特許第6182436号(P6182436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182436
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   A63F7/02 334
   A63F7/02 312Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-238987(P2013-238987)
(22)【出願日】2013年11月19日
(65)【公開番号】特開2015-97649(P2015-97649A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135210
【氏名又は名称】株式会社ニューギン
(74)【代理人】
【識別番号】100104514
【弁理士】
【氏名又は名称】森 泰比古
(72)【発明者】
【氏名】宮田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】赤松 直樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 桂士
【審査官】 河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−147996(JP,A)
【文献】 特開2012−100974(JP,A)
【文献】 特開2013−094310(JP,A)
【文献】 特開2012−179106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤の遊技領域内に入賞口やゲートなどを備えると共に、遊技球の通過を検出可能な検知手段を備えた遊技機において、当該検知手段によって遊技球を検知することで賞球の払い出しやゲームの抽選処理等の契機とすると共に、さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする遊技機。
記検知手段の設置位置近傍へと遊技球を流下させる流下通路を備え、前記流下通路は湾曲又は屈曲しており、前記検知手段の設置位置近傍の出口に至るまでの間に、前記遊技球を左右方向に大きく方向転換させた後、再び左右反対の方向へと方向転換させて前記出口へと至らせる方向転換用の突出部を有し、当該突出部は、前記流下通路の側面を構成する内壁面を備え、前記突出部の内壁面を前記遊技球の直径に比べて小さい凹所を構成する谷溝に向かう傾斜面で構成し、前記谷溝内に切断刃を収める構成とすることで、前記突出部に当接した糸付きゴトの糸を前記内壁面の傾斜により前記谷溝へと誘導し、前記谷溝内に収まっている前記切断刃により切断する様に構成したこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に係り、特に、糸を貼り付けた遊技球を用いて、糸を引っ張ったり緩めたりして遊技球を往復動させてスイッチやセンサを反応させるといった不正行為(以下、「糸付きゴト」とよぶ。)を防止する機能を備えた遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、上述の様なアナログ的操作による糸付きゴトが流行しており、その防止対策について種々の提案がなされている(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
特許文献1は、シーソーの様に揺動し得るコ字状の切断部材の下側の切断部を流下通路内に突出させた状態となる様にバネで付勢しておき、遊技球が押しのけることで上側の切断部が遊技球の上部で流下通路内に突出して糸状体を切断する機構や、流下通路の左右から突出させた切断部を遊技球が押しのけて通過した後に再び突出位置へと戻る様にバネで付勢しておき糸状体を切断する機構を提案している。
【0004】
特許文献2は、誘導レールの出口の玉戻り防止弁に備えさせた切欠、風車の刃根の外縁に備えさせた切欠、センターケース上部の転動面に備えさせた複数条のV溝、球発射装置への遊技球の供給通路の排出部内壁に備えさせた切欠溝などによって糸を捕獲したり絡め取ったりして糸付きゴトの操作をできなくしたり、球発射装置の部分に設置した加熱装置で糸を切断するなどの各種機構を提案している。
【0005】
特許文献3は、捩りバネで閉鎖方向に常時付勢された第1,第2の可動扉を球通路内に備えさせ、遊技球が開閉扉を押しのけて通過した後に再び閉鎖方向へと開閉扉を揺動させて糸を切断する機構や、駆動モータで回転する針状の引掛部を球通路内に設置しておいて糸を絡め取る機構を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−147996(図3図6
