(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
全体としての帯電防止性能は、JIS L 1094の測定法に準拠する方法で測定されたときに、1kV以下の帯電圧を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱プレス用緩衝材。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材は、織布または不織布から構成されている繊維質層と、前記繊維質層の繊維の表面に沿って存在している第1のポリマー系帯電防止材とを備える1層以上の基材層、並びに前記基材層の一方の主面上に最外層として存在している第2のポリマー系帯電防止材、および前記基材層の他方の主面上に最外層として存在している第3のポリマー系帯電防止材を備える。
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0012】
図1は、実施形態に従う熱プレス用緩衝材の1例を示す断面図である。熱プレス用緩衝材10は、絡み合う複数の繊維2から構成されている繊維質層1を備える。この繊維2の表面に沿って、ポリマー系帯電防止材3が存在している。これらの繊維質層1とポリマー系帯電防止材3により、基材層4が構成されている。ポリマー系帯電防止材3は、それぞれポリマー系材料とこれに分散している帯電防止材3cとを含む。ポリマー系帯電防止材15は、上述した基材層4の一方の主面上の全面を覆うようにして、おおよそ平らな表面を有して存在している。ポリマー系帯電防止材16は、上述した基材層4の他方の主面上の全面を覆うようにして、おおよそ平らな表面を有して存在している。この実施形態では、ポリマー系帯電防止材15は、ポリマー系材料と、これに分散している帯電防止材15cとを含み、ポリマー系帯電防止材16は、ポリマー系材料と、これに分散している帯電防止材16cとを含む。
【0013】
この実施形態において、繊維2の表面に沿って存在するポリマー系帯電防止材3が、上述の第1のポリマー系帯電防止材に対応する。基材層4の一方の主面上に存在しているポリマー系帯電防止材15が、上述の第2のポリマー系帯電防止材に対応する。基材層4の他方の主面上に存在しているポリマー系帯電防止材16が、上述の第3のポリマー系帯電防止材に対応する。
【0014】
このような構成により、熱プレス用緩衝材10は、繊維質層1と、繊維質層1の繊維2の表面に沿って存在するポリマー系帯電防止材3とを含む基材層4、基材層4上に存在し、
図1中の基材層4の上に示されている最外層を提供するポリマー系帯電防止材15および
図1中の基材層4の下に示されている最外層を提供するポリマー系帯電防止材16を備える。
【0015】
繊維質層1は、熱プレス用緩衝材としての用途に充分な量の繊維質を含み得る。繊維質は、例えば、少なくとも1本の繊維を含む。例えば、繊維質は、1本の繊維から構成されてもよく、2本以上の繊維から構成されてもよい。例えば、繊維質層1は、織布若しくは不織布、またはこれらの組み合わせであり得る。例えば、繊維質層1が織布である場合、その織り方は、平織、綾織り、朱子織またはこれらの多重織のいずれであってもよいが、これらに限定されるものではない。繊維質層1の1層の厚さは、0.05mm〜5.0mmの範囲であってもよく、例えば、0.3mm〜4.0mmの範囲であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0016】
熱プレス用緩衝材10は、少なくとも1層の繊維質層を含み得る。例えば、熱プレス用緩衝材10は、少なくとも1層の繊維質層からなっていてもよく、複数の繊維質層を含んでいてもよく、例えば、複数の繊維質層の重ね合わせであってもよい。
【0017】
繊維2の形状は、例えば、フィラメント糸状であってもよく、スパン糸状であってもよい。例えば、繊維質層に含まれる繊維は、フィラメント糸状の繊維のみであってもよく、スパン糸状の繊維のみであってもよく、フィラメント糸状の繊維とスパン糸状の繊維が混在してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0018】
繊維2の太さまたは幅は、例えば、1μmから100μmの範囲であってもよい。
【0019】
繊維質層1に含まれる繊維2は、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維およびポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維、並びにこれらの2種類以上の組み合わせなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0020】
ポリマー系帯電防止材3は、例えば、繊維2の表面をコーティングするように存在してもよい。
【0021】
上述のポリマー系帯電防止材3,15,16は、帯電防止性能を有している部材であり、これにより熱プレス用緩衝材10は、帯電防止性能を与えられている。言い換えると、ポリマー系帯電防止材3,15,16は、帯電を防止するように構成並びに配合されたポリマー系の部材であり得る。
【0022】
帯電防止性能とは、静電気などの帯電により、それ自身に対して、ほこりや塵などの異物が付着する性質が低い性能をいう。言い換えると、このような帯電防止性能を有する物質は、帯電しにくく、結果として異物の付着を防止する。例えば、帯電防止性能は、帯電圧で表され得る。帯電圧は、例えばJIS L 1094の半減期測定法に準拠して得られる初期帯電圧であり得る。
【0023】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材に含まれた状態にあるポリマー系帯電防止材の帯電防止性能の程度は、JIS L 1094の半減期測定法に準拠して得られる帯電圧として表すと、より低い方がより好ましく、例えば、1kV以下または0.5kV以下であり得る。言い換えると、実施形態に従う熱プレス用緩衝材の全体としての帯電防止性能は、JIS L 1094の測定法に準拠する方法で測定される帯電圧として表される。
