(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒状に形成される掃除口部を有する継手本体と、前記掃除口部に対してバヨネット方式で装着される蓋と、前記掃除口部の内側面と前記蓋の外側面との間に設けられる環状のシール部材とを備える掃除口付管継手であって、
前記蓋の外側面に形成される第1壁、および
前記第1壁よりも前記掃除口部の基端部側の位置において、前記掃除口部の内側面に形成される第2壁を備え、
前記第1壁と前記第2壁とによって、前記掃除口部の内側面と前記蓋の外側面との間の隙間に、前記掃除口部の基端部から前記シール部材に向かう方向において非直線部を形成し、
高圧洗浄機を用いて前記掃除口付管継手を組み込んだ排水管を洗浄するときに、前記高圧洗浄機の洗浄ノズルから噴射される洗浄水を前記第1壁で受けることによって、前記洗浄水が前記シール部材に到達する前に前記洗浄水を減速させる、掃除口付管継手。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マンション等の建物内の排水管では、排水管内の付着物や詰まりを取るために、定期的に高圧洗浄機を用いた洗浄(掃除)が行われる。ここで、
図20に示すように、バヨネット方式の蓋2を備える従来の掃除口付管継手1では、高圧洗浄機の洗浄ノズル3から噴射される高圧の洗浄水が、掃除口部4の内側面と蓋2の外側面との間の隙間5を通ってシール部材6に直接当たる構造となっている。このため、高圧洗浄時において、高圧の洗浄水がシール部材を乗り越えて、掃除口部から水漏れが生じてしまう場合があった。
【0007】
そこで、従来では掃除口部からの水漏れが生じないように、高圧洗浄機の元圧を低くすることによって対応することもあったが、高圧洗浄機の元圧を低くすると、排水管の汚れを適切に落とすことができなくなるという不具合が生じる。また、排水管に組み込まれている掃除口付管継手の種類に応じて(つまり現場に応じて)、水漏れが生じない程度に高圧洗浄機の元圧を調整する作業が面倒であった。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、掃除口付管継手を提供することである。
【0009】
この発明の他の目的は、バヨネット方式の蓋の止水性能を高め、高圧洗浄時における掃除口部からの水漏れを防止できる、掃除口付管継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、円筒状に形成される掃除口部を有する継手本体と、掃除口部に対してバヨネット方式で装着される蓋と、掃除口部の内側面と蓋の外側面との間に設けられる環状のシール部材とを備える掃除口付管継手であって、蓋の外側面に形成される第1壁、および第1壁よりも掃除口部の基端部側の位置において掃除口部の内側面に形成される第2壁を備え、第1壁と第2壁とによって、掃除口部の内側面と蓋の外側面との間の隙間に、掃除口部の基端部からシール部材に向かう方向において非直線部を形成し、高圧洗浄機を用いて掃除口付管継手を組み込んだ排水管を洗浄するときに、高圧洗浄機の洗浄ノズルから噴射される洗浄水を第1壁で受けることによって、洗浄水がシール部材に到達する前に洗浄水を減速させる、掃除口付管継手である。
【0011】
第1の発明では、掃除口付管継手は、掃除口部を有する継手本体と、掃除口部にバヨネット方式で装着される蓋と、掃除口部の内側面と蓋の外側面との間に設けられて、この間の隙間を止水する環状のシール部材とを備える。この掃除口付管継手では、蓋の外側面に形成される第1壁と掃除口部の内側面に形成される第2壁とによって、掃除口部の内側面と蓋の外側面との間の隙間に、掃除口部の基端部からシール部材に向かう方向において非直線部が形成される。そして、高圧洗浄機を用いてこの掃除口付管継手を組み込んだ排水管を洗浄するときには、洗浄ノズルから噴射される洗浄水を第1壁で受けることで、洗浄水を減速させて、洗浄水がシール部材に当たるときの水圧を小さくしている。
【0012】
第1の発明によれば、高圧洗浄機の洗浄ノズルから噴射される洗浄水を第1壁で受けることによって減速させるので、掃除口部の内側面と蓋の外側面との間の止水性能が向上する。したがって、バヨネット方式の蓋であっても、高圧洗浄時における掃除口部からの水漏れを防止できる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に従属し、第1壁と第2壁とは、掃除口部の径方向においてオーバーラップする。
