特許第6182632号(P6182632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6182632ガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6182632
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド
(51)【国際特許分類】
   A62C 31/02 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   A62C31/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-45476(P2016-45476)
(22)【出願日】2016年3月9日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114905
【氏名又は名称】ヤマトプロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 収史
(72)【発明者】
【氏名】三輪田 知佳
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−150820(JP,A)
【文献】 実開昭56−161110(JP,U)
【文献】 特開平07−134588(JP,A)
【文献】 特開昭52−133102(JP,A)
【文献】 特開2015−6620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火ガスの流量を制御するオリフィス部と、多孔質材料または繊維状材料からなり前記オリフィス部の下流側に設けられ消火ガスの放出に伴う騒音を抑制する消音部材と、前記消音部材を保護するための外殻と、を有するガス系消火設備の噴射ヘッドであって、
前記外殻は、消火ガスを通過させ消火対象の空間に放出させるための一つまたは複数の開口部を有しており、
前記消音部材は、内径が異なる複数の筒状部材により構成され、前記複数の筒状部材は、空隙率が等しい材料によって形成され、各筒状部材間の距離が一定に保たれ、
前記外殻は、前記複数の筒状部材のうち最も外側に位置するものよりも外周側に配設され、
前記消音部材を構成する各筒状部材における消火ガスが通過する各開口の断面積を合計した面積は、前記オリフィス部における消火ガスが通過する開口の断面積よりも大きく、
前記外殻における消火ガスが通過する各開口部の断面積を合計した面積は、前記消音部材を構成する各筒状部材における消火ガスが通過する各開口の断面積を合計した面積よりも大きいことを特徴とするガス系消火設備の噴射ヘッド。
【請求項2】
前記外殻が、前記消音部材を構成する複数の筒状部材のうち最も外側に位置するものの消火ガスが噴出する面に接していないことを特徴とする請求項1に記載のガス系消火設備の噴射ヘッド。
【請求項3】
前記消音部材と前記外殻とは円筒形状であり、前記外殻は前記消音部材の消火ガスが噴出する外側面を覆うように配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のガス系消火設備の噴射ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火ガスを使用するガス系消火設備において、消火対象区画内に消火ガスを放出するために天井や壁面等に設置される噴射ヘッドに関し、特に、消火ガスが放出される際に発生する騒音を低減する消音構造を有する噴射ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス系消火設備は、室内において発生した火災を消火するための消火設備であり、日本の消防法では、消火ガスとしてハロンガスを用いるハロゲン化物消火設備と、消火ガスとして二酸化炭素ガスや窒素ガス等を用いる不活性ガス消火設備とに分類される。これらのガス系消火設備は、粉末消火設備や水又は泡消火設備と異なり、消火後に残留する消火剤や消火水による損害等の問題が発生しないため、サーバや大型コンピュータ等の精密機器が存在する室内等に、火災発生時の消火手段として設置されている。
