【実施例1】
【0030】
実施例1のパチンコ機Pは、
図1に示す様に、外枠A、中枠B、遊技盤1、前枠D、上の球受け皿E、下の球受け皿F及び打球発射装置Gを備えている。外枠Aはパチンコ機Pの外郭を構成する縦長方形の枠である。中枠Bは、各種の遊技用構成部材をセットするための縦長方形の枠であって、外枠Aの前面側に開閉可能かつ着脱可能に組み付けられる。遊技盤1は、中枠Bの開口部に取り付けられる。前枠Dは遊技盤1の透視保護窓であって、施錠装置Hの操作によって開閉可能な様に中枠Bの前面側に組み付けられる。上の球受け皿Eは、貸し球や賞球の受け皿で、本実施例においては前枠Dの下部と一体に構成されてる。従って、前枠Dを中枠Bに対して開閉するときに上の球受け皿Eも共に開閉される。下の球受け皿Fは、上の球受け皿Eが一杯になったときに排出される遊技球や打ち損じの遊技球等を受ける受け皿であって、中枠Bの下部に固定されている。打球発射装置Gは、上の球受け皿Eから発射レールに送り込まれた遊技球をハンドル操作に対応する強さで打ち出すための装置であって、中枠Bの右下部に装備される。
【0031】
中枠Bは、上縁をなす上枠部材B1と、下縁をなし打球発射装置G等が設置された下枠部材B2と、左側縁をなす左枠部材B3と、右側縁をなす右枠部材B4とから構成されて、これら上下左右の枠部材B1〜B4を組み付けた際に、全体が外枠Aの開口に整合する矩形枠状に形成される。そして、上下左右の枠部材B1〜B4を組み付けた際に開口する開口部分が、遊技盤1を設置する遊技盤保持部B5として機能する。ここで、中枠Bは、外枠Aの左上端部及び左下端部に設けられた支軸を介して枢支され、左側端部を中心として中枠Bを回転させることで外枠Aに対して中枠Bを開閉し得るようになっている。
【0032】
遊技盤1は、ベニヤ板、透明合成樹脂板などによって形成される板部材1aの中央開口に裏面側から臨む様に液晶表示装置LCDが取り付けられ、この液晶表示装置LCDを取り囲む様に、板部材1aの前面側からセンター役物13が取り付けられている。液晶表示装置LCDは、遊技盤1の裏側に取り付けられる裏ユニット3に対して、可動体役物や電飾装置などと共に組み付けられ、板部材1aの背面側から組み付けられる。なお、センター役物13と液晶表示装置LCDの間には、こうした可動体役物が液晶表示装置LCDの前面へ出没するためのスペースを確保する様に、液晶表示装置LCDは、板部材1aの背面よりも後方に控えた状態の前後方向位置に組み付けられる。
【0033】
遊技盤1は、
図2(A)に示す様に、障害釘11や風車12が植設された遊技領域10の中央にセンター役物13が取り付けられ、センター役物13の中央直下に始動入賞口14が備えられる。また、この始動入賞口14の右斜め下方に特別入賞口15が設置され、センター役物13の右側には特別入賞口15の開放時に右側から遊技球を入賞させるための右打ち通路16が備えられた構成となっている。遊技盤1には、この他、誘導レール17、普通入賞口18、アウト口19等も設置されている。
【0034】
センター役物13は、
図2(A)に示す様に、リング状に形成された合成樹脂製の枠状装飾体30と、可動体や電飾部材が備えられた演出用装飾体40とからなる。枠状装飾体30においては、
図2(C),
図4に示す様に、平板状のベース部31の縁に沿う様に背面側に後方に伸びる周壁部32が形成され、周壁部32の外側にダボ33が突設形成され、ダボ33で位置決めしつつ周壁部32を板部材1aの開口に前面側から嵌り込ませる様にして取り付けられる。一方、演出用装飾体40は、液晶表示装置LCDの前面側に位置する様に裏ユニット3の収納空間内に取り付けられ、板部材1aの背面側に位置する様に組み付けられる。
【0035】
図2(B),(C),
図3に示す様に、枠状装飾体30の前面側にも、ベース部31の開口の内側にほぼ沿う様にして前方へ伸びる区画壁34が形成されている。この区画壁34の内側が液晶表示装置LCDの表示領域となる。区画壁34の中央下部には、上面で遊技球を上下左右へと揺れ動かす様に転動させるステージ35が形成され、このステージ35へと遊技球を誘導するワープ通路36が、区画壁34の右側中央部からステージ35の右端部へと屈曲しつつ連続する様に形成されている。
【0036】
また、枠状装飾体30のベース部31の右側中央辺りにゲート41が備えられると共に、このゲート41の上方を出口62とする様に、区画壁34の右側に沿って流下通路右壁37が突設されている。このベース部31から前方へ突設された二条の垂直壁(流下通路右壁37及び区画壁34)と、これらの前面を覆う様に取り付けられる流下通路前側部材38とによって、周囲を閉鎖された筒状の右側流下通路60が構成されている。
【0037】
右側流下通路60は、上端の入口61から進入した遊技球を左右方向に揺れ動かしながら落下させる構造となっていて、下端の出口62の近傍で遊技球を右方向から左方向へ向かって大きく方向転換させた後、再び右方向へと方向転換させて出口62へと至らせる方向転換用の突出部63を備えている。この突出部63には、切断刃50が、刃先を左に向けて組み付けられる。
【0038】
出口62の下方のゲート41には球検知センサ42が設置されていて、遊技球が通過することで所定の抽選処理を実行し、始動入賞口14の下部の第2始動入賞口(いわゆる「電チュー」)43の開閉等が制御される構成となっている。
【0039】
右側流下通路60の突出部63は、
図3〜
