特許第6182454号(P6182454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182454
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】回転角度検出器
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20170807BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01D5/20 110H
   G01B7/30 M
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-268599(P2013-268599)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-125039(P2015-125039A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 亮
(72)【発明者】
【氏名】成田 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】染谷 秀明
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−145529(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0115408(US,A1)
【文献】 特開2002−188938(JP,A)
【文献】 特開平9−159403(JP,A)
【文献】 実開昭51−12261(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00− 5/252
G01D 5/39− 5/62
G01B 7/00− 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の角度変化に応じて回転する磁性体よりなるロータと、このロータを囲むようにして設けられた磁性体よりなるステータとを備え、前記ロータの回転によって生じる前記ステータとの間のギャップの変化に応じて前記検出対象の回転角度を検出する回転角度検出器において、
前記ステータは、
前記ロータを囲む環状部を有し、
前記環状部の内周部に前記ロータの中心に向かう3個以上の凸部が設けられ、
前記凸部の1つに励磁用巻線が巻回されており、
前記ロータは、
前記励磁用巻線が巻回されている前記ステータの凸部に対向する周縁の一部が前記ロータの中心点を中心とする曲率の等しい円弧状に形成されている
ことを特徴とする回転角度検出器。
【請求項2】
請求項1に記載された回転角度検出器において、
前記曲率の等しい円弧状の円弧は、
その中心角の大きさが前記回転角度検出器の最大測定角度である
ことを特徴とする回転角度検出器。
【請求項3】
請求項2に記載された回転角度検出器において、
前記回転角度検出器の最大測定角度は120゜以下である
ことを特徴とする回転角度検出器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載された回転角度検出器において、
前記ステータは、
前記ロータの全周を囲む環状部を有し、
前記環状部の内周部に前記ロータの中心に向かう第1の凸部が設けられ、
前記環状部の内周部の前記第1の凸部を挟む一方および他方に前記ロータの中心に向かう第2および第3の凸部が設けられ、
前記第1の凸部に励磁用巻線が巻回され、
前記第2および第3の凸部にそれぞれ検出用巻線が巻回されている
ことを特徴とする回転角度検出器。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載された回転角度検出器において、
前記ステータは、
前記ロータの周囲をその一部に欠損を設けて囲む環状部を有し、
前記環状部の一方の周端部と他方の周端部との間の内周部に前記ロータの中心に向かう第1の凸部が設けられ、
前記環状部の一方の周端部および他方の周端部の内周部に前記ロータの中心に向かう第2および第3の凸部が設けられ、
前記第1の凸部に励磁用巻線が巻回され、
前記第2および第3の凸部にそれぞれ検出用巻線が巻回されている
