特許第6182430号(P6182430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182430
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   H01R13/42 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-230982(P2013-230982)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-90830(P2015-90830A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 直樹
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07232339(US,B1)
【文献】 特開2011−228143(JP,A)
【文献】 特開2012−069468(JP,A)
【文献】 特開2012−113853(JP,A)
【文献】 特開2012−238534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42 − 13/436
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子収容孔を有するハウジングと、前記端子収容孔の一端側の開口から挿入されて収容される端子と、前記端子収容孔内に撓み可能に設けられ前記端子を前記端子収容孔に保持させる係止ランスとを備えたコネクタであって、
前記端子は、前記端子収容孔の開口から挿入され正多角形の筒状に形成された接続部を有し、この接続部の前記端子収容孔への挿入方向の後端部の全周には、前記係止ランスが係合される被係合部が設けられ、
前記端子は、前記接続部の外周の少なくともいずれかの平面が前記端子収容孔の内壁面に当接することにより前記端子収容孔に対する位置決めがなされ、
前記端子収容孔の開口は、前記端子の接続部が回転可能な円形状に形成され、前記端子収容孔内の前記開口と前記係止ランスとの間には、前記端子の接続部が挿入されたときに、前記接続部の角部と当接し前記接続部を回転させる複数の傾斜面が挿入方向に向けて螺旋状に設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記係止ランスの近傍に位置する前記傾斜面は、前記端子の接続部の角部と同数設けられていることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタとしては、端子収容孔を有するハウジングと、端子収容孔の一端側の開口から挿入されて収容される端子と、端子収容孔内に撓み可能に設けられ端子を端子収容孔に保持させる係止ランスとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このコネクタでは、端子の接続部が円筒形状に形成され、接続部の端子収容孔への挿入方向の後端部に係止ランスが係合される被係合部が設けられている。この被係合部には、係止ランスの端部と当接して係止ランスの復元力によって接続部を回転させる4つの角部を有する回転方向姿勢制御部が設けられている。
【0004】
このようなコネクタでは、端子の接続部を端子収容孔の開口から挿入させ、接続部によって係止ランスを撓ませる。この撓まされた係止ランスは、接続部の被係合部に位置すると復元される。
【0005】
このとき、端子の接続部が端子収容孔に対して正規位置に配置されていない場合には、係止ランスの端部が角部に当接し、係止ランスの復元力によって接続部を回転させ、接続部を端子収容孔の正規位置に配置させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−69464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のようなコネクタでは、係止ランスの復元力によって端子の接続部を回転させて接続部を端子収容孔の正規位置に配置させるので、端子の接続部を回転させるために係止ランスの復元力を大きく設定する必要がある。
【0008】
このため、端子の接続部を端子収容孔に挿入させる際に、係止ランスを撓ませる力も大きくする必要があり、端子の端子収容孔への挿入力が増大し、組付性が低下していた。
【0009】
