特許第6182519号(P6182519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 象印マホービン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6182519-液体供給装置 図000002
  • 特許6182519-液体供給装置 図000003
  • 特許6182519-液体供給装置 図000004
  • 特許6182519-液体供給装置 図000005
  • 特許6182519-液体供給装置 図000006
  • 特許6182519-液体供給装置 図000007
  • 特許6182519-液体供給装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182519
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】液体供給装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/21 20060101AFI20170807BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A47J27/21 101V
   A47J27/21 101B
   A47J27/21 101N
   A47J27/00 109P
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-231683(P2014-231683)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-93351(P2016-93351A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2016年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】入江 正治
(72)【発明者】
【氏名】大下 直也
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−140588(JP,A)
【文献】 特開2000−081245(JP,A)
【文献】 特開昭60−192179(JP,A)
【文献】 特開2003−180523(JP,A)
【文献】 特開平11−056634(JP,A)
【文献】 特開2004−121456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 27/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一液体と第二液体とを混合して供給する液体供給装置であって、
前記第一液体を溜める第一タンクと、
前記第二液体を溜める第二タンクと、
前記第一タンクから前記第一液体を吐出する第一電動ポンプと、
前記第二タンクから前記第二液体を吐出する第二電動ポンプと、
前記第一タンクから吐出された前記第一液体と、前記第二タンクから吐出された前記第二液体とを混合して外部に吐出する混合部と、
前記第一液体の温度を検出する第一温度検出部と、
前記第二液体の温度を検出する第二温度検出部と、
前記混合部から吐出される混合液体の目標温度を設定する目標温度設定部と、
前記混合液体の目標温度、前記第一液体の温度、及び前記第二液体の温度に応じて、前記第一電動ポンプの吐出流量及び前記第二電動ポンプの吐出流量を変化させる吐出流量制御部と、を備え
前記吐出流量制御部は、前記混合液体の目標温度、前記第一液体の温度、及び前記第二液体の温度に応じて、PWM信号における、電動ポンプに通電させるオン信号の期間と、電動ポンプに通電させないオフ信号の期間とのデューティ比を変化させることにより、前記第一電動ポンプの吐出流量及び前記第二電動ポンプの吐出流量を変化させるPWM制御を実行し、
デューティ比を互いに反転させた第一PWM信号及び第二PWM信号により、それぞれ前記第一電動ポンプ及び前記第二電動ポンプを制御する液体供給装置。
【請求項2】
前記吐出流量制御部は、前記オン信号と前記オフ信号とを互いに反転させた第一PWM信号及び第二PWM信号により、それぞれ前記第一電動ポンプ及び前記第二電動ポンプを制御する請求項に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記第一電動ポンプと前記第二電動ポンプとは、同じ吐出流量特性を有する請求項又はに記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記混合液体の温度を検出する混合温度検出部を更に備え、
前記吐出流量制御部は、前記混合液体の目標温度、前記第一液体の温度、及び前記第二液体の温度に応じて変化させた前記デューティ比を、前記混合液体の温度が前記混合液体の目標温度に近づくように補正する出口温度フィードバック制御を実行する請求項からのいずれか一項に記載の液体供給装置。
【請求項5】
前記吐出流量制御部は、前記第一電動ポンプ及び前記第二電動ポンプの駆動の開始後、所定期間の間、前記混合液体の温度に応じた前記出口温度フィードバック制御を停止する請求項に記載の液体供給装置。
【請求項6】
