特許第6182524号(P6182524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6182524ノイズ・コントロールのデバイス、システム、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182524
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ノイズ・コントロールのデバイス、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   G10K11/178 140
【請求項の数】21
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-509878(P2014-509878)
(86)(22)【出願日】2012年5月10日
(65)【公表番号】特表2014-521987(P2014-521987A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】IB2012052333
(87)【国際公開番号】WO2012153294
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】61/484,722
(32)【優先日】2011年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513281747
【氏名又は名称】シレンティウム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】チェラカスキー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】バラト,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ルビン,オフィラ
【審査官】 菊池 充
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/078146(WO,A1)
【文献】 特開2001−067081(JP,A)
【文献】 特開平06−282279(JP,A)
【文献】 特開2009−029405(JP,A)
【文献】 特開2001−092469(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0104110(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0317254(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブ・ノイズ・コントロール・システムにおいて、
定のノイズ・コントロール・ゾーン内のノイズをコントロールするコントローラを備え、
前記コントローラは、所定のノイズ・コントロール・ゾーンに関して定義される複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズを表す複数のノイズ入力を受信し、
前記コントローラは、前記所定のノイズ・コントロール・ゾーン内にある複数の所定の残留ノイズ検知場所での音響残留ノイズを表す複数の残留ノイズ入力を受信するように構成されており、
前記コントローラは、前記複数のノイズ入力と前記複数の残留ノイズ入力とに基づき、ノイズ・コントロール・パターンを決定するように構成されており、
前記ノイズ・コントロール・パターンを少なくとも1つの音響変換器に出力する、
前記コントローラは、前記複数のノイズ入力から、統計的に独立している複数の独立参照音響パターンを抽出する抽出器を備え、
前記コントローラは、前記ノイズ・コントロール・ゾーン内でコントロールする少なくとも1つの所定のノイズ・パターンの1つ以上の所定の音響パターン属性に基づき前記複数の独立参照音響パターンから少なくとも1つの独立参照音響パターンを選択するように構成され、
前記コントローラは、前記複数の独立参照音響パターンから選択された前記少なくとも1つの独立参照音響パターンに基づき、前記ノイズ・コントロール・パターンを決定する、アクティブ・ノイズ・コントロール・システム。
【請求項2】
前記1つ以上の所定の音響パターン属性は、振幅、エネルギー、位相、周波数、方向、および、統計的特性からなる群から選択した少なくとも1つの属性を含む、請求項1に記載のアクティブ・ノイズ・コントロール・システム。
【請求項3】
前記コントローラは、抽出関数を前記複数のノイズ入力に適用することによって前記複数の独立参照音響パターンを抽出する、請求項1に記載のアクティブ・ノイズ・コントロール・システム。
【請求項4】
前記抽出器は、前記複数のノイズ入力の現在のサンプル、および前記複数のノイズ入力の1つ以上のそれぞれの前における1つ以上の前のサンプルに抽出関数を適用することによって、前記複数のノイズ入力の現在のサンプルに対応する前記複数の独立参照音響パターンを決定するように構成されている、請求項1に記載のアクティブ・ノイズ・コントロール・システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記ノイズ・コントロール・ゾーン内の少なくとも1つのノイズを低減するために前記ノイズ・コントロール・パターンを決定し、前記ノイズ・パターンが、エネルギーおよび振幅からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを含む、請求項1に記載のアクティブ・ノイズ・コントロールシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記ノイズ・コントロール・ゾーン内の1つ以上の第2のノイズ・パターンを低減することなく、前記ノイズ・コントロール・ゾーン内の1つ以上の所定の第1のノイズ・パターンを選択的に低減するために前記ノイズ・コントロール・パターンを決定する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアクティブ・ノイズ・コントロール・システム。
【請求項7】
前記ノイズ・コントロール・ゾーンは、車両内にあり、
前記1つ以上の第1のノイズ・パターンは、ロード・ノイズ・パターン、ウィンド・ノイズ・パターン、およびエンジン・ノイズ・パターンからなる群から選択した少なくとも1つのパターンを含み、
前記1つ以上の第2のノイズ・パターンは、前記車両内にあるオーディオ・デバイスのオーディオ・ノイズ・パターン、クラクション・ノイズ・パターン、およびサイレン・ノイズ・パターン、機能的信号、およびハザード信号からなる群から選択した少なくとも1つのパターンを含む、請求項6に記載のアクティブ・ノイズ・コントロール・システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記複数の所定のノイズ検知場所での前記音響ノイズを生成する1つ以上の実際のノイズ源の1つ以上のノイズ源属性に関連する情報を持つことなく前記ノイズ・コントロール・パターンを決定する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアクティブ・ノイズ・コントロール・システム。
【請求項9】
前記ノイズ源属性は、前記ノイズ源の数、前記ノイズ源の場所、前記ノイズ源のタイプ、および1つ以上の前記ノイズ源によって生成される1つ以上のノイズ・パターンの1つ以上の属性からなる群から選択される少なくとも1つの属性を含む、請求項8に記載のアクティブ・ノイズ・コントロール・システム。
【請求項10】
前記ノイズ検知場所は、前記ノイズ・コントロール・ゾーンを囲むエンクロージャに分散する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアクティブ・ノイズ・コントロール・システム。
【請求項11】
1つ以上の前記複数のノイズ検知場所での前記音響ノイズを検知するための1つ以上の第1の音響センサーと、
1つ以上の前記複数の残留ノイズ検知場所での前記音響残留ノイズを検知するための1つ以上の第2の音響センサーと
を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアクティブ・ノイズ・コントロール・システム。
【請求項12】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアクティブ・ノイズ・コントロール・システムを備え、ヘッドレストのユーザの頭の周りに前記ノイズ・コントロール・ゾーンを維持するヘッドレストであって、
前記ヘッドレストは、
前記複数のノイズ検知場所の1つ以上での音響ノイズを検知する、前記ヘッドレストの背面に配置された1つ以上の第1の音響センサーと、
前記複数の残留ノイズ検知場所の1つ以上での音響残留ノイズを検知する、1つ以上の第2の音響センサーと、
前記コントローラと、
前記ノイズ・コントロール・パターンに基づいた音響パターンを生成する前記ヘッドレストの両側に配置された2つ以上の音響変換器と
を具備するヘッドレスト。
【請求項13】
アクティブ・ノイズ・コントロールの方法であって、
所定のノイズ・コントロール・ゾーンに関して定義される複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズを決定することと、
前記所定のノイズ・コントロール・ゾーン内にある複数の所定の残留ノイズ検知場所での音響残留ノイズを決定することと、
前記音響ノイズから、統計的に独立している複数の独立参照音響パターンを抽出することと、
前記ノイズ・コントロール・ゾーン内でコントロールする少なくとも1つの所定のノイズ・パターンの1つ以上の所定の音響パターン属性に基づき前記複数の独立参照音響パターンから少なくとも1つの独立参照音響パターンを選択することと、
前記複数の所定のノイズ検知場所での前記音響ノイズと前記複数の所定の残留ノイズ検知場所での音響残留ノイズに基づき、前記ノイズ・コントロール・ゾーン内の前記音響ノイズをコントロールするためのノイズ・コントロール・パターンを決定することと、
