(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ウエハーのストレイン値は、差減面間距離と基準面間距離との比で、前記基準面間距離は、前記第1の揺動曲線において回折ビームの強度が最も大きい値に対応する面間距離で、前記差減面間距離は、前記面間距離算出段階で算出された面間距離と前記基準面間距離との差である、請求項1から4のいずれかに記載のウエハーの損傷深さを測定する方法。
前記第1の揺動曲線を獲得する段階において、前記ウエハーは、単結晶インゴットに対するスライシング工程を行って得られる半導体用ウエハーであるか、または、前記半導体用ウエハーの表面に対してラッピング(lapping)工程、グラインディング工程、及びポリッシング工程のうち少なくとも一つを行ったウエハーであることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のウエハーの損傷深さを測定する方法。
前記結晶性を評価しようとする各地点は、前記ウエハーの中央地点、エッジ地点、及びウエハーの半径の2分1である地点であることを特徴とする、請求項2に記載のウエハーの損傷深さを測定する方法。
前記ウエハーのストレイン値は、差減面間距離と基準面間距離との比で、前記基準面間距離は、前記第1の揺動曲線において回折ビームの強度が最も大きい値に対応する面間距離で、前記差減面間距離は、前記面間距離算出段階で算出された面間距離と前記基準面間距離との差である、請求項16に記載のウエハーの損傷深さを測定する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施例は、非破壊方法を用いてウエハーの機械的損傷深さを正確に測定する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施例に係るウエハーの損傷深さを測定する方法は、X線回折装置(X―Ray Diffraction Apparatus)を用いて獲得したウエハーに対する第1の揺動曲線を獲得する段階;前記第1の揺動曲線において基準レベルより高い強度を有するX線入射角度の範囲を設定し、前記設定されたX線入射角度に対する面間距離を算出し、算出された面間距離を用いて前記ウエハーのストレイン値を算出し、前記算出されたストレイン値に基づいてサンプリングされた各ストレイン値を抽出する段階;前記サンプリングされた各ストレイン値に対応するX線回折ビームの強度に基づいて前記ウエハーの損傷の程度による厚さをモデリングする段階;前記設定されたX線入射角度の範囲、前記算出された面間距離、前記サンプリングされた各ストレイン値、及び前記モデリングされた厚さに基づいて第2の揺動曲線を獲得する段階;前記X線入射角度の範囲、前記面間距離、前記サンプリングされた各ストレイン値、及びモデリングされた厚さのうち少なくとも一つを変化させることによって、前記第2の揺動曲線を前記第1の揺動曲線とマッチングさせる段階;及びマッチングされた結果に基づいて、前記ウエハーの損傷深さを算出する段階;を含む。
【0009】
前記第1の揺動曲線を獲得する段階は、前記ウエハーで結晶性を評価しようとする各地点を設定する段階;設定されたウエハーの各地点に対する各X線揺動曲線を獲得する段階;及び前記設定されたウエハーの各地点の各X線揺動曲線の各半価幅(Full Width at Half Maximum、FWHM)を比較し、比較した結果によって前記第1の揺動曲線を獲得する段階;を含むことができる。
【0010】
X線揺動曲線の半価幅が最も大きいものを、前記第1の揺動曲線として選択することができる。
【0011】
前記第1の揺動曲線が飽和(saturation)される回折ビーム(beam)の強度を前記基準レベルとして設定することができる。
【0012】
前記ウエハーのストレイン値は、差減面間距離と基準面間距離との比で、前記基準面間距離は、前記第1の揺動曲線において回折ビームの強度が最も大きい値に対応する面間距離で、前記差減面間距離は、前記面間距離算出段階で算出された面間距離と前記基準面間距離との差であり得る。
【0013】
前記サンプリングされた各ストレイン値を抽出する段階は、前記算出された各ストレイン値のうち最高値に基づいて前記サンプリングされた各ストレイン値を抽出することができる。
