(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
血液浄化治療時に患者の血液を体外循環させるための血液回路は、通常、可撓性チューブから成る動脈側血液回路及び静脈側血液回路にて構成されており、当該動脈側血液回路及び静脈側血液回路のそれぞれの基端には、体外循環する血液を浄化するための血液浄化器(ダイアライザ等)が接続されるとともに、それぞれの先端には、患者に穿刺可能な動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針が取り付けられている。
【0003】
動脈側血液回路及び静脈側血液回路の先端には、それぞれシャントコネクタと称されるロック式接続具が形成されており、例えば動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針から延設されたチューブと動脈側血液回路及び静脈側血液回路を構成するチューブの先端とを当該ロック式接続具にて接続し得るようになっている。従来のロック式接続具は、動脈側血液回路及び静脈側血液回路を構成するチューブの先端に接続されたオスコネクタと、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針から延設されたチューブに接続されたメスコネクタとを有し、メスコネクタにオスコネクタを嵌合させて接続するとともに、オスコネクタとメスコネクタとの接続状態をロックするロックリングとを有していた。
【0004】
より具体的には、ロックリング(ロック手段)は、オスコネクタに取り付けられるとともに、内周面にメスコネクタの外周面に形成された雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成されており、当該雌ネジ部を雄ネジ部に螺合させることによりオスコネクタとメスコネクタとの接続状態がロックされるよう構成されていた。これにより、動脈側血液回路及び静脈側血液回路の先端にそれぞれ動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を接続可能とされていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のロック式接続具においては、ロック手段の雌ネジ部とメスコネクタの雄ネジ部との螺合が緩んだ状態で、接続された血液回路が引っ張られる等して過度な荷重が付与されると、オスコネクタとメスコネクタとの接続が外れてしまう可能性があった。そこで、ロック手段及びオスコネクタに凸形状及び凹形状をそれぞれ形成し、ロック手段の雌ネジ部が雄ネジ部に螺合した状態で、これら凸形状及び凹形状を嵌合させて緩み止めすることが考えられるが、この場合、凸形状及び凹形状の寸法誤差によって緩み止めを確実に行うことができない虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ロック手段による螺合の緩みを確実に防止することができるロック式接続具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、基端部に液体を流通させ得るチューブが接続されるとともに、先端部に接続挿入部が形成されたオスコネクタと、前記接続挿入部を挿入させて嵌合可能な嵌合部を有し、当該嵌合部に対する前記接続挿入部の嵌合により前記オスコネクタと接続されて液体を流通可能とされるとともに、外周面に雄ネジ部が形成されたメスコネクタと、前記オスコネクタに取り付けられるとともに、内周面に前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成され、当該雌ネジ部を雄ネジ部に螺合させることにより前記オスコネクタとメスコネクタとの接続状態をロックするロック手段とを具備したロック式接続具において、前記ロック手段又は前記オスコネクタの何れか一方には凸形状が形成されるとともに、他方には当該凸形状が押圧されることによって転写された凹形状を有し、当該凸形状及び凹形状が嵌合して前記ロック手段が緩み止めされ
、且つ、前記凹形状は、塑性変形して形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項
2記載の発明は、請求項
1記載のロック式接続具において、加熱処理されることによって前記凹形状が得られることを特徴とする。
【0013】
請求項
3記載の発明は、請求項1
