(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182525
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】iFRET用探針及びその用途
(51)【国際特許分類】
G01N 33/542 20060101AFI20170807BHJP
C07K 5/113 20060101ALI20170807BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20170807BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
G01N33/542 AZNA
C07K5/113
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【請求項の数】32
【全頁数】68
(21)【出願番号】特願2014-516924(P2014-516924)
(86)(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公表番号】特表2014-522965(P2014-522965A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】KR2012005009
(87)【国際公開番号】WO2012177106
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年1月27日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0061404
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513322578
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100127199
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】チャン サン ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュ ホワン
(72)【発明者】
【氏名】ルクキナ エレナ
(72)【発明者】
【氏名】カン ヒョ ジン
【審査官】
草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−533329(JP,A)
【文献】
特開2007−040834(JP,A)
【文献】
特開2002−286642(JP,A)
【文献】
特開2007−217330(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0106714(US,A1)
【文献】
Liao F,外11名,Homogeneous noncompetitive assay of protein via Forster-resonance-energy-transfer with tryptophan residue(s) as intrinsic donor(s) and fluorescent ligand as acceptor.,Biosens Bioelectron.,2009年 9月15日,Vol.25,No.1 ,Page.112-117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
C07K 5/113
G01N 33/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子を様々な候補群から取得し、タンパク質の固有の蛍光(intrinsic fluorescence)に対するアクセプター(acceptor)機能を有する蛍光分子と直接又はリンカーを介して連結し、450nm又はそれ以上の長波長の光を放出する固有の蛍光共鳴エネルギー転移(iFRET;intrinsic Fluorescence Resonance Energy Transfer)用探針を製造する第1ステップと、
前記標的タンパク質に第1ステップで製造されたiFRET用探針を処理する第2ステップと、
標的タンパク質内のアミノ酸であるトリプトファン(Tryptophan)、チロシン(Tyrosine)又はフェニルアラニン(Phenylalanine)を励起する波長を含む光を照射し、発光するiFRET用探針を確認する第3ステップとを含み、
タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する蛍光分子が、下記式(I)〜(XXII)で表される化合物よりなる群から選ばれることを特徴とする、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子を検索する方法。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【請求項2】
前記検索方法により確認された、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子が、前記標的タンパク質が関与する疾患を予防、改善又は治療するための物質又はその一部として用いられることを特徴とする、請求項1に記載の検索方法。
【請求項3】
第2ステップが、水、緩衝溶液、炭素数1〜6の低級アルコール及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる溶媒内で又はバイオチップ、微粒子状、極微粒子状、細胞又は組織において行われることを特徴とする、請求項1に記載の検索方法。
【請求項4】
標的タンパク質が、260〜300nmの波長の光により励起され、290〜400nmの波長の光を発光し、
iFRET用探針が、300〜400nmの波長の光によって選択的に励起されることを特徴とする、請求項1に記載の検索方法。
【請求項5】
標的タンパク質に特異的な結合部位(bindingsite)又は前記結合部位を有する分子を様々な候補群から取得し、タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する第1蛍光分子と直接又はリンカーを介して連結し、第1のiFRET用探針を製造する第1ステップと、
前記標的タンパク質に第1のiFRET用探針を処理する第2ステップと、
標的タンパク質内のアミノ酸であるトリプトファン(Tryptophan)、チロシン(Tyrosine)又はフェニルアラニン(Phenylalanine)を励起する波長を含む光を照射し、発光する第1のiFRET用探針を確認する第3ステップと、
前記第3ステップで発光する第1のiFRET用探針を構成する、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子をタンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する第2蛍光分子と直接又はリンカーを介して連結し、第2のiFRET用探針を製造する第4ステップとを含み、
前記第1及び第2のiFRET用探針は、450nm又はそれ以上の長波長の光を放出し、
タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する蛍光分子が、下記式(I)〜(XXII)で表される化合物よりなる群から選ばれることを特徴とする、iFRET用探針
の製造方法。
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【請求項6】
第1蛍光分子及び第2蛍光分子が、同一又は異なることを特徴とする、請求項5に記載のiFRET用探針の製造方法。
【請求項7】
タンパク質の固有の蛍光を発揮するアミノ酸が、トリプトファン(Tryptophan)、チロシン(Tyrosine)、フェニルアラニン(Phenylalanine)又はこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項5に記載のiFRET用探針の製造方法。
【請求項8】
第3ステップが、水、緩衝溶液、炭素数1〜6の低級アルコール及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる溶媒内で又はバイオチップ、微粒子状、極微粒子状、細胞又は組織で行われることを特徴とする、請求項5に記載のiFRET用探針の製造方法。
【請求項9】
タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する第2蛍光分子が、それ自体が又は第2のiFRET用探針内で標的タンパク質内の励起されたアミノ酸が放出する光により励起され、450nm又はそれ以上の長波長の光を放出することを特徴とする、請求項5に記載のiFRET用探針の製造方法。
【請求項10】
標的タンパク質が、260〜300nmの波長の光により励起され、290〜400nmの波長の光を放出し、第1のiFRET用探針が300〜400nmの波長の光によって選択的に励起されることを特徴とする、請求項5に記載のiFRET用探針の製造方法。
【請求項11】
標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子と、iFRETアクセプター機能を有する蛍光分子として下記式(I)〜(XXII)で表される化合物よりなる群から選ばれる分子と、が直接又はリンカーを介して結合され、
450nm又はそれ以上の長波長の光を放出することを特徴とする、iFRET用探針。
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【化64】
【化65】
【化66】
【請求項12】
標的タンパク質が、カスパーゼ−3(Caspase-3)、HSP90(heat shock protein 90)又はストレプトアビジンであることを特徴とする、請求項11に記載のiFRET用探針。
【請求項13】
下記式(XXIII)、(XXIV)、又は(XXVI)〜(XXXII)よりなる群から選ばれる式で表されることを特徴とする、請求項11に記載のiFRET用探針:
【化67】
【化68】
【化69】
【化70】
【化71】
【化72】
【化73】
【化74】
【化75】
【請求項14】
請求項5〜10のいずれか1項に記載の方法により製造された第2のiFRET用探針又は請求項11〜13のいずれか1項に記載のiFRET用探針を、標的タンパク質を含有するサンプル内に添加する第1ステップと、
標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長を含む光を照射し、前記iFRET用探針が発光する光を確認又は追跡する第2ステップと、
を含み、
iFRETにより標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項15】
標的タンパク質の量又は標的タンパク質の活性を測定したり、標的タンパク質の作用機序又は移動経路の追跡のために用いられることを特徴とする、請求項14に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項16】
前記iFRET用探針と併用して特定物質をサンプル内に添加し、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長を含む光を照射し、前記iFRET用探針が発光する光を確認又は追跡する第3ステップとを更に含み、特定物質の存在有無に応じて、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する光を照射して、前記iFRET用探針が発光する光の変化を確認し、
標的タンパク質に対して所定機能を有する特定物質をスクリーニングしたり、又は前記特定物質の標的タンパク質に対する機能を確認することを特徴とする、請求項14に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項17】
前記特定物質が、標的タンパク質と関連された疾患を予防、治療又は改善するための薬物又は食品添加剤であることを特徴とする、請求項16に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項18】
サンプルが、標的タンパク質自体、細胞、組織(tissue)、血液、糞尿、水、土壌、空気、食品、廃棄物、及び動植物組織及び生物体自体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項14に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項19】
標的タンパク質の機能を確認したり、様々な検体から疾患関連標的タンパク質を検出する方法として用いて疾患診断したり、食品、飼料、飲料から微生物或いは微生物由来の標的タンパク質を検出する方法として用いられることを特徴とする、請求項15に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項20】
第2ステップで、iFRET用探針が放出する光のうち、450nm又はそれ以上の長波長の光を確認又は追跡することを特徴とする、請求項14に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項21】
自動化ワークステーションにより行われることを特徴とする、請求項14に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項22】
請求項11の固有の蛍光共鳴エネルギー転移(iFRET)用探針を用いた標的タンパク質の検出又はイメージ化の方法であって、
前記iFRET用探針が、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子と、標的タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する蛍光分子とが直接又はリンカーを介して結合されたものであり、
前記iFRET用探針を標的タンパク質を含有する試料内に導入する第1ステップと、
標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長帯の第1光及びiFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光を交互に第1ステップで製造された試料に照射する第2ステップと、
標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長帯の第1光を試料上に照射し、iFRET用探針で生成される第1発光信号値とiFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光を照射し、iFRET用探針で生成される第2発光信号値とを分析し、第1発光信号値と第2発光信号値のレシオメトリック法(ratiometric measurement)により第3発光信号値を算出する第3ステップと
を含むことを特徴とする、標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項23】
第1発光信号値、第2発光信号値及び第3発光信号値が、試料の2次元の各地点に対応される2次元的な映像値であることを特徴とする、請求項22に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項24】
第1光の波長範囲が260nm〜300nmであり、第2光の波長範囲が300nm〜400nmであることを特徴とする、請求項22に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項25】
標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長帯の第1光及びiFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光を一定時間の間隔で交互に照射し、
標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長帯の第1光を試料上に照射し、iFRET用探針で生成される第1発光信号値と、iFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光を照射し、iFRET用探針で生成される第2発光信号値とからレシオメトリック法で第3発光信号値が一定時間の間隔で算出されて蓄積され、標的タンパク質の位置、量又は両者の経時的変化を確認することができることを特徴とする、請求項22に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項26】
標的タンパク質の経時的変化が、動映像で算出されることを特徴とする、請求項22に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項27】
標的タンパク質の量又は標的タンパク質の活性を測定したり、標的タンパク質の作用機序又は移動経路の追跡のために用いられることを特徴とする、請求項22に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項28】
前記iFRET用探針と併用して特定物質を試料内に添加して標的タンパク質内のアミノ酸を励起する光を照射し、前記iFRET用探針が発光する光を確認又は追跡する第4ステップを更に含み、
特定物質の存在有無に応じて、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する光を照射して前記iFRET用探針が発光する光の変化を確認し、標的タンパク質に対して所定機能を有する特定物質をスクリーニングしたり、前記特定物質の標的タンパク質に対する機能を確認することを特徴とする、請求項22に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項29】
前記特定物質が、標的タンパク質に関連する疾患を予防、治療又は改善するための薬物又は食品添加剤であることを特徴とする、請求項28に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項30】
サンプルが、標的タンパク質自体、細胞、組織、血液、糞尿、水、土壌、空気、食品、廃棄物、及び動植物の組織及び生物体自体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項22に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項31】
標的タンパク質の機能を確認したり、様々な検体から疾患関連標的タンパク質を検出する方法として用いて疾患診断したり、食品、飼料、飲料から微生物或いは微生物由来標的タンパク質を検出する方法として用いられることを特徴とする、請求項28に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【請求項32】
