(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6182691
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ピペット又はピペットチップと液体注入用アタッチメントとの取付構造及び液体注入用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
B01L 3/02 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
B01L3/02 C
B01L3/02 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-519011(P2017-519011)
(86)(22)【出願日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】JP2016074161
【審査請求日】2017年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-188466(P2015-188466)
(32)【優先日】2015年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(72)【発明者】
【氏名】二嶋 諒
(72)【発明者】
【氏名】室田 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】宇田 徹
【審査官】
池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−518571(JP,A)
【文献】
特開2012−147751(JP,A)
【文献】
特表平02−503883(JP,A)
【文献】
特開2006−116524(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/002193(WO,A1)
【文献】
特開昭63−315949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00−99/00
G01N 1/00− 1/34
G01N 35/00−37/00
B01J 19/00−19/32
B01J 4/00− 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペット又は該ピペットに取り付けられるピペットチップと、前記ピペット又は前記ピペットチップに着脱可能に取り付けられる液体注入用アタッチメントとの取付構造であって、
前記液体注入用アタッチメントはゴム状弾性体によって筒状に形成されたアタッチメント本体の一端側に、前記ピペット又は前記ピペットチップの先細り状の先端部が挿入される第1筒穴部を有すると共に、他端側に、前記第1筒穴部に連通し、前記ピペット内又は前記ピペットチップ内の液体を流出させる第2筒穴部を有し、
前記第2筒穴部が前記第1筒穴部よりも小径に形成されることにより、前記第1筒穴部と前記第2筒穴部との間に段差部を有し、
前記段差部にワッシャが設けられ、
前記ピペット又は前記ピペットチップの前記先端部が、前記第1筒穴部から挿入され、前記ワッシャに嵌入しており、
前記先端部が前記ワッシャに嵌入した状態で、前記第2筒穴部は、前記先端部よりも先端側につぶし代を有していることを特徴とするピペット又はピペットチップと液体注入用アタッチメントとの取付構造。
【請求項2】
前記ワッシャは、合成樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のピペット又はピペットチップと液体注入用アタッチメントとの取付構造。
【請求項3】
ピペット又は該ピペットに取り付けられるピペットチップと、前記ピペット又は前記ピペットチップに着脱可能に取り付けられる液体注入用アタッチメントとの取付構造であって、
前記液体注入用アタッチメントはゴム状弾性体によって筒状に形成されたアタッチメント本体の一端側に、前記ピペット又は前記ピペットチップの先細り状の先端部が挿入される第1筒穴部を有すると共に、他端側に、前記第1筒穴部に連通し、前記ピペット内又は前記ピペットチップ内の液体を流出させる第2筒穴部を有し、
前記第2筒穴部が前記第1筒穴部よりも小径に形成されることにより、前記第1筒穴部と前記第2筒穴部との間に段差部を有し、
前記ピペット又は前記ピペットチップの前記先端部に、前記第1筒穴部の内径よりも小径且つ前記第2筒穴部の内径よりも大径のフランジ部を有し、
前記ピペット又は前記ピペットチップの前記先端部が、前記第1筒穴部から挿入され、前記フランジ部を前記段差部に当接させており、
前記フランジ部が前記段差部に当接した状態で、前記第2筒穴部は、前記先端部よりも先端側につぶし代を有していることを特徴とするピペット又はピペットチップと液体注入用アタッチメントとの取付構造。
【請求項4】
ピペット又は該ピペットに取り付けられるピペットチップに着脱可能に取り付けられる液体注入用アタッチメントであって、
