【実施例1】
【0012】
図1は本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第1の実施の形態の要部の側断面図をガスタービンプラント全体の模式図と併せて表した概略構成図である。
図1に示すガスタービンプラント9は、主として、吸い込み空気15を加圧して高圧空気16を生成する圧縮機1と、圧縮機1で生成した高圧空気16とガス燃料50とを燃焼させて高温燃焼ガス19を生成する燃焼器2と、燃焼器2で生成した高温燃焼ガス19によって駆動されるタービン3と、タービン3の駆動によって回転され電力を発生させる発電機8と、圧縮機1、タービン3及び発電機8を一体に連結するシャフト7とを備えている。
【0013】
燃焼器2は、ケーシング4の内部に格納されている。
燃焼器2は、頭部に配設されたマルチバーナ6と、高圧空気16とガス燃料50とを燃焼させる燃焼室5を形成する概略円筒状の燃焼器ライナ10と、燃焼器ライナ10の外周にほぼ同心円の円筒状に配設され、高圧空気16を流下させる空気流路を形成する外周壁となるフロースリーブ11と、燃焼器ライナ10の下流側に配設され、燃焼室5で発生した高温燃焼ガス19をタービン3に導くための尾筒内筒12と、尾筒内筒12の外周側に配設された尾筒外筒13とを備えている。
【0014】
図1において、吸い込み空気15は、圧縮機1によって圧縮された後に高圧空気16となる。高圧空気16は、ケーシング4内に充満した後、尾筒内筒12と尾筒外筒13の間の空間に流入し、尾筒内筒12を外壁面から対流冷却する。
【0015】
尾筒内筒12を外壁面から対流冷却した高圧空気16は、フロースリーブ11と燃焼器ライナ10との間に形成された環状の流路を通って燃焼器2の頭部に向かって流れる。高圧空気16は流れる途中で、燃焼器ライナ10の対流冷却に使用される。
【0016】
また、高圧空気16の一部は、燃焼器ライナ10に設けられた多数の冷却孔(図しせず)から燃焼器ライナ10内へ流入し、燃焼器ライナ10のフィルム冷却に使用される。
【0017】
高圧空気16のうち燃焼器ライナ10のフィルム冷却に使用されなかった残りの高圧空気16は、燃焼用空気16Aとして燃焼室5の上流側壁面に位置する空気孔プレート31に設けられた多数の空気孔32に流入する。
【0018】
空気孔32に流入した燃焼用空気16Aは、そのまま空気噴流17として燃焼室5に噴出されるか、燃料ノズル25から噴出された燃料と混合されて予混合気18として燃焼室5に流入し、燃焼して高温燃焼ガス19を生成する。この高温燃焼ガス19は尾筒内筒12を通じてタービン3に供給される。
【0019】
高温燃焼ガス19は、タービン3を駆動した後に排出されて、排気ガス20となる。タービン3で得られた駆動力は、シャフト7を通じて圧縮機1及び発電機8に伝えられる。圧縮機1に伝えられた駆動力は、空気を加圧し高圧空気16を生成することに用いられ、発電機8に伝えられた駆動力は電気エネルギに変換される。
【0020】
ガスタービンプラント9は、マルチバーナ6にガス燃料50を供給するために、3個の燃料系統51,52,53を備えている。燃料系統51〜53には、燃料流量調整弁61〜63がそれぞれ設けられている。ガスタービンプラント9の発電量は、各燃料系統の流量を制御することで制御される。具体的には、制御装置65からの指令信号によって燃料流量調整弁61〜63の弁開度を調節することで制御される。3個の燃料系統51,52,53は、上流側で合流していて、この合流配管には、燃料を遮断するための燃料遮断弁60が設けられている。
【0021】
次に、バーナ構造について
図2乃至
図5を用いて説明する。
図2は本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第1の実施の形態の要部の側断面図を燃焼室内の燃焼ガスの流れを示す状況図と併せて表した概略構成図、
図3は本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第1の実施の形態を構成する空気孔プレートの一例を燃焼室側から見た正面図、
