特許第6182382号(P6182382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182382
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】物品前出し装置
(51)【国際特許分類】
   A47F 1/12 20060101AFI20170807BHJP
   A47F 7/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A47F1/12
   A47F7/00 M
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-156508(P2013-156508)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-24083(P2015-24083A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】591228683
【氏名又は名称】サンコースプリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 肇
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05964373(US,A)
【文献】 国際公開第2012/042721(WO,A1)
【文献】 特開平07−241227(JP,A)
【文献】 特表2013−526296(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/127847(WO,A1)
【文献】 特開2007−044196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 1/12
A47F 3/00−3/026
A47F 3/06−3/14
A47F 7/00
A47F 11/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール部が設けられた第1の底面と、前記第1の底面の下に設けられた第2の底面とを有する箱状の枠体と、
前記レール部の前側の端である前端と、前記レール部の前記前端と反対側の端である後端との間を前記レール部に沿って摺動可能に設けられ、前記第1の底面上に載置された物品を前記枠体の前記前端に近い面である正面側に押圧する押し板と、
細長い金属の板を渦巻状に巻回した巻回部を有するばねと、
前記巻回部を収納するばね収納部であって、前記枠体の前記第1の底面より上の空間に設けられ、前記ばねの外側の端である外端を前記第1の底面と前記第2の底面との間に引き出すための開口部が設けられたばね収納部と、
前記第1の底面の下側かつ前記枠体の前記正面に隣接した位置に設けられた滑車と、
一端が前記押し板に設けられ、他端が前記ばねの前記外端に設けられた紐であって、前記滑車の索輪外周に当接する紐と、
を備えたことを特徴とする物品前出し装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物品前出し装置であって、
前記ばね収納部は、前記押し板が前記レール部の前記後端の近傍に位置するときに、前記押し板と前記枠体の前記正面と対向する面である背面との間に形成される空間に設けられる
ことを特徴とする物品前出し装置。
【請求項3】
請求項2に記載の物品前出し装置であって、
前記枠体の少なくとも前記背面の前記ばね収納部が設けられた範囲は、透明な部材で形成されており、
前記物品前出し装置は、前記細長い金属の板の長手方向に直交する方向である周方向を覆うように、かつ前記押し板が前記レール部の任意の位置に位置するときに前記枠体の前記背面から視認できるように、前記ばねの前記開口部から巻き出される巻き出し部の一部を被覆する可撓性を有する樹脂製の被覆部を備える
ことを特徴とする物品前出し装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の物品前出し装置であって、
前記枠体の少なくとも前記正面は、透明な部材で形成されており、
前記紐は、前記押し板が前記レール部の任意の位置まで移動したときに前記紐の色が変わるのを前記正面から視認できるように、前記押し板側と前記ばねの前記外端側とで異なる色で形成されている
ことを特徴とする物品前出し装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の物品前出し装置であって、