前記ノイズ・コントロール・パターンを少なくとも1つの音響変換器に出力することと
を含み、
前記ノイズ・コントロール・パターンを決定することは、前記複数の独立参照音響パターンから選択された前記少なくとも1つの独立参照音響パターンに基づき、前記ノイズ・コントロール・パターンを決定することを含む、アクティブ・ノイズ・コントロールの方法。
【請求項14】
前記音響ノイズを表す前記複数のノイズ入力に、所定の抽出関数を適用することによって、複数の独立参照音響パターンを抽出することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ノイズ・コントロール・パターンを決定することが、前記ノイズ・コントロール・ゾーン内の少なくとも1つのノイズ・パラメータを低減するために前記ノイズ・コントロール・パターンを決定することを含み、前記ノイズ・パラメータは、エネルギーおよび振幅からなる群から選択した少なくとも1つのパラメータを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ノイズ・コントロール・パターンを決定することが、前記ノイズ・コントロール・ゾーン内の1つ以上の第2のノイズ・パターンを低減することなく、前記ノイズ・コントロール・ゾーン内の1つ以上の所定の第1のノイズ・パターンを選択的に低減するために前記ノイズ・コントロール・パターンを決定することを含む請求項13ないし15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ノイズ・コントロール・パターンを決定することは、前記複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズを生成する1つ以上の実際のノイズ源の1つ以上のノイズ源属性に関連する情報を持つことなく前記ノイズ・コントロール・パターンを決定することを含む請求項13ないし15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ノイズ検知場所は、前記ノイズ・コントロール・ゾーンを囲むエンクロージャに分散する請求項13ないし15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
マシンによって実行されると以下の、
所定のノイズ・コントロール・ゾーンに関して定義される複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズと、前記所定のノイズ・コントロール・ゾーン内にある複数の所定の残留ノイズ検知場所での音響残留ノイズとを表す複数のノイズ入力に基づき、前記ノイズ・コントロール・ゾーン内の前記音響ノイズをコントロールするためのノイズ・コントロール・パターンを決定する
結果をもたらす命令を保存した非一時的な記憶媒体を含む製品であって、
前記ノイズ・コントロール・パターンを決定することは、
前記複数のノイズ入力から、統計的に独立している複数の独立参照音響パターンを抽出することと、
前記ノイズ・コントロール・ゾーン内でコントロールする少なくとも1つの所定のノイズ・パターンの1つ以上の所定の音響パターン属性に基づき前記複数の独立参照音響パターンから少なくとも1つの独立参照音響パターンを選択することと、
前記複数の独立参照音響パターンから選択された前記少なくとも1つの独立参照音響パターンに基づき、前記ノイズ・コントロール・パターンを決定することと、
前記ノイズ・コントロール・パターンを少なくとも1つの音響変換器に出力することと
を含む、製品。
【請求項20】
前記命令は、前記複数のノイズ入力に、所定の抽出関数を適用することによって前記複数の独立参照音響パターンを抽出する結果をもたらす、請求項19に記載の製品。
【請求項21】
前記ノイズ・コントロール・パターンを決定することは、前記ノイズ・コントロール・ゾーン内の1つ以上の所定の第1のノイズ・パターンを選択的に減少させながら、前記ノイズ・コントロール・ゾーン内の1つ以上の第2のノイズ・パターンを選択的に減少させないように、前記ノイズ・コントロール・パターンを決定することを含む、請求項19または20に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は2011年5月11日に出願された「ノイズ・コントロールのデバイス、システム、および方法」という名称の米国特許仮出願番号61/484,722の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
一般的なノイズ、および特に音のノイズは非常に不快なものである。低周波数ノイズは非常に耳の奥まで届くような音であり、かなりの長距離を移動し、従来のパッシブ・コントロール手段を使用して減衰させることは難しい。
【0003】
通常、吸音材やノイズの仕切り、エンクロージャ、障壁、およびサイレンサなどを使用するパッシブ・ノイズ・コントロール技術は、場所をとり、効果が低く、低周波ではむしろ高価になりうる。これに対して、アクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)は非常に効率的で低周波ノイズを低減するうえで比較的安価である。
【0004】
アクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)は、ノイズを減らすためにノイズを使用する技術である。音波の重畳の原理に基づいている。一般的に音は空間を移動する波である。同じ振幅を持つが、第1の音波とは逆の位相を持つ他の第2の波を作ることができれば、第1の波は完全に打ち消される。この第2の波は「耐ノイズ(“anti−noise”)」と呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いくつかの例示的な実施形態には、ノイズ・コントロールのデバイス、システム、および方法が含まれる。
【0006】
いくつかの例示的な実施形態では、アクティブ・ノイズ・コントロール・システムには、所定のノイズ・コントロール・ゾーン内のノイズをコントロールするためのコントローラを含んでもよく、このコントローラは、所定のノイズ・コントロール・ゾーンに関して定義される複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズを表す複数のノイズ入力を受信し、所定のノイズ・コントロール・ゾーン内にある複数の所定の残留ノイズ検知場所での残留音響ノイズを表す複数の残留音響ノイズを受信し、
複数のノイズ入力と複数の残留ノイズ入力に基づきノイズ・コントロール・パターンを決定し、このノイズ・コントロール・パターンを少なくとも1つの音響変換器に出力する。
【0007】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラは、複数のノイズ入力から統計的に独立している複数の独立参照パターンを抽出するための抽出器を含んでもよく、このコントローラは、複数の独立参照パターンの少なくとも1つの独立参照パターンに基づき、ノイズ・コントロール・パターンを決定してもよい。
【0008】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラは、ノイズ・コントロール・ゾーン内でコントロールされる少なくとも1つ以上の所定のノイズ・パターンの1つ以上の所定の音響パターン属性に基づき、複数の独立参照パターンから少なくとも1つの独立参照パターンを選択してもよい。
【0009】
いくつかの例示的な実施形態では、音響パターン属性は、振幅、エネルギー、位相、周波数、方向、および統計特性からなる群から選択される少なくとも1つの属性を含む。
【0010】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラは所定の抽出関数を複数のノイズ入力に適用することによって複数の独立参照パターンを抽出してもよい。
【0011】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラはノイズ・コントロール・ゾーン内の少なくとも1つのノイズ・パラメータを低減するためにノイズ・コントロール・パターンを決定し、このノイズ・パラメータはエネルギーと振幅からなる群から選択した少なくとも1つのパラメータを含む。
【0012】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラはノイズ・コントロール・ゾーン内の1つ以上の第2のノイズ・パターンを低減せずに、ノイズ・コントロール・ゾーン内の1つ以上の所定の第1ノイズ・パターンを選択的に低減するためにノイズ・コントロール・パターンを決定する。
【0013】
いくつかの例示的な実施形態では、ノイズ・コントロール・ゾーンは、車両内部にあり、1つ以上の第1のノイズ・パターンには、ロード・ノイズ・パターン、ウィンド・ノイズ・パターン、およびエンジンのノイズ・パターンからなる群から選択された少なくとも1つのパターンを含み、この1つ以上の第1のノイズ・パターンには、車両内にあるオーディオ・デバイスのオーディオ・ノイズ・パターン、クラクション・ノイズ・パターン、サイレン・ノイズ・パターン、またはその他の機能的/ハザードの信号からなる群から選択された少なくとも1つのパターンを含む。
【0014】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラは、複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズを生成する1つ以上の実際のノイズ源の1つ以上のノイズ源属性に関連する情報を持つことなくノイズ・コントロール・パターンを決定する。
【0015】
いくつかの例示的な実施形態では、ノイズ源属性には、ノイズ源の数、ノイズ源の場所、ノイズ源のタイプからなる群から選択された少なくとも1つの属性、および1つ以上のノイズ源によって生成された1つ以上のノイズ・パターンの1つ以上の属性が含まれる。
【0016】
いくつかの例示的な実施形態では、ノイズ検知場所はノイズ・コントロール・ゾーンを囲むエンクロージャ上に分散している。
