(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱芯の先端には、接合対象物である線材が当該加熱芯の先端から逃げないようにするための凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半田付け装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の半田ごては、一般的に、利き手でペンを持つように半田ごてを持ち、他方の手で半田線(線状の固形半田)を持って、接合対象物に対して半田付け作業を進める。しかしながら、接合対象物が微小で動き易かったり、グラついているなどして不安定な場合には、接合対象物などを押さえることができないため(両手がふさがっているため)、半田付け作業がやり難いといった問題があった。
【0005】
また近年では、プリント基板に実装する電子部品の小型化・微細化が進んでおり、また、プリント基板への電子部品実装の高密度化が進んでいるため、半田付け部位が微小になっており、手作業での正確かつ高品質な半田付けが極めて難しくなっている。
【0006】
また、従来の半田ごてでは、プリント基板などに流れでる半田の量(溶融半田量)を手作業でコントロールしているため、接合対象物に対する半田の溶着量を一定に保つことができず、半田付けの品質にバラつきが生じるといった問題があった。
【0007】
また、接合対象物に溶着した半田が過剰な場合には、溶着した半田が大きなダマになって、本来なら接続されていない配線部分が半田により接続されてしまうといった問題が生じ、また、接合対象物に溶着した半田が過少な場合には、半田付け不良によって導通不良などの接合不良を招くなどの問題があった。
【0008】
上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、従来よりも半田付け作業がやり易く、半田付け部位が微小であっても高品質の半田付けを実現することができ、また、半田付け品質のバラつきを可及的に抑制することができ、さらに、接合対象物にとって最適な量の半田を溶着させることができる、新たな半田付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、
接合対象物に突き当てることができるように設けられ、内部に進入した半田を溶融状態で吐出するためのパイプ状または環状の加熱芯と、
前記加熱芯を加熱するとともに、該加熱芯内に進入した半田を溶融するための発熱体と、
前記加熱芯の内側に向かって半田をガイドするためのガイドパイプと、を有しており、
前記ガイドパイプが、前記加熱芯とは別体であって、前記加熱芯から離隔した位置に設けられている、ことを特徴とする半田付け装置によって達成される。
【0010】
上記半田付け装置は、好ましくは、
半田線を繰り出し可能に具備する半田カートリッジを更に具備し、
前記半田カートリッジは、交換可能に装着されている、ことが望ましい。
【0011】
また、上記半田付け装置は、好ましくは、
前記加熱芯の先端とその近傍を拡大して見るための拡大鏡を更に具備している、ことが望ましい。
【0012】
また、上記半田付け装置の拡大鏡は、好ましくは、折り畳み可能、取り外し可能、または交換可能に設けられている、ことが望ましい。
【0013】
また、上記半田付け装置は、好ましくは、
前記ガイドパイプを囲うように設けられた外筒部を更に具備し、
前記外筒部には、前記ガイドパイプを外気で冷却するための冷却孔が形成されている、
ことが望ましい。
【0014】
また、上記半田付け装置は、好ましくは、
前記ガイドパイプを囲うように設けられた外筒部を更に具備し、
前記外筒部には、外気が流通可能な貫通孔であって、前記加熱芯から前記ガイドパイプへの熱伝導を妨げるための冷却孔が形成されている、
ことが望ましい。
【0015】
また、上記半田付け装置は、好ましくは、
作動するたびに前記加熱芯に向かって半田を所定長さ送り込むための定量送り手段と、
前記定量送り手段を作動させるための作動機構と、
を更に具備することが望ましい。
【0016】
また、上記半田付け装置の定量送り手段は、好ましくは、前記加熱芯において溶融した分量に相当する長さの半田を、前記加熱芯に向かって送り込むことが望ましい。