ゴム状弾性体によって筒状に形成されたアタッチメント本体の一端側に、前記ピペット又は前記ピペットチップの先細り状の先端部が挿入される第1筒穴部を有すると共に、他端側に、前記第1筒穴部に連通し、前記ピペット内又は前記ピペットチップ内の液体を流出させる第2筒穴部を有し、
前記第2筒穴部が前記第1筒穴部よりも小径に形成されることにより、前記第1筒穴部と前記第2筒穴部との間に段差部を有し、
前記段差部に、前記ピペット又は前記ピペットチップの前記先端部が嵌入されるワッシャが設けられていることを特徴とする液体注入用アタッチメント。
【請求項5】
前記ワッシャは、外径が前記第1筒穴部の内径より大径に形成されており、該外径が前記第1筒穴部の内面に圧接し、前記段差部上に弾性的に保持されることを特徴とする請求項4記載の液体注入用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペット又はピペットチップと液体注入用アタッチメントとの取付構造及び液体注入用アタッチメントに関し、詳しくは、導入口の周囲をシールするための液体注入用アタッチメントのつぶし量を多く確保できると共に、液体注入用アタッチメントの変形や破損のおそれもないピペット又はピペットチップと液体注入用アタッチメントとの取付構造及び液体注入用アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ・トータル・アナリシス・システムズ(μTAS)またはラボ・オン・チップ(Lab-on-a-chip)等の名称で知られるように、基板内に所定の形状の流路を構成するマイクロチャネルおよびポート等の微細構造を設け、該微細構造内で物質の化学反応、合成、精製、抽出、生成及び/又は分析など各種操作を行うマイクロ流体チップが注目されている。マイクロ流体チップは、ゲノム解析、ゲノム創薬、蛋白質分析、予防診断、臨床診断または薬物スクリーニング等の医療関係市場や、化学分析、食品分析または環境モニタリング等の幅広い用途への適用が期待されている。
【0003】
従来、試薬等の液体をピペットから、送液チューブ、コネクタ、ポンプ及びバルブ等を使用することなく、簡単な構成でシールでき、導入口からマイクロ流体チップ内のマイクロチャネルに注入できるようにした方法が種々提案されている。
【0004】
特許文献1の
図7(d)には、ピペットの先端に軟質部材の押し当て部を設け、この押し当て部を硬質部材のみで構成されたピペット受け部に押し当てることによってシールするようにしている。
【0005】
また、特許文献2の
図3には、分注チップの先端部に、全体が軟性のエラストマーによって形成されたアタッチメントを装着し、液体注入時に導入口の周囲をシールすることが提案されている。アタッチメントは中央部に穴が形成されており、分注チップの先端部をこの穴に嵌め合わせることによって、エラストマーの弾性を利用して分注チップの先端部に取り付けられるようになっている。
【0006】
さらに、特許文献3の
図1A〜
図1Eには、マイクロ流体試験装置の開放入口ポートに、エラストマー材料からなる筒状のポートを固定することが提案されている。ポートは、内径が異なる第1部分、第2部分、第3部分と基部とを備えることにより、様々な外径を有する中空管を使用しても、その中空管の外周面に密接してシールできるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−322850号公報
【特許文献2】特開2012−147751号公報
【特許文献3】特表2015−518571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ピペットから導入口に液体を注入する際、導入口の周囲を安定してシールできるように、特許文献1、2に記載のようにピペットに設けた軟質部材(エラストマー)のつぶし量を多くする必要がある。また、複数のピペットを有する自動注入装置を使用する場合では、各ピペットの先端部と各導入口との間の距離のばらつき(公差)が大きくなる場合があるため、このばらつきを吸収するためにも、軟質部材(エラストマー)のつぶし量を多くする必要がある。
【0009】
しかしながら、特許文献1記載のように、ピペットの先端に軟質部材からなる押し当て部を設けたものでは、軟質部材自体の体積が小さいため、大きなつぶし量を確保することが困難であり、ばらつきを十分に吸収できない問題がある。
【0010】
一方、特許文献2記載のように、ピペットの先端部に、全体がエラストマーからなるアタッチメントを取り付けたものでは、十分なつぶし量を確保できるものの、所定のつぶし量を得るためにアタッチメントを導入口に向けて押し付けた際、ピペットの先端部がアタッチメントの穴に過剰に圧入されることにより、穴が変形して保持力が損なわれたり、アタッチメント自体の破損を招いたりするおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、導入口の周囲をシールするための液体注入用アタッチメントのつぶし量を多く確保できると共に、液体注入用アタッチメントの変形や破損のおそれもないピペット又はピペットチップと液体注入用アタッチメントとの取付構造及び液体注入用アタッチメントを提供することを課題とする。
【0012】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0014】
1.