【0017】
いくつかの例示的な実施形態では、システムには、1つ以上の複数のノイズ検知場所での音響ノイズを検知するための1つ以上の第1の音響センサーと、1つ以上の複数の残留ノイズ検知場所での音響残留ノイズを検知するための1つ以上の第2の音響センサーが含まれる。
【0018】
いくつかの例示的な実施形態では、アクティブ・ノイズ・コントロールの方法には、以下を含んでもよい。すなわち、所定のノイズ・コントロール・ゾーンに関して定義される複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズの測定、所定のノイズ・コントロール・ゾーン内にある複数の所定の残留ノイズ検知場所での音響残留ノイズの測定、複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズおよび複数の所定の残留ノイズ検知場所での音響残留ノイズに基づいたノイズ・コントロール・ゾーン内で音響ノイズをコントロールするためのノイズ・コントロール・パターンの決定、および少なくとも1つの音響変換器にコントロール・パターンを出力することを含む。
【0019】
いくつかの例示的な実施形態では、ノイズ・コントロールの方法には、以下を含んでもよい。すなわち、所定のノイズ・コントロール・ゾーンに関して定義される複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズと所定のノイズ・コントロール・ゾーン内にある複数の所定の残留ノイズ検知場所での音響残留ノイズに基づき、所定のノイズ・コントロール・ゾーン内の音響ノイズをコントロールするためのノイズ・コントロール・パターンを決定、およびそのコントロール・パターンを少なくとも1つの音響変換器に出力することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図を単純及び明確なものにするために、図示されている要素は必ずしも実物大に描写されていない。例えば、いくつかの要素の寸法は、わかりやすくするために他の要素に比較して誇張される場合がある。さらに、対応する要素または類似の要素を示すために参照番号は複数の図で繰り返される場合がある。
図1】本発明のいくつかの例示的な実施形態によるアクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)システムを示す概略ブロック図である。
図2】本発明のいくつかの例示的な実施形態による図1のANCシステムの構成要素の配置方式を示す概略図である。
図3】本発明のいくつかの例示的な実施形態によるコントローラを示す概略ブロック図である。
図4】本発明のいくつかの例示的な実施形態による抽出器を示す概略ブロック図である。
図5】本発明のいくつかの例示的な実施形態によるマルチ入力マルチ出力予測ユニットを示す概略ブロック図である。
図6】本発明のいくつかの例示的な実施形態によるノイズ・パターン・セレクタを含むコントローラを示す概略ブロック図である。
図7】本発明のいくつかの例示的な実施形態によるヘッドレストのANCシステムの概念図である。
図8】本発明のいくつかの例示的な実施形態によるノイズ・コントロール方法の概略フローチャートである。
図9】本発明のいくつかの例示的な実施形態による製品の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の発明を実施するための形態では、いくつかの実施形態を完全に理解してもらうために数多くの具体的な詳細が規定される。しかし、いくつかの実施形態はこうした具体的な詳細なしで実施しうることを当業者は理解するであろう。ここでの説明を曖昧にしないように、他の事例では、既知の方法、手順、構成要素、ユニットおよび/または回路は詳細には説明しない。
【0022】
本明細書での説明では、例えば、「処理」(“processing”)、「コンピューティング」(“computing”)、「計算」(“calculating”)、「測定」(“determining”)、「設定」(“establishing”)、「分析」(“analyzing”)、「チェック」(“checking”)などの用語は以下を表す場合がある。すなわち、コンピュータのレジスタ内および/またはメモリ内で物理的(例、電子的)数量として表されるデータを操作および/または変換し、オペレーションおよび/またはプロセスを行うための命令を保存しうるコンピュータのレジスタおよび/またはメモリ内、またはその他の情報記憶媒体で物理的数量として同様に表されるデータにするコンピュータ、コンピューティング・プラットフォーム、コンピューティング・システム、またはその他の電子コンピューティング・デバイスのオペレーションおよび/またはプロセスを表す。
【0023】
本明細書では、「複数の」(“plurality”、および“a plurality”)には、例えば、複数(“multiple”)または2つ以上(“two or more”)を含む。例えば、複数のアイテム(“a plurality of items”)には、2つ以上のアイテムが含まれる。
【0024】
以下の発明を実施するための形態のある部分は、コンピュータ・メモリ内のデータ・ビットまたはバイナリ・デジタル信号のオペレーションのアルゴリズムおよび記号表記として表されている。こうしたアルゴリズムの説明や表現は、データ処理に従事する当業者が、その作業の内容を他の当業者に伝えるための技術である場合がある。
【0025】
アルゴリズムは本明細書で、および一般的には必要な結果につながる行為またはオペレーションの自己一貫性があるシーケンスであると考えられる。これには、物理的数量の物理的操作が含まれる。通常、必ずしも必要ではないが、こうした数量は保存、転送、結合、比較、または操作可能な電気的信号または磁気的信号の形態をとる。こうした信号は、時に便宜上、一般的用途上、ビット、値、要素、記号、文字、用語、数字などとして言及されてきた。しかし、こうしたもの、および類似の用語は、適切な物理的数量に関連付けられ、こうした数量に適用される単に便利なラベルであることを理解されたい。
【0026】
いくつかの例示的な実施形態では、以下で説明する一般的に低周波数のノイズなど、例えば不要なノイズを低減する、または除去するノイズのコントロールを効率的に実施しうるシステムと方法が含まれる。
【0027】
いくつかの例示的な実施形態では、既知および/または未知のノイズ源を含みうる1つ以上のノイズ源から生成された1つ以上の音響パターン(“primary patterns”)のノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅をコントロール、低減、および/または除去するように構成されたアクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)の方法およびシステムを含む場合がある。
【0028】
いくつかの例示的な実施形態では、ANCシステムは、コントロールされたノイズ・ゾーン、例えば、静寂ゾーンなどノイズが低減されたゾーンなど、セカンダリ・パターンとプライマリ・パターンの組み合わせで生成されるような1つ以上のプライマリ・パターンに基づいた例えば、相殺ノイズ・パターンを含むノイズ・コントロール・パターン(「セカンダリ・パターン」)を生成するように構成されてもよい。
【0029】
いくつかの例示的な実施形態では、ANCシステムは、プライマリ・パターンおよび/または1つ以上のノイズ源無しで、例えば、ノイズ源に関係なく、またはこれらを使用することなく、所定の場所、領域、またはゾーン(「ノイズ・コントロール・ゾーン」、「静寂ゾーン」または「Quiet BubbleTM」ともいう)内のノイズをコントロール、低減、および/または除去するように構成されてもよい。
【0030】
例えば、ANCシステムは、1つ以上のノイズ源および/または1つ以上のプライマリ・パターンの1つ以上の属性、例えば、数、タイプ、場所および/または1つ以上のプライマリ・パターンおよび/または1つ以上のノイズ源の他の属性から独立して、属性と関係なく、および/またはこうした属性を事前に知ることなくノイズ・コントロール・ゾーン内のノイズをコントロール、低減、および/または除去するように構成されてもよい。
【0031】
いくつかの例示的な実施形態では、静寂ゾーン内の1つ以上の音響パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅を低減および/または除去するように構成されたANCシステムおよび/または方法に関して説明している。
【0032】
しかし、他の実施形態では、ANCシステムおよび/または方法は、ノイズ・コントロール・ゾーン内の1つ以上の音響パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅を例えば、所定ゾーン内の1つ以上の音響パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅に影響を与える、変更する、および/または修正するコントロールを行うように構成されてもよい。
【0033】
ある例では、ANCシステムおよび/または方法は、ノイズ・コントロール・ゾーン内の音響パターンの1つ以上のタイプのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅を選択的に低減および/または除去するように構成されてもよい、および/またはノイズ・コントロール・ゾーン内の音響パターンの他の1つ以上のタイプのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅を選択的に増加および/または増幅するように構成されてもよい、および/またはノイズ・コントロール・ゾーン内の1つ以上の他のタイプの音響パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅を選択的に維持および/または保持するように構成されてもよい。
【0034】
いくつかの例示的な実施形態では、ANCシステムは、静寂ゾーン内の1つ以上のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅の低減および/または除去をコントロールするように構成されてもよい。
