(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6182635
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】多目的貨物船構造
(51)【国際特許分類】
B63B 19/12 20060101AFI20170807BHJP
B63B 19/16 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
B63B19/12 Z
B63B19/16
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-58099(P2016-58099)
(22)【出願日】2016年3月23日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146814
【氏名又は名称】株式会社新来島どっく
(74)【代理人】
【識別番号】100090044
【弁理士】
【氏名又は名称】大滝 均
(72)【発明者】
【氏名】河上 誉昭
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭51−069892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 19/12
B63B 19/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上甲板上のデッキクレーンで船内多層船艙に荷役を行う多層ハッチを有する多目的貨物船において、前記上甲板直下のいくつか又は全部の甲板に幅広船首ハッチ、幅広船腹ハッチ、幅広船尾ハッチ及びそれらのハッチの船側側に船首船側通路、船腹船側通路、船尾船側通路を設け、前記船首船側通路、前記船幅船側通路及び前記船尾船側通路は、前記上甲板はポンツーンハッチカバーが積み上げできない上甲板ハッチサイド幅より狭い通路幅とし、これらの通路に接する前記幅広船首ハッチ、前記幅広船腹ハッチ及び前記幅広船尾ハッチの船幅方向ハッチ幅を上甲板ハッチより幅広にしたことを特徴とする多目的貨物船構造。
【請求項2】
ハッチ幅を幅広した前記ハッチのポンツーンハッチカバーの格納スペースを当該甲板直下の甲板のハッチの前後に配置したこと特徴とする請求項1に記載の多目的貨物船構造。
【請求項3】
前記船側通路は船体幅方向に17%程度であり、幅広にした前記ハッチ幅は、船幅の少なくとも83%以上のハッチ幅であることを特徴とする請求項1に記載の多目的貨物船構造。
【請求項4】
船体幅方向にハッチ幅を広げた前記幅広船首ハッチの船長方向長さが、痩せた船首では小さく、痩せてない船首に対しては大きいことを特徴とする請求項1に記載の多目的貨物船構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多目的用途の多目的一般貨物船の貨物倉内に設けられ、貨物積載デッキとしても用いられる幅広型ポンツーンハッチを有する多目的貨物船構造に関する。
【背景技術】
【0002】
多目的用途の多目的一般貨物船は、大きな荷物から小さなものまであらゆる貨物を積み込まなければならず、このため、下層の貨物倉には。ポンツーンハッチ(以下、単に「ハッチ」ともいう。)と称される大きな開口が設けられ、当該開口を通じてデッキクレーン等で貨物の積み込み積み降ろし(荷役)が行われる。
この種のハッチを有する従来の多目的一般貨物船の概略を図面に基づいて説明する。
【0003】
図4−
図8は、従来の多目的一般貨物船の概略を示す図であり、
図4は、縦断面概略図、
図5は、上甲板概略図、
図6は、第三甲板概略図、
図7は、第二甲板概略図、
図8は、タンクトップ上の第一甲板概略図である。
図4において、符号100は、この種の従来の多目的一般貨物船、101は、上甲板、102は、第三甲板、103は、第二甲板、104は、第一甲板、105は、船底バラストタンク、106は、船首部、107は、船員居住区、108は、機関室、109は、プロペラ、110a−110cは、デッキクレーンである。
図4に示されるように、この種の従来の多目的一般貨物船100は、前記上甲板101の下層の前記バラストタンク105のタンクトップ上に前記第一甲板104が配置され、その上に前記第二甲板103、さらにその上に前記第三甲板102が配置される3層構造の例として示される多目的一般貨物船概略である。
【0004】
また、
図5は、上述するように、当該貨物船の上甲板概略図であり、
図5において、100は、貨物船、111aは、船首ハッチ、111bは、船腹ハッチ、111cは、船尾ハッチ、110a−110cは、前記デッキクレーンである。
この種の従来の多目的一般貨物船100は、
