特許第6182507号(P6182507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182507
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】2,3−ジハロゲノアニリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/62 20060101AFI20170807BHJP
   C07C 211/52 20060101ALI20170807BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170807BHJP
【FI】
   C07C209/62
   C07C211/52
   !C07B61/00 300
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-112613(P2014-112613)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227293(P2015-227293A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2016年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 芳和
(72)【発明者】
【氏名】北山 卓
【審査官】 笠原 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/103947(WO,A1)
【文献】 特表2005−532325(JP,A)
【文献】 特開昭53−023964(JP,A)
【文献】 特表2014−511347(JP,A)
【文献】 特開2002−308851(JP,A)
【文献】 特開平07−309815(JP,A)
【文献】 特開平04−178355(JP,A)
【文献】 特開昭61−205239(JP,A)
【文献】 特開昭59−013750(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101245020(CN,A)
【文献】 MEDERSKI,W.W. et al,A convenient synthesis of 4-aminoaryl substituted cyclic imides,Tetrahedron Letters,2003年,Vol.44, No.10,p.2133-2136
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 209/62
C07C 211/52
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−(2,3−ジハロゲノ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンの6−ニトロ基を還元して6−アミノ基に転化させて1−(2,3−ジハロゲノ−6−アミノフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンを得、
次いで6−アミノ基を還元し、2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル基を開裂させアミノ基に誘導する工程を含む、2,3−ジハロゲノアニリンの製造方法。
【請求項2】
1,2,3−トリハロゲノ−4−ニトロベンゼン中の3−ハロゲノ基をアミノ基に置換して2,3−ジハロゲノ−6−ニトロアニリンを得、
次いで該アミノ基にコハク酸を作用させることによって1−(2,3−ジハロゲノ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンを得る工程をさらに含む請求項1に記載の2,3−ジハロゲノアニリンの製造方法。
【請求項3】
1,2,3−トリハロゲノ−4−ニトロベンゼンにコハク酸イミドを作用させることによって1−(2,3−ジハロゲノ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンを得る工程をさらに含む請求項1に記載の2,3−ジハロゲノアニリンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料、医薬、農薬などとして有用な化合物の製造原料となる、2,3−ジハロゲノアニリンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,3−ジハロゲノアニリンは、特許文献1〜7などに開示されているように、電子材料、医薬、農薬などとして有用な化合物の製造中間体として有用である。
【0003】
2,3−ジハロゲノアニリンの製造方法が種々提案されている。例えば、特許文献8は、2,3−ジクロロニトロベンゼンを高温高圧の条件にてフッ素化して、3−クロロ−2−フルオロニトロベンゼンを得、これをラネーニッケル触媒の存在下で水素添加することにより3−クロロ−2−フルオロアニリンを得、次いでシーマン反応により2,3−ジフルオロクロロベンゼンに転化させ、最後に銅触媒の存在下、高温高圧条件にてアミノ化反応で2,3−ジフルオロアニリンを製造する方法を開示している。
【0004】
特許文献9は、1,2,3−トリクロロベンゼンを高温高圧下でフッ素化することにより2,3−ジフルオロクロロベンゼンを得、これを銅触媒の存在下に高温高圧条件下にてアミノ化するとことにより2,3−ジフルオロアニリンを得ることができると述べている。特許文献10は、2,3−ジフルオロニトロベンゼンをパラジウム触媒の存在下に高圧条件にて水素添加することにより2,3−ジフルオロアニリンを得ることができると述べている。特許文献11は、2,3−ジフルオロ−4−クロロ−ニトロベンゼンを高圧条件にて水素添加することにより2,3−ジフルオロアニリンを得ることができると述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2011/081174A
【特許文献2】WO2010/091272A
【特許文献3】WO2009/045992A
【特許文献4】WO2009/106750A