ピペット又は該ピペットに取り付けられるピペットチップと、前記ピペット又は前記ピペットチップに着脱可能に取り付けられる液体注入用アタッチメントとの取付構造であって、
前記液体注入用アタッチメントはゴム状弾性体によって筒状に形成されたアタッチメント本体の一端側に、前記ピペット又は前記ピペットチップの先細り状の先端部が挿入される第1筒穴部を有すると共に、他端側に、前記第1筒穴部に連通し、前記ピペット内又は前記ピペットチップ内の液体を流出させる第2筒穴部を有し、
前記第2筒穴部が前記第1筒穴部よりも小径に形成されることにより、前記第1筒穴部と前記第2筒穴部との間に段差部を有し、
前記段差部にワッシャが設けられ、
前記ピペット又は前記ピペットチップの前記先端部が、前記第1筒穴部から挿入され、前記ワッシャに嵌入しており、
前記先端部が前記ワッシャに嵌入した状態で、前記第2筒穴部は、前記先端部よりも先端側につぶし代を有していることを特徴とするピペット又はピペットチップと液体注入用アタッチメントとの取付構造。
2.
前記ワッシャは、合成樹脂からなることを特徴とする前記1記載のピペット又はピペットチップと液体注入用アタッチメントとの取付構造。
3.
ピペット又は該ピペットに取り付けられるピペットチップと、前記ピペット又は前記ピペットチップに着脱可能に取り付けられる液体注入用アタッチメントとの取付構造であって、
前記液体注入用アタッチメントはゴム状弾性体によって筒状に形成されたアタッチメント本体の一端側に、前記ピペット又は前記ピペットチップの先細り状の先端部が挿入される第1筒穴部を有すると共に、他端側に、前記第1筒穴部に連通し、前記ピペット内又は前記ピペットチップ内の液体を流出させる第2筒穴部を有し、
前記ピペット又は前記ピペットチップの前記先端部に、前記第1筒穴部の内径よりも小径且つ前記第2筒穴部の内径よりも大径のフランジ部を有し、
前記ピペット又は前記ピペットチップの前記先端部が、前記第1筒穴部から挿入され、前記フランジ部を前記段差部に当接させており、
前記フランジ部が前記段差部に当接した状態で、前記第2筒穴部は、前記先端部よりも先端側につぶし代を有していることを特徴とするピペット又はピペットチップと液体注入用アタッチメントとの取付構造。
4.
ピペット又は該ピペットに取り付けられるピペットチップに着脱可能に取り付けられる液体注入用アタッチメントであって、
ゴム状弾性体によって筒状に形成されたアタッチメント本体の一端側に、前記ピペット又は前記ピペットチップの先細り状の先端部が挿入される第1筒穴部を有すると共に、他端側に、前記第1筒穴部に連通し、前記ピペット内又は前記ピペットチップ内の液体を流出させる第2筒穴部を有し、
前記第2筒穴部が前記第1筒穴部よりも小径に形成されることにより、前記第1筒穴部と前記第2筒穴部との間に段差部を有し、
前記段差部に、前記ピペット又は前記ピペットチップの前記先端部が嵌入されるワッシャが設けられていることを特徴とする液体注入用アタッチメント。
5.
前記ワッシャの外径が前記第1筒穴部の内径よりやや大径に形成したことを特徴とする前記4記載の液体注入用アタッチメント。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導入口の周囲をシールするための液体注入用アタッチメントのつぶし量を多く確保できると共に、液体注入用アタッチメントの変形や破損のおそれもないピペット又はピペットチップと液体注入用アタッチメントとの取付構造及び液体注入用アタッチメントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る液体注入用アタッチメントの一例を示すピペットに使用した状態の斜視図
【
図2】マイクロピペット及びピペットチップのそれぞれ一例を示す図
【
図3】
図1に示す液体注入用アタッチメントの取付構造を示す断面説明図
【
図4】
図1に示す液体注入用アタッチメントの取付構造の使用状態を示す断面図
【
図5】本発明に係る液体注入用アタッチメントの他の一例を示す使用状態の断面図
【
図6】本発明に係る液体注入用アタッチメントの他の一例を示す使用状態の断面図
【
図7】本発明に係る液体注入用アタッチメントのさらに他の一例を示す使用状態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る液体注入用アタッチメントの取付構造は、液体が導入されるマイクロ流体チップのマイクロチャネル等の導入口に対して、ピペットを用いて液体注入作業を行う際に使用される。
ピペットとしては、図示しないが、自動注入装置に複数設けられるピペットの他、