前記吐出流量制御部は、前記混合液体の目標温度に応じて、前記出口温度フィードバック制御により変更される前記デューティ比を上下限制限する請求項又はに記載の液体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一液体と第二液体とを混合して供給する液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような液体供給装置として、例えば、下記の特許文献1に記載された液体供給装置が既に知られている。特許文献1の技術では、流量センサにより第一液体及び第二液体のそれぞれの吐出流量を検出して、電動ポンプを制御することにより第一液体及び第二液体のそれぞれの吐出流量を調整するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−180523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、第一液体及び第二液体のそれぞれについて流量センサを設け、流量制御をする必要があり、装置が複雑化する虞があった。
【0005】
そこで、第一液体及び第二液体のそれぞれについて流量センサを設けない簡単な構成で混合液体を供給することができる液体供給装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、第一液体と第二液体とを混合して供給する液体供給装置の特徴構成は、前記第一液体を溜める第一タンクと、前記第二液体を溜める第二タンクと、前記第一タンクから前記第一液体を吐出する第一電動ポンプと、前記第二タンクから前記第二液体を吐出する第二電動ポンプと、前記第一タンクから吐出された前記第一液体と前記第二タンクから吐出された前記第二液体とを混合して外部に吐出する混合部と、前記第一液体の温度を検出する第一温度検出部と、前記第二液体の温度を検出する第二温度検出部と、前記混合部から吐出される混合液体の目標温度を設定する目標温度設定部と、前記混合液体の目標温度、前記第一液体の温度、及び前記第二液体の温度に応じて、前記第一電動ポンプの吐出流量及び前記第二電動ポンプの吐出流量を変化させる吐出流量制御部と、を備えた点にある。この特徴構成によれば、混合液体の目標温度、第一液体の温度、及び第二液体の温度に応じて、電動ポンプを駆動することにより、流量センサを設けない簡単な構成で、混合液体の温度を目標温度に制御することができる。
【0007】
本発明に係る液体供給装置の更なる特徴構成は、前記吐出流量制御部は、前記混合液体の目標温度、前記第一液体の温度、及び前記第二液体の温度に応じて、PWM信号における、電動ポンプに通電させるオン信号の期間と、電動ポンプに通電させないオフ信号の期間とのデューティ比を変化させることにより、前記第一電動ポンプの吐出流量及び前記第二電動ポンプの吐出流量を変化させるPWM制御を実行し、デューティ比を互いに反転させた第一PWM信号及び第二PWM信号により、それぞれ前記第一電動ポンプ及び前記第二電動ポンプを制御する点にある。この構成によれば、第一電動ポンプ用の第一デューティ比及び第二電動ポンプ用の第二デューティ比を個別に算出することなく、第一デューティ比及び第二デューティ比のいずれか一方を算出し、それを反転させるだけで、温度制御を行うことができ、処理を簡単化できる。
【0008】
本発明に係る液体供給装置の更なる特徴構成は、前記吐出流量制御部は、前記オン信号と前記オフ信号とを互いに反転させた第一PWM信号及び第二PWM信号により、それぞれ前記第一電動ポンプ及び前記第二電動ポンプを制御する点にある。この構成によれば、一つのPWM信号発生器により生成したPWM信号のオン信号とオフ信号とを互いに反転させるだけで、温度制御を行うことができ、PWM信号発生器を二つ設ける必要がなく、装置を簡単化できる。
【0009】
本発明に係る液体供給装置の更なる特徴構成は、前記第一電動ポンプと前記第二電動ポンプとは、同じ吐出流量特性を有する点にある。この構成によれば、第一デューティ比と第二デューティ比とを互いに反転させるように構成しても、デューティ比の変化により、混合液体の吐出流量が変化しないようにできる。
【0010】
本発明に係る液体供給装置の更なる特徴構成は、前記混合液体の温度を検出する混合温度検出部を更に備え、前記吐出流量制御部は、前記混合液体の目標温度、前記第一液体の温度、及び前記第二液体の温度に応じて変化させた前記デューティ比を、前記混合液体の温度が前記混合液体の目標温度に近づくように補正する出口温度フィードバック制御を実行する点にある。この構成によれば、混合液体の温度制御精度を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る液体供給装置の更なる特徴構成は、前記吐出流量制御部は、前記第一電動ポンプ及び前記第二電動ポンプの駆動の開始後、所定期間の間、前記混合液体の温度に応じた前記出口温度フィードバック制御を停止する点にある。この構成によれば、電動ポンプの駆動開始後、所定期間の間、出口温度フィードバック制御を停止するので、流路に残っていた液体が吐出されるまでの間、誤ったフィードバック補正量が算出されることを抑制でき、混合液体の温度が目標温度をオーバーシュートすることを抑制できる。
【0012】
本発明に係る液体供給装置の更なる特徴構成は、前記吐出流量制御部は、前記混合液体の目標温度に応じて、前記出口温度フィードバック制御により変更される前記デューティ比を上下限制限する点にある。この構成によれば、例えば、混合温度検出部が故障したような場合でも、混合液体の温度が目標温度から大きく逸脱することを防止できる。
【0013】
