(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多層絶縁フィルムが、前記第2の絶縁層側からレーザー直描を行ったときに、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とのうち前記第2の絶縁層のみを選択的に除去可能である多層絶縁フィルムであり、
前記多層絶縁フィルムを前記第2の絶縁層側からレーザー直描を行うことで、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とのうち前記第2の絶縁層のみを選択的に、かつ前記第2の絶縁層を部分的に除去して、得られる絶縁層に前記第2の絶縁層の厚みの深さの溝を形成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層基板の製造方法。
前記第2の絶縁層が、前記第2の絶縁層を部分的に除去する際に、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とのうち前記第2の絶縁層のみを溶かして選択的に除去して、得られる絶縁層に前記第2の絶縁層の厚みの深さの溝を形成することが可能であるように構成されている多層絶縁フィルムを用いて、
得られる絶縁層に前記第2の絶縁層の厚みの深さの溝を形成する工程において、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とのうち前記第2の絶縁層のみを選択的に溶かして、かつ前記第2の絶縁層を部分的に除去し、
多層絶縁フィルムの状態で前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とのうち一方のみを硬化させることが可能であるか、又は、レーザー光の照射により、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とのうち前記第2の絶縁層のみを溶かして除去可能である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層基板の製造方法。
前記多層絶縁フィルムが、多層絶縁フィルムの状態で前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とのうち一方のみを硬化させることが可能である、請求項6に記載の多層基板の製造方法。
前記第2の絶縁層を部分的に除去する際に、レーザー光の照射により、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とのうち前記第2の絶縁層のみを溶かして除去可能である、請求項6に記載の多層基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(多層絶縁フィルム)
本発明に係る多層絶縁フィルムは、溝を有する絶縁層を形成するために用いられる。本発明に係る多層絶縁フィルムは、多層基板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
【0030】
図1に、本発明の一実施形態に係る多層絶縁フィルムを模式的に断面図で示す。
【0031】
図1に示す多層絶縁フィルム1は、第1の絶縁層2と、第1の絶縁層2の一方の表面に積層された第2の絶縁層3とを有する。第2の絶縁層3は、第2の絶縁層3を部分的に除去する際に、第1の絶縁層2と第2の絶縁層3とのうち第2の絶縁層3のみを選択的に除去して、得られる絶縁層に第2の絶縁層3の厚みの深さの溝を形成することが可能であるように構成されている。
【0032】
第2の絶縁層3を部分的に除去する際に、第1の絶縁層2と第2の絶縁層3とのうち第2の絶縁層3のみを選択的に除去して、得られる絶縁層に第2の絶縁層3の厚みの深さの溝を形成することが可能であるように構成する方法は特に限定されない。この方法としては、上記第1の絶縁層を上記第2の絶縁層よりも硬くする方法、多層絶縁フィルムの状態で上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第1の絶縁層のみを硬化させることが可能である多層絶縁フィルムを用いる方法、露光後の現像で、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみが部分的に現像液に溶解可能である多層絶縁フィルムを用いる方法、並びにレーザー光の照射により、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみを溶かして除去可能にする方法等が挙げられる。
【0033】
前述したように、トレンチ工法では、絶縁層に形成する溝の深さを高精度に制御することは困難である。このため、溝内に形成される回路パターンの形状も、高精度に制御することが困難である。これは、多層回路間の絶縁距離を精度よく保てないことを意味する。すなわち、溝の深さにばらつきがある場合、必要な所定の絶縁距離に対して、深く掘られた溝に形成された回路の下層の回路に対する絶縁距離が短くなり、浅い溝に形成された回路は下層の回路に対する絶縁距離は長くなる。このため、溝の深さのばらつきは、絶縁信頼性に大きく影響することになる。
【0034】
今後予想される、パッケージ基板の薄型化が進行する状況においては、この絶縁距離を設計された一定の値に制御することがこれまで以上に求められる。
【0035】
本発明では、絶縁層に上記第2の絶縁層の厚みの深さの溝が精度よく形成されており、かつ該溝内に溝の形状の金属配線が精度よく形成されている多層基板を得ることができる。
【0036】
上述した効果により、多層基板における層間絶縁距離を一定に保つことが可能になる。つまり、得られる絶縁層において、溝の底が第1の絶縁層と第2の絶縁層との境界に揃うことにより、この溝内に形成したパターンと一つ下の下層にあるパターンとの絶縁距離が一定に保たれる。従って、第1の絶縁層と第2の絶縁層とのそれぞれの厚みを調整した多層絶縁フィルムを提供することにより、所望の絶縁距離を精度よく実現できる。
【0037】
得られる絶縁層に所定の深さの溝をより一層精度よく形成する観点からは、上記多層絶縁フィルムは、上記第2の絶縁層を部分的に除去する際に、上記第2の絶縁層を削るか、又は溶かすことが可能であることが好ましい。上記第2の絶縁層を部分的に除去する際に、上記第2の絶縁層を削るか、又は溶かすことが好ましい。上記第2の絶縁層を部分的に除去する際に、上記第2の絶縁層を削ることが好ましく、溶かすことも好ましい。
【0038】
多層絶縁フィルムの状態で上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち一方のみを硬化させることが可能であるか、露光後の現像で、第2の絶縁層のみが部分的に現像液に溶解可能であるか、又は、レーザー光の照射により、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみを溶かして除去可能である場合には、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみを選択的に溶かして除去して、得られる絶縁層に上記第2の絶縁層の厚みの深さの溝を形成することが可能である。
【0039】
得られる絶縁層に所定の深さの溝をより一層精度よく形成する観点からは、上記第2の絶縁層が、上記第2の絶縁層を部分的に除去する際に、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみを選択的に削って除去して、得られる絶縁層に上記第2の絶縁層の厚みの深さの溝を形成することが可能であるように構成されていることが好ましい。
【0040】
得られる絶縁層に所定の深さの溝をより一層精度よく形成する観点からは、上記第1の絶縁層を上記第2の絶縁層よりも硬くすることが好ましい。この場合には、多層絶縁フィルムを上記第2の絶縁層側から削ったときに、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみを選択的に除去可能である。
【0041】
上記第1,第2の絶縁層の硬さは、粘弾性スペクトロメーター、もしくは示差走査熱量計(DSC)より測定される絶縁層のガラス転移温度により、代用評価することができる。また、この評価により、硬さの高低を判定することができる。
【0042】
上記多層絶縁フィルムは、上記第2の絶縁層側から削ったときに、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみを選択的に除去可能である多層絶縁フィルムであることが好ましい。上記多層絶縁フィルムは、上記第2の絶縁層側からレーザー直描を行ったときに、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみを選択的に除去可能である多層絶縁フィルムであることが好ましい。これらの場合には、上記第2の絶縁層のみを選択的に除去できることから、得られる絶縁層に、上記第2の絶縁層の厚みの深さの溝をより一層精度よく形成できる。上記多層絶縁フィルムを上記第2の絶縁層側から削ったときに、上記第1の絶縁層は除去されないことが好ましい。
【0043】
例えば上記第2の絶縁層の樹脂成分が上記第1の絶縁層の樹脂成分よりレーザーの波長光の吸収が高い場合、第2の絶縁層の樹脂成分がより削れやすくなる。
【0044】
得られる絶縁層に所定の深さの溝をより一層精度よく形成する観点からは、上記多層絶縁樹脂フィルムでは、上記第1の絶縁層中の樹脂成分の架橋度が、上記第2の絶縁層中の樹脂成分の架橋度よりも高いか、又は、上記第1の絶縁層中の無機充填材の含有量が、上記第2の絶縁層中の無機充填材の含有量よりも多いことが好ましい。上記第1の絶縁層中の樹脂成分の架橋度が、上記第2の絶縁層中の樹脂成分の架橋度よりも高いことが好ましく、上記第1の絶縁層中の無機充填材の含有量が、上記第2の絶縁層中の無機充填材の含有量よりも多いことが好ましい。上記第2の絶縁層を部分的に除去する際に、上記第1の絶縁層中の樹脂成分の架橋度が、上記第2の絶縁層中の樹脂成分の架橋度よりも高いことで、また上記第1の絶縁層中の無機充填材の含有量が、上記第2の絶縁層中の無機充填材の含有量よりも多いことで、上記第1の絶縁層を上記第2の絶縁層よりも硬くすることが容易である。