【特許文献5】WO2006/129064A
【特許文献6】WO2009/029592A
【特許文献7】特開2010−026024号公報
【特許文献8】CN101245020
【特許文献9】US5091580
【特許文献10】CN101811973
【特許文献11】特開平7−309815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術文献に記載の2,3−ジフルオロアニリンの製造方法は、高温・高圧反応が不可避であり、特殊な製造設備を必要とするため設備費が増大するばかりでなく、安全・安定な操業という観点からも大きな負担を強いられる。
本発明の課題は、2,3−ジハロゲノアニリンを、高温・高圧の反応条件でなくても、高収率にて製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく検討した結果、以下の形態を包含する本発明を見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を包含するものである。
〔1〕1−(2,3−ジハロゲノ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン(式(III))の6−ニトロ基を還元して6−アミノ基に転化させて1−(2,3−ジハロゲノ−6−アミノフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン(式(IV))を得、
次いで前記6−アミノ基を還元し、2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル基を開裂させアミノ基に誘導する工程を含む、2,3−ジハロゲノアニリン(式(VI))の製造方法。
【0009】
〔2〕1,2,3−トリハロゲノ−4−ニトロベンゼン(式(I))中の3−ハロゲノ基をアミノ基に置換して2,3−ジハロゲノ−6−ニトロアニリン(式(II))を得、次いで該アミノ基にコハク酸を作用させることによって1−(2,3−ジハロゲノ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン(式(III))を得る工程をさらに含む〔1〕に記載の2,3−ジハロゲノアニリンの製造方法。
〔3〕1,2,3−トリハロゲノ−4−ニトロベンゼン(式(I))にコハク酸イミドを作用させることによって1−(2,3−ジハロゲノ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン(式(III))を得る工程をさらに含む〔1〕に記載の2,3−ジハロゲノアニリンの製造方法。
【0010】
【化1】
(式(I)中、Xはそれぞれ独立にハロゲノ基を表わす。)
【0011】
【化2】
(式(II)中、Xはそれぞれ独立にハロゲノ基を表わす。)
【0012】
【化3】
(式(III)中、Xはそれぞれ独立にハロゲノ基を表わす。)
【0013】
【化4】
(式(IV)中、Xはそれぞれ独立にハロゲノ基を表わす。)
【0014】
【化5】
(式(V)中、Xはそれぞれ独立にハロゲノ基を表わす。)
【0015】
【化6】
(式(VI)中、Xはそれぞれ独立にハロゲノ基を表わす。)
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る製造方法によれば、2,3−ジハロゲノアニリンを、高温・高圧の反応条件でなくても、高収率にて製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る2,3−ジハロゲノアニリンの製造方法は、1−(2,3−ジハロゲノ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンの6−ニトロ基を還元して6−アミノ基に転化させて1−(2,3−ジハロゲノ−6−アミノフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンを得、次いで前記6−アミノ基を還元し、2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル基を開裂させアミノ基に誘導する工程を含むものである。
【0018】
1−(2,3−ジハロゲノ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンは、その入手方法において特に制限されない。例えば、1,2,3−トリハロゲノ−4−ニトロベンゼン中の3−ハロゲノ基をアミノ基に置換して2,3−ジハロゲノ−6−ニトロアニリンを得、次いで該アミノ基にコハク酸を作用させることによって製造(式(i)参照)してもよいし、1,2,3−トリハロゲノ−4−ニトロベンゼンにコハク酸イミドを作用させることによって製造(式(ii)参照)してもよい。
【0019】
【化7】
【0020】
(i)の方法における、3−ハロゲノ基のアミノ基への置換反応は、溶媒中にて1,2,3−トリハロゲノ−4−ニトロベンゼンにアンモニアを接触させることによって行うことができる。この置換反応後、溶媒を留去し、得られる固形物を濾過にて分離し、水で洗浄し、乾燥させることによって2,3−ジハロゲノ−6−ニトロアニリンを得ることができる。この置換反応は、通常110〜180℃、好ましくは140〜160℃で行う。
【0021】
2,3−ジハロゲノ−6−ニトロアニリンにコハク酸を添加して還流すると脱水反応が進行する。この反応完了後、溶媒を留去すると、固形分が析出するので、該析出物を酢酸エチルなどの有機溶媒で洗浄し、乾燥させることによって1−(2,3−ジフルオロ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンを得ることができる。
【0022】
【化8】
【0023】
一方、(ii)の方法においては、1,2,3−トリハロゲノ−4−ニトロベンゼンにコハク酸イミドを添加し攪拌することによってハロゲノ基が2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル基に置換される。生成物を酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出し、洗浄、溶媒留去することによって1−(2,3−ジフルオロ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンを得ることができる。この置換反応は、通常5〜50℃、好ましくは20〜30℃で行う。