前記ばね収納部の前記巻回部と当接する面は、前記金属に対して摺動特性に優れた樹脂により形成される
ことを特徴とする物品前出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品前出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、商品の押し出し方向に沿って形成されるレール部と、レール部に摺動可能に係合する押し板と、巻きぐせが付けられた渦巻状の巻回部を有する板ばねであって押し板をレール部に沿って商品の押し出し方向へ付勢するばねとを有し、ばねの巻回部が押し板の商品と対面する側とは反対側の部分に配置されると共に、巻回部から引き出されたばねの一端部がレール部の商品の押し出し方向の端部又はその近傍部に固定されており、ばねのレール部に対して上方に向かって働く圧力を利用し、押し板を上方へ押し上げる手段を具備する商品前出し陳列装置が開示されている。これにより、陳列された商品が後方から前方へ押し出され、商品を取り出す毎に後方から残りの商品が押し出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−135875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の商品前出し陳列装置は、ばねを構成する薄い金属板が外部から容易に視認することができる。このように、薄い金属板が視認できる場合には、使用者が外観上嫌悪感を抱いたり、不安に思ったりする可能性がある。また、特許文献1に記載の商品前出し陳列装置においては、ばねを構成する薄い金属板を使用者がさわってしまう可能性もある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ばねを構成する薄い金属板が外部から容易に視認及び接触できないようにすることができる物品前出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る物品前出し装置は、例えば、レール部が設けられた第1の底面と、前記第1の底面の下に設けられた第2の底面とを有する箱状の枠体と、前記レール部の前側の端である前端と、前記レール部の前記前端と反対側の端である後端との間を前記レール部に沿って摺動可能に設けられ、前記第1の底面上に載置された物品を前記枠体の前記前端に近い面である正面側に押圧する押し板と、細長い金属の板を渦巻状に巻回した巻回部を有するばねと、前記巻回部を収納するばね収納部であって、前記枠体の前記第1の底面より上の空間に設けられ、前記ばねの外側の端である外端を前記第1の底面と前記第2の底面との間に引き出すための開口部が設けられたばね収納部と、前記第1の底面の下側かつ前記枠体の前記正面に隣接した位置に設けられた滑車と、一端が前記押し板に設けられ、他端が前記ばねの前記外端に設けられた紐であって、前記滑車の索輪外周に当接する紐と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る物品前出し装置によれば、レール部が設けられた第1の底面と、前記第1の底面の下に設けられた第2の底面とを有する箱状の枠体の、第1の底面より上の空間には、渦巻状に巻回した巻回部を有するばねの巻回部を収納するばね収納部であって、ばね外側の端である外端を前記第1の底面と前記第2の底面との間に引き出すための開口部を有するばね収納部が設けられる。第1の底面の下側かつ枠体の正面に隣接した位置には滑車が設けられる。滑車の索輪外周には、レール部に沿って摺動可能に設けられた押し板に設けられ、他端がばねの外端に設けられた紐が当接する。これにより、ばねを構成する薄い金属板が外部から容易に視認及び接触できないようにすることができる。
【0008】
ここで、前記第1の底面には、前記ばね収納部は、前記押し板が前記レール部の前記後端の近傍に位置するときに、前記押し板と前記枠体の前記正面と対向する面である背面との間に形成される空間に設けられてもよい。これにより、限られた空間を有効に活用することができる。
【0009】
ここで、前記枠体の少なくとも前記背面の前記ばね収納部が設けられた範囲は、透明な部材で形成されており、前記物品前出し装置は、前記細長い金属の板の長手方向に直交する方向である周方向を覆うように、かつ前記押し板が前記レール部の任意の位置に位置するときに前記枠体の前記背面から視認できるように、前記ばねの前記開口部から巻き出される巻き出し部の一部を被覆する可撓性を有する樹脂製の被覆部を備えてもよい。これにより、物品前出し装置の背面側から物品の残量を確認することができる。
