(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弾性限界が690MPa超および840MPa以下、強度が780MPaから950MPaの間、破損点伸びが10%超ならびに穴拡大比率(Ac)が50%以上である熱間圧延鋼シートであって、
化学組成が、含有量を重量パーセントで表して:
0.040%≦C≦0.065%
1.4%≦Mn≦1.9%
0.1%≦Si≦0.55%
0.095%≦Ti≦0.145%
0.025%≦Nb≦0.045%
0.005%≦Al≦0.1%
0.002%≦N≦0.007%
S≦0.004%
P<0.020%
場合により、
Cr≦0.7%
を含有し、
残余は鉄および加工で発生する不可避の不純物から成り、
このミクロ組織は、粒状ベイナイト、フェライト、面積パーセント1.5%未満のセメンタイト、ならびにチタンおよびニオブの炭窒化物から成り、および粒状ベイナイトの面積パーセンテージが80%から95%の間であり、フェライトの面積パーセンテージが20%未満であり、
平均サイズが6μmを超える窒化チタンの密度は3/mm2以下であり、
圧延方向に平行に測定した粒径DLと圧延方向に垂直に測定した粒径DNの間の比率は1.4以下である、熱間圧延鋼シート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この目的のために、本発明は、化学組成が以下の通りであり、ここにおいて、含有量は重量パーセントで表され:
0.040%≦C≦0.065%
1.4%≦Mn≦1.9%
0.1%≦Si≦0.55%
0.095%≦Ti≦0.145%
0.025%≦Nb≦0.045%
0.005%≦Al≦0.1%
0.002%≦N≦0.007%
S≦0.004%
P<0.020
場合により、
Cr≦0.7%
Cu≦0.1%
Ni≦0.25%
B≦0.003%
Ca≦0.005%
Mg≦0.005%、
残余は鉄および不可避の加工不純物から成り、
このミクロ組織は1.5%未満の面積パーセンテージの粒状ベイナイト、フェライト、セメンタイトから成り、
および圧延方向に平行に測定した粒径D
Lおよび圧延方向に垂直に測定した粒径D
Nの間の比率は1.4以下である熱間圧延鋼シートを教示する。
【0024】
本発明によって特許請求されるシートは、個々に、または組み合わせて考えられる、以下に挙げられた任意の特徴も有することができる:
−圧延方向に平行に測定した粒径D
Lおよび圧延方向に垂直に測定した粒径D
Nの間の比率は1.3以下であり、
−本発明の第一の変形態様において、化学組成は以下の通りであり、ここにおいて、含有量は重量パーセントで表され:
0.045%≦C≦0.065%
1.6%≦Mn≦1.9%
0.1%≦Si≦0.55%
0.095%≦Ti≦0.125%
0.025%≦Nb≦0.045%
0.01%≦Al≦0.1%
0.002%≦N≦0.007%
S≦0.004%
P<0.020
場合により、
Cu≦0.1%
Ni≦0.25%
B≦0.003%
Ca≦0.005%
Mg≦0.005%
ここにおいて、該組成物はクロムを含まない。
【0025】
−本発明の第一の変形態様において、鋼の組成は重量パーセントで表して:
0.1%≦Si≦0.3%
を含有し、
−本発明の第二の変形態様において、化学組成は以下の通りであり、含有量は重量パーセントで表され:
0.040%≦C≦0.065%
1.4%≦Mn≦1.9%
0.1%≦Si≦0.4%
0.095%≦Ti≦0.145%
0.025%≦Nb≦0.045%
0.01%≦Al≦0.1%
0.002%≦N≦0.007%
0.2%≦Cr≦0.7%
S≦0.004%
P<0.020
場合により、
Cu≦0.1%
Ni≦0.25%
B≦0.003%
Ca≦0.005%
Mg≦0.005%
−鋼の組成がクロムを含む場合、クロムの含有量は以下の通りであり:
0.4%≦Cr≦0.6%。
【0026】
−粒状ベイナイトの面積パーセンテージは80%から95%の間であって、フェライトの面積パーセンテージは20%未満である。
【0027】