【0014】
前記ウエハーの損傷の程度による厚さをモデリングする段階は、前記サンプリングされた各ストレイン値のそれぞれに対応するX線回折ビームの強度を獲得する段階;及び前記獲得されたX線回折ビームの強度に比例して前記ウエハーの損傷の程度による厚さをモデリングする段階;を含むことができる。
【0015】
前記ウエハーの損傷の程度による厚さをモデリングする段階は、損傷程度によって深さ方向に前記ウエハーを複数の区間に区分する段階;前記サンプリングされた各ストレイン値のそれぞれに対応するX線回折ビームの強度を獲得する段階;及び前記獲得されたX線回折ビームの強度にに比例して前記複数の区間のそれぞれの厚さを設定する段階;を含むことができる。
【0016】
前記第1の揺動曲線を獲得する段階において、前記ウエハーは、単結晶インゴットに対するスライシング工程を行って得られる半導体用ウエハーであるか、または前記半導体用ウエハーの表面に対してラッピング工程、グラインディング工程、及びポリッシング工程のうち少なくとも一つを行ったウエハーであり得る。
【0017】
前記マッチングさせる段階は、前記複数の区間のそれぞれに対して設定された厚さを調整することによって、前記第2の揺動曲線を前記第1の揺動曲線とマッチングさせることができる。
【0018】
前記ウエハーの損傷深さを算出する段階は、前記複数の区間の調整された厚さを全て足し合わせ、足し合わせた結果によって前記ウエハーの損傷深さを算出することができる。
【0019】
前記結晶性を評価しようとする各地点は、前記ウエハーの中央地点、エッジ地点、及びウエハーの半径の2分の1である地点であり得る。
【0020】
前記結晶性を評価しようとする各地点は、放射線状に互いに離隔して位置し得る。
【0021】
他の実施例に係るウエハーの損傷深さを測定する方法は、ウエハーを準備する段階;X線回折装置を用いて前記ウエハーに対して第1の揺動曲線(rocking curve)を獲得する段階;前記第1の揺動曲線に基づいて前記ウエハーの損傷程度による厚さをモデリングする段階;前記モデリング結果に基づいてコンピューターシミュレーション(simulation)を行い、シミュレーション結果による第2の揺動曲線を獲得する段階;前記第2の揺動曲線を前記第1の揺動曲線とマッチングさせる段階;及びマッチングされた結果に基づいて前記ウエハーの損傷深さを算出する段階;を含む。
【0022】
前記第1の揺動曲線を獲得する段階は、前記ウエハーの中央地点、エッジ地点、及びウエハーの半径の2分の1である地点のそれぞれに対する各X線揺動曲線を獲得する段階;及び前記獲得された各X線揺動曲線の各半価幅(Full Width at Half Maximum、FWHM)を比較し、前記獲得された各X線揺動曲線のうち最も大きい半価幅を有するいずれか一つを前記第1の揺動曲線として選択する段階;を含むことができる。
【0023】
前記ウエハーの損傷程度による厚さをモデリングする段階は、前記第1の揺動曲線が飽和される回折ビームの強度を基準レベルとして設定する段階;前記基準レベルより高い強度を有するX線入射角度の範囲を設定する段階;ブラッグ回折条件を用いて前記設定されたX線入射角度に対する面間距離を算出する段階;算出された面間距離を用いてウエハーのストレイン(strain)値を算出する段階;前記算出された各ストレイン値のうち最高値に基づいて、サンプリングされた各ストレイン値を抽出する段階;及び前記サンプリングされた各ストレイン値に対応するX線回折ビームの強度に基づいて前記ウエハーの損傷の程度による厚さをモデリングする段階;を含むことができる。
【0024】
前記ウエハーのストレイン値は、差減面間距離と基準面間距離との比で、前記基準面間距離は、前記第1の揺動曲線において回折ビームの強度が最も大きい値に対応する面間距離で、前記差減面間距離は、前記面間距離算出段階で算出された面間距離と前記基準面間距離との差であり得る。
【0025】
前記ウエハーの損傷の程度による厚さをモデリングする段階は、損傷程度によって深さ方向に前記ウエハーを複数の区間に区分する段階;前記サンプリングされた各ストレイン値のそれぞれに対応するX線回折ビームの強度を獲得する段階;及び前記獲得されたX線回折ビームの強度に比例して前記複数の区間のそれぞれの厚さを設定する段階;を含むことができる。