【0014】
第2の発明では、蓋に形成される第1壁と掃除口部に形成される第2壁とが、掃除口部の径方向においてオーバーラップするので、洗浄水を減速させる効果が高まる。
【0015】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、第1壁は、蓋の外側面に突起を設けることによって形成される。
【0016】
第3の発明では、蓋に形成される第1壁は、蓋の外側面に周方向に延びる環状の突起を設けることによって形成される。
【0017】
第4の発明は、第1または第2の発明に従属し、第1壁は、蓋の外側面に縮径による段差を設けることによって形成される。
【0018】
第4の発明では、蓋に形成される第1壁は、蓋の外側面に縮径による環状の段差を設けることによって形成される。
第5の発明は、第1ないし第4のいずれかの発明に従属し、蓋の外側面には、複数の第1壁が形成される。
第6の発明は、第5の発明に従属し、複数の第1壁は、階段状に形成される。
第7の発明は、円筒状に形成される掃除口部を有する継手本体と、掃除口部に装着される蓋と、掃除口部に蓋を固定するための係合部よりも掃除口部の基端部側の位置において、掃除口部の内側面と蓋の外側面との間に設けられる環状のシール部材とを備える掃除口付管継手であって、蓋の外側面に突起を設けることによって形成される第1壁、および第1壁よりも掃除口部の基端部側の位置において、掃除口部の内側面に形成される第2壁を備え、第1壁と第2壁とによって、掃除口部の内側面と蓋の外側面との間の隙間に、掃除口部の基端部からシール部材に向かう方向において非直線部を形成し、高圧洗浄機を用いて掃除口付管継手を組み込んだ排水管を洗浄するときに、高圧洗浄機の洗浄ノズルから噴射される洗浄水を第1壁で受けることによって、洗浄水がシール部材に到達する前に洗浄水を減速させる、掃除口付管継手である。
第8の発明は、円筒状に形成される掃除口部を有する継手本体と、掃除口部に装着される蓋と、掃除口部に蓋を固定するための係合部よりも掃除口部の基端部側の位置において、掃除口部の内側面と蓋の外側面との間に設けられる環状のシール部材とを備える掃除口付管継手であって、蓋の外側面に縮径による段差を設けることによって形成される第1壁、および第1壁よりも掃除口部の基端部側の位置において、掃除口部の内側面に形成される第2壁を備え、第1壁と第2壁とによって、掃除口部の内側面と蓋の外側面との間の隙間に、掃除口部の基端部からシール部材に向かう方向において非直線部を形成し、高圧洗浄機を用いて掃除口付管継手を組み込んだ排水管を洗浄するときに、高圧洗浄機の洗浄ノズルから噴射される洗浄水を第1壁で受けることによって、洗浄水がシール部材に到達する前に洗浄水を減速させる、掃除口付管継手である。
第9の発明は、円筒状に形成される掃除口部を有する継手本体と、掃除口部に装着される蓋と、掃除口部に蓋を固定するための係合部よりも掃除口部の基端部側の位置において、掃除口部の内側面と蓋の外側面との間に設けられる環状のシール部材とを備える掃除口付管継手であって、蓋の外側面に形成される複数の第1壁、および第1壁よりも掃除口部の基端部側の位置において、掃除口部の内側面に形成される第2壁を備え、第1壁と第2壁とによって、掃除口部の内側面と蓋の外側面との間の隙間に、掃除口部の基端部からシール部材に向かう方向において非直線部を形成し、高圧洗浄機を用いて掃除口付管継手を組み込んだ排水管を洗浄するときに、高圧洗浄機の洗浄ノズルから噴射される洗浄水を第1壁で受けることによって、洗浄水がシール部材に到達する前に洗浄水を減速させる、掃除口付管継手である。
第10の発明は、第9の発明に従属し、複数の第1壁は、階段状に形成される。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、高圧洗浄機の洗浄ノズルから噴射される洗浄水を第1壁で受けることによって減速させるので、掃除口部の内側面と蓋の外側面との間の止水性能が向上する。したがって、バヨネット方式の蓋であっても、高圧洗浄時における掃除口部からの水漏れを防止できる。
【0020】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照して、この発明の一実施例である掃除口付管継手10(以下、単に「管継手10」と言う。)は、掃除口部24を有する継手本体12を備え、マンション等の建物内のパイプスペース等に配管される排水管100の一部に組み込まれる。掃除口部24は、排水管100内の点検または掃除などを行うために用いられる。