又は請求項2記載のロック式接続具において、前記凸形状又は凹形状は、前記ロック手段が前記オスコネクタから抜けてしまうのを防止する突起部に形成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項
4記載の発明は、基端部に液体を流通させ得るチューブが接続されるとともに、先端部に接続挿入部が形成されたオスコネクタと、前記接続挿入部を挿入させて嵌合可能な嵌合部を有し、当該嵌合部に対する前記接続挿入部の嵌合により前記オスコネクタと接続されて液体を流通可能とされるとともに、外周面に雄ネジ部が形成されたメスコネクタと、前記オスコネクタに取り付けられるとともに、内周面に前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成され、当該雌ネジ部を雄ネジ部に螺合させることにより前記オスコネクタとメスコネクタとの接続状態をロックするロック手段とを具備したロック式接続具の製造方法において、前記ロック手段又は前記オスコネクタの何れか一方には凸形状を形成するとともに、他方には当該凸形状を押圧させることによって凹形状を転写させ、当該凸形状及び凹形状が嵌合して前記ロック手段が緩み止めされ
、且つ、前記凹形状は、塑性変形させて形成することを特徴とする。
【0016】
請求項
5記載の発明は、請求項
4記載のロック式接続具の製造方法において、加熱処理されることによって前記凹形状が得られることを特徴とする。
【0019】
請求項
6記載の発明は、請求項
4又は請求項5記載のロック式接続具の製造方法において、前記凸形状又は凹形状は、前記ロック手段が前記オスコネクタから抜けてしまうのを防止する突起部に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1、
4の発明によれば、ロック手段又はオスコネクタの何れか一方には凸形状が形成されるとともに、他方には当該凸形状が押圧されることによって転写された凹形状を有し、当該凸形状及び凹形状が嵌合してロック手段が緩み止めされるので、凸形状及び凹形状の寸法誤差を極めて小さくすることができ、ロック手段による螺合の緩みを確実に防止することができる。
【0021】
さらに、凹形状は、塑性変形して形成されたので、ロック手段によるロックを解除したとしても凹形状を保持させることができ、ロック手段による繰り返しのロックをより円滑に行わせることができる。
【0022】
請求項
2、5の発明によれば、加熱処理されることによって凹形状が得られるので、例えば滅菌処理工程を経ることにより、加熱のための別個新たな工程を経ることなく凹形状を確実に形成することができる。
【0025】
請求項
3、6の発明によれば、凸形状又は凹形状は、ロック手段がオスコネクタから抜けてしまうのを防止する突起部に形成されたので、ロック手段の抜け止めを行う機能と、緩み止めのための部位としての機能とを突起部にて兼ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係るロック式接続具が適用される血液回路を示す模式図
【
図2】本発明
の実施形態に係るロック式接続具(接続前)を示す斜視図
【
図3】同ロック式接続具におけるオスコネクタを示す図であって(a)側面図(b)断面図
【
図5】同ロにおけるロック手段を示す図であって(a)側面図(b)凹形状が形成される前の断面図(c)凹形状が形成された後の断面図
【
図6】同ロック式接続具におけるメスコネクタを示す図であって(a)側面図(b)断面図
【
図7】同ロック式接続具(オスコネクタ及びメスコネクタの接続状態であってロック手段によるロック後の状態)を示す(a)側面図(b)断面図
【
図8】同ロック式接続具(オスコネクタ及びキャップの接続状態であってロック手段によるロック後の状態)を示す側面図
【
図9】
参考例に係るロック式接続具におけるロック手段であって(a)側面図(b)断面図
【
図10】同ロック式接続具におけるロック手段の弾性部材にオスコネクタの凸形状が押圧して凹形状が形成された状態を示す(a)側面図(b)断面図
【
図11】本発明の他の実施形態に係るロック式接続具におけるオスコネクタ及びロック手段を示す側面図
【
図13】同他の実施形態に係るロック式接続具におけるオスコネクタの凸形状とロック手段の凹形状を示す図であって(a)嵌合状態を示す断面図(b)離間した状態を示す断面図
【
図14】
他の参考例に係るロック式接続具におけるオスコネクタの凸形状とロック手段の凹形状を示す図であって(a)嵌合状態を示す断面図(b)離間した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るロック式接続具は、例えば