【0026】
前記第2の揺動曲線を獲得する段階は、前記設定されたX線入射角度の範囲、前記設定されたX線入射角度に対して算出された面間距離、前記サンプリングされた各ストレイン値、及び前記モデリングされた厚さに基づいて前記第2の揺動曲線を獲得することができる。
【0027】
前記マッチングさせる段階は、前記複数の区間のそれぞれに対して設定された厚さを調整することによって、前記第2の揺動曲線を前記第1の揺動曲線とマッチングさせることができる。
【発明の効果】
【0028】
実施例は、非破壊方法を用いてウエハーの機械的損傷深さを正確に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、各実施例は、添付の図面及び各実施例に対する説明を通じて明白になるだろう。実施例の説明において、各層(膜)、領域、パターンまたは構造物が基板、各層(膜)、領域、パッドまたはパターンの「上(on)」にまたは「下(under)」に形成されると記載する場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の層を介在して(indirectly)」形成されることを全て含む。また、各層の上または下に対しては、図面を基準にして説明する。
【0031】
図面において、サイズは、説明の便宜及び明確性のために誇張または省略したり、または概略的に図示した。また、各構成要素のサイズは、実際のサイズを全的に反映するものではない。また、同一の参照番号は、図面の説明を通じて同一の要素を示す。以下、添付の図面を参照して実施例に係るウエハーの機械的損傷を検出する方法を説明する。
【0032】
図1は、実施例に係るウエハーの機械的損傷を検出する方法を示すフローチャートである。
【0033】
図1を参照すると、まず、機械的損傷を検出するためのウエハーを準備する(S110)。
【0034】
このときに準備されるウエハーは、単結晶インゴットを成長させ、成長された単結晶インゴットに対するインゴットグラインディング工程、クロッピング(cropping)工程、及びスライシング(slicing)工程を行って得られる半導体用ウエハーであり得る。例えば、半導体用ウエハーは、サファイアなどのその他の単結晶ウエハーを含むことができる。
【0035】
または、準備されるウエハーは、前記半導体ウエハーの表面に対してラッピング工程、グラインディング(grinding)工程、エッチング工程及びポリッシング工程のうち少なくとも一つを行ったものであり得る。
【0036】
次に、X線回折装置(X―Ray Diffraction Apparatus)を用いて準備されたウエハーに対して第1の揺動曲線を獲得する(S120)。
【0037】
例えば、準備されたウエハーに対して結晶性評価を行い、結晶性評価結果による第1の揺動曲線を獲得することができる。
【0038】
例えば、準備されたウエハーの互いに異なる位置の既に設定された各地点(points)に対する結晶性評価を行い、評価した結果によって最も劣位な結晶性を有する地点を選択することができ、選択された最も劣位な結晶性を有する地点に対するX線揺動曲線を第1の揺動曲線として選択することができる。
【0039】
図2は、ウエハー結晶性評価方法の一実施例を示す図である。
【0040】
図2を参照すると、まず、結晶性を評価しようとするウエハーの各地点を設定する(S210)。
【0041】
例えば、結晶性を評価しようとするウエハーの既に設定された各地点は、中央(center)地点、エッジ(edge)地点、及びウエハーの半径の2分の1である地点であり得るが、既に設定された各地点の位置及び数がこれに限定されることはない。他の実施例において、既に設定された各地点は、放射線状に互いに離隔して位置し得る。
【0042】
次に、X線回折装置を用いて既に設定された各地点のそれぞれに対するX線揺動曲線を獲得する(S220)。
【0043】
所定の結晶にX線を透過させると、ブラッグの回折条件(Bragg’s law)によって結晶の特定面でのX線の回折角を決定することができる。このとき、結晶が完全無欠であると、X線回折ビームの強度(intensity)は一つの線として表れ得る。
【0044】