【0024】
JIS L 1094の半減期測定法に準拠して得られる帯電圧が1kV以下の帯電防止性能を有する熱プレス用緩衝材は、例えば、熱プレス用緩衝材への異物付着を抑制し得る。例えば、JIS L 1094の半減期測定法に準拠して得られる帯電圧が0.5kV以下の帯電防止性能を有する熱プレス用緩衝材は、それ自身への異物付着をさらに抑制し得る。
【0025】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材の所望の帯電防止性能は、例えば、熱プレス用緩衝材に含まれるポリマー系帯電防止材の含有量、またはポリマー系帯電防止材に含まれる帯電防止材の種類、含有量若しくは組み合わせなどを調節して達成され得る。
【0026】
ポリマー系帯電防止材は、例えば、上述のような帯電防止材とポリマー系材料との組合せであってもよく、或いはそれ自身が帯電防止性能を有するポリマー系材料であってもよい。例えば、ポリマー系帯電防止材が、帯電防止材とポリマー系材料との組合せである場合、帯電防止材は、ポリマー系材料中に分散され得る。第1、第2および第3のポリマー系帯電防止材は、例えば、互いに同じ部材であってもよく、互いに異なる部材であってもよく、または任意の2つが互いに同じ部材であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0027】
ポリマー系材料は、例えば、熱プレス加工や熱圧着などの温度に対しての耐熱性を有するポリマーであり得る。例えば、ポリマー系材料は、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、フッ素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂若しくはポリウレタン樹脂、またはこれらのいずれか2種類以上の組み合わせなどであってもよい。
【0028】
帯電防止材3cは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛若しくは酸化鉄粉末などの金属酸化物、カーボン粉末、またはこれらのいずれか2種類以上の組み合わせなどであり得る。
【0029】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材10に含まれた状態にある第2および第3のポリマー系帯電防止材15,16の厚さは、基材層の主面の凹凸によって、若干のばらつきがある。例えば、実施形態に従う熱プレス用緩衝材に含まれた状態にある第2および第3のポリマー系帯電防止材は、0.1μm以上、1000μm以下の厚さを有する最外層として存在し得るが、これらに限定されるものではない。0.1μm未満の厚さの第2および第3のポリマー系帯電防止材を有する熱プレス用緩衝材の場合、熱プレス加工や熱圧着の用途に充分な耐摩耗性を得られないことがある。
【0030】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材10は、例えば、以下のようにして製造され得る。
【0031】
熱プレス用緩衝材10の材料として、ポリマー系材料、帯電防止材および繊維質層を準備する。
【0032】
最初に、種々のポリマー系材料に帯電防止材をそれぞれ添加し分散させ、ポリマー系帯電防止材3,15,16を調製する。次に、ポリマー系帯電防止材3に溶剤を加えて粘度を調整し、それを繊維質層1に含浸させる。続いて、それを乾燥させて、基材層4を得る。基材層4の一方の主面上には、ポリマー系帯電防止材15を塗布し、基材層4の他方の主面上には、ポリマー系帯電防止材16を塗布する。乾燥後、さらに熱処理を行い、端部を切断して、熱プレス用緩衝材10を得る。
【0033】
このような実施形態において、熱プレス用緩衝材10は、以下のような効果を有し得る。
【0034】
熱プレス用緩衝材10は、直接にまたは間接にプレス対象物と接触する側と、直接にまたは間接に熱プレス盤と接触する側との両方に、ポリマー系帯電防止材15,16が存在している。そのため、熱プレス用緩衝材10は、自身の接触面からの繊維の解れなどによる発塵、および接触面への異物の付着を抑えることができ、プレス対象物に対して均一に圧力を伝達することができる。
【0035】
さらに熱プレス用緩衝材10は、基材層中にもポリマー系帯電防止材3が存在しているため、切断したところからの繊維の解れを抑えることができる。
【0036】
図2は、さらなる実施形態に従う熱プレス用緩衝材の1例を示す断面図である。熱プレス用緩衝材20は、上述した熱プレス用緩衝材10の第2および第3のポリマー系帯電防止材15,16のかわりに、フィルム状帯電防止性ポリマー25,26を備える。フィルム状帯電防止性ポリマー25は、上述した基材層4の一方の主面のおおよそ平らな表面を覆うように存在している。フィルム状帯電防止性ポリマー26は、上述した基材層4の他方の主面のおおよそ平らな表面を覆うように存在している。
【0037】
この実施形態において、繊維2の表面に沿って存在するポリマー系帯電防止材3が、上述の第1のポリマー系帯電防止材に対応する。基材層4の一方の主面上のフィルム状帯電防止性ポリマー25が、上述の第2のポリマー系帯電防止材に対応する。基材層4の他方の主面上のフィルム状帯電防止性ポリマー26が、上述の第3のポリマー系帯電防止材に対応する。
【0038】
このような構成により、熱プレス用緩衝材20は、繊維質層1と、繊維質層1の繊維2の表面に沿って存在するポリマー系帯電防止材3とを含む基材層4、基材層4上に存在し、
図2中の基材層4の上に示されている最外層を提供するフィルム状帯電防止性ポリマー25および
図2中の基材層4の下に示されている最外層を提供するフィルム状帯電防止性ポリマー26を備える。
【0039】