図4は本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第1の実施の形態を構成するF1バーナの一例の詳細側断面図を燃焼室内の燃焼ガスの流れを示す状況図と併せて表した概略構成図、
図5は本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第1の実施の形態を構成するF1バーナの起動/昇速時の火炎形態を示す特性図である。
図2乃至
図5において、
図1に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0022】
図2及び
図3に示すように、本実施の形態におけるマルチバーナ6は、燃焼器5の軸方向中央に配置された起動用のF1バーナ66と、その外周の同心円上に配置された6つのF2バーナ67とから構成されている。
【0023】
各バーナ66、67は多数の燃料ノズル25と、燃料を多数の燃料ノズル25に分配する燃料ヘッダ23と、空気および燃料が通過する空気孔32が燃料ノズル25に1対1に対応して配置された空気孔プレート31とを備えたバーナである。
【0024】
また、各バーナ66、67の空気孔プレート31に設けられた空気孔32は、
図3に示すように、各バーナの軸心を中心とした3列の同心円上に設けられている。F1バーナ66は、F1バーナ66の軸心を含むF1バーナ内周部66aとその周囲に配置されたF1バーナ外周部66bとに分けられ、本実施の形態においては、F1バーナ内周部66aは空気孔32の軸心から1列目を含み、F1バーナ外周部66bは空気孔32の2列目と3列目とを含む。
【0025】
ガスタービンは起動から定格負荷条件まで幅広い運転条件を安定に燃焼させるため、起動時や負荷の低い条件ではF1バーナ66単独で運用し、負荷の上昇とともに燃料を供給するF2バーナ67の個数を増やし、最後にすべてのバーナに燃料を供給して運用する。このような運転をすることでバーナそれぞれにおける燃空比を一定以上に保つことで安定に火炎42を保持することができる。
【0026】
図4において、F1バーナ内周部66aは、内周燃料ノズル25aと、内周空気孔32aと、燃料ヘッダ23と内周燃料ノズル25aとを連通する内周オリフィス22aとを備えている。また、F1バーナ外周部66bは、外周燃料ノズル25bと、外周空気孔32bと、燃料ヘッダ23と外周燃料ノズル25bとを連通する外周オリフィス22bとを備えている。
【0027】
空気孔プレート31に配設した空気孔32a、32bは、バーナ中心軸44に対して傾斜している。このことにより、予混合気噴流18にバーナ周方向速度成分が付与され、バーナ下流で外側に広がりながら旋回する旋回流40が形成される。この結果、バーナ中心部には、循環流41が形成される。この循環流41によって高温の燃焼ガスが、燃焼室5の下流から空気孔32a、32bの出口近傍まで戻るので、火炎42を安定に保炎することができる。
【0028】
次に、
図4及び
図5を用いてF1バーナ66の局所燃空比に対する火炎形態について説明する。
まず、
図4に示すF1バーナ内周部66aの内周燃料ノズル25aに供給される燃料流量をF1in、内周空気孔32aに流入する空気量をA1inと定義して、F1バーナ外周部66bの外周燃料ノズル25bに供給される燃料流量をF1out、外周空気孔32bに流入する空気量をA1outと定義する。そして、F1バーナ66の内周空気孔32a出口における局所燃空比をF1in/A1in、F1バーナ66の外周空気孔32b出口における局所燃空比をF1out/A1outと定義する。
【0029】
図5において、横軸はF1バーナ66の内周空気孔32a出口における局所燃空比F1in/A1inを示し、縦軸はF1バーナ66の外周空気孔32b出口における局所燃空比をF1out/A1outを示している。また、一点鎖線で示す線111は、F1バーナ内周部66aの量論混合比条件を示し、一点鎖線で示す線112は、F1バーナ外周部66bの量論混合比条件を示している。
【0030】
燃料と空気が予め混合された状態で燃焼する予混合火炎は、量論混合比条件近傍で最も燃焼速度(火炎が予混合気を伝播する速度)が速くなり、量論混合比条件から燃料濃度が薄くなる、または濃くなるにつれて燃焼速度が遅くなり、ある一定の比率に到達すると、予混合気噴流の流速と燃焼速度が釣り合う点が空気孔出口近傍で存在しなくなることによって火炎がリフト、または失火する。この一定の比率は、
