特許第6182442号(P6182442)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182442
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】蓄冷機能付きエバポレータ
(51)【国際特許分類】
   F25B 39/02 20060101AFI20170807BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20170807BHJP
   F28F 1/30 20060101ALI20170807BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20170807BHJP
   F28D 20/00 20060101ALN20170807BHJP
【FI】
   F25B39/02 C
   F28D1/053 A
   F28F1/30 A
   B60H1/32 613C
   !F28D20/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-251710(P2013-251710)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-108480(P2015-108480A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】512025676
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン・サーマル・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 理
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−137199(JP,A)
【文献】 特開2012−154595(JP,A)
【文献】 特開2013−231532(JP,A)
【文献】 特開2013−18299(JP,A)
【文献】 特開2011−001034(JP,A)
【文献】 特開2010−052478(JP,A)
【文献】 特開2010−139225(JP,A)
【文献】 特開2013−217573(JP,A)
【文献】 実開昭49−040851(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0211283(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/02
B60H 1/32
F28D 1/053
F28F 1/30 − 1/32
F28D 20/00 − 20/02
DWPI(Thomson Innovation)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向を向いた複数の扁平状冷媒流通管が、冷媒流通管の厚み方向に間隔をおいて並列状に配置されており、隣り合う冷媒流通管どうしの間に間隙が形成され、全間隙のうちの一部でかつ複数の間隙に蓄冷材が封入された蓄冷材容器が配置され、残りの間隙にアウターフィンが配置されて冷媒流通管に接合されており、蓄冷材容器が互いに接合された2枚の金属製容器構成板からなり、両容器構成板のうち少なくともいずれか一方の容器構成板を外方に膨出させることによって、蓄冷材容器に蓄冷材封入部が設けられている蓄冷機能付きエバポレータであって、
蓄冷材容器が、隣り合う冷媒流通管どうしの間に形成された間隙の全高のうちの下部を除いた部分に配置されて冷媒流通管に接触させられ、蓄冷材容器が配置された間隙における蓄冷材容器よりも下方の部分に、通風部を有する凝縮水貯留部材が配置されて冷媒流通管に接触させられ、蓄冷材容器および凝縮水貯留部材が配置された間隙における凝縮水貯留部材が存在する部分の通気抵抗が、アウターフィンが配置された間隙の通気抵抗よりも大きくなっている蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項2】
蓄冷材容器を構成する2枚の容器構成板の下端に連なって、凝縮水貯留部材を冷媒流通管の並び方向両側から挟む挟着部が下方突出状に設けられ、両容器構成板の挟着部が冷媒流通管に接しており、凝縮水貯留部材が、両容器構成板の挟着部によって挟着されている請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項3】
蓄冷材容器を構成する2枚の容器構成板における蓄冷材封入部を形成している部分の外面に、上端から下端に向かって漸次低くなりかつ上下両端が開口した複数の凝縮水排水路が間隔をおいて形成され、各凝縮水排水路が、容器構成板に設けられて外方に膨出した2つの凸部の間に形成され、挟着部が、容器構成板の下端に連結壁を介して設けられ、連結壁に複数の凝縮水通過穴が貫通状に形成され、凝縮水貯留部材に複数の凝縮水通過部が形成され、2枚の容器構成板の外面に設けられた凸部の突出端、および挟着部が冷媒流通管にろう付されている請求項2記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項4】
両容器構成板に一体に設けられた挟着部における冷媒流通管にろう付された部分に、貫通穴が形成されている請求項3記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項5】
