特許第6182712号(P6182712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6182712
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】リュックサック
(51)【国際特許分類】
   A45F 3/04 20060101AFI20170814BHJP
   A45F 3/08 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A45F3/04 300
   A45F3/08
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-83323(P2016-83323)
(22)【出願日】2016年4月19日
【審査請求日】2016年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】593212884
【氏名又は名称】渡辺 謙一
(73)【特許権者】
【識別番号】517180659
【氏名又は名称】渡邊 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 謙一
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−532600(JP,A)
【文献】 米国特許第5954253(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/04
A45F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の肩掛ベルトにより背中に背負うことができる物品を収容可能なリュック本体部を備えるリュックサックにおいて、物品を収容可能なリュック本体部と、このリュック本体部に対して別体に構成したリュック支持部とを備え、このリュック支持部は、前記リュック本体部を支持する支持ベース部,この支持ベース部の上部の左右部位と当該支持ベース部の下部の左右部位間をそれぞれ連結可能な左右一対の肩掛ベルト部,及び当該支持ベース部の下部における左部位と右部位間を連結可能なヒップベルト部を備えて構成するとともに、前記リュック本体部の下部の左右部位の一方を、前記支持ベース部の下部の左右部位の一方に設けた支点支持部により回動可能に支持し、かつ第一操作ロープの一端部を前記リュック本体部の下部の左右部位の他方に結合し、第一操作ロープの他端部側を前記支持ベース部の下部の左右部位の他方に設けた第一ガイド支持部を通すことにより引張操作可能に構成するとともに、第二操作ロープの一端部を前記リュック本体部の上部の左右中央部位に結合し、第二操作ロープの他端部側を前記支持ベース部の上部の左右中央部位に設けた上ガイド支持部を通すことにより引張操作可能に構成してなることを特徴とするリュックサック。
【請求項2】
前記第一操作ロープと前記第二操作ロープは他端部を一体化するとともに、この一体化した他端部は、着脱部を介して前記肩掛ベルト部の一方に着脱方式により結合することを特徴とする請求項1記載のリュックサック。
【請求項3】
前記第二操作ロープは、一端部を前記リュック本体部の下部の左右部位の一方に結合し、他端部側を前記支持ベース部の下部の左右部位の一方に設けた第二ガイド支持部及び前記上ガイド支持部を通すことにより引張操作可能に構成するとともに、前記上ガイド支持部と前記第二操作ロープ間には、前記上ガイド支持部に対して前記第二操作ロープの所定位置を固定又は規制するストッパ機構部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のリュックサック。
【請求項4】
前記リュックサックとして、登山用のリュックザックに適用することを特徴とする請求項1,2又は3記載のリュックサック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の肩掛ベルトにより背中に背負うことができるリュックサックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、物品を収容可能なリュック本体部を、左右一対の肩掛ベルトにより背中に背負うことができるリュックサックは広く知られている。ところで、この種のリュックサックは、背中に背負って使用するため、リュックサックに対して物品の出し入れを行う際には、一旦、背中から降ろす必要があり、リュックサックを背中(両肩)から降ろしたり、降ろしたリュックサックを再度背負い直すなどの煩わしい操作(労力)が必要になる。このため、リュックサックを降ろすことなく物品の出し入れを可能にするための改良されたリュックサックも提案されている。