ことを特徴とする回転角度検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロータの回転によって生じるステータとの間のギャップの変化に応じて検出対象の回転角度を検出する回転角度検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、電動バルブアクチュエータの回転角度の検出には、ポテンショメータが用いられている。一般的なポテンショメータの構造は、抵抗体、シャフト、電極およびそれらを包むケース、カバーなどで構成され、構成がシンプルなため、安価であり、内部に電子回路を有さないため、ノイズに強いという特徴がある。しかし、ポテンショメータは、抵抗体と電極が常に接触、摺動しており、経年劣化でひげ状のノイズが発生するという欠点がある。
【0003】
これに対して、レゾルバと呼ばれる回転角度検出器が存在する(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に示されたレゾルバでは、図10に示すように、円環状のステータ10の内周にティース(凸部)11が周方向に配列されて形成されており、このステータ10内に非真円形状のロータ20が位置し、ロータ20は回転中心Oを中心に回転する。そして、ティース11は90°間隔で4つ形成されており、これらのティース11に図示されていない励磁用巻線と検出用巻線とが巻回される。
【0004】
ステータ10及びロータ20は磁性体よりなり、ロータ20は巻線を持たない構造となっている。そして、ステータ10とロータ20との間のギャップパーミアンスがロータ20の回転に伴って正弦波状に変化するようにロータ20の形状が構成され、これによりロータ20の360°内の任意の回転角度を検出可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−164435号公報
【特許文献2】特開平10−111145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したレゾルバは、360゜の範囲で出力信号を正弦波状に変化させるために、ロータの形状は全周に渡って特殊な曲線により形成されており、励磁用巻線が巻回されたステータのティースとロータとの間隔を一定に保つことができない。このために、励磁アンプは特許文献2に示されるような、励磁電流や励磁電圧を一定に保つ回路が組み込まれており、高価となる。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、励磁電流や励磁電圧を一定に保つ回路を組み込む必要のない安価な回転角度検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために本発明は、検出対象の角度変化に応じて回転する磁性体よりなるロータと、このロータを囲むようにして設けられた磁性体よりなるステータとを備え、ロータの回転によって生じるステータとの間のギャップの変化に応じて検出対象の回転角度を検出する回転角度検出器において、ステータは、ロータを囲む環状部を有し、環状部の内周部にロータの中心に向かう3個以上の凸部が設けられ、凸部の1つに励磁用巻線が巻回されており、ロータは、励磁用巻線が巻回されているステータの凸部に対向する周縁の一部がロータの中心点を中心とする曲率の等しい円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明において、励磁用巻線が巻回されているステータの凸部に対向するロータの周縁の一部は曲率の等しい円弧状に形成されているので、この曲率の等しい円弧状の周縁の範囲内でロータを回転させた場合、励磁用巻線が巻回されているステータの凸部とロータの周縁との間のギャップは一定に保たれる。これにより、本発明では、励磁電流や励磁電圧を一定に保つ工夫を行うことなく、ロータの回転によって生じるギャップの変化に応じた検出対象の回転角度の検出が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、励磁用巻線が巻回されているステータの凸部に対向するロータの周縁の一部を曲率の等しい円弧状に形成したので、励磁電流や励磁電圧を一定に保つ回路の組み込みを不要として、コストダウンを図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る回転角度検出器の一実施の形態の要部を示す平面図である。
図2】この回転角度検出器に用いるロータの平面図および断面図である。
図3】このロータの外形(周縁)の曲率について説明する図である。
図4】ロータの回転角度と出力電圧V1およびV2との関係を例示する図である。
図5】励磁用巻線および検出用巻線を空芯コイルとしてティースに差し込むようにした例を示す斜視図である。
図6】ステータの環状部を「コ」字状とした例を示す図である。
図7】ステータの環状部を円環とした例を示す図である。
図8】曲率を等しくするロータの周縁の角度を小さくした例を示す図である。