−6μmよりも大きな平均サイズを有する窒化チタンの密度は3/mm
2以下である。
【0028】
−鋼の組成は、重量パーセントで表して:
0.0005%≦Ca≦0.005%
を含有し、
−鋼の組成は、重量パーセントで表して:
0.0005%≦Mg≦0.005%
を含有する。
【0029】
本発明は、さらに、前記したシートの製造方法に関する。
【0030】
この方法は、鋼を、以下の組成を有する液状金属の形態で得、含有量は重量パーセントで表され:
0.040%≦C≦0.065%
1.4%≦Mn≦1.9%
0.1%≦Si≦0.55%
0.095%≦Ti≦0.145%
0.025%≦Nb≦0.045%
0.005%≦Al≦0.1%
0.002%≦N≦0.007%
S≦0.004%
P<0.020
場合により、
Cr≦0.7%
Cu≦0.1%
Ni≦0.25%
B≦0.003%
Ca≦0.005%
Mg≦0.005%
残余は鉄および不可避の不純物から成り、
真空加工もしくはSiCaでの加工を行い;後者の場合、組成は、重量パーセントで表して以下の
0.0005%≦Ca≦0.005%
をも含み、
液状金属に溶解したチタン[Ti]および窒素[N]の量は、
%[Ti]%[N]<6・10
−4%
2の関係を満たすものであり、
鋼を鋳造して、鋳造半製品を得、
該半製品は、場合により、1160℃から1300℃の間の温度まで再度加熱してもよく、次いで、
該鋳造半製品を880℃から930℃の間の圧延最終温度で熱間圧延し、熱間圧延製品を得、ここで、最後からの2番目のパスの圧延率は0.25未満であり、最終のパスの圧延率は0.15未満であり、2つの圧延率の合計は0.37未満であり、最後から2番目のパスの始まりにおける開始温度は960℃未満であり、次いで、
該熱間圧延製品を50から150℃/秒の間の速度で冷却して、熱間圧延鋼シートを得、
該シートを470から625℃の間の温度で巻き取ることを特徴とする。
【0031】
この方法は、本発明の第一の変形態様において、個々に、または組み合わせ考えられる以下の任意の特徴を含むこともでき:
−鋼の組成は以下の通りであり、濃度は重量パーセントで表され:
0.045%≦C≦0.065%
1.6%≦Mn≦1.9%
0.1%≦Si≦0.3%
0.025%≦Nb≦0.045%
0.095%≦Ti≦0.125%
0.01%≦Al≦0.1%
0.002%≦N≦0.007%
S≦0.004%
P<0.020
場合により、
Cu≦0.1%
Ni≦0.25%
B≦0.003%
Mg≦0.005%
ここにおいて、該組成はクロムを含まず、
−組成がクロムを含まない場合は、シートは515から厳密には620℃の間の温度で巻き取られ、
−シートは515から560℃の間の温度で巻き取られ、
シートは酸洗いされ、次いで、
酸洗いされたシートは600から750℃の間の温度まで加熱され、次いで、酸洗いされたシートは5から20℃/秒の間の速度で冷却され、
次いで、得られたシートは適切な亜鉛浴中にて亜鉛で被覆される。
【0032】
本発明によって特許請求される方法は、本発明の第二の変形態様において、個々に、または組み合わせて考えられる以下の任意の特徴を有することもできる:
−鋼の組成は以下の通りであり、含有量は重量パーセントで表され:
0.040%≦C≦0.065%
1.4%≦Mn≦1.9%
0.1%≦Si≦0.4%
0.095%≦Ti≦0.145%
0.025%≦Nb≦0.045%
0.005%≦Al≦0.1%
0.002%≦N≦0.007%
0.2%≦Cr≦0.7%
S≦0.004%
P<0.020
場合により、
Cu≦0.1%
Ni≦0.25%
B≦0.003%
Ca≦0.005%
Mg≦0.005%、
およびシートは470から580℃の間の温度で巻き取られ、
−鋼の組成は重量パーセントで表して:
0.4%≦Cr≦0.6%
を含有し、
−Mn、SiからCrの含有量の合計が2.35%未満である場合、シートは520℃および580℃の間の温度で巻き取られる。
【0033】