【0023】
図1および
図2に示すように、管継手10は、継手本体12、蓋14およびシール部材16を備え、継手本体12に形成された掃除口部24に対して、蓋14がシール部材16を介して着脱可能に装着される。詳細は後述するように、掃除口部24に対する蓋14の装着には、蓋14を掃除口部24に差し込んで捻ることで装着および位置決めが完了するバヨネット方式が用いられる。以下、管継手10の構成について、具体的に説明する。
【0024】
図3−
図5に示すように、継手本体12は、円筒状の中央胴部20を含み、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。中央胴部20は、直管状に形成され、その両端には、排水管100が接続される接着受口またはゴム輪受口などの接続部22が一体的に形成される。中央胴部20の内径は、排水管100の内径に合わせて設定され、たとえば100mmである。なお、中央胴部20は、必ずしも直管状に形成される必要はなく、湾曲または屈曲していてもよい。
【0025】
また、中央胴部20には、中央胴部20の軸方向と略直交する方向に分岐する円筒状の掃除口部24が一体的に形成される。掃除口部24の内径は、中央胴部20に形成可能な大きさであれば特に限定されず、たとえば75mmである。
【0026】
掃除口部24の先端部24aの内側面には、複数の略L字状の係合溝(バヨネット溝)26が周方向に並ぶように形成される。各係合溝26は、掃除口部24の先端縁から掃除口部24の軸方向に沿って延びる軸方向溝26aと、軸方向溝26aの中央胴部20側(掃除口部24の基端部24b側)の端部から掃除口部24の周方向に沿って延びる周方向溝26bとを含む。この実施例では、4つの係合溝26が90度間隔で配置される。ただし、係合溝26および後述する係合突起46の数およびその周方向位置は、適宜変更可能である。また、この実施例では、周方向溝26bの周方向長さは、蓋14を掃除口部24の軸周りに回転させて装着するときに、蓋14を30度回転させることで装着が完了する長さに設定される。
【0027】
また、4つの係合溝26は、上下および左右で対になっており、掃除口部24の周方向における軸方向溝26aの幅(周方向長さ)は、上下と左右とで異なる大きさに設定される。
【0028】
さらに、各係合溝26には、軸方向溝26aと周方向溝26bとの連結部分の角部において、三角形状の突起部28が設けられる。この突起部28は、掃除口部24の周方向に対して傾斜する傾斜面28aを有する。突起部28の周方向長さは、たとえば8mmであり、この周方向長さは、蓋14を掃除口部24の軸周りに回転させて着脱するときの回転角度5度分の長さに相当する。また、突起部28の軸方向長さ(周方向溝26bの内側面からの突出高さ)は、たとえば1.5mmである。
【0029】
また、掃除口部24の先端部24aの内側面には、係合溝26よりも掃除口部24の基端部24b側の位置において、先端側に向かって拡径するテーパ面30が形成される。このようなテーパ面30を設けておくことで、掃除口部24内に蓋14を挿入し易くなる。
【0030】
さらに、掃除口部24の内側面には、後述する蓋14の第1壁52よりも掃除口部24の基端部24b側となる位置において、掃除口部24の軸方向と直交する環状の面である第2壁32が形成される。この実施例では、第2壁32は、掃除口部24の内側面に縮径による環状の段差を設けることによって、掃除口部24の周方向全長に亘って形成される。第2壁32の突出高さ(掃除口部24の径方向における長さ)は、少なくとも1mm以上とされ、この実施例では、2.5mmである。
【0031】
図6−
図8に示すように、蓋14は、円筒状に形成される挿入筒部40を含み、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。挿入筒部40は、掃除口部24の内径よりも少し小さい外径を有し、掃除口部24内に挿入可能とされる。
【0032】
挿入筒部40の挿入方向後端側(掃除口部24の先端部24a側)の端縁には、環状のフランジ部42が外方に拡がるように形成される。フランジ部42の外径は、掃除口部24の外径とほぼ同じ大きさに設定される。また、フランジ部42の表面には、蓋14を着脱する際の回転方向や位置合わせのための目印などを、凹凸または印刷などによって表示する表示部が設けられる。
【0033】