【0003】
従来、この種の改良されたリュックサックとしては、特許文献1で開示される取扱い自由なリュックサック及び特許文献2で開示されるリュックサックが知られている。特許文献1で開示されるリュックサックは、背に装着した状態で、リュックサックを身体の一方へ移動できるリュックサックの提供を目的としたものであり、具体的には、一方の背負紐が自由に伸縮できるように、背負紐の自由端に係止金具を設け、背負紐を眼環を介して折り返えすとともに、背負紐上に設けた被係止金具に係止し、リュックサックを移動する時には係止金具を解離することにより一方の側に楽に移動できるようにしたものである。
【0004】
また、特許文献2で開示されるリュックサックは、リュックサックの背負い袋から収容物を取り出しやすくしたリュックサックの提供を目的としたものであり、具体的には、上面を開放自由にした背負い袋の背面に、背負い袋の上部から下部へ向けて身体の両肩に掛ける2本の背負い紐を設け、環状をなすベルト状の肩掛け紐の一部を、背負い袋の背面の上部中央に縫着または接着により固定してリュックサックを構成するとともに、背負い袋から中身を取り出すときは、背負い紐を両肩から外して背負い袋を身体の前のほうへ半回動させて、肩掛け紐で背負い袋を首で吊るし、これにより、背負い袋を、地面に下ろすことなく中身をとりだせるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−137043号公報
【特許文献2】実用新案登録第3162559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来のリュックサックは、次のような問題点があった。
【0007】
第一に、いずれのリュックサックも、一対の背負ベルトを両肩に掛けることにより背中に背負う使用態様と、一つの肩掛ベルトを一方の肩に掛けることにより肩から吊り下げる使用態様のいずれかを選択できるように構成するとともに、物の出し入れを行う際には、肩から吊り下げる使用態様に変更することにより、使用者の横側又は前側に移動させるものである。したがって、比較的小さくて軽い一般的なリュックサックの場合には適用できるとしても、登山用リュックザックのように、比較的大きくて重いリュックサックの場合には適用が困難になる。結局、用途が限定的になるなど、汎用性及び発展性に欠ける。
【0008】
第二に、構成上は、肩掛ベルトと背負ベルトの二種類の異なるベルトを備え、この二種類のベルトを選択して使用するため、肩からリュックサック本体を降ろさないとしても、ベルトを掛け換える操作が必要になるとともに、リュックサック本体を使用者の背中から横側又は前側に移動させる操作も必要になるなど、操作労力を軽減し、利便性を高める観点からも必ずしも十分とは言い難く、更なる改善の余地があった。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したリュックサックの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するため、左右一対の肩掛ベルトにより背中に背負うことができる物品を収容可能なリュック本体部を備えるリュックサック1を構成するに際して、物品を収容可能なリュック本体部2と、このリュック本体部2に対して別体に構成したリュック支持部3とを備え、このリュック支持部3は、リュック本体部2を支持する支持ベース部4,この支持ベース部4の上部の左右部位Xup,Xuqと当該支持ベース部4の下部の左右部位Xdp,Xdq間をそれぞれ連結可能な左右一対の肩掛ベルト部5p,5q,及び当該支持ベース部4の下部における左部位Xdpと右部位Xdq間を連結可能なヒップベルト部6を備えて構成するとともに、リュック本体部2の下部の左右部位Ydp,Ydqの一方を、支持ベース部4の下部の左右部位Xdp,Xdqの一方に設けた支点支持部7により回動可能に支持し、かつ第一操作ロープ8の一端部8rをリュック本体部2の下部の左右部位Ydp,Ydqの他方に結合し、第一操作ロープ8の他端部8f側を支持ベース部4の下部の左右部位Xdp,Xdqの他方に設けた第一ガイド支持部9を通すことにより引張操作可能に構成するとともに、第二操作ロープ10の一端部10rをリュック本体部2の上部の左右中央部位Ymに結合し、第二操作ロープ10の他端部10f側を支持ベース部4の上部の左右中央部位Xmに設けた上ガイド支持部11を通すことにより引張操作可能に構成してなることを特徴とする。