【特許文献2】特開2012−100974(図22図41
【特許文献3】特開2012−34853(図8図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3の提案する機構は、遊技球と接触する部品に備えさせた切欠等で糸を捕獲したり絡め取ったり、遊技球が押しのけた後の復帰動作で糸を切断したり、モータで回転させて糸を絡め取るなどの機構であり、動力源を必要としたり、不正行為と関係のない遊技球の動きを制約したり乱したりするという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、不正行為と関係のない遊技球の動きに制約や乱れを加えることなく、動力源を必要とせずに糸付きゴトによる不正行為を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するためになされた本発明の遊技機は、遊技盤の遊技領域内に入賞口やゲートなどを備えると共に、遊技球の通過を検出可能な検知手段を備えた遊技機において、当該検知手段によって遊技球を検知することで賞球の払い出しやゲームの抽選処理等の契機とすると共に、さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする。
記検知手段の設置位置近傍へと遊技球を流下させる流下通路を備え、前記流下通路は湾曲又は屈曲しており、前記検知手段の設置位置近傍の出口に至るまでの間に、前記遊技球を左右方向に大きく方向転換させた後、再び左右反対の方向へと方向転換させて前記出口へと至らせる方向転換用の突出部を有し、当該突出部は、前記流下通路の側面を構成する内壁面を備え、前記突出部の内壁面を前記遊技球の直径に比べて小さい凹所を構成する谷溝に向かう傾斜面で構成し、前記谷溝内に切断刃を収める構成とすることで、前記突出部に当接した糸付きゴトの糸を前記内壁面の傾斜により前記谷溝へと誘導し、前記谷溝内に収まっている前記切断刃により切断する様に構成したこと。
【0010】
本発明の遊技機によれば、糸を貼り付けた遊技球が遊技領域に打ち込まれ、流下通路を通って検知手段の近傍へ誘導されたとき、流下通路の内壁面に設置した切断刃に糸を接触させてやることで、糸付きゴト操作による擦れを利用して切断することができる。このとき、切断刃は、流下通路の内壁面から飛び出さない様に流下通路内壁面に形成した溝部の奥に収めておくとよい。上述の様に、溝部は遊技球の直径よりも小さいから、遊技球が切断刃に触れることがない。よって、切断刃は、特許文献2の玉戻り防止弁の様な変形し易いものにする必要がなく、切断能力の高い硬くて堅固な材料で構成しておくことができる。そして、本発明によれば、動力源を備えなくてもよいだけでなく、不正行為と無関係の遊技球の動きに制約や乱れを生じさせることもない。
【0011】
ここで、本発明の遊技機は、さらに、以下の構成をも備えるとよい。
)前記流下通路の内壁面が、少なくとも前記溝部の付近においては、当該溝部の開口を谷部とする傾斜面で構成されていること。
【0012】
かかる構成()をも備えることにより、糸付きゴトに用いられる遊技球に貼り付けられた糸は、流下通路の内壁面の傾斜面に沿って谷部に誘導され、切断刃が設置された溝部へと嵌り込み、切断刃に接触する状態へと導かれ、上述した様に糸付きゴトの操作がなされる間に糸を切断することができる。
【0014】
そして、構成()をも備えることにより、糸付きゴトに用いるために糸が貼られた遊技球は、流下通路を流下する際に盤面に沿って左右方向に揺れ動き、突出部を越えて流下するときに糸が突出部に当接し、当該突出部に形成されている溝部に嵌り込み、切断刃に当接し、上述した作用によって当該糸を糸付きゴト操作がなされる時に切断することができる。
【0015】
ここで、本発明の遊技機は、さらに、以下の構成をも備えるとよい。
(3A)前記突出部は、前記流下通路の出口に対し、当該出口の中心を通る垂直線を横切る様に突出されていること。
【0016】
かかる構成(3A)をも備えることにより、流下通路の出口からぶら下がった状態の糸付きゴト用の遊技球に貼り付けられた糸は突出部に対して確実に当接した状態となり、その結果、突出部に形成された溝部に嵌り込み、その奥の切断刃に当接し、糸付きゴト操作が行われる際の切断を、より確実に実現することができるからである。
【0017】
また、これら本発明の遊技機は、さらに、以下の構成をも備えるとよい。