一方、挿入筒部40の挿入方向先端側(掃除口部24の基端部24b側)の端縁には、挿入筒部40の開口を閉塞する閉塞板44が設けられる。閉塞板44は、蓋14を掃除口部24に装着したときに、継手本体12の中央胴部20の内側面と連続するように、湾曲板状に形成される。なお、挿入筒部40の挿入方向先端側の端部の形状は、この閉塞板44の外周部に沿うように形成されている。
【0034】
挿入筒部40の挿入方向後端側の端部の外側面には、掃除口部24の係合溝26と嵌め合わされる略直方体状の係合突起(バヨネット突起)46が周方向に並ぶように形成される。この実施例では、掃除口部24の係合溝26に合わせて、4つの係合突起46が90度間隔で配置される。そして、4つの係合突起46は、上下および左右で対になっており、挿入筒部40の周方向における幅(周方向長さ)は、上下と左右とで異なる大きさ、たとえば一方が15mmで他方が20mmに設定される。
【0035】
また、挿入筒部40は、係合突起46よりも挿入方向先端側の位置において縮径されており、挿入筒部40の外側面には、その縮径部において環状の段部48が形成される。
【0036】
さらに、挿入筒部40の外側面(つまり蓋14の外側面)には、段部48よりも挿入方向先端側の位置において、挿入筒部40の軸方向と直交する環状の面である第1壁52が形成される。この実施例では、第1壁52は、挿入筒部40の外側面に環状突起50を設けることによって、挿入筒部40の周方向全長に亘って形成される。第1壁52の突出高さ(挿入筒部40の径方向における長さ)は、少なくとも1mm以上とされ、この実施例では、3.5mmである。
【0037】
また、挿入筒部40の内部には、閉塞板44から挿入筒部40の軸線方向に沿って突出する断面角丸矩形状の把持部54が設けられる。この把持部54には、挿入方向後端側に開口する3つの治具穴56が形成される。治具穴56の1つは、断面矩形状に形成され、その両隣に配置される2つは、断面円形に形成される。掃除口部24に対して蓋14を着脱するときには、作業者は、把持部54を把持して蓋14を掃除口部24の軸周りに回転させるとよい。また、掃除口部24から蓋14を取り外すときに、シール部材16が固着するなどして回転に大きな力が必要となる場合には、棒状の治具(図示せず)を治具穴56に挿入し、その治具を利用して蓋14を回転させるとよい。
【0038】
図9に示すように、シール部材16は、断面円形の環状の部材であって、ゴム等の弾性材料によって形成される。シール部材16は、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間に設けられて、この間で圧縮されることによって止水性能を発揮する。ただし、シール部材16の断面形状は、適宜変更可能である。また、シール部材16は、自己潤滑性の材料を用いて形成されてもよい。
【0039】
上述のような蓋14を継手本体12の掃除口部24に装着するときには、先ず、蓋14の段部48と環状突起50との間に形成される溝部に対して、シール部材16を取り付ける。次に、掃除口部24の係合溝26の軸方向溝26aと蓋14の係合突起46との位置を合わせた状態で、掃除口部24に対して蓋14の挿入筒部40を挿入する。掃除口部24に対して蓋14の挿入筒部40を挿入していくと、係合突起46が係合溝26の軸方向溝26aに入り込む。この際、係合溝26の軸方向溝26aおよび係合突起46は、上下と左右とで異なる周方向長さを有するので、掃除口部24に対する蓋14の装着向きが正しく規制される。
【0040】
その後、係合突起46が周方向溝26bの内側面に突き当たることで、蓋14の軸方向の移動が規制されるので、続いて、掃除口部24の軸周りに蓋14を所定角度(この実施例では、時計回りに30度)だけ回転させる。これによって、係合溝26の周方向溝26bと係合突起46とが嵌合されて、掃除口部24に対して蓋14がバヨネット方式によってしっかりと固定される。
【0041】
図2および
図10に示すように、掃除口部24に対して蓋14を装着した状態では、シール部材16は、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間に挟まれて、掃除口部24の径方向に圧縮される。これにより、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間がシール部材16によって止水され、この間の水密性が確保される。
【0042】
