【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、上記目的およびいくつかの他の目的は、
− 単数または複数の実験動物の収容に好適な少なくとも1つのケージと、
− 少なくとも1つのケージに閉じ込められる空気をそれぞれ備える少なくとも1つのケージ空間と、
− 少なくとも1つのケージ空間の外の周囲空間と、
− 周囲空間の気候と異なる少なくとも1つのケージ空間の気候を提供することに適した気候制御ユニットと、
− ケージシステムへの空気の流れのための空気入口と、
− ケージシステムから外への空気の流れのための空気出口と
を備えるケージシステムを提供することによって、本発明の第1の態様で達成されることが意図される。
【0014】
ここで、気候制御ユニットは、気体の流れに送り込まれる蒸気の流れの発生のための気化器を備え、その気化器は、
− 蒸気を発生させる気化室と、気化室の温度を上げるための加熱要素とを備える、液体の温度をその沸点より上に上昇させるためのボイラユニットと、
− 蒸気を発生させる液体を気化室に供給するための液体供給チューブと、
− 発生した蒸気を気化室からそれが追加される気体の流れの方へ導くための蒸気出口チューブと
を備え、
− 気化器において、開放構造を有する表面張力破壊装置が、液体が液体供給チューブから気化室に流れるときに表面張力破壊装置を通過するように、端部が気化室に接しているまたは突出している液体供給チューブの端部に設けられ、
− 気化器において、表面張力破壊装置が、気化室における液滴の任意の有意な形成なしで液体を気化室に供給できるように、液体が気化室に入る領域の液体供給チューブの開口の断面より大幅に大きい表面積を有する。
【0015】
気候制御ユニットにおいて、液体は蒸気を発生させる水であり、気体は少なくとも部分的に閉じ込められた空間の大気であり、気候制御ユニットが、
− 気候制御ユニットの制御に適した制御システムと、
− 気化器のための液体供給と、
− 液体供給から液体供給チューブを通って液体の制御された量を供給することに適した制御可能なポンプであって、その量が制御システムによって決定される、制御可能なポンプと
をさらに備え、
− ここで、制御システムは、パラメータである、気化室に供給される液体の量および流量、ならびに、気化室または気化器本体の温度のうちの少なくとも1つを制御することに適しており、
− 制御は、パラメータである、気化器本体の現在の温度、ならびに、蒸発する水が送り込まれる空気の現在の湿度のうちの少なくとも1つの計測された値および/または所定の値に基づく。
【0016】
蒸気は、その臨界点より低い温度、すなわち同一の物質が液体または固体状態で存在することができる温度での気相の物質である。たとえば、水の臨界温度は374℃である。
【0017】
「開放構造」は、液体がそこを通過できることを意味する。これは好ましくは、液体の流れに対する任意の大きな障害なしで起こらなければならず、一方、同時に、液体が流れる細孔または開口は、液滴がほとんど形成されないほど小さくなければならない。これを可能にする開口の特定のサイズは、液体およびその表面張力を含む、使用される実際の材料に依存する。
【0018】
本発明によって網羅されるように考慮される実施形態は、液体供給チューブが気化室に延在する漏斗状部まで続くということであり、漏斗状部は、液体供給チューブから気化室に流れるときに、液体が表面張力破壊装置を通過するときの液滴形成が防止される程度に、液体の表面張力を破壊または低下させる材料から作製またはその材料で覆われている。これはたとえば、所定の液体に対するこの効果を有するナノ構造を有する漏斗状部の内面の結果として生じてもよい。
【0019】
一般に、液体の表面張力は、適切な化学薬品の添加によっても変化する可能性がある。しかし、そのような化学薬品は動物に有害である可能性がある、または実験に影響する可能性があるため、これは実験動物のためのケージシステムに関しては避けなければならない。
【0020】
液滴形成の防止の効果は、液体の流れを支配でき、少量の液体でさえ安定させることができるということである。そのような正確な制御の重要性の例は、以下に挙げられる。
【0021】
液体供給チューブおよび蒸気出口チューブは好ましくは、液体供給チューブにおける蒸気発生および蒸気出口チューブにおける凝縮による液滴形成を防止するために絶縁される。これによって、蒸気の一定で制御可能な流れの高い精度が保証される。
【0022】
現在の好ましい実施形態において、気化器のボイラユニットは、ボイラユニット内の少なくとも1つの位置の温度を計測するためのセンサをさらに備えてもよい。これによって、温度の制御および監視を容易にすることができる。
【0023】
気化器の表面張力破壊装置の一部は、液体供給チューブに延在し、液滴の形成が防止されるように、液体供給チューブから出る液体の表面張力を破壊してもよい。これによって、液滴形成のリスクをさらに下げることができ、非常に少量でさえ、液体の流れはより安定する。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、気化器の表面張力破壊装置は、少なくとも1つの単繊維の撚り線のもつれたかたまりの形態、たとえばステンレスウールの形態である。ワイヤウールまたはワイヤスポンジとしても知られているそのような材料は、微細な軟鋼フィラメントから作製される。それは、仕上げおよび修理作業、家庭用調理器具の洗浄、ならびに、表面の研磨における研削材を含む、多数の用途で使用される。本発明をもたらした作業において、気化室の液滴形成防止の開発中、気化器と結合して使用される可能性があることが、驚くべきことに実現された。
【0025】