本発明の他の特徴および利点は、例として、および研磨しエッチングされた表面で観察される、粒子の等軸特徴の関数としての穴拡大比率Ac%の曲線を示す1つの添付の図面を参照して、以下に記載される。
【0034】
本発明は、炭素の重量含有量が0.040%から0.065%の間であることを教示する。この範囲の炭素含有量は、同時に、高い破損点伸びおよび780MPaよりも大きな機械的強度を得ることを可能とする。より高い炭素含有量、特に、0.095%を超える炭素含有量では、溶接に対する適合性は減少する傾向がある(表1)。
【0035】
加えて、最大炭素重量含有量は0.065%に設定され、オーステナイトの粒状ベイナイトへの完全な変態を確保し、これにより、マルテンサイトおよびオーステナイトの形成、および穴拡大能を制限する硬い第二の相の付随する形成を回避することを可能とする。従って、この最大含有量は、50%以上の穴拡大比率Ac%を達成することを可能とする。
【0036】
本発明によると、マンガン重量含有量は1.4%から1.9%の間である。これらの量で存在すると、マンガンはシートの強度に寄与し、中央分離バンドの形成を制限する。このことは、50%以上の等しい穴拡大比率Ac%を得るのに寄与する。
【0037】
0.005%から0.1%の間のアルミニウム重量含有量は、この製造の間における鋼の脱酸素を確保することを可能とする。
【0038】
本発明によると、熱間圧延鋼シートの化学組成はチタンおよびニオブも含む。これらの2つの元素は、特に、鋼に、所望の強度、必要な硬化および特定の穴拡大比率Ac%を与える。これらの2つの元素は、各々、シートに、強度、硬度および穴拡大比率の特定の特性を与える。本発明との関係では、これらの2つの元素は鋼の組成において特定の含有量レベルで存在させなければならないことが発見された。
【0039】
チタンは、さらに詳しくは、0.095重量%から0.145重量%の間の量で鋼に存在させる。0.095%を超えると、780MPaの機械的強度は達成されず、0.145%未満では、穴の拡大の間に早過ぎる損傷を引き起こしかねない粗大な窒化チタンの析出の危険性がある。事実、6μmよりも大きな窒化物が存在する場合、これらは切断およびスタンピング工程の間にマトリックスからの開裂の主な原因の1つであることが判明した。
【0040】
加えて、本発明は、窒素重量含有量は0.002%から0.007%の間であることを教示する。液状金属中での窒化物の早過ぎる析出を回避するには、窒素含有量は0.007%未満でなければならない。窒素含有量は極端に低くすることができるが、満足のいく経済的な条件下で製造を行うことができるように、この限界値は0.002%に設定される。
【0041】
鋼の組成におけるニオブ重量含有量は0.025%から0.045%の間、好ましくは、0.025%から0.035%の間である。0.025%よりも大きな重量パーセントで存在させると、ニオブは、非常に微細な炭窒化物の形成を介して効果的に硬化する。しかしながら、0.045重量%の含有量を超えると、オーステナイトの再結晶化が遅れる。従って、組織は細長い粒子をかなりの率で含有し、この結果、特定の穴拡大比率Ac%を達成するのはもはや可能でない。
【0042】
先に示した特定の割合のチタンおよびニオブを組み合わせて添加することにより、硬化および穴の拡大能力の最適な特性を達成することを可能とする。
【0043】
従って、本発明によって特許請求される鋼はモリブデンの高価な添加を含まない。
【0044】
場合により、組成は、表面の質を改良するために、0.7%以下の量、さらに特には、0.4から0.6%の間の含有量のクロムを含むことができる。しかしながら、本発明の1つの変形態様において、クロムの存在は絶対的に必要なものではなく、高価な添加の必要性を排除する利点を有する。本発明のさらなる変形態様において、0.2%から0.7%の間、好ましくは、0.4から0.6%の間の量のクロムの添加は、以下でかなり詳しく記載するように、より低い温度で鋼を巻き取ることを可能とする。
【0045】
組成は、0.1%までの量の銅および/または0.25%までの量のニッケルの任意の存在を含むこともできる。
【0046】