図5において、F1バーナ内周部66a側の下減として内周部下限線101、上限として内周部上限線102で示している。同様に、F1バーナ外周部66b側の下減として外周部下限線103、上限として外周部上限線104で示している。
【0031】
このため、F1バーナの内周空気孔32a出口に火炎42が保炎する条件は、内周部下限線101と内周部上限線102の2つの線の間に限られる。同様にF1バーナ外周空気孔32b出口に火炎42が保炎する条件は、外周部下限線103と外周部上限線104の2つの線の間に限られる。
【0032】
空気孔出口近傍に火炎42が保炎できるかどうかは、予混合気の燃空比の大きさが支配的であるが、隣り合う空気孔から噴出される予混合気流が漏れ込んでくるため、内周部上限線102、内周部下限線101は、F1out/A1outが高いほど少しずつF1in/A1inの低い値にシフトしており、同様に外周部上限線104、外周部下限線103はF1in/A1inが高いほどF1out/A1outの低い値にシフトしている。
【0033】
図5において、内周部上限線102と内周部下限線101と外周部上限線104と外周部下限線103とに囲まれた範囲は、すべての空気孔の出口に火炎が保炎する。このため、
図2に示す起動/昇速時のようにF1バーナ66単独で燃焼する場合にF2バーナ67からの空気噴流17がF1バーナ66の下流に向かって流入しても、F1バーナ66からの予混合気噴流18は十分に燃焼反応が進行し、未燃分の排出を抑制することができる。
【0034】
一方、
図5のF1バーナ内周部局所燃空比とF1バーナ外周部局所燃空比がほぼ等しくなる条件105では、F1バーナ66全体で火炎の形成位置が同じで、かつ局所燃空比がほぼ同じであることから火炎が一様に変動しやすい。このため、火炎が変動することによって燃焼室5内の圧力が変動し、燃焼室5の圧力変動によってF1バーナ66に供給する燃料流量が変動し、さらに火炎が変動する。この結果、圧力変動と火炎変動がお互いに増幅し合って、燃焼振動が発生する可能性が生じる。
【0035】
したがって、F1in/A1in=F1out/A1outの近傍条件105を避けてF1バーナ66を運用すれば、燃焼振動の発生を回避できる。具体的には、F1バーナ内周部66aとF1バーナ外周部66bとで局所燃空比をオフセットすることにより、内周部と外周部とで燃焼速度に差が生じ、火炎が変動した際に、火炎が変動して圧力が変動する変動時間にずれが生じる。このことにより、内周部と外周部とが同一周期で変動することを防止できるので、燃焼振動が抑制される。
【0036】
次に、F1in/A1inは内周部上限線102と内周部下限線101の範囲内で、F1out/A1outは外周部上限線104よりも高いか、外周部下限線103よりも低い場合について
図6を用いて説明する。
図6は
図2の他の例であって、F1バーナにおいて、外周部の燃空費が空気孔出口に火炎が保炎できる燃空費よりも低い場合の火炎形態を示す状況図と併せて表した概略構成図である。
図6において、
図1乃至
図5に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0037】
この場合、内周空気孔出口には火炎が保炎する一方、外周空気孔出口周囲には火炎は保炎しないため、
図6に示すように円錐状の火炎42が形成される。このため、F1out/A1outが外周部下限線103よりも低い場合に、起動/昇速時のようにF1バーナ66単独で燃焼する際、F1バーナ66の外周部空気孔から噴出された予混合気噴流18は、燃焼反応が十分に進行する前にF2バーナ67から噴出された空気噴流17によって希釈される。このことにより、さらに燃空比が低下して燃焼反応が進行せず、未燃分が大量に発生する。
【0038】
一方、F1out/A1outが外周部上限線104よりも高い場合には、燃焼反応が十分に進行する前にF2バーナ67から噴出された空気噴流17によって希釈されたとしても、燃焼反応が進行するために十分な燃空比となっているので、内周部空気孔出口に形成された火炎の燃焼ガスによって外周部空気孔から噴出された予混合気噴流18も燃焼反応が進行し、未燃分の排出は抑制される。