自動化ワークステーションによって行われることを特徴とする、請求項28に記載の標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、iFRET(固有の蛍光共鳴エネルギー転移、intrinsic Fluorescence Resonance Energy Transfer)用探針及びその用途に関するものである。具体的に、本発明は、新規なiFRET用探針、iFRET用探針の製造方法、iFRET用探針を用いて、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子を検索する方法及びiFRET用探針を介して標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生命科学と関連した多くの分野で様々な物質が生体内又は生体外で生体物質を分析するための探針又はレポーターとして活用されている。このような探針又はレポーターシステムは、大きく、特定基質自体又は基質が酵素反応により分解又は変形して、現れる着色、発色、発光を測定する方法と、蛍光や着色能を有した物質自体を観察することに分けられる。
【0003】
前者の方法は、目的とするタンパク質に融合された形態でタンパク質の発現量、プロモーターの強度測定、組換え菌体の選別などの細胞内観察だけでなく、ウエスタン・ノーザンブロッテイング、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)等の細胞外観察にも活用されている。代表的な例として、アルカリ(性)ホスファターゼ(alkaline phosphatase)、ペルオキシダーゼ(peroxidase)、キサンチンオキシダーゼ(xanthineoxidase)などの酵素と、基質としてルミノール(luminol)、ルシゲニン(lucigenin)、アクリジニウムエステル(acridiniumester)、ビオチン(biotin)、フルオレセイン(fluorescein)、ジゴキシゲニン(dioxigenin)などの化合物が利用されている。
【0004】
しかし、これらが細胞内で発現される場合、生体内代謝経路を撹乱し、成長をしたり、アポトーシスを誘導する等の危険性が存在するという短所を有する。また、前記酵素の触媒特性に起因する問題だけでなく、用いられる基質の低い安定性は、実験誤差の主要な原因となり、これらの大部分が生物素材でない化学合成物であるため、細胞に有害となる可能性があり、生体内で持続的な観察が難しいという短所もある。したがって、前述した探針又はレポーターの大部分は生体内よりは生体外探針に主に利用されている。
【0005】
したがって、前記問題を改善するために、タンパク質自体が探針として作用するレポーターに関する研究が活発に進められてきた。タンパク質自体が探針である代表的な例としては蛍光タンパク質が挙げられる。これは、特定波長の光を受けて吸収し、活性化された蛍光団が低いエネルギーを有する正常状態に戻る過程で放出されるエネルギーが光の形で現れるという特性を有する。代表的な例としては、クラゲ(jellyfish)であるオワンクラゲに由来する緑色蛍光を発する緑色蛍光タンパク質(GFP)と、野生型イソギンチャクモドキ(Discocosoma)種から由来のDsRed(Discosoma赤色蛍光タンパク質)を挙げることができる。
【0006】
前記蛍光タンパク質は基質や補因子なしでタンパク質自体が蛍光を発するため、前者の場合のように代謝攪乱及び細胞生理学的因子に対する干渉が少なく、前者の酵素が活用される多くのの探針分野とそれ以外の分野、すなわち、酵素及び基質が持つ短所により適用することが難しい分野における活用が可能である。特に、タンパク質が特定波長の光により生成される固有の波長を有する蛍光を通して細胞や生物体を破壊することなく正常な生理機能を保持する、生きている状態で、特定タンパク質の移動と活性経路、細胞分裂及び分化過程などのように細胞内部で起こる複雑な変化を直接モニターリングすることにおいて、現存するいかなる方法よりも優れた要素として認められている。また、蛍光タンパク質は、βバレル(β-barrel)構造内部に蛍光団がある堅固な3次構造を有している。前記構造により物理化学的に非常に安定しており、優れた光安定性を有し、広い範囲のpH、温度区間、変性剤や有機溶媒などが存在する環境でも適用が可能であり、反復的な実験でも再現性が保持でき、従来の探針に比べて、安定した実験結果を得ることができる長所がある。また、タンパク質工学技術を活用し、野生型蛍光タンパク質と異なる波長の光を放出するように改良された赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青緑色蛍光タンパク質(CFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)などを組み合わせて活用する場合には、複数の現象を同時に観察でき、異なる波長の光を放出する蛍光タンパク質が隣接したり融合された形態で発現された時、起こるFRET現象を活用して、試料内の特定物質の存在有無の探索、タンパク質間の相互作用の観察などの研究目的に多様に活用できる長所を有する。
【0007】
しかし、前記GPF、YFP及びCFPの場合、照射する光の波長が似ていることから単一波長の光を利用して様々な波長の蛍光を同時に測定できる長所があるが、放出される光の波長度がGFPと類似しており、同時に使用する場合、それぞれの蛍光を測定するために、高価な装置を必要とする欠点がある。また、GFP骨格を有したあらゆるタンパク質の場合、蛍光団を構成する時間(maturation time)が必要であり、発現時点からの観察が難しいという欠点と構造形成に酸素が必要とされるので、無酸素(anoxic)環境での活用が難しいという短所、酸化過程で生産される活性酸素(ROS)が生体物質(脂肪酸、アミノ酸、タンパク質、核酸)に対する潜在的な毒性を有するという問題から活用範囲が大幅に制限されている。
【0008】
一方、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET;Fluorescence Resonance Energy Transfer)とは、短波長蛍光タンパク質(shorter wavelength dye)であるエネルギー供与体(donor)が、外部からエネルギーを吸収すると、供与体の励起エネルギーが光エネルギーとして放出される代わりに、所定の距離内に位置した(<10nm)長波長蛍光タンパク質(longer wavelength excitation dye)であるエネルギー受容体(acceptor)に無発光で(radiationless)伝達され、受容体の長波長蛍光のみが放出される現象をいう。非特許文献1では、FRET原理を利用し、カルモジュリン(calmodulin)とカルモジュリン結合ペプチド(calmodulin-binding peptide)間の相互作用を分析しながら、新しい概念のタンパク質相互作用分析システムを開発した。蛍光タンパク質は互いに異なる固有の波長領域の光を吸収して励起(excitation)され、そのエネルギーが光又は熱として発散されると、基底状態に回復しながら蛍光タンパク質毎に独特の波長帯の光を発散(emission)する。蛍光共鳴エネルギー転移の原理は、互いに異なる2つの蛍光タンパク質が10〜100Å内にある場合、短波長蛍光タンパク質が励起した後に放出する光が長波長蛍光タンパク質の励起を誘導し、蛍光を発散する現象である。すなわち、相互作用を調べようとする2つタンパク質の後に互いに異なる2つ蛍光タンパク質をそれぞれ付着させた後、タンパク質相互作用により、2つ蛍光タンパク質が10〜100Å以内に近くなった時に起こる蛍光共鳴エネルギー転移現象による蛍光を探知することで、タンパク質の相互作用を分析することができるものである。例えば、488nmの波長の光で励起される蛍光タンパク質は、520nmの波長帯の蛍光を発散し、これはまた対をなした他の蛍光タンパク質を刺激する波長として作用するようになり、630nmの波長帯の蛍光を発散する。したがって、488nmで励起し、630nmの波長帯の蛍光を探知することで、2つタンパク質の相互作用を分析することができる。このシステムは、生きている細胞内でタンパク質の動的な相互作用の分析が可能であるという長所があるが、2つ蛍光タンパク質の距離非常に近い場合にのみ探知可能であり、微妙な蛍光波長の変化を感知するためには、タンパク質の過量発現が必要とされる場合がある。
【0009】
前述の問題を解決するために、最近、タンパク質固有の蛍光を利用しようとする研究が活発となり、アミノ酸の中の一つであるトリプトファンをFRETに応用できることが報告されおり(非特許文献2)、トリプトファン結合ドメイン及びこれを検出できる蛍光部分を利用してFRETを測定する多重結合トリプトファンバイオセンサー技術が知られている(特許文献1)。
【0010】
しかし、現在まで知られているタンパク質固有の蛍光を用いたFRET技術に用いられる探針は、タンパク質自体と蛍光分子の発光波長が互いに重畳し、不必要な信号が測定され、これにより測定結果の敏感度と特異性が阻害されるという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国公開特許公報 第2008/0311047号
【特許文献2】WO2008/115262
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Miyawaki et al., Nature, 1997, 388:882-887
【非特許文献2】Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 4562-4588
【非特許文献3】Lakowicz, J.R. Principles of Fluorescence Spectroscopy, 2nd ed., New York:Plenum Press, 1999
【非特許文献4】Patterson et al., Anal. Biochem. 284: 438, 2000
【非特許文献5】Patterson et al., J. of Cell Sci. 114: 837, 2001
【非特許文献6】JACS,2000,122,p.87-95
【非特許文献7】JOC,2005,70,p.717-720
【非特許文献8】J. Med. Chem. 2006, 49, 4953-4960
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明者らは、従来広範囲に活用されている探針システムが有する根本的な問題を解決しようと持続的な研究を重ねた結果、タンパク質固有の蛍光を利用する新しい蛍光分子を確認し、これらを標的タンパク質結合部位又は前記結合部位を有する分子と結合した探針システムを開発し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、標的タンパク質に特異的な結合部位(bindingsite)又は前記結合部位を有する分子を様々な候補群から取得し、タンパク質の固有の蛍光(intrinsic fluorescence)に対するアクセプター(acceptor)機能を有する蛍光分子と直接又はリンカーを介して連結し、固有の蛍光共鳴エネルギー転移(iFRET)用探針を製造する第1ステップと、前記標的タンパク質に第1ステップで製造されたiFRET用探針を処理する第2ステップと、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長を含む光を照射し、発光するiFRET用探針を確認する第3ステップとを含み、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子を検索する方法を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子を様々な候補群から取得し、タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する第1蛍光分子と直接又はリンカーを介して連結し、第1のiFRET用探針を製造する第1ステップと、前記標的タンパク質に第1のiFRET用探針を処理する第2ステップと、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長を含む光を照射し、発光する第1のiFRET用探針を確認する第3ステップと、前記第3ステップで発光する第1のiFRET用探針を構成する、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子をタンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する第2蛍光分子と直接又はリンカーを介して連結し、第2のiFRET用探針を製造する第4ステップとを含み、iFRET用探針を製造する方法を提供することにある。
【0016】
本発明の更に別の目的は、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子と、iFRETアクセプター機能を有する蛍光分子として下記化学(I)〜(XXII)よりなる群から選ばれる分子が直接又はリンカーを介して結合されたiFRET用探針を提供することにある。
【0017】
本発明の更に別の目的は、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子と、iFRETアクセプター機能を有する蛍光分子が直接又はリンカーを介して結合されたiFRET用探針であって、FRET効率が50%になる蛍光供与体と蛍光受容体との間の距離であるR
0の値が1〜4nmであることを特徴とするiFRET用探針を提供することにある。
【0018】
本発明の更に別の目的は、前記方法で製造された第2のiFRET用探針又は前述のiFRET用探針を、標的タンパク質を含有するサンプル内に添加する第1ステップと、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長を含む光を照射し、前記iFRET用探針が発光する光を確認又は追跡する第2ステップとを含み、iFRETにより標的タンパク質をイメージ化する方法を提供することである。
【0019】
本発明の更に別の目的は、前記製造方法に係る下記式(XXIII)、(XXIV)、又は(XXVI)〜(XXXII)よりなる群から選ばれる式で表される化合物及びその塩を提供することにある。
【0020】
本発明の更に別の目的は、固有の蛍光共鳴エネルギー転移(iFRET)用探針を用いた標的タンパク質検出又はイメージ化の方法であって、前記iFRET用探針は、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子と、標的タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する蛍光分子が直接又はリンカーを介して結合されたものであり、前記iFRET用探針を標的タンパク質を含有する試料内に導入する第1ステップと、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長帯の第1光及びiFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光を交互に第1ステップで製造された試料に照射する第2ステップと、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長帯の第1光を試料上に照射し、iFRET用探針で生成される第1発光信号値とmiFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光を照射し、iFRET用探針で生成される第2発光信号値とを分析し、第1発光信号値と第2発光信号値とのレシオメトリック法(ratiometric measurement)で第3発光信号値を算出する第3ステップとを含むことを特徴とする方法を提供することである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るiFRET用探針は、従来のFRET方法と違って、タンパク質内のアミノ酸を蛍光供与体として使用するので、標的タンパク質に人為的な標識(蛍光タンパク質等)が不要であるだけでなく、一つの蛍光物質のみ用いてもよく、タンパク質固有の蛍光と分離された発光波長を有するので、高い特異性と敏感度を有し、様々なタンパク質の量、活性及び機序などをより容易且つ正確に分析することができ、前記標的タンパク質に関連する疾患の診断及び治療剤の開発に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】式(XXIII)の化合物が、iFRETを発揮する作用機序に対する模式図である。
【
図2】式(XXIV)の化合物が、iFRETを発揮する作用機序に対する模式図である。
【
図3】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図4】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図5】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図6】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図7】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図8】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図9】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図10】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図11】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図12】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図13】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図14】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図15】本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物等の蛍光特性を示すグラフである。
【
図16】本発明に係る式(XXIII)の化合物を用いたカスパーゼ−3の検出結果を示したグラフである。
【
図17】化合物XXIVの蛍光特性スペクトル結果である。
【
図18】化合物XXIVと熱ショックタンパク質90(heat shock protein 90、以下HSP90とする)を用いて、iFRETシグナルを検出した結果を示したグラフである。
【
図19】式(XXIV)の化合物を用いたHSP90の検出結果を示したグラフである。
【
図20】HSP90と結合するものとして知られているゲルダナマイシンとPU―H64を用いた競合アッセイであり、結合競争物質の有無に応じた競争化合物XXIVとHSP90タンパク質のiFRETシグナル変化を示したグラフである。
【
図21】本発明に係る式(XXIV)の化合物を用いたHSP90の定量分析結果を示したグラフである。
【