【0010】
ここで、前記枠体の少なくとも前記正面は、透明な部材で形成されており、前記紐は、前記押し板が前記レール部の任意の位置まで移動したときに前記紐の色が変わるのを前記正面から視認できるように、前記押し板側と前記ばねの前記外端側とで異なる色で形成されていてもよい。これにより、物品前出し装置の正面側から物品の残量を確認することができる。
【0011】
ここで、前記ばね収納部の前記巻回部と当接する面は、前記金属に対して摺動特性に優れた樹脂により形成されてもよい。これにより、ばねとケースとの摩擦抵抗を軽減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ばねを構成する薄い金属板が外部から容易に視認及び接触できないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一例である物品前出し装置1を示す斜視図である。
図2】(A)は物品前出し装置1の右側面図(右側面は図示せず)であり、(B)は物品前出し装置1の正面図であり、(C)は図1のA−A断面図である。
図3】押し板を説明する図であり、(A)は斜視図であり、(B)は側面図であり、(C)は正面要部拡大図である。
図4】物品前出し装置1の使用時の状態を説明する図であって、押し板がレール部の後端に位置する場合を示す図である。
図5】物品前出し装置1の使用時の状態を説明する図であって、押し板がレール部の途中に位置する場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一例である物品前出し装置1の詳細を示す斜視図である。図2(A)は、物品前出し装置1の右側面図(右側面は図示せず)であり、図2(B)は物品前出し装置1の正面図であり、図2(C)は図1のA−A断面図である。物品前出し装置1は、主として、ケース10と、押し板20と、ばね30と、紐40とを有する。
【0016】
ケース10には、たばこ等の任意の物品100が収納される。ケース10は、例えば透明の樹脂により形成された底面が略矩形の箱状の部材であり、物品100の形状及び収納量に応じて任意の大きさに形成される。
【0017】
ケース10は、上面が開口されると共に、物品100が載置される底面である第1の底面10Aにレール部11、係止段差12、着脱開口部14等が形成されている。また、第1の底面10Aの下には、第2の底面10Bが設けられている。
【0018】
レール部11は、ケース10の第1の底面10Aの略中央部に、ケース10の長手方向、即ち物品100の配列方向に沿って形成された長孔である。係止段差12は、レール部11の後端の近傍に形成された段差であり、物品100の収納時等に押し板20を係止させておくための部分である。着脱開口部14は、押し板20をレール部11に対し着脱させる際の入口又は出口となる部分である。なお、係止段差12及び着脱開口部14は、必須の構成ではない。
【0019】
ケース10には、ばね30を収納するばね収納部15が一体形成される。ばね収納部15は、図1及び図2(A)に示すように、ケース10の背面及び側面の壁に沿って、ケース10の内側(第1の底面10Aの上側の領域)に突出するように形成される。また、ばね収納部15は、押し板20が係止段差12に係止された状態(図4参照)において、押し板20と干渉しない大きさで形成される。なお、押し板20が係止段差12に係止された状態とは、レール部11の後端の近傍に押し板20が位置する状態である。
【0020】
さらに、図2(A)に示すように、ばね収納部15の底面には開口部が形成され、ばね30の外側の端(外端)を第1の底面10Aと第2の底面10Bとの間に引き出せるようになっている。
【0021】
ばね収納部15から引き出されたばね30は、図2(A)に示すように、第1の底面10Aと第2の底面10Bとの間を摺動する。したがって、第1の底面10Aの下側のばね30と当接する範囲(図2(A)の面A)と第2の底面の上側のばね30と当接する範囲(図2(A)の面B)は、ばね30を構成する金属に対して摺動特性に優れた樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)で形成することが望ましい。
【0022】
ばね30の外端と第1の底面10Aとが接触することが、摺動時に発生する抵抗を高くすると考えられる。したがって、ばね30の外端の第1の底面10Aと接触する部分に、金属に対して摺動特性に優れた樹脂で形成された部材や、摩擦抵抗を減らす形状(例えば、球形)で形成された部材を設けるようにしてもよい。