【0011】
この場合、発明の好適な態様により、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10は他端部8f,10fを一体化するとともに、この一体化した他端部8f,10fを、着脱部15を介して肩掛ベルト部5p,5qの一方に着脱方式により結合することができる。また、第二操作ロープ10は、一端部10rをリュック本体部2の下部の左右部位Ydp,Ydqの一方に結合し、他端部10f側を支持ベース部4の下部の左右部位Xdp,Xdqの一方に設けた第二ガイド支持部16及び上ガイド支持部11を通すことにより引張操作可能に構成するとともに、上ガイド支持部11と第二操作ロープ10間には、上ガイド支持部11に対して第二操作ロープ10の所定位置を固定又は規制するストッパ機構部17を設けて構成することができる。なお、リュックサック1としては、登山用のリュックザックに適用することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係るリュックサック1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) リュック本体部2と、このリュック本体部2に対して別体に構成したリュック支持部3を備え、リュック本体部2を、リュック支持部3の支点支持部7を支点にして傾倒させることができるため、登山用リュックザックのように比較的大きくて重いリュックサック1の場合であっても、当該リュックサック1を背中に背負ったままリュック本体部2に対する物品の出し入れが可能なり、背中から降ろすことなく物品の出し入れを可能にするリュックサックの範囲を飛躍的に拡大できるなど、汎用性及び発展性を高めることができる。したがって、特に、登山用リュックザックに用いて最適となる。
【0014】
(2) 背中に背負ったリュック本体部2を傾倒させるに際しては、第一操作ロープ8及び第二操作ロープ10の操作、即ち、第一操作ロープ8及び第二操作ロープ10の位置の固定を解除すれば、リュック本体部2の自重等により容易に傾倒させることができるとともに、他方、傾倒したリュック本体部2を元の背負い状態に戻す場合には、第一操作ロープ8及び第二操作ロープ10を引張るのみでよく、リュック本体部2に対して物品の出し入れを行う際の操作はきわめて容易に行うことができるなど、操作のための労力を軽減できるとともに、使い勝手及び利便性を高めることができる。
【0015】
(3) 好適な態様により、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10の他端部8f,10fを一体化するとともに、この一体化した他端部8f,10fを、着脱部15を介して肩掛ベルト部5p,5qの一方に着脱方式により結合すれば、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10を一緒に操作可能になるため、操作の容易化を図ることができるとともに、着脱部15に対する着脱操作も一緒に、即ち、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10の位置も同時に固定又は固定解除することができる。
【0016】
(4) 好適な態様により、第二操作ロープ10を設けるに際し、一端部10rをリュック本体部2の下部の左右部位Ydp,Ydqの一方に結合し、他端部10f側を支持ベース部4の下部の左右部位Xdp,Xdqの一方に設けた第二ガイド支持部16及び上ガイド支持部11を通すことにより引張操作可能に構成するとともに、上ガイド支持部11と第二操作ロープ10間に、上ガイド支持部11に対して第二操作ロープ10の所定位置を固定又は規制するストッパ機構部17を設けて構成すれば、第二ガイド支持部16と上ガイド支持部11間に設けられる第二操作ロープ10の部分は、使用者が手で持つことができる補助操作用に利用することができる。加えて、ストッパ機構部17を設けたため、傾倒したリュック本体部2を元の背負い状態に戻す際には、背中の中央位置に対して容易に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の好適実施形態に係るリュックサックに備えるリュック本体部とリュック支持部の関係を示す要部の分離構成図、
図2】同リュックサックの外観斜視図、
図3】同リュックサックに備える第一操作ロープと第二操作ロープの経路を示す側面構成図、
図4】同リュックサックに備える中間ガイド支持部の一例を示す構成図、