第2および第3のポリマー系帯電防止材は、例えば、帯電防止材が分散しているポリマーであってもよく、フィルム状帯電防止性ポリマーであってもよい。例えば、フィルム状帯電防止性ポリマーは、帯電防止材を含むポリイミドフィルムであってもよく、帯電防止材を含むフッ素樹脂フィルムであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0040】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材20は、例えば、上述の基材層4をベースとして用いて、以下のようにして製造され得る。
【0041】
熱プレス用緩衝材20の材料として、ポリマー系材料、帯電防止材、繊維質層およびフィルム状帯電防止性ポリマーを準備する。
【0042】
最初に、上述通り基材層4を形成する。基材層4の一方の主面上にはフィルム状帯電防止性ポリマー25を接着し、基材層4の他方の主面上には、フィルム状帯電防止性ポリマー26を接着する。続いて熱処理を行い一体化させ、端部を切断して、熱プレス用緩衝材20を得る。
【0043】
例えば、フィルム状帯電防止性ポリマーとポリマー系帯電防止材とを接着するときは、フィルム状帯電防止性ポリマーとの接着面にあるポリマー系帯電防止材が凝固する前に配置してから、乾燥させてポリマー系帯電防止材が凝固する際に接着させてもよい。フィルム状帯電防止性ポリマーと他の部材とを接着するときは、フィルム状帯電防止性ポリマーと他の部材との接着面に接着剤を使用してもよい。
【0044】
接着剤は、例えば、熱プレス加工や熱圧着の際の熱プレス盤からの熱に耐え得る耐熱性を有する接着剤であってもよい。例えば、エポキシ接着剤やセラミック接着剤などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0045】
このような実施形態において、熱プレス用緩衝材20は、上述の熱プレス用緩衝材10の効果のほかにさらに以下のような効果を有し得る。
【0046】
熱プレス用緩衝材20は、自身の両主面にフィルム状帯電防止性ポリマー25,26が存在しているため、基材層4の主面からの繊維2の解れなどによる発塵を抑制し得る。
【0047】
さらなる実施形態は、上述の第2のポリマー系帯電防止材と、上述の基材層の一方の主面上との間に存在する1層以上の第1の中間層を含んでもよく、上述の第3のポリマー系帯電防止材と、上述の基材層の他方の主面上との間に存在する1層以上の第2の中間層を含んでもよい。
【0048】
上述の第1の中間層と上述の第2の中間層とを含む実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0049】
図3は、さらなる実施形態に従う熱プレス用緩衝材の1例を示す断面図である。熱プレス用緩衝材30は、上述した基材層4の構成に、さらにフィルム状ポリマー37,38を中間層として備え、ポリマー系帯電防止材35,36を最外層として備える。フィルム状ポリマー37は、上述した基材層4の一方の主面上のおおよそ平らな表面を覆うように存在している。ポリマー系帯電防止材35は、上述したフィルム状ポリマー37を覆うように存在している。フィルム状ポリマー38は、上述した基材層4の他方の主面上のおおよそ平らな表面を覆うように存在している。ポリマー系帯電防止材36は、上述したフィルム状ポリマー38を覆うように存在している。ポリマー系帯電防止材35は、ポリマー系材料と、これに分散している帯電防止材35cとを含み、ポリマー系帯電防止材36は、ポリマー系材料と、これに分散している帯電防止材36cとを含む。
【0050】
この実施形態において、繊維2の表面に沿って存在するポリマー系帯電防止材3が、上述の第1のポリマー系帯電防止材に対応する。基材層4の一方の主面上のフィルム状ポリマー37が、上述の第1の中間層に対応する。ポリマー系帯電防止材35が、上述の第2のポリマー系帯電防止材に対応する。また、基材層4の他方の主面上のフィルム状ポリマー38が、上述の第2の中間層に対応する。ポリマー系帯電防止材36が、上述の第3のポリマー系帯電防止材に対応する。
【0051】
このような構成により、熱プレス用緩衝材30は、繊維質層1と、繊維質層1の繊維2の表面に沿って存在するポリマー系帯電防止材3とを含む基材層4、基材層4上に存在し、
図3中の基材層4の上に示されている中間層を提供するフィルム状ポリマー37と最外層を提供するポリマー系帯電防止材35、および
図3中の基材層4の下に示されている中間層を提供するフィルム状ポリマー38と最外層を提供するポリマー系帯電防止材36を備える。
【0052】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材に含まれた状態にある中間層は、例えば、帯電防止性を有していてもよく、または帯電防止性を有していなくてもよい。また、例えば、フィルム状ポリマーからなる層でもよく、またはフィルム状でないポリマー系材料(非フィルム状ポリマー)からなる層でもよい。
【0053】
フィルム状ポリマーは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)およびポリイミドなどであってもよく、帯電防止材を含んでもよい。
【0054】
中間層は、例えば、1μm〜500μmの厚さであってもよいが、これに限定されるものではない。厚さが5μm〜300μmである中間層は、例えば、製造に用いられる際の取り扱いに充分な柔軟性を有し得る。
【0055】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材に含まれた状態にあるフィルム状ポリマー37,38は、例えば、基材層4からの繊維2の解れなどによる発塵を抑制し得る。
【0056】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材30は、例えば、上述の基材層4をベースとして用いて、以下のようにして製造され得る。
【0057】
熱プレス用緩衝材30の材料として、ポリマー系材料、帯電防止材、繊維質層、およびフィルム状ポリマーを準備する。
【0058】
最初に、上述通り基材層4を形成する。基材層4の一方の主面上にはフィルム状ポリマー37を接着し、基材層4の他方の主面上には、フィルム状ポリマー38を接着し、熱処理を行い一体化させる。つづいて、フィルム状ポリマー37の主面上には、ポリマー系帯電防止材35を塗布する。フィルム状ポリマー38の主面上には、ポリマー系帯電防止材36を塗布する。そして熱処理を行い、端部を切断して、熱プレス用緩衝材30を得る。
