特許第6182388号(P6182388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182388
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】表示灯
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/00 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   G09F13/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-164184(P2013-164184)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-34839(P2015-34839A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達彦
【審査官】 ▲吉▼川 康史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−351403(JP,A)
【文献】 特開2006−100124(JP,A)
【文献】 実公昭50−008560(JP,Y1)
【文献】 登録実用新案第3096872(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/00−13/46
F21K 9/00− 9/90
F21S 2/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を内蔵した有底枠体の本体と、前記基板上にリング状に設置された3個以上のLEDと、前記本体に着脱可能に装着された透光性のグローブとを備え、
前記グローブは、凸形のアール曲面からなり、内面側に中心側から径方向外側に向けて多重のリング状に形成されると共に底部がグローブ表面側に円弧状に凹むように形成されたリング状円弧溝を有し、該リング状円弧溝は中心側から径方向外側に向かって溝幅が順次幅広になるように設定され、かつ前記リング状円弧溝の境界を形成する溝壁の中心線が前記本体に対して内側方向に向くように設定されていることを特徴とする表示灯。
【請求項2】
前記LEDの個数を奇数個にしたことを特徴とする請求項1記載の表示灯。
【請求項3】
前記本体は透光性の部材からなり、かつ前記本体の枠部の外周面に第1ねじ部が形成され、前記グローブの縁部内周面に前記第1ねじ部に螺合する第2ねじ部が形成され、第2ねじ部を前記第1ねじ部に螺合することで前記グローブを前記本体に取り付けるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信機が設置される消火栓や総合盤等の機器収納箱に設置されて、赤色に点灯することで、発信機の存在を表示する表示灯に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載された防災機器用表示灯は、「前面に開口し内部に光源を内蔵した本体と、前記本体の開口部に着脱自在に装着された透光性のグローブとから構成される防災機器用表示灯において、前記グローブの本体から露出するグローブ面正面を単一のアール曲面とし、更にグローブ内面に外向きに開いた楔形断面をもつリング溝を中心から外側に向けて多重に形成したことを特徴とする」ものである(特許文献1の請求項1参照)。
【0003】
特許文献1の防災機器用表示灯は、内部の光源としてLEDランプを用いており、グローブの内面に上記のようなリング溝を多重に形成することで、LEDランプを点灯したときにグローブ内部にランプ虚像を見ることができ、LEDランプからの光でグローブ全体が明るくなるとしている。
【0004】
また、特許文献1の防災機器用表示灯においては、グローブ基端の周端部を、本体前部に形成した鍔部の内周側に接するようにねじ込むことにより、グローブを本体に着脱可能に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4535360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の防災機器用表示灯は、LEDランプの光でグローブ全体を明るくしようとしている。しかしながら、特許文献1のようなリング溝を形成してランプ虚像が見えるようにしても、全体を明るくするには相当程度の光の強度が必要であり、ランプ内に多数のLEDを設置する必要がある。
また、グローブの周端部を本体の縁部にねじ込む構造であるため、表示灯を側方からみるとグローブの基部側には透光性のない本体部が存在し、側面視におけるグローブの占める面積が小さく、視認性に劣るという問題もある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、LEDの数が少なくても視認性に優れる表示灯を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
表示灯の従来の考え方は、内部の光源を点灯したときにグローブ全体を明るく光らせるというものである。
しかしながら、そのような考えでは、特許文献1に記載のように多重リング溝の形状等を工夫してランプ虚像が見えるようにしても、少ないLEDで視認性を確保するには限界があった。
そこで、発明者は、グローブ全体を同等の明るさで光らせるという考えから脱して、どの方向からでも確実に点灯を確認できるにはどのようにすべきかという表示灯が本来備えるべき機能に立ち返り検討を重ね、その結果、グローブの径方向に延びる光の線を形成すれば、少ないLEDで多方向からの視認が可能になるとの知見を得た。
本発明は係る知見に基づくものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
【0009】
(1)本発明に係る表示灯は、基板を内蔵した有底枠体の本体と、前記基板上にリング状に設置された3個以上のLEDと、前記本体に着脱可能に装着された透光性のグローブとを備え、