また、掃除口部24に対して蓋14を装着した状態では、蓋14の第1壁52と掃除口部24の第2壁32とが対向して、掃除口部24の径方向においてオーバーラップする。そして、これら第1壁52と第2壁32とによって、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の隙間60には、掃除口部24の基端部24bからシール部材16に向かう方向において2回屈曲する非直線部62が、シール部材16の手前(中央胴部20側)の位置に形成される。第1壁52と第2壁32とが掃除口部24の径方向においてオーバーラップする長さh1は、後述のように洗浄水を減速させる効果を高めるために、1mm以上とすることが好ましく、この実施例では、2mmである。
【0043】
このような管継手10は、上述のように、マンション等の建物内の排水管100に組み込まれてその一部を構成する。そして、マンション等の排水管100においては、排水管100内の付着物や詰まりを取るために、定期的に高圧洗浄機を用いた洗浄が行われる。
【0044】
図11に示すように、高圧洗浄機によって排水管100の洗浄を行うときには、先端に洗浄ノズル102が設けられた高圧洗浄ホース104が排水管100内に挿入される。洗浄ノズル102は、たとえば高圧洗浄ホース104に対して軸周りに回転可能とされており、元圧が15〜30MPaの高圧の洗浄水を排水管100の内面に対して回転しながら噴射する。
【0045】
この高圧洗浄時において、従来の掃除口付管継手では、上述のように、高圧洗浄機の洗浄ノズルから噴射される洗浄水が高速(高圧)のままシール部材に直接当たる構造となっているため、洗浄水がシール部材を乗り越えて、掃除口部から水漏れが生じてしまう場合があった(
図20参照)。
【0046】
これに対して、この実施例では、
図11に示すように、蓋14の第1壁52と掃除口部24の第2壁32とによって、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の隙間60に非直線部62を形成している。このため、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の隙間60に向かって噴射された洗浄水は、第1壁52で受けられて、シール部材16に到達する前に減速される。すなわち、洗浄水がシール部材16に当たるときの水圧が小さくなる。したがって、洗浄水がシール部材16を乗り越えることがなくなり、掃除口部24からの水漏れが防止される。言い換えると、この実施例では、第2壁32を形成することによって、洗浄水が第1壁52に当たるように案内し、洗浄水を第1壁52で受けて減速させることによって、高圧洗浄時における掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の止水性能を高めている。
【0047】
一方、排水管100の点検時などにおいて、蓋14を継手本体12の掃除口部24から取り外すときには、装着するときとは逆の操作を行うとよい。すなわち、装着するときとは逆向きに、蓋14を掃除口部24の軸周りに所定角度(この実施例では、反時計回りに30度)だけ回転させた後、掃除口部24から蓋14を引き抜くとよい。この際、各係合溝26には、軸方向溝26aと周方向溝26bとの連結部分に傾斜面28aを有する突起部28が設けられていることから、蓋14を掃除口部24の軸周りに回転させる最後の段階で、突起部28の軸方向長さ(この実施例では、1.5mm)の分だけ、蓋14が傾斜面28aによって軸方向に押し出される。すなわち、この実施例では、蓋14を取り外すために軸周りに回転させると、その最後に、蓋14が引き抜き方向に少し飛び出す構造とされている。これによって、仮にシール部材16が固着していても、シール部材16が軸方向に動き出すきっかけをつくることができると共に、周方向溝26bの内側面とシール部材16との間に隙間を形成することができるので、蓋14を軸方向に引き抜き易くなる。すなわち、蓋14を掃除口部24から取り外し易くなる。
【0048】
以上のように、この実施例によれば、蓋14の第1壁52と掃除口部24の第2壁32とによって、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の隙間60に非直線部62を形成し、高圧洗浄機の洗浄ノズル102から噴射される洗浄水を第1壁52で受けることによって洗浄水を減速させるので、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の止水性能が向上する。したがって、バヨネット方式の蓋14であっても、高圧洗浄機を用いて排水管100を洗浄するときの水漏れを防止できる。