【0017】
また、上記半田付け装置のガイドパイプは、好ましくは、中心軸がほぼ直線状になるように形成されていることが望ましい。
【0018】
また、上記半田付け装置において、好ましくは、
前記加熱芯と前記ガイドパイプは略同軸状に設けられ、
前記加熱芯は、前記ガイドパイプに近寄った近接位置と、前記ガイドパイプから離れた離隔位置との間で、同軸状態で相対移動可能に設けられており、
前記加熱芯を、前記離隔位置方向に付勢する付勢手段を、更に具備することが望ましい。
【0019】
また、上記半田付け装置において、好ましくは、
前記加熱芯の先端側は、斜めカットした様な外観に形成されていることが望ましい。
【0020】
また、上記半田付け装置において、好ましくは、
前記加熱芯の先端には、接合対象物である線材が当該加熱芯の先端から逃げないようにするための凹部が形成されていることが望ましい。
【0021】
また、上記半田付け装置において、好ましくは、
前記パイプ状の加熱芯は、内径、外径、素材のいずれか1または2以上が異なる他の加熱芯に交換可能に取り付けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の半田付け装置では、溶融半田を吐出可能なパイプ状加熱芯が、リード線やプリント基板などの接合対象物に突き当てることができるように設けられている。したがって、リード線などの接合対象物が不安定であっても、半田付け装置の先端部(すなわち加熱芯の先端)で接合対象物を押さえつつ、同時に、当該押さえている接合対象物に対して溶融半田を流し込むことができる。よって、接合対象物を設計位置に正確に位置決めした状態で、半田付けを行うことが可能である。
また、半田付け装置が、半田(加熱内に入り込んだ半田線)を溶融させる機能のみならず、溶融半田(加熱芯内で溶融した半田)を吐出する機能を併せ持っているので、従来のように他方の手で半田線を持つ必要がなく、必要に応じて、接合対象物などを(空いている片手で)押さえつけることが可能になる。つまり、本発明の半田付け装置によれば、仮に接合対象物が不安定な場合でも、接合対象物を設計位置に正確に位置決めした状態で、片手だけで半田付けを行うことが可能である。したがって、手作業での半田付けが容易になる。
また、加熱芯の先端の開口部から溶融半田が吐出することで、加熱芯の突き当て部位に対して正確に溶融半田を流し込むことができる。これにより、接合対象物の大きさにかかわらず、当該接合対象物の所定位置にピンポイントで正確に溶融半田を流し込むことが可能になる。したがって、例えば小型化・微細化した電子部品をプリント基板に高密度実装する場合において、半田付け部位の位置ズレを招くことがなく、正確かつ高品質の半田付けを手作業で実現できる。
【0023】
本発明の半田付け装置において、ガイドパイプは、加熱芯とは別体の部品として構成され、加熱芯から離隔した位置(空間を隔てて加熱芯から離れた位置)に設けられている。
このような構成により、加熱芯からガイドパイプへの熱伝導を可及的に遮って、半田が溶融する領域を加熱芯の内部に限定することができ、ガイドパイプ内を通る半田線(加熱芯に入り込む前の半田線)の溶融を防止できる。そして、ガイドパイプ内を通る半田線の溶融が防止されることで、ガイドパイプ内での半田の目詰まりを防止できる。
なお、半田付け装置の使用を終えるたびに、加熱芯の内部において半田が固まって目詰まりすることになるが(つまり溶融した半田が加熱芯の内部を埋めるように固まるが)、次回使用時に加熱芯が再加熱されることで、加熱芯内の目詰まり(目詰まりを招いている固まった半田)は速やかに解消され、当該加熱芯から溶融半田を吐出可能な状態になる。つまり、半田による目詰まりの部位が加熱芯の内部に限定されるので、次回作業の加熱時において当該目詰まりが速やかに解消され、半田付け作業を速やかに開始することができる。
【0024】
本発明の半田付け装置は、ガイドパイプを囲うように設けられた外筒部を更に具備しており、この外筒部には、ガイドパイプを外気で冷却するための冷却孔が形成されている。すなわち、この冷却孔は、外気が流通可能な貫通孔として形成され、加熱芯からガイドパイプへの熱伝導を妨げる役割を担っている。このような冷却孔を外筒部に形成することで、半田が溶融する領域をより確実に加熱芯に限定することができるとともに、ガイドパイプ内を通る半田線(加熱芯に入り込む前の半田線)の溶融をより確実に防止することが可能になる。また、ガイドパイプの半田線出口から加熱芯の半田線入口の間の領域における、半田線の溶断を防止することができる。
