリング36及び中継ピン37によって「ベース・ナット連結機構」が構成されている。この「ベース・ナット連結機構」により、ベース駆動用サーボモータ81,81にてベース駆動用ボールナット42,42の直動位置を制御して、例えば
図4から
図10への変化に示すように、旋回ベース30を直動ベース20と共にロボットシステム100の長手方向にスライド移動しかつ、旋回ベース30を直動ベース20に対して、第1の水平方向H1と直交するベースツイスト軸J1回りで、例えば、正逆にそれぞれ30度以内の任意の角度にツイストさせることができる。
【0028】
図5及び
図6に示すように、ツイスト筒部31の下端部は、下端閉塞盤31Cによって閉塞されており、下端閉塞盤31Cの下面には、ガイドブロック31Gが固定されている。また、
図6に示すように、下端閉塞盤31C及びガイドブロック31Gには、1対のシャフト支持孔31D,31Dが上下方向に貫通形成されている。そして、それらシャフト支持孔31D,31Dには、それぞれ直動シャフト51,51が上下動可能に挿通されている。
【0029】
1対の直動シャフト51,51の上端部は、ツイスト筒部31の内部に配置されたシャフト連結部材52によって連結されている。また、シャフト連結部材52には、アーム直動用ボールナット54が一体に設けられている。そして、シャフト連結部材52を上下に貫通して延びたアーム直動用ボール螺子53に、アーム直動用ボールナット54が螺合している。
【0030】
図5に示すように、旋回ベース30はモータブラケット32Aを備えている。モータブラケット32Aは、連結プレート32の上面から起立しかつ第1の水平方向H1に開放した門形構造をなしており、ツイスト筒部31のうち、連結プレート32より上方に突出した部分を覆っている。モータブラケット32Aの天井壁32Bの上面には、減速機ユニット82Mが固定されており、その減速機ユニット82Mを介して、アーム直動用ボール螺子53とアーム直動用サーボモータ82とが連結されている。
【0031】
詳細には、アーム直動用ボール螺子53の上端部は、ツイスト筒部31の上端部を閉塞した上端閉塞盤31Bにベアリングを介して回転可能に支持されている。また、モータブラケット32Aの天井壁32Bが、第2の水平方向H2に張り出しており、その張り出した部分の下面にアーム直動用サーボモータ82が固定されている。そして、減速機ユニット82Mの入力部がアーム直動用サーボモータ82の出力回転軸に連結され、減速機ユニット82Mの出力部がアーム直動用ボール螺子53の上端部に連結されている。これにより、アーム直動用ボール螺子53がアーム直動用サーボモータ82によって回転駆動されて、アーム直動用ボール螺子53とアーム直動用ボールナット54とからなるボール螺子機構により直動シャフト51,51が上下動する。
【0032】
直動シャフト51,51の下端部には、第1アーム60が固定されている。
図3に示すように、第1アーム60は、直動シャフト51,51との結合部分から水平方向に延びた片持ち梁状をなし、その第1アーム60の先端部には、第2アーム駆動用サーボモータ83が取り付けられている。
【0033】
第2アーム駆動用サーボモータ83の回転中心は、旋回ベース30の回転中心であるベースツイスト軸J1と平行になっている。そして、第2アーム駆動用サーボモータ83の出力回転軸には、減速機ユニット83Mを介して第2アーム61が取り付けられている。
【0034】
第2アーム61は、減速機ユニット83Mに連結された基端部が水平となっており、中間部で45度屈曲して先端部が斜め下方に傾斜している。第2アーム61の先端部には、第3アーム駆動用サーボモータ84が取り付けられている。その第3アーム駆動用サーボモータ84の回転中心は、第2アーム61の先端部と直交しかつ第2アーム駆動用サーボモータ83の回転中心と交差するように配置されている。また、第3アーム駆動用サーボモータ84の出力回転軸には、減速機ユニット84Mを介して第3アーム62の基端部が取り付けられている。さらに、第3アーム62の先端部には、レーザートーチ90が取り付けられている。そして、レーザートーチ90は、上述したベース駆動用サーボモータ81、アーム直動用サーボモータ82、第2アーム駆動用サーボモータ83及び第3アーム駆動用サーボモータ84によって位置制御され、
図2及び
図11にて二点鎖線で示したように、ワーク加工領域に配置されたワークに対し、所望の位置で所望の方向からレーザー光を照射することが可能となっている。なお、これらサーボモータ81,82,83,84は、本発明の「ロボット駆動用サーボモータ」に相当する。
【0035】