図5に示すように、前記上甲板101には、貨物の積み込み・積み降ろしのためのハッチ(開口)が設けられる。
図5において、符号111a−111cは、前記上甲板101上に開口するハッチである。
【0005】
図5から明らかなように、この種の貨物船においては、前記上甲板101には、貨物の積み込み・積み降ろしを行う前記ハッチ(開口)111a−111cが設けられ、前記デッキクレーン110a−110cで積み込み貨物を吊り上げ、前記ハッチ111a−111cから階下の貨物倉である前記第三甲板102、第二甲板103、第一甲板104上の各貨物倉内に貨物を積み込み・積み降ろしを行う。
【0006】
図4から明らかなように、前記船首ハッチ111aは、他のハッチ111b、111cより船幅方向若干狭く開口する。これは当該部分で船体が細くなるからである。なお、貨物の積み込みが完了した後には、複数枚からなるポンツーンハッチカバー(図示外)によって当該ハッチ111a−111cの開口を覆い、その上に他の積み込み貨物を裁置して航行し、貨物の積み込み・積み降ろしの際は、当該ポンツーンカバー上の貨物を積み降ろした後に、当該ポンツーンハッチカバーを陸上又は上甲板船側に積み重ね裁置する。
【0007】
また、
図6は、上述するように、貨物船100の第三甲板概略図であり、いわば、前記上甲板101直下に位置する第三甲板102の配置概略である。
図6において、112a−112cは、当該第三甲板102に開口する階下の貨物倉のためのハッチであり、112aは、第三甲板船首ハッチ、112bは、第三甲板船腹ハッチ、112cは、第三甲板船尾ハッチである。また、113a、113bは、前記デッキクレーン110b、110c直下に設けられる第三甲板仕切り隔壁であり、符号114a、114bは、前記第三甲板ハッチ112aの船側部に設けられる第三甲板船首船側通路、115a、115bは、前記第三甲板船腹ハッチ112bの船側部に設けられる第三甲板船腹船側通路、116a、116bは、同第三甲板船尾船側通路である。また、117a1−117a10は、前記第三甲板船首ハッチ112aを覆う複数枚からなるポンツーンハッチカバーであり、117b1−117b10は、同第三甲板船腹ハッチ112bを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー、117c1−117c10は、同第三甲板船尾ハッチ112cを覆う複数枚のポンツーンハッチカバーである。
【0008】
また、
図7は、上述するように、貨物船100の第二甲板概略図であり、いわば、前記第三甲板102直下に位置する第二甲板103の配置概略である。
図7において、符号100は貨物船、118aは、第二甲板船首ハッチ、118bは、第二甲板船腹ハッチ、118cは、第二甲板船尾ハッチ、118dは、第二甲板船尾狭隘ハッチであり、119a、119bは、前記第三甲板仕切り隔壁下に設けられる第二甲板仕切隔壁、120a、120bは、前記第二甲板ハッチ118aの船側部に設けられる第二甲板船首船側通路、121a、121bは、前記第二甲板船腹ハッチ118bの船側部に設けられる第二甲板船腹船側通路、122a、122bは、同第二甲板船尾船側通路である。また、123a1−123a9は、前記第二甲板船首ハッチ118aを覆う複数枚からなるポンツーンハッチカバーであり、123b1−123b11は、同第二甲板船腹ハッチ118bを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー、123c1−123c6は、同第二甲板船尾ハッチ118cを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー、123d1−123d4は、前記第二甲板船尾狭隘ハッチ118dを覆う複数枚のポンツーンハッチカバーであり、124は、前記第二甲板船首ハッチ118aの船尾側に配置される第二甲板船首ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース、125a、125bは、前記第二甲板船腹ハッチ118bの前後に配置される第二甲板船腹ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース、126aは、前記第二甲板船尾ハッチ118cの船首側に配置される第二甲板船尾ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース、126bは、前記第二甲板船尾狭隘ハッチ118dの船尾側に配置される第二甲板船尾狭隘ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペースである。
【0009】