【0035】
いくつかの例示的な実施形態では、ANCシステムは、選択的および/または構成可能な方式でノイズ・コントロール・ゾーン内のノイズをコントロール、低減および/または除去するように構成されてもよい。これは、例えば、1つ以上の所定のノイズ・パターン属性に基づき行われ、以下で説明するようにセカンダリ・パターンは、1つ以上の第2のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギー、波の振幅、位相、周波数、方向、および/または統計特性への影響が低減されているか、影響を与えずに、1つ以上の第1のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギー、波の振幅、位相、周波数、方向、および/または統計特性が、セカンダリ・パターンによって影響を受ける。
【0036】
いくつかの例示的な実施形態では、ANCシステムは、ノイズ・コントロール・ゾーンを囲む、および/または包囲する所定のエンベロープまたはエンクロージャの上のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅をコントロール、低減および/または除去するように構成されてもよい。
【0037】
ある例では、ノイズ・コントロール・ゾーンには、例えば、1つ以上のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅をコントロール、低減、および/または除去する領域を定義する2次元ゾーンを含んでもよい。
【0038】
この例では、ANCシステムはノイズ・コントロール・ゾーンを囲む境界に沿ったプライマリ・パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅をコントロール、低減、および/または除去するように構成されてもよい。
【0039】
ある例では、ノイズ・コントロール・ゾーンには、例えば、1つ以上のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅をコントロール、低減、および/または除去する容積を定義する3次元ゾーンを含んでもよい。この例では、ANCシステムは、3次元の容積を囲む表面上のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅をコントロール、低減、および/または除去するように構成されてもよい。
【0040】
ある例では、ノイズ・コントロール・ゾーンには、球状の容積を含んでもよく、このANCシステムは、この球状容積の表面上のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅をコントロール、低減、および/または除去するように構成されてもよい。
【0041】
他の例では、ノイズ・コントロール・ゾーンには、立方体の容積を含み、ANCシステムは、この立方体容積の表面上のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅をコントロール、低減、および/または除去するように構成されてもよい。
【0042】
他の実施形態では、ノイズ・コントロール・ゾーンには、例えば、ノイズ・コントロール・ゾーンを維持する場所の1つ以上の属性に基づき定義されうる他の適切な体積が含まれてもよい。
【0043】
いくつかの例示的な実施形態ではANCシステム100の概略図を示す図1を参照する。また、いくつかの例示的な実施形態のANCシステム100の配置方法200の概略を示す図2も参照する。
【0044】
いくつかの例示的な実施形態のANCシステム100には、所定のノイズ・コントロール・ゾーン110内のノイズをコントロールするための例えば、以下で説明するようなコントローラ102を含んでもよい。
【0045】
いくつかの例示的な実施形態では、ノイズ・コントロール・ゾーン110には、3次元のゾーン110を含んでもよい。例えば、ノイズ・コントロール・ゾーン110には、球状のゾーンを含んでもよい。
【0046】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102は、ノイズ・コントロール・ゾーンに関して定義される複数の所定のノイズ検知場所105での音響ノイズを表す複数のノイズ入力104を受信するように構成されてもよい。
【0047】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102は、以下で説明するように一カ所以上の場所105での音響ノイズを推定するように構成された一カ所以上の場所105にある例えば、マイクロフォン、加速度計、回転速度計などの1つ以上の音響センサー、および/または1つ以上の仮想センサーからノイズ入力104を受信してもよい。
【0048】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102は、ノイズ・コントロール・ゾーン110内にある複数の所定の残留ノイズ検知場所での音響残留ノイズを表す複数の残留ノイズ入力を受信するように構成されてもよい。
【0049】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102は、一カ所以上の場所107および/または以下で説明するような一カ所以上の場所107にある例えば、マイクロフォン、加速度計、回転速度計など1つ以上の音響センサーから、または残留ノイズを推定するように構成された1つ以上の仮想センサーから残留ノイズ入力106を受信してもよい。
【0050】
いくつかの例示的な実施形態では、ANC100は、例えば、スピーカなどの少なくとも1つの音響変換器108を含んでもよい。コントローラ102は音響変換器108を制御して、例えば、以下で説明するようなノイズ・コントロール・ゾーン110内のノイズをコントロールするように構成された音響ノイズ・コントロール・パターンを生成してもよい。
【0051】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102はノイズ入力104と残留ノイズ入力106に基づきノイズ・コントロール信号109を決定し、ノイズ・コントロール信号109を例えば、以下で説明するような音響変換器108に出力するように構成されてもよい。
【0052】
いくつかの例示的な実施形態では、ノイズ・コントロール信号109に基づきノイズ・コントロール・パターンを生成するための1つ以上の適切なスピーカなどの少なくとも1つの音響変換器108には、例えば、1つ以上の音響変換器のアレイが含まれてもよい。
【0053】
いくつかの例示的な実施形態では、少なくとも1つの音響変換器108は一カ所以上の場所に配置されてもよく、この場所は以下に基づいて決定されてもよい。すなわち、この場所は、例えば、ゾーン110のサイズおよび/または形状などのノイズ・コントロール・ゾーン110の1つ以上の属性、1つ以上の予測される入力104の属性、例えばノイズ・コントロール・ゾーン110に対するノイズ源202の予測される場所および/または方向などの1つ以上の潜在的な実際のノイズ源202の1つ以上の予測される属性、ノイズ源202の数などに基づいて決定されてもよい。
【0054】
ある例では、音響変換器108には、Mで表される所定の数のスピーカまたはマルチ・チャンネルの音響源のスピーカ・アレイを含んでもよい。例えば、音響変換器108には、Cerwin−Vega Inc., Chatsworth,Calif.から入手可能なスピーカ、Part No.AI 4.0などを含む。
【0055】
いくつかの例示的な実施形態では、音響変換器108は、例えば、ゾーン110の外部など適切な場所に配置された適切な「コンパクト音響源」を用いて実現されたスピーカのアレイを含んでもよい。他の例では、スピーカのアレイは、例えば、ノイズ・コントロール・ゾーン110周囲などの空間に分散された複数のスピーカを用いて実現されてもよい。
【0056】
いくつかの例示的な実施形態では、場所105はノイズ・コントロール・ゾーンの外部に分散されてもよい。例えば、一カ所以上の場所105はノイズ・コントロール・ゾーン10を囲むエンベロープまたはエンクロージャ上に分散またはその近くに分散されてもよい。
【0057】
例えば、ノイズ・コントロール・ゾーン110が球状容積で定義される場合、一カ所以上の場所105は球状容積の表面上および/またはその外部に分散されてもよい。
【0058】
他の例では、一カ所以上の場所105は例えば、球状容積を囲む球状容積の上および/または球状容積の外部にある一カ所以上の場所を組み合わせた場所に分散されてもよい。
【0059】
いくつかの例示的な実施形態では、場所107は、例えば、ノイズ・コントロール・ゾーン110のエンベロープの近くなどノイズ・コントロール・ゾーン110内に分散されてもよい。
【0060】
例えば、静寂ゾーン110は球状容積によって定義される場合、場所107は、ノイズ・コントロール・ゾーン110の半径よりも小さい半径を持つ球状表面上に分散されてもよい。
【0061】
いくつかの例示的な実施形態では、ANCシステム100は1つ以上の第1の音響センサー(「プライマリ・センサー」)を含み、一カ所以上の複数のノイズ検知場所105で音響ノイズを検知する。
【0062】
いくつかの例示的な実施形態では、ANCシステム100は1つ以上の第2の音響センサー(「エラー・センサー」)を含み、一カ所以上の複数の残留ノイズ検知場所107で音響残留ノイズを検知する。
【0063】
いくつかの例示的な実施形態では、1つ以上のエラー・センサーおよび/または1つ以上のプライマリ・センサーは1つ以上の「仮想センサー(仮想マイクロフォン)」によって実現されてもよい。特定のマイクロフォンの場所に対応する仮想マイクロフォンは、特定のマイクロフォンの場所にある実際の音響センサーによって検知されうる音響パターンを評価できる適切なアルゴリズムおよび/または方法によって実現されてもよい。