【0045】
上記第1,第2の絶縁層中の樹脂成分の上記架橋度は、粘弾性スペクトロメーター、もしくは示差走査熱量計(DSC)より測定される樹脂のガラス転移温度により、代用評価することができる。また、この評価により、上記架橋度の大小を判定することができる。
【0046】
上記第1,第2の絶縁層中の樹脂成分の上記架橋度を異ならせる方法としては、樹脂や硬化剤の組成を変更する方法、及び硬化促進剤の量を変える方法等が挙げられる。
【0047】
第2の絶縁層3を部分的に除去する際に、第1の絶縁層2と第2の絶縁層3とのうち一方のみを選択的に溶かして除去して、得られる絶縁層に第2の絶縁層3の厚みの深さの溝を形成することが可能であるように、1)多層絶縁フィルムの状態で上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち一方のみを硬化させることが可能であるか、2)露光後の現像で、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみが部分的に現像液に溶解可能であるか、3)レーザー光の照射により、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみを溶かして除去可能であることが好ましい。この場合にも、絶縁層に上記第2の絶縁層の厚みの深さの溝が精度よく形成されており、かつ該溝内に溝の形状の金属配線が精度よく形成されている多層基板を得ることができる。
【0048】
1)多層絶縁フィルムの状態で上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち一方のみを硬化させることが可能であることが好ましく、2)露光後の現像で、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみが部分的に現像液に溶解可能であることが好ましく、3)レーザー光の照射により上記第2の絶縁層のみを溶かして除去可能であることも好ましい。
【0049】
1)多層絶縁フィルムの状態で上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち一方のみを硬化させることが可能である場合には、第1の絶縁層のみを硬化させることが可能であることが好ましい。1)多層絶縁フィルムの状態で上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち一方のみを硬化させることが可能である場合には、第1の絶縁層を硬化させかつ第2の絶縁層が部分的に硬化する硬化条件で、硬化を行うことにより、第2の絶縁層のみを選択的に硬化させることができ、又は、第2の絶縁層が硬化せずにかつ第1の絶縁層のみが硬化する硬化条件で、硬化を行うことにより、第1の絶縁層のみを選択的に硬化させることができる。硬化状態が異なる第1,第2の絶縁層において、第2の絶縁層を部分的に溶かして除去することで、溝を形成することができる。このとき、第2の絶縁層を部分的に硬化させて、硬化していない第2の絶縁層部分を溶かして除去してもよい。硬化していない第2の絶縁層部分を溶かすために、現像を行うことが好ましい。多層絶縁フィルムの状態で上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第1の絶縁層のみを硬化させることが可能であることが好ましい。なお、「上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち一方のみを硬化させる」とは、一方の絶縁層を他方の絶縁層よりもより硬化させることを意味し、他方の絶縁層の硬化が、一方の絶縁層よりも硬化していない程度に進行することも含まれる。
【0050】
2)露光後の現像で、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみが部分的に現像液に溶解可能である場合には、上記第1,第2の絶縁層が硬化しているか否かは関係なく、第2の絶縁層に露光及び現像の原理を用いて、第2の絶縁層を選択的にかつ部分的に除去できればよい。例えば、露光により光が照射された部分が、現像液に可溶になることが好ましい。マスクを介して、第2の絶縁層に部分的に光を照射することで、第2の絶縁層を部分的に現像液に可溶にすることができる。
【0051】
3)レーザー光の照射により上記第2の絶縁層のみを溶かして除去可能である場合には、多層絶縁フィルムにレーザー光を照射することで、第2の絶縁層のみを選択的に除去することができる。また、パターン状にレーザー光を照射することで、パターン状に第2の絶縁層を除去することができる。
【0052】
得られる絶縁層に所定の深さの溝をより一層精度よく形成する観点からは、多層絶縁フィルムの状態で上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち一方のみを硬化させることが可能にするために、1−1)上記第1の絶縁層が光反応性成分を含み、かつ上記第2の絶縁層が熱硬化性成分を含むか、1−2)上記第1の絶縁層が熱硬化性成分を含み、かつ上記第2の絶縁層が光反応性成分を含むか、1−3)上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とがそれぞれ熱硬化性成分を含み、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とが硬化する熱硬化条件が異なるか、1−4)上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とがそれぞれ光反応性成分を含み、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とが硬化する光反応条件が異なるか、又は2)露光後の現像で、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみが部分的に現像液に溶解可能であることが好ましい。1−1)上記第1の絶縁層が光反応性成分を含み、かつ上記第2の絶縁層が熱硬化性成分を含むか、1−2)上記第1の絶縁層が熱硬化性成分を含み、かつ上記第2の絶縁層が光反応性成分を含むか、1−3)上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とがそれぞれ熱硬化性成分を含み、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とが硬化する熱硬化条件が異なるか、又は、1−4)上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とがそれぞれ光反応性成分を含み、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とが硬化する光反応条件が異なることが好ましい。1−1)上記第1の絶縁層が光反応性成分を含み、かつ上記第2の絶縁層が熱硬化性成分を含むことが好ましく、1−2)上記第1の絶縁層が熱硬化性成分を含み、かつ上記第2の絶縁層が光反応性成分を含むことが好ましく、1−3)上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とがそれぞれ熱硬化性成分を含み、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とが硬化する熱硬化条件が異なることが好ましく、1−4)上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とがそれぞれ光反応性成分を含み、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とが硬化する光反応条件が異なることも好ましい。
【0053】
1−1)上記第1の絶縁層が光反応性成分を含み、かつ上記第2の絶縁層が熱硬化性成分を含む場合には、加熱により第2の絶縁層のみを選択的に熱硬化させるか、又は、光の照射により第1の絶縁層のみを選択的に光反応させることができる。1−2)上記第1の絶縁層が熱硬化性成分を含み、かつ上記第2の絶縁層が光反応性成分を含む場合には、光の照射により第2の絶縁層のみを選択的に光反応させるか、又は、加熱により第1の絶縁層のみを選択的に熱硬化させることができる。1−3)上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とがそれぞれ熱硬化性成分を含み、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とが硬化する熱硬化条件が異なる場合には、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち一方のみが熱硬化する条件で熱硬化させることができる。1−4)上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とがそれぞれ光反応性成分を含み、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とが硬化する光反応条件が異なる場合には、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち一方のみが光反応する条件で光反応を行うことにより、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち一方のみを光反応させることができる。また、マスクを介して、第2の絶縁層に部分的に光を照射することで、第2の絶縁層を部分的に硬化させることができる。また、第2の絶縁層を部分的に加熱することで、第2の絶縁層を部分的に硬化させることができる。そして、硬化していない第2の絶縁層部分を現像により除去することができる。