図9】ステータの環状部を全周が繋がった四角形の環とした例を示す図である。
図10】特許文献1に示されたレゾルバの要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る回転角度検出器の一実施の形態の要部を示す平面図である。
【0013】
図1において、1は検出対象の角度変化に応じて回転する磁性体よりなるロータ(センサディスク)、2はこのロータ1を囲むようにして設けられた磁性体よりなるステータ(ピックアップ)である。
【0014】
ロータ1は、その中央部に検出対象の回転軸(図示せず)と嵌合する嵌合孔1aが設けられており、点O1を中心として検出対象の角度変化に応じて回転する。図2(a)にロータ1の平面図を、図2(b)に図2(a)におけるI−I線断面図を示す。
【0015】
また、ロータ1の周面は、120゜毎に曲率が変わっている。図3にロータ1の周面の曲率について説明する図を示す。図3に示すように、ロータ1に対して点O1を原点とするx軸とy軸とを定め、x軸から半時計方向への角度をθとした場合、−90゜≦θ≦30゜までの120゜の範囲T1ではロータ1の周面(以下、周縁T1と呼ぶ)が半径r1=(1140−2θ)/120の曲線1とされ、30゜≦θ≦150゜までの120゜の範囲T2ではロータ1の周面(以下、周縁T2と呼ぶ)が半径r2=9の曲線2とされ、150゜≦θ≦270゜までの範囲T3ではロータ1の周面(以下、周縁T3と呼ぶ)が半径r3=(780+2θ)/120の曲線3とされている。なお、半径r1,r2,r3は何れもその単位はmmであり、1/r1,1/r2,1/r3が周縁T1,T2,T3の曲率となる。
【0016】
一方、ステータ2は、ロータ1の周囲をその一部に欠損を設けて囲む円弧状の環状部2−0を有している。すなわち、ステータ2の環状部2−0を円環とした場合、環状部2−0の一方の周端部2aと他方の周端部2bとは繋がるが、この繋がりがなく欠損とされている。本実施の形態では、環状部2−0の点O1を中心とする円弧の角度(中心角)が240゜とされており、周端部2aと周端部2bとの間に中心角を120゜とする円弧状の欠損が設けられている。
【0017】
また、ステータ2の環状部2−0の一方の周端部2aと他方の周端部2bとの間の内周部の中央には、ロータ1の中心O1に向かう第1の凸部がティース2−1として設けられている。また、ステータ2の一方の周端部2aおよび他方の周縁部2bの内周部に、ロータ1の中心O1に向かう第2の凸部および第3の凸部がティース2−2および2−3として設けられている。そして、第1のティース2−1に励磁用巻線3が巻回され、第2のティース2−2および第3のティース2−3に検出用巻線4−1および4−2が巻回されている。
【0018】
この回転角度検出器100において、ロータ1は回転角度0゜の位置において、半径r2の曲線2とされている周縁T2(曲率1/r2の周縁T2)がステータ2の励磁用巻線3が巻回されているティース2−1に対向し、半径r1の曲線1とされている周縁T1(曲率1/r1の周縁T1)が検出用巻線4−1が巻回されているティース2−2に対向し、半径r3の曲線3とされている周縁T3(曲率1/r3の周縁T3)が検出用巻線4−2が巻回されているティース2−3に対向している。
【0019】
この回転角度検出器100において、ロータ1が±60゜の範囲で回転すると、ロータ1の周縁T2の曲率は1/r2で全て等しくされていることから、ステータ2のティース2−1とロータ1の周縁T2との間のギャップを一定に保った状態で、ステータ2のティース2−2とロータ1の周縁T1との間のギャップおよびステータ2のティース2−3とロータ1の周縁T3との間のギャップが変化する。
【0020】
この回転角度検出器100では、励磁用巻線3に励磁電流が供給され、検出用巻線4−1および4−2から出力電圧V1およびV2が得られる。図4にロータ1の回転角度と検出用巻線4−1および4−2から得られる出力電圧V1およびV2との関係を例示する。
【0021】
図1に示した状態は、ロータ1の回転角度が0゜である場合であり、検出用巻線4−1および4−2から得られる出力電圧V1およびV2は等しい。ロータ1を時計方向に回転すると、すなわちロータ1を+60゜の方向へ回転すると、検出用巻線4−1から得られる出力電圧V1が上昇し、検出用巻線4−2から得られる出力電圧V2が下降する。反対に、ロータ1を反時計方向に回転すると、すなわちロータ1を−60゜の方向へ回転すると、検出用巻線4−1から得られる出力電圧V1が下降し、検出用巻線4−2から得られる出力電圧V2が上昇する。
【0022】