【0003】
ガス系消火設備は、短時間に大量の消火ガスを室内に噴出させることができるものが望ましく、消火ガスの放射速度を制御するためのオリフィス部を有した噴射ヘッドが、最終的なガスの放出口として用いられており、この噴射ヘッドは、消火対象区画内の天井や壁面等に設置される。噴射ヘッドにオリフィス部を備えガス流量を制御することで、消火対象区画内に通常複数個設置される各々の噴射ヘッドから同じ量の消火ガスが継続的に放出されるようになるが、噴射ヘッドから消火剤ガスが高速で放出される際に、高レベルの騒音(具体的には、A特性騒音レベルとして120dB以上の騒音)が発生することが知られている。
【0004】
例えば、サーバは、こうした騒音により動作不良を起こすことが知られており、この動作不良を防止する等のために、消火ガス放出の際の騒音を抑制するための消音構造を備える噴射ヘッドがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−125673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
消音構造を備える噴射ヘッドは、例えば、消火ガスが高速で通過するオリフィス部よりも下流側に、気体が通過可能な多孔質又は繊維状の材料から成る消音部材を設けており、消音部材の内部に消火ガスを通過させ消火ガスを分散させ整流するとともに、その流速を低下させてから消火対象区画内に消火ガスを噴射させることで、騒音の発生を抑えることができる。
【0007】
このような多孔質又は繊維状の材料からなる消音部材は、高い消音効果が実証されているものの、強度的には弱い部材である。したがって、消音部材が露出した状態で噴射ヘッドを設置することは通常あり得ず、常時において物理的接触などで変形したり破壊されたりすることを防ぐために、消音部材は、消火ガスを通過させる開口部を例えばパンチングメタルで形成された外殻に保護された形で、噴射ヘッドのオリフィス部の下流側に担持された状態で設置されている。
【0008】
したがって、噴射ヘッドにおいて、消火ガスは、噴射ヘッドのオリフィス部を通過し、多孔質又は繊維状の材料から成る消音部材を経て、最後に外殻の開口部から放出されることになる。しかし、消火ガスが消音部材を通過し外殻の開口部から放出される際に、消火ガスの流速が大きくなっている場合があり、この場合には消火ガスの放出による騒音の発生を十分に抑制できないという問題があることが、度重なる検証によって明らかとなった。したがって、ガス系消火設備の噴射ヘッドにおいては、噴射ヘッドが物理的接触等に対する耐久性を備えるとともに、消火ガスを放出する際に発生する騒音をより確実に抑制するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、消火ガスの流量を制御するオリフィス部と、多孔質材料または繊維状材料からなり前記オリフィス部の下流側に設けられ消火ガスの放出に伴う騒音を抑制する消音部材と、前記消音部材を保護するための外殻と、を有するガス系消火設備の噴射ヘッドであって、前記外殻は、消火ガスを通過させ消火対象の空間に放出させるための一つまたは複数の開口部を有しており、前記消音部材は、内径が異なる複数の筒状部材により構成され、前記複数の筒状部材は、空隙率が等しい材料によって形成され、各筒状部材間の距離が一定に保たれ、前記外殻は、前記複数の筒状部材のうち最も外側に位置するものよりも外周側に配設され、前記消音部材を構成する各筒状部材における消火ガスが通過する各開口の断面積を合計した面積は、前記オリフィス部における消火ガスが通過する開口の断面積よりも大きく、前記外殻における消火ガスが通過する各開口部の断面積を合計した面積は、前記消音部材を構成する各筒状部材における消火ガスが通過する各開口の断面積を合計した面積よりも大きいことを特徴とするガス系消火設備の噴射ヘッドである。
【0010】
前記外殻は、前記消音部材を構成する複数の筒状部材のうち最も外側に位置するものの消火ガスが噴出する面に接していないと好ましい。
【0011】