アウターフィンが、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲートフィンからなり、凝縮水貯留部材が、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲートフィン状であり、凝縮水貯留部材における隣り合う波頂部と波底部との間隔であるピッチが、アウターフィンにおける隣り合う波頂部と波底部との間隔であるピッチよりも小さくなっており、凝縮水貯留部材の連結部に、貫通穴からなる複数の凝縮水通過部が形成されている請求項1〜4のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項6】
凝縮水貯留部材における隣り合う波頂部と波底部との間隔であるピッチが1〜2mmである請求項5記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項7】
アウターフィンが、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲートフィンからなり、凝縮水貯留部材が、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部からなる波状帯板が、通風方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成され、かつ通風方向に隣り合う2つの波状帯板の波頂部どうしおよび波底部どうしが上下方向に位置ずれしたオフセットフィン状であり、凝縮水貯留部材における隣り合う波状帯板の波頂部どうしの間隔であるピッチが、アウターフィンにおける隣り合う波頂部と波底部との間隔であるピッチよりも小さくなっており、凝縮水貯留部材の隣り合う波状帯板間に凝縮水通過部が形成されている請求項1〜4のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項8】
凝縮水貯留部材における波状帯板の隣り合う波頂部と波底部との間隔であるピッチが1〜2mmである請求項7記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンに用いられる蓄冷機能付きエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図2の上下、左右を上下、左右というものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0004】
しかしながら、通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、エバポレータに蓄冷機能を付与し、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、エバポレータに蓄えられた冷熱を放冷して車室内を冷却することが考えられている。
【0006】
蓄冷機能付きエバポレータとして、本出願人は、先に、長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向を向いた複数の扁平状冷媒流通管が、冷媒流通管の厚み方向に間隔をおいて並列状に配置されており、隣り合う冷媒流通管どうしの間に間隙が形成され、全間隙のうち一部の複数の間隙に潜熱蓄冷材が封入された蓄冷材容器が配置され、残りの間隙にアウターフィンが配置されて冷媒流通管に接合されており、蓄冷材容器が互いに接合された2枚の金属製容器構成板からなり、両容器構成板のうち少なくともいずれか一方の容器構成板を外方に膨出させることによって、蓄冷材容器に蓄冷材封入部が設けられ、蓄冷材容器が、隣り合う冷媒流通管どうしの間に形成された間隙の全高のうちアウターフィンの上下方向の長さの全長を占める部分に配置されている蓄冷機能付きエバポレータを提案した(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータの場合、蓄冷材容器が、隣り合う冷媒流通管どうしの間に形成された間隙の全高のうちアウターフィンの上下方向の長さの全長を占める部分に配置されているので、使用する蓄冷材の量が多くなってコストが高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−42167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、上記問題を解決し、コストを低減しうる蓄冷機能付きエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0011】
1)長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向を向いた複数の扁平状冷媒流通管が、冷媒流通管の厚み方向に間隔をおいて並列状に配置されており、隣り合う冷媒流通管どうしの間に間隙が形成され、全間隙のうちの一部でかつ複数の間隙に蓄冷材が封入された蓄冷材容器が配置され、残りの間隙にアウターフィンが配置されて冷媒流通管に接合されており、蓄冷材容器が互いに接合された2枚の金属製容器構成板からなり、両容器構成板のうち少なくともいずれか一方の容器構成板を外方に膨出させることによって、蓄冷材容器に蓄冷材封入部が設けられている蓄冷機能付きエバポレータであって、