図5】同リュックサックに備える上ガイド支持部の変更例を示す構成図、
図6】同リュックサック(リュック本体部)を背負った使用態様の背面方向から見た模式的構成を含む使用方法説明図、
図7】同リュックサック(リュック本体部)を傾倒させた使用態様の背面方向から見た模式的構成を含む他の使用方法説明図、
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
まず、本実施形態に係るリュックサック1の構成について、図1図5を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るリュックサック1は、大別して、物品を収容可能なリュック本体部2と、このリュック本体部2に対して別体に構成したリュック支持部3とを備える。
【0021】
リュック本体部2は、広く知られている一般的なリュックサックからベルト類(左右一対の肩掛ベルトやヒップベルト等)を除いた部分、即ち、物品を収容する収容部分のみとなる。したがって、例示のリュック本体部2は、図2に示すように、上下に長い直方体状をなす本体主部21を備え、この本体主部21の上半部には、一方の側面21pから上面21uを経て他方の側面21qに至るファスナー22により開閉する出し入れ口を備えており、この出し入れ口を通して本体主部21に対する物品の出し入れを行うことができる。また、本体主部21の背面21rには、下半部に付設した下ポケット部23及び上部に付設した上ポケット部24を備えている。
【0022】
一方、リュック支持部3は、図1に示すように、リュック本体部2を支持する支持ベース部4と、この支持ベース部4の上部の左右部位Xup,Xuqと当該支持ベース部4の下部の左右部位Xdp,Xdq間をそれぞれ連結する左右一対の肩掛ベルト部5p,5q,と、支持ベース部4の下部における左部位Xdpと右部位Xdq間を連結するヒップベルト部6を備え、これら支持ベース部4,肩掛ベルト部5p,5q及びヒップベルト部6は一体に構成する。この場合、支持ベース部4は、本体主部21の前面21fに重なることにより、リュック本体部2を支持する一枚のシート状に形成したものであり、例示の支持ベース部4は、上下に長い台形フレーム形である。
【0023】
また、支持ベース部4の上部(上端部)における左部位Xup及び右部位Xuqから、それぞれ縦方向となる左側の肩掛主部5pm及び右側の肩掛主部5qmを延出させるとともに、支持ベース部4の下部(下端部)における左部位Xdp及び右部位Xdqから、それぞれ縦方向となる左側の肩掛補助部5ps及び右側の肩掛補助部5qsを延出させる。そして、肩掛主部5pmの先端と肩掛補助部5psの先端を、接続位置を調整可能な長さ調整バックル26pを介して接続するとともに、肩掛主部5qmの先端と肩掛補助部5qsの先端を、接続位置を調整可能な長さ調整バックル26qを介して接続する。これにより、支持ベース部4の上部の左右部位Xup,Xuqと当該支持ベース部4の下部の左右部位Xdp,Xdq間がそれぞれ連結(接続)される左右一対のループ状の肩掛ベルト部5p,5qが構成される。
【0024】
さらに、支持ベース部4の下部(下端部)における左部位Xdpから、横方向となる左ベルト部6pを延出させるとともに、支持ベース部4の下部(下端部)における右部位Xdqから、横方向となる右ベルト部6qを延出させる。そして、左ベルト部6pの先端と右ベルト部6qの先端をバックル(例えば、ワンタッチ式バックル)27を介して着脱可能に接続する。これにより、支持ベース部4の下部における左部位Xdpと右部位Xdq間が連結されるヒップベルト部6が構成される。なお、28はヒップベルト部6の接続位置を調整可能な長さ調整バックルを示す。
【0025】
他方、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10の二本のロープ部材を用意するとともに、第一操作ロープ8及び/又は第二操作ロープ10の各経路をガイドするための四つのガイド支持部9,11,16,31を用意する。
【0026】