本発明に係る液体供給装置の更なる特徴構成は、前記吐出流量制御部は、前記混合液体の目標温度が、前記第一液体の温度及び前記第二液体の温度の双方よりも低い場合又は高い場合は、前記目標温度の前記混合液体を吐出できない旨をユーザに報知する点にある。この構成によれば、ユーザに、目標温度の混合液体を吐出できない旨を知らせることができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】液体供給装置の模式的な構成図
図2】吐出流量制御部のブロック図
図3】吐出流量制御部におけるPWM反転駆動部の第一例の回路図
図4】吐出流量制御部におけるPWM反転駆動部の第二例の回路図
図5】PWM信号のタイムチャート
図6】第一電動ポンプ及び第二電動ポンプの吐出流量特性
図7】電動ポンプ駆動開始後の混合液体の温度のタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る液体供給装置1の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、液体供給装置1の模式的な構成図であり、図2は、吐出流量制御部2のブロック図であり、図3及び図4は、吐出流量制御部2におけるPWM反転駆動部8の回路図であり、図5は、第一PWM信号PS1及び第二PWM信号PS2を示すタイムチャートであり、図6は、第一電動ポンプP1及び第二電動ポンプP2の吐出流量特性を示す図である。
【0016】
図1に示すように、液体供給装置1は、第一液体L1と第二液体L2とを混合して供給する装置である。液体供給装置1は、第一液体L1を溜める第一タンクTN1と、第二液体L2を溜める第二タンクTN2と、第一タンクTN1から第一液体L1を吐出する第一電動ポンプP1と、第二タンクTN2から第二液体L2を吐出する第二電動ポンプP2と、第一タンクTN1から吐出された第一液体L1と、第二液体TN2から吐出された第二液体L2とを混合して外部に吐出する混合部MXと、第一液体L1の温度T1を検出する第一温度検出部S1と、第二液体L2の温度T2を検出する第二温度検出部S2と、を備えている。そして、液体供給装置1は、混合部MXから吐出される混合液体Lmxの目標温度Tmxoを設定する目標温度設定部3と、混合液体Lmxの目標温度Tmxo、第一液体L1の温度T1、及び第二液体L2の温度T2に応じて、第一電動ポンプP1の吐出流量Q1及び第二電動ポンプP2の吐出流量Q2を変化させる吐出流量制御部2と、を備えている。
【0017】
第一液体L1の温度T1と、第二液体L2の温度T2とは異なる温度にされる。第一液体L1及び第二液体L2は、それぞれ、どのような種類の液体でもよいが、本例では水とされる。液体供給装置1は、第一タンクTN1に溜められた第一液体L1を加熱又は冷却する第一温度変更部4、及び第二タンクTN2に溜められた第二液体L2を加熱又は冷却する第二温度変更部5の一方又は双方を備えている。本実施形態では、液体供給装置1は、第一温度変更部4及び第二温度変更部5の双方を備えており、第一温度変更部4は加熱器(本例では、電気ヒータ)とされ、第二温度変更部5は冷却器とされている。冷却器には、ペルチェ素子や、蒸気圧縮ヒートポンプなどが用いられる。第一液体L1は、第二液体L2よりも温度が高くされる。
【0018】
第一タンクTN1は、第一液体L1を溜める有底筒状の容器であり、第一電動ポンプP1により第一液体L1が吸引される排出口を備えている。第一タンクTN1には、第一タンクTN1内の第一液体L1の温度T1を検出する第一温度検出部S1が取り付けられている。第一温度検出部S1は、サーミスタ等の温度センサにより構成されている。第一タンクTN1には、第一タンクTN1内の第一液体L1を加熱又は冷却(本例では加熱)する第一温度変更部4が取り付けられている。第一温度変更部4は、後述する温度制御部10により制御されて、第一液体L1の目標温度(例えば、98℃)に近づくように第一液体L1の温度T1を変更する。なお、第一温度変更部4は、サーモスタットにより制御されてもよい。
【0019】
第二タンクTN2は、第二液体L2を溜める有底筒状の容器であり、第二電動ポンプP2により第二液体L2が吸引される排出口を備えている。第二タンクTN2には、第二タンクTN2内の第二液体L2の温度T2を検出する第二温度検出部S2が取り付けられている。第二温度検出部S2は、サーミスタ等の温度センサにより構成されている。第二タンクTN2には、第二タンクTN2内の第二液体L2を加熱又は冷却(本例では冷却)する第二温度変更部5が取り付けられている。第二温度変更部5は、後述する温度制御部10により制御されて、第二液体L2の目標温度(例えば、10℃)に近づくように第二液体L2の温度T2を変更する。なお、第二温度変更部5は、サーモスタットにより制御されてもよい。
【0020】
第一電動ポンプP1は、第一タンクTN1から第一液体L1を吸入して吐出する電動ポンプである。第一電動ポンプP1の吸入口は、流路を介して第一タンクTN1の排出口に接続されており、第一電動ポンプP1の吐出口は、流路を介して混合部MXの第一流路に接続されている。第二電動ポンプP2は、第二タンクTN2から第二液体L2を吸入して吐出する電動ポンプである。第二電動ポンプP2の吸入口は、流路を介して第二タンクTN2の排出口に接続されており、第二電動ポンプP2の吐出口は、流路を介して混合部MXの第二流路に接続されている。第一電動ポンプP1及び第二電動ポンプP2には、供給電力の増加に応じて、吐出流量が増加する電動ポンプが用いられる。本例では、第一電動ポンプP1及び第二電動ポンプP2には、DCモータと、DCモータに駆動されるポンプとを備えるものが用いられている。ポンプには、羽根車などが用いられる。なお、電動ポンプとして、電磁アクチュエータにより駆動される電磁ポンプなど、他の種類の電動ポンプが用いられてもよい。