【0024】
なお、1,2,3−トリハロゲノ−4−ニトロベンゼンは、有機合成化学における周知の反応によって製造することができる。例えば、1,2,3−トリフルオロベンゼンを公知の方法でニトロ化することによって、1,2,3−トリフルオロ−4−ニトロベンゼンを得ることが出来る。
【0025】
【化9】
【0026】
1−(2,3−ジハロゲノ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンの6−ニトロ基の還元反応(式(iii)参照)は、公知の方法で行うことができる。6−ニトロ基の還元反応は、例えば、白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケルなどの触媒の存在下に、水素を接触させたり、ギ酸アンモニウムを接触させたりすることによって行うことができる。触媒の使用量は1−(2,3−ジハロゲノ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンに対して、金属換算で、好ましくは0.01〜2.5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。溶媒は還元反応において不活性な溶媒であれば制限されない。例えばメチルアルコール、エチルアルコール等の低級アルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ヘキサン、トルエン等の炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;水;またはこれらの混合溶媒;等が用いられる。これらの溶媒に、酢酸や塩酸など酸類を添加しても良い。
【0027】
また、6−ニトロ基の還元反応は、酸性中で、鉄、亜鉛、スズなどの金属粉末やスズ(II)塩を作用させたり、亜ジチオン酸ナトリウムを還元剤として用いたりして行うことができる。この還元反応によって6−ニトロ基が6−アミノ基に転化し、1−(2,3−ジハロゲノ−6−アミノフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンが得られる。
【0028】
【化10】
【0029】
【化11】
【0030】
次いで、本発明に係る製造方法においては、6−アミノ基を還元し、2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル基を開裂させアミノ基に誘導する。本発明においては、6−アミノ基を還元する反応と2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル基を開裂させアミノ基に誘導する反応とを逐次で行ってもよい(式(iv)参照)し、6−アミノ基を還元する反応と2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル基を開裂させアミノ基に誘導する反応とを同時に行ってもよい(式(v)参照)。6−アミノ基を還元する反応としては、例えば、銅(I)化合物を利用する反応を挙げることができる。
【0031】
本発明の製造方法によって得られる2,3−ジハロゲノアニリンは、農園芸用殺菌剤薬剤である、2−[2−フルオロ−6−(7、8−ジフルオロ−2−メチルキノリン−3−イルオキシ)フェニル]プロパン−2−オール、および2−[2−フルオロ−6−(7、8−ジフルオロキノリン−3−イルオキシ)フェニル]プロパン−2−オールなどの製造中間体として有用である。
【実施例】
【0032】
実施例を示して、本発明をより詳細に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1 2,3−ジフルオロアニリンの製造
(第1工程)2,3−ジフルオロ−6−ニトロアニリンの製造
【0034】
【化12】
1,2,3−トリフルオロ−4−ニトロベンゼン8.85g(50mmol)をエタノール50mlに溶解させた。この溶液に25%アンモニア水13.62g(アンモニア200mmol相当)を添加し、室温で8時間攪拌した。その後、エタノールを留去し、ろ過した。得られた粗結晶を水で洗浄し、次いで減圧乾燥した。2,3−ジフルオロ−6−ニトロアニリン7.94g(45.6mmol、収率91.2%)が得られた。
得られた化合物の1H−NMR分析結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ7.99−7.95(m, 1H),6.54(ddd,J=16.4,8.8Hz,1H),6.23 (br,2H)
【0035】
(第2工程)1−(2,3−ジフルオロ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンの製造
【0036】
【化13】
2,3−ジフルオロ−6−ニトロアニリン76.63g(440mmol)、コハク酸57.12g(484mmol)、およびp−トルエンスルホン酸8.37g(44mmol)をキシレン880mlに溶解させ、ディーン・スターク管を使用し、脱水しながら7時間還流した。冷却後、溶媒を留去した。得られた粗結晶を酢酸エチル/ヘキサン=1/1で洗浄し、減圧乾燥した。1−(2,3−ジフルオロ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン107.82g(420.9mmol、収率95.7%)が得られた。
得られた化合物の1H−NMR分析結果は以下の通りであった。
1H−NMR (400MHz,CDCl3) δ8.12−8.08 (m, 1H), 7.46(ddd,J=16.4,8.4Hz, 1H), 3.02 (s, 4H),
【0037】
(第3工程)1−(6−アミノ−2,3−ジフルオロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンの製造
【0038】
【化14】