図8は、上述する貨物船100の第一甲板概略図であり、前記第二甲板103直下に位置する第一甲板104の配置概略であり、その下には前記船底バラストタンク105が配置される。
図8において、100は貨物船、127は、第一甲板船首貨物倉、128は、第一甲板船腹貨物倉、129は、第一甲板船尾貨物倉、130a、130bは、第一甲板船首船側通路、131a131bは、第一甲板船腹船側通路、132a、132bは、第一甲板船尾船側通路である。
【0010】
図4−
図8に示されるように、この種の3層構造の従来の多目的一般貨物船においては、前記第三甲板102及び前記第二甲板103の開口する各ハッチ112a−112c、118a−118dを介して、直下の貨物倉に貨物を積み込み積み降ろしが行われ、直下の貨物倉への積み込みが完了したら、当該ハッチ112a−112c、118a−118dは、前記ポンツーンハッチカバー117a1−117a10、117b1−117b10、117c1−117c10、123a1−123a9、123b1−123b11、123c1−123c6、123d1−123d4で覆ってしまい、それらの覆われたハッチカバー117a1−117a10、117b1−117b10、117c1−117c10、123a1−123a9、123b1−123b11、123c1−123c6、123d1−123d4の上に貨物を積み込み、積み降ろしの際には、順次、貨物を積み降ろしたハッチのハッチカバーを取り除いて、階下の貨物の積み降ろしを行うようにしていた。また、各ハッチ112a−112c、118a−118dをハッチカバー117a1−117a10、117b1−117b10、117c1−117c10、123a1−123a9、123b1−123b11、123c1−123c6、123d1−123d4で覆ってしまい、それらの覆われたハッチカバー117a1−117a10、117b1−117b10、117c1−117c10、123a1−123a9、123b1−123b11、123c1−123c6、123d1−123d4で覆うことのない場合には、当該ハッチカバーを陸上に積み上げたり、前記第二甲板船首ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース124、第二甲板船腹ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース125a、125b、第二甲板船尾ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース126a、第二甲板船尾狭隘ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース126bに積み上げて荷役の邪魔にならないようにしていた。
【0011】
すなわち、前記第一甲板(タンクトップ)104に貨物を積載する時は、前記上甲板101の前記ハッチ111a−111c及び前記第二甲板103、第三甲板102等のハッチ112a−112c、118a−118dを開口し、前記デッキクレーン110a−110c等で貨物を積み降ろしするが、この種の多目的貨物船100においては、一般的に、
図6に示すように、前記上甲板101のハッチ111a−111cの開口幅と前記第二甲板103、第三甲板102等のハッチ112a−112c、118a−118dの開口幅は、ほぼ同じとなっている。
【0012】
これでは、前記第二甲板103、第三甲板102等のハッチ112a−112c、118a−118dの開口幅を広げても、前記デッキクレーン110a−110cで吊った貨物を前記第二甲板103、第三甲板102の非開口部(固定デッキ部)に下ろせない。
図9は、前記第二甲板103の船幅方向に長尺貨物(パイプ、レール等)を積み込もうとすると、前記第三甲板102の幅が狭くて荷役が阻害される状態を示す概略図であり、
図9において、符号135は、パイプ、レール等の長尺貨物である。
【0013】
図9に示すように、前記第二甲板103、第三甲板102に長尺貨物(パイプ、レール等)135を船幅方向に積載する場合、以下のような問題があった。
(1)第二甲板103上に長尺貨物135を横方向に段積みする場合があるが、貨物が長すぎると第三甲板102の固定デッキ部が邪魔になり、第三甲板102より上に貨物が積めなくなる。
(2)前記第二甲板103に十分な強度があったとしても、前記第三甲板102の固定デッキ部が邪魔になり、前記上甲板101まで連続した積み上げができない。この結果、積載量の減少を招くこととなる。
【0014】
(3)長尺貨物135を積み込むには、前記第二甲板103に積み込み可能な貨物をある程度積み上げ、前記第三甲板102の前記ハッチ112a−112cを前記ポンツーンカバー117a1−117a10、117b1−117b10、117c1−117c10で覆って、前記ハッチ112a−112cを閉めて改めて前記第三甲板102に長尺貨物135を積み上げなければならず、荷役作業効率が良くない。