【0054】
(多層基板及び多層基板の製造方法)
上述した多層絶縁フィルムを用いて、溝を有する絶縁層を備える多層基板を得ることができる。
【0055】
本発明に係る多層基板は、回路基板と、該回路基板上に配置されており、かつ溝を有する絶縁層と、該溝内に形成された金属配線とを備える。本発明に係る多層基板における上記絶縁層が、上述した多層絶縁フィルムを用いて形成されている。上記絶縁層は、回路基板上に直接積層されていてもよく、他の絶縁層を介して間接に積層されていてもよい。
【0056】
図2に、本発明の一実施形態に係る多層絶縁フィルムを用いた多層基板を模式的に断面図で示す。
【0057】
図2に示す多層基板11では、回路基板12の第1の表面上に、絶縁層13が配置されており、回路基板の第1の表面とは反対の第2の表面上に絶縁層14が配置されている。回路基板12は金属配線12Aを有する。回路基板12の表面の一部の領域に金属配線12Aが露出している。絶縁層13,14はそれぞれ、回路基板12側とは反対側の表面に、溝13A,14Aを有する。溝13A内に金属配線15が形成されている。溝14A内に金属配線16が形成されている。
【0058】
本発明に係る多層基板の製造方法では、上述した多層絶縁フィルムが用いられる。すなわち、本発明に係る多層基板の製造方法では、第1の絶縁層と、該第1の絶縁層の一方の表面に積層された第2の絶縁層とを有し、該第2の絶縁層が、上記第2の絶縁層を部分的に除去する際に、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみを選択的に除去して、得られる絶縁層に上記第2の絶縁層の厚みの深さの溝を形成することが可能であるように構成されている多層絶縁フィルムを用いる。
【0059】
本発明に係る多層基板の製造方法は、回路基板の表面上に、上記多層絶縁フィルムを積層する工程と、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみを選択的に、かつ上記第2の絶縁層を部分的に除去して、得られる絶縁層に上記第2の絶縁層の厚みの深さの溝を形成する工程と、上記絶縁層に形成された上記溝内に金属配線を形成する工程とを備える。
【0060】
また、本発明に係る多層基板の製造方法では、上記第2の絶縁層が、上記第2の絶縁層を部分的に除去する際に、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみを溶かして選択的に除去して、得られる絶縁層に上記第2の絶縁層の厚みの深さの溝を形成することが可能であるように構成されている多層絶縁フィルムを用いることが好ましい。この場合に、上記多層絶縁フィルムでは、1)多層絶縁フィルムの状態で上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち一方のみを硬化させることが可能であるか、2)露光後の現像で、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみが部分的に現像液に溶解可能であるか、又は、3)レーザー光の照射により前記第2の絶縁層のみを溶かして除去可能であることが好ましい。
【0061】
多層絶縁フィルム1を用いて、多層基板11は、例えば以下のようにして得ることができる。
【0062】
先ず、
図3(a)に示すように、回路基板12の表面上に、多層絶縁フィルム1を積層する。回路基板12表面上に、多層絶縁フィルム1を第1の絶縁層2側から積層する。ここでは、回路基板12の第1の表面と、第1の表面とは反対の第2の表面とに、2つの多層絶縁フィルム1を1つずつ積層している。積層後、多層絶縁フィルム1を半硬化又は硬化させることが好ましい。また、第2の絶縁層の選択的除去を光反応による現像で行う場合には、第2の絶縁層を選択的に除去した後に、熱による半硬化又は硬化を行うほうがよい場合もある。
【0063】
次に、
図3(b)に示すように、金属配線12Aに至るように、かつ多層絶縁フィルム1を貫通するように、多層絶縁フィルム1に貫通孔1aを形成する。ここでは、
図3(a)に示す構造の一部分のみが図示されている。
【0064】
上記貫通孔として、例えば、ビア又はスルーホール等が形成される。多層絶縁フィルムに貫通孔を形成する方法としては、紫外線、赤外線レーザー又はCO
2レーザーを照射する方法及びドリルによる穴開け方法等が挙げられる。上記ビアの直径は特に限定されないが、30〜120μm程度である。
【0065】
次に、
図3(c)に示すように、第1の絶縁層2と第2の絶縁層3とのうち第2の絶縁層3のみを選択的に、かつ第2の絶縁層3を部分的に除去して、得られる絶縁層13に第2の絶縁層3の厚みの深さの溝13Aを形成する。すなわち、第1の絶縁層2と第2の絶縁層3とのうち第2の絶縁層3のみを選択的に、かつ第2の絶縁層3を部分的に除去して、溝13Aを有する絶縁層13を形成する。絶縁層13は、溝13Aが形成された第2の絶縁層3と第1の絶縁層2とを有する。また、絶縁層13は、貫通孔1aに由来する貫通孔13aを有する。ここでは、第1の絶縁層2を除去せずに、第2の絶縁層3のみを除去しているため、溝13Aの深さは、第2の絶縁層3の厚みと同じである。
【0066】
なお、第2の絶縁層3のみを溶かして選択的に除去する場合に、第2の絶縁層3を部分的に溶かして除去するために、
図4に示すように、第2の絶縁層3を部分的に硬化させて、硬化した第2の絶縁層部分3Aと、硬化していない第2の絶縁層部分3Bとを形成してもよい。または、第2の絶縁層3を部分的に現像液に可溶にし、可溶な第2の絶縁層部分3Bと可溶でない第2の絶縁層部分3Aとを形成してもよい。このような第2の絶縁層部分3A,3Bを形成することで、現像により、硬化していない第2の絶縁層部分3Bのみ、もしくは、現像液に可溶となった第2の絶縁層部分3Bのみを部分的に溶かして除去することが容易になる。また、上記現像を光反応にて行い、溝を形成する場合は、第2の絶縁層部分3Bを除去した後、熱による半硬化又は硬化を行い、ビアを形成することが好ましい場合もある。
【0067】
溝13Aを形成する方法としては、多層絶縁フィルムの第2の絶縁層側から第2の絶縁層のみを部分的に削る方法、第1の絶縁層を硬化させ、第2の絶縁層を部分的に硬化させて、硬化していない第2の絶縁層部分を現像により除去する方法、第2の絶縁層を硬化させずに、第1の絶縁層を部分的に硬化させた後、第2の絶縁層を部分的に硬化させて、硬化していない第2の絶縁層部分を現像により除去する方法、露光後の現像で、上記第1の絶縁層と上記第2の絶縁層とのうち上記第2の絶縁層のみを部分的に現像液に溶解可能にする方法、第2の絶縁層のみが融解又は昇華する温度に加熱して、第2の絶縁層を部分的に除去する方法、並びに第2の絶縁層にレーザー光を照射する方法等が挙げられる。上記現像では、現像により除去すべき絶縁層部分が溶解可能な現像液が用いられる。
【0068】
次に、必要に応じて、デスミア処理を行う。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、絶縁層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。上記スミアを除去するために、デスミア処理を行うことが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。上記デスミア処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0069】
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0070】
上記デスミア処理の方法は特に限定されない。上記デスミア処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜30分間の条件で、硬化物を処理する方法が好適である。このデスミア処理は1回又は2回行われることが好ましい。上記デスミア処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。
【0071】
次に、
図3(d)に示すように、溝13A内に、金属を充填し、金属配線15を形成する。ここでは、溝13A及び貫通孔13a内のみに、金属配線15を選択的に形成している。また、溝13Aを予め形成することで、パターン状の溝13Aの形状に対応した形状の金属配線15を形成することができる。
【0072】
絶縁層の溝内に金属配線を選択的に形成するために、必要に応じて、センシタイジング工程を行うことが好ましい。センシタイジングにより、絶縁層の表面にパラジウム触媒を付けた後、その部分に選択的に無電解めっきを施し、その上に電解めっきを形成することによりパターンを形成できる。センシタイジング工程では、具体的には、多層絶縁フィルムをアルカリクリーナで処理し、表面を脱脂洗浄する。洗浄後、多層絶縁フィルムをプリディップ液で処理した後、絶縁層をアクチベーター液で処理し、パラジウム触媒を付ける。この際、パラジウム触媒は絶縁層13の外側の表面全面につくので、表面をセラミックバフ等で研磨し、溝13A及び貫通孔13a内以外の絶縁層の表面のパラジウムを落としてから無電解めっき工程に移ることにより、溝13A及び貫通孔13a内に選択的にめっきパターンを形成できる。
【0073】
なお、センシタイジング後にセラミックバフ研磨を行わず、
図5に示すように溝13A及び貫通孔13a内に金属を充填し、かつ絶縁層13の表面上にも金属を積層するように、金属層15Aを形成してもよい。この場合に、表面研削又は電気エッチング等によって、金属層15Aを部分的に除去することで、金属配線15を形成することができる。
【0074】
また、回路基板12の第2の表面側の多層絶縁フィルム1についても、第1の表面側の多層絶縁フィルム1と同様の処理を行うことで、溝14A及び貫通孔14aを有する絶縁層14を形成し、かつ絶縁層14内に金属配線16を形成することができる。このようにして、