【0059】
例えば、フィルム状ポリマーとポリマー系帯電防止材とを接着するときは、フィルム状ポリマーとの接着面にあるポリマー系帯電防止材が凝固する前に配置してから、乾燥させてポリマー系帯電防止材が凝固する際に接着させてもよい。フィルム状ポリマーと他の部材とを接着するときは、フィルム状ポリマーと他の部材との接着面に接着剤を使用してもよい。
【0060】
このような実施形態において、熱プレス用緩衝材30は、上述の熱プレス用緩衝材10および20と同じような効果を有し得る。
【0061】
熱プレス用緩衝材30は、自身の基材層の両主面にフィルム状ポリマー37,38が存在しているため、基材層4からの繊維2の解れなどによる発塵を抑制し得る。
【0062】
さらなる実施形態は、上述の熱プレス用緩衝材の端面上に第4のポリマー系帯電防止材を含んでもよい。
【0063】
第4のポリマー系帯電防止材を含む実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0064】
図4は、さらなる実施形態に従う熱プレス用緩衝材の1例を示す断面図である。熱プレス用緩衝材40は、上述した熱プレス用緩衝材30の構成に加えて、さらなるポリマー系帯電防止材49の層を備える。ポリマー系帯電防止材49は、上述した熱プレス用緩衝材30の端面上に沿って、その端面を覆うように存在している。
【0065】
熱プレス用緩衝材の端面を覆うように存在するポリマー系帯電防止材は、熱プレス用緩衝材10または20に設けてもよい。
【0066】
この実施形態において、熱プレス用緩衝材30の端面上に沿って、その端面を覆うように存在しているポリマー系帯電防止材49が、第4のポリマー系帯電防止材に対応する。
【0067】
このような構成により、熱プレス用緩衝材40は、繊維質層1と、繊維質層1の繊維2の表面に沿って存在するポリマー系帯電防止材3とを含む基材層4、基材層4上に存在し、
図4中の基材層4の上に示されている中間層を提供するフィルム状ポリマー37と最外層を提供するポリマー系帯電防止材35、
図4中の基材層4の下に示されている中間層を提供するフィルム状ポリマー38と最外層を提供するポリマー系帯電防止材36、および端面を覆うように存在しているポリマー系帯電防止材49を備える。
【0068】
第4のポリマー系帯電防止材49は、例えば、第1、第2および第3のポリマー系帯電防止材3,35,36のいずれかと互いに同じ部材であってもよく、互いに異なる部材であってもよいが、これらに限定されるものではない。例えば、互いに同じ部材であるポリマー系帯電防止材は、相溶性によって互いの接着が向上し得る。
【0069】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材に含まれた状態にある第4のポリマー系帯電防止材49は、例えば、熱プレス用緩衝材の端面からの繊維2の解れなどの発塵をさらに抑制し得る。また、熱プレス用緩衝材の端面への異物の付着をさらに抑制し得る。
【0070】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材40は、例えば、上述の熱プレス用緩衝材30をベースとして用いて、以下のようにして製造され得る。
【0071】
熱プレス用緩衝材40の材料として、ポリマー系材料、帯電防止材、繊維質層、およびフィルム状ポリマーを準備する。
【0072】
最初に、ポリマー系材料に帯電防止材を添加し、分散させ、ポリマー系帯電防止材49を調製する。別途、上述通りベース30を形成する。ポリマー系帯電防止材49に溶剤を加えて粘度を調整し、ベース30の端面上に塗布する。つづいて、それを乾燥して熱処理を行い、熱プレス用緩衝材40を得る。
【0073】
例えば、熱プレス用緩衝材40を製造するときは、ポリマー系帯電防止材49をベース30の端面に含浸させて製造してもよい。
【0074】
このような実施形態において、熱プレス用緩衝材40は、上述の熱プレス用緩衝材10〜30の効果のほかにさらに以下のような効果を有し得る。
【0075】
熱プレス用緩衝材40は、ベース30の端面にポリマー系帯電防止材49が存在している構成であるため、基材層4からの繊維2の解れなどによる発塵、端面への異物の付着をさらに抑制し得る。
【0076】
図5は、さらなる実施形態に従う熱プレス用緩衝材の1例を示す断面図である。熱プレス用緩衝材50は、上述した基材層4に加えて、さらにフィルム状ポリマー58を中間層として備え、さらなるポリマー系帯電防止材55,56の層を最外層として備える。フィルム状ポリマー58は、上述した基材層4一方の主面のおおよそ平らな表面を覆うように存在している。ポリマー系帯電防止材56は、上述したフィルム状ポリマー58を覆うように存在している。ポリマー系帯電防止材55は、上述した基材層4の他方の主面上の全面を覆うようにして、おおよそ平らな表面を有して存在している。ポリマー系帯電防止材55は、ポリマー系材料と、これに分散している帯電防止材55cとを含み、ポリマー系帯電防止材56は、ポリマー系材料と、これに分散している帯電防止材56cとを含む。
【0077】
この実施形態において、繊維2の表面に沿って存在するポリマー系帯電防止材3が、上述の第1のポリマー系帯電防止材に対応する。基材層4の一方の主面上に最外層として存在するポリマー系帯電防止材55が、上述の第2のポリマー系帯電防止材に対応する。また、基材層4の他方の主面上に最外層として存在するポリマー系帯電防止材56が、上述の第3のポリマー系帯電防止材に対応し、そのポリマー系帯電防止材56と基材層4の間に介在するフィルム状ポリマー58が、上述の中間層に対応する。
【0078】
このような構成により、熱プレス用緩衝材50は、繊維質層1と、繊維質層1の繊維2の表面に沿って存在するポリマー系帯電防止材3とを含む基材層4、基材層4上に存在し、
図5中の基材層4の上に示されている最外層を提供するポリマー系帯電防止材55、および