さて、レーザートーチ90の基端部には、光ファイバケーブル93(以下、単に「ケーブル93」という)が接続されている。ケーブル93は、固定ベース11及び直動ベース20を貫通してから、U字状に湾曲して下方に向かい、旋回ベース30に備えたケーブル端部支持部38に固定されている。また、図示しないが、ケーブル93は、ケーブル端部支持部38からレーザー発振器101(
図1参照)へと延びており、レーザー発振器101にて発振されたレーザ光が、ケーブル93によってレーザートーチ90まで伝送されるようになっている。なお、ケーブル93とレーザートーチ90とをロータリージョイントによって接続してもよい。
【0036】
図3に示すように、ケーブル端部支持部38は、モータブラケット32Aの上面から鉛直上方に起立している。ケーブル端部支持部38の上端部と、後述するケーブル保持スライダ75との間は、ケーブルキャリア79(例えば、ケーブルベア(登録商標))によって連結されている。ケーブルキャリア79は、中間部でU字形に湾曲しており、そのケーブルキャリア79の内側にケーブル93が通されている。また、ケーブル93は、ケーブルキャリア79の両端部、即ち、ケーブル端部支持部38の上端部とケーブル保持スライダ75とに固定されている。そして、ケーブルキャリア79により、ケーブル93の中間部が、常にU字状に湾曲した状態に維持されている。なお、図示されていないが、ケーブル93のうち、ケーブル端部支持部38の下端部とレーザー発振器101との間を連絡した部分は、別のケーブルキャリアの中に通されている。
【0037】
図7に示すように、直動ベース20には、センター孔21とは別個にサイド孔25が貫通形成されている。センター孔21とサイド孔25は第1の水平方向H1に並んで配置されており、サイド孔25には、ケーブル93が通されている。
【0038】
直動ベース20のうち、サイド孔25の真下にはクロスガイドローラ43が配置されている。クロスガイドローラ43は、複数のローラー45,46を井桁状に配置した構造をなしており、それら複数のローラー45,46で囲まれた部分が、本発明に係る「ケーブル挿通孔49」となっている。
図9(B)に示すように、クロスガイドローラ43は、直動ベース20の下面に重ねて固定された矩形状のベース板44を備え、そのベース板44の中央には、サイド孔25と連通した円形孔44Aが貫通形成されている。また、ベース板44には、円形孔44Aの側方位置から垂下しかつ第1の水平方向H1で対向した1対の第1対向壁47,47と、第2の水平方向H2で対向した1対の第2対向壁48,48とが備えられている(
図9(A)参照)。
【0039】
1対の第1対向壁47,47の間には、第1の水平方向H1に延びた1対の第1ローラー45,45が架け渡されており、それら1対の第1ローラー45,45が、円形孔44Aに通されたケーブル93を挟んで対峙している(
図9(B)参照)。なお、第1ローラー45は、その中心部を貫通した支持シャフト45Aに対して回転可能に支持され、支持シャフト45Aの両端部が1対の第1対向壁47,47に回転不能に支持されている。
【0040】
第2対向壁48,48同士の間には、第2の水平方向H2に延びた1対の第2ローラー46,46が架け渡されており、それら第2ローラー46,46が円形孔44Aに通されたケーブル93を挟んで対峙している(
図9(A)及び同図(B)参照)。第1ローラー45と同様に、第2ローラー46も、その中心部を貫通した支持シャフト46Aに対して回転可能に支持されており、支持シャフト46Aの両端部が1対の第2対向壁48,48に回転不能に支持されている。
【0041】
図9(A)に示すように、第1ローラー45,45は、第2ローラー46,46の下方に隙間を空けて配置されており、第1ローラー45,45の両端部と、第2ローラー46,46の両端部とが上下方向で互いに重なるように配置されている(同図(B)参照)。そして、これら第1ローラー45,45と第2ローラー46,46とで囲まれたケーブル挿通孔49にケーブル93が遊嵌状態で挿通されている。
【0042】
図7に示すように、直動ベース20には、ケーブル昇降ガイド70が一体に設けられている。ケーブル昇降ガイド70は、第1の水平方向H1でツイスト筒部31と並んで配置されかつ、直動ベース20を挟んでクロスガイドローラ43とは反対側に配置されている。ケーブル昇降ガイド70のうち、直動ベース20の上面と対向したベースプレート71は、ベース駆動用ボール螺子41,41よりも上方に配置されており、そのベースプレート71と直動ベース20とが、1対のベース駆動用ボール螺子41,41の間に配置された連結部72によって連結されている。連結部72はベースプレート71におけるツイスト筒部31寄り位置から、直動ベース20の上面に向かって垂下している。また、連結部72を上下方向に貫通した貫通孔72Aにケーブル93が遊嵌状態で挿通されている。
【0043】