【0025】
本発明の半田付け装置は、半田線を繰り出し可能に具備する半田カートリッジを更に具備しており、この半田カートリッジは交換可能に装着されている。
このような構成により、半田カートリッジが具備する半田線が無くなっても、当該カートリッジを新たなものに交換することで、半田付け作業を速やかに再開することができる。
【0026】
本発明の半田付け装置は、加熱芯の先端とその近傍を拡大して見るための拡大鏡を更に具備している。このような拡大鏡を具備することで、例えば小型化・微細化した電子部品をプリント基板等に高密度実装する際でも、半田付け作業を進めながら同時に半田付け位置を正確に把握(視認)することができ、正確かつ高品質の半田付けを手作業で実現できる。
【0027】
本発明の半田付け装置が具備する拡大鏡は、折り畳み可能、取り外し可能に設けられている。これにより、半田付け作業において拡大鏡が不要な場合には、拡大鏡が半田付け作業の邪魔にならないように、必要に応じて当該拡大鏡を折り畳んだり取り外すことが可能になる。また、拡大鏡を交換可能に取り付けることで、接合対象物の大きさや作業員の好みに応じて、適切な拡大率の拡大鏡に交換することが可能になる。
【0028】
本発明の半田付け装置は、更に、
・ 毎回作動するたびに加熱芯に向かって半田線を所定長さ送り込むための定量送り手段
・ 定量送り手段を作動させるための作動機構
を具備している。
このような構成を具備することで、定量送り手段が作動するたびに(つまり毎回)、加熱芯内ですでに溶融している半田が、後続の半田線(後方から定量で送り込まれた半田線)によって押し出されるので、加熱芯から定量かつ適量の溶融半田を吐出させることが可能なる。したがって、過剰または過少な半田付けが防止され、その結果、半田付け不良を可及的に防止することが可能になり、手作業での正確かつ高品質の半田付けを実現できる。
また、加熱芯から定量の溶融半田が吐出されることで、半田線の無駄使いが防止され(つまり半田線の過剰な使用が抑制され)、資源の有効活用に貢献できる。
また、加熱芯から常に定量の溶融半田が吐出される(後続の半田線によって押し出される)ことで、手作業であるにもかかわらず半田付けの品質にバラつきがなくなり、一定の品質の半田付けを手作業で実現できる。
【0029】
本発明の半田付け装置が具備する定量送り手段は、加熱芯において溶融した分量に相当する長さの半田線を、加熱芯に向かって送り込むようになっている。
これにより、適量(対象物の接合に適した量)の溶融半田だけが加熱芯から吐出されるので(つまり、十分に溶融していない半田線が加熱芯から吐出されることはないので)、半田付け不良を可及的に防止することができる。
【0030】
本発明の半田付け装置が具備するガイドパイプは、中心軸がほぼ直線状になるように形成されている。
このようなほぼ真っ直ぐのガイドパイプを備えることで、湾曲状等に変形した半田線が、当該ガイドパイプを通る過程でほぼ真っ直ぐに矯正され、その結果、(ガイドパイプは加熱芯から離れているが)半田線が加熱芯の内側に入り込むように当該半田線を確実にガイドすることができる。
【0031】
本発明の半田付け装置において、加熱芯とガイドパイプは略同軸状に設けられていて、加熱芯は、ガイドパイプに近寄った「近接位置」と、ガイドパイプから離れた「離隔位置」との間で、移動可能に設けられている。そして更に、本発明の半田付け装置には、加熱芯を、離隔位置方向に付勢するバネなどの付勢手段が設けられている。
つまり、本発明の半田付け装置が具備する加熱芯は、通常の状態、つまり負荷がかかっていない状態では、付勢手段の押圧作用によってガイドパイプから離れた「離隔位置」に位置決めされ、また、加熱芯先端を接合対象物などに押し付けるなどして負荷(押し込み力)がかかった状態では、付勢手段の作用に抗してガイドパイプに近寄った「近接位置」に位置することになる。
このように可動式に構成することで、加熱芯を単に接合対象物に押し付けるだけで、溶融半田に対して加熱芯が相対的に移動して、当該加熱芯から溶融半田が吐出するので(押し出されるので)、半田付け作業が簡単になる。