(4)前記流下通路が、前後方向に分割された奥側部分と、当該奥側部分を前方から覆う様に組み付けられる前側部分とによって構成され、前記切断刃が、前記奥側部分と前記前側部分との間に挟み込まれる様にして組み付けられていること。
【0018】
かかる構成(4)をも備えることにより、切断刃の組み付けを、流下通路の組立と同時に実行することができ、上述の様な作用・効果を発揮する遊技機を、組立工数を増加させることなく製造することができる。また、切断刃の組み付けも確実なものとなる。
【0019】
また、これら本発明の遊技機は、さらに、以下の構成をも備えるとよい。
(5)前記切断刃は、前記溝部の開口側に先端を向けると共に、当該先端を複数に分割して一部を折曲したV字状の挟み込み部を備えた金属製のものであること。
【0020】
かかる構成(5)をも備えることにより、溝部に嵌り込んだ糸は、金属製の切断刃の先端のV字状の挟み込み部の奥で捕捉され、糸付きゴト操作による両面側からの擦れによってより迅速かつ的確に切断をすることができるからである。
【0021】
また、これら本発明の遊技機は、さらに、以下の構成をも備えるとよい。
(6)前記検知手段が、センター役物の下部に位置する様に設置され、前記流下通路が前記センター役物の側方部分に沿って形成されると共に、当該流下通路は、前記出口の近傍において、相対的にセンター役物中心に向かった後に相対的に前記センター役物中心から離れる方向へと流下する様に遊技球を方向転換させた後に下方に落下させる屈曲部を有し、前記溝部が当該屈曲部において前記センター役物中心に対して外から内へと突出する側の内壁面に形成されていること。
【0022】
かかる構成(6)は、センター役物の中央下部、右側下部、左側下部等に、始動入賞口やV入賞口(2種型ゲームにおける大当たり入賞口)などが設けられた遊技機における不正防止対策として特に適するものとなる。
【0023】
例えば、所定の条件を満足したときに右打ち遊技を実行させ、センター役物の右側に設置されたゲートに遊技球を通過させ、これによって大当たり抽選をする様に構成したタイプの遊技機において特に有効な糸付きゴト対策となる。この種の遊技機において、センター役物の右側に沿って形成された流下通路へ遊技球を一旦進入させた後、糸を操作してゲートを何度も通過させる不正に対し、屈曲部に糸を確実に当接させ、この屈曲部に形成した溝部へと糸を嵌り込ませ、操作による糸の上下動で切断刃に擦り合わせて糸を切断し、この種の不正による賞球の不正獲得を的確に防止することができる。
【0024】
また、センター役物の左側には、ステージに遊技球を排出するワープ通路がある。そして、ステージ下中央に始動入賞口を備えるものが多い。この様な遊技機において、ワープ通路からステージ上のトンネルへと糸付きゴト用の遊技球を誘導して始動入賞口のセンサを繰り返し反応させるといった不正に対し、ワープ通路の屈曲部の内壁に切断刃を埋め込んでおき、糸を切断刃の潜んでいる溝部に嵌り込ませて切断してしまうことによって、こうしたワープ通路を利用した不正の対策としても有効なものとする。
【0025】
ここで、(6)の構成を備えた本発明の遊技機は、さらに、以下の構成をも備えるとよい。
(7)前記流下通路が、前記センター役物のベース部分の前面に一体成形された二条の垂直壁によって形成される奥側部分と、当該奥側部分を前方から覆う様に組み付けられる前側部分とによって構成され、前記切断刃が、前記奥側部分と前記前側部分との間に挟み込まれる様にして組み付けられていること。
【0026】
かかる構成(7)をも備えることにより、センター役物と一体となった流下通路を組み立てる際に切断刃の組み付けをも確実に実行することができ。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、不正行為と関係のない遊技球の動きに制約や乱れを加えることなく、動力源を必要とせずに糸付きゴトによる不正行為を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1のパチンコ機を示し、(A)は遊技盤を取り外した状態の斜視図、(B)は正面図、(C)は分解斜視図である。
図2】実施例1を示し、(A)は遊技盤の正面図、(B)はセンター飾りのベース側部材の右側面図、(C)は(B)の右側面図である。
図3】実施例1におけるセンター飾り右側の流下通路の部分を分解した状態の正面側から見た斜視図及び要部の拡大斜視図である。
図4】実施例1におけるセンター飾り右側の流下通路の部分を分解した状態の背面側から見た斜視図及び要部の拡大斜視図である。
図5】実施例1におけるセンター飾り右側の流下通路の部分を示し、(A)は正面図、(B)はA−A断面図、(C)は(B)の要部拡大断面図、(D)はB−B断面図、(E)は(D)の要部拡大断面図である。