図5中の基材層4の下に示されている中間層を提供するフィルム状ポリマー58と最外層を提供するポリマー系帯電防止材56を備える。
【0079】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材50は、例えば、上述の基材層4をベースとして用いて、以下のようにして製造され得る。
【0080】
熱プレス用緩衝材50の材料として、ポリマー系材料、帯電防止材、繊維質層、およびフィルム状ポリマーを準備する。
【0081】
最初に、上述通り基材層4を形成する。基材層4の一方の主面上にフィルム状ポリマー58を接着する。基材層4の他方の主面上には、ポリマー系帯電防止材55を塗布する。さらにフィルム状ポリマー58の主面上には、ポリマー系帯電防止材56を塗布する。最後にそれを乾燥させて、熱処理を行い、熱プレス用緩衝材50を得る。
【0082】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材は、例えば、上述の基材層4の一方の主面上の構成と、上述の基材層4の他方の主面上の構成とが、互いに同じものであってもよく、互いに異なるものであってもよい。
【0083】
基材層4の主面上の構成は、最外層のポリマー系帯電防止材であってもよい。また、基材層4と最外層のポリマー系帯電防止材との間に、1層以上の中間層または他の基材層を含んでいてもよい。例えば、基材層4の主面上の構成が複数の層である場合、配置される層の順番は、最外層にポリマー系帯電防止材が配置されればよく、中間に配置される層の順番は限定されない。
【0084】
上述したいずれの実施形態も、以下のような効果を有し得る。
【0085】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材の厚さは、0.1mm〜5.5mmの範囲であってもよく、例えば、0.5mm〜5.0mmの範囲であってもよいが、これらに限定されるものではない。5.5mmを超える厚さを有する熱プレス用緩衝材は、熱プレス盤からの熱伝導が低下し、生産性が低下する。
【0086】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材に含まれる空隙の体積は、例えば、次の式:
[熱プレス用緩衝材に含まれる空隙の体積]=[熱プレス用緩衝材の体積]−([熱プレス用緩衝材に含まれる繊維の体積]+[熱プレス用緩衝材に含まれるポリマー系帯電防止材の体積]+[熱プレス用緩衝材に含まれる中間層の体積])
によって、算出してもよい。
【0087】
熱プレス用緩衝材に含まれる繊維の体積は、例えば、熱プレス用緩衝材の製造に用いた繊維質層の目付重量および繊維比重などから算出してもよい。
【0088】
熱プレス用緩衝材に含まれるポリマー系帯電防止材の体積は、例えば、熱プレス用緩衝材の製造に用いたポリマー系帯電防止材の重量および比重などから算出してもよく、フィルム状帯電防止性ポリマーの使用重量および比重などから算出してもよい。
【0089】
熱プレス用緩衝材に含まれる中間層の体積は、例えば、熱プレス用緩衝材の製造に用いたフィルム状ポリマーまたはポリマー系帯電防止材の使用重量および比重などから算出してもよい。
【0090】
熱プレス用緩衝材に含まれる空隙の体積比率は、例えば、次の式:
[空隙率]=([熱プレス用緩衝材に含まれる空隙の体積]/[熱プレス用緩衝材の体積])×100%
によって、空隙率として算出してもよい。
【0091】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材の空隙率は、例えば、20%〜80%であってもよく、例えば、40〜75%であってもよい。例えば、20%〜80%の空隙率を有する熱プレス用緩衝材は、常温において、その厚さ方向に3MPaを加圧して圧縮したときの厚さは、圧縮前の厚さの30〜90%に圧縮され得る。
【0092】
例えば、20%未満の空隙率を有する熱プレス用緩衝材は、クッション性が低い。また、80%を超える空隙率を有する熱プレス用緩衝材は、複数回プレスした際に、緩衝材にへたりが生じクッション性を維持できない。
【0093】
一般にポリマー系帯電防止材で満たされた熱プレス用緩衝材は、クッション性が低い。しかしながら、実施形態に従う熱プレス用緩衝材は、上述の空隙を含んでいるため熱プレス加工や熱圧着の用途に充分なクッション性を有する。また、ポリマー系帯電防止材が存在しているため、異物の付着も抑制できる。
【0094】
熱プレス用緩衝材の空隙率は、例えば、熱プレス用緩衝材の端部および中央部に分けて、個々に算出してもよい。
【0095】
熱プレス用緩衝材の端部とは、例えば、熱プレス用緩衝材の端面から内側に3mmまでの距離にある部分であってよい。
【0096】
熱プレス用緩衝材の中央部とは、例えば、熱プレス用緩衝材の端面から内側に100mm以上の距離にある部分であってよい。
【0097】
熱プレス用緩衝材における端部および中央部の空隙率の比の関係は、例えば、
次の式:
[空隙比率]=[熱プレス用緩衝材の端部の空隙率]/[熱プレス用緩衝材の中央部の空隙率]
によって、空隙比率として算出してもよい。
【0098】
熱プレス用緩衝材の端面は、最終形態にある熱プレス用緩衝材の縁において対向している両主面を差し渡している面である。主面の形状が四角形である場合には、主面を規定している4つの辺に対応する4つの端面が存在し得る。熱プレス用緩衝材の端部および中央部の規定に関して、端面からの距離は、最終形態にある熱プレス用緩衝材の端面側で最も外側に存在し、外界との境界を形成している熱プレス用緩衝材の端面からの距離であり得る。また例えば、端面からの距離は、最終形態にある熱プレス用緩衝材の外縁をなす端面の特定の領域から、そこに直交して熱プレス用緩衝材の中央側に向って測定される距離であり得る。例えば、端面に凹凸がある場合には、外側に向けて最も大きく突出している領域からの距離であり得る。また例えば、
図4に示す熱プレス緩衝材40の場合には、ポリマー系帯電防止材49が端面の最外層として存在するが、この場合にはポリマー系帯電防止材49の表面から当該距離が測定され得る。