前記消音部材と前記外殻とは円筒形状であり、前記外殻は前記消音部材の消火ガスが噴出する外側面を覆うように配置されると好ましい。
【発明の効果】
【0012】
ガス系消火設備におけるガス供給源から供給される消火ガスの流量が一定であるならば、消火ガスが通過する流路の断面積が大きくなると流速は小さくなり、流路の断面積が小さくなると流速は大きくなる。例えば、外殻における消火ガスが通過する各開口部の断面積を合計した面積が、消音部材における消火ガスが通過する各開口の断面積を合計した面積よりも小さい場合においては、消音部材の開口を通過した消火ガスが外殻の開口部を通過する際に、流速が再び大きくなった状態で消火対象の空間へと放出される。このとき、流速の増加により新たに騒音が発生してしまうことになる。しかし、本発明に係るガス系消火設備の噴射ヘッドは、消音部材における消火ガスが通過する各開口の断面積を合計した面積は、オリフィス部における消火ガスが通過する開口の断面積よりも大きく、外殻における消火ガスが通過する各開口部の断面積を合計した面積は、消音部材における消火ガスが通過する各開口の断面積を合計した面積よりも大きいことを特徴としている。したがって、消火ガスが噴射ヘッドに供給されると、消火ガスは、まず、オリフィス部を通過し、その流量が制御され流速が大きくなり、次いで、消音部材の開口を通過する。消音部材の各開口の断面積を合計した面積は、オリフィス部における消火ガスが通過する開口の断面積よりも大きいため、消音部材を通過する際に、消火ガスは分散し整流されるとともに流速が低下し、発生する騒音は大きく低減される。さらに、外殻における消火ガスが通過する各開口部の断面積を合計した面積は、消音部材の各開口の断面積を合計した面積よりも大きいため、消火ガスが外殻の各開口部を通過し消火対象の空間内に放出される際に、消火ガスの流速の増加によって新たに騒音が発生することがなく、より確実に騒音の発生を抑制することができる。すなわち、供給される消火ガスの流速を段階的に小さくし、消火ガスが放出される際に発生する騒音をより確実に抑制することができる。
【0013】
外殻と消音部材の消火ガスが噴出する面とが接していると、外殻の内側面のうち開口部以外の部分が消音部材の各開口部の一部を塞ぐ形になるため、消音部材の消火ガスが通過する各開口の断面積を合計した面積が小さくなり、消音部材における消火ガスの分散、整流、及び流速の低減の観点から見ると逆効果となり、騒音を抑制する効果が低下することになる。しかし、噴射ヘッドにおいて、外殻が、消音部材の消火ガスが噴出する面に接していない構成とすることで、消音部材の各開口の断面積を合計した面積を大きくして騒音を抑制する効果を高めることができる。したがって、噴射ヘッドを小型化しても、騒音抑制効果を十分に発揮できる。
【0014】
また、消音部材と外殻とは円筒形状であり、外殻は消音部材の消火ガスが噴出する外側面を覆うように配置することで、消火ガスを噴射ヘッドの径方向外側に向かって放射状に流れるようにして、より広範囲に消火ガスを効率よく噴射できるようにすることができる。さらに、消音部材と外殻とは円筒形状であることから、外側に配置される外殻の円筒壁面の面積は、内側に配置される消音部材の円筒壁面の面積よりも大きくなるため、外殻の開口率が比較的小さくても、外殻の各開口の断面積の合計を消音部材の各開口の断面積の合計よりも大きく設計しやすくなる。したがって、開口率の少ない、すなわち、より強度的に堅牢な部材を外殻に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】噴射ヘッドの一例を示す正面図であり、一部を破断し拡大して示す正面図である。
図2】噴射ヘッドを示す分解正面図であり、噴射ヘッドの各部品の一部を破断し拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すガス系消火設備に備えられる噴射ヘッド1は、天井や壁に配置され、消火対象区画に消火ガスを噴射する役割を果たすものである。噴射ヘッド1は、消火ガスの流量を制御するオリフィス部120と、多孔質材料または繊維状材料からなりオリフィス部120の下流側(図示の例においては、−Z方向側)に設けられ消火ガスの放出に伴う騒音を抑制する消音部材14と、消音部材14を保護するための外殻16と、を少なくとも備えている。