ケーブル昇降ガイド70は、ベースプレート71から鉛直上方に向かって起立したレール支持壁73を備えている。レール支持壁73は、ベースプレート71のうち、ツイスト筒部31から離れた位置に配設されており、
図4に示すように断面が「E」字形をなしている。また、レール支持壁73の下端部には、レール支持壁73を幅方向(第2の水平方向H2)で挟んで対向した1対の三角リブ73R,73Rが一体に設けられ、それら1対の三角リブ73R,73Rがベースプレート71に固定されている。
【0044】
レール支持壁73のうち、ツイスト筒部31側を向いた側面には、ケーブル保持スライダ75を上下動可能に案内する1対の昇降ガイドレール74,74が固定されている。1対の昇降ガイドレール74,74は、鉛直方向に延びており、これら昇降ガイドレール74,74の間にケーブル保持スライダ75が配置されている。ケーブル保持スライダ75にはボールナット(図示せず)が一体に設けられており、このボールナットが、1対の昇降ガイドレール74,74の間で鉛直方向に延びたケーブル昇降用ボール螺子76と螺合している。
【0045】
図3に示すように、昇降ガイドレール74の上端部には、ブラケット77が固定されており、そのブラケット77の上面にケーブル取回用サーボモータ78が取り付けられている。ブラケット77の内側には、図示しない減速機ユニットが備えられ、その減速機ユニットの入力部がケーブル取回用サーボモータ78の出力回転軸に連結され、減速機ユニットの出力部がケーブル昇降用ボール螺子76の上端部に連結されている。これにより、ケーブル昇降用ボール螺子76が、ケーブル取回用サーボモータ78にて回転駆動され、ケーブル保持スライダ75が、昇降ガイドレール74の案内によって上下動する。そして、上述したように、ケーブル保持スライダ75には、ケーブルキャリア79の一端部と共にケーブル93の中間部が固定されており、ケーブル93及びケーブルキャリア79が、ケーブル保持スライダ75の上下動に追従して移動する。
【0046】
図12には、ロボットシステム100に備えたコントローラ80が示されている。コントローラ80は、上記したケーブル取回用サーボモータ78、ベース駆動用サーボモータ81、アーム直動用サーボモータ82、第2アーム駆動用サーボモータ83及び第3アーム駆動用サーボモータ84の各サーボアンプ78A,81A,82A,83A,84Aがそれぞれ接続されたメイン制御回路85を備えている。また、コントローラ80には、データ入力操作部87が備えられ、データ入力操作部87の図示しないモード切替スイッチにてティーチングモードにすると、各サーボモータ78,81,82,83,84の各出力回転軸を別個に任意の回転位置に移動することができる。
【0047】
そして、データ入力操作部87の図示しないポイント記憶ボタンをオン操作することで、それらサーボモータ78,81〜84群の位置データ群を1組としたティーチングデータをメモリ86に記憶させることができ、そのようなティーチングデータと所定のコマンドとを組み合わせてロボットシステム100の動作プログラムが作成される。
【0048】
そして、データ入力操作部87のモード切替スイッチを実行モード(プレイバックモード)に切り替えて、動作プログラムをメイン制御回路85に実行させると、メイン制御回路85がティーチングモードに基づいて所定周期毎にサーボモータ78,81〜84の位置指令値を演算し、サーボモータ78,81〜84に付与する。即ち、メイン制御回路85がサーボモータ78,81〜84群を相互に対応した位置に位置制御する。これにより、レーザートーチ90が、ワーク加工領域における任意の位置に位置決め制御されると共に、そのレーザートーチ90の位置に対応した位置にケーブル保持スライダ75が位置決め制御される。
【0049】
本実施形態のロボットシステム100の構成に関する説明は以上である。次に、このロボットシステム100の作用効果について説明する。図示しないワークは、固定ベース11の下方のワーク加工領域にセットされる。そして、ティーチングプレイバック方式でロボットシステム100が動作し、レーザートーチ90の先端部をワークに向けてレーザー加工(溶接、溶断又は穿孔)を行う。
【0050】
このときロボットシステム100は、1対のベース駆動用サーボモータ81,81によるベース駆動用ボール螺子41,41の回転駆動によって1対のベース駆動用ボールナット42,42を直動させて、レーザートーチ90を移動する。具体的には、1対のベース駆動用ボールナット42,42を同一方向に同一速度で移動させて、直動ベース20及び旋回ベース30を第1の水平方向H1にスライドさせることで、レーザートーチ90が第1の水平方向H1に移動する。また、1対のベース駆動用ボールナット42,42を異なる方向に同一速度で直動して、旋回ベース30を直動ベース20に対してツイストさせることで、レーザートーチ90がベースツイスト軸J1回りに移動する。これらにより、レーザートーチ90の先端部を、2次元水平面内で移動することができる。なお、1対のベース駆動用ボールナット42,42を異なる方向又は同一方向に異なる速度で直動すれば、レーザートーチ90を第1の水平方向H1にスライドさせながら、ベースツイスト軸J1回りに旋回させることができる。