この場合、第一操作ロープ8の一端部8rと第二操作ロープ10の一端部10rは、後述するように、リュック本体部2の所定位置に結合するとともに、第一操作ロープ8の他端部8fと第二操作ロープ10の他端部10fは手で持つことができる操作部として用いる。この際、第一操作ロープ8の他端部8fと第二操作ロープ10の他端部10fは、共に、バックル51の雄側51sに結合する。この結果、第一操作ロープ8及び第二操作ロープ10の他端部8f,10fは一体化される。他方、バックル51の雌側51rは、肩掛ベルト部5qの所定位置に取付ける。例示の場合、連結ベルト52を用意し、この連結ベルト52の一端に雌側51rを取付けるとともに、連結ベルト52の他端を肩掛ベルト部5qの中間位置付近に取付けている。この雄側51sと雌側51rを含むバックル51は、例えば、ワンタッチバックルを用いることができる。これにより、着脱部15が構成され、一体化した他端部8f,10fは、肩掛ベルト部5qに対して着脱方式により結合される。このように構成すれば、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10を一緒に操作可能になるため、操作の容易化を図ることができるとともに、着脱部15に対する着脱操作も一緒に、即ち、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10の位置も同時に固定又は固定解除することができる利点がある。
【0027】
また、各ガイド支持部9,11,16,31は、図1に示すように、リュック支持部3における背面の所定位置に取付ける。この場合、一つのガイド支持部は、図4に示すように、リュック支持部3の表面に縫付けるなどにより固定する取付プレート部41と、この取付プレート部41の表面に取付けたリング部42とを備える基本的形態を有し、このリング部42は、硬質プラスチック素材又は金属素材等により構成する。このリング部42には、第一操作ロープ8及び/又は第二操作ロープ10を通すことができる。
【0028】
したがって、各ガイド支持部9,11,16,31は、リング部42の向き及び大きさ等の具体的形態がそれぞれ異なるとしても基本的形態は同じとなる。本実施形態で使用する四つのガイド支持部は、第一ガイド支持部9,上ガイド支持部11,第二ガイド支持部16及び中間ガイド支持部31となる。
【0029】
この場合、第一ガイド支持部9は、支持ベース部4の下部(下端部)の右部位Xdqに取付けるものであり、第一操作ロープ8が挿通し、かつ軸心が横方向に向いたリング部42を備える。上ガイド支持部11は、支持ベース部4の上部の左右中央部位Xmに取付けるものであり、第二操作ロープ10が挿通し、かつ軸心が斜めに傾斜すことにより後述する中間ガイド支持部31に向いたリング部42を備える。第二ガイド支持部16は、支持ベース部4の下部(下端部)の左部位Xdpに取付けるものであり、第二操作ロープ10(10s)が挿通し、かつ軸心が縦方向に向いたリング部42を備える。中間ガイド支持部31は、肩掛主部5qmにおける支持ベース部4の近傍に取付けるものであり、第一操作ロープ8及び第二操作ロープ10の双方が挿通し、かつ軸心が取付ける肩掛主部5qmの長手方向に沿うリング部42を有する。
【0030】
そして、図1に示すように、第一操作ロープ8及び第二操作ロープ10の他端部8f,10fに結合したバックル51の雄側51sを肩掛主部5qmの前側に位置させるとともに、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10の一端部8r,10r側は、中間ガイド支持部31を挿通させて後側に至らせる。中間ガイド支持部31を挿通させた第一操作ロープ8は、ストッパ部33を装着するとともに、さらに、第一ガイド支持部9に対して外側から挿通させた後、第一操作ロープ8の一端部8rは、リュック本体部2の下部の右部位Ydqに結合する。この場合、ストッパ部33は、筒状の本体を有するため、内部に第一操作ロープ8を通すとともに、この本体に設けた固定ネジ33sを締め付けることにより、第一操作ロープ8上の中途位置に固定することができる。このストッパ部33は、第一操作ロープ8を後側へ送った際に第一ガイド支持部9に係止し、リュック本体部2の傾倒角度を規制する機能を有する。
【0031】
この第一操作ロープ8は、一端部8rをリュック本体部2の下部の左右部位Ydp,Ydqの他方に結合し、第一操作ロープ8の他端部8f側を支持ベース部4の下部の左右部位Xdp,Xdqの他方に設けた第一ガイド支持部9を通すことにより引張操作可能となる第一の操作系を構成する。
【0032】
一方、中間ガイド支持部31を挿通させた第二操作ロープ10は、上ガイド支持部11に対して上側から挿通させた後、リュック本体部2に取付けたストッパ部34を通し、さらに、ストッパ部35を装着する。この後、第二操作ロープ10は、第二ガイド支持部16に対して上側から挿通させた後、第二操作ロープ10の一端部10srはリュック本体部2の下部の左部位Ydpに結合する。
【0033】