前記グローブは、凸形のアール曲面からなり、内面側に中心側から径方向外側に向けて多重のリング状に形成されると共に底部がグローブ表面側に円弧状に凹むように形成されたリング状円弧溝を有し、該リング状円弧溝は中心側から径方向外側に向かって溝幅が順次幅広になるように設定され、かつ前記リング状円弧溝の境界を形成する溝壁の中心線が前記本体に対して内側方向に向くように設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記LEDの個数を奇数個にしたことを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記本体は透光性の部材からなり、かつ前記本体の枠部の外周面に第1ねじ部が形成され、前記グローブの縁部内周面に前記第1ねじ部に螺合する第2ねじ部が形成され、第2ねじ部を前記第1ねじ部に螺合することで前記グローブを前記本体に取り付けるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、基板を内蔵した有底枠体の本体と、前記基板上にリング状に設置された3個以上のLEDと、前記本体に着脱可能に装着された透光性のグローブとを備え、前記グローブは、凸形のアール曲面からなり、内面側に中心側から径方向外側に向けて多重のリング状に形成されると共に底部が円弧状に形成されたリング状円弧溝を有し、該リング状円弧溝は中心側から径方向外側に向かって溝幅が順次幅広になるように設定され、かつ前記リング状円弧溝の境界を形成する溝壁の中心線が前記本体に対して内側方向に向くように設定したことにより、LEDを点灯すると、グローブの中心から径方向に向かう線状の光がくっきりと見え、その周囲が明るくなる。そして、3個以上のLEDを設けているので、これらのLEDを等間隔で環状に配置すれば、隣接する光の線の間隔は120度以内となり、表示灯をどの方向から見ても少なくとも1本の光の線を視認することができる。このように、本発明によれば、LEDの個数が少なくても視認性に優れるという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係る表示灯の斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る表示灯の分解斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る表示灯の本体の構造の説明図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る表示灯の断面図であり、グローブの断面形状の説明図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る表示灯のグローブの内面形状の説明図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る表示灯の使用例の説明図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る表示灯の効果を説明するための比較例の説明図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る表示灯の効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態に係る表示灯1は、図1に示す通り、基板3(図2参照)を内蔵した有底枠体の本体5と、基板3上にリング状に設置された7個のLED7(図2参照)と、本体5に着脱可能に装着された透光性のグローブ9とを備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0015】
<本体>
本体5は、赤色の透光性の部材からなる。
本体5の枠部の外周面にグローブ9と螺合するための第1ねじ部5aが形成されている。
本体5の底部中央には、図3および図4に示す通り、本体5の後方に開口する円筒部10が形成されており、円筒部10の内部が基板3を収納する基板収納部11になっている。
【0016】
基板収納部11の底部中央には、ブロック状からなる端子台13が設けられている。端子台13の両側には矩形状に凹陥する端子取付部13aが形成されている。端子取付部13aには、端子金具15aと端子ネジ15bからなる端子15(図2および図4参照)が取り付けられる。端子台13に設けられる端子15に電線が接続され、該電線と後述する基板3とが電気的に接続される。
端子台13の両側には、基板3を支持する支持棒17が立設されている。支持棒17の先端には、図3中の点線の丸で囲んだ部分の拡大図に示す通り、基板3の位置決めとして機能する段部17aが形成されている。
【0017】
基板3は、図2および図3に示す通り、円形からなる。
基板3の中央には、本体5の端子台13が挿入される矩形状の開口部3aが設けられている。
開口部3aを挟む両側には、支持棒17の先端が挿入される支持棒挿入孔3bが設けられている。支持棒挿入孔3bの径は、支持棒17の先端部の径より大きく、段部17aの径よりも小さく設定されており、支持棒17における段部17aよりも先端側のみが挿入可能になっている。これによって、支持棒17の軸方向における基板3の取り付け位置が規制される。なお、支持棒17に基板3が挿通された後、支持棒17の先端に熱をあてて、支持棒17と基板3とを熱溶着する。
LED7は、例えば赤色に発光するものであり、基板3上にリング状に7個設置されている(図2参照)。このようにLED7を奇数個にしていることは、本発明の特徴の一つである。詳細については後述する。
【0018】
<グローブ>
グローブ9は、赤色の透光性の部材からなる。なお、グローブ9と本体5は、共に有色の透光性を有するが、これらは同一の樹脂素材から形成しても良い。
グローブ9は、図4および図5に示すように、凸形のアール曲面からなり、内面側に中心側から径方向外側に向けて多重のリング状に形成されると共に底部が円弧状に形成されたリング状円弧溝19を有している。
リング状円弧溝19は中心側から径方向外側に向かって溝幅が順次幅広になるように設定されている。例えば、図5中の点線で囲んだ範囲の拡大図に示すように、外周側におけるある溝幅W1は内周側における溝幅W2よりも広くなっている。