そこで、この発明は、端子の端子収容孔への挿入力が増大することなく、組付性を向上することができるコネクタの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、端子収容孔を有するハウジングと、前記端子収容孔の一端側の開口から挿入されて収容される端子と、前記端子収容孔内に撓み可能に設けられ前記端子を前記端子収容孔に保持させる係止ランスとを備えたコネクタであって、前記端子は、前記端子収容孔の開口から挿入され正多角形の筒状に形成された接続部を有し、この接続部の前記端子収容孔への挿入方向の後端部の全周には、前記係止ランスが係合される被係合部が設けられ、前記端子は、前記接続部の外周の少なくともいずれかの平面が前記端子収容孔の内壁面に当接することにより前記端子収容孔に対する位置決めがなされ、前記端子収容孔の開口は、前記端子の接続部が回転可能な円形状に形成され、前記端子収容孔内の前記開口と前記係止ランスとの間には、前記端子の接続部が挿入されたときに、前記接続部の角部と当接し前記接続部を回転させる複数の傾斜面が挿入方向に向けて螺旋状に設けられていることを特徴とする。
【0011】
このコネクタでは、端子が、正多角形の筒状に形成された接続部の外周の少なくともいずれかの平面が端子収容孔の内壁面に当接することにより端子収容孔に対する位置決めがなされるので、係止ランスは接続部の端子収容孔への挿入方向の後端部の全周に設けられた被係合部に係合できるだけの復元力を有すればよい。
【0012】
また、端子収容孔内の開口と係止ランスとの間には、端子の接続部が挿入されたときに、接続部の角部と当接し接続部を回転させる複数の傾斜面が挿入方向に向けて螺旋状に設けられているので、係止ランスが被係合部に係合する前に、端子の接続部を端子収容孔に対して位置決めすることができ、係止ランスの復元力によって接続部を回転させる必要がない。
【0013】
従って、このようなコネクタでは、係止ランスの復元力が増大することがないので、端子の端子収容孔への挿入力が増大することなく、組付性を向上することができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のコネクタであって、前記係止ランスの近傍に位置する前記傾斜面は、前記端子の接続部の角部と同数設けられていることを特徴とする。
【0015】
このコネクタでは、係止ランスの近傍に位置する傾斜面が、端子の接続部の角部と同数設けられているので、端子の接続部が係止ランスに係合される前に、接続部の外周の全ての平面と傾斜面とが当接して接続部の回転を完了させ、端子を端子収容孔に対して確実に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、端子の端子収容孔への挿入力が増大することなく、組付性を向上することができるコネクタを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るコネクタのハウジングに端子を挿入する前の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るコネクタの断面図である。
図3】(a)は本発明の実施の形態に係るコネクタの端子収容孔の挿入口側から見たハウジングの正面図である。(b)は図3(a)のX−X断面図である。
図4】(a)は本発明の実施の形態に係るコネクタのハウジングの斜視図である。(b)は本発明の実施の形態に係るコネクタのハウジングの一部を断面とした斜視図である。
図5】(a)〜(d)は本発明の実施の形態に係るコネクタの端子を端子収容孔に収容したときの端子の接続部の配置を示す斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係るコネクタの端子収容孔に設けられた傾斜面を示す模式図である。
図7】本発明の実施の形態に係るコネクタの端子収容孔を成形するときに用いる抜き型の斜視図である。
図8】(a)は本発明の実施の形態に係るコネクタのハウジングに端子を挿入する前の斜視図である。(b)は本発明の実施の形態に係るコネクタのハウジングに端子を挿し始めたときの斜視図である。
図9】(a)は本発明の実施の形態に係るコネクタのハウジングに端子を挿入し始めたときの端子収容孔の開口側から見たハウジングの正面図である。(b)は本発明の実施の形態に係るコネクタのハウジングに端子を挿入したときの端子収容孔の開口側から見たハウジングの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図9を用いて本発明の実施の形態に係るコネクタについて説明する。
【0019】
本実施の形態に係るコネクタ1は、端子収容孔3を有するハウジング5と、端子収容孔3の一端側の開口7から挿入されて収容される端子9と、端子収容孔3内に撓み可能に設けられ端子9を端子収容孔3に保持させる係止ランス11とを備えている。