【0023】
また、ばね30の展張、巻き取りに伴い、ばね収納部15の正面の壁に沿ってばね30が摺動するため、ばね収納部15のばね30が当接する面(図2(A)の面C)を、ばね30を構成する金属に対して摺動特性に優れた樹脂で形成することが望ましい。これにより、ばね30とケース10との摩擦抵抗を軽減することができる。ばね30を構成する金属に対して摺動特性に優れた樹脂で形成する方法としては、摺動特性に優れた樹脂で形成されたシート等を貼付する方法や、摺動特性に優れた樹脂を塗布する方法等が考えられる。
【0024】
本実施の形態では、ケース10は透明な樹脂で形成されているが、ケース10全体を透明な樹脂で形成する必要はない。少なくとも、ケース10正面の壁と、ケース10背面の壁のばね収納部15が設けられた範囲を透明な樹脂で形成すればよいただし、ケース10を一体成型するためには、ケース10全体を透明な樹脂で形成することが望ましい。
【0025】
また、第2の底面10Bは、ケース10全体を覆う必要はない。少なくとも、ばね30が摺動する範囲(図4において巻き出し部32(後に詳述)が設けられた領域)のみ第2の底面10Bを設けるようにしてもよい。
【0026】
押し板20は、例えば樹脂により成形され、レール部11に沿って摺動可能に設けられる。押し板20は、最後部に位置する物品100と当接し、ばね30の力により物品100をケース10正面側(図1矢印参照)に押圧する。
【0027】
図3は、押し板20を説明する図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図、(C)は正面要部拡大図である。押し板20は、主として、板部21と、凸状部22と、レール摺接部23と、補強部24と、指掛け部25と、下片部26と、紐取付部27とを有する。
【0028】
板部21の前面側(図3(B)左側)には、短手方向に沿って凸状部22が形成されている。物品100の陳列時には、凸状部22が物品100と当接する。
【0029】
レール摺接部23は、ケース10に形成されたレール部11と係合する凹形状の部分である。レール摺接部23は、図3(C)に示すように、円弧を描くような形状となっている。これにより、板部21と平行に切断した断面において、レール部11とレール摺接部23とが点接触する。したがって、摩擦抵抗を軽減することができる。
【0030】
補強部24は、板部21の背面側に設けられた2枚の略扇型の部材である。指掛け部25は、補強部24の外周に立設されたリブであり、利用者が押し板20を移動させる際の操作性を向上させるためのものである。
【0031】
2枚の補強部24の間には、板状の紐取付部27が設けられる。紐取付部27には、紐40の一端が設けられる。なお、本実施の形態では、図(B)に示すように、紐取付部27の上端に紐40の端が取り付けられているが、紐40の取り付け方及び取付位置はこれに限定されない。例えば、紐40は、紐取付部27に設けられた孔に結んでもよいし、紐取付部27に接着してもよいし、カシメ金具等を用いて紐取付部27にカシメてもよい。また、紐40は、紐取付部27の任意の位置に取り付ければよい。
【0032】
図1及び図2の説明に戻る。ばね30は、細長い金属の板を、巻きぐせを付けて渦巻状に巻回したばねである。ばね30は、渦巻状に巻回された巻回部31と、巻回部31から巻きだされた巻き出し部32とを有する。巻き出し部32の先端(外端)近傍には孔33が形成される。
【0033】
巻回部31は、ばね収納部15の内部に設けられる。ばね収納部15の底面の開口から巻き出し部32を引き出し、孔33に紐40の他端を設けることで、押し板20には、前方(図1矢印参照)へ移動する方向の力が付勢される。
【0034】
巻き出し部32の一部には、被覆部34(図1では図示せず)が設けられる。図2(C)に示すように、被覆部34は、ばね30の細長い金属の板の周方向を覆うように設けられる。
【0035】
被覆部34は、筒状の樹脂製の部材、例えば熱収縮チューブである。被覆部34は、周方向に変形可能である。熱収縮チューブとしては、電子線架橋軟質ポリオレフィン樹脂、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂等の様々な形態のものを用いることができる。熱収縮チューブはすでに公知であるため、説明を省略する。被覆部34は、ばね30とは異なる色、特に赤等の目立つ色を用いることが望ましい。