その一方、結晶内に欠陥、例えば、点、線、面、または体積形態の欠陥が存在すると、X線回折ビームの強度は、一つの線でないガウシアン(gaussian)分布の曲線を示すようになるが、このようなガウシアン分布の曲線をX線揺動曲線と称することができる。
【0045】
図3は、ウエハーの既に設定された各地点に対する各X線揺動曲線を示す。
【0046】
x軸は、X線の入射角度を示し、y軸は、X線回折ビームの強度を示す。g1は、ウエハーの中央地点(以下、「第1の地点」と言う。)に対するX線揺動曲線を示し、g2は、ウエハーの半径の2分の1である地点(以下、「第2の地点」と言う。)に対するX線揺動曲線を示し、g3は、ウエハーのエッジ地点(以下、「第3の地点」と言う。)に対するX線揺動曲線を示すことができる。
【0047】
図3を参照すると、第1〜第3の地点に対する各X線揺動曲線g1、g2、g3はガウシアン形態であることが分かり、第1〜第3の地点のそれぞれには結晶欠陥が存在することが分かる。
【0048】
次に、既に設定された各地点の各X線揺動曲線g1、g2、g3の各半価幅(Full Width at Half Maximum、FWHM)を比較し、結晶性が最も劣位な地点、または結晶性が最も悪い地点を選択する(S230)。半価幅は、揺動曲線において最高強度(maximum intensity)値の半分になる各値間の幅を言う。
【0049】
結晶性が良いことは、欠陥がほとんど存在しないことを意味することができ、ウエハーの表面に機械的損傷が多いことは、物理的な力によってウエハーの表面に欠陥が多いことを意味することができ、揺動曲線の半価幅値が大きいほど欠陥がより多く存在し得る。
【0050】
ウエハーの既に設定された各地点に対する結晶性の劣位は、ウエハーの既に設定された各地点の半価幅に比例し得る。
【0051】
図3に示した既に設定された各地点に対する各揺動曲線g1、g2、g3を参照すると、ウエハーの第1の地点に対する揺動曲線g1の半価幅が最も大きいことが分かり、ウエハーの第1の地点の結晶性が最も劣位であると判断することができ、最も劣位な地点としてウエハーの第1の地点を選択することができる。
【0052】
次に、第1の揺動曲線に基づいて、ウエハーの深さ方向にウエハーの損傷の程度による厚さをモデリングする(S130)。
【0053】
図4は、
図1に示したモデリング段階(S130)の一実施例を示し、
図5は、
図4に示したモデリング段階(S130)を説明するための第1の揺動曲線の一実施例を示す。
【0054】
図4及び
図5を参照すると、第1の揺動曲線に対する基準レベル(background level)501を設定する(S310)。
図5に示した第1の揺動曲線は、S120段階で選択した結晶性が最も劣位な地点に対する揺動曲線であり得るが、これに限定されることはなく、S210段階の既に設定された各地点に対する各揺動曲線のうちいずれか一つであり得る。
【0055】
XRD測定時、第1の揺動曲線のx軸の範囲(range)である入射角度を十分に大きくすると、第1の揺動曲線が飽和される回折ビームの強度を有するが、これを基準レベルまたはバックグラウンドレベル(background level)として設定することができる。これは、XRD測定時、第1の揺動曲線の回折ビームの強度や基底レベル(base level)などが、XRD測定条件であるパワー(power)、スリットサイズ(slit size)、X線チューブライフタイム(x―ray tube lifetime)、サンプル(sample)状態などによって変わり得るためである。
【0056】
ここで、基準レベルは、測定状態のノイズ(noise)であると仮定し得るが、飽和時にこのような基準レベルの設定が必要である。理論上には、ブラッグの回折条件を満足させないので、強度のピーク(peak)が表れる地点以外では強度がゼロ(0)になるべきであるが、このような基準レベルが測定され得る。
【0057】
次に、X線揺動曲線において基準レベル501より高い強度を有するX線入射角度(θ)の範囲(θL〜θR)を設定する(S320)。このとき、設定するX線入射角度(θ)の範囲(θL〜θR)は、ウエハーの種類、ウエハーの表面や結晶状態によって決定することができる。
【0058】