【0064】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102は、例えば、仮想マイクロフォンの特定の場所で音響ノイズ・パターンを推定および/または評価することによって、仮想マイクロフォンの機能をシミュレーションおよび/または実行するように構成されてもよい。
【0065】
いくつかの例示的な実施形態では、ANCシステム100には、例えば、マイクロフォン、加速度計、回転速度計などの一カ所以上の場所105でのプライマリ・パターンを推定するように構成された1つ以上のプライマリ・センサーの第1のアレイ219を含んでもよい。例えば、プライマリ・センサーには、球状ノイズ・コントロール・ゾーン110を定義する球状表面上のプライマリ・パターンを検知する1つ以上のセンサーが含まれてもよい。
【0066】
例えば、アレイ219には、ARIO Electronics Co.Ltd.,Taoyuan, Taiwanから入手可能なマイクロフォン、Part No.ECM6APが含まれてもよい。このマイクロフォンは、例えば、毎秒Nサンプルのシーケンスを含むノイズ信号104を出力する場合がある。例えば、マイクロフォンが約44.1KHzのサンプリング・レートで動作する場合、Nは毎秒41100であってもよい。ノイズ信号104には、他の適切なサンプリング・レートおよび/または他の適切な属性を持つ他の適切な信号を含んでもよい。
【0067】
いくつかの例示的な実施形態では、アレイ219の1つ以上のセンサーは、1つ以上の「仮想センサー」を用いて実現されてもよい。例えば、アレイ219は少なくとも1つのマイクロフォンおよび少なくとも1つの仮想マイクロフォンを組み合わせて実現されてもよい。場所105の特定のマイクロフォンの場所に対応する仮想マイクロフォンは、例えば、特定のマイクロフォンの場所にある音響センサーで検知されうる音響パターンを評価できるコントローラ102の一部として、またはシステム100の他の要素の一部としてなど適切なアルゴリズムおよび/または方法によって実現されてもよい。例えば、コントローラ102は、アレイ210の少なくとも1つのマイクロフォンによって検知される少なくとも1つの実際の音響パターンに基づき仮想マイクロフォンの音響パターンを評価するように構成されてもよい。
【0068】
いくつかの例示的な実施形態では、ANCシステム100は、例えば、一カ所以上の場所107で音響残留ノイズを検知するように構成されたマイクロフォンなど1つ以上のエラー・センサーの第2のアレイ221を含んでもよい。例えば、エラー・センサーには、球状ノイズ・コントロール・ゾーン110内の球状表面上にある音響残留ノイズ・パターンを検知する1つ以上のセンサーを含んでもよい。
【0069】
いくつかの例示的な実施形態では、アレイ221の1つ以上のセンサーは、1つ以上の「仮想センサー」を用いて実現されてもよい。例えば、アレイ221には、少なくとも1つのマイクロフォンおよび少なくとも1つの仮想マイクロフォンを含んでもよい。場所107の特定のマイクロフォンの場所に対応する仮想マイクロフォンは、例えば、特定のマイクロフォンの場所にある音響センサーで検知されうる音響パターンを評価できるコントローラ102の一部として、またはシステム100の他の要素の一部として適切なアルゴリズムおよび/または方法によって実現されてもよい。例えば、コントローラ102は、アレイ221の少なくとも1つのマイクロフォンによって検知される少なくとも1つの実際の音響パターンに基づき仮想マイクロフォンの音響パターンを評価するように構成されてもよい。
【0070】
いくつかの例示的な実施形態では、場所105および/または107の数、場所および/または分散、および/または一カ所以上の場所105および107での1つ以上の音響センサーの数、場所、および/または分散は、以下に基づき決定されてもよい。すなわち、ノイズ・コントロール・ゾーン110のサイズまたはノイズ・コントロール・ゾーン110のエンベロープのサイズ、ノイズ・コントロール・ゾーン110の形状またはノイズ・コントロール・ゾーン110のエンベロープの形状、一カ所以上の場所105および/または107に配置される音響センサーの1つ以上の属性、例えばセンサーのサンプリング・レートなどに基づき決定されてもよい。
【0071】
ある例では、1つ以上の音響センサー、例えば、マイクロフォン、加速度計、回転速度計などは、例えば以下の式1によって定義される空間サンプリング定理(Spatial Sampling Theorem)に従い、場所105および/または107に配置されてもよい。
【0072】
例えば、プライマリ・センサーの数、プライマリ・センサー間の距離、エラー・センサーの数および/またはエラー・センサー間の距離は、以下の式1によって定義される空間サンプリング定理(Spatial Sampling Theorem)に従い決定してもよい。
【0073】
ある例では、このプライマリ・センサーおよび/またはエラー・センサーは、例えば、dで表される距離で互いに均一に分散されてもよい。例えば、距離dは、以下のように決めてもよい。
【数1】
この場合、cは音の速さを表し、fmaxはノイズ・コントロールが望ましい最大周波数を表す。
【0074】
例えば、対象とする最大周波数は、fmax = 100[Hz]である場合、距離dは、以下のように決定されてもよい。
【数2】
【0075】
図2のように、配置方式200は円状または球状のノイズ・コントロール・ゾーン110に関して構成されている。例えば、場所105は、ノイズ・コントロール・ゾーン110の周囲に球状または円形の方式で実質的に均等に分散されており、場所107は、ノイズ・コントロール・ゾーン110内に球状または円形の方式で実質的に均等に分散されている。
【0076】
しかし、他の実施形態では、ANCシステム100の構成要素は、例えば、他の適切な形式および/または形式のノイズ・コントロール・ゾーンに関して構成される場所105および/または107の適切な分散を含む他の配置方式によって配置されてもよい。
【0077】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102は、例えば、以下で説明するようなノイズ・コントロール・ゾーン110内のエネルギー、振幅、位相、周波数、方向、および/または統計的特性などの少なくとも1つのノイズ・パラメータによって低減されるノイズ・コントロール・パターンを決定するように構成されてもよい。
【0078】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102は以下で説明するように、ノイズ・コントロール・ゾーン110内の1つ以上の第2のノイズ・パターンを低減することなく、ノイズ・コントロール・ゾーン110内の1つ以上の所定の複数の第1のノイズ・パターンを選択的に低減するようにノイズ・コントロール・パターンを決定してもよい。
【0079】
ある例示的な実施形態では、ノイズ・コントロール・ゾーン110は、車両内に存在する場合があり、コントローラ102は、ノイズ・コントロール・ゾーン110内の1つ以上の第2のノイズ・パターンを低減することなく、ノイズ・コントロール・ゾーン110内の1つ以上の第1のノイズ・パターンを選択的に低減するようにノイズ・コントロール・パターンを決定してもよい。第1のノイズ・パターンには、ロード・ノイズ・パターン、ウィンド・ノイズ・パターン、および/またはエンジン・ノイズ・パターンを含む。第2のノイズ・パターンには、車両内にあるオーディオ・デバイスのオーディオ・ノイズ・パターン、クラクション・ノイズ・パターン、サイレン・ノイズ・パターン、ハザードのハザード・ノイズ・パターン、アラーム信号のアラーム・ノイズ・パターン、情報信号のノイズ・パターンなどを含む。
【0080】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102は、ノイズ検知場所105で音響ノイズを生成する1つ以上の実際のノイズ源202の1つ以上のノイズ源属性に関する情報を持つことなく、ノイズ・コントロール・パターンを決定してもよい。
【0081】
例えば、ノイズ源属性には、ノイズ源202の数、ノイズ源202の場所、ノイズ源202のタイプおよび/または1つ以上のノイズ源202によって生成される1つ以上のノイズ・パターンの1つ以上の属性が含まれてもよい。
【0082】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102は複数のノイズ入力104から統計的に独立した複数の独立参照パターンを抽出するように構成されてもよい。
【0083】
例えば、コントローラ102は、図4を参照して以下で説明するように複数の独立参照パターンを抽出するための抽出器を含んでもよい。
【0084】
本明細書では、「独立参照パターン」という表現は、エネルギー、振幅、位相、周波数、方向、1つ以上の統計的信号特性など少なくとも1つの特徴および/または属性に関して独立している複数の音響パターンを表す場合がある。
【0085】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102は、例えば、図4を参照して以下で説明するように所定の抽出関数を複数のノイズ入力104に適用することによって複数の独立参照パターンを抽出してもよい。
【0086】
いくつかの例示的な実施形態では、独立参照パターンの抽出は、例えば非同一のモデル化された音響源の各数に対応するなど所定の数の独立参照パターンの組み合わせとして入力104のプライマリ・パターンをモデル化するために使用してもよい。
【0087】
このモデリングは、例えば、演算効率などの効率向上、プライマリ・パターンおよび/または1つ以上の実際のノイズ源202に関する事前情報を持つことなくプライマリ・パターンを処理した結果生じうる、例えば、数学的および/または演算の複雑さなどの複雑さの軽減のために有用でありうる。
【0088】
さらに、または代替的に、独立参照パターンの抽出は、例えば、以下で説明するような1つ以上の所定のノイズ属性および/またはタイプなどノイズ・コントロール・ゾーン110内のノイズを選択的にコントロールできるようにしてもよい。