(4)さらに、前記第二甲板103への長尺貨物135の積み込みに際して、長尺貨物135を一端船首方向にふってから、艙内で船幅方向に戻すことも考えられるが、長尺貨物135は、第二甲板103の艙内にびっしりと積載されるため、第二甲板103の艙内で船首方向にふり、その後船幅方向に戻すような作業は難しいし、また、そのような作業を強いられること自体が荷役作業効率を悪化させることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2013−166516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、上記問題を解決するために、多目的貨物船の上甲板直下の、例えば、第三甲板のポンツーンハッチの幅を広げ、長尺貨物を船幅方向でも直接荷役可能とした多目的貨物船構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本願請求項1に係る発明は、上甲板上のデッキクレーンで船内多層船艙に荷役を行う多層ハッチを有する多目的貨物船において、前記上甲板直下の
いくつか又は全部の甲板
に幅広船首ハッチ、幅広船腹ハッチ、幅広船尾ハッチ及びそれらのハッチの船側側に船首船側通路、船腹船側通路、船尾船側通路を設け、前記船首船側通路、前記船幅船側通路及び前記船尾船側通路は、前記上甲板はポンツーンハッチカバーが積み上げできない上甲板ハッチサイド幅より狭い通路幅とし、これらの通路に接する前記幅広船首ハッチ、前記幅広船腹ハッチ及び前記幅広船尾ハッチの船幅方向ハッチ幅を上甲板ハッチより幅広にしたことを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の多目的貨物船構造において、ハッチ幅を幅広した前記ハッチのポンツーンハッチカバーの格納スペースを当該甲板直下の甲板のハッチの前後に配置したこと特徴とする。
さらに、本願請求項3に係る発明は、前記請求項1に記載の多目的貨物船構造において、
前記船側通路は船体幅方向に17%程度であり、幅広にした前記ハッチ幅は、船幅の少なくとも83%以上のハッチ幅であることを特徴とする。
そして、本願請求項4に係る発明は、前記請求項1に記載の多目的貨物船構造において、
船体幅方向にハッチ幅を広げた前記幅広船首ハッチの船長方向長さが、痩せた船首では小さく、痩せてない船首に対しては大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記の構成としたので、第二甲板、第三甲板を有する多層の多目的貨物船において、第三甲板の開口幅を広くしたので、長すぎるために横積みできなかった長尺貨物を第二甲板上から上甲板裏まで積み込むことができ、また、貨物積戴量を増やすことができる多目的貨物船構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る多目的貨物船構造を実施するための形態である多目的貨物船構造の実施例1を示す図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係る多目的貨物船の第三甲板102の船幅方向に幅広な前記第三甲板幅広船首ハッチ3b、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3c、第三甲板幅広船尾ハッチ3dを設けることによって、前記第二甲板103の船幅方向に長尺貨物(パイプ、レール等)135を積み込む際にも荷役が阻害されない状態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、上甲板101、第三甲板102、第二甲板103、第一甲板104を有する本実施例1に係る3層構造多目的貨物船の第二甲板概略図である。
【
図4】
図4は、従来の多目的一般貨物船の縦断面概略図である。
【
図8】
図8は、同タンクトップ上の第一甲板概略図である。
【
図9】
図9は、前記第二甲板103の船幅方向に長尺貨物(パイプ、レール等)を積み込もうとすると、前記第三甲板102の開口幅が狭くて荷役が阻害される状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る多目的貨物船構造を実施するための形態の一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明に係る多目的貨物船構造を実施するための形態である多目的貨物船構造の実施例1を示す図であり、前述の
図6に相当する。すなわち、