図6】実施例1におけるセンター飾り右側の流下通路の部分を示し、(A)は正面図、(B)はC−C断面図、(C)はD−D断面図、(D)は(C)の要部拡大断面図である。
図7】実施例1におけるセンター飾り右側の流下通路の部分を示し、(A)は前側部材を取り外した状態の要部拡大斜視図、(B),(C)は切断刃の斜視図、(D)は切断刃の六面図である。
図8】実施例1におけるセンター飾り右側の流下通路の要部を示し、(A)は左側から見た拡大断面図、(B)は前側部材を取り外した状態の拡大正面図、(C)は挟み込み部に糸が挟まれる様子を示す斜視図、(D)は挟み込み部に糸が挟まれる様子を示す左側面図、(E)は挟み込み部に糸が挟まれる様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態として、具体的な実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0030】
実施例1のパチンコ機Pは、図1に示す様に、外枠A、中枠B、遊技盤1、前枠D、上の球受け皿E、下の球受け皿F及び打球発射装置Gを備えている。外枠Aはパチンコ機Pの外郭を構成する縦長方形の枠である。中枠Bは、各種の遊技用構成部材をセットするための縦長方形の枠であって、外枠Aの前面側に開閉可能かつ着脱可能に組み付けられる。遊技盤1は、中枠Bの開口部に取り付けられる。前枠Dは遊技盤1の透視保護窓であって、施錠装置Hの操作によって開閉可能な様に中枠Bの前面側に組み付けられる。上の球受け皿Eは、貸し球や賞球の受け皿で、本実施例においては前枠Dの下部と一体に構成されてる。従って、前枠Dを中枠Bに対して開閉するときに上の球受け皿Eも共に開閉される。下の球受け皿Fは、上の球受け皿Eが一杯になったときに排出される遊技球や打ち損じの遊技球等を受ける受け皿であって、中枠Bの下部に固定されている。打球発射装置Gは、上の球受け皿Eから発射レールに送り込まれた遊技球をハンドル操作に対応する強さで打ち出すための装置であって、中枠Bの右下部に装備される。
【0031】
中枠Bは、上縁をなす上枠部材B1と、下縁をなし打球発射装置G等が設置された下枠部材B2と、左側縁をなす左枠部材B3と、右側縁をなす右枠部材B4とから構成されて、これら上下左右の枠部材B1〜B4を組み付けた際に、全体が外枠Aの開口に整合する矩形枠状に形成される。そして、上下左右の枠部材B1〜B4を組み付けた際に開口する開口部分が、遊技盤1を設置する遊技盤保持部B5として機能する。ここで、中枠Bは、外枠Aの左上端部及び左下端部に設けられた支軸を介して枢支され、左側端部を中心として中枠Bを回転させることで外枠Aに対して中枠Bを開閉し得るようになっている。
【0032】
遊技盤1は、ベニヤ板、透明合成樹脂板などによって形成される板部材1aの中央開口に裏面側から臨む様に液晶表示装置LCDが取り付けられ、この液晶表示装置LCDを取り囲む様に、板部材1aの前面側からセンター役物13が取り付けられている。液晶表示装置LCDは、遊技盤1の裏側に取り付けられる裏ユニット3に対して、可動体役物や電飾装置などと共に組み付けられ、板部材1aの背面側から組み付けられる。なお、センター役物13と液晶表示装置LCDの間には、こうした可動体役物が液晶表示装置LCDの前面へ出没するためのスペースを確保する様に、液晶表示装置LCDは、板部材1aの背面よりも後方に控えた状態の前後方向位置に組み付けられる。
【0033】
遊技盤1は、図2(A)に示す様に、障害釘11や風車12が植設された遊技領域10の中央にセンター役物13が取り付けられ、センター役物13の中央直下に始動入賞口14が備えられる。また、この始動入賞口14の右斜め下方に特別入賞口15が設置され、センター役物13の右側には特別入賞口15の開放時に右側から遊技球を入賞させるための右打ち通路16が備えられた構成となっている。遊技盤1には、この他、誘導レール17、普通入賞口18、アウト口19等も設置されている。
【0034】
センター役物13は、図2(A)に示す様に、リング状に形成された合成樹脂製の枠状装飾体30と、可動体や電飾部材が備えられた演出用装飾体40とからなる。枠状装飾体30においては、図2(C),図4に示す様に、平板状のベース部31の縁に沿う様に背面側に後方に伸びる周壁部32が形成され、周壁部32の外側にダボ33が突設形成され、ダボ33で位置決めしつつ周壁部32を板部材1aの開口に前面側から嵌り込ませる様にして取り付けられる。一方、演出用装飾体40は、液晶表示装置LCDの前面側に位置する様に裏ユニット3の収納空間内に取り付けられ、板部材1aの背面側に位置する様に組み付けられる。