例えば、シリコンウエハーの場合は、ウエハーの加工面が(100)面であり得る。また、X―線回折原理(structure factor)によってシリコンの回折が(100)面で発生しないので、(100)面と平行で且つ回折が起こる(400)面に対してX線回折法による揺動曲線を測定することができる。このように回折が発生しない結晶面を基準面として設定することができる。
【0059】
例えば、X線検出器(detector)の角度を固定させ、(400)面に入射されるX―線の入射角度を変化させながらX線の強度を測定することができ、基準レベル501より高い強度を有するX線入射角度(θ)の範囲(θL〜θR)は実質的に約33.6゜〜35.0゜であり得る。
【0060】
しかし、ウエハーの加工面が変わる場合は、X線入射角度(θ)の範囲は変わり得る。例えば、(111)ウエハーまたは(110)ウエハーの場合は、X線回折を測定する結晶面自体が変わるので、X線入射角度(θ)の範囲がシリコンウエハーと比較するときに変わり得る。また、サファイアなどのウエハーの場合も、シリコンウエハーと比較するとき、X線入射角度(θ)の範囲が変わり得る。
【0061】
ここで、(100)ウエハーは、ウエハーの加工面(前面または後面)の指数が(100)であるウエハーを意味することができ、(111)ウエハー及び(110)ウエハーも、加工面がシリコンの各結晶面のうち(111)、(110)であるウエハーを意味することができる。(100)面は、面指数が(100)であるシリコンの結晶面を意味することができる。ここで、加工とは、インゴットのスライシングを意味することができ、スライシングと共に、ラッピング、グラインディング、ポリッシング、エッチングなども含ませることができる。
【0062】
一般に、シリコンウエハーは、正確に基準面、例えば、(100)面にスライシングされるのではなく、(100)面から特定角度(off―angle)だけ傾斜した方向にスライシングされ得る。ここで、特定角度は、顧客の要請によって決定することができる。
【0063】
以下、加工面が基準面と一致するウエハーを第1のウエハーと言い、加工面が基準面から特定角度だけ傾斜したウエハーを第2のウエハーと言う。
【0064】
第1のウエハーに対する揺動曲線のピーク値が表れる角度は、基準面に対する揺動曲線のピーク値が表れる角度(以下、「第1の角度」と言う)と一致し得る。
【0065】
基準面、例えば、シリコンの(400)面の場合、面間距離、及びX線の波長が定められているので、ブラッグの回折条件によってピーク値が表れる角度(例えば、34.566゜)を求めることができる。
【0066】
その一方、第2のウエハーに対する揺動曲線のピーク値が表れる角度(以下、「第2の角度」と言う)は、基準面に対する揺動曲線のピーク値が表れる角度と一致しない場合もあり、角度の差が発生し得る。
【0067】
したがって、第2のウエハーに対しては次のように揺動曲線の補正が必要であり得る。また、第2のウエハーに対しては、補正された揺動曲線を用いて基準レベル501より高い強度を有するX線入射角度(θ)の範囲を設定することができ、後続して進行される手順も補正された揺動曲線に基づいて行うことができる。
【0068】
すなわち、第1の角度と第2の角度との差だけ、第2のウエハーに対する揺動曲線の角度を補正することができる。例えば、第1の角度と第2の角度との差だけ、第2のウエハーに対する揺動曲線をX軸方向に平行移動させることができる。
【0069】
次に、λ=2dsinθというブラッグの法則(Bragg’s law)を用いて、設定されたX線入射角度(θ)の範囲(θL〜θR)に対する面間距離(d)を算出する(S330)。
【0070】
ここで、面間距離(d)は、ウエハーの各基準面間の距離であり得る。
【0071】
例えば、シリコンウエハーの場合、面間距離(d)は、各(400)面間の距離を意味することができる。すなわち、機械的加工による損傷によって変形した各(400)面間の面間距離を意味することができる。
【0072】
次に、算出された面間距離(d)を用いて、X線入射角度(θ)の範囲(θL〜θR)内のウエハーの各ストレイン値を算出する(S340)。ストレインは、所定の物理的または機械的要因によって変化した面間距離(d)が基準面間距離(d0)に比べてどれほど変わったのかに対する比率を意味することができる。