蓄冷材容器が、隣り合う冷媒流通管どうしの間に形成された間隙の全高のうちの下部を除いた部分に配置されて冷媒流通管に接触させられ、蓄冷材容器が配置された間隙における蓄冷材容器よりも下方の部分に、通風部を有する凝縮水貯留部材が配置されて冷媒流通管に接触させられ、蓄冷材容器および凝縮水貯留部材が配置された間隙における凝縮水貯留部材が存在する部分の通気抵抗が、アウターフィンが配置された間隙の通気抵抗よりも大きくなっている蓄冷機能付きエバポレータ。
【0012】
2)蓄冷材容器を構成する2枚の容器構成板の下端に連なって、凝縮水貯留部材を冷媒流通管の並び方向両側から挟む挟着部が下方突出状に設けられ、両容器構成板の挟着部が冷媒流通管に接しており、凝縮水貯留部材が、両容器構成板の挟着部によって挟着されている上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0013】
3)蓄冷材容器を構成する2枚の容器構成板における蓄冷材封入部を形成している部分の外面に、上端から下端に向かって漸次低くなりかつ上下両端が開口した複数の凝縮水排水路が間隔をおいて形成され、各凝縮水排水路が、容器構成板に設けられて外方に膨出した2つの凸部の間に形成され、挟着部が、容器構成板の下端に連結壁を介して設けられ、連結壁に複数の凝縮水通過穴が貫通状に形成され、凝縮水貯留部材に複数の凝縮水通過部が形成され、2枚の容器構成板の外面に設けられた凸部の突出端、および挟着部が冷媒流通管にろう付されている上記2)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0014】
4)両容器構成板に一体に設けられた挟着部における冷媒流通管にろう付された部分に、貫通穴が形成されている上記3)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0015】
5)アウターフィンが、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲートフィンからなり、凝縮水貯留部材が、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲートフィン状であり、凝縮水貯留部材における隣り合う波頂部と波底部との間隔であるピッチが、アウターフィンにおける隣り合う波頂部と波底部との間隔であるピッチよりも小さくなっており、凝縮水貯留部材の連結部に、貫通穴からなる複数の凝縮水通過部が形成されている上記1)〜4)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0016】
6)凝縮水貯留部材における隣り合う波頂部と波底部との間隔であるピッチが1〜2mmである上記5)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0017】
7)アウターフィンが、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲートフィンからなり、凝縮水貯留部材が、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部からなる波状帯板が、通風方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成され、かつ通風方向に隣り合う2つの波状帯板の波頂部どうしおよび波底部どうしが上下方向に位置ずれしたオフセットフィン状であり、凝縮水貯留部材における隣り合う波状帯板の波頂部どうしの間隔であるピッチが、アウターフィンにおける隣り合う波頂部と波底部との間隔であるピッチよりも小さくなっており、凝縮水貯留部材の隣り合う波状帯板間に凝縮水通過部が形成されている上記1)〜4)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0018】
8)凝縮水貯留部材における波状帯板の隣り合う波頂部と波底部との間隔であるピッチが1〜2mmである上記7)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の効果】
【0019】
上記1)〜8)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器が、隣り合う冷媒流通管どうしの間に形成された間隙の全高のうちの下部を除いた部分に配置されて冷媒流通管に接触させられているので、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータに比べて使用する蓄冷材の量を少なくすることが可能になり、コストを低減することができる。また、蓄冷材容器が配置された間隙における蓄冷材容器よりも下方の部分に、通風部を有する凝縮水貯留部材が配置されて冷媒流通管に接触させられ、蓄冷材容器および凝縮水貯留部材が配置された間隙における凝縮水貯留部材が存在する部分の通気抵抗が、アウターフィンが配置された間隙の通気抵抗よりも大きくなっているので、圧縮機の作動時に、凝縮水貯留部材の表面に凝縮水が発生し、当該凝縮水が凝縮水貯留部材に保持される。そして、エンジンが停止して圧縮機が停止した際には、凝縮水貯留部材に保持されている凝縮水の顕熱としての冷熱や、凝縮水貯留部材において凝縮水が凍結していた場合には、凍結した凝縮水の潜熱としての冷熱および溶融した後の凝縮水の顕熱としての冷熱が、凝縮水貯留部材の通風部を流れる空気に放冷される。さらに、エンジンが停止して圧縮機が停止した際には、上述した凝縮水の顕熱としての冷熱や、凝縮水貯留部材において凝縮水が凍結していた場合には、凍結した凝縮水の潜熱としての冷熱および溶融した後の凝縮水の顕熱としての冷熱が、凝縮水貯留部材が接触している冷媒流通管を通ってアウターフィンに伝えられ、アウターフィンからアウターフィンが配置されている間隙を流れる空気に放冷される。したがって、放冷時間を延長することが可能になり、冷房能力の急激な低下を抑制することができる。なお、凝縮水貯留部材に保持されていた凝縮水は、凝縮水通過部を通って下方に排水される。