【0099】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材の空隙比率は、例えば、0.9以上であってもよい。0.9未満の空隙比率を有する熱プレス用緩衝材は、例えば、熱プレス加工や熱圧着に使用した際に、熱プレス用緩衝材の端部および中央部で圧縮差が生じやすく、プレス成形品の内部に空洞(すなわち、ボイド)が発生し得る。
【0100】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材は、例えば、以下のように使用され得る。
【0101】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材は、単独で、または用途に充分な枚数を重ねてから熱プレス加工や熱圧着に使用され得る。
【0102】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材は、用途に充分なサイズに裁断してから熱プレス加工や熱圧着に使用され得る。
【0103】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材を裁断した場合、繊維の表面にポリマー系帯電防止材が存在しているため、基材層に含まれる繊維の解れなどによる発塵を抑制できる。
【0104】
例えば、一つの実施形態の熱プレス用緩衝材を裁断した場合、その裁断面にポリマー系帯電防止材を塗布し、乾燥させ、熱処理を行ってから、その熱プレス用緩衝材を熱プレス加工や熱圧着に用いてもよい。
【0105】
実施形態に従う熱プレス用緩衝材は、熱プレス加工や熱圧着などの用途に充分なクッション性を有するクッション材としての役割がある。
【0106】
発明の実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。
【0107】
<例>
本発明の効果を確認するために、例1〜例11の熱プレス用緩衝材を製造し、比較実験を行った。
【0108】
・例1
例1に係る熱プレス用緩衝材の製造
例1に係る熱プレス用緩衝材の材料は、目付重量:900g/m
2、厚さ2.0mm、およびコーネックス(登録商標)のアラミド2重織織布、ダイエル(登録商標)G701をベースにしたフッ素ゴムコンパウンド、エポキシ樹脂383J、ケッチェンブラックEC600JDのカーボン、およびポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製,厚さ125μm,品番500H)を用意した。
【0109】
アラミド2重織織布は、繊維質層として用いた。フッ素ゴムコンパウンドおよびエポキシ樹脂は、ポリマー系材料として用いた。カーボンは帯電防止材として用いた。ポリイミドフィルムは、非帯電防止性のフィルム状ポリマーとして用いた。
【0110】
以下のようにして、例1に係る熱プレス用緩衝材を製造した。
【0111】
フッ素ゴムコンパウンドの重量を100としたときに、それに対するカーボンの重量部(すなわち、phr)を15phrとして、フッ素ゴムコンパウンドに、15phrのカーボンを分散させ、フッ素ゴム系帯電防止材を調製した。そのフッ素ゴム系帯電防止材へ、酢酸エチルやメチルエチルケトンなどの溶剤を加え、固形分濃度20〜50%程度のフッ素ゴム系帯電防止材の糊を調製した。
【0112】
アラミド2重織織布に、そのフッ素ゴム系帯電防止材の糊を含浸した。その後、乾燥させて溶剤を除去し、フッ素ゴム系帯電防止材の含浸固形分量は、500g/m
2とした。
【0113】
フッ素ゴム系帯電防止材を含浸させたアラミド2重織織布の両主面上に、フッ素ゴム系帯電防止材の糊を塗布した。その後、乾燥させて溶剤を除去し、両主面上にポリイミドフィルムを熱圧着して一体化するとともに、フッ素ゴム系帯電防止材を硬化した。
【0114】
一方、エポキシ樹脂に対して15phrのカーボンと硬化剤を添加し、分散させ、エポキシ樹脂系帯電防止材を調製した。
【0115】
ポリイミドフィルムを熱圧着して一体化した構成部材の両主面上に、最外層としてエポキシ樹脂系帯電防止材を塗布した。続いて、熱処理を行い、エポキシ樹脂系帯電防止材を硬化させ、端部を切断した。
【0116】
また、酢酸エチルやメチルエチルケトンなどの溶剤をフッ素ゴム系帯電防止材に加え、固形分濃度5〜20%程度のフッ素ゴム系帯電防止材の糊を調製した。そのフッ素ゴム系帯電防止材の糊を、切断した端部に塗布した。端部処理後、乾燥させて溶剤を除去し、熱処理を行い、厚さ2.1mmの熱プレス用緩衝材を得た。これを、例1の熱プレス用緩衝材とした。
【0117】
・例2
例1に係る熱プレス用緩衝材の製造方法から、ポリイミドフィルムを熱圧着して一体化する工程を省いた製造方法により、熱プレス用緩衝材を製造した。これを、例2の熱プレス用緩衝材とした。
【0118】
例2に係る熱プレス用緩衝材は、例1に係る熱プレス用緩衝材と比較して、ポリイミドフィルムを有さないことに差異がある構成となっている。
【0119】
・例3
例1に係る熱プレス用緩衝材の製造方法から、フッ素ゴム系帯電防止材を用いての端部処理の工程を省いた製造方法により、熱プレス用緩衝材を製造した。これを、例3の熱プレス用緩衝材とした。
【0120】
例3に係る熱プレス用緩衝材は、例1に係る熱プレス用緩衝材と比較して、フッ素ゴム系帯電防止材を用いた端部処理が未実施であることに差異がある。
【0121】
・例4
例1に係る熱プレス用緩衝材の製造方法から、ポリイミドフィルムを圧着して一体化する工程、およびフッ素ゴム系帯電防止材を用いての端部処理する工程を省いた製造方法により、熱プレス用緩衝材を製造した。これを、例4の熱プレス用緩衝材とした。
【0122】
例4に係る熱プレス用緩衝材は、例1に係る熱プレス用緩衝材と比較して、ポリイミドフィルムを有さないこと、およびフッ素ゴム系帯電防止材を用いた端部処理が未実施であることに差異がある。
【0123】
・例5
例5に係る熱プレス用緩衝材の製造
例5に係る熱プレス用緩衝材の材料は、目付重量:900g/m