【0049】
また、この実施例によれば、各係合溝26が軸方向溝26aと周方向溝26bとの連結部分に傾斜面28aを有するので、仮にシール部材16が固着していても、蓋14を取り外す際にシール部材16が軸方向に動き出すきっかけをつくることができる。したがって、蓋14を掃除口部24から取り外し易くなる。
【0050】
なお、上述の実施例では、洗浄水を減速させる効果を高めるために、第1壁52と第2壁32とを掃除口部24の径方向においてオーバーラップさせているが、必ずしもオーバーラップさせる必要はなく、第1壁52の外縁と第2壁32の内縁とは、少なくとも軸方向において同一面上に形成されていればよい。また、第1壁52と第2壁32とは、必ずしも近接している必要はなく、離間していてもよい。すなわち、第1壁52と第2壁32とによって掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の隙間60に非直線部62が形成されて、洗浄水がシール部材16に直接当たらない構造となっていればよい。このことは、後述する他の実施例においても同様である。
【0051】
また、上述の実施例では、蓋14の挿入筒部40の外側面に対して1つの第1壁52を形成したが、これに限定されず、複数の第1壁52を蓋14に形成することもできる。
【0052】
たとえば、
図12および
図13に示す実施例では、蓋14の挿入筒部40の外側面に対して軸方向に並ぶ2つの環状突起50を設けることによって、2つの第1壁52が形成される。また、掃除口部24の内側面には、掃除口部24の基端部24b側に配置される第1壁52と対向するように、第2壁32が形成される。このように、蓋14に複数の第1壁52を設けることによって、洗浄水を減速させる効果が高まり、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の止水性能がより向上する。
【0053】
また、図示は省略するが、第1壁52を2段以上の階段状に形成することもできる。すなわち、複数の第1壁52を挿入筒部40の径方向に並べて配置することもできる。この場合には、第1壁52に沿うように、第2壁32も階段状に形成するとよい。なお、複数の第1壁52および第2壁32を形成してもよいことは、後述する他の実施例においても同様である。
【0054】
さらに、
図14に示す実施例のように、管継手10は、複数のシール部材16を備えることもできる。
図14に示す実施例では、
図12に示す実施例と同様に、蓋14の挿入筒部40の外側面に対して軸方向に並ぶ2つの環状突起50が設けられる。そして、この環状突起50の間に、第2のシール部材16が装着される。このように、複数のシール部材16を備えることによって、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の止水性能がより向上する。
【0055】
続いて、
図15−
図17を参照して、この発明のさらに他の実施例である管継手10について説明する。上述の実施例では、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間に設けられるシール部材16を掃除口部24の径方向に圧縮したが、
図15に示す実施例では、シール部材16を掃除口部24の軸方向に圧縮する。その他の部分の構成については同様であるので、上述の実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0056】
図16に示すように、この実施例では、継手本体12の掃除口部24の内側面には、テーパ面30よりも掃除口部24の基端部24b側の位置において、掃除口部24の軸方向と直交する環状の受け面70が形成される。この実施例では、受け面70は、掃除口部24の内側面に縮径による環状の段差を設けることによって、掃除口部24の周方向全長に亘って形成される。また、掃除口部24の内側面には、受け面70および蓋14の第1壁52よりも掃除口部24の基端部24b側となる位置において、掃除口部24の軸方向と直交する環状の面である第2壁32が形成される。
【0057】
また、
図17に示すように、蓋14の挿入筒部40は、係合突起46よりも挿入方向先端側の位置において縮径されており、挿入筒部40の外側面には、その縮径部において環状の押圧面72が形成される。また、挿入筒部40の外側面には、押圧面72よりも挿入方向先端側の位置において、挿入筒部40の軸方向と直交する環状の面である第1壁52が形成される。
【0058】