【0020】
上記2)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、製造時における冷媒流通管、、アウターフィン、容器構成板および凝縮水貯留部材のろう付前の仮組の作業性が向上する。
【0021】
上記3)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器を構成する容器構成板の外面に発生した凝縮水が、表面張力によって2つの凸部に沿うようにして凝縮水排水路内に溜まった場合、溜まった凝縮水の量が多くなると、溜まった凝縮水に作用する重力が表面張力よりも大きくなり、凝縮水排水路内を一挙に流下するとともに、容器構成板の連結部の凝縮水通過穴を通って凝縮水貯留部材に至り、凝縮水貯留部材に保持される。したがって、凝縮水貯留部材には、表面に発生した凝縮水に加えて、蓄冷材容器の容器構成板の外面に発生した凝縮水も保持されることになり、圧縮機の停止時の放冷時間を効果的に延長することができる。
【0022】
上記4)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、冷媒流通管と両容器構成板の挟着部とのろう付面積が、貫通穴が形成されていない場合に比較して小さくなる。したがって、冷媒流通管と容器構成板の挟着部との間に、両者が全面にわたって完全にろう付されないことにより生じる隙間も、貫通穴が形成されていない場合に比較して小さくなり、当該隙間内に侵入する凝縮水の量も少なくなる。その結果、冷媒流通管と容器構成板の挟着部との間に多くの凝縮水が滞留すること、および当該凝縮水が凍結することが抑制され、容器構成板の挟着部の冷媒流通管からの剥がれを長期間にわたって防止することができる。
【0023】
上記5)〜8)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、凝縮水貯留部材の構成を簡単なものにすることができるとともに、凝縮水貯留部材に効果的に凝縮水を貯留することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示す一部を省略した斜視図である。
図2】この発明の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示す通風方向下流側から見た正面図である。
図3図1および図2の蓄冷機能付きエバポレータに用いられる蓄冷材容器を示す左側面図である。
図4図3のA−A線拡大断面図である。
図5図1および図2の蓄冷機能付きエバポレータに用いられる蓄冷材容器を示す分解斜視図である。
図6図2の要部拡大図である。
図7図1および図2の蓄冷機能付きエバポレータに用いられる凝縮水貯留部材の変形例を示す図5相当の図である。
図8図1および図2の蓄冷機能付きエバポレータに用いられる凝縮水貯留部材の変形例を示す図6相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
以下の説明において、通風方向下流側(図1図3に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとする。したがって、前方から後方を見た際の上下、左右が図2の上下、左右となる。
【0027】
また、全図面を通じて同一物および同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0028】
さらに、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0029】
図1および図2はこの発明による蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示し、図3図6はその要部の構成を示す。
【0030】
図1および図2において、蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、長手方向を左右方向に向けた状態で上下方向に間隔をおいて配置されたアルミニウム製第1ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えている。
【0031】
第1ヘッダタンク(2)は、前側(通風方向下流側)に位置する風下側上ヘッダ部(5)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ風下側上ヘッダ部(5)に一体化された風上側上ヘッダ部(6)とを備えている。風下側上ヘッダ部(5)の左端部に冷媒入口(7)が設けられ、風上側上ヘッダ部(6)の左端部に冷媒出口(8)が設けられている。第2ヘッダタンク(3)は、前側に位置する風下側下ヘッダ部(9)と、後側に位置しかつ風下側下ヘッダ部(9)に一体化された風上側下ヘッダ部(11)とを備えている。
【0032】