【0039】
次に、
図5に示すF1out/A1outは外周部上限線104と外周部下限線103の範囲内で、F1in/A1inは内周部上限線102よりも高いか、内周部下限線101よりも低い場合は、外周空気孔出口には火炎が保炎する一方、内周空気孔出口周囲には火炎は保炎しない。このため、内周部が浮き上がった火炎が形成される。しかし、内周部が浮き上がったとしても、周囲をF1バーナ外周部空気孔出口に保炎した火炎で囲まれているため、高温の燃焼ガスによって燃焼反応が進行し、未燃分の排出が抑制される。
【0040】
一方、
図5に示すF1in/A1inが内周部上限線102よりも高いか、内周部下限線101よりも低く、かつF1out/A1outも外周部上限線104よりも高いか、外周部下限線103よりも低い場合いは、空気孔出口に火炎が保炎できず、失火するかリフトし、リフトする場合は火炎位置が定まらず大きな圧力変動が生じる恐れがある。
【0041】
以上のF1バーナ66の局所燃空比に対する火炎形態の説明から、F1バーナ66の局所燃空比を
図5に示す安定燃焼範囲107の内側と安定燃焼範囲108の内側に設定することで、未燃分と燃焼振動の発生を抑制し、安定に燃焼させることができる。
【0042】
また、F1in/A1in<F1out/A1outである安定燃焼範囲107では、F1in/A1inが内周下限線101より低くても、F1out/A1outが外周部上限線104と外周部下限線103の間に入っていれば未燃分の排出を抑制しつつ安定に燃焼することができる。このため、安定燃焼範囲108より安定燃焼範囲107の方がより広範囲に安定燃焼させることができ、F1バーナ66の運用性をさらに向上させることができる。
【0043】
安定燃焼範囲107で運用する場合、F1in/A1inに比べF1out/A1outの運用できる範囲が広い。本実施の形態では、
図3に示すようにF1バーナ内周部66aに対しF1バーナ外周部66bの空気孔数を多くし、F1バーナ外周部66bに流入する空気量の総量を多くしている。このため、F1バーナ66を安定に運用できるF1outの流量範囲を拡大することができ、F1バーナ66全体の燃焼負荷量を広い範囲にとることができる。この結果、F1バーナ66の運用性を高めることができる。
【0044】
次に、
図4に戻り、F1バーナ66の局所燃空比の設定について説明する。
本実施の形態におけるF1バーナ66は、
図4に示すようにF1バーナ内周部66aに対応した内周燃料ノズル25aと、F1バーナ外周部66bに対応した外周燃料ノズル25bとに供給する燃料の配分を調整するために内周オリフィス22a、外周オリフィス22bとがそれぞれ設けられている。
【0045】
ここで、内周燃料ノズル25aに設けた内周オリフィス22aの直径をDin、外周燃料ノズル25bに設けた外周オリフィス22bの直径をDoutと定義すると、本実施の形態においては、Din<Doutとなるように設定している。
【0046】
図4に示すように、内周燃料ノズル25aと外周燃料ノズル25bとは同一の燃料ヘッダ23に接続されているため、F1in<F1outとなる。一方、F1バーナ内周部66aに配置した内周空気孔32aの直径DainとF1バーナ内周部66bに配置した外周空気孔32bの直径Daoutとは同一径としているため、それぞれの空気孔32a、32bに流入する空気量A1inとA1outとは同じ値となる。この結果、本実施の形態の構成によれば、F1in/A1in<F1out/A1outとすることができる。
【0047】
本実施の形態のように、燃料ノズル25a、25bに設けたオリフィス22a、22bの直径でF1バーナ66の局所燃空比をF1in/A1in<F1out/A1outとなるように設定した場合、各燃料ノズルおよび空気孔の流量配分は常に一定となる。このため、例えば
図5に示すF1バーナ運転線109上でF1バーナ66の燃空比条件を設定することができ、そのうち安定燃焼範囲110で、未燃分の排出を抑制しつつ、安定燃焼させることができる。
【0048】
次に、F1バーナ66の局所燃空比の設定の他の例について