図2に示す多層基板11を得ることができる。
【0075】
(多層絶縁フィルムの詳細)
上記多層絶縁フィルムを構成する第1,第2の絶縁層は、熱硬化性成分を含む樹脂組成物により形成されているか、光反応性成分を含む樹脂組成物により形成されていることが好ましい。上記熱硬化性成分は、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含むことが好ましい。上記光反応性成分は、光反応性樹脂を含むことが好ましく、光反応開始剤とを含むことが好ましい。上記多層絶縁フィルムを構成する第1,第2の絶縁層は、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含む樹脂組成物(第1,第2の樹脂組成物)により形成されていることが好ましい。該樹脂組成物は、無機充填材を含むことが好ましい。上記第1の絶縁層又は上記第2の絶縁層中の溶剤を除く成分100重量%中の無機充填材の含有量に関して、上記第1の絶縁層中の無機充填材の含有量が、上記第2の絶縁層中の無機充填材の含有量よりも、多いことが好ましく、5重量%以上多いことがより好ましく、10重量%以上多いことが更に好ましく、20重量%以上多いことが特に好ましい。従って、上記第1の絶縁層を形成する第1の樹脂組成物中の溶剤を除く成分100重量%中の無機充填材の含有量は、上記第2の絶縁層を形成するための第2の樹脂組成物中の溶剤を除く成分100重量%中の無機充填材の含有量よりも多いことが好ましく、5重量%以上多いことがより好ましく、10重量%以上多いことが更に好ましく、20重量%以上多いことが特に好ましい。
【0076】
以下、上記樹脂組成物に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0077】
[熱硬化性樹脂(熱硬化性化合物)(熱硬化性成分)]
上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層はそれぞれ、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。上記熱硬化性樹脂は特に限定されない。上記熱硬化性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びビニルベンジル樹脂等が挙げられる。絶縁性及び機械強度をより一層良好にする観点からは、上記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0079】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0080】
上記エポキシ樹脂は、常温(23℃)で液状であってもよく、固形であってもよい。上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層はそれぞれ、常温(23℃)で液状であるエポキシ樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層中の無機充填材と溶剤とを除く成分(以下、成分Aと記載することがある)100重量%中、常温で液状であるエポキシ樹脂の各含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは25重量%以上である。常温で液状であるエポキシ樹脂の含有量が上記下限以上であると、多層絶縁フィルムにおける無機充填材の含有量を多くすることが容易である。上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層中の上記エポキシ樹脂の全量が、常温で液状であるエポキシ樹脂であってもよい。
【0081】
硬化物と金属配線との接着強度をより一層高くする観点からは、上記熱硬化性樹脂の熱硬化性官能基の当量は、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下である。上記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合に、上記熱硬化性官能基の当量はエポキシ当量を示す。
【0082】
上記熱硬化性樹脂の分子量は1000以下であることが好ましい。この場合には、多層絶縁フィルムにおける無機充填材の含有量を多くすることが容易である。さらに、無機充填材の含有量が多くても、流動性が高い樹脂組成物が得られる。また、分子量が1000以下である熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との併用により、多層絶縁フィルムの溶融粘度の過度の低下が抑えられる。
【0083】
上記熱硬化性樹脂の分子量及び後述する熱硬化剤の分子量は、上記熱硬化性樹脂又は熱硬化剤が重合体ではない場合、及び上記熱硬化性樹脂又は熱硬化剤の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記熱硬化性樹脂又は熱硬化剤が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
【0084】
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0085】
上記成分A100重量%中、上記熱硬化性樹脂の全体の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
【0086】
[熱硬化剤(熱硬化性成分)]
上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層はそれぞれ、熱硬化剤を含むことが好ましい。上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0087】
上記熱硬化剤としては、シアネートエステル化合物(シアネートエステル熱硬化剤)、フェノール化合物(フェノール熱硬化剤)、アミン化合物(アミン熱硬化剤)、チオール化合物(チオール熱硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物及びジシアンジアミド等が挙げられる。なかでも、熱による寸法変化がより一層小さい硬化物を得る観点からは、上記熱硬化剤は、シアネートエステル化合物又はフェノール化合物であることが好ましい。上記熱硬化剤は、シアネートエステル化合物であることが好ましく、フェノール化合物であることも好ましい。上記熱硬化剤は、上記熱硬化性樹脂の熱硬化性官能基と反応可能な官能基を有することが好ましい。上記熱硬化剤は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
【0088】
硬化物と金属配線との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成する観点からは、上記熱硬化剤は、シアネートエステル化合物、フェノール化合物又は活性エステル化合物であることが好ましい。
【0089】
上記シアネートエステル化合物の使用により、硬化物と金属配線との接着強度がより一層高くなる。また、上記シアネートエステル化合物の使用により無機充填材の含有量が多い多層絶縁フィルムのハンドリング性が良好になり、硬化物のガラス転移温度がより一層高くなる。上記シアネートエステル化合物は特に限定されない。該シアネートエステル化合物として、従来公知のシアネートエステル化合物を使用可能である。上記シアネートエステル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0090】
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0091】
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT−30」及び「PT−60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA−230S」、「BA−3000S」、「BTP−1000S」及び「BTP−6020S」)等が挙げられる。
【0092】
上記シアネートエステル化合物の分子量は、3000以下であることが好ましい。この場合には、多層絶縁フィルムにおける無機充填材の含有量を多くすることができ、無機充填材の含有量が多くても、流動性が高い多層絶縁フィルムが得られる。
【0093】
上記フェノール化合物の使用により、硬化物と金属配線との接着強度がより一層高くなる。また、上記フェノール化合物の使用により、例えば、硬化物の表面上の銅配線の表面を黒化処理又はCz処理したときに、硬化物と銅配線との接着強度がより一層高くなる。
【0094】
上記フェノール化合物は特に限定されない。該フェノール化合物として、従来公知のフェノール化合物を使用可能である。上記フェノール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0096】
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD−2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH−7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH−7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018−50P」)等が挙げられる。
【0097】
硬化物と金属配線との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成する観点からは、上記フェノール化合物は、ビフェニルノボラック型フェノール化合物、又はアラルキル型フェノール化合物であることが好ましい。硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくする観点からは、上記フェノール化合物はフェノール性水酸基を2個以上有することが好ましい。