熱交換コア部(4)には、長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向(前後方向)を向いた複数のアルミニウム押出形材製扁平状冷媒流通管(12)が、左右方向(冷媒流通管(12)の厚み方向)に間隔をおいて並列状に配置されている。ここでは、前後方向に間隔をおいて配置された2つの冷媒流通管(12)からなる複数の組(13)が左右方向に間隔をおいて配置されており、前後の冷媒流通管(12)よりなる組(13)の隣り合うものどうしの間に間隙(14A)(14B)が形成されている。前側の冷媒流通管(12)の上端部は風下側上ヘッダ部(5)に接続されるとともに、同下端部は風下側下ヘッダ部(9)に接続されている。また、後側の冷媒流通管(12)の上端部は風上側上ヘッダ部(6)に接続されるとともに、同下端部は風上側下ヘッダ部(11)に接続されている。
【0033】
熱交換コア部(4)における全間隙(14A)(14B)のうち一部の複数の間隙(14A)でかつ隣接していない間隙(14A)に、蓄冷材(図示略)が封入されたアルミニウム製蓄冷材容器(15)とアルミニウム製凝縮水貯留部材(16)とが、前後両冷媒流通管(12)に跨るとともに両冷媒流通管(12)に接触するように配置されている。蓄冷材容器(15)は、間隙(14A)の全高のうちの下部を除いた部分(後述するアウターフィン(17)の上下方向の長さの全長のうちの下部を除いた部分)に配置され、蓄冷材容器(15)の下方の部分に凝縮水貯留部材(16)が配置されている。
【0034】
熱交換コア部(4)における全間隙(14A)(14B)のうち残りの間隙(14B)に、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、かつ前後方向にのびる波頂部(17a)、前後方向にのびる波底部(17b)、および波頂部(17a)と波底部(17b)とを連結する連結部(17c)よりなるコルゲート状のアウターフィン(17)が、前後両冷媒流通管(12)に跨るように配置されて間隙(14B)を形成する左右両側の組(13)を構成する前後両冷媒流通管(12)にろう付されている(図6参照)。アウターフィン(17)の連結部(17c)には、左右方向にのびる複数のルーバ(図示略)が前後方向に並んで設けられている。ここでは、蓄冷材容器(15)が配置された間隙(14A)の左右両側に隣り合う間隙(14B)にはそれぞれアウターフィン(17)が配置されており、左右方向に隣り合う蓄冷材容器(15)間には複数、ここでは2つのアウターフィン(17)が位置している。また、左右両端の冷媒流通管(12)の組(13)の外側にも両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなるアウターフィン(17)が配置されて前後両冷媒流通管(12)にろう付され、さらに左右両端のアウターフィン(17)の外側にアルミニウム製サイドプレート(18)が配置されてアウターフィン(17)にろう付されている。
【0035】
この実施形態のエバポレータ(1)の場合、冷媒は、冷媒入口(7)を通ってエバポレータ(1)の風下側上ヘッダ部(5)内に入り、全冷媒流通管(12)を通って風上側上ヘッダ部(6)の冷媒出口(8)から流出する。
【0036】
図3図5に示すように、蓄冷材容器(15)は、長手方向を上下方向に向けるとともに幅方向を前後方向に向けた扁平中空状であり、前側冷媒流通管(12)の前側縁よりも後方に位置し、かつ各組(13)の前後2つの冷媒流通管(12)にろう付された容器本体部(19)と、容器本体部(19)の前側縁部(風下側縁部)の一部分、ここでは上部のみに連なるとともに前側冷媒流通管(12)の前側縁よりも前方(通風方向外側)に張り出すように設けられた外方張り出し部(21)とよりなる。蓄冷材容器(15)の容器本体部(19)および外方張り出し部(21)の内部どうしは通じさせられており、これによって蓄冷材容器(15)内に中空状の蓄冷材封入部(15a)が形成されている。外方張り出し部(21)は、容器本体部(19)の前側縁部の上端から一定の長さにわたって設けられており、外方張り出し部(21)の上下方向の長さは容器本体部(19)の上下方向の長さよりも短くなっている。
【0037】
蓄冷材容器(15)の容器本体部(19)の左右両側壁(19a)外面に、それぞれ上端から下端に向かって漸次低くなるとともに、上下両端が開口した複数の凝縮水排水路(22)が間隔をおいて形成されている。各凝縮水排水路(22)は、蓄冷材容器(15)の容器本体部(19)の左右両側壁(19a)に設けられて外方に膨出した2つの凸部(23)の間に形成されており、隣り合う2つの凝縮水排水路(22)は、両凝縮水排水路(22)間に位置する凸部(23)を共有している。すべての凸部(23)の膨出頂壁は平坦であるとともに同一平面上に位置しており、凸部(23)の平坦な膨出頂壁が冷媒流通管(12)に接触した状態でろう付されている。容器本体部(19)の左側壁(19a)の凝縮水排水路(22)および凸部(23)と、右側壁(19a)の凝縮水排水路(22)および凸部(23)とは、一部分が重複するが全体に重複しないように通風方向に若干ずれて設けられている。
【0038】