図15に示すように、蓋14を掃除口部24に装着するときには、シール部材16は、蓋14の押圧面72と環状突起50との間に形成される溝部に対して取り付けられる。そして、掃除口部24に対して蓋14を装着した状態では、シール部材16は、掃除口部24の受け面70と蓋14の押圧面72との間に挟まれて、掃除口部24の軸方向に圧縮される。これにより、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間がシール部材16によって止水され、この間の水密性が確保される。
【0059】
また、掃除口部24に対して蓋14を装着した状態では、第1壁52と第2壁32とによって、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の隙間60には、掃除口部24の基端部24bからシール部材16に向かう方向において屈曲する非直線部62が形成される。
【0060】
図15に示す実施例においても、
図1に示す実施例と同様に、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の隙間60に非直線部62を形成し、洗浄水を第1壁52で受けることによって減速させるので、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の止水性能が向上する。したがって、バヨネット方式の蓋14であっても、高圧洗浄機を用いて排水管100を洗浄するときの水漏れを防止できる。
【0061】
なお、第1壁52は、環状突起50を設ける代わりに、蓋14の挿入筒部40の外側面に対して縮径による環状の段差を設けることによって形成することもできる。同様に、第2壁32は、掃除口部24の内側面に縮径による段差を設ける代わりに、環状突起を設けることによって形成してもよい。
【0062】
たとえば、
図18に示す実施例は、シール部材16を掃除口部24の軸方向に圧縮するタイプの管継手10であり、挿入筒部40の外側面には、押圧面72よりも挿入方向先端側の位置に、縮径による段差を設けることによって第1壁52が形成される。また、掃除口部24の内側面には、第1壁52と対向する位置において第2壁32が形成される。そして、掃除口部24に対して蓋14を装着した状態では、第1壁52と第2壁32とによって、掃除口部24の内側面と蓋14の外側面との間の隙間60に非直線部62が形成される。
【0063】
また、
図19に示す実施例のように、シール部材16を掃除口部24の軸方向に圧縮するタイプの管継手10においては、掃除口部24の内側面に形成される受け面70と第2壁32とは、軸方向にずらすのではなく、面一に形成することもできる。ただし、
図1−
図18に示す上述の各実施例およびその変形例では、非直線部62が2回以上屈曲するのに対して、
図19に示す実施例では、非直線部62が1回屈曲するだけである。このため、第2壁32がシール部材16の内側縁よりも径方向内側に突出する長さ(つまり第1壁52と第2壁32とが掃除口部24の径方向においてオーバーラップする長さ)h2は、少なくとも1mm以上に設定する必要がある。
【0064】
また、上述の各実施例では、第1壁52および第2壁32を掃除口部24(或いは挿入筒部40)の軸方向に対して直交するように形成しているが、必ずしも直交させる必要はなく、第1壁52および第2壁32の一方または双方は、掃除口部24の軸方向に対して傾斜していてもよい。たとえば、第1壁52を挿入筒部40の外周面に対して鋭角な面とすれば、洗浄水を減速させる効果がより高まる。
【0065】
また、第1壁52と第2壁32とによって形成される非直線部62は、必ずしも屈曲している必要はなく、湾曲していてもよい。
【0066】
さらに、上述の各実施例では、係合溝26および係合突起46を4つずつ設け、それらが上下と左右とで異なる周方向長さを有することで、掃除口部24に対する蓋14の装着向きの間違いを防止するようにしたが、これに限定されない。複数の係合溝26および係合突起46のうち、少なくとも1つの係合溝26の軸方向溝26aおよび係合突起46の周方向長さが異なっていれば、同様の効果を奏する。
【0067】
さらにまた、上述の各実施例では、管継手10を排水管100の縦管部分に組み込んでいるが、管継手10は、排水管100の横管部分、または縦管部分と横管部分との連結部分に組み込むこともできる。
【0068】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。