【0036】
なお、本実施の形態では、被覆部34として樹脂製の熱収縮チューブを用いたが、被覆部の形態はこれに限定されない。例えば、周方向に変形可能な筒状の樹脂製の部材として、プラスチックの紐を網組することにより伸縮性を持たせた伸縮チューブ(メッシュチューブ)を用いて、ばね30を構成する細長い金属の板を被覆してもよい。また、ばね30を構成する細長い金属の板に熱収縮する樹脂製のテープを巻回することにより、細長い金属の板を被覆してもよい。さらに、乾燥後にゴム状となる樹脂系の塗料(例えば、SBR樹脂を含有する塗料)を用いて、ばね30を構成する細長い金属の板を被覆してもよい。つまり、金属の板の変形に合わせて変形可能な可撓性を有する樹脂であれば、どのようなものを用いてバネを被覆してもよい。金属の板の変形に合わせて変形可能な可撓性を有する樹脂を用いることで、ばね30の展張、巻き取りによって被覆部34がばね30から剥がれることを防止することができる。
【0037】
紐40は、ポリエステル等の樹脂、ゴム、糸、紙、木等で形成された紐状の部材である。紐40は、一端が孔33に連結され、他端が押し板20の紐取付部27に連結される。なお、紐40の断面形状は、略円形でもよいし、略矩形(平織り)でもよい。紐40は、任意の色(例えば、黒色、橙色、青色等)に着色された着色部40Aと、着色されていない(例えば、白色)の非着色部40Bとを有する(後に詳述)。紐40は、任意の色に着色された紐と、着色されていない紐とを編み込んで接ぐ(さつま加工など)ことにより形成してもよいし、1本の白い紐の一部を染色等して形成してもよい。
【0038】
滑車41は、図2(B)に示すように、ケース10の第1の底面10Aから下向きに突出するように、ケース10の第1の底面10Aに軸支される。滑車41は、中央に1本の軸を持つ回転自在な索輪を有する。紐40は、索輪外周に当接する。
【0039】
滑車41は、ケース10正面に隣接した位置に設けられる。これにより、索輪外周に当接する紐40がケース10正面近傍を通過するため、紐40をケース10正面側から視認させることができる。
【0040】
滑車41は、ケース10の短手方向の略中央近傍に設けられた第1の滑車41Aと、ケース10の短手方向に沿って第1の滑車41Aと平行に、かつばね収納部15とケース10の長手方向に沿って略平行となる位置に設けられた第2の滑車41Bと、を有する。これにより、紐40が略U字形状(略コの字形状)に曲げられる。
【0041】
このように構成された物品前出し装置1の使い方について説明する。紐40が紐取付部27に取り付けられた押し板20を、レール部11端部に形成された着脱開口部14(図1参照)に嵌め込む。そして、板部21がレール部11の長手方向と直交するように押し板20を回転させた後でレール部11内にスライドさせることで、押し板20をレール部11に係合させる。
【0042】
ばね30の巻回部31をばね収納部15内に載置し、ばね収納部15の底面の開口から巻き出し部32を引き出す。紐40を滑車41の索輪外周に当接させ、紐40の紐取付部27に取り付けられていない側の端を孔33に取り付ける。そして、押し板20をケース10の後端近傍部まで移動させ、係止段差12に係止させ、ケース10内に物品100を並べた後、押し板20を係止段差12から外す。これにより、物品100は前方へ加圧された状態で陳列される。なお、押し板20を係止段差12から外した時に、ばね収納部15の内部でばね30の展張、巻き取りが行われるため、ばね30がばね収納部15から飛び出すことはない。
【0043】
なお、本実施の形態は、使用者が物品100の残数を容易に把握することができる点に特徴がある。以下、残数表示について説明する。
【0044】
図4は、押し板20をケース10の後端近傍部まで移動させ、係止段差12に係止された状態(押し板20がレールの後端に位置する状態)、すなわち物品100の残数が多い状態を示す図である。図5は、押し板20がケース10の中央近傍の任意の位置にある状態、すなわち物品100の残数が少なくなり、残数が少ないことを使用者が確認できる状態を示す図である。図4、5において、ばね30のハッチングが掛けられた部分は、被覆部34により被覆されている部分である。
【0045】
図4に示す状態では、ばね30の巻き出し部32の露出量が多く、後方、すなわちケース10の背面側(後部側)から被覆部34を視認することはできない。また、紐40の着色部40Aは図示しない物品100により覆われ、視認することはできない。
【0046】