【0098】
上記活性エステル化合物は特に限定されない。上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC−8000」、「HPC−8000−65T」及び「EXB9416−70BK」等が挙げられる。
【0099】
硬化物と金属配線との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ熱硬化剤によって良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記熱硬化剤は、当量が250以下である熱硬化剤を含むことが好ましい。上記熱硬化剤の当量は、例えば、熱硬化剤がシアネートエステル化合物である場合にはシアネートエステル基当量を示し、熱硬化剤がフェノール化合物である場合にはフェノール性水酸基当量を示し、熱硬化剤が活性エステル化合物である場合には活性エステル基当量を示す。
【0100】
上記熱硬化剤の全体100重量%中、当量が250以下である熱硬化剤の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。上記熱硬化剤の全量が、当量が250以下である熱硬化剤であってもよい。当量が250以下である熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、当量が250以下である熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、硬化物のガラス転移温度がより一層高くなる。
【0101】
上記熱硬化剤の分子量は1000以下であることが好ましい。この場合には、上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層中の溶剤を除く成分100重量%中の無機充填材の各含有量が40重量%以上であっても、流動性が高い樹脂組成物が得られる。
【0102】
上記熱硬化性樹脂と上記熱硬化剤との配合比は特に限定されない。上記熱硬化性樹脂と熱硬化剤との配合比は、熱硬化性樹脂と熱硬化剤との種類により適宜決定される。
【0103】
上記成分A100重量%中、上記熱硬化性樹脂と上記熱硬化剤との合計の含有量は、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。
【0104】
[光反応性樹脂(光反応性化合物)(光反応性成分)]
上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層はそれぞれ、光反応性樹脂を含むことが好ましい。上記光反応性樹脂は特に限定されない。上記光反応性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0105】
上記光反応性樹脂としては、ポリベンゾオキサゾール樹脂等が挙げられる。これ以外の光反応性樹脂を用いてもよい。
【0106】
また、光硬化と熱硬化との併用を考えた場合、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と熱硬化する官能基を有し、かつ、UV等の光照射において、照射した部分と照射していない部分とでその後の現像工程において溶解性に差を生じさせる構造を有する硬化剤を用いてもよい。このような材料としては、例えばDIC社製「V−8000」等が挙げられる。
【0107】
[光反応開始剤(光反応性成分、感光剤)]
上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層はそれぞれ、光反応開始剤を含まないか又は含む。上記光反応開始剤は特に限定されない。上記光反応開始剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0108】
上記光反応開始剤としては、ナフトキノンジアジド化合物等が挙げられる。これ以外の光反応開始剤を用いてもよい。例えば上記DIC社製「V−8000」を用いる場合には光反応開始剤を用いることにより、UV照射における樹脂の構造変化が促進される。このような性質を発現する光反応開始剤としては、例えばジアゾナフトキン(東洋合成工業社製「PC−5」)等が挙げられる。
【0109】
また、上記光反応性樹脂として、光反応開始剤を含む材料を用いてもよい。このような材料としては、例えば住友ベークライト社製「CRC−8800」等が挙げられる。
【0110】
上記光反応開始剤の含有量は特に限定されない。上記光反応開始剤は、光反応性樹脂が適度に反応するように適宜の量で用いられる。上記成分A100重量%中、上記光反応性樹脂と上記光反応開始剤との合計の含有量は、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。また、光硬化系と熱硬化系とを採用する場合はこのかぎりではない。
【0111】
[無機充填材]
上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層はそれぞれ、無機充填材を含まないか又は含む。上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層はそれぞれ、無機充填材を含むことが好ましい。上記多層絶縁フィルムが無機充填材を含むことにより、硬化物の熱線膨張率が低くなり、かつ硬化物と金属配線との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材は特に限定されない。上記無機充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0112】
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。
【0113】
硬化物と金属配線との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱線膨張率がより一層低くなり、かつ硬化物と金属配線との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は略球状であることが好ましい。
【0114】
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは150nm以上、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、粗化処理又はデスミア処理などにより形成される孔の大きさが微細になり、孔の数が多くなる。この結果、硬化物と金属配線との接着強度がより一層高くなる。ただし、光反応を利用する場合は、無機充填材の平均粒径は照射する光の波長より小さいほうが好ましい場合もある。
【0115】
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
【0116】
上記無機充填材は、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物と金属配線との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材が球状である場合には、上記無機充填材のアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0117】
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤により表面処理されていることがより好ましい。これにより、硬化物と金属配線との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成され、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性が硬化物に付与される。
【0118】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0119】
上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層中の上記溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物と金属配線との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成されると同時に、この無機充填材量であれば金属銅並に硬化物の熱線膨張率を低くすることも可能である。
【0120】
[熱可塑性樹脂]
上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層はそれぞれ、熱可塑性樹脂を含まないか又は含む。上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層はそれぞれ、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。該熱可塑性樹脂は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0121】
上記熱可塑性樹脂としては、イミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ゴム成分及び有機フィラー等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが特に好ましい。該フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に多層絶縁フィルムが濡れ拡がり難くなる。また、熱可塑性樹脂の使用により、多層絶縁フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。
【0122】