【0020】
また、端子9は、端子収容孔3の開口7から挿入され正多角形の筒状に形成された接続部13を有し、この接続部13の端子収容孔3への挿入方向の後端部の全周には、係止ランス11が係合される被係合部15が設けられている。
【0021】
さらに、端子9は、接続部13の外周の少なくともいずれかの平面が端子収容孔3の内壁面に当接することにより端子収容孔3に対する位置決めがなされる。
【0022】
そして、端子収容孔3の開口7は、端子9の接続部13が回転可能な円形状に形成され、端子収容孔3内の開口7と係止ランス11との間には、端子9の接続部13が挿入されたときに、接続部13の角部17と当接し接続部13を回転させる複数の傾斜面19が挿入方向に向けて螺旋状に設けられている。
【0023】
また、係止ランス11の近傍に位置する傾斜面19は、端子9の接続部13の角部17と同数設けられている。
【0024】
図1図9に示すように、ハウジング5は、合成樹脂などの絶縁性材料からなり、筐体状に形成され、内部に端子収容孔3が設けられている。
【0025】
端子収容孔3は、ハウジング5の長さ方向に沿って設けられ、一端側が端子9の接続部13を内部に挿入可能な開口7となっており、他端側が相手ハウジング(不図示)に収容された相手端子(不図示)のタブ状の接続部を挿入可能な挿入口21となっている。
【0026】
この端子収容孔3の開口7は、端子9の接続部13が回転可能なように端子収容孔3の挿入口21側の内径より大径の円形状に形成されてる。この開口7には、端子9の接続部13が挿入され、端子9の接続部13が端子収容孔3内に収容される。
【0027】
端子9は、導電性材料からなり、正四角形状の筒状に形成された接続部13を有する雌型端子となっている。また、端子9は、電源や機器などに接続された電線23の端末部に圧着部25が圧着されて電気的に接続されている。
【0028】
この端子9の接続部13には、一対の弾性片27,27が設けられている。一対の弾性片27,27は、基端側が接続部13の壁部から連続する一部材で形成され、自由端側が接続部13内に向けて折り曲げ形成され、接続部13内で撓み可能に対向して設けられている。この一対の弾性片27,27の自由端側の対向部は、相手端子のタブ状の接続部に接触する接点部となっている。
【0029】
このような端子9の接続部13には、ハウジング5が相手ハウジングと嵌合することにより、端子収容孔3の挿入口21から挿入される相手端子のタブ状の接続部が挿入され、一対の弾性片27,27の接点部がタブ状の接続部に接触することにより、端子9と相手端子とが電気的に接続される。
【0030】
ここで、相手端子のタブ状の接続部は、円柱形状、或いは正四角形の角柱形状に形成されている。このため、端子9の正四角形の筒状の接続部13は、図5に示すように、外周の少なくともいずれかの平面が端子収容孔3の内壁面(ここでは、鉛直方向となる下面)と当接された状態で、端子収容孔3内に収容されていれば、一対の弾性片27,27と相手端子のタブ状の接続部とを正常に接触させることができる。
【0031】
従って、端子9は、接続部13の外周の少なくともいずれかの平面が端子収容孔3の内壁面に当接することにより端子収容孔3に対する位置決めがなされる。
【0032】
この端子9の接続部13の端子収容孔3への挿入方向の後端部は、接続部13の外径より小径に形成された小径部となっており、小径部に位置する接続部13の後端面の全周は被係合部15となっている。この被係合部15には、端子収容孔3内に設けられた係止ランス11が係合され、端子収容孔3からの端子9の抜け止めがなされている。
【0033】
係止ランス11は、基端側が端子収容孔3の下側の内壁から連続する一部材で形成され、自由端側が端子収容孔3の上側の内壁に向けて延設され、端子収容孔3内で高さ方向に撓み可能に設けられている。この係止ランス11の自由端側には、端子9の接続部13の被係合部15に係合される係合部29が突設されている。
【0034】
この係止ランス11は、端子収容孔3の開口7から挿入される端子9の接続部13と当接することにより下方に向けて撓まされ、接続部13の被係合部15が係合部29に位置することにより上方に向けて復元され、係合部29が接続部13の被係合部15に係合して端子9の端子収容孔3からの抜けを防止する。
【0035】
このようなコネクタ1において、端子収容孔3の開口7が、端子9の接続部13と同様に、正四角形状であると、端子9を端子収容孔3に挿入する際に、端子収容孔3の開口7と端子9の接続部13との位置合わせを行わなければならず、組付性が低下してしまう。