図22】本発明に係る式(XXIII)の化合物の質量分析グラフである。
【
図23】本発明に係る式(XXV)の化合物をiFRET用探針として用いて、ストレプトアビジンを検出した結果を示した図である。
【
図24】本発明に係る式(XXVI)の化合物をiFRET用探針として用いて、ストレプトアビジンを検出した結果を示した図である。
【
図25】本発明に係る式(XXVII)の化合物をiFRET用探針として用いて、ストレプトアビジンを検出した結果を示した図である。
【
図26】本発明に係る式(XXVIII)の化合物をiFRET用探針として用いて、ストレプトアビジンを検出した結果を示した図である。
【0023】
本発明の第1実施形態は、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子を様々な候補群から取得し、タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する蛍光分子と直接又はリンカーを介して連結し、固有の蛍光共鳴エネルギー転移(iFRET)用探針を製造する第1ステップと、前記標的タンパク質に第1ステップで製造されたiFRET用探針を処理する第2ステップと、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長を含む光を照射し、発光するiFRET用探針を確認する第3ステップとを含み、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子を検索する方法を提供する。
【0024】
本発明で使用される用語「FRET」とは、互いに異なる発光波長帯の2つ蛍光物質間で発生する非放射性(non-radiative)エネルギー転移現象であり、励起された状態の蛍光供与体の励起準位エネルギーが蛍光アクセプターに伝達され、蛍光受容体から発光(emission)が観察されるか、蛍光供与体の蛍光減少(quenching)が観察される現象を意味する(非特許文献3)。
【0025】
FRETは、一般に蛍光供与体から放出される波長が蛍光受容体の吸光スペクトルと重なり、光子(photon)の出現なしに発生するため、共鳴エネルギー転移といわれ、これは、蛍光供与体と蛍光受容体との間の長距離双極子相互作用による結果である。FRETのエネルギー転移効率は、蛍光供与体の発光スペクトルと蛍光受容体の吸光スペクトルが重なる範囲と蛍光供与体の量子効率、蛍光供与体と蛍光受容体の転移双極子(transition dipoles)の相対的方向(relative orientation)、そして、蛍光供与体と蛍光受容体との間の距離によって異なる。したがって、FRETのエネルギー転移効率は、蛍光供与体と蛍光受容体との距離と相対的方向により異なって現れるが、フォルスター(Forster)の数式によれば次の通り表現される。
【0026】
E=R
06/(R
6+R
06) (数式1)
(式中、EはFRET効率を示し、Rは蛍光供与体と蛍光受容体との間の距離であり、蛍光物質に応じて差はあるが、通常2〜9nm以内と定義される。また、R
0はFRET効率が50%になる蛍光供与体と蛍光受容体との間の距離をいい、一般にフォルスター距離(Forster distance)又はフォルスター半径(Forster radius)と呼ばれる。R
0は下記数式2で表現される。
【0027】
R
0=0.211[k
2n
−4Q
DJ(λ)]
1/6(inÅ) (数式2)
(式中、k
2は方向係数(orientation factor)であって、通常2/3で計算し、蛍光供与体発光と蛍光受容体吸光の相対的方向により、0〜4範囲の値を有する。nは媒質の屈折率であって、通常25℃の水は約1.334であり、Qnは蛍光供与体の量子効率である。J(λ)は、蛍光供与体の発光と蛍光受容体の吸光スペクトル上の重複(overlap)程度であって、M
−1cm
−1nm
4の単位値を有する(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。
【0028】
本発明で使用される用語「蛍光供与体」とは、タンパク質の固有の蛍光の発揮に関与するアミノ酸である。大部分のタンパク質は、固有の蛍光を発揮するが、この時、芳香族環状構造を有するアミノ酸が関与するものと知られている。その例としては、トリプトファン(Tryptophan)、チロシン(Tyrosine)、フェニルアラニン(Phenylalanine)を挙げることができる。このようなトリプトファン、チロシン及びフェニルアラニンは、260〜300nmの波長の光により励起され、290〜400nmの波長の光を発光し、その光が440nmの波長まで影響を及ぼすものと知られている。
【0029】
本発明で使用される用語「蛍光アクセプター」及び「蛍光受容体」とは混用され、タンパク質の固有の蛍光により励起され、発光する蛍光分子を意味する。
【0030】
本発明に係るiFRET用探針は、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子(以下、「結合分子」と略称する)とiFRETアクセプター機能を有する蛍光分子を含み、前記結合分子と蛍光分子が直接又はリンカーを介して結合されている。
【0031】
前記結合分子部位は、iFRET用探針が標的タンパク質に特異的な結合をするよう誘導する。
【0032】
本発明で、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子は、2個以上の標的タンパク質に共通して結合する結合部位又は前記結合部位を有する分子も含む。
【0033】
前記結合分子は、標的タンパク質に特異的に結合する公知化合物であり、本発明に係る結合分子検索方法で標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子が多様な候補群から選別することができる。
【0034】
本発明に係るタンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する蛍光分子は、前記タンパク質の固有の蛍光を発するアミノ酸であるトリプトファン、チロシン及び/又はフェニルアラニンの発光波長である300〜400nmの光により励起されることが好ましく、タンパク質固有の蛍光と分離される波長である450nm以上の発光波長を有することがより好ましい。
【0035】
一方、iFRET用探針が発光する光を確認又は追跡時、iFRET用探針が発光する全ての領域の波長帯を測定することができるが、iFRET用探針が放出する光の中で、450nm又はそれ以上の長波長の光を測定することが好ましい。細胞或いは組織(tissue)には、260〜400nmの光によって、蛍光を出す細胞自家蛍光(cellular autofluorescence)物質である核酸、NAD(P)Hやコラーゲン、或いは細胞タンパク質などが存在し、これらが生成する蛍光発光波長が、主に300〜450nmにわたって存在する。したがって、本発明のiFRET用探針は、細胞イメージ化に使用されるか、細胞抽出物或いは組織染色(tissue staining)に使用される場合、これらの干渉を避けるために、本発明のiFRET用探針は、発光領域が450nm以上であることが好ましい。
【0036】
本発明は実験を通じて、タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する蛍光分子として、下記表1の式(I)〜(XXII)で表される化合物を確認した(実施例1〜7参照)。
【0038】
式(I)〜(XXII)で表される各化合物の誘導体及びその塩は、タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する蛍光分子として機能する限り、本発明の範疇に属する。
【0039】
リンカーの例としては、両末端に適切な機能団(−NH
2、CO
2H、−N
3、−C≡C−、等)を有した各種アルキル(−(CH
2)
n−)、アリール、エチレングリコール(−(CH
2CH
2O)
n‐;n=1〜20)などが挙げられる。前記リンカーは、蛍光物質と炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−窒素結合など可能なあらゆる形態の結合によって連結されてもよい。リンカーは、本発明に係るiFRET用探針の結合分子が標的タンパク質に結合時、iFRET用探針の蛍光分子が結合部位又は近くで発散される標的タンパク質の固有の蛍光を最大限度でケンチングできるように配向することが好ましい。前記リンカーは、標的タンパク質に結合分子を結合した後、3次元的配向シミュレーションによって適宜デザインされてもよい。
【0040】
一方、標的タンパク質に、本発明に係るiFRET用探針を処理する場合、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する光を照射し、発光するiFRET用探針を確認するために、通常の蛍光物質処理条件を利用でき、好ましくは、水、緩衝溶液、炭素数1〜6の低級アルコール及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる溶媒内の、或いはバイオチップや(極)微粒子状、或いは細胞や組織で遂行されてもよい。
【0041】
標的タンパク質内のアミノ酸を励起するUV領域の光を照射し、発光するiFRET用探針を確認するために、同日付け出願された本発明者の韓国出願(iFRET用探針を用いたタンパク質検出又はイメージ化顕微鏡装置及びそれを用いたタンパク質検出又はイメージング方法)に記載された顕微鏡装置を用いることができるが、通常の蛍光測定法を用いてもよく、例えば蛍光分析装置を使用することができる。蛍光分析装置としては、フィルタ方式及びモノクローム方式の蛍光分光器などがある。前記同日付けの韓国出願は本発明の明細書の一部として統合される。
【0042】
本発明に係る標的タンパク質に特異的な結合分子検索方法により確認された標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子は、前記標的タンパク質が関与する疾患を予防、改善又は治療するための物質又はその一部として用いられてもよい。
【0043】
本発明の第2実施形態は、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子を様々な候補群から取得し、タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する第1蛍光分子と直接又はリンカーを介して連結し、第1のiFRET用探針を製造する第1ステップと、前記標的タンパク質に第1のiFRET用探針を処理する第2ステップと、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長を含む光を照射し、発光する第1のiFRET用探針を確認する第3ステップと、前記第3ステップで発光する第1のiFRET用探針を構成する、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子をタンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する第2蛍光分子と直接又はリンカーを介して連結し、第2のiFRET用探針を製造する第4ステップとを含むiFRET用探針を製造する方法を提供する。
【0044】
本発明の第2実施形態で、第1ステップ〜第3ステップに対する説明は、本発明の第1実施形態で説明した第1ステップ〜第3ステップと略同じである。
【0045】
本発明の第2実施形態で、第4ステップは、第3ステップから得られた標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子をタンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する第2蛍光分子と直接又はリンカーを介して連結し、第2のFRET用探針を製造するステップであり、本発明によって標的タンパク質に特異的な結合分子を検索するために用いられた第1のiFRET用探針の第1蛍光分子及び第2のiFRET用探針の第2蛍光分子は同一又は異なっていてもよい。
【0046】
前記標的タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する第1蛍光分子及び第2蛍光分子は、それぞれ独立して、タンパク質の固有の蛍光を発するアミノ酸であるトリプトファン、チロシン及び/又はフェニルアラニンの発光波長である300〜400nmの光により励起されることが好ましく、タンパク質固有の蛍光と分離される波長である450nm以上の発光波長を有することがより好ましい。
【0047】
前記第1蛍光分子及び第2蛍光分子は、それぞれ独立して、前記表1の式(I)〜(XXII)で表される化合物のいずれか1つであってもよいが、これに限定されない。
【0048】
本発明の第3実施形態は、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子と、iFRETアクセプター機能を有する蛍光分子として前記式(I)〜(XXII)で表される化合物よりなる群から選ばれる分子とが直接又はリンカーを介して結合されたiFRET用探針を提供する。
【0049】
前記本発明のiFRET用探針は、450nm或いはそれ以上の長波長の光を放出することが好ましい。
【0050】
本発明の第4実施形態は、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子と、iFRETアクセプター機能を有する蛍光分子とが直接又はリンカーを介して結合されたiFRET用探針であって、FRET効率が50%になる蛍光供与体と蛍光受容体との間の距離であるR
0値が1〜4nmであることを特徴とするiFRET用探針を提供する。
【0051】
従来、一般的なFRET対に対するR
0値は、約5nm以上であるのに対して、本発明によるiFRET探針は、標的タンパク質内のTrpなどの蛍光供与体と1〜4nmのR
0値を有するよう考案されていてもよい。したがって、本発明のiFRET探針は、一般的なFRET探針に比べて、標的タンパク質内の蛍光供与体に近接した時、すなわち、約2nm内外の距離に位置する時、検出可能であるので、一般的なFRET検出で発生しうる低分子物質の非特異的結合によるノイズ発生可能性を排除することができる。
【0052】
また、本発明の第5実施形態は、新規化合物として下記式(XXIII)、(XXIV)、又は(XXVI)〜(XXXII)で表される化合物又はその塩を提供する。
【0062】
前記式(XXIII)、(XXIX)、(XXX)、(XXXI)又は(XXXII)で表される化合物又はその塩、式(XXVI)、(XXVII)又は(XXVIII)で表される化合物又はその塩、及び式(XXIV)で表される化合物又はその塩は、それぞれ、カスパーゼ−3、ストレプトアビジン(Streptavidin)及びHSP90(heat shock protein 90)を標的タンパク質とするiFRET用探針として用いられてもよい。
【0063】
また、前記式(XXIII)、(XXIV)、又は(XXVI)〜(XXXII)で表される化合物の誘導体図本発明の範疇に属する。
【0064】
前記式(XXIII)で表される化合物又はその塩;及び式(XXIV)で表される化合物又はその塩は、下記式(I)の1−ナフチルエチレンジアミンが蛍光分子として用いられ、それぞれ標的タンパク質カスパーゼ−3及びHSP90に結合できる結合分子が前記蛍光分子に直接又はリンカーを介して結合されたものであり、カスパーゼ−3及びHSP90に特異的なiFRET用探針として用いられてもよい。
【0066】
前記式(XXVI)、(XXVII)又は(XXVIII)で表される化合物又はその塩は、それぞれ、下記式(XII)
【0068】
のヒドロキシクマリン酢酸、下記式(IX)
【化12】
【0069】
のヒドロキシクマリンアクリル酸、及び下記式(XXI)
【化13】
のジメチルアミドクマリン酢酸が蛍光分子として用いられ、標的タンパク質であるストレプトアビジンに特異的に結合しうるビオチンが結合分子として前記蛍光分子に直接又はリンカーを介して結合されたものである。したがって、前記式(XXVI)、(XXVII)又は(XXVIII)で表される化合物又はその塩は、ストレプトアビジンに特異的なiFRET用探針として用いられてもよい。
【0070】
前記式(XXIX)、(XXX)、(XXXI)又は(XXXII)で表される化合物又はその塩は、前記式(I)の1−ナフチルエチレンジアミン((XXXI)及び(XXXII))又は式(XII)のヒドロキシクマリン酢酸((XXIX)及び(XXX))が蛍光分子として用いられ、標的タンパク質であるカスパーゼ−3に特異的に結合できるAsp−L−Glu−L−Val−Asp−(ケトン)−CF
3((XXIX)及び(XXXI))又はAsp(CO
2Me)−L−Glu(CO
2Me)−L−Val−Asp(CO
2Me)−(ケトン)−CF
3((XXX)及びX(XXII))が結合分子として前記蛍光分子に直接又はリンカーを介して結合されたものである。したがって、前記式(XXIX)、(XXX)、(XXXI)又は(XXXII)で表される化合物又はその塩は、カスパーゼ−3に特異的なiFRET用探針として用いられてもよい。
【0071】
一般に、蛍光体の場合、励起(absorbance)波長と発光波長帯が高いほど、すなわち、低いエネルギーで励起が可能であるほど、より低コストの形態の光源を選択することができ、測定装置を経済的に製作することができる。また、細胞の自家蛍光(autofluorescence)と蛍光体の発光波長が互いに重複しないように蛍光体の感度を高めるためには、発光波長が自己波長と互いに重複しない蛍光体の開発が非常に重要である。
【0072】
前記式(I)の1−ナフチルエチレンジアミンは、LED(light-emitting diode)に效果的に検出可能であることから蛍光探針として用いられ、励起波長が340nm〜380nmであり、発光波長が400nm〜600nmであるので、公知された蛍光体と比較して、発光波長帯が高く、細胞の自家蛍光と分離され測定できる蛍光分子である。
【0073】
本発明の化合物は、当該技術分野で通常的な方法によってその塩及び溶解性化合物として製造されてもよい。
【0074】
塩としては、遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は、通常の方法、例えば、化合物を過量の酸水溶液に溶解し、この塩をメタノール、エタノール、アセトン又はアセトニトリルのような水混和性有機溶媒を用いて沈殿させ、製造する。同モル量の化合物及び水中の酸又はアルコール(例、グリコールモノメチルエーテル)を加熱し、次いで、前記混合物を蒸発して乾燥するか、又は析出された塩を吸引ろ過することができる。この時、遊離酸としては有機酸と無機酸が用いられ、無機酸としては塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、酒石酸などが用いられ、有機酸としてはメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、マンデル酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、ガラクツクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸(glutaric acid)、グルクロン酸(glucuronic acid)、アスパラギン酸、アスコルビン酸、バニリン酸、ヒドロヨード酸などが用いられるが、これに限定されない。