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0123】
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
【0124】
上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、好ましくは100000以下である。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0125】
上記熱可塑性樹脂の含有量は特に限定されない。上記成分A100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量(熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である場合にはフェノキシ樹脂の含有量)は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更により好ましくは15重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱線膨張率がより一層低くなる。また、多層絶縁フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、多層絶縁フィルムの成膜性が高くなり、より一層良好な硬化物が得られる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物と金属配線との接着強度がより一層高くなる。
【0126】
[硬化促進剤(熱硬化性成分)]
上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層はそれぞれ、硬化促進剤を含まないか又は含む。上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層はそれぞれ、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。多層絶縁フィルムを速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。また、第1の絶縁層中の硬化促進剤の含有量を第2の絶縁層中の硬化促進剤の含有量よりも多くすることで、同じ樹脂系においても、同一の硬化(加熱)条件下で、ある架橋度に到達するスピード、つまりある硬化度に到達するスピードに、第1,第2の絶縁層で差をつけることができる。これを利用することにより、プレキュアの段階で第1の絶縁層の硬化度を第2の絶縁層の硬化度よりも高くできる。上記硬化促進剤は特に限定されない。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0127】
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
【0128】
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0129】
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0130】
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0131】
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
【0132】
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。上記成分A100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、好ましくは3重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、多層絶縁フィルムが効率的に硬化する。
【0133】
[溶剤]
上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層はそれぞれ、溶剤を含まないか又は含む。上記溶剤の使用により、樹脂組成物の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂組成物の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0134】
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N−メチル−ピロリドン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
【0135】
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物又は絶縁層を硬化させる前又は硬化させるときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物における上記溶剤の含有量は特に限定されない。樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
【0136】
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂組成物及び上記第1,第2の絶縁層にはそれぞれ、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤、及び各種波長の吸収剤等を添加してもよい。
【0137】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0138】
上記カップリング剤の含有量は特に限定されない。上記成分A100重量%中、上記カップリング剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、好ましくは5重量%以下である。
【0139】
上記各種波長の吸収剤としては、紫外線吸収剤等が挙げられる。上記紫外線吸収剤は、使用する紫外線レーザーの波長に対応する吸収帯を有する紫外線吸収剤を適宜選ぶことができる。上記紫外線吸収剤としては、シアノアクリレート化合物及びベンゾフェノン化合物等が挙げられる。例えば、200〜380nmの紫外線波長領域に吸収を有する紫外線吸収剤が好ましく、特に300〜320nmの紫外線波長領域に吸収極大を有する紫外線吸収剤が好ましい。
【0140】
上記シアノアクリレート化合物及びベンゾフェノン化合物は、300nm付近に吸収極大を有するために、上記シアノアクリレート化合物又はベンゾフェノン化合物を用いることで、硬化物の紫外線レーザーによる加工性を向上させることができる。シアノアクリレート化合物及びベンゾフェノン化合物は、溶媒に対する溶解性の良い化合物であることが好ましい。ただし、電気絶縁性が悪化するおそれがある程度に塩素が含まれる化合物は用いないことが望ましい。
【0141】
上記紫外線吸収剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記紫外線吸収剤の含有量は、熱硬化性樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは2.5重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは10重量部以下である。上記紫外線吸収剤の含有量が上記下限以上であると、溝の加工性がより一層良好になる。上記紫外線吸収剤の含有量が2.5重量部以上であると、溝の加工性が顕著に高くなる。上記紫外線吸収剤の含有量が上記上限以下であると、硬化物の機械物性及び電気特性がより一層良好になる。
【0142】
[多層絶縁フィルムの他の詳細]
上記樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法、樹脂組成物を溶剤に溶解又は分散させた後、キャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、並びに従来公知のその他のフィルム成形法等が挙げられる。なかでも、薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。該フィルムは、第1,第2の絶縁層を有する多層絶縁フィルムである。多層化する方法としては、例えばそれぞれ別に成形した2つのフィルムを熱ロールラミネーター等で貼り合わせる方法、塗工や押出の際に同時もしくは逐次にフィルムを成形して多層絶縁フィルムを成形する方法、並びに従来公知のその他の多層絶縁フィルム成形法等が挙げられる。中でも上記フィルム成形法に連動できることから、多層押出成形法又は多層キャスティング成形法が好ましい。
【0143】
上記樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば90〜200℃で1〜180分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムを得ることができる。
【0144】
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある半硬化物である。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0145】
上記Bステージフィルムはプリプレグであってもよい。特に第1の絶縁層のみをプリプレグとした場合、第2の絶縁層を選択的にレーザー等で削る際に、ガラスクロスの有無が削り易さの差異になる。上記Bステージフィルムはプリプレグでなくてもよい。
【0146】
上記多層絶縁フィルムは、一方の表面又は両面に基材が積層され、積層フィルムの状態で用いることができる。上記積層フィルムは、上記多層絶縁フィルムと、上記多層絶縁フィルムの一方の表面又は両面に積層された基材とを備えることが好ましい。
【0147】