図6に示す様に、ベース部31側から立設された流下通路右壁37に形成された奥側突出部63aと、流下通路前側部材38の背面側に形成された前側突出部63bとが前後に当接する様に重なり合うことによって形成される。これら奥側突出部63a、前側突出部63bには、切断刃50を嵌め込むための奥側切断刃挟持部64a,64bが形成されている。
【0040】
ここで、流下通路右壁37は、
図2,
図3に示す様に、突出部63の形成される部分は半分の高さとなっていて、ここに流下通路前側部材38の外側壁38aが嵌り込む様に組み付けられて流下通路60を完成する。流下通路前側部材38には、ネジ止め用の4本の孔明き支柱38bが背面側に突設されている。また、適宜個数の減速用突条38cも流下方向に交差する様に適宜の間隔で突設されている。なお、符号38dは、飾り壁である。
【0041】
図3,
図4,
図7(B)〜(D)に示す様に、切断刃50は、鋼板51の先端側を上下方向に半分に切り込みを入れ、下半分を正面側へ斜めに持ち上げる様に折り曲げることにより、上側フラット刃先52と下側傾斜刃先53とを備えさせ、これら上側フラット刃先52と下側傾斜刃先53との間にV字状の挟み込み部54を形成したものとなっている。また、鋼板51の後端側は背面側に直角に折り曲げた引っ掛け部55とされ、中央部分に2個の貫通孔56,56が形成されている。
【0042】
図3,
図4,
図5(B)〜(E)に示す様に、前側突出部63bの前側切断刃挟持部64bは、切断刃50の鋼板51の正面に当接する平坦部64b1と、切断刃50の貫通孔56,56に嵌り込むボス64b2,64b2とを備えると共に、先端部分には、下側傾斜刃先53を収納可能な凹所64b3を備えたものとなっている。
【0043】
同じく、
図3,
図4,
図5(B)〜(E)に示す様に、奥側突出部63aの奥側切断刃挟持部64aは、切断刃50の鋼板51の正面に当接する平坦部64a1と、前側突出部63bの前側切断刃挟持部64bに形成されたボス64b2,64b2が嵌り込む嵌合孔64a2,64a2と、引っ掛け部55が引っ掛かる引っ掛け面64a3とによって構成されている。
【0044】
図5(A)に示す様に、突出部63は、出口62を垂直上方からは見えなくする様に大きく左方向へと突出している。また、
図5(B)〜(E)に示す様に、突出部側面側の内壁面(流下通路の側面)63a2,63b2は、凹所64b3を谷溝65とする様に、左右から角度θ1で傾斜されている。なお、突出部上面側の内壁面(流下通路の底面)63a1,63b1も、
図6(D)に示す様に、谷溝65に向かって角度θ2の下り傾斜とされている。
【0045】
この結果、
図8に示す様に、糸付きゴトの糸90は、突出部63に当接し、突出部上面側の内壁面63a1,63b1及び突出部側面側の内壁面63a2,63b2の傾斜により、
図8(A),(B)に点線で示した状態であったものも実線で示した状態へと誘導され、谷溝65へと誘導され、谷溝65内に収まっている切断刃50の上側フラット刃先52と下側傾斜刃先53との間にV字状の挟み込み部54に嵌り込む。
【0046】
糸付きゴトの不正をしようとする者は、この状態で糸90を引っ張ったり緩めたり操作する。この操作により、糸90はV字状の挟み込み部54で擦られ、やがて切断される。糸90は前後から挟まれた状態であり、切断刃50が鋼製であることから、不正行為を実行しようとしたときに、迅速かつ的確に糸90を切断をすることができる。
【0047】
一方、不正行為に無関係な遊技球は、流下通路60に沿って流下するだけであり、谷溝65は遊技球の直径に比べて十分に小さく、切断刃50の刃先が飛び出さない様に収納されているから、この様な正常な遊技球の動きに制約や乱れを生じさせることがない。
【0048】
また、流下通路60を、後側と前側に分け、特に、突出部63は半割の構成としたから、突出部63に対して切断刃50を挟み込む様にして容易に組み立てることができ、糸ゴト不正を防止するための機構が、流下通路の組立と同時に完成するから、組立工数を増加させることもない。
【0049】
この様に、本実施例によれば、不正行為と関係のない遊技球の動きに制約や乱れを加えることなく、動力源を必要とせずに糸付きゴトによる不正行為を防止することができる。
【0050】
以上、発明を実施するための最良の形態としての一実施例を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、センター役物13の右側ではなく、左側のワープ通路36内の突出部に切断刃を忍ばせた溝部を形成して、ワープ通路を経由して糸ゴトを行う不正への対応に適用しても構わない。また、突出部63を出口62を垂直上方から隠すほど飛び出せていなくてもよく、少なくとも出口の中心の垂線を越える様な突出状態としておけば足りる。切断刃50は鋼板を折り曲げた構造のものに限らず、鋳造品としたり、素材もアルミ合金等に変えて構わない。実施例では、突出部63を、流下通路右壁37と外側壁38aの半割の内壁面を利用して形成していることにより、谷溝65へと糸90を誘導するための内壁面の傾斜角度を種々に形成することが容易であるから、谷溝65を突出部上面側の内壁面63a1,63b1にも形成し、切断刃50を、その刃先を横向きではなく、斜め上方に向けたり、あるいは上向きにした状態に設置しても構わない。また、切断刃50の刃先は、二分割に限らず、三分割以上にして一つおきに折曲したもので構成するなどとしても構わない。