このように、検出用巻線4−1および4−2から得られる出力電圧V1およびV2はロータ1の回転中心(0゜)に対して対称となるので、この出力電圧V1とV2との差分をΔV=V1−V2として得ることにより、±60゜の回転角度範囲において検出対象の回転角度に応じたリニアな差電圧ΔVが得られるものとなる。この場合、±60゜の回転角度範囲において、ステータ2のティース2−1とロータ1の周縁T2との間のギャップは一定に保たれることから、励磁電流や励磁電圧を一定に保つ工夫を行う必要はない。
【0023】
ボール弁の弁体を回転操作してボール弁を通過する流体の流量を制御する電動バルブアクチュエータにおいて、ボール弁の実開度を検出する実開度センサとして必要な角度検出範囲は0゜から90゜を越える程度(例えば105°、120°)である。
【0024】
本実施の形態の回転角度検出器100は、このような電動バルブアクチュエータの必要な角度検出範囲に特化することで、ステータ2の環状部2−0の一方の周端部2aと他方の周端部2bとの間に欠損を設け、すなわちステータ2の外周の一部は磁気回路として不要であるために環状部2−0を円環ではなく一部に欠損を有する円弧状とすることにより、ステータ2の外形を小さくし、小型化を図るとともに、構造の簡素化を図っている。また、ロータ1の周縁T2の曲率を等しくして、励磁電流や励磁電圧を一定に保つ回路を不要とし、回転角度検出器100のコストダウンを図っている。また、この回転角度検出器100の小型化により、この回転角度検出器100を実開度センサとして搭載する電動バルブアクチュエータ自体の小型化も図られる。
【0025】
なお、本実施の形態において、励磁用巻線3および検出用巻線4−1,4−2は独立しており、ステータ2のティース2−1および2−2,2−3に直線的に配置されるので、ティース2−1および2−2,2−3に直接巻き付けずに、予め外部で作った空芯コイルを差し込むようにしてもよい。
【0026】
励磁用巻線3および検出用巻線4−1,4−2を空芯コイルとしてティース2−1および2−2,2−3に差し込むようにした例を図5に示す。空芯コイルとして差し込む場合でも、励磁用巻線3および検出用巻線4−1,4−2がティース2−1および2−2,2−3に巻回されていることに変わりはない。
【0027】
また、上述した実施の形態では、ステータ2の環状部2−0を円弧状としたが、図6に示すように「コ」字状としてもよい。「コ」字状とした環状部2−0でも、その一方の周端部2aと他方の周端部2bとの間に欠損が設けられ、この欠損の分だけスタータ2の外形が小さくなり、小型化が図られる。また、ロータ1の周縁T2の曲率を等しくすることにより、±60゜の回転角度範囲において、ステータ2のティース2−1とロータ1の周縁T2との間のギャップが一定に保たれる。
【0028】
また、上述した実施の形態では、ステータ2の環状部2−0を円弧状としたが、図7に環状部2−0’として示すように円環とするようにしてもよい。この場合、ステータ2の外形は大きくなるが、ロータ1の周縁T2の曲率が等しくされているので、±60゜の回転角度範囲において、ステータ2のティース2−1とロータ1の周縁T2との間のギャップが一定に保たれる。したがって、励磁電流や励磁電圧を一定に保つ回路を不要とし、回転角度検出器100のコストダウンを図るという本来の目的は達成される。
【0029】
また、図7に示した例において、ステータ2のティースは3本に限られるものではなく、曲率を等しくするロータ1の周縁T2の角度も120゜に限られるものではない。例えば、計測範囲が小さい場合、図8に示すように、ロータ1の周縁T2の角度を小さくするようにし、ティース2−1に対してティース2−2,2−3の位置を近づけるようにしてもよい。また、図9に環状部2−0”として示すように、円環ではなく、全周が繋がった四角形の環としてもよい。
【0030】
また、本発明に係る静電容量型角度センサは、電動バルブアクチュエータに限らず、適用温度範囲が比較的広く、スペースに余裕がないような装置において広く活用することが可能である。また、角度の検出部の構造はシンプルでギャップは一般的な型物の精度で保障されるため、個体差を少なくすることが可能である。
【0031】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1…ロータ(センサディスク)、1a…嵌合孔、2…ステータ(ピックアップ)、2−0,2−0’,2−0”…環状部、2a…一方の周端部、2b…他方の周端部、2−1,2−2,2−3…ティース(凸部)、3…励磁用巻線、4−1,4−2…検出用巻線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10