蓄冷材容器(15)の容器本体部(19)内には、オフセット状のアルミニウム製インナーフィン(24)が、上下方向のほぼ全体にわたって配置されている。インナーフィン(24)は、上下方向にのびる波頂部(25a)、上下方向にのびる波底部(25b)、および波頂部(25a)と波底部(25b)とを連結する連結部(25c)からなる波状帯板(25)が、上下方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成され、上下方向に隣り合う2つの波状帯板(25)の波頂部(25a)どうしおよび波底部(25b)どうしが前後方向に位置ずれしているものである。各波状帯板(25)における波頂部(25a)、波底部(25b)および連結部(25c)の上下方向の長さは等しくなっている。インナーフィン(24)は、蓄冷材容器(15)の容器本体部(19)の左右両側壁(19a)内面、すなわち容器本体部(19)の左右両側壁(19a)の凸部(23)が形成されていない部分にろう付されている。凸部(23)の膨出頂壁は、冷媒流通管(12)に接触するが、インナーフィン(24)には接触しないので、蓄冷材容器(15)の容器本体部(19)の各側壁(19a)に、インナーフィン(24)に接触する接触部分と、インナーフィン(24)に接触しない非接触部分とが設けられていることになる。
【0039】
蓄冷材容器(15)の外方張り出し部(21)には、左右両方向に膨らみ、かつ左右方向の寸法が容器本体部(19)の左右方向の寸法よりも大きくなっている膨張部(21a)が設けられており、膨張部(21a)がアウターフィン(17)よりも通風方向外側(通風方向下流側)に位置している。
【0040】
蓄冷材容器(15)内へ充填される蓄冷材としては、凝固点が5〜10℃程度に調整されたパラフィン系潜熱蓄冷材が用いられる。具体的には、ペンタデカン、テトラデカンなどが用いられる。蓄冷材容器(15)の蓄冷材封入部(15a)内の内容積に対する封入された蓄冷材の体積の比率である蓄冷材充填率が70〜90%であることが好ましい。ここで、インナーフィン(24)の上端は、蓄冷材容器(15)内に封入された蓄冷材の上端よりも上方に位置していることが好ましい。この場合、蓄冷材に冷熱が蓄えられる蓄冷時、および蓄冷材に蓄えられた冷熱を放出する放冷時のいずれにおいても、常に蓄冷材がインナーフィン(24)に接触する。
【0041】
蓄冷材は、外方張り出し部(21)の上端部に設けられた蓄冷材注入部材(26)を通して蓄冷材容器(15)内に注入されている。蓄冷材注入部材(26)は、外方張り出し部(21)の上端部に固定されて外方張り出し部(21)の内部を外部に通じさせる円筒状である。注入部材(22)の上部は、蓄冷材の蓄冷材容器(15)内への注入後に圧潰されて閉鎖されている。
【0042】
蓄冷材容器(15)の強度は、通常の使用環境温度範囲、たとえば−40〜90℃の範囲内においては、液相状態の蓄冷材が密度変化するとともに、蓄冷材容器(15)内に残存している空気が熱膨張することにより内圧が上昇したとしても、破損しないような強度に設計されている。
【0043】
凝縮水貯留部材(16)は、蓄冷材容器(15)の下端に、左右方向(冷媒流通管の並び方向)に間隔をおいて下方突出状に一体に設けられた1対の板状挟着部(27)によって挟着されて挟着部(27)にろう付されている。両挟着部(27)は、間隙(14A)の左右両側の組(13)を構成する前後両冷媒流通管(12)に跨った状態で、前後両冷媒流通管(12)にろう付されており、これによって凝縮水貯留部材(16)が間隙(14A)の左右両側の組(13)を構成する前後両冷媒流通管(12)に熱的に接触させられている。挟着部(27)の全体のうち少なくとも冷媒流通管(12)にろう付された部分に、複数の貫通穴(28)が千鳥配置状に形成されている。両挟着部(27)は、蓄冷材容器(15)の下端に水平状の連結壁(29)を介して設けられており、連結壁(29)に、複数の貫通状凝縮水通過穴(31)が前後方向に間隔をおいて形成されている。
【0044】
凝縮水貯留部材(16)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートによって形成され、かつ前後方向にのびる波頂部(16a)、前後方向にのびる波底部(16b)、および波頂部(16a)と波底部(16b)とを連結する連結部(16c)よりなるコルゲートフィン状であり、波頂部(16a)および波底部(16b)が挟着部(27)にろう付されている。そして、凝縮水貯留部材(16)の隣り合う連結部(16c)どうしの間の空隙が通風部となっている。また、凝縮水貯留部材(16)の連結部(16c)には、左右方向にのびるルーバ(図示略)が前後方向に並んで複数形成されており、ルーバを形成することにより生じる貫通穴が、凝縮水貯留部材(16)の複数の凝縮水通過部となっている。なお、凝縮水貯留部材(16)の連結部(16c)には、ルーバに代えて、貫通穴のみを形成し、これにより凝縮水貯留部材(16)に複数の凝縮水通過部が形成されていてもよい。
【0045】
図6に示すように、コルゲートフィン状の凝縮水貯留部材(16)における隣り合う波頂部(16a)と波底部(16b)との間隔であるピッチ(P1)は、アウターフィン(17)における隣り合う波頂部(17a)と波底部(17b)との間隔であるピッチ(P2)よりも小さくなっており、これにより蓄冷材容器(15)および凝縮水貯留部材(16)が配置された間隙(14A)における凝縮水貯留部材(16)が存在する部分の通気抵抗が、アウターフィン(17)が配置された間隙(14B)の通気抵抗よりも大きくなっている。また、コルゲートフィンからなる凝縮水貯留部材(16)の隣り合う波頂部(16a)と波底部(16b)との間隔であるピッチ(P1)は1〜2mmであることが好ましい。
【0046】