この場合、ストッパ部34は、リング状の本体を有するため、内部に第二操作ロープ10を通すことができるとともに、この本体に設けた固定ネジ34sを締め付けることにより、第二操作ロープ10上の中途位置に固定することができる。また、装着部34pに一体に設けた取付プレート部34cを、リュック本体部2の表面に縫付けるなどにより固定する。例示の場合、ストッパ部34は、リュック本体部2の前面2fにおける上部の左右中央部位Ymに取付けている。この左右中央部位Ymは、リュック支持部3における上部の左右中央部位Xmに対応する部位となる。したがって、ストッパ部34は、第二操作ロープ10を前側に引張った際に、上ガイド支持部11に係止し、リュック本体部2を背負い位置、即ち、リュック本体部2の上部における左右中央を、使用者の背中の左右中央位置に規制するストッパ機構部17が構成される。
【0034】
また、ストッパ部35は、筒状の本体を有するため、内部に第二操作ロープ10を通すとともに、この本体に設けた固定ネジ35sを締め付けることにより、第二操作ロープ10上の中途位置、特に、リュック本体部2における下部の左部位Ydpの近傍に固定する。このストッパ部35は、第二操作ロープ10を後側へ送った際に第二ガイド支持部16に係止し、リュック本体部2を傾倒させる際の支点支持部7として機能する。
【0035】
したがって、第二操作ロープ10は、一端部10rをリュック本体部2の上部の左右中央部位Ymに結合し、第二操作ロープ10の他端部10f側を支持ベース部4の上部の左右中央部位Xmに設けた上ガイド支持部11を通すことにより引張操作可能となる第二の操作系を構成する。なお、例示の場合、ストッパ部34とリュック本体部2の下部の左部位Ydpに結合した一端部10sr間には、第二操作ロープ10の一部が設けられるため、この部分は、ハンドル部10sとして機能させることができる。したがって、第二操作ロープ10におけるストッパ部34の位置は、第二操作ロープ10の実質的な一端部10rとなると同時にハンドル部10sの他端部10sfとなる。このため、ハンドル部10sを設けることなく、第二操作ロープ10の一端部をストッパ部34の位置に直接固定することによりストッパ機構部17を構成する場合を排除するものではなく、この場合には、支点支持部7を単純な回動部として構成できる。
【0036】
このように、第二操作ロープ10を設けるに際し、一端部10rをリュック本体部2の下部の左右部位Ydp,Ydqの一方に結合し、他端部10f側を支持ベース部4の下部の左右部位Xdp,Xdqの一方に設けた第二ガイド支持部16及び上ガイド支持部11を通すことにより引張操作可能に構成するとともに、上ガイド支持部11と第二操作ロープ10間には、上ガイド支持部11に対して第二操作ロープ10の所定位置を固定又は規制するストッパ機構部17を設けて構成すれば、第二ガイド支持部16と上ガイド支持部11間に設けられる第二操作ロープ10の部分は、使用者が手で持つことができるハンドル部10sとして機能させることができるため、補助操作用に利用できる利点がある。加えて、ストッパ機構部17を設けたため、傾倒したリュック本体部2を元の背負い状態に戻す際には、背中の中央位置に対して容易に位置決めすることができる。
【0037】
なお、例示した各ガイド支持部9,11,16,31の形態(形状及び構成)は一例であり、例示の形態に限定されるものではない。即ち、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10を円滑にガイドする機能を有すれば足り、配置する部位(位置)や数量は任意に選定できる。
【0038】
例えば、必要により、更なる追加の中間ガイド支持部を設けてもよい。図4には、中間ガイド支持部31と第二ガイド支持部9(図1)間に、追加の中間ガイド支持部61を設けた例を示す。この中間ガイド支持部61の形態は、第一操作ロープ8を通すことができるトンネル状に形成したものであり、適度に湾曲するプラスチック素材等で形成することができる。
【0039】
一方、図5は、上ガイド支持部11の形態を変更した例を示す。図5に示す上ガイド支持部11eは、剛性を有する硬質プラスチック素材等で形成し、左右方向に長いトンネル状に形成したものである。この際、上ガイド支持部11eにおける肩掛ベルト部5q側の開口部61uは、中間ガイド支持部31側を向くように斜め上方へ湾曲させるとともに、上ガイド支持部11eにおける第一ガイド支持部16(図1参照)側の開口部61dは、当該第一ガイド支持部9側を向くように斜め下方へ湾曲させる。さらに、上ガイド支持部62の上下方向中央位置には、第一ガイド支持部9側の開口から長手方向の中央位置まで、ガイドスリット部62sを形成するとともに、他方、リュック本体部2の前面2fにおける上部左右中央部位Ymに取付けたストッパ部34は、図5に示すように、装着部34pと取付プレート部34c間を係合ピン34gを介して連結し、この係合ピン34gがガイドスリット部62sに係合してガイドされるように構成する。このため、ガイドスリット部62sの開口側は、係合ピン34gを円滑に受け入れることができるように外側広がり形状に形成することが望ましい。図5に示す変更例では、背負い位置のリュック本体部2が傾倒する際に、所定の角度まで背中に沿って変位させることができる利点がある。