あるいは、気化器の表面張力破壊装置は、液体の液滴形成なしに、液体供給チューブから気化室への液体の通過を可能にする内側構造を有する多孔または発泡材料の形態でもよい。多孔または発泡材料が作製される材料は、ポリマー、金属、セラミック、あるいはそれらの組合せまたは複合材料から選択されてもよい。
【0026】
原則として、1つまたは複数の単繊維の撚り線のもつれたかたまり、ならびに多孔または発泡材料を備える表面張力破壊装置を使用することも可能である。
【0027】
表面張力破壊装置が作製される材料と、液体すなわち蒸気を発生させる水との間に不都合な反応がないことが好ましくは保証されなければならない。表面張力破壊装置自体、ならびに単繊維、細孔または気泡の寸法および幾何学的な配置、ならびにそれらの空間配置の実寸法は、液体および流量を含む多数のパラメータに依存する。最適または少なく満足できる設計は、おそらくコンピュータシミュレーションによって支援される実験によって決定されてもよい。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、気化器は、0.05〜50g/分、たとえば0.05〜10g/分または10〜50g/分、好ましくは0.06〜35g/分の量で気化室に供給される液体の気化のために使用されることに適している。本発明に関して行われた実験は、実験動物のためのケージシステムの気候制御の分野で使用される他の気化器では可能ではない液体の安定した制御可能な流れおよびこれらの少量でさえ結果として得られる蒸気を保証することが可能であることを示している。蒸気の正確に制御可能で安定した流れを発生させる可能性の利点により、気化器は、比較的少量の蒸気を必要とする用途に特に好適である。これは、以下でさらに詳細に説明される。
【0029】
水および/または蒸気は、周囲と同一の圧力を有することを好ましくは意味する非加圧でもよい。分野内で知られているいくつかの他のシステムは、空気流に加えられる蒸気の流れを制御する正確に制御可能なバルブと組み合わせて、加圧された蒸気を使用することによって機能する。しかし、そのような加圧したシステムは典型的に、非加圧システムでは回避できる厳密な保安規程が満たされることを必要とする。
【0030】
本発明によるケージシステムにおいて、空気流れの体積流量は、1〜600m
3/時間、たとえば10〜250m
3/時間でもよい。
【0031】
本発明によるケージシステムは、フィルタ、冷却ユニット、ヒータ浄水器などの他の部品をさらに備えてもよい。そのようなシステムの可能な設計の例は、詳細な記述で提供される。ケージシステムはまた、においおよび/またはフェロモンを添加する手段をさらに備えてもよい。たとえばこれは、実験動物がそのような刺激に反応する方法を研究するように設計されるいくつかの実験に関連してもよい。
【0032】
好ましい実施形態において、ケージシステムは、単数または複数のハツカネズミまたはネズミなどの実験動物をそれぞれ収容する複数のケージを備える。システムは典型的に研究所で使用され、ケージは典型的にラックに配置される。システムは、すべてのケージを備える1つだけのケージ空間があってもいいように、すべてのケージの気候を同一に制御するために使用されてもよい。
【0033】
他の実施形態において、気候は各ケージ空間で個々に制御することができ、各ケージ空間は1つまたは複数のケージを備えてもよい。ケージシステムの別の可能な用途は、異なる位置の間で動物を輸送する間の、気候の制御のためである。たとえ好ましい使用が複数のケージを備えるケージシステムのためであるとしても、保護の範囲は、1つのケージのみを有するシステムも含むことが意図される。
【0034】
上記のような実験動物のためのケージシステムに備えられる気化器は、比較的少量の蒸気を必要とする用途に特に好適である。これは、蒸気発生を移動ユニットに含むことができる比較的小さいシステムを設計することを可能にする。これにより、実験システムの配置および再配置に関して、設備が大きいために装置の一部がたとえば天井より上に配置される既知のシステムで利用可能であることよりも、柔軟性は高くなる。
【0035】
ケージシステムの制御システムは、少なくとも1つのケージの温度、ならびに、空気出口を介して少なくとも1つのケージ空間から出る空気の温度および/または湿度の制御に基づくことに適していてもよい。
【0036】
このようなケージシステムにおいて、制御システムは、一組の選択された気候限界に基づく周囲空間の気候から独立している少なくとも1つのケージ空間の気候パラメータを制御することに適していてもよく、ここで、制御される気候パラメータの1つは、少なくとも1つのケージ空間における空気中の所望のレベルの相対湿度に基づく湿度である。
【0037】
制御システムは、気候の固定された限界および/または気候の所望の限界に基づく少なくとも1つのケージ空間の気候を提供するためにプログラム可能でもよい。
【0038】
第2の態様において、本発明は、少なくとも単数の実験動物を周囲環境から保護する方法に関するものであり、方法は、上記のケージシステムの少なくとも1つのケージに少なくとも1つの実験動物を収容することを含み、方法は、制御可能で、周囲空間の気候と変えることができる少なくとも1つのケージ空間の気候を提供する気候制御ユニットを使用することをさらに含む。
【0039】
本発明の第1および第2の態様は、それぞれ組み合わされてもよい。本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかであり、それらに関して説明される。
【0040】
ここで、本発明によるケージシステムならびにその中に備えられる気候制御システムおよび気化器は、添付の図面に関してさらに詳細に記載される。図は、本発明を実装する1つの方法を示し、設定される添付の特許請求の範囲に含まれる他の可能な実施形態に限定するものとしては解釈されない。