【0089】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102は、複数の独立参照パターンの少なくとも1つに基づきノイズ・コントロール・パターンを生成するためのノイズ・コントロール信号109を決定してもよい。
【0090】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ102は、例えば、ノイズ・コントロール・ゾーン110内でコントロールする少なくとも1つの所定のノイズ・パターンの1つ以上の所定の音響パターン属性に基づき、複数の独立参照パターンから、少なくとも1つの独立参照パターン(「選択された独立参照パターン」)を選択してもよい。
【0091】
いくつかの例示的な実施形態では、音響パターン属性には、所定のノイズ・パターンの振幅、エネルギー、位相、周波数、方向、および1つ以上の統計的特性が含まれてもよい。
【0092】
いくつかの例示的な実施形態では、所定の音響パターン属性は、ノイズ・コントロール・ゾーン110に影響を与える予測されるノイズ・パターンの予測および/または推測される属性に関連してもよい。
【0093】
ある例では、ANCシステム100は、室外からのノイズなどの第2のタイプの音響信号を除去しながら、ユーザが例えば室内のテレビなどの第1のタイプの音響信号を聴きたい部屋などの環境で実現されてもよい。この例では、コントローラ102は入力104を、それぞれ第1のタイプの音響信号と第2のタイプの音響信号に対応する第1と第2の非同一音響パターンにモデル化するように構成されてもよい。コントローラ102は、次に第2のタイプ、例えば、第1のタイプの音響信号に実質上影響を与えることなく、第2のタイプの音響信号を選択的に低減および/または打ち消すノイズ・コントロール信号109を生成してもよい。
【0094】
他の例では、ANCシステム100が車両内に配備されている場合、ノイズ・コントロール・ゾーン110に影響を与えると予測される1つ以上の予測されるノイズ・パターンが、ロード・ノイズ、ウィンド・ノイズ、エンジン・ノイズなどの1つ以上から生成されると予測される。従って、コントローラ102は、ロード・ノイズ・パターン、ウィンド・ノイズ・パターン、および/またはエンジン・ノイズ・パターンの1つ以上の属性に基づき、1つ以上の参照音響パターンを選択するように構成されてもよい。
【0095】
いくつかの例示的な実施形態のコントローラ300の概略を示す図3を参照する。いくつかの実施形態では、コントローラ300は、例えば、コントローラ102(図1)の機能を行ってもよい。
【0096】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ300は、例えば、ノイズ・コントロール・ゾーン110(図2)などのノイズ・コントロール・ゾーンに関して定義される場所105(図2)など複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズを表す入力104(図1)を含む複数の入力304を受信してもよい。コントローラ300は、音響変換器108(図1)などの少なくとも1つの音響変換器314をコントロールするためのノイズ・コントロール信号312を生成してもよい。
【0097】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ300は、推定関数を入力304に対応する入力308に適用することにより、ノイズ信号を推定するための推定器(「予測ユニット」)310を含んでもよい。
【0098】
いくつかの例示的な実施形態では、図3のようにコントローラは、例えば以下のように入力304から複数の独立参照パターンを抽出するために抽出器306を含んでもよい。こうした実施形態では、入力308には複数の独立参照パターンを含んでもよい。
【0099】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ300は、独立参照パターンの抽出を、入力304で表されるノイズを所定の数の独立参照パターンを生成する所定の数の非同一のモデル化された音響源の組み合わせとしてモデル化するために使用してもよい。このモデリングは、例えば、演算効率などの効率向上、入力304の属性および/または入力304および/または入力304に影響を与える1つ以上のノイズ源の事前情報なく入力304を処理することによって生じる数学および/または演算の複雑さなどの複雑さの軽減のために有用でありうる。
【0100】
さらに、または代替的に、コントローラ300は、1つ以上の所定のノイズ・パターン属性に基づき、非同一音響パターン308を利用して、選択的および/または構成可能な方法でノイズ・コントロール・ゾーン110(図2)内のノイズを低減および/または除去してもよい。
【0101】
例えば、コントローラ300は、1つ以上の第2のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅は、第2の異なる方式で影響をうけるようにしながら、ノイズ・コントロール信号312が第1の方式で1つ以上の第1のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギー、および/または波の振幅に影響を与えうるように非同一音響パターンに基づき、ノイズ・コントロール信号を生成するように構成されてもよい。
【0102】
ある例では、コントローラ300は、ノイズ・コントロール・ゾーン内の第1のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅に影響を与えることなく、ノイズ・コントロール・ゾーン内の第1のプライマリ・パターンのノイズ・エネルギーおよび/または波の振幅を低減および/または除去するように構成されたノイズ・コントロール信号312を生成してもよい。
【0103】
いくつかの例示的な実施形態では、抽出器306は、適切な属性によって事前定義されてもよい1つ以上の「不要な」ノイズ源および/またはパターンに関連するノイズ・パターンを抽出するように構成されてもよい。コントローラ300は、不要なノイズの特定部分だけが、変換器314によって生成されるパターンによって相殺されるようにノイズ・コントロール信号312を生成してもよい。
【0104】
いくつかの例示的な実施形態の抽出器400の概略を示す図4を参照する。いくつかの例示的な実施形態では、抽出器400は、抽出器306(図3)の機能を行う場合がある。
【0105】
いくつかの例示的な実施形態では、抽出器400は、例えば、ノイズ・コントロール・ゾーン110(図2)などのノイズ・コントロール・ゾーンに関して定義される場所105(図2)などの複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズを表す入力104(図1)を含む複数の入力408を受信してもよい。抽出器400は、以下で詳細に説明するように入力408から複数の独立参照パターン410を抽出してもよい。
【0106】
いくつかの例示的な実施形態では、抽出器400は抽出アルゴリズム402を入力408に適用してもよい。
【0107】
いくつかの例示的な実施形態では、抽出アルゴリズム402は例えば、当業者にはブラインド信号源分離(BSS)としても知られる独立成分分析(ICA)など適切な統計的アプローチで成分に分けられたノイズ源を表す場合がある。
【0108】
いくつかの例示的な実施形態では、抽出器400は、例えば、少なくとも1つの事前定義された基準に基づき、抽出アルゴリズム402の1つ以上のパラメータを適応するための適応アルゴリズム404を含んでもよい。例えば、適応アルゴリズム404は、以下で説明するように相互情報量(MI)など、独立参照パターン410の間の統計的依存を最小限にすることが可能な場合がある。
【0109】
いくつかの例示的な実施形態では、複数の入力408には、例えば、場所105(図2)などの複数のK’ノイズ検知場所のそれぞれに対応するK’で表される所定の数の入力を含む場合がある。
【0110】
いくつかの例示的な実施形態では、抽出アルゴリズム402は、K’で表される所定の数を含む独立参照パターン410を生成してもよい。
【0111】
いくつかの例示的な実施形態では、抽出アルゴリズム402は、K’ノイズ検知場所のノイズの現在のサンプルに対応するK’独立参照パターン410を決定してもよい。
【0112】
いくつかの例示的な実施形態では、抽出アルゴリズム402は、K’ノイズ検知場所のノイズの現在のサンプルに基づき、およびK’ノイズ検知場所のノイズの1つ以上の連続する前のサンプル、例えば、Iで表される所定の数のK’ノイズ検知場所のノイズを考慮して、K独立参照パターン410を決定してもよい。
【0113】
例えば、n番目のサンプルに対応する入力408は、X[n]で表される行列で表され、これには、K’ノイズ検知場所のn番目のサンプル、およびK’ノイズ検知場所のノイズのIの連続する前のサンプルが含まれる。例えば、入力408は以下のように表してもよい。
【数3】
【0114】
いくつかの例示的な実施形態では、抽出アルゴリズム402は、以下のように入力408に抽出関数を適用して独立参照パターン410を生成してもよい。
【数4】
この場合、F−1は、抽出関数を表し、S[n]はn番目のサンプルに対応するK独立参照パターン410のベクトルを表す。例えば、ベクトルS[n]は以下のように表されてもよい。
【数5】
【0115】
いくつかの例示的な実施形態では、関数F−1には、例えば、前のサンプルに関するメモリレス関数またはメモリの要素を持つ関数を含んでもよい。
【0116】
例えば、ベクトルS[n]は、メモリレス関数などを用いて以下のように表してもよい。
【数6】
【0117】
例えば、ベクトルS[n]は、メモリレス関数などを用いて以下のように表してもよい。
【数7】
【0118】
いくつかの例示的な実施形態では、関数F−1には、ベクトルSの各要素が、行列Xの要素の線形の組み合わせであるような線形関数、または非線形関数を含む場合がある。
【0119】
例えば、i番目のベクトルS[n]の要素は、以下のように決定されてもよい。
【数8】
【0120】