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第1の実施の形態を構成するF1バーナの他の例を示す詳細側断面図、
図8は
図7に示すF1バーナの他の例を燃焼室側から見た正面図である。
図7及び
図8において、
図1乃至
図6に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0049】
図7及び
図8に示すように、F1バーナ66の局所燃空比の設定の他の例として、燃料ノズル25a、25bに設けたオリフィス22a、22bの直径は内周と外周とで同じ大きさとし、燃料ノズル1本あたりに供給する燃料流量を同じとする一方で、内周空気孔32aの直径Dainを外周空気孔32bの直径Daoutより大きくしてもよい。この場合でも、内周空気孔に流入する空気量を外周空気孔に流入する空気量よりも多くすることでF1in/A1in<F1out/A1outとすることができる。
【0050】
本実施の形態のように燃料ノズル25a、25bを空気孔内部に挿入している場合、空気の流入量を調節する手段として、空気孔径を変えるほかに燃料ノズル25a、25bの外径を変えてもよい。F1in/A1in<F1out/A1outとするには、例えば空気孔径および燃料ノズルのオリフィス径を一定とした場合、F1バーナの内周燃料ノズル25aの先端部の外径を外周燃料ノズル25bの先端部の外径より小さくし、内周空気孔32aの流路断面積を外周空気孔32bの流路断面積より大きくしても良い。
【0051】
上述した本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第1の実施の形態によれば、ガスタービンの起動/昇速時の未燃分の排出と燃焼振動を抑制することができるので、起動用のF1バーナ66の運用範囲を拡大することができる。この結果、ガスタービンの回転数を安定して増加し得るガスタービン燃焼器およびその制御方法を提供できる。
【0052】
また、上述した本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第1の実施の形態によれば、燃料の系統数が少なく、簡便な構造によって、ガスタービンの起動/昇速時の未燃分の排出と燃焼振動を抑制することができる。
【実施例2】
【0053】
以下、本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。
図9は本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第2の実施の形態の要部の側断面図を燃焼室内の燃焼ガスの流れを示す状況図と併せて表した概略構成図、
図10は本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第2の実施の形態を構成する空気孔プレートの一例を燃焼室側から見た正面図、
図11は本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第2の実施の形態を構成するF1バーナの全バーナ火炎形成時における火炎形態を示す特性図である。
図9乃至
図11において、
図1乃至
図8に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0054】
図9及び
図10に示す本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。本実施の形態においては、F1バーナ66において、燃料ヘッダ23を内周燃料ヘッダ23aと外周燃料ヘッダ23bとに区分けして設けている。内周燃料ヘッダ23aは、F1バーナ内周部66aに対応した内周燃料ノズル25aに燃料を供給するもので、内周側燃料流量調整弁61aが設けられた内周燃料系統51aが接続されている。同様に、外周燃料ヘッダ23bは、F1バーナ外周部66bに対応した外周燃料ノズル25bに燃料を供給するもので、外周側燃料流量調整弁61bが設けられた外周燃料系統51bが接続されている。
【0055】
制御装置65は、内周側燃料流量調整弁61aと外周側燃料流量調整弁61bとを個別に開度調節することで、F1バーナ内周部66aとF1バーナ外周部66bに供給する燃料流量を別々に制御できる。