1−(2,3−ジフルオロ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン25.61g(100mmol)をメタノール500mlに溶解させた。系内を窒素に置換後、パラジウム/炭素(Pd10%)2.56gを添加した。次いで、系内を水素で置換し、室温で4時間攪拌した。その後、セライトろ過し、溶媒を留去した。1−(6−アミノ−2,3−ジフルオロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン22.5g(99.5mmol、収率99.5%)が得られた。
得られた化合物の1H−NMR分析結果は以下の通りであった。
1H−NMR (400MHz,CDCl3) δ7.07(ddd,J=17.6,8.8Hz, 1H), 6.56−6.52(m, 1H), 3.29 (br, 2H), 2.99 (s, 2H), 2.98 (s, 2H)
【0039】
(第4工程)1−(2,3−ジフルオロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンの製造
【0040】
【化15】
濃硫酸1.2mlに亜硝酸ナトリウム0.21g(3mmol)を加え、5℃に冷却した。この溶液に1−(6−アミノ−2,3−ジフルオロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン0.45g(2mmol)の酢酸4.8mlの懸濁液を加え、0.5時間熟成した。次いで、亜酸化銅1.14g(8mmol)のエタノール8mlの懸濁液を調製し、そこへ熟成した懸濁液を添加し、50℃にて1時間熟成した。室温に冷却後、セライトろ過し、塩化メチレンで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。1−(2,3−ジフルオロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン0.29g(1.37mmol、収率68.7%)が得られた。
得られた化合物の1H−NMR分析結果は以下の通りであった。
1H−NMR (400MHz,CDCl3) δ7.30−7.17 (m, 2H), 7.04−7.00 (m, 1H), 2.96 (s, 4H),
【0041】
(第5工程)2,3−ジフルオロアニリンの製造
【0042】
【化16】
1−(2,3−ジフルオロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン0.42g(2mmol)に6N塩酸4ml加え、1時間還流した。室温に冷却後、得られた生成物を塩化メチレンで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去した。2,3−ジフルオロアニリン0.23g(1.78mmol、収率89.1)が得られた。
得られた化合物の1H−NMR分析結果は以下の通りであった。
1H−NMR (400MHz,CDCl3) δ6.86−6.80 (m, 1H), 6.55−6.49(m, 2H), 3.82 (br, 2H),
【0043】
実施例2
第1工程および第2工程を下記の工程に変えた以外は実施例1と同じ方法で2,3−ジフルオロアニリンを製造した。
【0044】
(工程)1−(2,3−ジフルオロ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンの製造
炭酸カリウム2.76g(20mmol)とコハク酸イミド0.99g(10mmol)にDMF10mlを加えた。この懸濁液に1,2,3−トリフルオロ−4−ニトロベンゼン1.77g(10mmol)を添加し、室温で6時間攪拌した。その後、得られた生成物を酢酸エチルで抽出した。有機相を水で洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去した。得られた結晶1.58gには目的物のオルト体と異性体であるパラ体が94:6の比で含まれていた。1−(2,3−ジフルオロ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン1.58g(6.17mmol、収率61.7%)が得られた。
【0045】
実施例3
第3工程を下記の工程に変えた以外は実施例1と同じ方法で2,3−ジフルオロアニリンを製造した。
(工程)1−(6−アミノ−2,3−ジフルオロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオンの製造
1−(2,3−ジフルオロ−6−ニトロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン1.02g(4mmol)をメタノール20mlに溶解させた。この溶液に酢酸3.60g(60mmol)と鉄1.12g(20mmol)を添加し、室温で3時間攪拌した。その後、鉄0.45g(8mmol)追加し、さらに1.5時間攪拌した。28%苛性ソーダ水で中和後、セライトろ過し、得られた生成物を酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。1−(6−アミノ−2,3−ジフルオロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン0.63g(2.78mmol、収率69.6%)が得られた。
【0046】
実施例4
第4工程および第5工程を下記の工程に変えた以外は実施例1と同じ方法で2,3−ジフルオロアニリンを製造した。
(工程)2,3−ジフルオロアニリンの製造
【0047】
【化17】
濃硫酸3.0mlに亜硝酸ナトリウム0.52g(7.5mmol)を加え、5℃に冷却した。この溶液に1−(6−アミノ−2,3−ジフルオロフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン1.13g(5mmol)の酢酸12mlの懸濁液を加え、0.5時間熟成した。次いで、亜鉛0.65g(10mmol)のエタノール15mlの懸濁液を調製し、そこへ熟成した懸濁液を滴下し、1.5時間還流した。室温に冷却後、セライトろ過し、得られた生成物を塩化メチレンで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。2,3−ジフルオロアニリン0.54g(4.18mmol、収率83.6%)が得られた。