【0021】
混合部MXは、第一タンクTN1から吐出された第一液体L1と、第二液体TN2から吐出された第二液体L2とを混合して外部に吐出する。混合部MXは、第一電動ポンプP1の吐出口に接続された第一流路と、第二電動ポンプP2の吐出口に接続された第二流路と、外部への吐出口に接続された吐出流路と、を一箇所で接続している。混合部MXから外部に吐出される混合液体Lmxの吐出流量Qmx(以下、混合吐出流量Qmxとも称す)は、第一電動ポンプP1の吐出流量Q1と第二電動ポンプP2の吐出流量Q2とを合計した流量となる(Qmx=Q1+Q2)。本実施形態では、液体供給装置1は、混合液体Lmxの温度Tmxを検出する混合温度検出部Smxを備えている。混合温度検出部Smxは、サーミスタ等の温度センサにより構成されている。混合温度検出部Smxは、混合部MXから外部吐出口に通じる吐出流路に取り付けられている。
【0022】
液体供給装置1は、制御装置9を備えている。制御装置9は、第一電動ポンプP1及び第二電動ポンプP2の吐出流量Q1、Q2を制御する吐出流量制御部2と、混合液体Lmxの目標温度Tmxoを設定する目標温度設定部3と、第一温度変更部4及び第二温度変更部5を制御する温度制御部10と、を備えている。制御装置9は、CPU等の演算処理装置(マイクロコンピュータ)を中核部材として備えると共に、当該演算処理装置からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)やROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置を備えている。そして、制御装置9のROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)や回路等のハードウェアの一方又は双方により、制御装置9の各機能部2、3、10などが構成されている。
【0023】
目標温度設定部3は、操作パネルを介したユーザの操作入力に応じて、混合液体Lmxの目標温度Tmxoを設定するように構成されている。温度制御部10は、液体供給装置1に備えられた第一温度変更部4及び第二温度変更部5の一方又は双方(本例では、双方)を制御する。温度制御部10は、第一温度検出部S1により検出した第一液体L1の温度T1が、第一液体L1の目標温度に近づくように、第一温度変更部4への電力供給量を制御する。第一液体L1の目標温度は、予め設定された温度(例えば、98℃)とされてもよく、操作パネルを介してユーザにより変更可能に構成されてもよい。また、温度制御部10は、第二温度検出部S2により検出した第二液体L2の温度T2が、第二液体L2の目標温度に近づくように、第二温度変更部5への電力供給量を制御する。第二液体L2の目標温度は、予め設定された温度(例えば、10℃)とされてもよく、操作パネルを介してユーザにより変更可能に構成されてもよい。
【0024】
第一液体L1、第二液体L2、及び混合液体Lmxにおける温度及び吐出流量の理論的な関係は次式のようになる。
Q1×T1+Q2×T2=Qmx×Tmx ・・・(1)
Q1+Q2=Qmx ・・・(2)
ここで、Q1は、第一電動ポンプP1の吐出流量(以下、第一吐出流量とも称す)であり、Q2は、第二電動ポンプP2の吐出流量(以下、第二吐出流量とも称す)であり、Qmxは、混合部MXから吐出される吐出流量(以下、混合吐出流量とも称す)であり、T1は、第一液体L1の温度(以下、第一温度とも称す)であり、T2は、第二液体L2の温度(以下、第二温度とも称す)であり、Tmxは、混合液体Lmxの温度(以下、混合温度とも称す)である。
【0025】
式(2)を(1)に代入してQ2又はQ1を消去し、整理すると次式のような、第一吐出流量Q1又は第二吐出流量Q2と、第一温度T1、第二温度T2、混合温度Tmx、及び混合吐出流量Qmxとの関係式を得る。
Q1=Qmx×(Tmx−T2)/(T1−T2)
Q2=Qmx×(Tmx−T1)/(T2−T1) ・・・(3)
式(3)における混合温度Tmxを、混合液体Lmxの目標温度Tmxo(以下、目標混合温度Tmxoとも称す)に置き換えると共に、混合吐出流量Qmxが予め設定されているものとし、混合吐出流量Qmxを定数Kmxに定数化すると次式を得る。
Q1=Kmx×(Tmxo−T2)/(T1−T2)
Q2=Kmx×(Tmxo−T1)/(T2−T1) ・・・(4)
Q2=Kmx−Q1
Kmx=Qmx
式(4)から、第一温度T1、第二温度T2、及び目標混合温度Tmxoに応じて、混合温度Tmxを目標混合温度Tmxoにする、第一吐出流量Q1及び第二吐出流量Q2を求めることができる。
【0026】
そこで、吐出流量制御部2は、フィードフォワード温度制御部12を備えており、フィードフォワード温度制御部12は、混合液体Lmxの目標温度Tmxo、第一液体L1の温度T1、及び第二液体L2の温度T2に応じて、第一吐出流量Q1及び第二吐出流量Q2を変化させるフィードフォワード温度制御を実行するように構成されている。
本実施形態では、フィードフォワード温度制御部12は、目標混合温度Tmxo、第一温度T1、及び第二温度T2に応じて、図5に示すように、PWM信号における、電動ポンプに通電させるオン信号ONの期間Tonと、電動ポンプに通電させないオフ信号OFFの期間Toffとのデューティ比Dtを変化させることにより、第一吐出流量Q1及び第二吐出流量Q2を変化させるPWM制御を実行するように構成されている。
【0027】