【0073】
例えば、ウエハーのストレイン値は、差減面間距離(d1)と基準面間距離(d0)との比(d1/d0)であり得る。
【0074】
基準面間距離(d0)は、ウエハーの各基準面間の距離であり得る。
【0075】
基準面間距離(d0)は、第1の揺動曲線において回折ビームの強度が最も大きい値に対応する面間距離であり得る。例えば、基準面間距離(d0)は、第1の揺動曲線において強度が最も大きい場所での面間距離であり得る。
【0076】
例えば、シリコン(400)面に対する基準面間距離(d0)は、1.3577オングストローム(Å)であり得る。
【0077】
差減面間距離(d1)は、S330段階で算出された面間距離(d)と基準面間距離(d0)との差(d−d0)であり得る。
【0078】
次に、X線入射角度(θ)の範囲(θL〜θR)に対応して算出された各ストレイン値をサンプリングし、サンプリングされた各ストレイン値を抽出する(S350)。
【0079】
例えば、算出された各ストレイン値のうち最高の値に基づいて、サンプリングされた各ストレイン値を抽出することができる。算出された各ストレイン値のうち最高の値を一定の値だけ減少させることによって、各ストレイン値のサンプルを抽出することができる。
【0080】
例えば、サンプリングされた各ストレイン値の差は50ppm〜150ppmであり得るが、これに限定されることはない。ppmは、parts―per millionの略字であって、10
-6を意味する。
【0081】
例えば、算出されたストレインの最も大きい値が1000ppmであると仮定すると、100ppmずつストレイン値を減少させながら各サンプル(例えば、1000ppm、900ppm、800ppm、700ppmなど)を抽出することができる。
【0082】
次に、抽出されたサンプリングされた各ストレイン値のそれぞれに対応するX線回折ビームの強度に基づいてウエハーの機械的損傷の程度による厚さをモデリングすることができる(S360)。
【0083】
抽出された各ストレイン値から面間距離(d)を算出することができ、ブラッグの回折条件を用いて算出された面間距離(d)に対応するX線の入射角度(θ)を算出することができ、第1の揺動曲線を用いて算出したX線入射角度(θ)に対応するX線回折ビームの強度を獲得することができる。獲得されたX線回折ビームの強度に比例して、ウエハーの機械的損傷の程度による厚さをモデリングすることができる。
【0084】
例えば、ウエハーは、機械的損傷程度によってウエハーの深さ方向に複数の区間に区分することができる。そして、サンプリングされた各ストレイン値のそれぞれに対応するX線回折ビームの強度に基づいて各区間のそれぞれの厚さを設定することができる。
【0085】
例えば、各区間の厚さは、サンプリングされた各ストレイン値のそれぞれに対応するX線回折ビームの強度に比例して設定することができる。ビームの強度自体が測定条件によって変わり得るので、X線回折ビームの強度に基づいて各区間の大略的な厚さを選定することができる。
【0086】
図6は、
図4に示したウエハーの機械的損傷程度のモデリングを説明するための図である。
【0087】
図6を参照すると、ウエハーが受ける機械的損傷の程度は、ウエハーの表面で最も激しく、ウエハーの深さ方向603に進行するほど機械的損傷の程度が減少し、所定以上の深さでは機械的損傷が表れない場合もある。
【0088】
ここで、ウエハーの表面601は、X線が入射するウエハー面であり、バルク(bulk)602はウエハーの内側に位置し得る。ウエハーの深さ方向603は、ウエハーの表面601からバルク602に進行する方向であり得る。
【0089】
ウエハーは、機械的損傷程度によってウエハーの深さ方向603に複数の区間(例えば、612、614、616)に区分することができる。ウエハーの表面601に隣接する第1の区間(例えば、612)は最も大きいストレイン値を有することができ、機械的損傷程度が最も激しいことが分かる。また、バルク602に隣接する第3の区間(例えば、616)は最も小さいストレイン値を有することができ、機械的損傷程度が最も弱いことが分かる。
【0090】