【0036】
そこで、コネクタ1では、端子収容孔3の開口7が端子9の接続部13が回転可能なように端子収容孔3の挿入口21側の内径より大径の円形状に形成されてる。このため、端子9を端子収容孔3に挿入する際に、端子収容孔3の開口7と端子9の接続部13との位置合わせを行う必要がなく、組付性を向上することができる。
【0037】
このような開口7と係止ランス11との間に位置する端子収容孔3内には、複数の傾斜面19が設けられている。この各傾斜面19は、開口7側から端子収容孔3の内部側に向けて縮径されるように傾斜されており、各傾斜面19が端子収容孔3内に端子9の端子収容孔3への挿入方向に向けて、図6の矢印で示すように、螺旋状に配列されている。
【0038】
この複数の傾斜面19のうち係止ランス11の近傍に位置する傾斜面19は、端子9の接続部13の角部17と同数(ここでは、角部17が4つであるので、4面)となるように設定され、各傾斜面19の端子収容孔3の内部側の端部が端子収容孔3の形状(ここでは正四角形状)となるように配置されている。なお、複数の傾斜面19は、ハウジング5の成形時に用いられる、図7に示すような端子収容孔3の抜き型31によって形成される。
【0039】
このような複数の傾斜面19は、端子収容孔3の開口7から端子9の接続部13が挿入されたときに、図9(a)に示すように、接続部13の角部17と当接し、図9(b)の矢印で示すように、接続部13を回転させる。
【0040】
そして、係止ランス11の近傍に位置する傾斜面19は、端子9の接続部13の角部17と同数に設定されているので、図5に示すうちのいずれかの端子9の接続部13の配置となって端子収容孔3に挿入され、係止ランス11の係合部29が接続部13の被係合部15に係合される。
【0041】
このように端子収容孔3内に複数の傾斜面19を設けることにより、位置合わせすることなく開口7から挿入された端子9の接続部13を端子収容孔3に対して位置合わせすることができ、端子9と相手端子との接続信頼性を確保しつつ、組付性を向上することができる。
【0042】
このようなコネクタ1では、端子9が、正四角形の筒状に形成された接続部13の外周の少なくともいずれかの平面が端子収容孔3の内壁面に当接することにより端子収容孔3に対する位置決めがなされるので、係止ランス11は接続部13の端子収容孔3への挿入方向の後端部の全周に設けられた被係合部15に係合できるだけの復元力を有すればよい。
【0043】
また、端子収容孔3内の開口7と係止ランス11との間には、端子9の接続部13が挿入されたときに、接続部13の角部17と当接し接続部13を回転させる複数の傾斜面19が挿入方向に向けて螺旋状に設けられているので、係止ランス11が被係合部15に係合する前に、端子9の接続部13を端子収容孔3に対して位置決めすることができ、係止ランス11の復元力によって接続部13を回転させる必要がない。
【0044】
従って、このようなコネクタ1では、係止ランス11の復元力が増大することがないので、端子9の端子収容孔3への挿入力が増大することなく、組付性を向上することができる。
【0045】
また、係止ランス11の近傍に位置する傾斜面19は、端子9の接続部13の角部17と同数設けられているので、端子9の接続部13が係止ランス11に係合される前に、接続部13の外周の全ての平面と傾斜面19とが当接して接続部13の回転を完了させ、端子9を端子収容孔3に対して確実に位置決めすることができる。
【0046】
なお、本発明の実施の形態に係るコネクタでは、端子の接続部が正四角形状となっているが、これに限らず、端子の接続部を四角形以上の正多角形状としてもよい。
【0047】
また、端子収容孔の開口は、円形状としているが、端子の接続部が回転可能であればよく、本発明における円形状とは、真円状や多角形状の円形状などを含むものである。
【0048】
さらに、本発明の実施の形態に係るコネクタでは、1つのハウジングに対して1つの端子収容孔が設けられた構造を例示しているが、1つのハウジングに対して複数の端子収容孔が設けられていてもよい。
【0049】
このような多極化されたコネクタでは、本発明を適用することで、全ての端子収容孔に対して端子の挿入力が増大することがなく、大幅に組付性を向上することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…コネクタ
3…端子収容孔
5…ハウジング
7…開口
9…端子
11…係止ランス
13…接続部
15…被係合部
17…角部
19…傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9