図1に示すように、ゴム球102によって液体の吸引及び注入を行うピペット100、
図2に示すように、マイクロリットル単位の微量の液体を吸引及び注入する際に使用されるマイクロピペット110等があり、いずれも本発明におけるピペットに含まれる。
【0019】
液体注入用アタッチメント1(以下、単にアタッチメントという。)は、これらピペット100の先端部101やマイクロピペット110の先端部111に対して着脱可能に取り付けられて使用されるが、これらの使用に限定されない。例えば、
図2に示すように、これらピペット100やマイクロピペット110の先端に取り付けられるピペットチップ120の先端部121に着脱可能に取り付けられて使用されることもできる。これらピペット100、110の先端部101、111やピペットチップ120の先端部121は、熱可塑性樹脂を成形材料として、射出成形法等により先細り状に形成されたものであり、通常市販されているものを使用することができる。
【0020】
以下、本明細書では、
図1に示すように、ゴム球102によって液体の吸引及び注入を行うピペット100の先端部101にアタッチメント1を着脱可能に取り付けた場合について説明するが、以下の説明は、
図2に示すマイクロピペット110の先端部111及びピペットチップ120の先端部121に着脱可能に装着する場合にも援用することができる。
【0021】
図1は、ピペットの先端部に本発明に係る液体注入用アタッチメントを取り付けた状態を示す斜視図であり、1点鎖線の円で囲った部位を拡大して示している。
図3は、
図1に示す液体注入用アタッチメントの拡大断面図である。
【0022】
アタッチメント1は、全体がゴム状弾性体によって筒状に形成されている。具体的なゴム状弾性体は使用される液体の種類等によって異なるが、一般にゴムやエラストマーの材質が選定される。代表的なものとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム等が挙げられる。筒状に成形する方法は、例えば圧縮成形や射出成形等を採用することができる。
【0023】
このアタッチメント1は、例えば
図3に示すように円筒状に形成されたアタッチメント本体2と、アタッチメント本体2内に設けられたワッシャ3とによって構成されている。
【0024】
アタッチメント本体2は、一端側(
図3における上側)に、ピペット100の先端部101が挿入される第1筒穴部21を有すると共に、他端側(
図3における下側)に、ピペット100内の液体を流出させる第2筒穴部22を有している。第1筒穴部21と第2筒穴部22はアタッチメント本体2の軸方向に沿って連通しており、アタッチメント本体2の一端側から他端側に亘る貫通穴を構成している。
【0025】
第1筒穴部21は、アタッチメント本体2の軸方向(
図3における上下方向)に沿って同一内径となる円筒状の穴部であり、ピペット100の先端部101が挿入し得るに十分な内径を有している。
【0026】
具体的には、
図4に示すように、先端部101が後述するワッシャ3に嵌入してそれ以上の挿入が不可となった取付け状態で、該先端部101の外周面を第1筒穴部21の内面によって径方向に実質的に圧接しないように形成されている。すなわち、取付け状態において、第1筒穴部21の内面は、先端部101の外周面に接する程度か、または、
図4に示すように、該先端部101の外周面とは接しないように形成されている。
【0027】
一方、第2筒穴部22も、アタッチメント本体2の軸方向に沿って同一内径となる円筒状の穴部であるが、第1筒穴部21よりも小径に形成されている。したがって、第1筒穴部21と第2筒穴部22との境界部に、段差が生じる。本発明に於いては、他面側の面と平行な面(筒穴部22の軸方向と直交する面)よりなる段差部23を形成している。
【0028】
ピペット100の先端部101がワッシャ3の装着穴31に嵌入した
図4に示す取付け状態において、第2筒穴部22の軸方向長さは、該先端部101よりも先端側に、つぶし代24を有するように形成されている。
【0029】
ワッシャ3は、この段差部23に、第1筒穴部21側から挿入されて装着されている。本実施形態に示すワッシャ3は、平板状の平ワッシャからなり、中央部にピペット100の先端部101が嵌入する装着穴31が形成されている。ワッシャ3の材質には、合成樹脂を使用することが好ましい。軽量で安価なアタッチメント1とすることができる。特に、ポリプロピレン等の安価で成形が容易な熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0030】