表面の質を改良するには、組成は、0.003%以下の量、好ましくは、0.0015から0.0025%の間の量のホウ素を場合により含むこともできる。
【0047】
本発明は、ケイ素をシートの化学組成に0.1重量%から0.55重量%の間の含有量で存在させることを教示する。
【0048】
ケイ素はセメンタイトの析出を遅らせる。本発明に従って規定された量においては、セメンタイトは非常に少量で、即ち、1.5%未満の面積パーセンテージにて、非常に微細な形態で析出する。セメンタイトのこのより微細な形態は、例えば、50%以上の高い穴拡大能力を得ることを可能とする。
【0049】
本発明によって特許請求される鋼の硫黄含有量は、硫化物、特に、硫化マンガンの形成を制限するために0.004%未満である。
【0050】
シートの組成における硫黄および窒素の低いレベルは、穴拡大能力の点で有利である。
【0051】
本発明によって特許請求される鋼のリン含有量は、穴拡大能力および溶接性を促進するために、0.020%未満である。
【0052】
また、鋼の組成は、0.005%以下、好ましくは、0.0005%から0.005%の間の重量パーセンテージのカルシウムの存在、および/または0.005%以下、好ましくは0.0005から0.005%の間の重量パーセンテージのマンガンの存在を含むと特定することもできる。
【0053】
これらの2つの元素は、カルシウムおよびマグネシウムの微細な酸化物またはオキシ硫化物を形成することを可能とする。これらの酸化物またはオキシ硫化物は、窒化/炭窒化チタンの引き続いての非常に微細な析出用の核形成剤として作用する。従って、炭窒化物のサイズの低下は、改良された穴拡大能力を達成することを可能とする。本発明によるシートのミクロ組織は粒状ベイナイトを含有する。
【0054】
粒状ベイナイトは上および下ベイナイトと区別されなければならない。粒状ベイナイトの定義は、Characterization and Quantification of Complex Bainitic Microstructures in High and Ultra−High Strength Steels(高および超高強度鋼における複合ベイナイトミクロ組織の特徴付けおよび定量)の表題の論文−Materials Science Forum、500−501巻、387−394頁;2005年11月に見出すことができる。
【0055】
この論文に示されたように、本発明によるシートのミクロ組織を構成する粒状ベイナイトは、かなりの割合の高度に無配向の隣接粒子および粒子の不規則な形態を有するものと定義される。
【0056】
本発明によると、セメンタイトは、1.5%を超えない面積パーセンテージに制限される低い量で存在させる。従って、ベイナイトマトリックス、および有意により硬いセメンタイトの間で起こる損傷は、制限される。この低い含有量のセメンタイトは、特に、用いるケイ素の添加に由来し、50%以上の穴拡大比率Ac%を持つ鋼シートを得ることを可能とする。
【0057】
シートは、面積パーセンテージで表して20%までのフェライトを含有することができる。
【0058】
最後に、本発明によると、シートはチタンおよびニオブの炭窒化物も含有する。
【0059】
本発明によって特許請求されるシートは、マルテンサイトおよびオーステナイトを含まない。これにより、硬い第二の相の存在を妨げることが可能となり、穴拡大比率Ac%を制限する効果がある。本発明によって特許請求されるシートのミクロ組織は、主として粒状ベイナイトおよび場合により上述した割合のフェライトおよびセメンタイトから成る。シートは析出硬化され、および前記した硬い第二の相の存在がないことによって特徴付けられる。
【0060】
圧延方向に平行に測定した粒径D
Lおよび圧延方向に垂直に測定した粒径D
Nの間の比率と、穴拡大比率Acとの間の関係を示す
図1を参照されたい。
【0061】
比率D
L/D