【0051】
また、ロボットシステム100は、アーム直動用サーボモータ82によるアーム直動用ボール螺子53の回転駆動によって、レーザートーチ90を鉛直方向に移動することができる。そして、第2アーム駆動用サーボモータ83による第2アーム61の回転駆動と、第3アーム駆動用サーボモータ84による第3アーム62の回転駆動とによってレーザートーチ90を任意の姿勢に変更することができる。これらにより、図示しないワークに対して、レーザートーチ90の先端部を、所望の位置で所望の方向から突き合わせて、レーザー加工を行うことができる。
【0052】
さて、上記したように本実施形態のロボットシステム100では、ロボット10の駆動源である各種サーボモータ81〜84のティーチングポイントと、ケーブル取回用サーボモータ78のティーチングポイントとが対応付けて記憶され、ティーチングプレイバックによりロボット10とケーブル保持スライダ75が駆動される。即ち、レーザートーチ90の位置に応じてケーブル保持スライダ75の位置が上下に移動する。具体的には、例えば、レーザートーチ90が、
図3に示した原点位置から遠ざかるように移動する場合には、その移動に伴ってケーブル保持スライダ75が降下して、ケーブル93をワーク加工領域に向けて送り出す。一方、レーザートーチ90が原点位置に向かって接近するように移動する場合には、その移動に伴ってケーブル保持スライダ75が上昇して、ケーブル93をワーク加工領域から引き上げる。これにより、レーザートーチ90の移動中や移動先において、ケーブル93の過不足が生じないように、適度な遊び(弛み)を維持した状態でケーブル93を取り回すことができる。これにより、ワーク加工領域に垂れ下がったケーブル93によって、レーザートーチ90の移動が妨げられることを防止することができる。また、レーザートーチ90の移動に伴う過度な屈曲や引っ張りによってケーブル93が破損することを防止することができる。
【0053】
また、直動ベース20に備えたケーブル挿通孔49は、1対の第1ローラー45,45と、1対の第2ローラー46,46とに囲まれており、ケーブル93がケーブル挿通孔49内を移動する際に、ケーブル93と接触したローラーが従動回転するから、ケーブル挿通孔49との擦れによるケーブル93の摩耗を抑えることができる。
【0054】
また、ケーブル93は、ケーブル保持スライダ75とケーブル端部支持部38との間で、ケーブルキャリア79によりU字状の湾曲形状に維持されるから、ケーブル93の過度な屈曲を防止することができると共に、ケーブル保持スライダ75をスムーズに上下動させることができる。
【0055】
さらに、直動ベース20に対する旋回ベース30の回転は、正逆それぞれ30度以内に制限されているので、直動ベース20に対して旋回ベース30が旋回して、それら直動ベース20と旋回ベース30との間でケーブル93が捻れたとしても、過剰な負荷にならないようにすることができる。
【0056】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0057】
(1)前記実施形態のロボットシステム100は、レーザー光によってワークの加工を行う「レーザー加工機」であったが、レーザー光を出射する測定子をロボット10の先端部に備え、レーザー光によってワークの形状を測定する「三次元測定器」でもよい。また、ガストーチをロボット10の先端部に備え、そのガストーチから延びたガスホースをケーブルとして備えた「ガス溶接・溶断機」でもよい。或いは、塗装ガンをロボット10の先端部に備え、その塗装ガンから延びた塗料ホースをケーブルとして備えた「塗装機」でもよい。
【0058】
(2)前記実施形態のロボットシステム100は、直動ベース20と旋回ベース30とを備え、直動ベース20に対して旋回ベース30を回転可能としたツイスト機構を有していたが、ツイスト機構を排除した構成としてもよい。
【0059】
(3)前記実施形態では、ケーブル93の中間部をケーブルキャリア79に通してU字状の湾曲形状を維持していたが、U字状の湾曲形状を自ら維持することが可能なケーブルの場合には、ケーブルキャリア79を使用しなくてもよい。
【0060】
(4)前記実施形態では、第1アーム60の先端部とツール(レーザートーチ90)との間に、2つの駆動軸が備えられていたが、これら2つの駆動軸を排除して、第1アーム60の先端部にツール(レーザートーチ90)を固定してもよい。