【0075】
また、塩基を用いて薬学的に許容可能な金属塩を製造することができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解し、非溶解化合物塩をろ過した後、ろ液を蒸発し、乾燥して得る。この時、金属塩としては、特にナトリウム、カリウム又はカルシウム塩を製造することが製薬上適しており、また、これに対応する銀塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例えば、窒酸銀)と反応させて得る。
【0076】
前記式(XXIII)、(XXIV)、又は(XXVI)〜(XXXII)の化合物の塩は、特に言及しない限り、式(XXIII)、(XXIV)、又は(XXVI)〜(XXXII)の化合物に存在しうる酸性又は塩基性基の塩を含む。例えば、塩としては、ヒドロキシ基のナトリウム、カルシウム及びカリウム塩が含まれ、アミノ基のその他の塩としては、ヒドロクロリド、臭化水素酸塩、硫酸塩、水素硫酸塩、リン酸塩、水素リン酸塩、二水素リン酸塩、アセテート、スクシネート、シトレート、酒石酸塩、ラクテート、マンデレート、メタンスルホネート(メシレート)及びp−トルエンスルホネート(トシレート)塩などがあり、当業界で公知の塩の製造方法や製造過程を介して製造されてもよい。
【0077】
本発明の第6実施形態は、前記本発明の第2実施形態により製造された第2のiFRET用探針又は前記本発明の第3実施形態又は第4実施形態に係るiFRET用探針を、標的タンパク質を含有するサンプル内に添加する第1ステップと、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長を含む光を照射し、前記iFRET用探針が発光する光を確認又は追跡する第2ステップとを含み、iFRETにより標的タンパク質を検出又はイメージ化する方法を提供する。
【0078】
また、本発明の第7実施形態は、固有の蛍光共鳴エネルギー転移(iFRET)用探針を用いた標的タンパク質検出又はイメージ化の方法であって、前記iFRET用探針は、標的タンパク質に特異的な結合部位又は前記結合部位を有する分子と、標的タンパク質の固有の蛍光に対するアクセプター機能を有する蛍光分子とが直接又はリンカーを介して結合されたものであり、前記iFRET用探針を標的タンパク質を含有する試料内に導入する第1ステップと、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長帯の第1光及びiFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光を交互に第1ステップで製造された試料に照射する第2ステップと、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長帯の第1光を試料上に照射し、iFRET用探針で生成される第1発光信号値と、iFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光を照射し、iFRET用探針で生成される第2発光信号値とを分析し、第1発光信号値と第2発光信号値とのレシオメトリック法で第3発光信号値を算出する第3ステップとを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0079】
本発明で使用される用語「試料」又は「サンプル」とは、標的タンパク質を含有するか、又は含有しているものと推定され、分析が行なわれる組成物を意味し、標的タンパク質自体、細胞、血液、尿、水、土壌、空気、食品、廃棄物、動植物組織及び生物体自体のいずれか一つ以上から収集されたものであってもよいが、これに限定されない。試料又はサンプルは、標的タンパク質を含有する水、緩衝溶液、炭素数1〜6の低級アルコール、又はこれらの混合物、バイオチップや(極)微粒子状であってもよい。
【0080】
本発明の第7実施形態は、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長帯の第1光及びiFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光を、標的タンパク質及びこれに結合されたiFRET用探針を含有する試料に、交互に照射することを特徴とする。
【0081】
iFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光は、標的タンパク質内のアミノ酸を励起しなく、iFRET用探針の蛍光分子を直接励起する光である。
【0082】
本発明の第7実施形態では、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長帯の第1光を試料上に照射し、iFRET用探針で生成される第1発光信号値と、iFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光を照射し、iFRET用探針で生成される第2発光信号値とのレシオメトリック法で第3発光信号値を算出することができる。
【0083】
第3発光信号値は、測定試料(例:細胞、検液等)に存在するiFRET用探針(第2発光信号値)の量に対する標的タンパク質に結合したiFRET用探針の量(第1発光信号値)の比であり、測定の時間的・空間的変化に関係なく、常時基準値(第2発光信号値)が提供され、標的タンパク質とiFRET用探針の結合を定量化することを可能にする。また、レシオメトリック法を用いれば、試料に照射される光の量が変わっても補正が可能である。
【0084】
第3発光信号値は下記数式3によって計算できる。
【0085】
第3発光信号値=第1発光信号値÷第2発光信号値 (数式3)
【0086】
レシオメトリック法により、第2発光信号値を基準値(reference)として用い、第1発光信号値の強度を第3発光信号値に換算することで、iFRET用探針の偏在化(localization)による測定誤差を最小化し、鮮明なイメージを得ることができ、標的タンパク質の量と標的タンパク質に対する薬物結合の定量的測定、標的タンパク質の空間的移動追跡などが可能である。
【0087】
第3発光信号値は、従来のレシオメトリック法ソフトウェアを使用して計算できる。
【0088】
一方、iFRET用探針は、標的タンパク質に特異的な結合分子とiFRETアクセプター機能を有する蛍光分子とが直接又はリンカーを介して結合されたものであり、前記結合分子部位は、iFRET用探針が標的タンパク質に特異的な結合をするよう誘導し、iFRETを介して標的タンパク質の定量が可能にするだけでなく、iFRET用探針が標的タンパク質と共に移動するようにし、標的タンパク質の挙動を確認することができるようにする。したがって、本発明の第7実施形態に係る標的タンパク質の検出又はイメージ化の方法において、第1発光信号値、第2発光信号値及び第3発光信号値は、試料の2次元の各地点に対応される2次元的な映像値であってもよい。
【0089】
本発明の第7実施形態で、第1光の波長範囲は260nm〜300nmであり、第2光の波長範囲は300nm〜400nmであることが好ましい。
【0090】
また、本発明の第7実施形態で、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長帯の第1光及びiFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光を一定時間の間隔で交互に照射すれば、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する波長帯の第1光を試料上に照射し、iFRET用探針で生成される第1発光信号値(A1、A2、A3、…)と、iFRET用探針の蛍光分子を励起する波長帯の第2光を照射し、iFRET用探針で生成される第2発光信号値(B1、B2、B3、…)からレシオメトリック法により第3発光信号値(C1、C2、C3、…)が一定時間の間隔で算出され、蓄積され、経時的変化による標的タンパク質の位置、量又は両者の変化を確認することができる。
【0091】
これにより、時間の経過による標的タンパク質の細胞内位置と空間的移動、量的変化、活性変化、薬物の結合程度、又は前記した全ての変化を確認することができる。また、経時的標的タンパク質の変化は動映像で算出することができる。
【0092】
本発明の第6実施形態又は第7実施形態に係る標的タンパク質の検出又はイメージ化の方法により、標的タンパク質の量又は標的タンパク質の活性を測定したり、標的タンパク質の作用機序又は移動経路を追跡することができる。
【0093】
本発明の第6実施形態又は第7実施形態に係る標的タンパク質の検出又はイメージ化の方法は、標的タンパク質の機能を確認したり、様々な検体から疾患関連標的タンパク質を検出する方法として用い、疾患診断したり、食品、飼料、飲料から微生物或いは微生物由来標的タンパク質を検出する方法として用いることができる。
【0094】
一方、前記iFRET用探針が発光する光を確認又は追跡時、iFRET用探針が発光する全ての領域の波長帯を測定することができるが、iFRET用探針が放出する光のうち、450nm又はそれ以上の長波長の光を測定することが好ましい。細胞或いは組織には260〜400nmの光により蛍光を出す細胞自家蛍光(cellular autofluorescence)物質の核酸、NAD(P)Hやコラーゲン、又は細胞タンパク質などが存在し、これらが生成する蛍光発光波長が、主に300〜450nmにわたって存在する。したがって、本発明のiFRET用探針は、細胞イメージ化に用いられるか、細胞抽出物或いは組織染色に用いられた場合、これらの干渉を避けるために、本発明のiFRET用探針は、発光領域が450nm以上であることが好ましい。
【0095】
本発明の第6実施形態又は第7実施形態に係る標的タンパク質検出又はイメージ化の方法は、前記iFRET用探針と併用し、特定物質をサンプル内に添加し、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する光を照射し、前記iFRET用探針が発光する光を確認又は追跡するステップを更に含み、特定物質の存在有無に応じて、標的タンパク質内のアミノ酸を励起する光を照射し、前記iFRET用探針が発光する光の変化を確認し、標的タンパク質に対して所定の機能を有する特定物質をスクリーニングしたり、前記特定物質の標的タンパク質に対する機能を確認することにも応用できる。
【0096】
この時、前記方法により確認された特定物質は、標的タンパク質と関連した疾患を予防、治療又は改善するための薬物又は食品添加剤として用いることができる。
【0097】
本発明の第6実施形態又は第7実施形態に係る標的タンパク質検出又はイメージ化の方法は、蛍光顕微鏡を用いたイメージ化及び迅速蛍光免疫クロマトグラフィーなどの通常の蛍光イメージ化の方法で遂行されてもよいが、自動化ワークステーションにより遂行されることが好ましい。
【0098】
以下、本発明を、実施例を参照して更に詳しく説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
実施例1:式(II)の化合物の製造方法
【0102】
メチル−3−(メチルアミノ)アクリレート(1)の合成
0℃で、2Mメチルアミン−テトラヒドロフラン溶液(12.8mL)をメチルプロピオレート(2.89mL)とTHF(15mL)溶液に滴下し、室温で、8時間撹拌した。揮発性溶媒とメチルプロピオレートを減圧留去後、真空乾燥して、2.2g(収率:81%)の化合物1を製造した。生成物の構造は
1H―NMRを通して確認した。
【0103】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 7.648-7.574(b.s,1H), 6.621-6.568(q,1H), 4.483-4.468(d,1H), 3.654(s,3H), 2.971-2.957(d,2H).
【0104】
メチル1,4,4−トリメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキシラート(II)の合成
化合物1(2.1g)、3−メチル−2−ブテナール(1.04mL)、無水硫酸ナトリウム(3g)、スカンジウムトリフルオロメタンスルホネート(267mg)をジクロロメタン(80mL)に懸濁した後、室温で、24時間撹拌した。溶液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=3:7)で精製して、470mg(収率:14%)の化合物IIを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0105】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 7.031-7.027(d,1H), 5.592-5.568(q,1H), 4.481-4.462(d,1H), 3.657(s,3H), 2.963(s,3H), 1.341(s,6H).
【0106】
実施例2:式(III)及び(IV)の化合物の製造方法
【0108】
ジメチルピリジン−3,5−ジカルボキシラート(2)の合成
ピリジン−3,5−ジカルボン酸(7.94g)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、20g)及び2.2gの4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)をメタノール(150mL)に加えた後、室温で、10時間撹拌した。溶液を減圧濃縮後、残渣をジクロロメタンで希釈した後、10%クエン酸水溶液で洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(MgSO
4)で乾燥した。溶液を減圧濃縮後、残渣を真空乾燥して、8.2g(収率:88%)の化合物2を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0109】
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3): 9.418(s,2H), 8.920(s,1H), 4.046(s,3H).
【0110】
3,5−ビス(メトキシカルボニル)−1−メチルピリジニウム(3)の合成
化合物2(8.1g)のアセトン溶液(40mL)にヨードメチル(7.77mL)を加えた後、20時間還流・撹拌した。反応物を室温に冷却し、溶媒を減圧留去後、形成された結晶性目的物をアセトンで3回洗浄した後、真空乾燥して、13.2g(収率:95%)の化合物(3)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0111】
1H-NMR (400 MHz, DMSO): 9.773(s,2H), 9.119(s,1H), 4.500(s,2H), 4.020(s,6H).
【0112】
ジメチル 1−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボキシラート(III)の合成
0℃、アルゴン気流下で化合物3(13.2g)水溶液(50mL)を炭酸水素ナトリウム(16.5g)と亜硫酸水素ナトリウム(20.5g)水溶液(150mL)に滴下した。反応液を室温で、3時間撹拌した後、ジクロロメタンで生成物を抽出した。抽出液を減圧濃縮後、真空乾燥して、6.92g(収率:84%)の化合物IIIを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0113】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 6.918(s,1H), 3.722(s,6H), 3.191(s,2H), 3.108(s,3H).
【0114】
5−(メトキシカルボニル)−1−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボン酸(IV)の合成
化合物III(6g)を1N水酸化リチウム水溶液(40mL)、THF溶液(250mL)、メタノール(150mL)に溶かした後、室温で、24時間撹拌した。反応物を1N塩酸水溶液で酸性化後、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を水溶液で3回、飽和塩溶液で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)で精製して、3.5g(収率:62.5%)化合物IVを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0115】
1H-NMR (600 MHz, CD3OD): 7.015(s,2H), 3.672(s,3H), 3.105(s,2H), 3.067(s,3H).
【0116】
実施例3:式(V)の化合物の製造方法
【0118】
N−(3−メチル−2−ブテニリデン)−1−フェニルメタンアミン(4)の合成
ベンジルアミン(5.3mL)、3−メチル−2−ブテナール(4.54mL)、分子篩(30g)をジクロロメタン(60mL)に加えた後、室温で、12時間撹拌した。分子篩除去後、溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製して、3.4g(収率:38%)の化合物4を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0119】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3): 8.302-8.261(d,1H), 7.336-7.192(m,5H), 6.089-6.040(d,1H), 4.627(s,2H), 1.918(s,3H), 1.864(s,3H).
【0120】
メチル 1−ベンジル−2,4,4−トリメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキシレート(V)の合成
化合物4(1.73g)、メチル−3−オキソブタノエート(1.08mL)、ヨウ化リチウム(134mg)を1,2―ジメトキシエタン(15mL)に溶かした後、室温で、24時間撹拌した。溶液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:ヘキサン=1:1)で精製して、200mg(収率:7.4%)の化合物Vを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0121】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 7.355-7.330(m,2H), 7.268-7.259(m,1H), 7.213-7.200(d,2H), 5.781-5.768(d,1H), 4.478(s,3H), 4.195-4.159(q,2H), 1.957(s,3H), 1.311-1.274(t,9H).