図1に示すような動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2を有した血液回路に適用される。かかる血液回路は、人工透析治療のため患者の血液を体外循環させ、その途中において血液浄化等を行わせるもので、同図に示すように、先端に動脈側穿刺針aが接続された動脈側血液回路1と、先端に静脈側穿刺針bが接続された静脈側血液回路2とから主に構成されている。
【0028】
これら動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2のそれぞれの基端は、血液浄化器としてのダイアライザ3に接続されており、その内部に血液を流通させ得る血液流路が形成されている。また、ダイアライザ3には、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2がそれぞれ接続されており、透析液を流通させ得る流通路が形成されている。そして、体外循環する血液が血液流路を通過し、透析液が透析液流路を通過する際、血液中の不要物(老廃物)が透析液側に透析除去され得るようになっている。
【0029】
動脈側血液回路1の途中には、当該動脈側血液回路1の流路を構成するチューブをしごきつつ駆動するしごき型の血液ポンプ4が配設されているとともに、静脈側血液回路2の途中には、除泡のためのエアトラップチャンバ5が接続されており、体外循環させる過程において生じた血液中のエアを取り除いて当該血液を患者の体内に戻し得るよう構成されている。なお、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の途中には、図示しないT字管やゴムボタン等が接続されて、透析治療をしつつ血液採取や薬剤投与等が行えるようになっている。
【0030】
動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2は、それぞれ可撓性チューブから成るものであり、患者の血液やプライミング液等を流通させ得る「医療用液体流路」を構成している。また、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の先端は、それぞれロック式接続具8、9を介して動脈側穿刺針aから延設したチューブ6及び静脈側穿刺針bから延設したチューブ7とそれぞれ接続されている。これにより、動脈側穿刺針aから採取した患者の血液は、チューブ6及び動脈側血液回路1を流通し、ダイアライザ3にて血液浄化が施された後、静脈側血液回路2及びチューブ7を流通し、静脈側穿刺針bを介して患者に戻されることとなる。
【0031】
本発明
の実施形態に係るロック式接続具(8、9)は、チューブ(6、7)と動脈側血液回路1又は静脈側血液回路2とを接続してそれぞれの流路を連通させ得るもので、
図2〜6に示すように、オスコネクタ10と、メスコネクタ14と、ロック手段12と、凸形状13とから主に構成されている。なお、説明の重複を避けるため、動脈側血液回路1とチューブ6とを接続するロック式接続具8について以下に詳細に説明するが、静脈側血液回路2とチューブ7とを接続するロック式接続具9についても同様の構成である。
【0032】
オスコネクタ10は、
図2、3に示すように、基端部10aに液体を流通させ得るチューブ(本実施形態においては動脈側血液回路1を構成する可撓性チューブ)が接続されるとともに、先端部に接続挿入部11が形成された樹脂製部品(例えば、PC(ポリカーボネイト)等の硬質樹脂)から成るものである。かかるオスコネクタ10の材質は、ロック手段12の材質より硬質であるのが好ましく、PCの他、PSU(ポリサルフォン)等、長時間の応力付加又は熱処理の熱によって変形しにくい他のエンプラとすることができる。このオスコネクタ10には、軸方向に亘って内部に貫通孔が形成されており、かかる貫通孔が液体を流通させ得る流路を構成している。接続挿入部11は、オスコネクタ10の先端側に一体的に成形された部位から成り、先端に向かって縮径したテーパ面を有して成る。
【0033】
また、基端部10aと接続挿入部11との間には、オスコネクタ10の軸方向に亘って所定寸法の長さで形成された軸部10bが形成されているとともに、軸部10bと接続挿入部11との間には、ロック手段12がオスコネクタ10から抜けてしまうのを防止する(抜け止めする)突起部10cが形成されている。なお、基端部10a、軸部10b、突起部10c及び接続挿入部11は、一体の樹脂製部品から成り、全体でオスコネクタ10を構成している。
【0034】
メスコネクタ14は、
図2、6に示すように、オスコネクタ10の接続挿入部11を挿入させて嵌合可能な嵌合部14cを有し、当該嵌合部14cに対する接続挿入部11の嵌合によりオスコネクタ10と接続され、液体を流通可能とされるとともに、外周面に雄ネジ部14bが形成された樹脂製部品(例えば、オスコネクタ10と同様、PC(ポリカーボネイト)等の硬質樹脂)から成るものである。かかるメスコネクタ14の材質は、オスコネクタ10と同様の材質であるのが好ましいが、PCの他、PP(ポリプロピレン)、高密度PE(ポリエチレン)、熱可塑性エラストマー、塩化ビニル等、加熱処理の熱によって変形しにくい他の樹脂を使用することができる。このメスコネクタ14には、軸方向に亘って内部に貫通孔が形成されており、かかる貫通孔が液体を流通させ得る流路を構成している。なお、図中符号14aは、チューブ6と接続した接続部を示している。
【0035】
ロック手段12は、
図2、5に示すように、略円筒状の樹脂製部品(PP(ポリプロピレン)等のオスコネクタ10より軟質な樹脂)から成り、オスコネクタ10の軸方向に対して摺動自在に取り付けられるとともに、オスコネクタ10に形成された突起部10cと干渉可能な干渉部12cが形成されており、かかる干渉部12cに突起部10cが干渉することによってロック手段12の抜け止めが図られている。なお、ロック手段12の材質は、オスコネクタ10の材質より軟質であるのが好ましく、PPの他、高密度PE(ポリエチレン)、熱可塑性エラストマー、塩化ビニル等、加熱処理の熱によって塑性変形が生じ、且つ、オスコネクタ10と密着しない材質のものがより好ましい。また、ロック手段12は、内周面にメスコネクタ14の雄ネジ部14bと螺合可能な雌ネジ部12aが形成され、当該雌ネジ部12aを雄ネジ部14bに螺合(ロック手段12を回転して雄ネジ部14bと雌ネジ部12aとを螺合)させることによりオスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態をロックし得るものとされている。
【0036】
すなわち、メスコネクタ14の嵌合部14cにオスコネクタ10の接続挿入部11を挿入して嵌合させた後、ロック手段12をオスコネクタ10の先端側(突起部10c側)に移動させつつロック手段12を回転させて雄ネジ部12aを雌ネジ部14bに螺合(
図7参照)させることにより、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続を確実に行わせる(嵌合部14cに対する接続挿入部11の嵌合を精度よく行わせる)とともに、当該オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態がロックされるのである。
【0037】
ここで、本実施形態に係るオスコネクタ10は、
図2〜4に示すように、その突起部10cにおける周方向に亘って複数の凸形状13が一体形成されている。かかる凸形状13は、オスコネクタ10の径方向に突出しつつ軸方向に延びたリブから成り、雌ネジ部12aが雄ネジ部14bに螺合してオスコネクタ10とメスコネクタ14との接続がロックされる過程(
図7参照)において、ロック手段12の当接面12b(
図5(b)参照)を押圧して径方向に凹んだ凹形状12ba(同図(c)参照)を形成するよう構成されている。
【0038】
すなわち、オスコネクタ10の凸形状13がロック手段12の当接面12bに押圧されることによって、当該凸形状13の輪郭形状が当接面12bに転写され、凸形状13の外輪郭に倣った凹形状12baが形成されるのである。しかして、
図7に示すように、雌ネジ部12aが雄ネジ部14bに螺合してオスコネクタ10とメスコネクタ14との接続がロックされた状態において、凸形状13及び凹形状12baが嵌合してロック手段12が緩み止めされることとなる。
【0039】
また、本実施形態に係る凹形状12baは、ロック手段12の当接面12bが凸形状13に押圧されて塑性変形することにより形成されている。したがって、ロック状態からロック手段12を逆方向に回転させ、凸形状13と凹形状12baとを離間させると、当該凹形状12baが残った状態となる(形状が保持される)ので、ロック手段12により繰り返しロックする際、形状が保持された凹形状12baに凸形状13を嵌合させて緩み止めを図ることができる。
【0040】