【0017】
例えば、噴射ヘッド1は、サーバコンピュータ等が存在する室内の天井に配置される。噴射ヘッド1は、例えば、図示しない消火ガス供給源に接続された配管に連通しその内部にオリフィス部120を備えたノズルキャップ12を有している。ノズルキャップ12は、例えば、黄銅等の金属からなり、ノズルキャップ12の上面の中心には、図示しない消火ガス供給源に連通する流入口121が開口しており、流入口121は、ノズルキャップ12の内部に配設されているオリフィス部120に連通している。ノズルキャップ12は、外殻16の上端側に螺着される。
【0018】
オリフィス部120は、その管内の一部分が縮径して形成され消火ガスが通過する開口120aを備えている。開口120aの直径は、例えば、約7mm〜約12.6mm程度であり、その断面積はS1である。
【0019】
本実施形態における噴射ヘッド1においては、例えば、消音部材14は、内径が異なる筒状部材14A、14B及び14Cが三層に重ねられて構成される。図2に示す筒状部材14A、14B及び14Cは、例えば、皆同じ材料、すなわち、金属球体粉Bを溶融点以下の温度で焼き固めた焼結金属等の多孔質材料からなる。多孔質材料からなる筒状部材14A、14B及び14Cは、図2において筒状部材14Cの外側面141の一部を拡大して示すように、金属球体粉B同士が点接触で繋がっており、一定の耐久性を備えると共に、金属球体粉B間の空隙(図2においては、4つの金属球体粉Bで囲まれて形成される空隙)、すなわち、消音部材14における消火ガスが通過する断面積S2の開口140を多数備えている。断面積S2の値は、各金属球体粉B表面の接触位置により、各々僅かな違いがある。
【0020】
なお、筒状部材14A、14B及び14Cは、金属製ウール、合成繊維や天然繊維の繊維状材料、金属製のメッシュ材等から形成されていてもよい。例えば、筒状部材14Cがメッシュ材でできている場合においては、筒状部材14Cにおける消火ガスが通過する開口140の断面積S2は、メッシュ材の編み目1つの面積となる。
【0021】
各筒状部材の内径は、筒状部材14Aが最も小さく、筒状部材14Bは筒状部材14Aよりも大きく、筒状部材14Cが筒状部材14Bよりも大きくなっており、筒状部材14Cの内部に筒状部材14Bが挿入され、筒状部材14Bの内部に筒状部材14Aが挿入された状態となる。なお、例えば、筒状部材14Cにおける消火ガスが通過する各開口140の断面積の合計は、筒状部材14Cの外側面141の面積に焼結金属の空隙率(例えば、30%〜40%程度)を乗じた値であり、例えば、筒状部材14A、14B及び14Cの材料として同じ空隙率を有する同じ焼結金属を使用している場合、各筒状部材の外側面の面積は、筒状部材14Aが最も小さく、筒状部材14Bは筒状部材14Aよりも大きく、筒状部材14Cが筒状部材14Bよりも大きくなるため、各筒状部材の外側面の面積に焼結金属の空隙率を乗じた値である、消音部材14における消火ガスが通過する各開口140の断面積S2を合計した面積S20は、内径の最も小さい筒状部材14Aにおける消火ガスが通過する各開口140の断面積の合計が最も小さく、筒状部材14Bにおける消火ガスが通過する各開口140の断面積の合計は、筒状部材14Aにおける消火ガスが通過する各開口140の断面積の合計よりも大きく、内径の最も大きい筒状部材14Cにおける消火ガスが通過する各開口140の断面積の合計は、筒状部材14Bにおける消火ガスが通過する各開口140の断面積の合計よりも大きくなっている。そして、消音部材14における消火ガスが通過する各開口140の断面積S2を合計した面積S20、すなわち、筒状部材14Aにおける消火ガスが通過する各開口140の断面積の合計、筒状部材14Bにおける消火ガスが通過する各開口140の断面積の合計、及び、筒状部材14Cにおける消火ガスが通過する各開口140の断面積の合計は、いずれもオリフィス部120における消火ガスが通過する開口120aの断面積S1よりも大きい値になっている。
【0022】