それに対し、図5に示す状態では、図4に示す状態に比べて、ばね30が巻き取られており、巻き出し部32の露出量が少ない。その結果、後方、すなわちケース10の後部側又は上方から、使用者が被覆部34を視認することができる。また、図5に示す状態では、ばね30が巻き取られるのに伴い、紐40が移動し、ケース10の正面側から紐40の着色部40Aを視認することができる。これにより、押し板20がレール部11の後端から任意の位置(図5に示す位置に限定されない)まで移動したこと、すなわち物品前出し装置1に入っている物品100の数が一定数以下になったことを使用者に認識させることができる(残数量の見える化)。
【0047】
本実施の形態によれば、ばねをケース内に入れるため、物品前出し装置の使用者の手指にばねが触れることを無くすことができる。また、ばねの寿命により破断等が発生した場合においても、物品前出し装置の使用者がばねの破断面に触れてしまう等の危険性が無くすことができる。さらに、紐が破断した場合においても、ばね収納部内にばねが巻き込まれるため、安全性を確保することができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、ケースによりばねが視覚的に遮蔽されているため、物品前出し装置を視認した使用者が、刃物等が露出していると間違えて認識することを防ぎ、安心感を演出することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、周方向に変形可能な筒状の樹脂製の部材を被覆部として用いることで、容易にばねを被覆することができる。また、周方向に変形可能な筒状の樹脂製の部材を被覆部として用いることで、ばねの展張、巻き取り動作によっても被覆部がはがれにくく、残数表示を行うための樹脂を金属の上に安定して密着させることができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、紐がケース正面側から視認でき、かつ物品前出し装置に入っている物品の数が一定数以下になった時に紐の色が変わるように構成されているため、使用者が物品の残数を容易に把握することができる。また、ばね収納部をケース背面側から視認できるようにし、物品前出し装置に入っている物品の数が一定数以下になった時に被覆部がばね収納部内の巻回部に位置するように構成されているため、使用者が物品の残数を容易に把握することができる。このように、ケースの正面及び背面の両方から残数を確認できるようにするため、物品前出し装置の使用位置(例えば、レジカウンター背面に載置するか、レジカウンター上に載置するか等)によらず、残数確認を容易に行うことができる。
【0051】
例えば、コンビニエンスストア等において、たばこ等の販売に物品前出し陳列装置を使う場合には、物品前出し陳列装置が上下左右に密集された形態で並べられるため、販売品の残数が物品前出し陳列装置の前後から見えにくいという問題があった。それに対し、本実施の形態によれば、物品前出し装置の正面及び背面のどちらからも残量確認を行うことができる。なお、紐の色が変わるように構成すること、及び被覆部がばね収納部内の巻回部に位置するように構成することは、必ずしも両方行う必要はない。物品前出し装置の使用状況に応じてどちらか一方のみを行うようにしてもよい。
【0052】
また、本実施の形態によれば、押し板がレール部の後端の近傍に位置するときに、押し板とばね収納部とが干渉しない大きさで形成されるため、デッドスペースを少なくすることができる。したがって、ばね収納部を形成しない従来品と同様に、ケース寸法を限界まで使った搭載個数を確保することができる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、ばね収納部を第1の底面より上の空間に設けるため、底面から下の高さ(第1の底面と第2の底面との間の高さ)を低くすることができる。そのため、物品前出し装置を上下左右方向に多数配置するときに高さを節約でき、ひいては、同じ高さを有するスペース内への物品前出し装置の収容効率を稼ぐことができる。
【0054】
なお、第1の底面と第2の底面との間にばね収納部を設け、ばね収納部内にばねを立てて(本実施の形態と同様の姿勢)配置する場合には、本実施の形態と比べてばねの巻回部の直径を小さくする必要がある。ばねの巻回部の直径を小さくするためには、ばねを構成する金属の変形量を大きくする必要があり、これにより疲労破壊が速くなる可能性がある。それに対し、本実施の形態では、ばね収納部を第1の底面の上側の空間内に設けるため、ばねの巻回部の直径を大きくすることができ、したがって疲労破壊を起こりにくくすることができる。