さらに、本実施形態においては、専ら凸形状13の当接面12bに対する押圧力によって凹形状12baを形成しているが、当該押圧力に加え、加熱処理することによって凹形状12baを形成するのが好ましい。例えば、加熱処理として、本ロック式接続具を医療機関に出荷する前の蒸気滅菌(例えば、115℃で30分、121℃で20分、又は126℃で15分加熱)が好ましいが、他の滅菌(電子線滅菌やEOG滅菌等)や滅菌以外の加熱処理であってもよい。
【0041】
加熱処理を伴う滅菌時、
図8に示すように、オスコネクタ10の先端部にキャップ15を被せた状態で行われる。すなわち、キャップ15を被せた状態で当該キャップ15とオスコネクタ10とをロック手段12にてロックすることにより、凸形状13がロック手段12の当接面12bを押圧するので、その押圧力及び加熱処理に伴う熱によって、当接面12bが塑性変形して凹形状12baが転写されるのである。このように、加熱処理されることによって凹形状12baが得られるので、例えば滅菌処理工程を経ることにより、加熱のための別個新たな工程を経ることなく凹形状12baを確実に形成することができる。
【0042】
しかるに、本実施形態においては、オスコネクタ10に凸形状13が形成されるとともに、その凸形状13をロック手段12に押圧して転写することにより凹形状12baを形成しているが、これに代えて、ロック手段12に凸形状を形成するとともに、その凸形状をオスコネクタ10に押圧して転写することにより凹形状を形成するようにしてもよい。すなわち、ロック手段12又はオスコネクタ10の何れか一方には凸形状が形成されるとともに、他方には当該凸形状が押圧されることによって転写された凹形状を有していれば足りるのである。
【0043】
このように、本実施形態によれば、ロック手段12又はオスコネクタ10の何れか一方には凸形状13が形成されるとともに、他方には当該凸形状13が押圧されることによって転写された凹形状12baを有し、当該凸形状13及び凹形状12baが嵌合してロック手段12が緩み止めされるので、凸形状13及び凹形状12baの寸法誤差を極めて小さくすることができ、ロック手段12による螺合の緩みを確実に防止することができる。
【0044】
特に、本実施形態に係る凹形状12baは、塑性変形して形成されたので、ロック手段12によるロックを解除したとしても凹形状12baを保持させることができ、ロック手段12による繰り返しのロックをより円滑に行わせることができる。また、凸形状13又は凹形状12baは、ロック手段12がオスコネクタ10から抜けてしまうのを防止する突起部10cに形成されたので、ロック手段12の抜け止めを行う機能と、緩み止めのための部位としての機能とを突起部10cにて兼ねることができる。
【0045】
次に、
参考例について説明する。
本
参考例に係るロック式接続具は
、実施形態と同様、例えば
図1に示すような動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2を有した血液回路に適用されるもので、
図2〜6に示すように、オスコネクタ10と、メスコネクタ14と、ロック手段16と、凸形状13とから主に構成されている。なお、説明の重複を避けるため、動脈側血液回路1とチューブ6とを接続するロック式接続具8について以下に詳細に説明するが、静脈側血液回路2とチューブ7とを接続するロック式接続具9についても同様の構成である。また
、実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0046】
ロック手段16は、
図9に示すように、略円筒状の樹脂製部品から成り、オスコネクタ10の軸方向に対して摺動自在に取り付けられるとともに、内周面にメスコネクタ14の雄ネジ部14bと螺合可能な雌ネジ部16aが形成され、当該雌ネジ部16aを雄ネジ部14bに螺合(ロック手段16を回転して雄ネジ部14bと雌ネジ部16aとを螺合)させることによりオスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態をロックし得るものとされている。
【0047】
ここで、本
参考例に係るロック手段16は、ロック時に凸形状13が当接する部位に弾性部材17(軟質材)が二色成形にて形成されている。かかる弾性部材17は、弾性変形可能な軟質樹脂やゴム材等から成り、雌ネジ部16aが雄ネジ部14bに螺合してオスコネクタ10とメスコネクタ14との接続がロックされた状態において、
図10に示すように、凸形状13が押圧されることによって、当該凸形状13の輪郭形状が弾性部材17に転写され、凸形状13の外輪郭に倣った凹形状17aが形成されるのである。しかして、雌ネジ部16aが雄ネジ部14bに螺合してオスコネクタ10とメスコネクタ14との接続がロックされた状態において、凸形状13及び凹形状17aが嵌合してロック手段16が緩み止めされることとなる。
【0048】
このように、本
参考例に係る凹形状17aは、ロック手段17の弾性部材17が凸形状13に押圧されて弾性変形することにより形成されている。したがって、ロック状態からロック手段16を逆方向に回転させ、凸形状13と凹形状17aとを離間させると、元の状態に復元する(形状が元に戻る)ので、ロック手段16により繰り返しロックする際、ロックの都度、凹形状16aを形成し、凸形状13及び凹形状16aを嵌合させて緩み止めを図ることができる。
【0049】
しかるに、本
参考例においては、オスコネクタ10に凸形状13が形成されるとともに、その凸形状13をロック手段16の弾性部材17に押圧して転写することにより凹形状17aを形成しているが、これに代えて、ロック手段16に凸形状を形成するとともに、その凸形状をオスコネクタ10の弾性部材(例えば、上記実施形態の如く二色成形にて形成されたものが好ましい)に押圧して転写することにより凹形状を形成するようにしてもよい。すなわち、ロック手段16又はオスコネクタ10の何れか一方には凸形状が形成されるとともに、他方には当該凸形状が押圧されることによって転写された凹形状を有していれば足りるのである。
【0050】
このように、本
参考例によれば、ロック手段16又はオスコネクタ10の何れか一方には凸形状13が形成されるとともに、他方には当該凸形状13が押圧されることによって転写された凹形状17aを有し、当該凸形状13及び凹形状17aが嵌合してロック手段16が緩み止めされるので、凸形状13及び凹形状17aの寸法誤差を極めて小さくすることができ、ロック手段16による螺合の緩みを確実に防止することができる。
【0051】
特に、本
参考例に係る凹形状17aは、弾性変形して形成されたので、ロック手段16によるロックを解除すると凹形状17aが元の形状に復元するので、次のロック手段16によるロック時、新たに凸形状13が転写されて凹形状17aを繰り返し形成することができる。また、凹形状17aが形成される部位は、弾性部材17から成るので、凹形状17aを確実且つ円滑に形成することができる。
【0052】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば
図11、12に示すように、オスコネクタ10に形成される凸形状18が突起部10cの端面から軸部10bの軸方向に延びる複数のリブとしてもよい。この場合、雌ネジ部12aが雄ネジ部14bに螺合してオスコネクタ10とメスコネクタ14との接続がロックされる過程において、
図13(a)に示すように、凸形状18を押圧して転写させ、軸方向に凹んだ凹形状αを形成することができる。かかる凹形状αは、塑性変形して形成されており、
図13(b)に示すように、ロック手段12によるロックを解除しても保持されるようになっている。しかして、ロック手段12によるロック時、凸形状18及び凹形状αが嵌合してロック手段12が緩み止めされるので、凸形状18及び凹形状αの寸法誤差を極めて小さくすることができ、ロック手段12による螺合の緩みを確実に防止することができる。
【0053】
さらに、
他の参考例として、図14に示すように、ロック手段12において、ロック時に凸形状18が当接する部位に弾性部材19(
参考例における弾性部材17と同様の材料)を二色成形等にて形成したものとしてもよい。この場合、雌ネジ部12aが雄ネジ部14bに螺合してオスコネクタ10とメスコネクタ14との接続がロックされる過程において、
図14(a)に示すように、凸形状18を弾性部材19に押圧して転写させ、軸方向に凹んだ凹形状βを形成することができる。かかる凹形状βは、弾性変形して形成されており、
図14(b)に示すように、ロック手段12によるロックを解除すると、元の形状に復元するようになっている。しかして、ロック手段12によるロック時、凸形状18及び凹形状βが嵌合してロック手段12が緩み止めされるので、凸形状18及び凹形状βの寸法誤差を極めて小さくすることができ、ロック手段12による螺合の緩みを確実に防止することができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、上記の如く血液回路の先端に穿刺針を接続させるためのシャントコネクタと称されるロック式接続具に適用されているが、液体又は気体の流路を接続するための他の形態のロック式接続具(医療用に限定されない)に適用するようにしてもよい。