PWMは、パルス幅変調であり、Pulse Width Modulationの略称である。PWM信号は、パルス周期Tp(例えば、2000μs)でオンとオフを繰り返す矩形波であり、パルス駆動信号である。PWM制御では、PWM信号のオン期間Tonとオフ期間Toffとのデューティ比Dtを変化させることで、電動ポンプP1、P2への電力供給量を変化させ、吐出流量Q1、Q2を変化させる。デューティ比Dtは、次式のように、オン信号ONの期間Tonを、オン期間Tonとオフ期間Toffとを合計したパルス周期Tpで除算した値になる。
Dt=Ton/(Ton+Toff)×100% ・・・(5)
【0028】
フィードフォワード温度制御部12は、式(4)を用い、第一温度T1、第二温度T2、及び目標混合温度Tmxoに基づいて、第一吐出流量Q1及び第二吐出流量Q2を算出するように構成できる。フィードフォワード温度制御部12は、図6に示すような、第一吐出流量Q1と第一デューティ比Dt1との関係である第一吐出流量特性、及び第二吐出流量Q2と第二デューティ比Dt2との関係である第二吐出流量特性を、マップデータなどにより予め記憶装置に記憶している。そして、フィードフォワード温度制御部12は、第一吐出流量特性を用い、算出した第一吐出流量Q1に基づいて、第一電動ポンプP1用の第一デューティ比Dt1を算出すると共に、第二吐出流量特性を用い、算出した第二吐出流量Q2に基づいて、第二電動ポンプP2用の第二デューティ比Dt2を算出するように構成できる。
【0029】
電動ポンプP1、P2の吐出流量特性が、式(6)に示すような、線形特性を有する場合は、フィードフォワード温度制御部12は、図6に示すような、マップデータを記憶せずに、式(7)に示すように、第一温度T1、第二温度T2、及び目標混合温度Tmxoに基づいて、直接、第一デューティ比Dt1及び第二デューティ比Dt2を算出するように構成できる。
Q1=K1×Dt1
Q2=K2×Dt2 ・・・(6)
ここで、K1は、第一デューティ比D1に対する第一吐出流量Q1の第一流量ゲインであり、K2は、第二デューティ比D2に対する第二吐出流量Q2の第二流量ゲインである。
Dt1=Kmx/K1×(Tmxo−T2)/(T1−T2)
Dt2=Kmx/K2×(Tmxo−T1)/(T2−T1) ・・・(7)
Dt2=Kmx/K2−K1/K2×Dt1
Kmx=Qmx
【0030】
本実施形態では、吐出流量制御部2は、第一吐出流量Q1と第二吐出流量Q2との混合比が変化しても、混合吐出流量Qmxが所望の一定流量になるように、第一吐出流量Q1及び第二吐出流量Q2を変化させるように構成されている。そのため、式(4)における定数Kmxは、第一温度T1、第二温度T2、及び目標混合温度Tmxoに応じて変化しない。なお、混合吐出流量Qmx(定数Kmx)は、操作パネルを介してユーザにより変更可能に構成されてもよい。
【0031】
式(4)からわかるように、第一吐出流量Q1が増加されると、混合吐出流量Qmxが変化しないように、その増加分に応じて、第二吐出流量Q2が減少される。そのため、第一デューティ比Dt1が増加すると、その増加分に応じて、第二デューティ比Dt2が減少される。すなわち、第一デューティ比Dt1と第二デューティ比Dt2とは互いに反転するような関係になる。
【0032】
本実施形態では、吐出流量制御部2は、PWM反転駆動部8を備えており、PWM反転駆動部8は、デューティ比Dtを互いに反転させた第一PWM信号PS1及び第二PWM信号PS2により、それぞれ第一電動ポンプP1及び第二電動ポンプP2を制御するように構成されている。この構成によれば、上記したように、第一デューティ比Dt1及び第二デューティ比Dt2を個別に算出することなく、第一デューティ比Dt1及び第二デューティ比Dt2のいずれか一方を算出し、それを反転させるだけで、温度制御を行うことができ、処理を簡単化できる。
【0033】
例えば、フィードフォワード温度制御部12は、上記した方法により、第二デューティ比Dt2を算出せずに、第一デューティ比Dt1のみを算出し、PWM反転駆動部8は、次式に示すように、第一デューティ比Dt1を反転させて第二デューティ比Dt2を算出するように構成できる。
Dt2=100%−Dt1 ・・・(8)
ここで、第一デューティ比Dt1と第二デューティ比Dt2とが互いに反転するとは、第一デューティ比Dt1と第二デューティ比Dt2との合計が100%になるようにすることである。このように構成すると、混合吐出流量Qmxは、式(2)、式(6)、及び式(8)から次式のようになる。
Qmx=Q1+Q2=K2×100%+(K1−K2)×Dt1 ・・・(9)
【0034】
本実施形態では、第一電動ポンプP1と第二電動ポンプP2とは、同じ吐出流量特性を有している。図6に示すように、第一吐出流量Q1とデューティ比Dtとの関係である第一吐出流量特性と、第二吐出流量Q2とデューティ比Dtとの関係である第二吐出流量特性と、が同じになる。吐出流量特性が互いに同じになると、例えば、式(6)において、第一流量ゲインK1と第二流量ゲインK2とが同じになり(K1=K2)、式(9)は、次式のようになる。
Qmx=K2×100%=K1×100% ・・・(10)
式(10)からわかるように、第一吐出流量特性と第二吐出流量特性とを同じにすると、第一デューティ比Dt1と第二デューティ比Dt2とを互いに反転させるように構成しても、デューティ比Dt1、Dt2の変化により、混合吐出流量Qmxが変化しないようにできる。
【0035】
そして、式(7)は、次式のようになる。
Dt1=100%×(Tmxo−T2)/(T1−T2)
Dt2=100%×(Tmxo−T1)/(T2−T1) ・・・(11)
Dt2=100%−Dt1