いくつかの例示的な実施形態では、関数F−1は、例えば、上記で説明したようにコントロール・ゾーン内でコントロールされる1つ以上の所定のノイズ・パターン属性に基づいて、K独立参照パターン410の1つ以上の所定の必要な属性に基づき決定されてもよい。
【0121】
いくつかの例示的な実施形態では、関数F−1は、例えば、メモリとの線形マッピング関数を含んでもよい。例えば、演算、F−1(・)は、ベクトルS[n]が、行列で関数F−1を行列X[n]を畳み込むことによって、式3によって決定しうるように、畳み込みの演算を表す場合がある。
【0122】
例えば、ベクトルS[n]は、以下のように式3をZ−ドメインに変換することによって決められる場合がある。
【数9】
この場合、B(z)は、分離行列を表す。
【0123】
例えば、抽出アルゴリズム402は、φ[S(z)]で表されるコントラスト関数に基づき、z−ドメインのベクトルS(z)を決定する場合がある。例えば、コントラスト関数φ[S(z)]は、抽出アルゴリズム402の出力S(z)の間で相互情報量(MI)として以下のように定義される場合がある。
【数10】
この場合、Iは情報関数を表し、Hはシャノンのエントロピーを表す。2つの変数X,Yに対応する情報関数I(X,Y)が、例えば、以下のように定義される。
【数11】
この場合、p(x,y)は、XおよびYの同時確率分布関数を表し、p(x)およびp(y)は、それぞれXおよびYの周辺確率分布を表す。
【0124】
例えば、抽出器400には、式9に従い抽出アルゴリズム402の出力に基づき、コントラスト関数φ[S(z)]を推定するためのコントラスト関数推定器406を含んでもよい。分離プロセスは、分離ユニットの出力間の相互情報量の最小化(コントラスト関数)でありうるため、例えば、抽出/分離が達成されると、コントラスト関数φ[S(z)]は、最少に到達する場合がある。例えば、適応アルゴリズム404は、関数φ[S(z)]の最小限を検知することにより、関数F−1を適応する場合がある。
【0125】
ある例では、分離行列B(z)は、例えば以下のように自然勾配の反復アルゴリズムを用いて決定してもよい。
【数12】
この場合、μは、例えば反復ステップなどの学習率を表す。
【0126】
再び図3を参照するが、他の実施形態では、コントローラ300は、抽出器306を含まない場合がある。従って、入力308には、入力304および/または入力304に基づいた他の入力が含まれる場合がある。
【0127】
いくつかの例示的な実施形態では、推定器310は、適切な線形および/または非線形の関数を入力308に適用してもよい。例えば、推定関数には、例えば、半径ベースの関数など非線形推定関数を含む場合がある。
【0128】
いくつかの例示的な実施形態では、推定器310は、ノイズ・コントロール・ゾーン内にある複数の所定の残留ノイズ検知場所での音響残留ノイズを表す複数の残留ノイズ入力316に基づき推定関数の1つ以上のパラメータを適応できる場合がある。例えば、入力316には、ノイズ・コントロール・ゾーン110(図2)内にある残留ノイズ検知場所107(図2)での音響残留ノイズを表す入力106(図1)を含む場合がある。
【0129】
いくつかの例示的な実施形態では、1つ以上の入力316には、少なくとも1つの特定の残留ノイズ・センサーの場所107(図2)で少なくとも1つの仮想エラー・センサーによって検知される残留ノイズ(「ノイズ・エラー」)に対応する少なくとも1つの仮想マイクロフォン入力を含んでもよい。例えば、コントローラ300は、以下で説明するように入力308と予測ノイズ信号312に基づき、特定の残留ノイズ・センサーの場所でノイズ・エラーを評価してもよい。
【0130】
ある例では、コントローラ300は、変換器314によって生成されるノイズ・コントロール・パターンの推定を生成するためにスピーカ伝達関数を利用してもよく、これは、例えば、スピーカ伝達関数を予測されるノイズ信号312に適用することによって行ってもよい。コントローラ300は、特定の残留ノイズ・センサーの場所でノイズ・パターンの推定を生成するために変調伝達関数を利用してもよく、これは、例えば、変調伝達関数を入力308によって表されるノイズ信号に適用することによって行ってもよい。コントローラ300は、ノイズ・パターンの推定からノイズ・コントロール・パターンの推定を差し引くことによって特定の残留ノイズ・センサーの場所で推定される残留ノイズを決定してもよい。
【0131】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ300は、ノイズ・パターンの現在のサンプルの後に続くノイズ・パターンのサンプル(「後続のサンプル」)を推定してもよく、これは例えば、現在のノイズ・パターンのサンプルおよび/または1つ以上の前のサンプルに基づき行う。コントローラ300は、変換器312が推定される後続のサンプルに基づきノイズ・コントロール・パターンを生成するように、例えば、ノイズ・コントロール・パターンが特定の残留ノイズ・センサーの場所に、そのノイズ・パターンが同じ特定の残留ノイズ・センサーの場所に届くのと同時に届くように、ノイズ・コントロール信号312を提供してもよい。
【0132】
いくつかの例示的な実施形態では、推定器310は、例えば、入力308に基づき、複数のMの各音響変換器を動かすためのy1(n)...yM(n)で表されるMコントロール・パターンを含むn番目のサンプルに対応する複数のノイズ・コントロール・パターンを生成するように構成されたマルチ入力マルチ出力予測ユニット(MIMO)を含んでもよい。
【0133】
いくつかの例示的な実施形態のMIMO予測ユニットの概略を示す図5を参照する。いくつかの例示的な実施形態では、MIMO予測ユニット500は、推定器310(図3)の機能を実行してもよい。
【0134】
図4のように、予測ユニット500は、例えば、抽出器306(図3)の出力としてベクトルS[n]を含む入力502を受信し、M音響変換器を含むラウドスピーカ・アレイ502を動かすように構成されてもよい。例えば、予測ユニット500は、入力308に基づき、複数のMそれぞれの音響変換器を動かすためにMノイズ・コントロール・パターンy1(n)...y(n)を含むコントローラ出力501を生成するように構成されてもよい。
【0135】
いくつかの例示的な実施形態では、例えば、2つ以上の例えば、M音響変換器のすべてがコントロール・ノイズ・パターンを例えば、同時に生成する場合、2つ以上のM音響変換器のアレイ502の間で干渉(クロストーク)が起こる場合がある。
【0136】
いくつかの例示的な実施形態では、予測ユニット500は、例えば、アレイ502にある各スピーカへの入力信号を同時に最適化しながら、アレイ502を制御して実質上、最適なノイズ・コントロール・パターンを生成するように構成された出力501を生成してもよい。例えば、予測ユニット500は、スピーカ間の干渉を打消しながらアレイ502のマルチ・チャンネルのスピーカを制御してもよい。
【0137】
ある例では、予測ユニット500は、メモリとの線形関数を利用してもよい。例えば、予測ユニット500は、以下のようにプライマリ・パターンのn番目のサンプルに関してアレイ502のm番目のスピーカに対応するy[n]で表されるノイズ・コントロール・パターンを決定してもよい。
【数13】
この場合、s[n]は、例えば、抽出器306(図3)から受信したk番目の独立参照パターンを表し、wkm[n]は、k番目の独立参照パターンに基づき、m番目のスピーカを動かすように構成された予測フィルタ係数を表す。
【0138】
他の例では、予測ユニット500は、他の適切な予測アルゴリズム、例えば、線形または非線形、メモリ有り、メモリ無しなどを実行して、出力501を決定してもよい。
【0139】
いくつかの例示的な実施形態では、予測ユニット500は、例えば、複数の残留ノイズ入力316を含む複数の残留ノイズ入力504に基づき、予測フィルタ係数wkm[i]を最適化してもよい。例えば、予測ユニット500は、予測フィルタ係数wkm[i]を最適化し、残留エラー検知場所107(図2)での最大の相殺的干渉を達成するようにしてもよい。例えば、場所107には、Lの場所を含み、入力504には、e[n],e[n],…e[n]で表されるLの残留ノイズ構成要素を含む場合がある。
【0140】
いくつかの例示的な実施形態では、予測ユニット500は、例えば、最小二乗誤差法(MMSE)基準、またはその他の適切な基準に基づき、予測フィルタ係数wkm[i]を最適化してもよい。例えば、以下のように最適化予測フィルタ係数xに対してJで表されるコスト関数は、場所107(図2)での残留ノイズ構成要素e[n],e[n],…e[n]の合計エネルギーとして定義されてもよい。
【数14】
【0141】
いくつかの例示的な実施形態では、l番目の場所のe[n]として表される残留ノイズ・パターンは、例えば、以下のように表される。
【数15】
この場合、stfim[j]は、予測フィルタの適応重みベクトルを表し、l番目の場所のアレイ502のm番目のスピーカからのJ係数を持つ移動経路関数を表し、wkm[n]は、I係数がk番目の参照音響パターンSk[n]とm番目のスピーカの制御信号との関係を表す。
【0142】
いくつかの例示的な実施形態では、予測ユニット500は、適応重みベクトルwkm[n]を、例えば、最適ポイントに到達、最大ノイズ減少達成などに最適化してもよい。例えば、以下のように予測ユニット500は、各ステップで重みベクトルwkm[n]がコスト関数Jの勾配の負方向に更新される場合、勾配ベースの適応方法を実施してもよい。
【数16】
【0143】
図3を参照すると、いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ300は、ノイズ・コントロール・ゾーン内、例えばゾーン110(図2)内の1つ以上の音響属性を変更、修正、および/またはコントロールするように実現されてもよい。以下は、コントローラ300のいくつかの例示的な実施形態にすぎない。