【0056】
本実施例の形態においては、このように、制御装置65でF1バーナ内周部66aとF1バーナ外周部66bとの局所燃空比を調節することができるため、第1の実施の形態のように燃料ノズル25a、25bに設けたオリフィス22a、22bや空気孔32a、32bの直径をF1バーナ内周部66aとF1バーナ外周部66bとで変える必要がない。
【0057】
本実施の形態においても、F1バーナ66の火炎形態は、
図5の特性で整理することができる。F1バーナの内周空気孔32a出口に火炎が保炎する条件は、
図5に示す内周部下限線101と内周部上限線102の2つの線の間に限られ、同様にF1バーナ外周空気孔32b出口に火炎が保炎する条件は、外周部下限線103と外周部上限線104の2つの線の間に限られる。
【0058】
一方、内周部上限線102、内周部下限線101、外周部上限線104、外周部下限線103に囲まれた範囲では、すべての空気孔の出口に火炎が保炎する。このため、タービン起動/昇速時のようにF1バーナ66単独で燃焼する場合に、
図9に示すようにF2バーナ67からの空気噴流17がF1バーナ66の下流に向かって流入してもF1バーナ66からの予混合気噴流18は十分に燃焼反応が進行し、未燃分の排出を抑制することができる。
【0059】
しかし、
図5のF1バーナ内周部局所燃空比F1in/A1inとF1バーナ外周部局所燃空比F1out/A1outとがほぼ一致する条件105では、第1の実施の形態の場合と同様にF1バーナ66全体で火炎の形成位置が同じで、かつ局所燃空比がほぼ同じであることから火炎が一様に変動しやすくなる。このため、火炎が変動することによって燃焼室5内の圧力が変動し、燃焼室5の圧力変動によってF1バーナ66に供給する燃料流量が変動し、さらに火炎が変動する。この結果、圧力変動と火炎変動がお互いに増幅し合って、燃焼振動が発生する可能性が生じる。
【0060】
そこで、本実施の形態においては、内周側燃料流量調整弁61aと外周側燃料流量調節弁61bの開度を調整して、F1in/A1in=F1out/A1outの近傍条件105を避けてF1バーナ66を運用することにより、燃焼振動の発生を回避できる。具体的には、F1バーナ内周部66aとF1バーナ外周部66bとで局所燃空比をオフセットすることにより、内周部と外周部とで燃焼速度に差が生じ、火炎が変動した際に、火炎が変動して圧力が変動する変動時間にずれが生じる。このことにより、内周部と外周部とが同一周期で変動することを防止できるので、燃焼振動が抑制される。
【0061】
次に、F1in/A1inは内周部上限線102と内周部下限線101の範囲内で、F1out/A1outは外周部上限線104よりも高いか、外周部下限線103よりも低い場合について説明する。この場合、内周空気孔出口には火炎が保炎する一方、外周空気孔出口周囲には火炎は保炎しないため、円錐状の火炎が形成される。このため、F1out/A1outが外周部下限線103よりも低い場合に、起動/昇速時のようにF1バーナ66単独で燃焼する際、F1バーナ66の外周部空気孔から噴出された予混合気噴流18は、燃焼反応が十分に進行する前にF2バーナ67から噴出された空気噴流17によって希釈される。このことにより、さらに燃空比が低下して燃焼反応が進行せず、未燃分が大量に発生する。
【0062】
一方、F1out/A1outが外周部上限線104よりも高い場合には、燃焼反応が十分に進行する前にF2バーナ67から噴出された空気噴流17によって希釈されたとしても、燃焼反応が進行するために十分な燃空比となっているので、内周部空気孔出口に形成された火炎の燃焼ガスによって外周部空気孔から噴出された予混合気噴流18も燃焼反応が進行し、未燃分の排出は抑制される。
【0063】
次に、
図5に示すF1out/A1outは外周部上限線104と外周部下限線103の範囲内で、F1in/A1inは内周部上限線102よりも高いか、内周部下限線101よりも低い場合は、外周空気孔出口には火炎が保炎する一方、内周空気孔出口周囲には火炎は保炎しない。このため、内周部が浮き上がった火炎が形成される。しかし、内周部が浮き上がったとしても、周囲をF1バーナ外周部空気孔出口に保炎した火炎で囲まれているため、高温の燃焼ガスによって燃焼反応が進行し、未燃分の排出が抑制される。