フィードフォワード温度制御部12は、式(11)を用い、第一温度T1、第二温度T2、及び目標混合温度Tmxoに基づいて、第一デューティ比Dt1及び第二デューティ比Dt2のいずれか一方を算出し、他方を反転させて算出するように構成できる。例えば、第一温度T1が90℃で、第二温度T2が10℃であり、目標混合温度Tmxoが30℃である場合は、第一デューティ比Dt1は25%に、第二デューティ比Dt2は75%に算出され、目標混合温度Tmxoが80℃である場合は、第一デューティ比Dt1は87.5%に、第二デューティ比Dt2は12.5%に算出される。
【0036】
本実施形態では、PWM反転駆動部8は、図5に示すように、オン信号ONとオフ信号OFFとを互いに反転させた第一PWM信号PS1及び第二PWM信号PS2により、それぞれ第一電動ポンプP1及び第二電動ポンプP2を制御するように構成されている。この構成によれば、一つのPWM信号発生器により生成したPWM信号PSのオン信号ONとオフ信号OFFとを互いに反転させるだけで、温度制御を行うことができ、PWM信号発生器を二つ設ける必要がなく、制御装置9を簡単化できる。オン信号ONとオフ信号OFFとを互いに反転させるとは、図5に示すように、第一PWM信号PS1が、電動ポンプに通電させるオン信号ONになっている間は、第二PWM信号PS2が、電動ポンプに通電させないオフ信号OFFになっており、逆に、第一PWM信号PS1が、電動ポンプに通電させないオフ信号OFFになっている間は、第二PWM信号PS2が、電動ポンプに通電させるオン信号ONになっていることである。
【0037】
例えば、PWM反転駆動部8は、図3又は図4のように構成することができる。
まず、図3のようにPWM反転駆動部8を構成する場合について説明する。PWM反転駆動部8は、一つのPWM信号生成器14を備えている。PWM信号生成器14は、第一デューティ比Dt1及び第二デューティ比Dt2のいずれか一方のデューティ比Dt(本例では、第一デューティ比Dt1)に基づいて、当該デューティ比Dtを有するPWM信号PSを生成する。PWM信号生成器14は、マイクロコンピュータのPWM出力ポートとされている。
【0038】
PWM信号生成器14の出力ポートは、第一抵抗器R1を介して、第一スイッチング素子SW1のベース端子に接続されており、PWM信号PSは、第一PWM信号PS1として第一スイッチング素子SW1のベース端子に入力される。第一スイッチング素子SW1のコレクタ端子は、第一電動ポンプP1を介して直流電源15の正極に接続されており、第一スイッチング素子SW1のエミッタ端子は、直流電源15の負極に接続されている。第一スイッチング素子SW1は、NPN型トランジスタとされており、第一PWM信号PS1がハイ電圧Vh(例えば、3V)になると、第一スイッチング素子SW1がオンになって、第一電動ポンプP1に通電され、第一PWM信号PS1がロー電圧Vl(例えば、0V)になると、第一スイッチング素子SW1がオフになって、第一電動ポンプP1に通電されない。すなわち、第一PWM信号PS1がハイ電圧Vhの場合に、電動ポンプに通電させるオン信号ONとなり、第一PWM信号PS1がロー電圧Vlの場合に、電動ポンプに通電させないオフ信号OFFとなる。
【0039】
PWM信号生成器14の出力ポートは、信号反転回路11及び第二抵抗器R2を介して、第二スイッチング素子SW2のベース端子に接続されている。信号反転回路11は、NOTゲートとされており、信号反転回路11を通ると、PWM信号PSのハイ電圧Vhとロー電圧Vlとが反転する。信号反転回路11を通過した後のPWM信号PSが、第二PWM信号PS2として第二スイッチング素子SW2のベース端子に入力される。第二スイッチング素子SW2のコレクタ端子は、第二電動ポンプP2を介して直流電源15の正極に接続されており、第二スイッチング素子SW2のエミッタ端子は、直流電源15の負極に接続されている。第二スイッチング素子SW2は、第一スイッチング素子SW1と同様のNPN型トランジスタとされており、第二PWM信号PS2がハイ電圧Vhの場合に、オン信号ONとなり、第二PWM信号PS2がロー電圧Vlの場合に、オフ信号OFFとなる。このように、同じ論理型の第一スイッチング素子SW1及び第二スイッチング素子SW2を用いる場合において、信号反転回路11により、第一PWM信号PS1及び第二PWM信号PS2は、ハイ電圧Vhとロー電圧Vlとが互いに反転されており、第一電動ポンプP1の通電/非通電と第二電動ポンプP2の通電/非通電とが互いに反転されている。すなわち、第一PWM信号PS1及び第二PWM信号PS2は、オン信号ONとオフ信号OFFとが互いに反転されている。
【0040】
次に、図4のようにPWM反転駆動部8を構成する場合について説明する。PWM反転駆動部8は、図3と同様に、一つのPWM信号生成器14を備えている。PWM信号生成器14の出力ポートは、第一抵抗器R1を介して、第一スイッチング素子SW1のベース端子に接続されており、PWM信号PSは、第一PWM信号PS1として第一スイッチング素子SW1のベース端子に入力される。第一スイッチング素子SW1のコレクタ端子は、第一電動ポンプP1を介して直流電源15の正極に接続されており、第一スイッチング素子SW1のエミッタ端子は、直流電源15の負極に接続されている。第一スイッチング素子SW1は、NPN型トランジスタとされており、第一PWM信号PS1がハイ電圧Vhの場合に、オン信号ONとなり、第一PWM信号PS1がロー電圧Vlの場合に、オフ信号OFFとなる。
【0041】