【0144】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ300は、車両内の不要なノイズを低減するために実現されてもよい。ある例では、複数の音響パターンの「タイプ」、例えば、オーディオ・システムの信号、クラクション、サイレン、ロード・ノイズ、および/またはウィンド・ノイズなど車両内に存在する場合があるが、これらが同時に発生することもある。
【0145】
抽出器306は、異なるノイズ・パターンを分けて、推定器310にロード・ノイズ・パターンおよび/またはウィンド・ノイズ・パターンなど1つ以上の不要なノイズ・パターンのみを含む入力308を提供するように構成されてもよい。従って変換器314を制御して、推定器310は、1つ以上の不要なノイズ・パターンを低減および/または除去しながら、他の必要なノイズ・パターン、例えばオーディオ・パターンに影響を与えるノイズ・コントロール・パターンを生成してもよい。
【0146】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ300は、いびきの音響「パターン」をアラームの音響パターンから分けるなど寝室のシナリオで実施されてもよい。従って、コントローラ300は、時計の音響パターンに影響を与えずに、いびきの音響パターンを低減および/または除去できる場合がある。
【0147】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ300は、コントローラ300によってコントロールされる1つ以上のノイズ・パターンを選択するように構成されてもよい。例えば、図6のように、コントローラ600には、抽出器606と予測ユニット610との間に選択ユニット609を含んでもよい。選択ユニット609は、所定の基準に基づき、予測ユニット610に特別に関心のある信号だけを選択的に提供してもよい。例えば、考えられる基準としては、特定のスペクトルまたは時間的挙動がありうる。例えば、周波数、ドメインでコントロール対象の信号が、コントロール対象ではない信号とオーバーラップしない場合、セレクタ609は、コントロール対象の信号の周波数をフィルタリングするために複数のフィルタを利用するフィルタ・バンクの手法を用いてこうした信号を分離してもよい。
【0148】
図7は、いくつかの例示的な実施形態のヘッドレスト700のユーザの頭部周囲でQuiet Bubble702を維持するように構成されたヘッドレストのANCシステム700の概念的配置の前面図と背面図である。図7のように、ヘッドレストのANCシステム700には、例えば、ヘッドレストの両側に配置された2つの変換器704など2つ以上の音響変換器、例えば、ヘッドレストの背面などQuiet Bubble700の外側、3つの基準センサー706など1つ以上の基準センサー、例えばQuiet Bubble702の内側に配置された4つのセンサー708などの2つ以上の残留ノイズ・センサーが含まれてもよい。
【0149】
図8は、いくつかの例示的な実施形態のノイズ・コントロールの方法のフローチャートである。いくつかの例示的な実施形態では、図8の方法の1つ以上のオペレーションは、例えばシステム100(図1)などのANCシステム、コントローラ300(図3)などのコントローラ、および/またはANCシステムの他の構成要素によって行われてもよい。
【0150】
ブロック800のように、この方法には、所定のノイズ・コントロール・ゾーンに関して定義される複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズの測定を含んでもよい。例えば、コントローラ102(図1)は、ノイズ・コントロール・ゾーン110(図2)に関する場所105(図2)に対応するノイズ入力104(図1)を受信してもよい。上記のように、例えば、入力104(図1)は、1つ以上の実際および/または仮想のノイズ・センサーからの入力に基づき、決定してもよい。
【0151】
ブロック802のように、この方法には所定のノイズ・コントロール・ゾーン内にある複数の所定の残留ノイズ検知場所での音響残留ノイズの測定を含んでもよい。例えば、コントローラ102(図1)は、コントロール・ゾーン110(図2)に関する場所107(図2)に対応する残留ノイズ入力106(図1)を受信してもよい。例えば、入力106(図1)は、上記のように1つ以上の実際および/または仮想のセンサーからの入力に基づき決定してもよい。
【0152】
ブロック804のように、この方法には、複数の所定のノイズ検知場所での音響ノイズおよび複数の所定の残留ノイズ検知場所での音響残留ノイズに基づき、ノイズ・コントロール・ゾーン内の音響ノイズをコントロールするためのノイズ・コントロール・パターンの決定を含んでもよい。例えば、コントローラ102(図1)は、上記のように、ノイズ入力104(図1)と残留ノイズ入力106(図1)に基づきノイズ・コントロール信号109(図1)を決定してもよい。
【0153】
ブロック806のように、この方法にはノイズ・コントロール・パターンを少なくとも1つの音響変換器に出力することを含んでもよい。例えば、上記のようにコントローラ102(図1)は、音響変換器108に信号109を出力してもよい。
【0154】
ブロック803のように、この方法には複数のノイズ入力から、少なくとも1つの所定の属性に関して統計的に独立している複数の独立参照パターンを抽出することを含んでもよい。例えば、抽出器306(図3)は、上記のように複数の独立参照パターンを抽出してもよい。例えば、ノイズ・コントロール・パターンの決定には、複数の独立参照パターンの少なくとも1つの独立参照パターンに基づき、ノイズ・コントロール・パターンを決定することを含んでもよい。
【0155】
いくつかの例示的な実施形態の製品900の概略を示す図9を参照する。製品900には、ロジック904を保存するための非一時的なマシンで読み取り可能な記憶媒体902が含まれてもよく、ロジック904は例えば、コントローラ102の少なくとも一部の機能および/または図8の1つ以上のオペレーションを行うために使用されてもよい。「非一時的なマシンで読み取り可能な記憶媒体」とは、一時的に伝搬する信号を唯一の例外として、すべてのコンピュータで読み取り可能な媒体を含むことを意図している。
【0156】
いくつかの例示的な実施形態では、製品900および/またはマシンで読み取り可能な記憶媒体902には、揮発メモリ、不揮発メモリ、リムーバブルまたはノンリムーバブルなメモリ、消去可能または消去不可能なメモリ、書き込み可能または再書き込み可能なメモリなどデータを保存できる1つ以上のコンピュータで読み取り可能な媒体を含んでもよい。例えば、マシンで読み取り可能な記憶媒体902には、以下を含む。すなわち、RAM、DRAM、DDR−RAM(ダブル・データ・レート−RAM)、SDRAM、SRAM(スタティックRAM)、ROM、PROM(プログラマブルROM)、EPROM(消去可能なプログラマブルROM)、EEPROM(電気的に消去可能なプログラマブルROM)、CD−ROM(コンパクト・ディスクROM)、CD−R(Compact Disk Recordable)、CD−RW(Compact Disk Rewritable)、フラッシュ・メモリ(例、NORまたはNANDのフラッシュ・メモリ)、CAM(連想メモリ)、ポリマー・メモリ、相変化メモリ、強誘電体メモリ、SONOS(Silicon Oxide Nitride Oxide Semiconductor)メモリ、ディスク、フロッピ・ディスク、ハードディスク、光ディスク、磁気ディスク、カード、磁気カード、光学カード、テープ、カセットなどを含む。コンピュータで読み取り可能な記憶媒体には、リモート・コンピュータからコンピュータ・プログラムを要求しているコンピュータにダウンロードまたは転送することに関わる適切な媒体を含み、モデム、無線またはネットワーク接続などの通信リンクを介して搬送波または他の伝搬媒体で実現するデータ信号によって運ばれる。
【0157】
いくつかの例示的な実施形態では、ロジック904には、マシンによって実行されると、本明細書で説明した方法、プロセスおよび/またはオペレーションをマシンに行わせる命令、データ、および/またはコードが含まれてもよい。このマシンには、例えば、適切な処理プラットフォーム、コンピューティング・プラットフォーム、コンピューティング・デバイス、処理デバイス、コンピューティング・システム、処理システム、コンピュータ、プロセッサなどが含まれてもよく、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアなどを適切に組み合わせたものを用いて実現してもよい。
【0158】
いくつかの例示的な実施形態では、ロジック904は、ソフトウェア、ソフトウェア・モジュール、アプリケーション、プログラム、サブ・ルーチン、命令、命令セット、コンピューティング・コード、単語、値、記号などを含んでもよい、またはこれらによって実現されてもよい。命令には、ソース・コード、コンパイルされたコード、インタープリットされたコード、実行可能コード、静的コード、動的コードなどの適切なタイプのコードを含む。命令は、プロセッサに対して一定の機能を実行するように指示する所定のコンピュータ言語、方式、またはシンタックスに従い実現されてもよい。命令は、C、C++、Java(登録商標)、BASIC、Matlab、Pascal、Visual BASIC、アセンブリ言語、マシン・コードなど適切な高レベル、低レベル、オブジェクト指向、ビジュアル、コンパイル、および/またはインタープリットされたプログラミング言語を用いて実現されてもよい。
【0159】
1つ以上の実施形態に関して本明細書で説明した関数、オペレーション、構成要素、および/または機能は、本明細書で1つ以上の実施形態に関して説明した1つ以上の他の関数、オペレーション、構成要素、および/または機能と組み合わせて、または組み合わせて利用してもよく、またはその逆であってもよい。
【0160】
本発明の一部の機能を本明細書で図示し、説明したが、当業者は多くの改良、代替、変更、および同等物を思いつくであろう。従って、添付の請求項では本発明の真の精神の範囲内であればこうしたすべての改良および変更をカバーすることを意図することを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9