図1に示すように、筒状部材14Aと筒状部材14Bとの間には、両端にそれぞれ円環状のOリング145が配設されており、筒状部材14Bと筒状部材14Cとの間には、両端にそれぞれ円環状のOリング146が配設されている。ゴム樹脂等からなるOリング145、146は、各筒状部材間の距離を一定に保つためにそれぞれ配設されている。
【0023】
噴射ヘッド1の下端側には、消音部材14及び外殻16を保持するキャップ15が配設されている。キャップ15は、黄銅等の金属からなり、有底円筒状に形成されている。キャップ15の内壁には、ネジが設けられており、キャップ15は、外殻16の下端側に螺着される。キャップ15の内部には、フッ素樹脂等から構成される円環状のキャップパッキン150が、封止用に配設されている。消音部材14がキャップ15により保持されると、キャップパッキン150が消音部材14の下端に当接した状態となる。
【0024】
図1,2に示す外殻16は、例えば、円筒形状の鋼管であり、その側面には、例えば、円形状であり断面積がS3である開口部160が複数貫通形成されている。各開口部160の断面積S3を合計した面積S30は、消音部材14に形成された各開口140の断面積S2を合計した面積S20、すなわち、筒状部材14Aにおける消火ガスが通過する各開口140の断面積の合計、筒状部材14Bにおける消火ガスが通過する各開口140の断面積の合計、及び、筒状部材14Cにおける消火ガスが通過する各開口140の断面積の合計のいずれよりも大きい値になっており、かつ、オリフィス部120に形成された開口120aの断面積S1よりも大きい値になっている。例えば、外殻16の上端側(+Z方向側)にノズルキャップ12が螺着されると、外郭16の軸芯線上に、オリフィス部120の開口120aの中心が位置する状態となる。
【0025】
噴射ヘッド1を組み立てる手順について、図1、2を用いて以下に説明する。まず、消音部材14が、キャップ15の筒内に配置される。さらに、例えば、消火ガスを噴出する面、すなわち、本実施形態においては、筒状部材14Cの外側面141を覆うように外殻16が配置される。すなわち、外殻16の筒内に消音部材14が挿入された状態で、外殻16の下端側にキャップ15が装着されることで、キャップ15により外殻16及び消音部材14が保持された状態となる。
【0026】
また、本実施形態においては、例えば、外殻16の内径を、消音部材14の外径よりも大きくすることで、噴射ヘッド1が組み立てられた状態において、消音部材14における消火ガスが噴出する面、すなわち、筒状部材14Cの外側面141は、外殻16の内側面には接していない状態になる。
【0027】
さらに、ノズルキャップ12と消音部材14の上端との間に、封止用の円環状のパッキン123、124を挟み込んだ状態で、外殻16の上端側にノズルキャップ12が装着されることで、噴射ヘッド1が組み立てられた状態となる。
【0028】
以下に、図1及び2を用いて、噴射ヘッド1から消火対象区画に消火ガスを噴射する場合における、噴射ヘッド1の動作について説明する。
【0029】
図示しない消火ガス供給源から供給された消火ガスは、ノズルキャップ12の流入口121を通り、オリフィス部120の内部を−Z方向に向かって通過していき開口120aへと到達し、開口120aにおいてその流量が制御される。
【0030】
オリフィス部120の開口120aにおいて流量が制御された消火ガスは、開口120aを通過し、筒状部材14Aの内部に到達する。さらに、消火ガスは、消音部材14の内部において−Z方向に向かって流れていくのと並行して、消音部材14の径方向外側に向かって放射状に広がっていく。すなわち、消火ガスは、筒状部材14Aの側壁の各開口140を通り、次いで、筒状部材14Bの側壁の各開口140を通過して、さらに、筒状部材14Cの外側面141の各開口140を通過して、外殻16の内側面へと放射状に広がっていく。
【0031】
ここで、消音部材14における消火ガスが通過する各開口140の断面積S2を合計した面積S20は、オリフィス部120における消火ガスが通過する開口120aの断面積S1よりも大きいため、オリフィス部120から消音部材14に流れ込んできた消火ガスは、消音部材14を通過する際に、分散し整流されるとともに流速が低下するため、消音部材14を通過する時に発生する騒音も大きく低減される。