PWM信号生成器14の出力ポートは、第二抵抗器R2を介して、第二スイッチング素子SW2のベース端子に接続されている。図3の場合と異なり、PWM信号PSのハイ電圧Vhとロー電圧Vlとが反転されずに、そのまま、第二PWM信号PS2として第二スイッチング素子SW2のベース端子に入力される。第二スイッチング素子SW2のコレクタ端子は、直流電源15の正極に接続されており、第二スイッチング素子SW2のエミッタ端子は、第二電動ポンプP2を介して直流電源15の負極に接続されている。第二スイッチング素子SW2は、第一スイッチング素子SW1と異なるPNP型トランジスタとされており、第二PWM信号PS2がハイ電圧Vhになると、第二スイッチング素子SW2がオフになって、第二電動ポンプP2に通電されず、第二PWM信号PS2がロー電圧Vlになると、第二スイッチング素子SW2がオンになって、第二電動ポンプP2に通電される。すなわち、第二PWM信号PS2がハイ電圧Vhの場合に、電動ポンプに通電させないオフ信号OFFとなり、第二PWM信号PS2がロー電圧Vlの場合に、電動ポンプに通電させるオン信号ONとなる。このように、第一スイッチング素子SW1と第二スイッチング素子SW2とが、PNP型とNPN型とで異なる論理型となっているため、ハイ電圧Vhとロー電圧Vlとが互いに反転されていない第一PWM信号PS1及び第二PWM信号PS2を用いても、第一電動ポンプP1の通電/非通電と第二電動ポンプP2の通電/非通電とが互いに反転される。すなわち、第一PWM信号PS1及び第二PWM信号PS2は、オン信号ONとオフ信号OFFとが互いに反転されている。
【0042】
本実施形態では、吐出流量制御部2は、フィードバック温度制御部13を備えている。フィードバック温度制御部13は、フィードフォワード温度制御部12が目標混合温度Tmxo、第一温度T1、及び第二温度T2に応じて変化させたデューティ比Dtを、混合温度Tmxが目標混合温度Tmxoに近づくように補正する出口温度フィードバック制御を実行する。以下では、図2に示すように、フィードフォワード温度制御部12が算出した、デューティ比を基本デューティ比Dtbsとし、フィードバック温度制御部13により算出された、基本デューティ比Dtbsに対する補正量を、フィードバック補正量ΔDtfbとする。吐出流量制御部2は、基本デューティ比Dtbsに対してフィードバック補正量ΔDtfbを加算して、最終的なデューティ比Dtを算出する。
【0043】
フィードバック温度制御部13は、次式に示すように、目標混合温度Tmxoと混合温度Tmxとの温度偏差ΔTmxを算出し、温度偏差ΔTmxに対して比例演算及び積分演算(PI制御)を行って、フィードバック補正量ΔDtfbを算出するように構成されている。
ΔDtfb=Kp×ΔTmx+∫(Ki×ΔTmx)dt ・・・(12)
ΔTmx=Tmxo−Tmx
ここで、Kpは、比例ゲインであり、Kiは、積分ゲインである。
フィードバック温度制御部13は、フィードバック補正の不感帯を設けるように構成されてもよい。例えば、温度偏差ΔTmxの大きさが、予め設定された閾値以下の場合は、フィードバック補正量ΔDtfbの比例演算値をゼロに設定し、積分演算値を更新しないように構成されてもよい。
【0044】
フィードバック温度制御部13は、目標混合温度Tmxoに応じて、出口温度フィードバック制御により変更されるデューティ比Dtを上下限制限するように構成されている。フィードバック補正量ΔDtfbにより無制限にデューティ比Dtを変更可能とすると、例えば、混合温度検出部Smxが故障している場合に、誤った補正がされ、混合温度Tmxが目標混合温度Tmxoから大きく逸脱するおそれがある。出口温度フィードバック制御により変更されるデューティ比Dtを上下限制限することにより、混合温度検出部Smxが故障した場合でも、混合温度Tmxが目標混合温度Tmxoから大きく逸脱することを防止できる。本実施形態では、フィードバック温度制御部13は、フィードバック補正量ΔDtfbに対して、次式に示すような、上下限制限を加えるように構成されている。
ΔDtmn≦ΔDtfb≦ΔDtmx ・・・(13)
ここで、ΔDtmnは下限制限値であり、ΔDtmxは上限制限値である。
【0045】
フィードバック温度制御部13は、図7のタイムチャートに示すように、時刻TM1で第一電動ポンプP1及び第二電動ポンプP2の駆動を開始した後、所定期間Tstの間(時刻TM1から時刻TM2の間)、混合液体Lmxの温度に応じた出口温度フィードバック制御を停止するように構成されている。電動ポンプの駆動を停止し、混合液体Lmxの吐出を停止している間、第一タンクTN1及び第二タンクTN2と混合部MXの吐出口との間の流路に残っている液体は、雰囲気の温度に近づく。この状態で、電動ポンプの駆動を開始しても、流路に残っていた液体が外部に吐出されるまでの間、混合部MXの吐出口から吐出される混合液体Lmxの温度Tmxは、混合目標温度Tmxoからずれる。この間に、出口温度フィードバック制御を行っても、混合温度Tmxを混合目標温度Tmxoに追従させることができず、誤ったフィードバック補正量が算出される。誤ったフィードバック補正量により、流路に残っていた液体が吐出された後、混合温度Tmxが混合目標温度Tmxoをオーバーシュートし、変動するおそれがあった。上記の構成によれば、電動ポンプの駆動開始後、所定期間Tstの間、出口温度フィードバック制御を停止するので、流路に残っていた液体が吐出されるまでの間、誤ったフィードバック補正量が算出されることを抑制でき、混合温度Tmxが目標混合温度Tmxoをオーバーシュートすることを抑制できる。
【0046】