2、厚さ2.0mm、およびコーネックス(登録商標)のアラミド2重織織布、ダイエル(登録商標)G701をベースにしたフッ素ゴムコンパウンド、ケッチェンブラックEC600JDのカーボン、および帯電防止性フッ素樹脂フィルムを用意した。
【0124】
アラミド2重織織布は、繊維質層として用いた。フッ素ゴムコンパウンドは、ポリマー系材料として用いた。カーボンは帯電防止材として用いた。帯電防止性フッ素樹脂フィルムは、最外層として用いた。
【0125】
以下のようにして、例5に係る熱プレス用緩衝材を製造した。
【0126】
フッ素ゴムコンパウンドに、15phrのカーボンを分散させ、フッ素ゴム系帯電防止材を調製した。そのフッ素ゴム系帯電防止材へ、酢酸エチルやメチルエチルケトンなどの溶剤を加え、固形分濃度20〜50%程度のフッ素ゴム系帯電防止材の糊を調製した。
【0127】
アラミド2重織織布に、そのフッ素ゴム系帯電防止材の糊を含浸した。その後、乾燥させて溶剤を除去し、フッ素ゴム系帯電防止材の含浸固形分量は、500g/m
2とした。
【0128】
フッ素ゴム系帯電防止材を含浸させたアラミド2重織織布の両主面上に、フッ素ゴム系帯電防止材の糊を塗布した。その後、乾燥させて溶剤を除去し、両主面上に帯電防止性フッ素樹脂フィルムを熱圧着して一体化するとともに、フッ素ゴム系帯電防止材を硬化し、端部を切断して、熱プレス用緩衝材を得た。これを、例5の熱プレス用緩衝材とした。
【0129】
・例6
例6に係る熱プレス用緩衝材の製造
例6に係る熱プレス用緩衝材の材料は、目付重量:900g/m
2、厚さ2.0mm、コーネックス(登録商標)のアラミド2重織織布、ダイエル(登録商標)G701をベースにしたフッ素ゴムコンパウンド、エポキシ樹脂383J、およびケッチェンブラックEC600JDのカーボンを用意した。
【0130】
アラミド2重織織布は、繊維質層として用いた。フッ素ゴムおよびエポキシ樹脂は、ポリマー系材料として用いた。カーボンは帯電防止材として用いた。
【0131】
以下のようにして、例6に係る熱プレス用緩衝材を製造した。
【0132】
フッ素ゴムコンパウンドへ、酢酸エチルやメチルエチルケトンなどの溶剤を加え、固形分濃度20〜50%程度のフッ素ゴムコンパウンドの糊を調製した。
【0133】
アラミド2重織織布に、そのフッ素ゴムコンパウンドの糊を含浸した。その後、乾燥させて溶剤を除去し、フッ素ゴムコンパウンドの含浸固形分量は、500g/m
2とした。さらに熱処理を行い、フッ素ゴムコンパウンドを硬化した。
【0134】
一方、エポキシ樹脂に対して15phrのカーボンを添加し、分散させ、エポキシ樹脂系帯電防止材を調製した。
【0135】
フッ素ゴムコンパウンドを含浸させたアラミド2重織織布の両主面上に、最外層としてエポキシ樹脂系帯電防止材を塗布した。続いて、熱処理を行い、エポキシ樹脂系帯電防止材を硬化して、端部を切断して、熱プレス用緩衝材を得た。これを、例6の熱プレス用緩衝材とした。
【0136】
・例7
例6に係る熱プレス用緩衝材の製造方法に、フッ素ゴム系帯電防止材を用いる端部処理の工程を追加して、熱プレス用緩衝材を製造した。これを、例7の熱プレス用緩衝材とした。
【0137】
例7に係る熱プレス用緩衝材は、例6に係る熱プレス用緩衝材と比較して、フッ素ゴム系帯電防止材を用いた端部処理を追加したことに差異がある。
【0138】
・例8
例6に係る熱プレス用緩衝材の製造方法の、最外層としてエポキシ樹脂系帯電防止材を塗布する工程を、エポキシ樹脂を塗布する工程に変更し、さらに、その変更した方法に、フッ素ゴム系帯電防止材を用いる端部処理の工程を追加して、熱プレス用緩衝材を製造した。これを、例8の熱プレス用緩衝材とした。
【0139】
例8に係る熱プレス用緩衝材は、例6に係る熱プレス用緩衝材と比較して、エポキシ樹脂が最外層として存在していること、およびフッ素ゴム系帯電防止材を用いた端部処理を追加したことに差異がある。
【0140】
・例9
例6に係る熱プレス用緩衝材の製造方法から、フッ素ゴムコンパウンドをアラミド2重織織布に含浸させる工程を省いて変更し、さらに、その変更した方法に、フッ素ゴム系帯電防止材を用いた端部処理の工程を追加して、熱プレス用緩衝材を製造した。これを、例9の熱プレス用緩衝材とした。
【0141】
例9に係る熱プレス用緩衝材は、例6に係る熱プレス用緩衝材と比較して、フッ素ゴムコンパウンドをアラミド2重織織布に含浸させていないこと、およびフッ素ゴム系帯電防止材を用いた端部処理を追加したことに差異がある。
【0142】
・例10
例6に係る熱プレス用緩衝材の製造方法から、最外層としてエポキシ樹脂系帯電防止材を塗布する工程を省いて製造した。これを、例10の熱プレス用緩衝材とした。
【0143】
例10に係る熱プレス用緩衝材は、例6に係る熱プレス用緩衝材と比較して、最外層としてのエポキシ樹脂系帯電防止材が存在していないことに差異がある。
【0144】
・例11
例6に係る熱プレス用緩衝材の製造方法において、最外層としてエポキシ樹脂系帯電防止材を塗布する工程を、エポキシ樹脂を塗布する工程に変更し、フッ素ゴムコンパウンドをアラミド2重織織布に含浸させる工程を省き、フッ素ゴムコンパウンドを用いた端部処理の工程を追加して、熱プレス用緩衝材を製造した。これを、例11の熱プレス用緩衝材とした。
【0145】
例11に係る熱プレス用緩衝材は、例6に係る熱プレス用緩衝材と比較して、エポキシ樹脂が最外層として存在していること、アラミド2重織織布にフッ素ゴムを含浸させていないこと、およびフッ素ゴムを用いた端部処理を追加したことに差異がある。
【表1】
【0146】
[評価項目]
・空隙比率
熱プレス用緩衝材における端部および中央部の空隙比率を、次の式:
[空隙比率]=[熱プレス用緩衝材の端部の空隙率]/[熱プレス用緩衝材の中央部の空隙率]
によって、算出した。
【0147】
・裁断後の異物付着性
熱プレス用緩衝材を裁断し、裁断した熱プレス用緩衝材の端面を目視によって確認して、端面への異物付着の様子を2段階で評価した。例えば、1<2のように、1は熱プレス用緩衝材の端面への異物の付着が少なく、2は熱プレス用緩衝材の端面への異物付着が多く見られた。