【0032】
また、外殻16が、消音部材14の消火ガスが噴出する面に接していない、すなわち、外殻16の内側面が筒状部材14Cの外側面141には接していないため、外殻16と筒状部材14Cの外側面141とが接している場合に比べて、外殻16の内側面によって塞がれる消音部材14の開口140の個数が減る分だけ、消音部材14の各開口140の断面積S2を合計した面積S20が大きくなり、騒音を抑制する効果を向上させることができる。
【0033】
消音部材14を通過した消火ガスは、最終的に、外殻16の各開口部160を通過し消火対象区画の空間内に放出される。ここで、外殻16における消火ガスが通過する各開口部の断面積S3を合計した面積S30は、消音部材14の各開口140の断面積S2を合計した面積S20よりも大きいため、消火ガスが、外殻16の各開口部160を通過し、消火対象区画の空間内に放出される際に、消火ガスの流速の増加による新たな騒音が発生することがない。したがって、噴射ヘッド1においては、より確実に騒音の発生を抑制することができる。
【0034】
なお、本発明に係る噴射ヘッドは上記実施形態に限定されるものではなく、また、添付図面に図示されている各構成の形状等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。例えば、本実施形態の消音部材14は、3つの筒状部材14A、14B及び14Cが3層に重ねられて構成されているが、筒状部材は1つのみでもよいし、2層または4層以上に重ねられていてもよい。
【0035】
消音部材が単層構造である場合は、その消音部材の各開口の断面積の合計が、オリフィス部120の開口120aの断面積S1よりも大きく、外郭16の各開口部160の断面積S3を合計した面積S30よりも小さくなる。また、消音部材が複数層に重ねられて構成されている場合は、消音部材の各層における各開口の断面積の合計は、外側の層ほど、すなわちガスの下流側ほど大きい。この場合においては、最も内側の層の各開口の断面積の合計は、オリフィス部120の開口120aの断面積S1よりも大きい。すなわち、消音部材の各層の各開口の断面積の合計のどれもが、オリフィス部120の開口120aの断面積S1よりも大きい。一方、最も外側の層の各開口の断面積の合計は、外郭16の各開口部160の断面積S3を合計した面積S30よりも小さい。すなわち、消音部材の各層の各開口の断面積の合計のどれもが、外郭16の各開口部160の断面積S3を合計した面積S30よりも小さい。
【符号の説明】
【0036】
1:噴射ヘッド
12:ノズルキャップ 120:オリフィス部 120a:オリフィス部の開口
121:ノズルキャップの流入口 123、124:パッキン
14:消音部材 14A、14B、14C:筒状部材 140:消音部材の開口
141:筒状部材の外側面 B:金属球体粉 145、146:Oリング
15:キャップ 150:キャップパッキン
16:外殻 160:開口部
S1:オリフィス部の開口の断面積 S2:消音部材の開口の断面積
S3:外殻の開口部の断面積
【要約】
【課題】ガス系消火設備の噴射ヘッドにおいて、ガス放出の際に発生する騒音を抑制する。
【解決手段】ガス流量を制御するオリフィス部120と、多孔質材または繊維状材からなりオリフィス部120の下流側に設けられ消火ガス放出に伴う騒音を抑制する消音部材14と、消音部材14を保護する外殻16とを有し、外殻16は消火ガスを通過させる複数の開口部160を有しており、消音部材14におけるガスが通過する各開口140の断面積を合計した面積は、オリフィス部120の開口120aの断面積よりも大きく、外殻16におけるガスが通過する各開口部160の断面積を合計した面積は、オリフィス部120の開口120aの断面積よりも大きく、外殻16におけるガスが通過する各開口部160の断面積を合計した面積は、消音部材14におけるガスが通過する各開口140の断面積を合計した面積よりも大きいガス系消火設備の噴射ヘッド1である。
【選択図】図1
図1
図2