上記積層フィルムの上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、銅箔及びアルミニウム箔などの金属箔等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理、帯電防止処理、又は印刷等の表面処理が施されていてもよい。
【0148】
以下、実施例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0149】
(熱硬化性樹脂)
(1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「850−S」、エポキシ当量187、固形分100重量%)
(2)ビフェニル型エポキシ樹脂含有液(日本化薬社製「NC−3000−FH−75M」、エポキシ当量330、固形分75重量%とメチルエチルケトン25重量%とを含む)
(3)ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC−3000」、エポキシ当量275、固形分100重量%)
【0150】
(硬化剤)
(1)シアネートエステル硬化剤含有液(ロンザジャパン社製「BA−230S」、シアネートエステル当量235、固形分75重量%とメチルエチルケトン25重量%とを含む)
(2)ポリイミド系硬化剤含有液(DIC社製「V−8000」、固形分40重量%とエチレングリコールアセテート60重量%とを含む)
【0151】
(硬化促進剤)
(1)イミダゾール化合物(2−フェニル−4メチルイミダゾール、四国化成工業社製「2P4MZ」)
【0152】
(熱可塑性樹脂)
(1)フェノキシ樹脂含有液(三菱化学社製「YX6954BH30」、固形分30重量%とメチルエチルケトン35重量%とシクロヘキサノン35重量%とを含む)
【0153】
(光反応性樹脂)
(1)ポジ型感光性ポリベンゾオキサゾール樹脂(住友ベークライト社製「CRC−8800」、固形分50重量%とγ−ブチロラクトン50重量%とを含む)
(2)DNQジアゾナフトキン(東洋合成工業社製「PC−5」、固形分100重量%)
【0154】
(紫外線吸収剤)
(1)シアノアクリレート化合物(BASF社製「Uvinul3035」)
【0155】
(無機充填材)
(1)球状シリカ1(アドマテックス社製「SOC2」をN−フェニル−3−アミノプロピル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−573」)で表面処理した球状シリカ、平均粒子径0.5μm)
(2)球状シリカ2(アドマテックス社製「SOC1」を3−グリシドキシプロピル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−403」)で表面処理した球状シリカ、平均粒子径0.25μm)
(3)球状シリカ3(アドマテックス社製「YC100C」をメタクリルシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−503」)で表面処理した球状シリカ、平均粒子径0.10μm)
【0156】
(溶剤)
(1)溶剤(CHN、シクロヘキサノン、和光純薬工業社製「037−05096」)
(2)溶剤(MEK、メチルエチルケトン、和光純薬工業製「592−37021」)
【0157】
(
参考例1)
参考例1の第1の絶縁層を得るために、下記の第1の樹脂組成物ワニスを調製した。シアネートエステル硬化剤含有液(ロンザジャパン社製「BA−230S」)7.4重量部に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「850−S」)7.8重量部と、ビフェニル型エポキシ樹脂含有液(日本化薬社製「NC−3000−FH−75M」)8.7重量部と、イミダゾール化合物(四国化成工業社製「2P4MZ」)0.3重量部と、フェノキシ樹脂含有液(三菱化学社製「YX6954BH30」)8.2重量部と、球状シリカ1(アドマテックス社製「SOC2」をN−フェニル−3−アミノプロピル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−573」)で表面処理した球状シリカ)38.1重量部と、球状シリカ2(アドマテックス社製「SOC1」を3−グリシドキシプロピル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−403」で表面処理した球状シリカ)6.5重量部と、シクロヘキサノン(和光純薬工業社製「037−05096」)23.0重量部とを混合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、第1の樹脂組成物ワニスを得た。
【0158】
参考例1の第2の絶縁層を得るために、下記の第2の樹脂組成物ワニスを調製した。シアネートエステル硬化剤含有液(ロンザジャパン社製「BA−230S」)11.9重量部に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「850−S」)12.6重量部と、ビフェニル型エポキシ樹脂含有液(日本化薬社製「NC−3000−FH−75M」)14.0重量部と、イミダゾール化合物(四国化成工業社製「2P4MZ」)0.5重量部と、フェノキシ樹脂含有液(三菱化学社製「YX6954BH30」)13.1重量部と、球状シリカ1(アドマテックス社製「SOC2」をN−フェニル−3−アミノプロピル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−573」)で表面処理した球状シリカ)26.2重量部と、球状シリカ2(アドマテックス社製「SOC1」を3−グリシドキシプロピル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−403」で表面処理した球状シリカ)5.2重量部と、シクロヘキサノン(和光純薬工業社製「037−05096」)16.5重量部とを混合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、第2の樹脂組成物ワニスを得た。
【0159】
得られた第1,第2の樹脂組成物ワニスをそれぞれ別々にアプリケーターを用いて、PETフィルム(東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に塗工した後、100℃のギアオーブン内で2分間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、第1の絶縁層及び第2の絶縁層としてそれぞれ、厚さが15μm、溶剤の残量が1.0重量%以上、4.0重量%以下であるシート状の成形体を得た。ダイアフラム式真空ラミネーター(名機製作所社製「MVLP−500」)を用いて、得られた2つの成形体を貼り合わせて、第1の絶縁層と第2の絶縁層とが積層された多層絶縁フィルムを得た。
【0160】
(
参考例2〜
5、
及び比較例
1)
使用した配合成分の種類及び配合量(重量部)を下記の表1に示すように変更したこと以外は
参考例1と同様にして、第1,第2の樹脂組成物ワニス及びシート状の成形体を得て、多層絶縁フィルムを作製した。
【0161】
(
参考例
6)
参考例1の第1の絶縁層を得るために、下記の第1の樹脂組成物ワニスを調製した。シアネートエステル硬化剤含有液(ロンザジャパン社製「BA−230S」)11.9重量部に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「850−S」)12.6重量部と、ビフェニル型エポキシ樹脂含有液(日本化薬社製「NC−3000−FH−75M」)14.0重量部と、イミダゾール化合物(四国化成工業社製「2P4MZ」)0.5重量部と、フェノキシ樹脂含有液(三菱化学社製「YX6954BH30」)13.1重量部と、球状シリカ1(アドマテックス社製「SOC2」をN−フェニル−3−アミノプロピル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−573」)で表面処理した球状シリカ)26.2重量部と、球状シリカ2(アドマテックス社製「SOC1」を3−グリシドキシプロピル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−403」で表面処理した球状シリカ)5.2重量部と、シクロヘキサノン(和光純薬工業社製「037−05096」)16.6重量部とを混合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、第1の樹脂組成物ワニスを得た。
【0162】
参考例1の第2の絶縁層を得るために、下記の第2の樹脂組成物ワニスを調製した。シアネートエステル硬化剤含有液(ロンザジャパン社製「BA−230S」)3.2重量部に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「850−S」)3.3重量部と、ビフェニル型エポキシ樹脂含有液(日本化薬社製「NC−3000−FH−75M」)3.8重量部と、イミダゾール化合物(四国化成工業社製「2P4MZ」)0.1重量部と、ポジ型感光性ポリベンゾオキサゾール樹脂(住友ベークライト社製「CRC−8800」)47.4重量部と、球状シリカ1(アドマテックス社製「SOC2」をN−フェニル−3−アミノプロピル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−573」)で表面処理した球状シリカ)23.7重量部と、球状シリカ2(アドマテックス社製「SOC1」を3−グリシドキシプロピル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−403」で表面処理した球状シリカ)4.2重量部と、シクロヘキサノン(和光純薬工業社製「037−05096」)14.2重量部とを混合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、第2の樹脂組成物ワニスを得た。