Nは以下のように決定される:ミクロ組織は、統計学的に代表的な粒子の集団を含む表面にわたっての、ほぼ500から1500倍の範囲の倍率の光学顕微鏡観察によって、自体公知の試薬を用いて、研磨およびエッチングされた切断面で観察される。EBSD(Electron Back Scattered Diffraction(後方散乱電子回折))のような、自体公知の画像解析ソフトウェアは、例えば、圧延方向に平行に(D
L)および垂直に(D
N)測定した平均粒径を決定するのに用いられる。従って、比率D
L/D
Nは、等軸特徴とも呼ばれる圧延方向の粒子の平均拡大を特徴付ける。
【0062】
図1に示すように、本発明者らは、穴拡大比率Ac%および比率D
L/D
Nの間には関係があることを示した。
図1においてプロットされた直線は、実験結果の下方包絡線を示し、所与の穴の拡大のレベルにおいて、この所与のレベルを達成するには超えてはならない比率D
L/D
Nの値を決定することを可能とする。従って、50%以上の係数Acを得るには、比率D
L/D
Nは1.4以下でなければならないことが示されており、これは、粒子は比較的等軸でなければならないことを意味する。65よりも大きいか、または100%と等しい穴拡大比率Ac%を得るには、比率D
L/D
Nは、各々、1.3または1.1以下でなければならない。
【0063】
加えて、粒状ベイナイトの面積パーセンテージは80%から95%の間であって、フェライトの面積パーセンテージは20%未満である。
【0064】
1.5%未満のセメンタイトの面積パーセンテージを得るには、ケイ素含有量は0.1から0.55重量%の間である。
【0065】
以下の表1、2A、2Bおよび2Cは、熱間圧延鋼シートの化学組成および製造条件が、ミクロ組織および機械的強度、破損点伸び、穴拡大比率Ac%および比率D
L/D
Nに与える影響を示す。
【0066】
これら全ての鋼組成は、0.020重量%未満のリン含有量を有する。
【0067】
これらの表は、シートの製造コスト、1.5から4ミリメートル厚み範囲での熱間圧延鋼シートの製造の容易性およびシートの溶接性についての情報も提供する。
【0068】
熱間圧延され冷却された鋼シートの巻き取り温度は、これらの表に記載される全ての例及び特定の反例において示される。
【0069】
これらの表は、「M−A」化合物、即ち、「マルテンサイト−残存オーステナイト」の多かれ少なかれ有意な存在も示す。これらの固有の硬度(マルテンサイト)または変形の影響下でマルテンサイトを形成するこれらの能力(残存オーステナイト)のため、可変割合でマルテンサイトおよび残存オーステナイトを組み合わせるこれらの化合物の存在は、穴拡大比率の高い値を得る要件の点で望ましくない。
【0070】
本発明によって特許請求されるシートの全ての組成および加工条件は、6μm以上の平均サイズを持つTiNの密度が3/mm
2以上となるようにする。
【0071】
表1は、具体的には、シートの組成がクロムを含まない例に関する。
【0072】
反例1は公開EP 2 020 451に記載されたシートに対応する。このシートにおいては、前記にて説明したように、バナジウムおよびモリブデンが存在するために、過剰なコストが生じる。
【0073】
反例2は、モリブデンの不存在下であって、バナジウムの存在下においては、得られるシートの最大引張強度は低すぎる。
【0074】
この最大引張強度Rmは炭素およびニオブを加えることによって増加させることができる(反例3)が、この場合においては、穴拡大比率は不十分である。
【0075】
反例4においては、0.03%のニオブ含有量および低いチタン含有量は、再度、最大引張強度が低すぎる結果となる。
【0076】
反例2、3および4もまた、前記で定義されたM−A化合物の過剰な存在を有する。
【0077】
反例5および6においては、ニオブおよびチタン含有量は高い。モリブデンの有り(反例5)または無し(反例6)においては、穴拡大比率は不十分であって、比率D
L/D
Nはあまりにも高い。加えて、反例5では、ニオブおよびモリブデンの高い含有量は寸法実現可能性の問題を引き起こす。
【0078】
最後に、反例7は、組成がバナジウムを含まず、高い炭素含有量を含む点で反例3とは異なる。この場合、結果として、不十分な溶接性、「M−A」化合物の望ましくない割合ならびに不十分な降伏応力および穴拡大比率がもたらされる。