図1は、本発明に係る3層構造多目的貨物船の第三甲板概略図であり、従来の多目的貨物船100と同様に、上甲板101、第三甲板102、第二甲板103、第一甲板104を有する構造の多目的貨物船を前提として説明する。
図1において、符号102は、本実施例1に係る多目的貨物船の第三甲板であり、3a−3dは、当該第三甲板102に開口する階下の貨物倉のためのハッチであり、3aは、第三甲板船首狭隘ハッチ、3bは、第三甲板幅広船首ハッチ、3cは、第三甲板幅広船腹ハッチ、3dは、第三甲板幅広船尾ハッチである。
【0022】
また、符号4aは、第三甲板船首狭隘船側通路、4bは、第三甲板船首船側通路、4cは、第三甲板船腹船側通路、4dは、第三甲板船尾船側通路であり、それぞれ、前記第三甲板船首狭隘ハッチ3a、前記第三甲板幅広船首ハッチ3b、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3c、第三甲板幅広船尾ハッチ3dの船側側に配置される。さらに、符号5a、5bは、前記デッキクレーン110b、110c直下に設けられる第三甲板仕切り隔壁であり、7a1−7a5は、前記第三甲板船首狭隘ハッチ3aを覆う複数枚からなるポンツーンハッチカバーであり、7b1−7b5は、同第三甲板幅広船首ハッチ3bを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー、7c1−7c10は、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3cを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー、7d1−7d10は、同第三甲板幅広船尾ハッチ3dを覆う複数枚のポンツーンハッチカバーである。
【0023】
図1から明らかなように、本実施例1に係る多目的貨物船の第三甲板102は、従来の第三甲板102上のハッチ111a−111cより船幅方向に幅広な前記第三甲板幅広船首ハッチ3b、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3c、第三甲板幅広船尾ハッチ3dが配置される。そして、これらの第三甲板幅広船首ハッチ3b、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3c、第三甲板幅広船尾ハッチ3dに対しては、上甲板101上の前記デッキクレーン110a−110cを使用して、前記上甲板101上のハッチを通じて荷役が行われる。
【0024】
また、前記第三甲板船首狭隘ハッチ3aは、従来の船首ハッチ111aと同じ船体幅方向の幅を有するハッチ幅であるが、当該第三甲板船首狭隘ハッチ3aと従来より船体幅方向にハッチ幅を広げた前記第三甲板幅広船首ハッチ3bが、船長方向でどこで区切されるかは、本実施例1に係る多目的貨物船の船首部の狭まり具合によって定まる。すなわち、痩せた船首に対しては、前記第三甲板幅広船首ハッチ3bに対し、前記第三甲板船首狭隘ハッチ3aの船長方向の長さが大きくなると言えるし、逆に,痩せてない船首に対しては、前記第三甲板幅広船首ハッチ3bの船長方向の長さが大きくなる。
【0025】
本実施例1に係る多目的貨物船の第三甲板102の船幅方向に幅広な前記第三甲板幅広船首ハッチ3b、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3c、第三甲板幅広船尾ハッチ3dについての船体幅方向の幅広度は、積載する長尺貨物の種類によって定まるようにする。すなわち、船主との協議により定まる想定貨物の長さにより、調整は可能であるが、荷役作業効率や荷役時にはこれまで上甲板101のハッチサイドに積み上げてきたポンツーンハッチカバーについて、その長さが長くなることによりハッチサイドに積み上げができなくなること等を考慮すると、前記第三甲板船首船側通路4b、第三甲板船腹船側通路4c、第三甲板船尾船側通路4dを船体幅方向に17%程度を確保すれば十分であり、これらの幅広に形成される前記第三甲板幅広船首ハッチ3b、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3c、第三甲板幅広船尾ハッチ3dのハッチ幅は、船体幅に対し83%以上まで広くできるものと考えられる。すなわち、例えば、本願出願人会社の2万DWT型実績船では船幅24.0mにおいて、前記上甲板101のハッチ幅は15.0m(62.5%)であるのに対し、前記第三甲板102の前記第三甲板幅広船首ハッチ3b、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3c、第三甲板幅広船尾ハッチ3dのハッチ幅は20.0m(83.3%)とし、これは、強度的にも十分であり、かつ、荷役の容易な使いやすい貨物船とすることができる。さらには、一般的なこの種の3層構造多目的貨物船(Cb(方形係数):0.7〜0.9)程度の船の船体幅30mに対し、25m以上のハッチ幅を有することとすれば、長尺貨物である25m長さのパイプやレール類を船体横方向に積載することができる。