【0122】
実施例4:式(VI)及び(VII)の化合物の製造方法
【0124】
ジメチル 1−メチル−4−(2−メチル−1−プロペニル)−1,4―ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボキシラート(VI)の合成
化合物1(2g)、3−メチル−2−ブテナール(2.5mL)、無水硫酸ナトリウム(25g)、塩化鉄6水和物(235mg)をジクロロメタン(120mL)に懸濁した後、44時間、還流撹拌した。溶液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1:1)で精製して、26mg(収率:0.6%)の化合物VIを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0125】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 7.272(s,2H), 4.891-4.870(d,1H), 4.489-4.472(d,1H), 3.711(s,6H), 3.168(s,3H), 1.827(s,3H), 1.628(s,3H).
【0126】
5−(メトキシカルボニル)−1−メチル−4−(2−メチル−1−プロペニル)−1,4―ジヒドロピリジン−3−カルボン酸(VII)の合成
化合物VI(19mg)を3N水酸化リチウム水溶液(0.12mL)、THF(0.1mL)溶液、メタノール(0.1mL)に溶かした後、室温で、48時間撹拌した。反応物を1N塩酸水溶液で酸性化後、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を水溶液で3回、飽和塩溶液で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=3:7)で精製して、12mg(収率:67%)の化合物VIIを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0127】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 7.121(s,1H), 7.025(s,1H), 4.898-4.880(q,1H), 4.469-4.453(d,1H), 3.673(s,3H), 3.183(s,3H), 1.811(s,3H), 1.629(s,3H).
【0128】
実施例5:式(VIII)の化合物の製造方法
【0130】
ジメチル 4−(2−メトキシ−2−オキソエチル)−1−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボキシラート(VIII)の合成
2M メチルアミン−テトラヒドロフラン溶液(0.62mL)を2,2−ジメトキシプロパン(3.9mL)、メタノール(1.3mL)、メチルプロピオレート(0.8mL)とスカンジウムトリフルオロメタンスルホネート(78mg)に滴下し、18時間、還流撹拌した。減圧留去後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:8)で精製して、24mg(収率:28%)の化合物VIIIを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0131】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3): 7.120(s,2H), 4.200-4.165(t,1H), 3.793(s,6H), 3.599(s,3H), 3.180(s,3H), 2.467-2.449(d,2H).
【0132】
実施例6:式(IX)〜(XI)の化合物の製造方法
【0134】
メチル 3−(7−ヒドロキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)アクリレート(X)の合成
ジメチルグルタコネート(5.63mL)、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(5g)、ピペリジン(0.36mL)をエタノール(100mL)に溶かした後、16時間、還流撹拌をした。反応物を室温に冷却し、溶媒を減圧留去後、形成された結晶性目的物をエタノールで3回洗浄した後、真空乾燥して、8.01g(収率:90%)の化合物Xを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0135】
1H-NMR (600 MHz, DMSO): 8.445(s,1H), 7.833-7.806(d,1H), 7.614-7.600(d,1H), 7.124-7.097(d,1H), 6.893-6.881(d,1H), 6.774(s,1H), 3.77(s,3H).
【0136】
3−(7−ヒドロキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)アクリル酸(IX)の合成
33%臭化水素−酢酸溶液(150mL)に化合物X(16g)を溶かした後、18時間、還流撹拌した。反応物を室温に冷却し、溶媒を減圧留去後、形成された結晶性目的物を水溶液で3回洗浄した後、真空乾燥して、13.5g(収率:90%)の化合物IXを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0137】
1H-NMR (600 MHz, DMSO): 8.413(s,1H), 7.587-7.566(d,1H), 7.486-7.446(d,1H), 6.862-6.860(dd,1H), 6.824-6.784(d,1H), 6.757(s,1H).
【0138】
tert−ブチル 2−アミノエチルカルバメート(5)の合成
エチレンジアミン(4mL)のジクロロメタン(140mL)に、ジ−tert−ブチルカーボネート(2.2g)のジクロロメタン(20mL)を6時間滴下した後、室温で、18時間撹拌した。溶液を減圧濃縮後、残渣をジクロロメタンで希釈した後、2M炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮後、残渣を真空乾燥して、1.4g(収率:88%)の化合物5を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0139】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 5.01(br s,1H), 3.20-3.12(m,2H), 2.78(t,2H), 1.43(s,9H), 1.31(s,2H).
【0140】
tert−ブチル 2−(3−(7−ヒドロキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)アクリルアミド)エチルカルバメート(XI)の合成
0℃で、化合物5(41mg)、生成物IX(50mg)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.19mL)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、1mL)に溶かし、15分後、EDC(50mg)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、40mg)を加えた後、室温で、20時間撹拌した。減圧濃縮した後、残渣を酢酸エチルで希釈した後、水溶液と10%クエン酸水溶液で洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮後、残渣を真空乾燥して、75mg(収率:91%)の化合物XIを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0141】
1H-NMR (600 MHz, DMSO): 8.252(s,2H), 7.584-7.563(d,1H), 7.305-7.267(d,1H), 6.847-6.842(d,1H), 6.826-6.820(q,2H,), 6.746(d,1H), 3.208-3.161(q,2H), 3.040-2.994(q,2H), 1.379(s,9H).
【0142】
実施例7:式(XX)〜(XXII)の化合物の製造方法
【0144】
エチル 2−(7−(ジメチルアミノ)−2−オキソ−2H−クロメン−4−イル)アセテート(XX)の合成
3−(ジメチルアミノ)フェノール(6.86g)、ジエチル−1,3−アセトンジカルボキシレート(10mL)、無水塩化亜鉛(ZnCl
2、8.2g)をエタノール(30mL)に溶かした後、12時間、還流撹拌した。反応物と4℃水溶液で形成された結晶性物質をクロロホルムとジエチルエーテルで再結晶した後、真空乾燥して、3.4g(収率:25%)の化合物XXを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0145】
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3): 7.415-7.393(d,1H), 6.633-6.604(dd,1H), 6.526-6.517(d,1H), 6.059(s,1H), 4.207-4.153(q,2H), 3.677(s,2H), 3.060(s,6H), 1.268-1.232(t,3H).
【0146】
2−(7−(ジメチルアミノ)−2−オキソ−2H−クロメン−4−イル)酢酸(XXI)の合成
0℃で、化合物XX(1g)を2N水酸化リチウム水溶液(3.6mL)、THF溶液(4.5mL)、メタノール(1.5mL)に溶かした後、室温で、1時間撹拌した。水溶液(6mL)を加えた後、ジエチルエーテルで3回洗浄した。2N塩酸溶液で水溶液層を酸性化した後、形成された結晶性物質を真空乾燥して、760mg(収率:85%)の化合物XXIを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0147】
1H-NMR (400 MHz, DMSO): 12.798(bs,1H), 7.49-4.456(d,1H), 6.755-6.749(d,1H), 6.571(s,1H), 6.049(s,1H), 3.786(s,2H), 3.022(s,6H).
【0148】
エチル 2−(7−(ジエチルアミノ)−2−オキソ−2H−クロメン−4−イル)アセテート(XXII)の合成
3−(ジエチルアミノ)フェノール(100mg)、ジエチル−1,3−アセトンジカルボキシレート(0.12mL)、無水塩化亜鉛(ZnCl
2、99mg)をエタノール(5mL)に溶かした後、12時間、還流撹拌した。反応物と4℃水溶液において形成された結晶性物質をクロロホルムとジエチルエーテルで再結晶した後、真空乾燥して、17mg(収率:9.3%)の化合物XXIIを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0149】
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3): 7.477-7.454(d,1H), 6.806-6.778(dd,1H), 6.670(s,1H), 6.046(s,1H), 4.198-4.180(q,2H), 3.486-3.407(m,4H), 2.379(s,2H), 1.281-1.260(t,3H), 1.226-1.190(t,6H).
【0150】
<蛍光分子の蛍光特性実験>
本発明の蛍光分子、すなわち、式(I)〜(XXII)で表される化合物の励起波長及び発光波長は表1に記載されており、これらの蛍光特性を示すグラフを
図3〜
図15に示した。
【0151】
実施例8:式(XXIII)の化合物製造方法
【0153】
蛍光分子として式(I)の化合物(化合物I)にリンカーを結合し、蛍光体(A)を合成した。
【0154】
下記のような過程を通して、カスパーゼ活性を抑制するペプチド阻害剤であるDEVD−CHOを蛍光体(A)に結合して、式(XXIII)の化合物を製造した。
【0155】
N−(1−ナフチル)エチレンジアミンジヒドロクロリド(4mM)と無水コハク酸(4.8mM)をDMF上で反応させた。この時、約12mMのトリエチルアミンを塩基として用いた。反応の終結はTLCを用いて確認した。最終生成物はメタノールを用いて再結晶し、分離した。分離された物質は質量分析した(
図22)。
【0156】
式(XXIII)のLC/MS:728.5(M)
【0157】
<式(XXIII)のiFRET探針を用いたカスパーゼ−3タンパク質の検出及び活性確認>
式(XXIII)とカスパーゼタンパク質を用い、iFRETシグナルを検出した。カスパーゼ単独で存在する時は、280nmの波長で励起した時、約350nmの波長で蛍光値を観察することができ、式(XXIII)の場合、280nmの波長で励起した時、約445nmで蛍光値を観察することができた。
【0158】
図16の左側図から、式(XXIII)(DEVD−Dyeで表される)と活性形カスパーゼが混合されれば、カスパーゼ或いは式(XXIII)が単独で存在する時のグラフとは違って、350nmでは減少された蛍光値を、445nmでは約300%以上増加された蛍光値を確認することができた。
【0159】
一方、右側図は、不活性型カスパーゼと式(XXIII)を用い、280nmの波長で励起した場合であり、この時は、iFRETシグナルを観察することができなかった。これはiFRET現象がカスパーゼと式(XXIV)の選択的結合による現象であることを証明する結果であるといえる。
【0160】
実施例9:式(XXIV)の化合物の製造方法
【0162】
エチル 3−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)プロパノエート(6)の合成
アデニン(7g)、ナトリウム(52mg)、エチルアクリレート(16.8mL)をエタノール(140mL)に加えた後、4時間、還流撹拌した。溶液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=50:1→30:1→10:1)で精製した。エタノールで再結晶して、8.79g(収率:73%)の化合物6を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0163】
1H-NMR (600MHz, CDCl
3)(I): 8.36(s,1H,H-2), 7.90(s,1H,H-8), 5.60(b.s.,2H,NH2), 4.51-4.49 t,2H,CH2N), 4.15-4.11(q,2H,CH2), 2.94-2.92(t,2H,CH2CO), 1.23-1.21(t,3H,CH3).
【0164】
5−ブロモ−6−ヨード−ベンゾ[1,3]ジオキソール(9)の合成
5−ブロモ−ベンゾ[1,3]ジオキソール(1.5g)、トリフルオロ酢酸(1.15mL)、N−ヨウ化スクシンイミド(5.06g)をアセトニトリル(23mL)に加えた後、室温で、26時間撹拌した(暗室条件)。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製して、2.126g(収率:88%)の化合物9を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0165】
1H-NMR (400 MHz, DMSO)(IA): 7.478(s,1H), 7.363(s,1H), 6.092(s,2H)
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3)(IA): 7.26(s,1H), 7.10(s,1H), 5.99(s,2H)
【0166】
エチル 3−(6−アミノ−8−ブロモ−9H−プリン−9−イル)プロパノエート(7)の合成
化合物6(9.242g)を酢酸緩衝液(54mL)、メタノール(6mL)、ジクロロメタン(15mL)に加えた後、臭素(2.86mL)を10分間、滴下した。メタノール(10mL)で反応物の固体化を観察した後、過量のメタノールを加えた後、1時間撹拌した。減圧濃縮後、残渣をジクロロメタンと少量のメタノール混合溶液で抽出した。有機層をチオ硫酸ナトリウム飽和水溶液で洗浄した後、ジクロロメタンで水溶液層の目的物を抽出した。有機層を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=100:1→50:1→40:1)で精製した。減圧濃縮後、結晶性物質を酢酸エチルとヘキサンで洗浄した後、真空乾燥して、9.517g(収率:77%)の化合物7を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0167】
1H-NMR (600 MHz, DMSO)(II): 8.19(s,1H,H-2), 7.38(b.s.,2H,NH2), 4.38-4.36(t,2H,CH2N), 4.03-3.99(q,2H,CH2), 2.90-2.88(t,2H,CH2CO), 1.12-1.09(t,3H,CH3).
【0168】
エチル 3−(6−アミノ−8−メルカプト−9H−プリン−9−イル)プロパノエート(8)の合成
化合物7(1g)とチオウレア(1.21g)をブタノール(24mL)に加えた後、5時間、還流撹拌した。反応物を室温に冷却し、溶媒を減圧留去後、形成された結晶性目的物をメタノールで再結晶した。真空乾燥して、0.661g(収率:75%)の化合物8を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0169】
1H-NMR (600 MHz, DMSO)(III): 12.35(s,1H,SH), 8.15(s,1H,H-2), 6.85(b.s.,2H,NH2), 4.37-4.34(t,2H,CH2N), 4.03-3.99(q,2H,CH2), 2.81-2.79(t,2H,CH2CO), 1.13-1.10(t,3H,CH3).