【0032】
本発明の半田付け装置において、前記加熱芯の先端側は、斜めカットした様な外観に形成されている。これにより、例えばペンを持つように半田付け装置を斜めに持った状態であっても、加熱芯の先端面を接合対象物の平面に対して当接させることができるので、斜めカット形状の加熱芯の先端で正確に半田付け作業を行うことが可能になる。
【0033】
本発明の半田付け装置において、加熱芯の先端には、接合対象物である線材が当該加熱芯の先端から(転がったり滑ったりして)逃げないようにするための凹部が形成されている。
これにより、例えばプリント基板の所定部位にリード線等が不安定な状態で置かれている場合でも、加熱芯先端の凹部に当該リード線を引っ掛ける(係合させる)ことができるので、加熱芯の先端からリード線が逃げることがなく(つまり、転がり等によるリード線の位置ズレを招くことなく)プリント基板の所定部位に当該リード線を半田付けすることが可能になる。
【0034】
本発明の半田付け装置において、加熱芯は交換可能に取り付けられている。
これにより必要に応じて、寸法、形状、素材が異なる加熱芯に交換することができ、用途に応じた適切な加熱芯を半田付け装置に装着することができる。その結果、接合対象物の種類や半田線のサイズにかかわらず、正確かつ高品質の半田付けが常に可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(半田付け装置の構成)
以下、本発明に係る半田付け装置の一例として「銃型の半田ごて」を挙げ、
図1〜
図3に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る半田ごて1の全体(拡大鏡を除く)を示す断面図である。
図2は、
図1に示す半田ごて1の先端側を示す拡大図である。
図3は、拡大鏡17を具備する状態の半田ごて1を示す部分断面図であって、
図3(a)は拡大鏡17を使って半田付けしている様子を示しており、
図3(b)は拡大鏡17を折り畳んだ様子を示している。
【0038】
本実施形態に係る半田ごて1は、
図1〜
図3に示すように、主として、次の各部を備えている。
1) 半田線3を繰り出し可能に具備する回転式の半田カートリッジ5。
2) 半田カートリッジ5を回動可能に装備するグリップ部7。
3) 半田を溶融状態で吐出可能に構成された半田ごて先端の加熱芯9。
4) 加熱芯9を加熱するための発熱体10(ヒーター)。
5) 加熱芯9の内側に向かって半田線3をガイドするためのガイドパイプ13。
6) ガイドパイプ13を囲うように設けられた外筒部15。
7) 半田付け作業時に加熱芯9の先端とその近傍を拡大して見るための拡大鏡17。
8) 加熱芯9に向かって半田線3を所定長さ送り込むための定量送り機構30。
9) 定量送り機構30を作動させるための作動機構50。
【0039】
半田カートリッジ5は
図1に示すように側面視円形に構成されており、半田線3が繰り出し可能に巻回してある。この半田カートリッジ5は、グリップ部7の内部に回動可能に且つ取り外し可能に取り付けられている。半田カートリッジ5から繰り出された半田線3は、複数のガイドローラ19によって案内されて、定量送り機構30を通り、さらにガイドパイパイプ13内を通って、加熱芯9の内部に送り込まれる。半田線3を送り込むためのエネルギーは、本実施形態の場合では、定量送り機構30と作動機構50を利用して人力で与えられる。
【0040】
半田カートリッジ5の半田線3が使い尽くされて無くなった時には、当該半田カートリッジをグリップ部7から取り外して、半田線を具備する新たなカートリッジに交換することができる。つまり、半田カートリッジ5は、交換可能にグリップ部7内に装着されている。
なお、本実施形態では一例として、直径0.3ミリの半田線を具備する半田カートリッジを使用する。
【0041】
グリップ部7は、半田付け作業者が手のひらで握ることができるように構成され、その内部には、半田カートリッジ5のほか、半田線3を円滑に繰り出すための複数のガイドローラ19や、作動機構50の一部、電気配線の一部などが設けられている。
【0042】
加熱芯9は、