【0035】
図2(B),(C),図3に示す様に、枠状装飾体30の前面側にも、ベース部31の開口の内側にほぼ沿う様にして前方へ伸びる区画壁34が形成されている。この区画壁34の内側が液晶表示装置LCDの表示領域となる。区画壁34の中央下部には、上面で遊技球を上下左右へと揺れ動かす様に転動させるステージ35が形成され、このステージ35へと遊技球を誘導するワープ通路36が、区画壁34の右側中央部からステージ35の右端部へと屈曲しつつ連続する様に形成されている。
【0036】
また、枠状装飾体30のベース部31の右側中央辺りにゲート41が備えられると共に、このゲート41の上方を出口62とする様に、区画壁34の右側に沿って流下通路右壁37が突設されている。このベース部31から前方へ突設された二条の垂直壁(流下通路右壁37及び区画壁34)と、これらの前面を覆う様に取り付けられる流下通路前側部材38とによって、周囲を閉鎖された筒状の右側流下通路60が構成されている。
【0037】
右側流下通路60は、上端の入口61から進入した遊技球を左右方向に揺れ動かしながら落下させる構造となっていて、下端の出口62の近傍で遊技球を右方向から左方向へ向かって大きく方向転換させた後、再び右方向へと方向転換させて出口62へと至らせる方向転換用の突出部63を備えている。この突出部63には、切断刃50が、刃先を左に向けて組み付けられる。
【0038】
出口62の下方のゲート41には球検知センサ42が設置されていて、遊技球が通過することで所定の抽選処理を実行し、始動入賞口14の下部の第2始動入賞口(いわゆる「電チュー」)43の開閉等が制御される構成となっている。
【0039】
右側流下通路60の突出部63は、図3図6に示す様に、ベース部31側から立設された流下通路右壁37に形成された奥側突出部63aと、流下通路前側部材38の背面側に形成された前側突出部63bとが前後に当接する様に重なり合うことによって形成される。これら奥側突出部63a、前側突出部63bには、切断刃50を嵌め込むための奥側切断刃挟持部64a,64bが形成されている。
【0040】
ここで、流下通路右壁37は、図2図3に示す様に、突出部63の形成される部分は半分の高さとなっていて、ここに流下通路前側部材38の外側壁38aが嵌り込む様に組み付けられて流下通路60を完成する。流下通路前側部材38には、ネジ止め用の4本の孔明き支柱38bが背面側に突設されている。また、適宜個数の減速用突条38cも流下方向に交差する様に適宜の間隔で突設されている。なお、符号38dは、飾り壁である。
【0041】
図3図4図7(B)〜(D)に示す様に、切断刃50は、鋼板51の先端側を上下方向に半分に切り込みを入れ、下半分を正面側へ斜めに持ち上げる様に折り曲げることにより、上側フラット刃先52と下側傾斜刃先53とを備えさせ、これら上側フラット刃先52と下側傾斜刃先53との間にV字状の挟み込み部54を形成したものとなっている。また、鋼板51の後端側は背面側に直角に折り曲げた引っ掛け部55とされ、中央部分に2個の貫通孔56,56が形成されている。
【0042】
図3図4図5(B)〜(E)に示す様に、前側突出部63bの前側切断刃挟持部64bは、切断刃50の鋼板51の正面に当接する平坦部64b1と、切断刃50の貫通孔56,56に嵌り込むボス64b2,64b2とを備えると共に、先端部分には、下側傾斜刃先53を収納可能な凹所64b3を備えたものとなっている。
【0043】
同じく、図3図4図5(B)〜(E)に示す様に、奥側突出部63aの奥側切断刃挟持部64aは、切断刃50の鋼板51の正面に当接する平坦部64a1と、前側突出部63bの前側切断刃挟持部64bに形成されたボス64b2,64b2が嵌り込む嵌合孔64a2,64a2と、引っ掛け部55が引っ掛かる引っ掛け面64a3とによって構成されている。
【0044】
図5(A)に示す様に、突出部63は、出口62を垂直上方からは見えなくする様に大きく左方向へと突出している。また、図5(B)〜(E)に示す様に、突出部側面側の内壁面(流下通路の側面)63a2,63b2は、凹所64b3を谷溝65とする様に、左右から角度θ1で傾斜されている。なお、突出部上面側の内壁面(流下通路の底面)63a1,63b1も、図6(D)に示す様に、谷溝65に向かって角度θ2の下り傾斜とされている。
【0045】
この結果、図8に示す様に、糸付きゴトの糸90は、突出部63に当接し、突出部上面側の内壁面63a1,63b1及び突出部側面側の内壁面63a2,63b2の傾斜により、図8(A),(B)に点線で示した状態であったものも実線で示した状態へと誘導され、谷溝65へと誘導され、谷溝65内に収まっている切断刃50の上側フラット刃先52と下側傾斜刃先53との間にV字状の挟み込み部54に嵌り込む。