【0148】
・熱プレス時の発塵性
温度200℃、圧力3MPaのプレスを60分間で1回とし、熱プレス用緩衝材に対して、このプレスを合計10回実施した。その後、熱プレス用緩衝材と金属板、例えばステンレス鋼(SUS)を目視によって確認し、発塵の様子を3段階で評価した。例えば、評価結果は1<2<3として、1は発塵の様子が最も少なく、3は発塵が多く見られた。
【0149】
・熱プレス時の異物付着性
温度200℃、圧力3MPaのプレスを60分間で1回とし、熱プレス用緩衝材に対して、このプレスを合計10回実施した。その後、熱プレス用緩衝材を目視によって確認し、異物付着の様子を4段階で評価した。例えば、1<2<3<4のように、1は熱プレス用緩衝材への異物付着が最も少なく、4は熱プレス用緩衝材への異物付着が多く見られた。
【0150】
・プレス製品への影響
熱プレス用緩衝材を用いて、熱プレス加工を行った。その熱プレス加工で成形したプレス製品の内部を確認して、ボイド発生の様子を2段階で評価した。例えば、1<2のように、1はプレス製品の内部にボイドは見られず、2はプレス製品の内部にボイドが見られた。
【0151】
[結果]
評価項目の結果は、次の通りである。
【0152】
・空隙比率
熱プレス用緩衝材における端部および中央部の空隙比率は、端部のみにフッ素ゴムまたはフッ素ゴム系帯電防止材が存在している例9,11で0.9未満であった。
【0153】
・裁断後の異物付着性
フッ素ゴム系帯電防止材をアラミド2重織織布に含浸させて製造した基材層を有する例1〜5の熱プレス用緩衝材は、裁断後の異物の付着が少ない結果であった。
【0154】
・熱プレス時の発塵性
ポリイミドフィルムを用いた例1,3、および帯電防止性フッ素樹脂フィルムを用いた例5の熱プレス用緩衝材は、発塵が最も少ない結果であった。一方、最外層を備えていない、または基材層に含浸していない例9〜11において、発塵が多く見られた。
【0155】
・熱プレス時の異物付着性
最外層にエポキシ樹脂系帯電防止材を備えていない例8,10,11は異物付着が多い。
【0156】
・プレス製品への影響
空隙比率が0.9未満である例9,11の熱プレス用緩衝材を用いたプレス製品は、ボイド発生の異常が見られた。
【0157】
・総評
例1〜5の熱プレス用緩衝材において、基材層に存在しているフッ素ゴム系帯電防止材、および最外層として存在しているエポキシ系帯電防止材または帯電防止性フッ素樹脂フィルムが、熱プレス用緩衝材への異物付着を抑制する帯電防止性に大きく寄与している。さらに、熱プレス用緩衝材の端面に存在しているフッ素ゴム系帯電防止材も、熱プレス用緩衝材への異物付着の抑制に寄与している。また、基材層の主面上に存在しているポリイミドフィルムは、熱プレス用緩衝材の基材層からの発塵の抑制に寄与している。そして、空隙比率が0.9以上である熱プレス用緩衝材は、プレス成形品にボイド発生の異常無くプレス成形できる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]織布または不織布から構成されている繊維質層と、前記繊維質層の繊維の表面に沿って存在している第1のポリマー系帯電防止材とを備える1層以上の基材層、並びに
前記基材層の一方の主面上に最外層として存在している第2のポリマー系帯電防止材、および前記基材層の他方の主面上に最外層として存在している第3のポリマー系帯電防止材を備え、
所望に応じてさらに
前記第2のポリマー系帯電防止材と、前記基材層の一方の主面上との間に存在する1層以上の第1の中間層、および/または前記第3のポリマー系帯電防止材と、前記基材層の他方の主面上との間に存在する1層以上の第2の中間層
を備える熱プレス用緩衝材。
[2]前記第2のポリマー系帯電防止材または前記第3のポリマー系帯電防止材は、フィルム状であることを特徴とする[1]に記載の熱プレス用緩衝材。
[3]前記熱プレス用緩衝材は、前記第1の中間層、および/または前記第2の中間層を含み、
前記第1の中間層または前記第2の中間層は、帯電防止性または非帯電防止性の非フィルム状ポリマーまたはフィルム状ポリマーであることを特徴とする[1]または[2]に記載の熱プレス用緩衝材。
[4]さらに、前記熱プレス用緩衝材の端面を覆うように存在している第4のポリマー系帯電防止材を備えることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1つに記載の熱プレス用緩衝材。
[5]常温において、その厚さ方向に3MPaを加圧して圧縮したときの厚さは、圧縮前の厚さの30〜90%であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1つに記載の熱プレス用緩衝材。
[6]その端面から内側に3mmまでの距離にある部分の空隙率をAとし、
その端面から内側に100mm以上の距離にある部分の空隙率をBとしたとき、
1つの前記熱プレス用緩衝材における空隙率Aと空隙率Bとの関係は、
次の式:
A/B≧0.9
を満たすことを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1つに記載の熱プレス用緩衝材。
[7]全体としての帯電防止性能は、JIS L 1094の測定法に準拠する方法で測定されたときに、1kV以下の帯電圧を有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1つに記載の熱プレス用緩衝材。
【課題】本発明の目的は、緩衝材自身からの発塵、および緩衝材への異物の付着を抑えることができ、プレス対象物に対して均一に圧力を伝達することができる熱プレス用緩衝材を提供することである。
【解決手段】実施形態に従う熱プレス用緩衝材は、織布または不織布から構成されている繊維質層と、前記繊維質層の繊維の表面に沿って存在している第1のポリマー系帯電防止材とを備える1層以上の基材層、並びに前記基材層の一方の主面上に最外層として存在している第2のポリマー系帯電防止材、および前記基材層の他方の主面上に最外層として存在している第3のポリマー系帯電防止材を備える。