【0163】
得られた第1,第2の樹脂組成物ワニスをそれぞれ別々にアプリケーターを用いて、PETフィルム(東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に塗工した後、100℃のギアオーブン内で2分間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、第1の絶縁層及び第2の絶縁層としてそれぞれ、厚さが15μm、溶剤の残量が1.0重量%以上、4.0重量%以下であるシート状の成形体を得た。ダイアフラム式真空ラミネーター(名機製作所社製「MVLP−500」)を用いて、得られた2つの成形体を貼り合わせて、第1の絶縁層と第2の絶縁層とが積層された多層フィルムを得た。
【0164】
(
参考例
7,8、
及び比較例
2)
使用した配合成分の種類及び配合量(重量部)を下記の表2に示すように変更したこと以外は
参考例
6と同様にして、第1,第2の樹脂組成物ワニス及びシート状の成形体を得て、多層絶縁フィルムを作製した。
【0165】
(評価基板の作製)
積層板の下地処理:
エッチングにより内層回路を形成したガラスエポキシ基板(利昌工業社製「CS−3665」)の両面を銅表面粗化剤(メック社製「メックエッチボンド CZ−8100」)に浸漬して、銅表面を粗化処理した。
【0166】
ラミネート:
得られた多層絶縁フィルムを、第1の絶縁層が下地処理した上記ガラスエポキシ基板に接するようにセットして、ダイアフラム式真空ラミネーター(名機製作所社製「MVLP−500」)を用いて、貼り合わせた(ラミネートした)。ラミネートは、20秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後20秒間を100℃、圧力0.8MPaでプレスすることにより行った。
【0167】
多層絶縁フィルムの硬化:
次に、
参考例1〜
5,8、
及び比較例1,
2では、150℃及び60分の硬化条件でシート状の成形体を硬化させて、積層サンプルを得た。
参考例
6では、120℃及び4分の硬化条件でシート状の成形体を硬化させて、積層サンプルを得た。
参考例
7では、熱硬化をせずに、積層サンプルを得た。
【0168】
溝の形成:
参考例1〜4及び比較例1,2に関しては、上記多層絶縁フィルムに第2の絶縁層側から、紫外線レーザー加工機(日立ビアメカニクス社製)にて、波長355nm、パルス周波数30kHz、出力0.04mJ、ショット数10でレーザーを照射し、幅20μm、深さ15μm(=第2の絶縁層の厚み)の溝を配線間距離20μmで形成し、回路パターンの溝を形成した。
【0169】
参考例
6に関しては、下記条件にて露光、現像を行い、幅20μm、深さ15μm(=第2の絶縁層の厚み)の溝を配線間距離20μmで形成し、その後150℃及び60分の硬化条件で硬化させた。
【0171】
現像液:TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシ)水溶液、リンス:純水、露光:354nm紫外線照射200mJ/cm
2、現像:パドル式50秒
【0172】
参考例
7に関しては、下記条件にて露光、現像を行い、幅20μm、深さ15μm(=第2の絶縁層の厚み)の溝を配線間距離20μmで形成し、その後170℃及び30分の硬化条件で硬化させた。
【0174】
現像液:TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシ)、リンス:純水、露光:354nm紫外線照射500mJ/cm
2、現像:パドル式180秒(50℃)
【0175】
デスミア/粗化処理:
参考例1〜
4,6,7及び比較例1,2では、60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップセキュリガントP」と和光純薬工業社製「水酸化ナトリウム」とを含む水溶液)に、溝が形成された上記積層サンプルを入れて、膨潤温度60℃で20分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
【0176】
80℃の過マンガン酸ナトリウム粗化水溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレートコンパクトCP」、和光純薬工業社製「水酸化ナトリウム」)に、膨潤処理された上記積層サンプルを入れて、粗化温度80℃で20分間揺動させた。その後、40℃の洗浄液(アトテックジャパン社製「リダクションセキュリガントP」、和光純薬工業社製「硫酸」)により10分間洗浄した後、純水でさらに洗浄した。このようにして、硬化物の表層及び回路パターン溝の内面をデスミア/粗化処理した。
【0177】
センシタイジング処理:
参考例1〜
4,6,7及び比較例1,2に関しては、デスミア/粗化処理された硬化物の表面を、60℃のアルカリクリーナ(アトテックジャパン社製「クリーナーセキュリガント902」)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、上記硬化物を25℃のプリディップ液(アトテックジャパン社製「プリディップネオガントB」)で2分間処理した。その後、上記硬化物を40℃のアクチベーター液(アトテックジャパン社製「アクチベーターネオガント834」)で5分間処理し、パラジウム触媒を付けた。次に、30℃の還元液(アトテックジャパン社製「リデューサーネオガントWA」)により、硬化物を5分間処理した。
【0178】
めっき処理:
次に、
参考例1〜
4,6,7及び比較例1,2に関しては、上記硬化物を化学銅液(全てアトテックジャパン社製「ベーシックプリントガントMSK−DK」、「カッパープリントガントMSK」、「スタビライザープリントガントMSK」、「リデューサーCu」)に入れ、無電解めっきをめっき厚さが0.5μm程度になるまで実施した。無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニールをかけた。無電解めっきの工程までのすべての工程は、ビーカースケールで処理液を2Lとし、硬化物を揺動させながら実施した。
【0179】
次に、無電解めっき処理された硬化物に、電解めっきが回路パターン溝を埋めるまで実施した。電解銅めっきとして硫酸銅溶液(和光純薬工業社製「硫酸銅五水和物」、和光純薬工業社製「硫酸」、アトテックジャパン社製「ベーシックレベラーカパラシド HL」、アトテックジャパン社製「補正剤カパラシド GS」)を用いて、0.6A/cm
2の電流を流しめっき厚さが25μm程度となるまで電解めっきを実施した。銅めっき処理後、硬化物を190℃で2時間加熱し、硬化物を更に硬化させた。
参考例
6のみ、この後さらに270℃で30分硬化させた。また、
参考例
7のみ、この後さらに200℃で2時間硬化させた。このようにして、銅めっき層が上面に積層された硬化物を得た。
【0180】
パターン形成:
参考例1〜
4,6,7及び比較例1,2に関しては、形成された銅めっき層のうち、パターン溝内以外にある銅を研磨し、その上に上記ラミネートの方法で、多層絶縁フィルムを第1の絶縁層を基板側に向けて貼り合わせて、150℃及び60分、次いで190℃で2時間の硬化条件で硬化し、評価基板を得た。
【0181】
なお、参考例
5,8に関しては、上記、多層絶縁フィルムの硬化の後の工程で一般のセミアティティブ工法(SAP)を行うことで、
参考例1〜
4,6,7及び比較例1,2と同様に、線幅20μm、高さ15μm、配線間距離20μmの溝を形成した評価基板を得た。
【0182】
(評価)
1)電気絶縁性
得られた評価基板を用いて、6Vの電圧を100時間印加し、絶縁抵抗計で絶縁率Aを測定した。更に、130℃、湿度85%の環境下で6Vの電圧を100時間印加し、絶縁抵抗計で絶縁率Bを測定した。さらに、電圧印加後のサンプルを裁断し、断面を顕微鏡観察により電極間にマイグレーションが発生しているか否かを評価した。BがAに対して75%以上の値を維持し、かつ、マイグレーションが発生していない場合は良好(○)、BがAに対して75%未満、又はマイグレーションが発生している場合は不良(×)と評価した。
【0183】
2)パターン形成性(溝深さの評価)
上記電気絶縁性のマイグレーション評価の時に行ったサンプルの断面観察の際に、銅パターンの底部が、第1の絶縁層と第2の絶縁層との境界線から厚み方向(上下方向)方向に離れた距離を計測した。10カ所のパターン断面を観察し、離れた距離の全てが±1.5μm以内にある場合は良好(○)、離れた距離の少なくとも1つが±1.5μmを超えるが、離れた距離の全てが±2.0μm以内にある場合は使用可能(△)、離れた距離の少なくとも1つが±2.0μmを超える場合は不良(×)と評価した。
【0184】
ただし、参考例
5,8に関しては、基板構造上、上記では評価できないので、パターン形成後、その上にラミネートした多層絶縁フィルムをデスミアし、その上面(第2の絶縁層の上面)とパターンの上面との位置を上記と同様の基準で評価した。
【0185】
3)アンジュレーション
得られた評価基板において、基板上面パターンによるうねり(アンジュレーション)を、表面粗さ計(ミツトヨ社製「SJ−301」)にて測定した。測定値の最大値と最小値との差が、1.0μm以下の場合は良好(○)、1.0μmを超え、2.0μm以下の場合は使用可能(△)、2.0μmを超える場合は不良(×)と評価した。
【0186】
なお、表1中のプレキュア後Tg(ガラス転移温度)に関しては、得られた多層絶縁フィルム単体をプレキュアと同一の条件(150℃、60分)で硬化させて、第1,第2の絶縁層それぞれから樹脂をヤスリを用いて削りだし、得られた粉末を用いて、示差走査熱量計(DSC TA社製「Q2000」)により測定した値を示した。
【0187】
結果を下記の表1,2に示す。配合成分の欄には、第1,第2の絶縁層を形成するための第1,第2の樹脂組成物ワニスの組成を示した。