【0170】
エチル 3−(6−アミノ−8−(6−ブロモベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルチオ)−9H−プリン−9−イル)プロパノエート(10)の合成
[2]
化合物8(1.467g)、化合物9(2.81g)、ヨウ化銅(0.1067g)、ネロクプロイン水和物(0.1156g)、ナトリウムブトキシド(0.646g)をDMF(20mL)に溶かした後、25時間、110℃で撹拌した。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=200:1→100:1→50:1)で精製した。減圧濃縮後、形成された結晶性目的物をジクロロメタンとヘキサン混合液で洗浄した後、真空乾燥して、1.386g(収率:54%)の化合物10を製造した。
生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0171】
1H-NMR (500 MHz, DMSO)(IV): 8.15(s,1H,H-2), 7.399(b.s.,2H,NH2), 7.35(s,1H,CHBr), 6.82(s,1H,CHS), 6.08(s,2H,OCH2O), 4.44-4.41(t,2H,CH2N), 4.02-3.97(q,4H,CH2O), 2.86-2.82(t,2H,CH2CO), 1.12-1.09(t,3H,CH3).
生成物の構造は
13C-NMRを通して確認した。
13C-NMR (400 MHz, DMSO)(IV): 14.459, 33.88, 40.025, 60.98, 103.29, 111.94, 113.68, 115.57, 120.24, 125.61, 143.86, 148.62, 149.09, 151.45, 153.71, 155.92, 170.85.
LC/MS: 466.3 (M+H,98%)
【0172】
3−(6−アミノ−8−(6−ブロモベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルチオ)−9H−プリン−9−イル)プロピオン酸(11)の合成
化合物10(540mg)をTHF(13mL)、1N水酸化リチウム水溶液(32mL)、メタノール(32mL)に溶かした後、室温で、16時間撹拌した。溶液を減圧濃縮後、残渣を少量の水溶液で希釈した後、1N塩酸水溶液で酸性化した。形成された結晶性目的物を水溶液で洗浄した後、真空乾燥して、397.4mg(収率:76%)の化合物11を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0173】
1H-NMR (600 MHz, DMSO)(V): 12.50(b.s,COOH), 8.15(s,1H,H-2), 7.42(bs,2H,NH2), 7.36(s,1H,CHBr), 6.84(s,1H,CHS), 6.09(s,2H,OCH2O), 4.40-4.38(t,2H,CH2N), 2.80-2.77(t,2H,CH2CO).
13C-NMR (400 MHz, DMSO)(V): 34.605, 40.48, 103.272, 112.157, 113.666, 115.812, 120.274, 125.628, 144.146, 148.600, 149.120, 151.384, 153.61, 155.859, 172.641.
LC/MS: 438.2 (M+H,98%)
【0174】
3−(6−アミノ−8−(6−ブロモベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルチオ)−9H−プリン−9−イル)−N−(2−(ナフタレン−1−イルアミノ)エチル)プロパンアミド(XXIV)の合成
0℃で、化合物11(46mg)とN−(1−ナフチル)エチレンジアミンヒドロクロリド(30mg)をDMF(0.4mL)、THF(1.6mL)に溶かした後、撹拌した。HOBt(19mg)、EDC(24mg)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.054)を加えた後、室温で、12時間撹拌した。溶液を減圧濃縮後、残渣をジクロロメタンで希釈し、水溶液で3回洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:1→50:1→30:1)で精製して、40.3mg(収率:92%)の化合物XXIVを製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0175】
1H-NMR (600 MHz, DMSO)(VI): 8.23-8.21(t,1H,NHCO), 8.15(s,1H,H-2), 8.07-8.05(d,1H,Ar), 7.74-7.73(d,1H,Ar), 7.43-7.364(m,4H,Ar+NH2), 7.33(s,1H,CHBr), 7.28-7.25(t,1H,Ar), 7.10-7.09(d,1H,Ar), 6.83(s,1H,CHS), 6.54-6.52(d,1H,Ar), 6.20-6.18(t,1H,NH), 6.07(s,2H,OCH2O), 4.44-4.42(t,2H,CH2N), 3.35-3.29(m,2H,CH2NH), 3.24-3.21(m.2H,CH2NH), 2.699-2.67(t,2H,CH2CO).
13C-NMR (400 MHz, DMSO)(VI): 35.455, 38.327, 40.84, 43.667, 103.24, 103.36, 112.208, 113.644, 115.812, 116.113, 120.303, 122.083, 123.577, 124.647, 125.731, 126.251, 127.482, 128.61, 134.689, 144.271, 144.469, 148.556, 149.069, 151.398, 153.537, 155.823, 170.378.
LC/MS:608.5 (M+H,98%)
【0176】
参照:
[1]非特許文献6
[2]特許文献2
[3]非特許文献7
【0177】
<式(XXIV)のiFRET探針を用いたHSP90タンパク質の検出及び活性の確認>
合成された化合物(XXIV)の蛍光特性を分析し、
図17に示した。260、280、340、360nmで励起した後、生成される蛍光スペクトルを観察した。280nmで励起した時より340nmで励起した時に、約2倍程度より大きな蛍光値を放出した。
【0178】
図18の左側図は、化合物XXIVと精製されたHSP90タンパク質を用い、iFRETシグナルを検出した結果である。化合物XXIVは、DMSOに溶かした後、蒸留水に希釈し、最終濃度2μMになるように用いた。化合物XXIV単独で存在するか、或いはタンパク質のみ存在する時は、450nm付近で新しく生成される蛍光値を観察できなかった。しかし、HSP90タンパク質と化合物XXIVが共に存在する場合にのみ、約450nm付近で新しい蛍光値を観察することができ、これは、iFRET現象による結果である。
【0179】
図18の右側図は、化合物XXIVと精製されたHSP90タンパク質、また対照群であるBSA(ウシ血清アルブミン)を用い、iFRETシグナルを再検証した結果である。化合物XXIVは2μM、HSP90タンパク質とBSAタンパク質は最終濃度200nMになるように用いた。この時、用いたバッファーはリン酸緩衝塩溶液(PBS;pH7.4)である。図から分かるように、iFRETシグナルは、タンパク質に選択的な化合物XXIVとHSP90タンパク質によって表れる現象であり、化合物XXIVとBSAはiFRETシグナルを示さない。
【0180】
図19は、HSP90タンパク質とこれと選択的に結合する式(XXIV)を用い、iFRETシグナルを検出したグラフである。HSP90単独で存在する時は、280nmの波長で励起したとき、約350nmの波長で蛍光値を観察でき、式(XXIV)(Dyeで表される)の場合、280nmの波長で励起したとき、約430nmで蛍光値を観察できなかった。式(XXIV)とHSP90タンパク質が混合されると、HSP90タンパク質単独で存在する時、或いは式(XXIV)が単独で存在する時のグラフとは異なり、430nmで増加した蛍光値を確認することができた。対照群としては、BSA(ウシ血清アルブミン)を用いており、BSAと式(XXIV)が混合された時は、iFRETシグナルが観察できなかった。これは、iFRET現象がHSOP90タンパク質と式(XXIV)の選択的結合による現象であることを証明する結果といえる。
【0181】
HSP90と式(XXIV)によるiFRET現象を
図18及び
図19を通して確認した。選択的結合によるiFRET現象を証明するために、HSP90と結合するものとして知らされたゲルダナマイシンとPU−H64を用いて、競合アッセイを実施した。ゲルダナマイシンとPU−H64、式(XXIV)はいずれもHSP90のATP結合部位に結合し、これらが共に存在する場合、化合物は互いに競争するようになる。これを利用して、
図20の左側図は、ゲルダナマイシンと式(XXIV)、右側図はPU−H64と式(XXIV)を用いて単結合部位に対して競争を誘導し、iFRETシグナルの減少を誘導した。HSP90タンパク質と式(XXIV)を用いてiFRETシグナルの生成を確認し、競争的阻害剤であるゲルダナマイシン或いはPU−H64を濃度別に添加することによって、iFRETシグナルが減少することを確認した。これは、式(XXIV)がHSP90タンパク質のATP結合部位に選択的に結合し、iFRETシグナルを生成するということを証明する結果である。
【0182】
図21は、合成された式(XXIV)とHSP90タンパク質の結合程度を示す結果である。式(XXIV)の合成に用いられた核心構造は、PU−H64(非特許文献8)であり、この構造がHSP90と結合する。本実験に用いられたiFRET探針は、PU−H64に蛍光母核が導入された構造であり、実際、この探針とHSP90タンパク質との間の結合程度を調べるために、酵素動力学的分析を通して解離定数が約160nMであることを確認した。iFRET探針である式(XXIV)の濃度を一定に固定し、HSP90の濃度は多様に反応し、生成された蛍光値を測定した。この測定値に基づいて解離定数を求めた。HSP90の濃度の逆数と蛍光値の逆数をプロットし、解離定数を求めた。
【0183】
実施例10:ストレプトアビジンの特異的な式(XXV)〜(XXVIII)のiFRET用探針の製造
【0185】
N−ビオチニル N'−(1−ナフチル)エチレンジアミン(XXV)の合成
N−(1−ナフチル)エチレンジアミンジヒドロクロリド(254mg)、ビオチン(200mg)及びトリエチルアミン(0.58mL)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、10mL)に溶かし、0℃で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、236mg)及びヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、166mg)を加え、室温で、12時間撹拌した。溶液を減圧濃縮した後、残渣を酢酸エチルで希釈し、蒸留水で洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(MgSO
4)で乾燥した。溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:10)で精製して、化合物XXV(380mg、収率:83%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0186】
1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6): 8.17(d,1H), 8.05(d,1H) 7.74(d,1H), 7.44-7.36(d,1H), 7.28(t,2H), 7.10(dd,1H), 6.54(d,1H), 6.52(d,1H), 4.23(t,1H), 4.01(dd,1H), 3.39(t,2H), 3.28(m,1H), 3.27(t,2H), 2.74(dd,1H), 2.55(d,1H), 2.11(t,2H), 1.56(m,2H), 1.55(m,2H), 1.27(m,2H).
【0188】
N−(7−ヒドロキシクマリン−4−アセチル)−N'−Boc−エチレンジアミン(12)の合成
7−ヒドロキシクマリン−4−酢酸(2g)、N−Boc−1,2−ジアミノエタン(3g)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(8mL)をDMF(30mL)に溶かし、0℃で、15分間撹拌した後、EDC(2.6g)及びHOBt(1.37g)を加えた後、室温で、更に4時間撹拌した。溶液を減圧濃縮した後、残渣を酢酸エチルで希釈し、10%クエン酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でそれぞれ洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:10)で精製して、化合物12(2.6g、収率:79%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0189】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): 7.55-7.52(d,1H), 6.82(d,1H), 6.79(s,1H), 6.23(s,1H), 3.83(s,2H), 3.17-3.11(q,2H), 2.96-2.91(q,2H), 1.51(s,9H).
【0190】
(7−ヒドロキシクマリン−4−酢酸)−2−アミノエチルアミド(13)の合成
化合物12(60mg)をMC:TFA(3:1、1mL)に溶かし、室温で、1時間撹拌した。反応物を再び塩化メチレンに溶かした後、減圧蒸留した。同過程を2回繰り返した後、メタノールとジエチルエーテルの組み合わせで再結晶した。結晶性目的物を真空乾燥して、化合物13(40mg、収率:81%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0191】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): 8.38(t,1H), 7.60(d,1H), 6.81(d,1H), 6.73(s,1H), 3.67(s,2H), 3.30-3.27(q,2H), 2.88-2.84(t,2H).
【0192】
N−(7−ヒドロキシクマリン−4−アセチル)−N'−(ビオチニル)エチレンジアミン(XXVI)の合成
化合物13(50mg)、ビオチン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(55mg)及びTEA(0.036mL)を0℃で、DMF(1mL)に溶かし、室温で、5時間撹拌した。溶液を減圧濃縮した後、残渣に過量の水を加え、形成された結晶性目的物をろ過して得た後、シリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:10)で再度精製して、化合物XXVI(40mg、収率:63%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0193】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): 8.22(s,1H), 7.82(s,1H), 7.59-7.56 (d,1H), 6.80-6.77(q,1H), 6.71-6.71(d,1H), 6.43-6.37(d,2H), 6.16(s,1H), 4.32(m,1H), 4.12(m,1H), 3.63(s,2H), 3.10(s,5H), 2.84-2.79(dd,1H), 2.59(d,1H), 2.03(t,1H), 1.48-1.28(m,6H).
【0195】
(E)−7−ヒドロキシクマリン−3−アクリル酸 2−アミノエチルアミド(14)の合成
N−((E)−7−ヒドロキシクマリン−3−アクリル酸)−N'−tert−ブチルエチレンジアミン(70mg)をMC:TFA(2:1、1mL)に溶かし、室温で、1時間撹拌した。反応物を再び塩化メチレンに溶かした後、減圧蒸留した。同過程を2回繰り返した後、形成された結晶性目的物を真空乾燥して、化合物14(65mg、収率:95%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0196】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): 8.45(t,1H), 8.28(s,1H), 7.83(b.s,2H), 7.59-7.57(d,1H), 7.34-7.30(d,1H), 7.09-7.05(d,1H), 6.86-6.83(dd,1H), 6.76(d,1H), 3.42-3.37(q,2H), 2.94-2.89(q,2H).
【0197】
N−((E)−7−ヒドロキシクマリン−3−アクリル)−N'−(ビオチニル)エチレンジアミド(XXVII)の合成
化合物14(100mg)、ビオチン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(89mg)及びTEA(0.06mL)をDMF(1mL)に溶かし、室温で、3時間撹拌した。反応物に過量の酢酸エチルを加えて得た沈澱物をろ過後、メタノールとジエチルエーテルの組み合わせで再結晶を試みた。形成された結晶性目的物を真空乾燥して、化合物XXVII(59mg、収率:46%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0198】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): 8.28(d,2H), 8.25(s,1H), 7.58-7.63(d,1H), 7.06-7.02(d,1H), 6.88-6.86(d,1H), 6.84-6.82(d,1H), 6.74(s,1H), 6.54(d,1H), 6.52(d,1H), 4.23(t,1H), 4.01(dd,1H), 3.27(t,2H), 3.19(q,2H), 3.02(q,2H), 2.74(dd,1H), 2.55(d,1H), 2.11(t,2H), 1.56(m,2H), 1.55(m,2H), 1.27(m,2H).
【0200】
N−(7−ジメチルアミノクマリン−4−アセチル)−N'−Boc−エチレンジアミン(15)の合成
7−ジメチルアミノクマリン−4−酢酸(100mg)、N−Boc−1,2−ジアミノエタン(71mg)を0℃で、DMF(4mL)に溶かし、15分間撹拌した後、EDC(116mg)と4−(ジメチルアミノ)ピリジン(4−(DMAP、6mg)を加え、室温で、更に12時間撹拌した。溶液を減圧濃縮後、残渣を酢酸エチルで希釈した後、10%クエン酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でそれぞれ洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(MgSO
4)で乾燥した。溶液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:20)で精製して、中間体15(87mg、収率:55%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0201】
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3): 7.48(d,1H), 6.63(d,1H), 6.61(d,1H), 6.05(s,1H), 4.84(s,1H), 3.62(s,2H), 3.35-3.31(q,2H), 3.23-3.20(q,2H), 3.06(s,6H), 1.41(s,9H).
【0202】
(7−ジメチルアミノクマリン−4−酢酸)−2−アミノエチルアミド(16)の合成
化合物15(80mg)をMC:TFA(2:1、1mL)に溶かし、室温で、2時間撹拌した。反応物を再び塩化メチレンに溶かした後、減圧蒸留した。同過程を2回繰り返した後、残渣をメタノールとジエチルエーテルの組み合わせで再結晶した。形成された結晶性目的物を真空乾燥して、化合物16(53mg、収率:67%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0203】
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3): 7.54(d,1H), 6.75(d,1H), 6.57(s,1H), 6.04(s,1H), 3.73(s,2H), 3.47(t,2H), 3.31(s,6H), 3.05(t,2H).
【0204】
N−((E)−7−ジメチルアミノクマリン−3−アクリル)−N'−(ビオチニル)エチレンジアミド(XXVIII)の合成
化合物16(40mg)、ビオチン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(41mg)及びTEA(0.03mL)をDMF(1mL)に溶かし、室温で、5時間撹拌した。溶液を減圧濃縮した後、残渣に過量の水を加え、形成された結晶性目的物をろ過して得た後、シリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:10)で再度精製して、化合物XXVIII(30mg、収率:52%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0205】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): 8.23(s,1H), 7.83(s,1H), 7.54-7.52(d,1H), 6.74-6.71(q,1H), 6.56-6.55(d,1H), 6.43-6.37(d,2H), 6.00(s,1H), 4.32(m,1H), 4.13(m,1H), 3.56(s,2H), 3.02(s,5H), 2.89(s,6H), 2.84-2.79(dd,1H), 2.59(d,1H), 2.03(t,1H), 1.48-1.28(m,6H).
【0206】
<式(XXV)〜(XXVIII)のiFRET探針を用いたストレプトアビジンタンパク質の検出及び活性確認>
式(XXV)〜(XXVIII)の化合物をiFRET用探針として用い、ストレプトアビジンを検出した結果を
図23〜26にそれぞれ示した。
式(XXV)の化合物をiFRET用探針として用いて得た
図23を見ると、探針自体は280nmの波長のUV照射により、430nmで低い蛍光値を示し(青線);タンパク質(ストレプトアビジン)は280nmの波長のUVの照射により、340nmで発光する特性を示している(緑線)。iFRET用探針と目的タンパク質であるストレプトアビジンを混合した場合、280nmの波長のUV照射によって430nmで蛍光が大きく増加しているのが観察された(黒線)。前記結果は、本発明で開発された探針は化合物自体としては特定波長のUV照射により、低い蛍光値を有するが、ストレプトアビジンと結合し、ストレプトアビジン内部に存在するエネルギー供与体のトリプトファンに隣接するようになることによって、前記トリプトファンからエネルギーが伝達され、FRET現象が発生するようになり、これは、本発明の探針が結合感応性点火蛍光探針(binding sensitive turn-on fluorescence probe)であるということを意味する。
【0207】
式(XXVI)の化合物を蛍光探針として用いて得た
図24を見ると、蛍光探針自体は280nmの波長のUV照射により、460nmで低い蛍光値を示し(青線);タンパク質(ストレプトアビジン)は、280nmの波長のUVの照射により、340nmで発光する特性を示している(緑線)。iFRET用探針とストレプトアビジンを混合した場合、280nmの波長のUV照射により、探針(XXV)の発光波長より長波長である460nmで蛍光が大きく増加しているのが観察された(黒線)。また、前記発光波長での蛍光増加率が600%以上であることが確認されたため、効果的なiFRET信号を生成するということを確認することができた。
【0208】
式(XXVII)の化合物を探針として用いて得た
図25から、放出波長が異なる探針の場合にも探針とストレプトアビジンを混合した時、280nmの波長のUV照射によって480nmで高い蛍光増加が観察された(黒線)。前記式(XXVII)の化合物は従来のiFRET探針に比べて、長波長での蛍光を放出するので、リアルタイム細胞イメージ化の際に信号対雑音比を最小化し、より鮮明なイメージを提供することができる。
【0209】
図26は、合成されたiFRET用探針リン式(XXVIII)の化合物とストレプトアビジンの結合により生成されるiFRET信号を示す(図の黒線)。式(XXVIII)を有する探針の標的特異性を観察するために、BSAに露出させ、BSAとも結合によってiFRET信号を生成するかを確認した。しかし、本発明の蛍光探針をBSAと反応させた場合には、iFRET信号が観察されなかった(青紫線)。したがって、ビオチンが結合された本発明のiFRET蛍光探針は、ストレプトアビジンに選択的に結合し、iFRET信号を生成することを確認した。
【0210】
表2には、ビオチンと結合された式(XXV)〜(XXVIII)を有する蛍光探針に対する蛍光特性及びFRET効率を示した。
【0212】
各化合物の量子収率は0.1M pH10.0リン酸緩衝液上で測定した。基準物質としては4−メチル−ウンベリフェロン(ΦF=0.63)を、FRET供与体としてはトリプトファン(ΦF=0.12)を用いて、量子収率を求めた。FRET伝達効率は、pH7.4のPBS緩衝液上で測定された結果に基づいて算出し、蛍光測定はパーキンエルマー社のLS55蛍光スペクトル装置を利用した。化合物の各ステップ別の量子収率は表に示し、FRET効率は合成された化合物により、それぞれ、0.225、0.141、0.22及び0.359と高いエネルギー伝達効率を示した。iFRET蛍光探針とタンパク質との間のフォルスター距離(Foster distance)は、データを通して得られた値から確認することができる。これは、iFRET蛍光探針とストレプトアビジンが効果的なiFRET信号を生成しうる距離内に存在することを意味する。
【0213】
実施例11:カスパーゼ−3タンパク質の特異的な式(IXXX)〜(XXXII)のiFRET用探針の製造
【0215】
2−(3−(ベンジルオキシカルボニル−5−オキソオキサゾリジン−4−イル)酢酸(17)の合成
N−Cbz−L−アスパラギン酸(2.16g)、パラホルムアルデヒド(1.53g)及びp−トルエンスルホン酸(0.16g)をトルエン(150mL)に溶かした後、ディーン・スターク(Dean-stark)トラップで、2時間、還流撹拌した。反応物を室温に冷却し、溶媒をシリカゲルに加えた。ジエチルエーテルでろ過した後、減圧濃縮して、化合物17(2.04g、90%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0216】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 7.40-7.35(m,5H), 5.45(br,1H), 5.30-5.10(m,3H), 4.38(t,1H), 2.93(d,2H).
【0217】
tert−ブチル−2−(3−(ベンジルオキシカルボニル−5−オキソオキサゾリジン−4−イル)アセテート(18)の合成
化合物17(1.8g)、t−BuOH(1.8mL)、EDC(1.5g)及びDMAP(0.35g)を乾燥THF(70mL)に溶かした後、5分間撹拌した。反応物にTEA(0.9mL)を加えた後、室温で、更に16時間撹拌にした。溶液を減圧濃縮した後、残渣を酢酸エチルで希釈し、5%クエン酸水溶液と5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:9→1:4)で精製して、化合物18(1.01g、収率:47%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0218】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 7.38-7.34(m,5H), 5.55(br,1H), 5.34(s,1H), 5.22-5.17(q,2H), 4.29(br,1H), 2.96-2.93(d,2H), 1.42(s,9H).
【0219】
ベンジル 4−(2−(tert−ブトキシ)−2−オキソエチル)−5−(トリフルオロメチル)−5−(トリメチルシロキシ)オキサゾリジン−3−カルボキシラート(19)の合成
化合物18(0.1g)、フッ化セシウム(0.006g)及び2M(トリフルオロメチル)トリメチルシラン(0.18mL)を乾燥THF(3mL)に溶かした後、室温で2時間、超音波処理した。溶液を減圧濃縮した後、残渣を酢酸エチルで希釈し、水溶液で洗浄した。有機層を飽和塩溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:10)で精製して、化合物19(0.1g、収率:70%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0220】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 7.38-7.33(m,5H), 5.32-5.17(br,3H), 4.95(s,1H), 4.84(q,1H), 2.46(d,2H), 1.43(s,9H), 0.21(s,9H).
【0221】
tert−ブチル 3−(ベンジルオキシカルボニル)アミノ)−5,5,5−トリフッ素−4−ヒドロキシペンタノエート(20)の合成
化合物19(0.46g)を溶かしたメタノール(20mL)に、水素化ホウ素ナトリウム(0.36g)をゆっくり滴加した後、室温で、16時間撹拌した。反応物に水溶液(20mL)を加えた後、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を飽和塩溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:5)で精製して、化合物20(0.22g、収率:61%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0222】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 7.36-7.31(m,5H), 5.55(d,1H), 5.13-5.07(q,2H), 4.68(s,1H), 4.65(s,1H), 4.25-4.11(d,2H), 2.70(q,2H), 1.46(s,9H).
【0223】
tert−ブチル 3−アミノ−5,5,5−トリフッ素−4−ヒドロキシヘキサペンタノエート(21)の合成
化合物20(0.17mg)と10%Pd/C(パラジウム担持活性炭、23mg)をメタノール(10mL)に溶かした後、水素気流下で、12時間撹拌した。反応物をセライト(celite)でろ過した後、減圧濃縮して、化合物21(0.1g、収率:81%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0224】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 5.22(bs,2H), 4.26(q,1H), 3.82(q,1H), 2.78(d,2H), 1.31(s,9H).
【0226】
N−Cbz−アスパラギン酸 4−tert−ブチルエステル(22)の合成
水(100mL)にL−アスパラギン酸 4−tert−ブチルエステル(5g)とNaHCO
3(4.43g)を溶かした後、撹拌した。ベンジルクロロホルメート(4.14mL)をTHF(100mL)に希釈した溶液を反応物に滴下した後、室温で、18時間撹拌した。有機溶媒を減圧濃縮して除去した後、水溶液層を酢酸エチルで2回洗浄した。10%クエン酸水溶液で酸性化した後、酢酸エチルで目的物を抽出した。有機層を飽和塩溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。真空乾燥して、化合物22(7.2g、収率:85%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0227】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 7.24-7.34(m,5H), 5.31-5.18(s,3H), 4.58-4.67(m,1H), 2.71(q,2H), 1.46(s,9H).
【0228】
N−Cbz−アスパラギン酸−N'−ヒドロキシスクシンイミドエステル−4−tert−ブチルエステル(23)の合成
化合物22(3g)、EDC(1.95g)及びNHS(1.18g)をジクロロメタン(40mL)に溶かした後、室温で、12時間撹拌した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。メタノールとジエチルエーテルで再結晶した後、真空乾燥して、化合物23(3g、収率:77%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0229】
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3): 7.24-7.34(m,5H), 5.33-5.21(s,3H), 4.72(m,1H), 2.94(s,4H), 2.67(q,2H), 1.46(s,9H).
【0230】
N−Cbz−Asp(CO
2tBu)−L−Glu(CO
2tBu)−L−Val(24)の合成
化合物23(0.15g)とアミノ酸EV(0.1g)を溶かしたジクロロメタン(40mL)に、TEA(0.15mL)をゆっくり滴下した後、室温で、12時間撹拌した。反応物を10%クエン酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:10)で精製して、化合物24(0.14g、収率:66%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0231】
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): 10.52(s,1H), 7.38-7.33(m,5H), 5.33-5.21(s,3H), 4.60(m,1H), 4.33(m,1H), 4.12(m,1H), 2.89(s,1H), 2.73(s,1H), 2.20(m,2H), 2.06(m,1H), 1.99(m,1H), 1.74(m,1H), 1.38(s,9H), 1.35(s,9H), 0.88(q,6H).
【0232】
N−Cbz−Asp(CO
2tBu)−L−Glu(CO
2tBu)−L−Val−Asp(CO
2tBu)−(OH)−CF
3(25)の合成
化合物24(0.13g)、化合物21(0.05g)及びTEA(0.15mL)をジクロロメタン(6mL)に溶かした後、5分間撹拌した。反応物にEDC(0.05g)とHOBt(0.06g)を加えた後、室温で、更に12時間撹拌した。反応物を10%クエン酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:10)で精製して、化合物25(0.12g、収率:67%)を製造した。生成物は質量分析を通して確認した。
LC/MS: 833.4 (M+H).
【0233】
N−Cbz−Asp(CO
2tBu)−L−Glu(CO
2tBu)−L−Val−Asp(CO
2tBu)−(ケトン)−CF
3(26)の合成
化合物25(0.2g)とデス−マーティン試薬(0.45g)をジクロロメタン(12mL)に溶かした後、室温で、12時間撹拌した。沈澱物をセライトでろ過した後、ろ過液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:10)で精製して、化合物26(0.17g、収率:86%)を製造した。生成物は質量分析を通して確認した。
LC/MS: 831.4 (M+H).
【0234】
L−Asp(CO
2tBu)−L−Glu(CO
2tBu)−L−Val−Asp(CO
2tBu)−(ケトン)−CF
3(27)の合成
化合物27(0.05g)と10%Pd/C(パラジウム担持活性炭、22mg)をメタノール(5mL)に溶かした後、水素気流下で、12時間撹拌した。反応物をセライトでろ過した後、減圧濃縮して、化合物27(0.03g、収率:71%)を製造した。生成物は質量分析を通し確認した。
LC/MS: 697.4 (M+H).
【0236】
Cbz−3−アミノプロピオン酸、Cbz−6−アミノヘキサン酸(28)の合成
アミノカルボン酸(3−アミノプロパン酸又は6−アミノヘキサン酸、56mmol又は38mmol)を水(15mL)に溶かした後、0℃で、15分間撹拌した。CbzCl(1.1eq)と5N NaOH(1eq)を反応物にゆっくり滴下し、pH10.0を保持した。水溶液層をジエチルエーテルで2回洗浄した後、1N塩酸で酸性化し、ジクロロメタンで目的物を抽出した。有機層を飽和塩溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。−70℃で、ジエチルエーテルで再結晶した後、真空乾燥して、化合物28(n=3、10g、収率:77%/n=5、7.6g、75%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0237】
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3, n=2): 7.34(br,5H), 5.33(br,1H), 5.09(s,2H), 3.46(m,2H), 2.58(t,2H).
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3, n=5): 7.30-7.40(m,5H), 5.09(s,2H), 4.80(br,1H), 3.19(q,2H), 2.34(t,2H), 1.64(q,2H), 1.52(q,2H), 1.37(m,2H).
【0238】
tert−ブチル Cbz−3−アミノプロピオネート、tert−ブチルCbz−6−アミノヘキサノエート(29)の合成
化合物28(1eq)とピリジン(18eq)をtert−ブタノールに溶かした後、−10℃で、15分間撹拌した。反応物にPOCl
3(1.1eq)をゆっくり滴下した後、室温で、16時間撹拌した。溶液を減圧濃縮した後、残渣を酢酸エチルで希釈し、水と飽和炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:50)で精製して、化合物29(n=3、1g、収率:60%/n=5、1.35g、56%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0239】
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3, n=2): 7.33(m,5H), 5.34(br,1H), 5.10(s,2H), 3.42(q,2H), 2.44(t,2H), 1.44(s,9H).
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3, n=5): 7.30-7.36(m,5H), 5.09(s,2H), 4.78(br,1H), 3.19(q,2H), 2.20(t,2H), 1.65-1.30(m,6H), 1.43(s,9H).
【0240】
tert−ブチル 3−アミノプロピオネート、tert−ブチル 6−アミノヘキサノエート(30)の合成
化合物29(1eq)と10%Pd/C(パラジウム担持活性炭、触媒量)をエタノールに溶かした後、水素気流下で、24時間撹拌した。反応物をセライトでろ過した後、減圧濃縮した。沈澱物を酢酸エチルで希釈した後、再度ろ過し、減圧濃縮した。生成物を真空乾燥して、化合物30(n=3、0.32g、収率:95%/n=5、0.51g、92%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0241】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, n=2): 2.73(t,2H), 2.27(t,2H), 1.93(br,2H), 1.39(s,9H).
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3, n=5): 2.67(t,2H), 2.21(t,2H), 1.65(s,2H), 1.60(m,2H), 1.40-1.50(m,2H), 1.44(s,9H), 1.36(m,2H).
【0243】
tert−ブチル 3−(N−(7−ヒドロキシクマリン−4−アセチル))プロピオネート、tert−ブチル 3−(N−(7−ジメチルアミノクマリン−4−アセチル))プロピオネート(31)の合成
7−R−クマリン−4−酢酸(R=ジメチルアミノ、ヒドロキシ、1.1eq)、中間体30(0.1g)とTEA(5eq)をDMFに溶かし、0℃で、15分撹拌後、EDC(1.5eq)とHOBt(1.5eq)を加えた後、室温で、更に12時間撹拌した。溶液を減圧濃縮後、残渣を酢酸エチルで希釈し、10%クエン酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でそれぞれ洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(MgSO
4)で乾燥した。溶液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:10)で精製して、中間体31(R=−OH、n=2、0.14g、収率:61%)(R=−OH、n=5、0.15g、収率:74%)、(R=−NMe2、n=2、0.10g、収率:39%)(R=−NMe2、n=5、0.11g、収率:43%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0244】
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6, R=-OH, n=2): 8.68(d,1H), 7.63(d,1H), 6.81(d,1H), 6.75(s,1H), 6.39(s,1H), 3.79(t,2H), 3.73(s,2H), 2.65(t,2H), 1.42(s,9H).
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6, R=-OH, n=5): 8.66(s,1H), 7.61(d,1H), 6.76(d,1H), 6.74(s,1H), 6.24(s,1H), 3.70(s,2H), 3.19(q,2H), 2.20(t,2H), 1.65-1.30(m,6H), 1.43(s,9H).
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6, R=-NMe2, n=2): 8.01(s,1H), 7.48(d,1H), 6.63(d,1H), 6.61(d,1H), 6.51(s,1H), 3.77(t,2H), 3.61(s,2H), 3.05(s,6H), 2.62(t,2H), 1.42(s,9H).
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6, R=-NMe2, n=5): 8.03(s,1H), 7.45(d,1H), 6.62(d,1H), 6.60(d,1H), 6.49(s,1H), 3.71(s,2H), 3.23(q,2H), 3.19(s,6H), 2.24(t,2H), 1.66-1.34(m,6H), 1.42(s,9H).
【0245】
3−(N−(7−ヒドロキシクマリン−4−アセチル))プロピオンアミド(32)の合成
化合物31(0.1g)をMC:TFA(2:1、1mL)に溶かし、室温で、2時間撹拌した。反応物を再び塩化メチレンに溶かした後、減圧蒸留した。同過程を2回繰り返した後、残渣をメタノールとジエチルエーテルの組み合わせで再結晶をした。形成された結晶性目的物を真空乾燥して、化合物32(R=−OH、n=2、0.060g、収率:78%)(R=−OH、n=5、0.080g、収率:84%)、(R=−NMe2、n=2、0.051g、収率:67%)(R=−NMe2、n=5、0.081g、収率:88%)を製造した。生成物の構造は
1H−NMRを通して確認した。
【0246】
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6, R=-OH, n=2): 8.68(d,1H), 7.63(d,1H), 6.81(d,1H), 6.75(s,1H), 6.39(s,1H), 3.73(s,2H), 3.79(t,2H), 2.65(t,2H), 1.42(s,9H).
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6, R=-OH, n=5): 8.66(s,1H), 7.61(d,1H), 6.76(d,1H), 6.74(s,1H), 6.24(s,1H), 3.70(s,2H), 3.19(q,2H), 2.20(t,2H), 1.65-1.30(m,6H).
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6, R=-NMe2, n=2): 8.22(s,1H), 7.53(d,1H), 6.74(d,1H), 6.56(s,1H), 6.43(s,1H), 3.75(t,2H), 3.61(s,2H), 3.05(s,6H), 2.62(t,2H).
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6, R=-NMe2, n=5): 8.20(s,1H), 7.47(d,1H), 6.64(d,1H), 6.60(d,1H), 6.49(s,1H), 3.71(s,2H), 3.23(q,2H), 3.19(s,6H), 2.24(t,2H), 1.68-1.32(m,6H).
【0247】
3−(N−(7−ヒドロキシクマリン−4−アセチル))プロピオンアミド−Asp(CO
2tBu)−L−Glu(CO
2tBu)−L−Val−Asp(CO
2tBu)−(ケトン)−CF
3(33)の合成
化合物32(1.2eq)、化合物27(0.03g)及びTEA(5eq)をDMFに溶かし、0℃で、15分間撹拌した後、EDC(1.5eq)とHOBt(1.5eq)を加えて、室温で、更に12時間撹拌した。溶液を減圧濃縮した後、残渣を酢酸エチルで希釈し、10%クエン酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でそれぞれ洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:10)で精製して、化合物33(R=−OH、n=2、0.013g、収率:32%)(R=−OH、n=5、0.017g、収率:40%)、(R=−NMe2、n=2,0.016g,収率:39%)(R=−NMe2、n=5、0.013g、収率:30%)を製造した。生成物は質量分析を通して確認した。
【0248】
LC/MS(R = -OH, n = 2): 970.4(M+H).
LC/MS(R = -OH, n = 5): 1012.5(M+H).
LC/MS(R = -NMe2, n = 2): 997.5(M+H).
LC/MS(R = -NMe2, n = 5): 1039.5(M+H).
【0249】
3−(N−(7−ヒドロキシクマリン−4−アセチル))プロピオンアミド−Asp−L−Glu−L−Val−Asp−(ケトン)−CF3(XXIX)の合成
化合物33をMC:TFA(2:1、1mL)に溶かし、室温で、2時間撹拌した。反応物を再び塩化メチレンに溶かした後、減圧蒸留した。同過程を2回繰り返した後、残渣をメタノールとジエチルエーテルの組み合わせで再結晶した。形成された結晶性目的物を真空乾燥して、化合物XXIXを製造した。
【0250】
3−(N−(7−ヒドロキシクマリン−4−アセチル))プロピオンアミド−Asp(CO
2Me)−L−Glu(CO
2Me)−L−Val−Asp(CO
2Me)−(ケトン )−CF
3(XXX)の合成
化合物XXIX、MeOH、EDC及びDMAPを適当量のTHFに溶かした後、0℃で、15分間撹拌した。反応物にTEAをゆっくり滴下した後、室温で、更に16時間撹拌した。溶液を減圧濃縮した後、残渣を酢酸エチルで希釈し、10%クエン酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でそれぞれ洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物XXXを製造した。
【0252】
N−(1−ナフチル)エチレンアミド−4−ブタンアミド−Asp(CO
2tBu)−L−Glu(CO
2tBu)−L−Val−Asp(CO
2tBu)−(ケトン)−CF
3(34)の合成
N−(1−ナフチル)エチレンアミド−4−ブタン酸(1.1eq)、化合物27(1eq)及びTEA(5eq)をDMFに溶かし、0℃で、15分間撹拌した後、EDC(1.5eq)とHOBt(1.5eq)を加え、室温で、更に12時間撹拌した。溶液を減圧濃縮した後、残渣を酢酸エチルで希釈し、10%クエン酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でそれぞれ洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物34を製造した。
【0253】
N−(1−ナフチル)エチレンアミド−4−ブタンアミド−Asp−L−Glu−L−Val−Asp−(ケトン)−CF
3(XXXI)の合成
化合物34をMC:TFA(2:1)に溶かし、室温で、2時間撹拌した。反応物を再び塩化メチレンに溶かした後、減圧蒸留した。同過程を2回繰り返した後、残渣をメタノールとジエチルエーテルの組み合わせで再結晶した。形成された結晶性目的物を真空乾燥して、化合物XXXIを製造した。
【0254】
N−(1−ナフチル)エチレンアミド−4−ブタンアミド−Asp(CO
2Me)−L−Glu(CO
2Me)−L−Val−Asp(CO
2Me)−(ケトン)−CF
3(XXXII)の合成
化合物XXXI(1eq)、MeOH(5eq)、EDC(1.2eq)及びDMAP(0.1eq)を適当量のTHFに溶かした後、0℃で、15分間撹拌した。反応物にTEA(3eq)をゆっくり滴下した後、室温で、更に16時間撹拌した。溶液を減圧濃縮した後、残渣を酢酸エチルで希釈し、10%クエン酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でそれぞれ洗浄した。有機層を飽和塩溶液で再度洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物XXXIIを製造した。
【0255】
細胞内特定信号伝達により細胞死滅が誘導される過程をリアルタイムでイメージ化するために細胞透過が容易なカスパーゼiFRET探針を合成した。広く知られたカスパーゼに選択的に結合するペプチド阻害剤である化合物27を合成し、これのために化合物21が用いられた。化合物27のN末端部分はiFRET蛍光母核の導入部位としての役割を果たす。カスパーゼ活性を抑制するペプチド阻害剤であるDEVD−CF3に、蛍光体として働く合成物を導入するためのリンカー20(n=2〜5)を合成した。合成された細胞透過用トリフルオロメチルアスパラギン酸の化合物21は、末端に−CF
3基を有し、これは、標的タンパク質であるカスパーゼ−3と結合し、酵素の機能を阻害するようになる。様々な蛍光波長を示すようにするために、蛍光探針のR基を(−OH)、(−N(CH
3)
2)のように2種類を導入し、430nmの蛍光値を有する式(XXXII)を有する蛍光探針も合成した。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]