【0055】
また、第1の底面と第2の底面との間にばねを横向きに寝かせて配置する方法も考えられる。この場合に第1の底面と第2の底面との高さを低くするためには、ばねの巾を狭くする必要があるが、ばねの巾を狭くするとバネ性能が低下してしまうという問題がある。したがって、本実施の形態のように、ばね収納部を第1の底面より上に設けることが望ましい。ただし、ばねの性能、物品前出し装置の寸法等の条件によっては、ばねを横向きに寝かせて配置してもよいし、ばねを斜め方向に配置してもよい。
【0056】
なお、本実施の形態では、図5に示す状態においてケース10の正面側から紐40の着色部40Aを視認できるように、押し板20に設けられた端から一定距離だけ着色部40Aを有する紐40を使用したが、紐の着色の形態はこれに限られない。例えば、押し板がレール部11の任意の位置に位置するときに、ケース10の正面側から視認できる範囲、例えば滑車41の索輪外周に当接する位置近傍の領域の色が、その他の領域の色と異なるように紐が形成されていればよい。
【0057】
また、本実施の形態では、図5に示す状態においてケース10の後部側から被覆部34が視認できるように、ばね30に被覆部34を設けたが、ばね30に被覆部34を設ける範囲はこれに限られない。例えば、ばね30の、押し板がレール部11の任意の位置に位置するときにケース10の後部側から視認できる範囲のみ被覆部34を設けるようにしてもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、ケース10の背面及び側面の壁に沿って、ケース10の内側(第1の底面10Aの上側の領域)に突出するようにばね収納部15を形成したが、ばね収納部15を形成する位置はこれに限らず、ケース10の第1の底面10Aの上側の領域であれば任意の位置に形成することができる。ただし、デッドスペースを少なくするためには、ケース10の背面及び側面の壁に沿ってばね収納部15を形成することが望ましい。
【0059】
また、本実施の形態では、滑車41をケース10正面に隣接した位置に2つ(滑車41A、41B)設けたが、滑車41を設ける位置及び滑車41の数はこれに限られない。例えば、ばね収納部をケース10の正面及び側面の壁に沿って設け、ケース10の短手方向に沿って巻き出し部32を巻き出す場合には、滑車41は1つ(滑車41A)だけでよい。
【0060】
また、本実施の形態では、紐40の一端をばね30に連結し、他端を押し板20に連結したが、紐40が連結する部品はこれに限られない。例えば、紐を2本用いて、1本の紐でばね30と任意の部品とを連結し、他の紐で任意の部品と押し板20とを連結するようにしてもよい。また、紐を2本用いて、1本の紐でばね30と押し板20とを連結し、他の紐で押し板20と任意の部品とを連結してもよい。任意の部品として、例えば、ばねばかり等の引っ張り力によって目盛りの表示位置が変わる部品を用いることで、任意の部品を残数表示として用いることもできる。また、任意の部品として、複数の部品を組み合わせて動きを発生させる機構部品、電子部品、電気部品等を採用することもできる。
【0061】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0062】
例えば、上記実施形態においては、ケース10にレール部11が一体に形成された構成を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばケースとレールとが別体の場合であっても、適応されるものである。また、レール部11がケース10の第1の底面に形成された構成を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、レール部11が、ケース10の傾斜された底面等に形成された場合であっても、適応されるものである。
【符号の説明】
【0063】
1:物品前出し装置、10:ケース、10A:第1の底面、10B:第2の底面、11:レール部、12:係止段差、14:着脱開口部、15:ばね収納部、20:押し板、21:板部、22:凸状部、23:レール摺接部、24:補強部、25:指掛け部、26:下片部、27:紐取付部、30:ばね、31:巻回部、32:巻き出し部、33:孔、34:被覆部、40:紐、40A:着色部、40B:非着色部、41:滑車、41A:第1の滑車、41B:第2の滑車、100:物品
図1
図2
図3
図4
図5