サンプリングされた各ストレイン値(S1、S2、S3)のそれぞれに対応するX線回折ビームの強度に基づいて、各区間(例えば、612、614、616)のそれぞれの厚さt1、t2、t3を設定することができる。
【0091】
各区間(例えば、612、614、616)の厚さt1、t2、t3は次のように設定することができる。
【0092】
例えば、算出された各ストレインの最も大きな値が1000ppmであると仮定すると、100ppmずつストレイン値を減少させながら各区間(例えば、612、614、616)を設定することができる。
【0093】
ウエハーの表面からバルク方向に行くほど損傷の程度が減少するので、同一の100ppm間隔でストレインを分けても、ストレイン値が小さいほど区間の厚さは遥かに大きく増加し得る。
【0094】
図6に示したように、ストレインを各区間S0、S1、S2、S3に分けると、同一のストレイン別の厚さは増加し得る(t0<t1<t2<t3)。
【0095】
各ストレイン値をサンプリングし、サンプリングされた各値(S0、S1、S2、S3)に対応する各区間610、612、614、616を定めることができる。このとき、サンプリングされたストレイン値が大きいほど、これに対応する区間は下側に配置され得る(例えば、S0―610)。
【0096】
サンプリングされた各ストレイン値(S0、S1、S2、S3)のそれぞれに対応する回折ビームの強度に比例して、各区間610、612、614、616の厚さt0、t1、t2、t3を設定することができる。
【0097】
これは、
図5に示した第1の揺動曲線を見ても、基準レベル501より高い強度が開始される地点のストレイン値からストレインを等区間に分けたとき、X線回折ビームの強度は、ストレインが減少するほど急激に増加することを確認することができる。
【0098】
次に、ウエハーの機械的損傷の程度のモデリング結果に基づいてコンピューターシミュレーションを行い、シミュレーション結果による第2の揺動曲線を獲得する(S140)。
【0099】
S130段階でモデリングした結果と測定条件に対するデータに基づいてコンピューターシミュレーションを行い、シミュレーション結果による第2の揺動曲線を獲得することができる。
【0100】
ここで、S130段階でモデリングした結果は、ストレイン(例えば、S0、S1、S2、S3)、及び厚さt0、t1、t2、t3を意味することができる。また、測定条件は、第1の揺動曲線のピーク強度(peak intensity)、基準レベルの強度、X線回折装置の光学(optic)条件、X軸の測定間隔、及び第1の揺動曲線の設定されたX線入射角度の範囲を含むことができる。
【0101】
図7a〜
図7dは、実施例に係る第1の揺動曲線の実測値、及びシミュレーションされた結果による第2の揺動曲線のマッチング過程を示す。
【0102】
f1は、S220段階で獲得した第1の揺動曲線の実測値を示す。
【0103】
f2は、S140段階によってコンピューターシミュレーションが行われた結果による第2の揺動曲線を示す。
【0104】
f3は、第1次マッチングによるコンピューターシミュレーション結果による第2の揺動曲線を示し、f4は、第2次マッチングによるコンピューターシミュレーション結果による第2の揺動曲線を示し、f5は、第3次マッチングによるコンピューターシミュレーション結果による第2の揺動曲線を示す。
【0105】
X線揺動曲線を算出するコンピューターシミュレーションプログラムを用いて、S320で設定されたX線入射角度(θ)の範囲、S330で算出された面間距離(d)、S350で抽出されたサンプリングされた各ストレイン値、S360でモデリングされた各区間に対して設定された厚さに基づいてコンピューターシミュレーションを行い、
図7aに示した第2の揺動曲線を算出することができる。
【0106】
次に、S220段階で獲得した第1の揺動曲線の実測値とS140段階で獲得した第2の揺動曲線とをマッチングさせる(S150)。
【0107】
例えば、第2の揺動曲線のピーク強度の位置、X線入射角度(θ)の範囲、面間距離(d)、サンプリングされた各ストレイン値、及び各区間の各厚さのうち少なくとも一つを変化させることによって、第2の揺動曲線を第1の揺動曲線の実測値と一致させることができる。
【0108】
例えば、サンプリングされた各ストレイン値または