【0040】
次に、本実施形態に係るリュックサック1の使用方法について、図6及び図7を参照して説明する。
【0041】
まず、通常の使用時となる背負モードについて説明する。図6は背負モードの状態を示す。背負モードでは、第一操作ロープ8及び第二操作ロープ10の先端に設けたバックル51の雄側51sを白抜矢印Fd方向に引くことにより雌側51rに装着すればよい。この際、リュック本体部2は、どのような位置(角度)にあっても、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10により引張られるため、白抜矢印Fr方向に変位し、ストッパ部34が上ガイド支持部11eに係止した位置で変位が規制されて停止する。また、バックル27における左ベルト部6pの先端と右ベルト部6qの先端を装着して使用者の腰にヒップベルト部6を装着する。
【0042】
これにより、リュック本体部2は背負い位置、即ち、リュック本体部2の左右中央位置が使用者の背中の左右中央位置に一致する背負モードとなる。したがって、背負モードでのリュックサック1は、一般的なリュックサックと同様に、使用者は、リュック支持部3における一方の肩掛ベルト部5pを自身の左肩に掛け、他方の肩掛ベルト部5qを自身の右肩に掛けることにより背中に背負うことができる。
【0043】
次に、背負ったまま物品の出し入れを行うことができる傾倒モードについて説明する。図7は傾倒モードの状態を示す。傾倒モードでは、図7に示すように、バックル51の雄側51sを雌側51rから離脱させればよい。これにより、リュック本体部2の傾倒が許容されることになる。
【0044】
したがって、使用者は、バックル51の雄側51sを手で持ちながら、例えば、身体を稍傾倒させたり、或いは身体を振るなどにより、リュック本体部2を、図7に示す白抜矢印Fs方向に変位するように誘導すればよい。これにより、リュック本体部2は、支点支持部7を回動支点として白抜矢印Fs方向に回動変位する。この場合、リュック本体部2の自重等により傾倒するため、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10、更にはハンドル部10sを操作することにより、安定した状態で傾倒させることができる。特に、ハンドル部10sは、使用者が手で持つことによりリュック本体部2を背中から離れないように引き寄せるなどの補助操作に利用できる。
【0045】
また、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10は、リュック本体部2の変位に追従して後方へ引張られるため、バックル51の雄側51sも、図7に示すように、白抜矢印Fu方向に変位する。そして、第一操作ロープ8に設けたストッパ部33が第二ガイド支持部9に係止した位置で変位が規制されて停止する。この停止した位置におけるリュック本体部2は、図7に示すように傾倒するため、使用者は、リュックサック1を背負ったまま物品の出し入れを行うことが可能となる。他方、物品の出し入れが終了したなら、上述した図6に示す操作に従って背負モードに戻せばよい。
【0046】
よって、このような本実施形態に係るリュックサック1によれば、基本形態として、物品を収容可能なリュック本体部2と、このリュック本体部2に対して別体に構成したリュック支持部3とを備え、このリュック支持部3は、リュック本体部2を支持する支持ベース部4,この支持ベース部4の上部の左右部位Xup,Xuqと当該支持ベース部4の下部の左右部位Xdp,Xdq間をそれぞれ連結可能な左右一対の肩掛ベルト部5p,5q,及び当該支持ベース部4の下部における左部位Xdpと右部位Xdq間を連結可能なヒップベルト部6を備えて構成するとともに、リュック本体部2の下部の左部位Ydpを、支持ベース部4の下部の左部位Xdpに設けた支点支持部7により回動可能に支持し、かつ第一操作ロープ8の一端部8rをリュック本体部2の下部の右部位Ydqに結合し、第一操作ロープ8の他端部8f側を支持ベース部4の下部の右部位Xdqに設けた第一ガイド支持部9を通すことにより引張操作可能に構成するとともに、第二操作ロープ10の一端部10rをリュック本体部2の上部の左右中央部位Ymに結合し、第二操作ロープ10の他端部10f側を支持ベース部4の上部の左右中央部位Xmに設けた上ガイド支持部11を通すことにより引張操作可能に構成してなるため、リュック支持部3に設けた支点支持部7を支点にして、リュック本体部2を背中に背負った状態で傾倒させることができる。