図2の拡大図に示すように、半田ごて1の先端部に位置するように設けられる部材である。この加熱芯9は、
図2の拡大図に示すように、一例としてパイプ状の小型部材として構成されており、半田線3が進入する入口と、溶融半田が吐出する出口を有している、この加熱芯9は、その先端面側を電子部品やプリント基板などの接合対象物に突き当てることができるように、外筒部15の先端側にネジ留めなどの手段により取り付けられている。
上記構成の加熱芯9は、主として、当該加熱芯の内部に進入した半田線3(ガイドパイプ13を通ってガイドされてきた半田)を溶融した状態で吐出する役割を担っている。加熱芯9内で半田を溶融するための熱エネルギーは、その周囲を取り囲むように取り付けられた発熱体10(ヒーター)から与えられる。加熱芯9の構成材料としては、例えばセラミックなどが挙げられる。
【0043】
外筒部15の先端側に対する加熱芯9の固定方法は特に限定されず、別部材としてのネジを利用した固定方法や、加熱芯9の外周に形成したネジによる固定方法であってもよい。好ましくは、外筒部15の先端側に対して加熱芯9を取り外し可能に(交換可能に)取り付けるのが望ましい。半田付けの作業者は、必要に応じて(例えば使用する半田線の径や接合対象物の大きさなどに応じて)、内径、外径、素材などのいずれか1または2以上が異なる他の加熱芯に交換することが可能である。
本実施形態では一例として、長さ1ミリ、内径0.5ミリ、外径1ミリのセラミック製の加熱芯9を使用する。
【0044】
発熱体10は、抵抗加熱(電気エネルギー)によって発熱可能な金属やセラミックなどの材料で形成され、
図2の拡大図に示すように、加熱芯9の外周面を取り囲むように取り付けられている。この発熱体10には、電気配線11を介して電源から抵抗加熱用の電力が供給される。なお、発熱体10に電力を供給する電源は特に限定されず、例えばバッテリーでもよく、あるいは、家庭用電源などであってもよい。
上記構成の発熱体10は、主として、加熱芯9を加熱する役割を担うとともに、加熱芯9内に進入した半田線3を溶融する役割を担っている。
【0045】
ガイドパイプ13は、
図1及び
図2に示すように、加熱芯9とは別体の部材であって、耐熱性の金属材料などから形成されており、また、中心軸(中心軸となる仮想線)がほぼ直線状になるように、すなわち円柱状に形成されている。
また、ガイドパイプ13は、加熱芯9との間に間隔をあけて離隔した位置に設けられており、その基端側部分が外筒部15の内壁面に固定されている。
また、ガイドパイプ13は、その周囲を囲む外筒部15との間に隙間をあけて取り付けられている。
また、ガイドパイプ13は、外筒部15および加熱芯9との同軸状態が維持されるように(芯ブレが防止されるように)、芯ブレ防止材14によって外筒部15に対して固定されている。芯ブレ防止材14は、好ましくは、耐熱性・断熱性の少なくとも何れか一方を有する材料で構成することが望ましい。
上記構成のガイドパイプ13は、主として、加熱芯9の内側に向かって半田線3をガイドする役割を担っている。
【0046】
外筒部15(外側ケーシング)は、その基端側がグリップ部7に対して固定されており、その先端側には加熱芯9が固定されている。この外筒部15は、ガイドパイプ13を囲うように設けられている。また、外筒部15と加熱芯9とガイドパイプ13は略同軸状に設けられている。
外筒部15の基端側には、半田カートリッジ5に巻回されている半田線3を定量で繰り出すとともに、ガイドパイプ13を介して加熱芯9内に定量で送り込むための「定量送り機構30」が設けられている。この定量送り機構30は、「作動機構50」を手動操作することによって作動するようになっている。「定量送り機構30」と「作動機構50」の詳細については、後述する。
【0047】
図3の部分断面図に示すように、拡大鏡17(虫眼鏡)は、レンズ部21と、当該レンズ部を折り畳み可能に支持するリング部22を具備している。この拡大鏡17は、必要に応じて、折り畳みできるように、また、取り外しができるように、あるいは、他の拡大鏡に交換できるように、外筒部15の外周面に取り付けられている。
上記構成の拡大鏡17は、主として、加熱芯9の先端とその近傍を拡大して見るときに用いられる。
【0048】
(定量送り機構と作動機構の構成・作用)