【0079】
実施例1から3は、0.1%から0.55%の間のケイ素含有量について本発明の構成に含まれる。
【0080】
硬化元素(特に、Mo)の不存在、および限定されたニオブ含有量のため、本発明によって特許請求される鋼は、広い範囲の厚みでの熱間圧延による容易な製造で用いることができる。
【0081】
表2A、2Bおよび2Cは、具体的には、0.2から0.7%の間の含有量レベルでクロムを含む組成に関する。
【0082】
熱間圧延され冷却された鋼シートの巻き取り温度は500℃および550℃である。
【0083】
反例AおよびBにおいて、マンガン含有量は1.296%である。これらの2つの反例においては、冷却温度が500℃または550℃であるかに拘わらず、シートが、特に、最大引張強度の点で必要とされる特性を有しないことが判明した。
【0084】
反例CおよびDにおいては、ケイ素含有量は0.6%である。これらの2つの反例では、巻き取り温度が500℃または550℃であるかに拘わらず、シートは、特に、多数の「M−A」化合物のため、必要な特性を有しない。
【0085】
表2A、2Bおよび2Cに示した他の結果は、マンガン、ケイ素およびクロムの添加された含有量の増大する合計に従って分類される。
【0086】
2.35未満のMn、SiおよびCrの含有量の合計および500℃の巻き取り温度についての、本発明の構成内にある組成で行ったテストは、特に、最大引張強度の点で不満足な結果を生じた。
【0087】
Mn、SiおよびCrの含有量の合計が2.35よりも大きい場合、得られたシートの特性は、巻き取り温度が500℃または550℃であるかに拘わらず満足できるものである。
【0092】
前記定義の、0.1%から0.55%の間のケイ素の重量含有量を持つ鋼シートの製造方法は以下の工程を含む:
以下に示した組成を有する液状鋼を得、含有量は重量で表され:
0.040%≦C≦0.065%
1.4%≦Mn≦1.9%
0.1%≦Si≦0.55%
0.095%≦Ti≦0.145%
0.025%≦Nb≦0.045%
0.01%≦Al≦0.1%
0.002%≦N≦0.007%
S≦0.004%
P<0.020%および、場合により、
Cr≦0.7%
Cu≦0.1%
Ni≦0.25%
B≦0.003%
Mg≦0.005%
残余は鉄および不可避の不純物から成る。
【0093】
液状金属に溶解されたチタン[Ti]および[N]の量が式%[Ti]%[N]<6・10
−4%
2を満たすように、チタン[Ti]を、溶解された窒素[N]を含有する液状金属に加える。
【0094】
液状金属を真空処理またはケイ素−カルシウム(SiCa)処理のいずれかに付し、この場合、特定の組成は、0.0005%≦Ca≦0.005%となるような重量表示でカルシウムも含有する。
【0095】
これらの条件下では、窒化チタンは液状金属中で大きな粒子形態で時期尚早な析出をしない。そのため、これは穴拡大力を低下させる効果がある。チタンの析出は、均一に分布した炭窒化物の形態でより低い温度で起こる。この微細析出はミクロ組織の硬化および精錬に寄与する。
【0096】
次いで、鋼を鋳造して、鋳造半製品を得る。鋳造は、好ましくは、連続鋳造によってなされる。鋳造は、非常に有利には、反対に回転するロールの間で行って、薄いスラブまたは薄いストリップの形態の鋳造半製品を得る。事実、これらの鋳造方法は、仕上げられた状態で得られた製品において穴拡大に好都合である析出物のサイズの低下を引き起こす。
【0097】
次いで、得られた半製品を1160から1300℃の間の温度まで加熱する。1160℃未満では、780MPaの特定の機械的引張強度が達成されない。当然、薄いスラブの直接鋳造の場合には、1160℃よりも高い温度で開始される半製品を熱間圧延する段階は、鋳造の直後に、即ち、半製品を雰囲気温度まで冷却することなく、従って、再加熱工程を行う必要性なく行うことができる。次いで、鋳造半製品を圧延最終温度880から930℃の間で熱間圧延し、最後から2番目のパスの圧延率は0.25未満であり、最終のパスの圧延率は0.15未満であり、2つの圧延率の合計は0.37未満であり、および最後から2番目のパスの圧延開始温度は960℃未満であって、熱間圧延された製品が得られる。