蓄冷材容器(15)および挟着部(27)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工が施されることにより形成され、かつ互いにろう付された2枚の略縦長方形状アルミニウム板(32)(33)(金属製容器構成板)よりなり、蓄冷材容器に、両アルミニウム板(32)(33)のうち少なくともいずれか一方、ここでは両アルミニウム板(32)(33)を外方に膨出されることによって蓄冷材封入部(15a)が設けられている。各アルミニウム板(32)(33)に、容器本体部(19)および外方張り出し部(21)を形成する膨出高さの等しい第1膨出部(32a)(33a)と、第1膨出部(32a)(33a)における容器本体部(19)を形成する部分の膨出頂壁に設けられかつ凸部(23)となる第2膨出部(32b)(33b)と、第1膨出部(32a)(33a)における外方張り出し部(21)を形成する部分の膨出頂壁に設けられかつ膨張部(21a)を形成する第3膨出部(32c)(33c)と、第3膨出部(32c)(33c)の上端に連なって上方に延びるように設けられかつ第3膨出部(32c)(33c)内を上方に通じさせる半円筒状の第4膨出部(32d)(33d)とが設けられている。
【0047】
両アルミニウム板(32)(33)における第1膨出部(32a)(33a)の下端よりも下方に、左右方向外方に突出した水平状の連結壁(29)が一体に設けられ、連結壁(29)の突出端に連なって挟着部(27)が一体に設けられている。
【0048】
そして、2枚のアルミニウム板(32)(33)を、インナーフィン(24)を間に挟んで第1膨出部(32a)(33a)の開口どうしが対向するとともに、第4膨出部(32d)(33d)間に注入部材(26)の下部に設けられた小径部(26a)が挟まれ、さらに両挟着部(27)間に凝縮水貯留部材(16)が挟まれるように組み合わせ、この状態で両アルミニウム板(32)(33)における第1膨出部(32a)(33a)の周囲の部分どうし、および両アルミニウム板(32)(33)と注入部材(22)とをろう付することによって、蓄冷材容器(15)が形成されるとともに、両挟着部(27)と凝縮水貯留部材(16)とがろう付されている。蓄冷材は、前記ろう付後に、上部が圧潰される前の注入部材(26)内を通して蓄冷材容器(15)の蓄冷材封入部(15a)内に注入され、オフセット状インナーフィン(24)の上下方向に隣り合う2つの波状帯板(25)間に形成された隙間を通って蓄冷材封入部(15a)内の全体に行き渡る。蓄冷材の注入後に、注入部材(26)の上部が圧潰されて封止される。
【0049】
上述した蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、車両のエンジンを駆動源とする圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、コンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)とともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両、たとえば自動車に搭載される。圧縮機が作動している場合には、圧縮機で圧縮されてコンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(7)を通って蓄冷機能付きエバポレータ(1)の風下側上ヘッダ部(5)内に入り、全冷媒流通管(12)を通って風上側上ヘッダ部(6)の冷媒出口(8)から流出する。そして、冷媒が冷媒流通管(12)内を流れる間に、間隙(14A)の下部および間隙(14B)を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0050】
圧縮機の作動時には、冷媒流通管(12)内を流れる冷媒の有する冷熱が、蓄冷材容器(15)の容器本体部(19)の左右両側壁(19a)における冷媒流通管(12)にろう付されている凸部(23)の膨出頂壁を経て直接蓄冷材容器(15)内の蓄冷材に伝わるとともに、凸部(23)の膨出頂壁から左右両側壁(19a)における冷媒流通管(12)にろう付されていない部分およびインナーフィン(24)を経て蓄冷材容器(15)内の蓄冷材の全体に伝わって蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0051】
また、圧縮機の作動時には、蓄冷材容器(15)表面に凝縮水が発生し、当該凝縮水は凝縮水排水路(22)内に入り、表面張力により凝縮水排水路(22)の両側の凸部(23)に沿うようにして凝縮水排水路(22)内に溜まる。溜まった凝縮水の量が多くなると、溜まった凝縮水に作用する重力が表面張力よりも大きくなって、凝縮水排水路(22)内を流下し、連結壁(29)の凝縮水通過穴(31)を通って凝縮水貯留部材(16)に至る。また、冷媒流通管(12)内を流れる冷媒により冷却されることによって、凝縮水貯留部材(16)の表面にも凝縮水が発生する。蓄冷材容器(15)から流下して凝縮水貯留部材(16)に至った凝縮水、および凝縮水貯留部材(16)の表面に発生した凝縮水は、表面張力によって、波頂部(16a)および波底部(16b)のうちの冷媒流通管(12)にろう付された部分の屈曲内側において隣り合う連結部(16c)どうしの間に溜まる。溜まった凝縮水の量が多くなると、重力が表面張力に打ち勝って、凝縮水が凝縮水通過部を通って下方に排水される。
【0052】