【0046】
糸付きゴトの不正をしようとする者は、この状態で糸90を引っ張ったり緩めたり操作する。この操作により、糸90はV字状の挟み込み部54で擦られ、やがて切断される。糸90は前後から挟まれた状態であり、切断刃50が鋼製であることから、不正行為を実行しようとしたときに、迅速かつ的確に糸90を切断をすることができる。
【0047】
一方、不正行為に無関係な遊技球は、流下通路60に沿って流下するだけであり、谷溝65は遊技球の直径に比べて十分に小さく、切断刃50の刃先が飛び出さない様に収納されているから、この様な正常な遊技球の動きに制約や乱れを生じさせることがない。
【0048】
また、流下通路60を、後側と前側に分け、特に、突出部63は半割の構成としたから、突出部63に対して切断刃50を挟み込む様にして容易に組み立てることができ、糸ゴト不正を防止するための機構が、流下通路の組立と同時に完成するから、組立工数を増加させることもない。
【0049】
この様に、本実施例によれば、不正行為と関係のない遊技球の動きに制約や乱れを加えることなく、動力源を必要とせずに糸付きゴトによる不正行為を防止することができる。
【0050】
以上、発明を実施するための最良の形態としての一実施例を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、センター役物13の右側ではなく、左側のワープ通路36内の突出部に切断刃を忍ばせた溝部を形成して、ワープ通路を経由して糸ゴトを行う不正への対応に適用しても構わない。また、突出部63を出口62を垂直上方から隠すほど飛び出せていなくてもよく、少なくとも出口の中心の垂線を越える様な突出状態としておけば足りる。切断刃50は鋼板を折り曲げた構造のものに限らず、鋳造品としたり、素材もアルミ合金等に変えて構わない。実施例では、突出部63を、流下通路右壁37と外側壁38aの半割の内壁面を利用して形成していることにより、谷溝65へと糸90を誘導するための内壁面の傾斜角度を種々に形成することが容易であるから、谷溝65を突出部上面側の内壁面63a1,63b1にも形成し、切断刃50を、その刃先を横向きではなく、斜め上方に向けたり、あるいは上向きにした状態に設置しても構わない。また、切断刃50の刃先は、二分割に限らず、三分割以上にして一つおきに折曲したもので構成するなどとしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明はパチンコ機に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
P・・・パチンコ機、A・・・外枠、B・・・中枠、B1・・・上枠部材、B2・・・下枠部材、B3・・・左枠部材、B4・・・右枠部材、B5・・・遊技盤保持部、D・・・前枠、E・・・上の球受け皿、F・・・下の球受け皿、G・・・打球発射装置、LCD・・・液晶表示装置。
1・・・遊技盤、1a・・・板部材、3・・・裏ユニット、
11・・・障害釘、12・・・風車、13・・・センター役物、14・・・始動入賞口、15・・・特別入賞口、16・・・右打ち通路、17・・・誘導レール、18・・・普通入賞口、19・・・アウト口、30・・・枠状装飾体、31・・・ベース部、32・・・周壁部、33・・・ダボ、34・・・区画壁、35・・・ステージ、36・・・ワープ通路、37・・・流下通路右壁、38・・・流下通路前側部材、38a・・・外側壁、38b・・・孔明き支柱、38c・・・減速用突条、38d・・・飾り壁、40・・・演出用装飾体、41・・・ゲート、42・・・球検知センサ、43・・・第2始動入賞口、50・・・切断刃、51・・・鋼板、52・・・上側フラット刃先、53・・・下側傾斜刃先、54・・・挟み込み部、55・・・引っ掛け部、56・・・貫通孔、60・・・右側流下通路、61・・・入口、62・・・出口、63・・・突出部、63a・・・奥側突出部、63a1・・・突出部上面側の内壁面、63a2・・・突出部側面側の内壁面、63b・・・前側突出部、63b1・・・突出部上面側の内壁面、63b2・・・突出部側面側の内壁面、64a・・・奥側切断刃挟持部、64a1・・・平坦部、64a2・・・嵌合孔、64a3・・・引っ掛け面、64b・・・前切断刃挟持部、64b1・・・平坦部、64b2・・・ボス、64b3・・・凹所、65・・・谷溝、90・・・糸。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8