【0098】
従って、最後の2つのパスの間に、圧延は、オーステナイトの再結晶を防止する非再結晶化温度未満の温度で行われる。従って、目的物は、これらの最後の2つのパスの間にオーステナイトの過剰な変形を引き起こすものではない。
【0099】
これらの条件により、最も等軸の粒子を作り出すことが可能となり、穴拡大比率Ac%に対する要件を満たすことが可能である。
【0100】
圧延の後、熱間圧延された製品を50から150℃/秒の間の速度で冷却して、熱間圧延鋼シートを得る。この冷却の態様は「直接的」と呼ばれ、即ち、この冷却の態様は、直後の冷却段階なくして単一工程で行われる。
【0101】
最後に、470から625℃の間の温度で得られたシートを巻き取る。625℃よりも高い巻き取り温度の結果、50%未満の穴拡大比率Ac%がもたらされるため、この温度は重要である。
【0102】
被覆されていないシートの製造の場合には、巻き取り温度は、析出がより緻密であって、硬化ができる限り大きいように、470から625℃の間となるであろう。
【0103】
亜鉛メッキ操作に付されることが意図されたシートの製造の場合には、巻き取り温度は、亜鉛メッキ操作に関連する再加熱処理の間におけるさらなる析出を補償するために515から560℃の間であろう。
【0104】
この後者の場合、次いで、巻き取られたシートを酸洗いし、および600から750℃の間の温度まで再加熱する。次いで、このシートを5から20℃/秒の間の速度で冷却し、次いで、適切な亜鉛浴中にて亜鉛で被覆する。
【0105】
以下の表3においては、スラブ再加熱温度、および/または第一のものが0.215%Si(組成A)、第二のものが0.490%Si(組成B)および第三のものが0.21%Si(組成C)を含有する、異なる化学組成を持つ3つのシートについての巻き取り温度を変化させる。
【0106】
本発明によって特許請求される全ての鋼シートは、最後から2番の圧延パスにおいては0.15の圧延率、および最後の圧延パスにおいては0.07の圧延率で圧延し、これらの2つのパスの累積変形は0.22である。従って、熱間圧延の最後において、得られたオーステナイトはほとんど変形されていない。
【0107】
組成AおよびBを持つ鋼の場合には、巻き取り温度があまりに高いと(650℃、テストA1およびB3)、穴拡大比率Acは有意に50%未満である。
【0108】
組成Bを持つ鋼の場合には、スラブ再加熱温度が1150℃に過ぎないと(テストB2)、780MPaの特定の機械的強度は達成されない。
【0109】
加えて、組成がクロムを含有しない場合(表3)、巻き取り温度が470℃から厳密には620℃の間である。620℃の温度は表3中のテストB4に準じて排除される。525℃から厳密には620℃の間の巻き取り温度が優先される。
【0110】
組成がクロムを含む場合、巻き取り温度は、好ましくは、表2A、2Bおよび2Cに示されたように470℃から580℃の間である。
【0111】
この組成が以下の表4に示された、0.245%のSiから0.0299%の少量のCrを含有する鋼について、他のテストも行った。表は降伏応力Re、強度Rmおよび破損点伸びAを示す。これらのテストは、1240℃まで再加熱され、900℃の圧延温度の最後まで熱間圧延され、70℃/秒の速度で直接的に冷却され、次いで、440から540℃の間の温度で巻き取られ、次いで、雰囲気温度まで冷却されたスラブで行った。次いで、シートを580から720℃の間の温度まで再加熱し、その後、Zn浴中で溶融亜鉛メッキした。
【0112】
テストC1では、あまりにも低い巻き取り温度は十分な析出および硬化を起こさず、強度は780MPaを達成しなかった。テストC2では、同一の結果が達成され、ここでは、亜鉛メッキ前の再加熱温度を上昇させたが、所望の強度は達成されなかった。
【0113】
テストC3では、硬化は過剰であり、および降伏応力は840MPaの特定のレベルを超えた。