図6の各区間(例えば、612、614、616)の厚さ(例えば、t1、t2、t3)を調整することによって、第2の揺動曲線(例えば、
図7のf2)を第1の揺動曲線の実測値(例えば、
図7のf1)とマッチング(matching)または一致させることができる。
図7b〜
図7dに示したように、このようなマッチング過程は複数回繰り返して行うことができる。
【0109】
次に、マッチングされた結果に基づいてウエハーの損傷深さを算出する(S160)。
【0110】
S150段階のシミュレーション結果がS220段階の実測値と一致することは、シミュレーション結果で入力したサンプリングされた各ストレイン値のそれぞれに対して設定された厚さが、ウエハーが実際に有している損傷の深さと一致することを意味すると解釈することができる。
【0111】
したがって、S150段階でマッチングさせたシミュレーション結果で入力したサンプリングされた各ストレイン値のそれぞれに対応して調整された厚さを全て足し合わせることによって、ウエハーの損傷深さを算出することができる。
【0112】
実施例は、非破壊方法でウエハーの機械的損傷深さを把握することができ、サファイアウエハーのようにエッチングが難しいウエハーの機械的損傷深さを容易に把握することができる。
【0113】
同一のウエハーに対してエッチング及びポリッシングを用いる方法によって測定された損傷深さと実施例によって測定された損傷深さとを比較すると、実施例によって測定された損傷深さがより深いことを確認することができる。これは、実施例が、エッチング及びポリッシングを用いる方法によって確認されないサイズが小さい損傷に対しても損傷深さを測定できることを意味することができる。すなわち、実施例は、エッチング及びポリッシングを用いる方法よりも正確に機械的損傷深さを測定することができる。
【0114】
図8は、エッチング及びポリッシングを用いる方法(G1)と実施例に係る方法(G2)によって測定される損傷深さを示すグラフである。ケース1は、スライシング工程が完了したウエハーの損傷深さを測定した結果で、ケース2は、ラッピング工程が完了したウエハーの損傷深さを測定した結果で、ケース3は、グラインディング工程の完了後、OISF熱処理工程前のウエハーの損傷深さを測定した結果で、ケース4は、グラインディング工程及びOISF熱処理工程完了後のウエハーの損傷深さを測定した結果である。
【0115】
図8を参照すると、G1の損傷深さに比べてG2の損傷深さが4μm〜4.5μmさらに深く観察されることが分かる。このような差は、G1の場合、視覚化のためにウェハーに対してエッチングを30秒間進行した後、顕微鏡を用いて観察するが、損傷(damage)が大きいウエハーの表面付近ではエッチングを通じて損傷層(damage layer)が観察されるが、損傷が小さいウエハーのバルク領域ではエッチングを通じて損傷層が観察されないためである。
【0116】
G1は、ウエハーを切り取り、ポリッシング及びエッチングを行うので、損傷深さの測定時間が長くかかり、破壊分析であるという短所を有する。また、G1は、ケース3の場合に損傷深さが測定されないので、OISF熱処理後に損傷深さを測定しなければならなく、測定時間が長くかかる。
【0117】
その一方、実施例は非破壊であるという長所を有する。また、実施例は、初期にはモデリングを作り、これを用いてコンピューターシミュレーションを通じて実測値とマッチングさせる作業に多くの時間が要されるが、一旦プロトタイプ(prototype)のモデルが樹立された後には、プロトタイプのモデルに基づいて各サンプル別に少し変形すると、短い時間に損傷深さ評価を行うことができる。
【0118】
以上で各実施例に説明した特徴、構造、効果などは、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれ、必ずしも一つの実施例にのみ限定されるものではない。さらに、各実施例で例示した特徴、構造、効果などは、各実施例の属する分野で通常の知識を有する者によって他の実施例に対しても組み合わせたり変形して実施可能である。したがって、このような組み合わせ及び変形と関係した各内容は、本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきであろう。