【実施例1】
【0016】
[吊り上げベルト形状保持具]
<1>全体の構成。
本発明の吊り上げベルト形状保持具1は、土嚢袋Aの吊り上げベルトa1を起立した状態に支持することで、吊り上げベルトa1のループ内に吊り上げ具Hの挿通空間Sを確保するための補助治具である。
吊り上げベルト形状保持具1は、枠状の定置部10と、定置部10の対向する二点から上方に立設したアーチ形状の支持部20と、支持部20の頂部21に付設した固定部30と、を備える。
なお、定置部10と支持部20とはスナップ式などにより分離可能な構成としてもよい。
【0017】
<2>定置部。
定置部10は、土嚢袋A上に安定的に位置決めするための枠状の部材である。ここで枠状とは、円環状、矩形状などの各種形状を含む。
本例では、定置部10として、底面と上面を有する平座金状の底部11と、底部11の上面内側から上方へ立設した壁部12と、を一体に備えた断面L字形状のリング体を採用する。断面がL字形状であるため、構造上の強度が高く、破損や歪みが生じにくい。
但し、定置部10の形状は断面L字形状に限られず、断面逆T字形状、断面円形、または断面矩形などを採用してもよい。
定置部10の素材は、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、塩化ビニルなどの合成樹脂の他、アルミニウムやステンレスなどの金属を採用してもよい。
【0018】
<3>支持部。
支持部20は、吊り上げベルトa1を支持して起立させるための部材である。
本例では、支持部20として、定置部10の対向する二点から上方に立設したアーチ形状の帯状部材を採用する。
支持部20は、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、塩化ビニルなどの、形状を弾性的に復元可能な可撓性を有する合成樹脂からなる。
支持部20は、素材の剛性でなくアーチ構造による構造の剛性により吊り上げベルトa1を支持し、素材そのものは柔軟であるため、上に土嚢袋Aを積み重ねても座屈変形せず、形状を復元可能である。
なお、支持部20はチューブ状またはリブ状(断面にリブで仕切られた複数の空間を備えた形状)であってもよい。また、帯状体に限らず、断面円形や断面矩形の部材を採用してもよい。
このほか、支持部20としてアルミニウムやステンレスなどの金属を採用してもよい。
【0019】
<4>固定部(
図2)。
固定部30は、支持部20の頂部21に吊り上げベルトa1を固定するための部材である。
本例では、固定部30として、スナップ嵌合式のベルトを採用する。ベルトの基端は支持部20の頂部21に接続し、先端には円形の取付孔31が形成されている。また、頂部21の、ベルトの基端付近には、取付孔に対応する凸部32が突設されている(
図2)。
なお、固定部30の構造はこれに限られず、ロープ、ワイヤ、チェーンなどの紐状体、面ファスナー、または結束バンドなどを採用してもよく、要は支持部20の頂部21に吊り上げベルトa1を固定できる機能を備えていればよい。
また、固定部30は、支持部20と一体成型であっても、別部材であってもよい。
【0020】
<5>素材。
定置部10と支持部20は射出成形によって製造することができる。また、素材が合成樹脂の場合には発泡剤を加えた射出発泡成形によっても製造することができる。
射出発泡成形を採用することで、軽量化および材料コストの低廉化を図ることができる。
また、素材にポリプロピレンやポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどを採用すれば、吊り上げベルト形状保持具1は焼却可能な使い捨てタイプとなる。
この場合、使用後の土嚢袋Aからの取り外し作業が不要となるため、作業効率が高く、また、放射性物質を取り扱う場合の被曝リスクを低減することができる。
【0021】
[吊り上げベルト形状保持具の使用方法]
引き続き、本発明の吊り上げベルト形状保持具の使用方法について説明する。
<1>土嚢袋。
本発明の使用対象となる土嚢袋Aは、上部に開口を備えた袋体であって、大型土嚢、フレコンバッグなどを含む。
土嚢袋Aの内部には中詰材や放射性物質などが封入され、開口がロープで縛って閉じられることで、僅かに上方に突起した縛り口部a2を形成する。
土嚢袋Aの周面の上部には、ループ状の一対の吊り上げベルトa1が付設されている。
【0022】
<2>吊り上げベルト形状保持具の設置。
土嚢袋Aの上部に吊り上げベルト形状保持具1を設置する(
図3(a))。
土嚢袋Aの上方から、縛り口部a2に定置部10を被せ、定置部10が縛り口部a2の周囲を囲むように配置する。
本発明の吊り上げベルト形状保持具1は、弾性変形させた状態で吊り上げベルトa1内に差し入れる従来技術と異なり、土嚢袋Aの上部に定置部10を載せるだけで容易に位置決めできるため、作業効率がよい。
【0023】
<3>吊り上げベルトの固定。
2本の吊り上げベルトa1を土嚢袋Aの上部に持ち上げる。この際、固定部30を、片側の吊り上げベルトa1の中にくぐらせて、2本の吊り上げベルトa1を固定部30の片側に位置させる(
図3(b))。
続いて固定部30を曲げて、先端の取付孔31に凸部32を嵌合させることで、2本の吊り上げベルトa1を固定部30のリング内に拘束する(
図2)。
これによって、2本の吊り上げベルトa1が支持部20に支持されて起立し、吊り上げベルトa1のループと土嚢袋Aの上部との間に、挿通空間Sが形成される(
図4(c))。
【0024】
<4>吊り上げ。
吊り上げベルト形状保持具1によって確保された挿通空間S内に、クレーンのフックなどの吊り上げ具Hの先端を差し入れて、吊り上げベルト形状保持具1ごと土嚢袋Aを吊り上げる(
図4(d))。
【0025】
<5>積み上げ・再吊り上げ。
土嚢袋Aは、施工にあたって一旦仮置き場などへ積み上げられ、その後に最終設置場所へ搬送されることがある。
このような場合、下段の土嚢袋Aに吊り上げベルト形状保持具1を設置したまま、その上に上段の土嚢袋Aを積み重ねることができる。この際、支持部20は上段の土嚢袋Aの荷重で撓んで平らに変形する。
仮置き後、再度上段の土嚢袋Aを吊り上げると、下段の土嚢袋Aの吊り上げベルト形状保持具1の支持部20が弾性復元して、挿通空間Sが自動的に形成される。
特許文献1の吊り上げベルト支持具は、環状体全体が撓み変形する構造であるため、積み上げた上段の土嚢袋を持ち上げると、下段の土嚢袋に設置した吊り上げベルト支持具が弾性復元する際に、土嚢袋の上面からずれて外れてしまう。よって、作業員による再設置が必要となる。
これに対し、本願の吊り上げベルト形状保持具1は、支持部20のみを撓み変形させ、定置部10を変形させない構造であるため、上段の土嚢袋Aを持ち上げても、定置部10が縛り口部a2の周囲に確実に保持され、外れることがない。
よって、土嚢袋Aの積み上げ・再吊り上げを、作業員を介在させず重機のみで行うことができる。