【0026】
図2は、実施例1に係る多目的貨物船の第三甲板102の船幅方向に幅広な前記第三甲板幅広船首ハッチ3b、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3c、第三甲板幅広船尾ハッチ3dを設けることによって、前記第二甲板103の船幅方向に長尺貨物(パイプ、レール等)135を積み込む際にも荷役が阻害されない状態を示す概略図であり、前述する
図9に相当するものである。
【0027】
なお、本実施例1に係る多目的貨物船構造においては、3層からなる多目的貨物船において、第三甲板102に開口する前記第三甲板幅広船首ハッチ3b、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3c、第三甲板幅広船尾ハッチ3dを幅広に構成したが、これは、第三甲板102に限るものではなく、その下の第二甲板103に開口するハッチであっても良い。あるいは、第三甲板102のみでなく、第三甲板102及び第二甲板103の双方の甲板について、開口するハッチを幅広の構成にしても良い。要は、前記上甲板101の直下の第三甲板102や、その直下の第二甲板103に開口するハッチ、前記デッキクレーン110a−110cで吊り下げ、船内で長尺貨物を回転させることができるならば、3層構造の多目的貨物船に限らず、4層、5層構造の多目的貨物船の上甲板101下のいくつかの甲板に開口するハッチを幅広に構成してもよいものである。
【0028】
さらに、
図1及び
図2から明らかなように、船幅方向に幅広な前記第三甲板幅広船首ハッチ3b、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3c、第三甲板幅広船尾ハッチ3dを設けたことに伴い、本実施例1に係る多目的貨物船に使用される前記第三甲板幅広船首ハッチ3bを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー7b1−7b5や前記第三甲板幅広船腹ハッチ3cを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー7c1−7c10、同第三甲板幅広船尾ハッチ3dを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー7d1−7d10は、これに対応して長さの長いポンツーンハッチカバーとしている。
【0029】
すなわち、前記第三甲板幅広船首ハッチ3b、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3c、第三甲板幅広船尾ハッチ3dを船長方向に並べて覆うことができる前記第三甲板幅広船首ハッチ3b、前記第三甲板幅広船腹ハッチ3c、第三甲板幅広船尾ハッチ3dのハッチ幅より長いポンツーンハッチカバーとし、その材質は、従来のポンツーンハッチカバーと同様の鋼板溶接型のポンツーンハッチカバーとしている。
【0030】
図3は、上甲板101、第三甲板102、第二甲板103、第一甲板104を有する本実施例1に係る3層構造多目的貨物船の第二甲板概略図であり、前述の
図7に相当する。
図3において、符号103は、本実施例1に係る3層構造多目的貨物船の第二甲板であり、前述するように、前記第三甲板102の直下に位置する。また、8aは、第二甲板船首ハッチ、8bは、第二甲板船腹ハッチ、8cは、第二甲板船尾ハッチ、8dは、第二甲板船尾狭隘ハッチであり、9a、9bは、前記第三甲板仕切り隔壁下に設けられる第二甲板仕切隔壁、10a、10bは、前記第二甲板ハッチ8aの船側部に設けられる第二甲板船首船側通路、11a、11bは、前記第二甲板船腹ハッチ8bの船側部に設けられる第二甲板船腹船側通路、12a、12bは、同第二甲板船尾船側通路であり、13a1−13a10は、前記第二甲板船首ハッチ8aを覆う複数枚からなるポンツーンハッチカバーであり、13b1−13b11は、同第二甲板船腹ハッチ8bを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー、13c1−13c6は、同第二甲板船尾ハッチ8cを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー、13d1−13d4は、前記第二甲板船尾狭隘ハッチ8dを覆う複数枚のポンツーンハッチカバーである。
【0031】
また、14は、前記第二甲板船首ハッチ8aの船尾側に配置される第二甲板船首ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース、15a、15bは、前記第二甲板船腹ハッチ8bの船首側及び船尾側に配置される第二甲板船腹ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース、16aは、前記第二甲板船尾ハッチ8cの船首側に配置される第二甲板船尾ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース、16bは、前記第二甲板船尾狭隘ハッチ8dの船尾側に配置される第二甲板船尾狭隘ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペースである。
【0032】
本実施例1に係る多目的貨物船構造を始めとして、ポンツーンハッチカバーで前記ハッチ3a−3dを塞いでしまえば、貨物倉内に貨物を置くための可搬式デッキとして機能することができるものであるが、前記第二甲板103、第三甲板102が多層に渡るとそれだけポンツーンハッチカバーの枚数が増えることとなり、また、前記第二甲板103、第三甲板102は開口状態で荷役することとなるため、ポンツーンハッチカバーの格納場所(仮置き揚所)も複数枚分が必要となる。
【0033】
そこで、本実施例1に係る多目的貨物船構造においては、荷役の際に、前記第三甲板幅広船首ハッチ3bを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー7b1−7b5や前記第三甲板幅広船腹ハッチ3cを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー7c1−7c10、同第三甲板幅広船尾ハッチ3dを覆う複数枚のポンツーンハッチカバー7d1−7d10を陸揚げしておくか、又は本船内の適当な場所に格納しておくようにして、前記第二甲板103から上甲板101まで第三甲板102という障害物をなくして積み上げを容易にするようにした。
【0034】
すなわち、
図3に示すように、前記第二甲板103に前記第二甲板船首ハッチ8aの船尾側に配置される第二甲板船首ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース14及び前記第二甲板船腹ハッチ8bの船首側及び船尾側に配置される第二甲板船腹ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース15a、15b、前記第二甲板船尾ハッチ8cの船首側に配置される第二甲板船尾ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース16aを設け、長尺貨物135の荷役作業中には、これらのポンツーンハッチカバー裁置スペース14,15a、15b、16aのポンツーンハッチカバー7b1−7b5、7c1−7c10、7d1−7d10を積み上げておけば、長尺貨物135を含む荷役作業に前記第三甲板102が荷役の障害とならないこととなる。
【0035】
なお、本実施例1に係る多目的貨物船構造においては、前記第三甲板102のポンツーンハッチカバーもその下の前記第二甲板103に配置される前記ポンツーンハッチカバー裁置スペース14,15a、15b、16aに段積みすることが可能となっている。
これらのポンツーンハッチカバー裁置スペース14,15a、15b、16aは、幅広のハッチ3b−3dに対応する長さの長いポンツーンハッチカバーの裁置を可能とする幅と長さを有する裁置スペースとなる。
【0036】
なお、これらの長さの長いポンツーンハッチカバー7b1−7b5、7c1−7c10、7d1−7d10についても、移動方法は、前記上甲板101に設けた前記デッキクレーン110a−110c又はデリック(図示外)さらには、前記上甲板101裏に設置した電動トロリホイスト(図示外)にて陸上又は前記裁置スペース14,15a、15b、16a等適当な格納場所に移動するようにする。
そして、前述するように3層構造の多目的貨物船に限らず、4層、5層構造の多目的貨物船の上甲板101下のいくつかの甲板に開口するハッチを幅広に構成した場合には、最下層の幅広ハッチを設けた甲板の下に位置する甲板に開口するハッチの前後にポンツーンハッチカバー裁置スペースを設けるようにしても良いものである。
【0037】
本実施例1に係る多目的貨物船構造においては、上記のような構造としたので、前記第二甲板103上に長尺貨物135を横方向に段積みする場合であっても、貨物が長すぎるて前記第三甲板102の固定デッキ部が邪魔になり、当該第三甲板102より上の貨物艙に長尺の貨物が積めなくなるということがなくなる。このことは、前記第二甲板103に十分な強度があったとしても、前記上甲板101まで貨物を連続して積み上げることができないなどということはなくなり、この結果、積載量の増加に繋がることとなる。
【0038】
すなわち、長すぎるために横積みできなかった長尺貨物135を前記第二甲板103上から上甲板101裏まで積めることになり貨物積戴量を増やすことができるメリットがある。また、長尺貨物135を積み込むには、前記第二甲板103に積み込み可能な貨物をある程度積み上げ、前記第三甲板102の前記ハッチ3b−3dをポンツーンカバーで覆って、前記ハッチを閉めた後、改めて前記第三甲板102に長尺貨物135を積み上げるというような作業を経ることなく行うことができ、荷役作業効率が向上することとなる。さらに、前記第二甲板103に長尺貨物135を積み込む際であっても、従来の狭いハッチ幅の場合の長尺貨物135を前記第二甲板103の貨物艙内に吊り降ろした後、一端長尺貨物を船首方向にふってから、艙内で再び船幅方向に戻すなどという面倒な作業は必要なくなり、特に、第二甲板103の艙内に貨物がびっしりと積載された場合など、第二甲板103の艙内で長尺貨物を船首方向にふり廻す余地のない場合などには、そのような難しい作業を回避でき、この面でも荷役作業効率が向上することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、多目的用途の多目的一般貨物船の貨物倉内に設けられ、貨物積載デッキとしても用いられる幅広型ポンツーンハッチを有する多目的貨物船構造に利用される。
【符号の説明】
【0040】
3a 第三甲板船首狭隘ハッチ
3b 第三甲板幅広船首ハッチ
3c 第三甲板幅広船腹ハッチ
3d 第三甲板幅広船尾ハッチ
4a 第三甲板船首狭隘船側通路
4b 第三甲板船首船側通路
4c 第三甲板船腹船側通路
4d 第三甲板船尾船側通路
5a、5b 第三甲板仕切り隔壁
7b1 ポンツーンハッチカバー
7c1 ポンツーンハッチカバー
7d1 ポンツーンハッチカバー
8a 第二甲板船首ハッチ
8b 第二甲板船腹ハッチ
8c 第二甲板船尾ハッチ
8d 第二甲板船尾狭隘ハッチ
14 第二甲板船首ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース
15a、15b 第二甲板船腹ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース
16a、16b 第二甲板船尾ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース
100 多目的一般貨物船
101 上甲板
102 第三甲板
103 第二甲板
104 第一甲板(タンクトップ)
105 船底バラストタンク
110a−110c デッキクレーン
111a 船首ハッチ
111b 船腹ハッチ
111c 船尾ハッチ
112a 第三甲板船首ハッチ
112b 第三甲板船腹ハッチ
112c 第三甲板船尾ハッチ
113a、113b 第三甲板仕切り隔壁
114a、114b 第三甲板船首船側通路
115a、115b 第三甲板船腹船側通路
116a、116b 第三甲板船尾船側通路
117a1−117a10 ポンツーンハッチカバー
117b1−117b10 ポンツーンハッチカバー
117c1−117c10 ポンツーンハッチカバー
118a 第二甲板船首ハッチ
118b 第二甲板船腹ハッチ
118c 第二甲板船尾ハッチ
118d 第二甲板船尾狭隘ハッチ
119a、119b 第二甲板仕切隔壁
120a、120b 第二甲板船首船側通路
121a、121b 第二甲板船腹船側通路
122a、122b 第二甲板船尾船側通路
123a1−123a9 ポンツーンハッチカバー
123b1−123b11 ポンツーンハッチカバー
123c1−123c6 ポンツーンハッチカバー
123d1−123d4 ポンツーンハッチカバー
124 第二甲板船首ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース
125a、125b 第二甲板船腹ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース
126a 第二甲板船尾ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース
126b 第二甲板船尾狭隘ハッチポンツーンハッチカバー裁置スペース
135 長尺貨物
【要約】 (修正有)
【課題】多目的貨物船の上甲板直下の、例えば、第三甲板のポンツーンハッチの幅を広げ、長尺貨物を船幅方向でも直接荷役可能とした多目的貨物船構造を提供する。
【解決手段】上甲板101上のデッキクレーン100a〜100cで、船内多層船艙に荷役を行う多層ハッチを有する多目的貨物船の多目的貨物船構造において、前記上甲板直下の甲板の船幅方向ハッチ幅を上甲板ハッチより幅広にした。
【選択図】
図4