【0064】
一方、
図5に示すF1in/A1inが内周部上限線102よりも高いか、内周部下限線101よりも低く、かつF1out/A1outも外周部上限線104よりも高いか、外周部下限線103よりも低い場合いは、空気孔出口に火炎が保炎できず、失火するかリフトし、リフトする場合は火炎位置が定まらず大きな圧力変動が生じる恐れがある。
【0065】
以上のF1バーナ66の局所燃空比に対する火炎形態の説明から、F1バーナ66の局所燃空比を
図5に示す安定燃焼範囲107の内側と安定燃焼範囲108の内側に設定することで、未燃分と燃焼振動の発生を抑制し、安定に燃焼させることができる。
また、F1in/A1in<F1out/A1outである安定燃焼範囲107では、F1in/A1inが内周下限線101より低くても、F1out/A1outが外周部上限線104と外周部下限線103の間に入っていれば未燃分の排出を抑制しつつ安定に燃焼することができる。このため、安定燃焼範囲108より安定燃焼範囲107の方がより広範囲に安定燃焼させることができ、F1バーナ66の運用性をさらに向上させることができる。
【0066】
安定燃焼範囲107で運用する場合、F1in/A1inに比べF1out/A1outの運用できる範囲が広い。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、
図10に示すようにF1バーナ内周部66aの空気孔数よりF1バーナ外周部66bの空気孔数を多くし、F1バーナ外周部66bに流入する空気量の総量を多くしている。このため、F1バーナ66を安定に運用できるF1outの流量範囲を拡大することができ、F1バーナ66全体の燃焼負荷量を広い範囲にとることができる。この結果、F1バーナ66の運用性を高めることができる。
【0067】
次に、全バーナ火炎形成時におけるF1バーナの火炎形態について説明する。第1の実施の形態で説明したタービン起動/昇速時において、F1in/A1inが
図5に示す内周部上限線102と内周部下限線101の範囲内で、F1out/A1outが外周部下限線103より小さい場合には、前述したように未燃分が大量に発生してしまう。しかし、定格負荷条件など、F2バーナ67のすべてに火炎が形成されているような場合には、F1バーナの外周部空気孔32bから噴出される予混合気18が希釈されて未燃分が大量排出されることがないので、このような条件内でも安定に燃焼させることができる。
【0068】
このような、全バーナ火炎形成時におけるF1バーナの火炎形態を
図11に示している。
図11に示すように、F1in/A1in>F1out/A1outの安定燃焼範囲108は、
図5に示す起動/昇速時における安定燃焼範囲108に比べて拡大している。
【0069】
本実施の形態においては、F1バーナ内周部66aに配置した内周空気孔32aの開口面積をF1バーナ外周部66bに配置した外周空気孔32bの開口面積より小さくすると共に、F1バーナの内周燃料ノズル25aとF1バーナの外周燃料ノズル25bとに供給する燃料の比率を自由に変えることができる。このことにより、定格負荷条件では
図11に示す安定燃焼範囲108内で運用し、F1in/A1in>F1out/A1outとすることで燃空比が高くなる予混合気量を最小限とすることができる。この結果、NOx排出量を最小限とすることができる。
【0070】
上述した本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0071】
また、上述した本発明のガスタービン燃焼器およびその制御方法の第2の実施の形態によれば、F1バーナ66の内周部と外周部に供給する燃料配分を内周側燃料流量調整弁61aと外周側燃料流量調節弁61bの開度で制御できるので、起動/昇速時における安定燃焼範囲108を確保できると共に、定格負荷条件時においても、拡大した安定燃焼範囲108での運転が可能となる。この結果、全運転範囲においてNOx排出量を最小限とすることができる。
【0072】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。