【0019】
図4中の点線の丸で囲んだ部分の拡大図において、リング状円弧溝19の境界を形成する溝壁19aの中心線21を点線の直線で示している。図4に示されるように、各溝壁19aの中心線21は本体5に対して、グローブ9の表面側から背面側に向かって内側方向(本体5の中心から径方向に離れる方向を外側といい、逆に中心に近づく方向を内側という)に向くように設定されている。
また、溝壁19aの中心線21の傾きは、外周側のものほど大きくなっている。例えば、図4に示すように、外周側における溝壁19aの中心線21の傾きθ1は、内周側における溝壁19aの中心線21の傾きθ2よりも大きくなっている。
【0020】
グローブ9の縁部内周面には、本体5の第1ねじ部5aに螺合する第2ねじ部9aが形成されており(図5参照)、第2ねじ部9aを本体5の第1ねじ部5aに螺合することで、グローブ9が本体5に取り付けられる(図1および図4参照)。
【0021】
以上のように構成された本実施の形態に係る表示灯1の使用例を図6に示す。
図6は、表示灯1の点灯状態を、見る角度を変えて図示したものであり、図6(a)は正面から見た状態を、図6(b)は斜め側方から見た状態を、図6(c)はほぼ側方から見た状態をそれぞれ示している。
図6に示す通り、LED7を点灯することにより、該LED7の点光源が、中心から放射状に延びて強く光る線(光の線23)状に見えており、その周囲は明るくなっている。これは、グローブ9の内面の形状(リング状円弧溝19の溝幅、溝壁19aの中心線21の向き)の光学的な作用による。
そして、7個のLED7を等間隔で環状に配置しているので、隣接する光の線23の間隔は約51度となり、表示灯1をどの方向から見ても少なくとも1本の光の線23を視認することができる。このように、表示灯1は、LED7の数が少なくてもどの方向からでも視認可能になっている。
【0022】
光の線23の数は、LED7の数に対応して7本であり、奇数になっている。そのため、光の線23が左右対称になるように表示灯1が設置されていなくても特に違和感がなく、表示灯1を見た人に、表示灯1が傾いて設置されている等の印象を抱かせることがない。
この点について図7および図8に基づいて説明する。
図7および図8は、LED7の数が偶数の場合と奇数の場合における、表示灯1の点灯状態を模式的に図示したものであり、光の線23を直線で示している。
【0023】
図7(a)は、光の線23が上下左右対称となるように設置した状態であり、傾いて見える印象はない。図7(b)は、図7(a)の状態から表示灯1を少し回転させたものであるが、表示灯1が傾いて設置されている印象を受ける。
これは、光の線23が表示灯1の中心を通り、反対側の光の線23と繋がってグローブ9の直径方向に延びる1本の長い光の線となり、この長い光の線が表示灯1の向きを示すものとして認識されるからである。そのため、光の線23が傾いれば、これを見た人は表示灯1が傾いているとの印象を受けるのである。
【0024】
一方、光の線23の数が奇数の場合は以下のようになる。
図8(a)は、光の線23が左右対称となるように設置した状態であり、この状態から図7(b)の場合と同じ角度だけ表示灯1を回転させた状態を示したものが図8(b)である。
このように光の線23の数が奇数(3個以上)の場合、各光の線23は中心から放射状に広がって見えるだけで、いずれの線も表示灯1の向きを示すものとして認識されない。そのため、光の線23がどの様な向きに設置されていても違和感が生じない。
【0025】
以上のように、LED7の数を奇数にすることで、表示灯1の上下左右の向きをどの様に設置しても、表示灯1が傾いて設置されている等の印象を抱かせることがないため、表示灯1を設置する際に、向きを意識する必要がなく、施工性に優れるという効果を奏している。
【0026】
また、本体5およびグローブ9は全体が透光性の部材で構成されているため、第1ねじ部5aと第2ねじ部9aの螺合部からも透光可能になっている。そのため、図6(c)に示す通り、表示灯1の周面からも透光しており、表示灯1の側方からの視認性が向上している。
【0027】
なお、支持棒17の段部17aは、基板3の位置決めとして機能するものであるから、段部17aの位置を、光の見え方が最適になるように設定しておけば、組立が簡易である。
上記の説明では、支持棒17の段部17aは単段であったが、多段にしてもよい。この場合、基板3の支持棒挿入孔3bの大きさを変えることで、どの段部で基板位置が規定されるかを容易に変更することもできる。
例えば、基板3の種類毎にLED7の位置や強さが異なり、最適位置を変える必要がある場合においても、支持棒挿入孔3bの大きさを変えるだけで、基板3を簡単に設置でき、組立が簡易である。
【0028】
以上のように、本実施の形態においては、グローブ9はリング状円弧溝19を有し、リング状円弧溝19は中心側から径方向外側に向かって溝幅が順次幅広になるように設定され、かつリング状円弧溝19の境界を形成する溝壁19aの中心線21が本体5に対して内側方向に向くように設定したことにより、LED7を点灯すると、グローブ9の中心から径方向に向かう光の線23がくっきりと見え、その周囲が明るくなる。
そして、7個のLED7を等間隔で環状に配置しているので、隣接する光の線の間隔は約51度となり、表示灯1をどの方向から見ても少なくとも1本の光の線23を視認することができる。
このように、表示灯1によれば、LED7の個数が少なくても視認性に優れるという効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 表示灯
3 基板
3a 開口部
3b 支持棒挿入孔
5 本体
5a 第1ねじ部
7 LED
9 グローブ
9a 第2ねじ部
10 円筒部
11 基板収納部
13 端子台
13a 端子取付部
15 端子
15a 端子金具
15b 端子ネジ
17 支持棒
17a 段部
19 リング状円弧溝
19a 溝壁
21 中心線
23 光の線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8