圧縮機の停止時には、蓄冷材容器(15)内の蓄冷材に蓄えられた冷熱が、蓄冷材容器(15)の容器本体部(19)の左右両側壁(19a)における冷媒流通管(12)にろう付されている凸部(23)の膨出頂壁を経て直接冷媒流通管(12)に伝わるとともに、インナーフィン(24)から左右両側壁(19a)における冷媒流通管(12)にろう付されていない部分および凸部(23)の膨出頂壁を経て冷媒流通管(12)に伝わり、さらに冷媒流通管(12)を通過して当該冷媒流通管(12)における蓄冷材容器(15)とは反対側にろう付されているアウターフィン(17)に伝わる。アウターフィン(17)に伝わった冷熱は、蓄冷材容器(15)が配置されている間隙(14A)の両隣の間隙(14B)を通過する空気に伝えられる。また、蓄冷材容器(15)内の蓄冷材に蓄えられた冷熱が、挟着部(27)および凝縮水貯留部材(16)を経て両挟着部(27)間を通過する空気に伝えられるとともに、挟着部(27)を経て冷媒流通管(12)に伝わり、さらに冷媒流通管(12)を通過して当該冷媒流通管(12)における蓄冷材容器(15)とは反対側にろう付されているアウターフィン(17)に伝わる。アウターフィン(17)に伝わった冷熱は、蓄冷材容器(15)が配置されている間隙(14A)の両隣の間隙(14B)を通過する空気に伝えられる。したがって、エバポレータ(1)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0053】
しかも、圧縮機が停止した直後には、上述したようにして凝縮水貯留部材(16)に蓄えられていた凝縮水の顕熱としての冷熱、および凝縮水貯留部材(16)において凝縮水が凍結していた場合には、凍結した凝縮水の潜熱としての冷熱および溶融した後の凝縮水の顕熱としての冷熱が、挟着部(27)を経て左右両側の冷媒流通管(12)を通過して当該冷媒流通管(12)における蓄冷材容器(15)とは反対側にろう付されているアウターフィン(17)に伝えられ、アウターフィン(17)から間隙(14B)を流れる空気に放冷される。したがって、放冷時間を延長することが可能になり、冷房能力の急激な低下を抑制することができる。
【0054】
図7および図8はこの発明による蓄冷機能付きエバポレータに用いられる凝縮水貯留部材の変形例を示す。
【0055】
図7および図8に示す凝縮水貯留部材(40)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートで形成され、かつ前後方向(通風方向方向)にのびる波頂部(41a)、前後方向にのびる波底部(41b)、および波頂部(41a)と波底部(41b)とを連結する連結部(41c)からなる波状帯板(41)が、前後方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成され、かつ前後方向に隣り合う2つの波状帯板(41)の波頂部(41a)どうしおよび波底部(41b)どうしが上下方向に位置ずれしたオフセットフィン状であり、凝縮水貯留部材(40)の波頂部(41a)および波底部(41b)が挟着部(27)にろう付されている。そして、各波状帯板(41)の隣り合う連結部(41c)間が通風部となっている。また、凝縮水貯留部材(40)の上下に隣り合う波状帯板(41)の波頂部(41a)どうしおよび波底部(41b)どうしの間に形成される空隙が凝縮水通過部となっており、これにより凝縮水貯留部材(40)に複数の凝縮水通過部が形成されている。
【0056】
図8に示すように、オフセットフィンからなる凝縮水貯留部材(40)における上下方向に隣り合う波状帯板(41)の波頂部(41a)どうしおよび波底部(41b)どうしの間隔であるピッチ(P3)は、アウターフィン(17)における隣り合う波頂部(17a)と波底部(17b)との間隔であるピッチ(P2)よりも小さくなっており、これにより蓄冷材容器(15)および凝縮水貯留部材(40)が配置された間隙(14A)における凝縮水貯留部材(40)が存在する部分の通気抵抗が、アウターフィン(17)が配置された間隙(14B)の通気抵抗よりも大きくなっている。また、オフセットフィン状の凝縮水貯留部材(40)における波状帯板(41)の上下方向に隣り合う波頂部(41a)と波底部(41b)との間隔であるピッチ(P3)は1〜2mmであることが好ましい。
【0057】
図7および図8に示す凝縮水貯留部材(40)を有する蓄冷機能付きエバポレータ(1)において、圧縮機の作動時における凝縮水貯留部材(40)への凝縮水の貯留、および圧縮機の停止時における凝縮水の冷熱の有効活用は、上記実施形態と動ようににして行われる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明による蓄冷機能付きエバポレータは、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0059】
(1):蓄冷機能付きエバポレータ
(12):冷媒流通管
(13):管組
(14A)(14B):間隙
(15):蓄冷材容器
(15a):蓄冷材封入部
(16):凝縮水貯留部材
(16a):波頂部
(16b):波底部
(16c):連結部
(17):アウターフィン
(17a):波頂部
(17b):波底部
(22):凝縮水排水路
(23):凸部
(27):挟着部
(28):貫通穴
(29):連結壁
(31):凝縮水通過穴
(32)(33):アルミニウム板(容器構成板)
(40):凝縮水貯留部材
(41):波状帯板
(41a):波頂部
(41b):波底部
(41c):連結部
(P1)(P2)(P3):ピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8