ワッシャ3の外径は、第1筒穴部21の内径と同一又はやや大径に形成されている。ワッシャ3の外径をやや大径に形成すると、第1筒穴部21の内面にワッシャ3の外径が圧接し、段差部23上に弾性的に保持することが好ましい。接着剤等の手段を用いる必要が無く、弾性的に保持することで、試薬等の液体を用いるピペット等の性格から好ましいものである。
【0031】
また、ワッシャ3の装着穴31は、ピペット100の先端部101が嵌入し得る程度の大きさとされるが、具体的には、第2筒穴部22の内径以下となるように形成することもできる。
【0032】
図4は、ピペット100とアタッチメント1との取付構造を示す断面図である。同図を用いて、取付構造及びアタッチメント1の作用、効果について、マイクロ流体チップ200に形成されているマイクロチャネル201の導入口202に対して液体Eを注入する場合を例に挙げて説明する。
【0033】
ピペット100内の液体Eをマイクロ流体チップ200のマイクロチャネル201に注入するに際し、まず、アタッチメント1をピペット100の先端部101に取り付ける。すなわち、先端部101をアタッチメント1の第1筒穴部21から挿入し、ワッシャ3の装着穴31に嵌入させる。この時、アタッチメント1は、先端部101が有する弾性及び又はワッシャ3が有する弾性によって、該先端部101に保持されて取付け状態とされる。先端部101の先端は、ワッシャ3を通過して、第2筒穴部22内まで達している。
【0034】
その後、アタッチメント1をマイクロ流体チップ200の上面200aに押し付け、アタッチメント本体2の下端に有する第2筒穴部22の周囲を導入口202の周囲に当接させる。
【0035】
このとき、アタッチメント1に対して荷重をかけることにより、該アタッチメント1を押し潰す。このときの荷重は、先端部101からワッシャ3を介して、アタッチメント本体2の段差部23に伝達され、アタッチメント本体2、具体的には第2筒穴部22の周囲のゴム状弾性体を圧縮変形させる。これにより、アタッチメント本体2に軸方向の圧縮変形による反力が発生し、導入口202の周囲を確実にシールすることができる。
【0036】
しかも、第1筒穴部21の内面は、先端部101の外周面を径方向に実質的に圧接していないため、この荷重がアタッチメント本体2の径方向に実質的に作用することはない。このため、アタッチメント1に荷重を掛けた際、アタッチメント1を引き裂く方向に力が作用するようなことはなく、第2筒穴部22の周囲のゴム状弾性体を軸方向に効率的に圧縮することができる。また、先端部101は、ワッシャ3の装着穴31に嵌入しているため、荷重を掛けても第2筒穴部22に対して穴径を変形させる力が作用することもなく、先端部101に対する保持力を損なうこともない。
【0037】
さらに、液体注入時の注入圧に対し、このアタッチメント本体2の反力が対抗する。このため、アタッチメント1は良好なシール性能を維持し、液体Eが外部に漏れることがなく、ピペット100から第2筒穴部22及び導入口202を経て、マイクロチャネル201に液体Eを導入することができる。
【0038】
このように、本発明に係る取付構造及びアタッチメント1によれば、液体注入時、このようにアタッチメント本体2の軸方向の圧縮変形によって発生した反力を有効利用する。先端部101からワッシャ3に伝達された荷重は、先端部101よりも先端側に突出する第2筒穴部22の周囲の十分に大きなゴム状弾性体を圧縮してつぶすため、つぶし量を多く確保できる。このため、複数のピペットを使用した自動注入装置に適用する場合でも、ピペット毎のばらつき(公差)を十分に吸収することが可能である。
【0039】
アタッチメント1は、全体がゴム状弾性体からなるアタッチメント本体2とワッシャ3で構成されるため、製造工程の単純化および製造コストの低減化が可能である。また、ピペット100は市販のものをそのまま使用できるので導入コストの軽減も可能である。
【0040】
なお、本実施形態では、第1筒穴部21の内面が先端部101に接しないように形成されているが、第1筒穴部21の内径を、先端部101の外周面に接する程度に形成する場合、先端部101をワッシャ3と第1筒穴部21の内面とで保持できるため、先端部101にアタッチメント1をより安定して保持することができる。
【0041】
また、以上説明した実施形態では、ワッシャ3として平ワッシャを使用したが、ワッシャ3には、
図5に示すように、装着穴31に、先端側(
図5における下側)に向けて漸次縮径する先窄まりの漏斗状筒部32を設けるようにしてもよい。これによれば、先端部101との接触面積を確保して保持状態をより良好とすることができる。
【0042】