定量送り機構30は、毎回作動するたびに(チャックが進退動するたびに)加熱芯に向かって半田線を所定長さ送り込む役割を担っている。
この定量送り機構30は、
図4に示すとおり、主として次の構成を具備している。
1) 半田線3の外周面を締め付ける締め付け部31を先端側に具備しており、
進退動可能に設けられたチャック32。
2) チャック32の後端に固設された環状の押圧部33。
3) チャック32が半田線3の外周面を締め付けるように(チャック32がバネ力で後
退するように)押圧部33を付勢するバネ35。
4) チャック32の締め付け部31が出入り可能であって、
チャック32による半田線3の締め付けや解放を制御するチャックリング37。
5) 半田線3の外周面に摩擦抵抗等を与えて当該半田線の逆戻りを防止する戻り止め部
材39。
【0049】
作動機構50は、定量送り機構30を作動させる役割を担っている。
この作動機構50は、
図4に示すとおり、主として次の構成を具備している。
1) 定量送り機構30の押圧部33を加熱芯方向に押圧するための回動レバー51。
2) 所定角度の範囲内でレバー51を回動させるための引き金53。
3) 引き金53とレバー51との間に設けられたリンク部材55。
【0050】
上記構成において、半田付け作業者が引き金53を手前方向に引き込むと、リンク部材55を介して動力(引き込み力)が回動レバー51に伝わり、当該回動レバー51が、バネ35の付勢力に抗して押圧部33を押し込む方向(チャック32をガイドパイプ13に近接させる方向)に回動する。
【0051】
すると、半田線3の外周面を締め付けた状態のチャック32が、バネ35の付勢力に抗して、当該半田線3と一体となって前進する(つまりチャック32がストロークを開始する)。この前進動作(ストローク)によって、所定長さの半田線3が、カートリッジ5から繰り出されるとともに、ガイドパイプ13の方へ送り込まれる。
【0052】
そして、チャック32が前進してその先端側の締め付け部31がチャックリング37から完全に抜け出ると、チャック先端の弾性変形していた締め付け部31が外側方向に拡がって、締め付け部31が半田線3の外周面から離れ、当該チャック32による半田線3の締め付けが解除される。
【0053】
そして、引き金53から指を離すと(あるいは指を弱めると)、バネ35の付勢力によって、チャック32がもとの位置に引き戻されるように後退し、当該チャック先端側が弾性変形して、その締め付け部31がチャックリング37内に再び収容される。その結果、チャック先端の締め付け部31によって、半田線3の外周面が再び締め付けられる。
【0054】
なお、チャック32が後退する行程では(つまりチャック先端の締め付け部31が弾性変形によってチャックリング37に収まるまでの間は)、当該チャック先端の締め付け部31は半田線3を締め付けていないので、繰り出された半田線3に対して相対的にチャック32だけがチャックリング37に収まる方向へ後退移動する。
【0055】
したがって、引き金53の引き込みや解放を繰り返すたびに、作動機構50を介して定量送り機構30が作動し、半田線3を締め付けているチャック32が前進する。そのとき、半田線3を締め付けているチャック32と一体となって、所定長さ(決まった一定の長さ)の半田線3が、ガイドパイプ13を介して加熱芯9へ送り込まれる。つまり、チャック32がストロークするたびに、当該チャックのワンストローク分の長さについて、半田線3が加熱芯9の方へ送り込まれる。
【0056】
なお、上述した定量送り機構30や作動機構50は、所定長さの半田線を加熱芯方向に送り込むための構成の一例であって、上述した構成以外の他の構成を採用することも可能である。
また、本実施形態では、銃型の半田ごてを例示しているため、作動機構50の一部材として引き金53を採用しているが、本発明の実施形態としてペン型の半田ごてを採用する場合には、引き金53に変えて押しボタンなどを採用することも可能である。
【0057】
(半田付け装置の使用方法)
半田ごて1を使用する際には、電源をONにして発熱体10を発熱させて加熱芯9を加熱するとともに、グリップ部7を手のひらで握り、続いて、半田ごて先端部の加熱芯9をリード線や銅箔パターンなどの接合対象物に突き当てる。
【0058】