吐出流量制御部2は、目標混合温度Tmxoが、第一温度T1及び第二温度T2の双方よりも低い場合又は高い場合は、目標混合温度Tmxoの混合液体Lmxを吐出できない旨をユーザに報知する報知部7を備えている。報知部7は、音声により報知してもよいし、表示装置により報知してもよい。また、吐出流量制御部2は、次式に示すように、目標混合温度Tmxoを、第一温度T1及び第二温度T2の間の温度の範囲外に設定しないように構成されてもよい。
T2≦Tmxo≦T1 ・・・(14)
T2≦T1
【0047】
〔別実施形態〕本発明は、前述した実施の形態に限定されるわけでなく、その他種々の変更が可能である。変更の例として、以下に本発明の別実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態においては、液体供給装置1は、第一温度変更部4及び第二温度変更部5の双方を備えており、第一温度変更部4が加熱器とされ、第二温度変更部5が冷却器とされている場合を例に説明した。しかし、液体供給装置1は、第一温度変更部4及び第二温度変更部5の一方を備えていてもよく、第一温度変更部4及び第二温度変更部5の双方が加熱器又は冷却器とされていてもよい。例えば、液体供給装置1は、加熱器とされた第一温度変更部4のみを備えており、第一液体L1が温水とされ、第二液体L2が加熱及び冷却されていない、常温の冷水とされていてもよい。或いは、第一温度変更部4及び第二温度変更部5の双方を備えていなくてもよく、液体供給装置1の外部で温度調整された第一液体L1及び第二液体L2が、それぞれ、第一タンクTN1及び第二タンクTN2に供給されるように構成されてもよい。
【0048】
(2)上記の実施形態においては、液体供給装置1は、混合温度検出部Smxを備えており、出口温度フィードバック制御するように構成されている場合を例に説明した。しかし、液体供給装置1は、混合温度検出部Smxを備えておらず、出口温度フィードバック制御を行わないように構成されてもよい。
【0049】
(3)上記の実施形態においては、吐出流量制御部2は、デューティ比Dtを互いに反転させた第一PWM信号PS1及び第二PWM信号PS2により、電動ポンプP1、P2を制御するように構成されている場合を例に説明した。しかし、吐出流量制御部2は、式(4)や式(7)などに基づいて、個別に第一PWM信号PS1及び第二PWM信号PS2を算出するように構成されてもよい。
【0050】
(4)上記の実施形態においては、吐出流量制御部2は、オン信号ONとオフ信号OFFとを互いに反転させた第一PWM信号PS1及び第二PWM信号PS2により、電動ポンプP1、P2を制御するように構成されている場合を例に説明した。しかし、吐出流量制御部2は、二つのPWM信号発生器を備え、第一PWM信号PS1及び第二PWM信号PS2を個別に発生させ、オン信号ONとオフ信号OFFとが必ずしも互いに反転しないように構成してもよい。
【0051】
(5)上記の実施形態においては、第一電動ポンプP1と第二電動ポンプP2とは、同じ吐出流量特性を有する場合を例に説明した。しかし、第一電動ポンプP1と第二電動ポンプP2とは、異なる吐出流量特性を有していてもよい。この場合は、吐出流量制御部2は、上記したように、第一電動ポンプP1及び第二電動ポンプP2それぞれの吐出流量特性(マップデータや流量ゲイン)を用いて、電動ポンプP1、P2を制御するように構成されてもよい。
【0052】
(6)上記の実施形態においては、第一電動ポンプP1及び第二電動ポンプP2の吐出流量特性は、線形特性を有する場合を例に説明した。しかし、第一電動ポンプP1及び第二電動ポンプP2の吐出流量特性は、非線形特性を有してもよい。非線形特性の場合でも、第一電動ポンプP1及び第二電動ポンプP2の吐出流量特性は、図6から理解できるように、デューティ比Dt1、Dt2が50%である場合の吐出流量Q1、Q2の値の点について、点対称の特性を有していれば、非線形の吐出流量特性を有し、第一デューティ比Dt1と第二デューティ比Dt2とを互いに反転させるように構成しても、デューティ比Dt1、Dt2の変化により、混合吐出流量Qmxが変化しないようにできる。
【0053】
(7)上記の実施形態においては、吐出流量制御部2は、第一吐出流量Q1と第二吐出流量Q2との混合比が変化しても、混合吐出流量Qmxが所望の一定流量になるように制御する場合を例に説明した。しかし、吐出流量制御部2は、第一吐出流量Q1と第二吐出流量Q2との混合比が変化すると、混合吐出流量Qmxが変化するように構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、第一液体と第二液体とを混合して供給する液体供給装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1:液体供給装置、2:吐出流量制御部、3:目標温度設定部、Dt:デューティ比、L1:第一液体、L2:第二液体、Lmx:混合液体、MX:混合部、P1:第一電動ポンプ、P2:第二電動ポンプ、PS1:第一PWM信号、PS2:第二PWM信号、Q1:第一液体の吐出流量(第一吐出流量)、Q2:第二液体の吐出流量(第二吐出流量)、S1:第一温度検出部、S2:第二温度検出部、Smx:混合温度検出部、T1:第一液体の温度(第一温度)、T2:第二液体の温度(第二温度)、TN1:第一タンク、TN2:第二タンク、Tmx:混合液体の温度(混合温度)、Tmxo:混合液体の目標温度(目標混合温度)、ON:オン信号、OFF:オフ信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7