しかも、このアタッチメント1をピペット100の先端部101に取り付ける際、先端部101の中心軸とアタッチメント本体2の中心軸とがずれていても、先端部101を漏斗状筒部32によって円滑に案内することができる。従って、先端部101への取り付け作業性が向上する効果が得られ、自動注入装置やピッペッティングロボットを使用した自動液体注入システムに適用する場合に特に有効である。
【0043】
図6は、本発明に係る液体注入用アタッチメントの取付構造の他の一例を示す断面図である。
図1〜
図4に示す取付構造及び液体注入用アタッチメントと同一符号の部位は同一構成の部位であるため、それらの説明は上記説明を援用し、ここでは省略する。
【0044】
この液体注入用アタッチメント1’(以下、アタッチメント1’という。)の取付構造では、アタッチメント本体2の段差部23にワッシャが設けられていない。このワッシャに代えて、ピペット100の先端部101に、径方向に張り出したフランジ部103が一体に設けられている。ピペット100の先端部101は、第1筒穴部21から挿入されることにより、このフランジ部103が段差部23に当接している。
【0045】
フランジ部103は、外径が第1筒穴部21の内径と同一又はやや大径となるように形成されている。先端部101は、このフランジ部103と第1筒穴部21の内面とが圧接することによって、段差部23上に弾性的に保持されている。
【0046】
この取付構造によれば、荷重を掛けた際、ピペット100の先端部101に設けられたフランジ部103が上記のワッシャ3と同様の機能を果たすため、アタッチメント1の変形や破損を招くことなく、段差部23を介してアタッチメント本体2を軸方向に圧縮し、そのときの反力によってシールすることができる上記と同一の効果を奏する。
【0047】
また、先端部101からフランジ部103を介して段差部23に伝達された荷重は、先端部101よりも先端側に突出する第2筒穴部22の周囲の十分に大きなゴム状弾性体を圧縮してつぶすため、上記同様につぶし量を多く確保できる。このため、複数のピペットを使用した自動注入装置に適用する場合でも、ピペット毎のばらつき(公差)を十分に吸収することが可能である。
【0048】
この取付構造では、荷重を掛けても、フランジ部103と第1筒穴部21の内面との保持状態に影響を与えることがないため、先端部101に対する保持力を損なうこともない。
【0049】
このフランジ部103は、先端部101の先端に設けるようにしたが、
図7に示すように、先端部101の先端がフランジ部103よりもさらに突出するようにしてもよい。これによれば、先端部101の先端側が第2筒穴部22内に達するため、液体の注入をより円滑に行うことができる。
【0050】
以上の各実施形態において、アタッチメント本体2は、外形形状が円筒状となるように形成したが、必ずしも円筒状でなくてもよく、角筒形状となるものであってもよい。また、アタッチメント本体2の外周面は、軸方向に沿って傾斜する形状であってもよい。
【0051】
また、第1筒穴部21は、段差部23に向けて次第に縮径する形状であってもよい。さらに、第2筒穴部22は、軸方向に沿って次第に縮径又は拡径する形状であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1、1’:液体注入用アタッチメント
2:アタッチメント本体
21:第1筒穴部
22:第2筒穴部
23:段差部
24:つぶし代
3:ワッシャ
31:装着穴
32:漏斗状筒部
100:ピペット
101:先端部
102:ゴム球
103:フランジ部
110:マイクロピペット
120:ピペットチップ
121:先端部
200:マイクロ流体チップ
200a:上面
201:マイクロチャネル
202:導入口
E:液体
【要約】
本発明は、導入口の周囲をシールするための液体注入用アタッチメントのつぶし量を多く確保し、液体注入用アタッチメントの変形や破損のおそれがない取付構造を提供することを課題とし、上記課題は、ゴム状弾性体によって筒状に形成されたアタッチメント本体2の一端側にピペット100の先細り状の先端部101が挿入される第1筒穴部21を有し、他端側に第1筒穴部21に連通し、ピペット100内の液体を流出させる第2筒穴部22を有し、第2筒穴部22が第1筒穴部21よりも小径に形成されることにより、第1筒穴部21と第2筒穴部22との間に段差部23を有し、段差部23にワッシャ3が設けられ、ピペット100の先端部101が、第1筒穴部21から挿入され、ワッシャ3に嵌入しており、先端部101がワッシャ3に嵌入した状態で、第2筒穴部22は、先端部101よりも先端側につぶし代24を有しているピペット100と液体注入用アタッチメント1との取付構造により解決される。