半田ごて先端部(加熱芯9)を接合対象物に突き当てるときには、
図5(a)に示すように、半田ごて1をほぼ垂直にして突き当ててもよく、あるいは、
図5(b)に示すように、半田ごて1を接合対象物に対して傾斜させて(例えば40度程度傾斜させて)突き当ててもよい。
【0059】
続いて、適当なタイミングで引き金53を引きこむと、前述した定量送り機構30と作動機構50の作用によって、カートリッジ5から半田線3が所定長さ繰り出されるとともに、ガイドパイプ13および加熱芯9の方へ送り出される。
【0060】
カートリッジ5から繰り出された半田線3は、ガイドパイプ13を通過する過程で塑性変形を受けてほぼ直線状に矯正され、当該ガイドパイプ13の先にある加熱芯9の内部空間へ向かってガイドされる。
【0061】
ガイドパイプ13を介して加熱芯9内に送り出された半田線3は、加熱された加熱芯9内に入り込むと同時に溶融する。続いて、引き金53の引き込みと解放を繰り返すと、加熱芯9内で溶融した半田が、後続の半田線によって押し出される。その結果、溶融半田が加熱芯9の出口孔から吐出する。
【0062】
なお、本実施形態では、定量送り機構30は、加熱芯9において溶融した分量に相当する長さの半田を、加熱芯9に向かって送り込むように設定されている。引き金53の引き込みと解放を繰り返すたびに、加熱芯9において溶融した分量に相当する長さの半田が、加熱芯9に向かって繰り出される。
【0063】
(半田付け装置によって達成される効果)
上述した半田ごてでは、溶融半田を吐出可能な加熱芯が、リード線やプリント基板などの接合対象物に突き当てることができるように設けられている。したがって、リード線などの接合対象物が不安定であっても、半田ごての先端部(すなわち加熱芯の先端)で接合対象物を押さえつつ、同時に、当該押さえている接合対象物に対して溶融半田を流し込むことができる。
【0064】
また、半田ごてが、半田(加熱内に入り込んだ半田線)を溶融させる機能のみならず、溶融半田(加熱芯内で溶融した半田)を吐出する機能を併せ持っているので、従来のように他方の手で半田線を持つ必要がなく、必要に応じて、接合対象物などを(空いている片手で)押さえつけることが可能になる。つまり、本発明の半田ごてによれば、仮に接合対象物が不安定な場合でも、接合対象物を設計位置に正確に位置決めした状態で、片手だけで半田付けを行うことが可能である。
【0065】
また、加熱芯の先端の開口部から溶融半田が吐出することで、加熱芯の突き当て部位に対して正確に溶融半田を流し込むことができる。したがって、例えば小型化・微細化した電子部品をプリント基板に高密度実装する場合において、半田付け部位の位置ズレを招くことがなく、正確かつ高品質の半田付けを手作業で実現できる。
【0066】
また、本実施形態の半田ごてにおいて、ガイドパイプは、加熱芯とは別体の部品として構成され、加熱芯から離隔した位置(空間を隔てて加熱芯から離れた位置)に設けられている。
このような構成により、加熱芯からガイドパイプへの熱伝導を可及的に遮って、半田が溶融する領域を加熱芯の内部に限定することができ、ガイドパイプ内を通る半田線(加熱芯に入り込む前の半田線)の溶融を防止できる。そして、ガイドパイプ内を通る半田線の溶融が防止されることで、ガイドパイプ内での半田の目詰まりを防止できる。
【0067】
また、本実施形態の半田ごては、
・ 作動するたびに加熱芯に向かって半田線を所定長さ送り込む「定量送り機構」
・ 定量送り機構作動させるための「作動機構」
を具備している。
このような構成を具備することで、定量送り手段が作動するたびに(つまり毎回)、加熱芯内ですでに溶融している半田が、後続の半田線(後方から定量で送り込まれた半田線)によって押し出されるので、加熱芯から定量かつ適量の溶融半田を吐出させることが可能なる。したがって、過剰または過少な半田付けが防止され、その結果、半田付け不良を可及的に防止することが可能になり、手作業での正確かつ高品質の半田付けを実現できる。
【0068】
また、加熱芯から定量の溶融半田が吐出されることで、半田線の無駄使いが防止され(つまり半田線の過剰な使用が抑制され)、資源の有効活用に貢献できる。
【0069】
また、加熱芯から常に定量の溶融半田が吐出される(後続の半田線によって押し出される)ことで、手作業であるにもかかわらず半田付けの品質にバラつきがなくなり、一定の品質の半田付けを手作業で実現できる。
【0070】
また、本実施形態の半田ごてが具備する定量送り機構は、加熱芯において溶融した分量に相当する長さの半田線を、加熱芯に向かって送り込むようになっている。
これにより、適量(対象物の接合に適した量)の溶融半田だけが加熱芯から吐出されるので(つまり、十分に溶融していない半田線が加熱芯から吐出されることはないので)、半田付け不良を可及的に防止することができる。
【0071】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る半田ごてを
図6に示す。
なお、前述した第1実施形態と同様の構成については説明を省略するとともに、第1実施形態の説明を援用する。
【0072】
図6に示すように、第2実施形態に係る半田ごてにおいて、加熱芯9は、
・
図6(a1)(a2)に示す、ガイドパイプ13に近寄った「近接位置」と、
・
図6(b1)(b2)に示す、ガイドパイプ13から離れた「離隔位置」との間で、
同軸状態を保って相対移動可能に設けられている。
また、加熱芯9を、
図6(a1)(a2)に示す離隔位置方向に付勢するバネ61(付勢手段)が設けられている。
【0073】
このように、加熱芯9の側をガイドパイプ13に対して可動式(相対的に移動できる構成)にすることで、加熱芯9を単に接合対象物に押し付けるだけで、溶融半田に対して加熱芯が相対的に移動して、当該加熱芯から溶融半田が吐き出されるので(押し出されるので)、半田付け作業が簡単になる。
【0074】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る半田ごてを
図7に示す。
なお、前述した第1実施形態と同様の構成については説明を省略するとともに、第1実施形態の説明を援用する。
【0075】
図7に示すように、第3実施形態に係る半田ごてにおいて加熱芯9の先端には、接合対象物である線材(例えば銅箔パターンの上に位置決めされたリード線など)が、加熱芯9の先端から逃げないようにするための凹部63が形成されている。
【0076】
これにより、例えばプリント基板の所定部位にリード線等が不安定な状態で置かれている場合でも、加熱芯先端の凹部63に当該リード線を引っ掛ける(係合させる)ことができるので、加熱芯9の先端からリード線が逃げることがなく(つまり、転がり等によるリード線の位置ズレを招くことなく)プリント基板の所定部位に当該リード線を半田付けすることが可能になる。
【0077】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る半田ごてを
図8に示す。
なお、前述した第1実施形態と同様の構成については説明を省略するとともに、第1実施形態の説明を援用する。
【0078】
図8に示すように、第4実施形態に係る半田ごては、ガイドパイプ13を囲うように設けられた外筒部15には、ガイドパイプ13を外気で冷却するための冷却孔65が形成されている。冷却孔65は、外気が流通可能な貫通孔であって、加熱芯9からガイドパイプ13への熱伝導を妨げる役割を担っている。
【0079】
このような冷却孔65を外筒部15に形成することで、半田が溶融する領域をより確実に加熱芯9に限定することができるとともに、ガイドパイプ13内を通る半田線(加熱芯に入り込む前の半田線)の溶融をより確実に防止することが可能になる。また、ガイドパイプの半田線出口から加熱芯の半田線入口の間の領域における、半田線の溶断を防止することができる。
【0080】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る半田ごてを
図9に示す。
なお、前述した第1実施形態と同様の構成については説明を省略するとともに、第1実施形態の説明を援用する。
【0081】
図9に示すように、第5実施形態に係る半田ごてにおいて、加熱芯9および発熱体10の先端側は、斜めカットした様な外観に形成されている。
【0082】
これにより、例えばペンを持つように半田ごてを斜めに持った状態であっても、加熱芯9の先端面を接合対象物の平面に対して当接させることができるので、斜めカット形状の加熱芯9の先端で正確に半田付け作業を行うことが可能になる。