したがって、登山用リュックザックのように比較的大きくて重いリュックサック1の場合であっても、リュックサック1を背中に背負ったままリュック本体部2に対する物品の出し入れが可能なり、背中から降ろすことなく物品の出し入れを可能にするリュックサックの範囲を飛躍的に拡大できるなど、汎用性及び発展性を高めることができる。したがって、特に、登山用リュックザックに用いて最適となる。
【0047】
また、背中に背負ったリュック本体部2を傾倒させるに際しては、第一操作ロープ8及び第二操作ロープ10の操作、即ち、第一操作ロープ8及び第二操作ロープ10の位置の固定を解除すれば、リュック本体部2の自重等により容易に傾倒させることができるとともに、他方、傾倒したリュック本体部2を元の背負い状態に戻す場合には、第一操作ロープ8及び第二操作ロープ10を引張るのみでよく、リュック本体部2に対して物品の出し入れを行う際の操作はきわめて容易に行うことができるなど、操作のための労力を軽減し、使い勝手及び利便性を高めることができる。
【0048】
以上、変更例を含む好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0049】
例えば、実施形態では、右効き用として構成した例を示したが、この右効き用に対して左右対称となる左効き用に構成してもよいし、必要により、どちらかを選択できる切換方式に構成することも可能である。また、リュック本体部2及びリュック支持部3の具体的な形状や構成は一例として挙げたものであり、同様の機能を有するものであれば、各種形状や構成により実施できる。さらに、第一操作ロープ8と第二操作ロープ10は、他端部8f,10fを一体化した例を挙げたが、それぞれ別々の着脱部15…により着脱できるようにしてもよい。なお、着脱部15は、第一操作ロープ8及び第二操作ロープ10を任意の位置に固定し又は固定解除できる機能を有すれば足り、その構成は問わない。一方、各ストッパ部33…は固定ネジ33s…を緩めたり締付けることにより、各操作ロープ8…上における固定位置を調整(変更)することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るリュックサックは、登山用リュックザックをはじめ、物品を収容するリュック本体を左右の肩掛ベルトにより背中に背負う各種のリュックサックに利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1:リュックサック,2:リュック本体部,3:リュック支持部,4:支持ベース部,5p:肩掛ベルト部,5q:肩掛ベルト部,6:ヒップベルト部,7:支点支持部,8:第一操作ロープ,8r:第一操作ロープの一端部,8f:第一操作ロープの他端部,9:第二ガイド支持部,10:第二操作ロープ,10r:第二操作ロープの一端部,10f:第二操作ロープの他端部,11:上ガイド支持部,15:着脱部,16:第一ガイド支持部,17:ストッパ機構部,Xup:支持ベース部の上部の左部位,Xuq:支持ベース部の上部の右部位,Xdp:支持ベース部の下部の左部位,Xdq:支持ベース部の下部の右部位,Xm:支持ベース部の上部の左右中央部位,Ydp:リュック本体部の下部の左部位,Ydq:リュック本体部の下部の右部位,Ym:リュック本体部の上部の左右中央部位
【要約】
【課題】 リュック本体部の大きさや重さなどに制限されることなく、背負ったまま物品の出し入れを可能にして汎用性及び発展性を高めるとともに、操作労力を軽減して使い勝手及び利便性を高める。
【解決手段】 リュック本体部2の下部の左部位Ydpを、リュック支持部3における支持ベース部4の下部の左部位Xdpに設けた支点支持部7により回動可能に支持し、かつ第一操作ロープ8の一端部8rをリュック本体部2の下部の右部位Ydqの他方に結合し、第一操作ロープ8の他端部8f側を支持ベース部4の下部の右部位Xdqの他方に設けた第一ガイド支持部9を通して引張操作可能に構成するとともに、第二操作ロープ10の一端部10rをリュック本体部2の上部の左右中央部位Ymに結合し、第二操作ロープ10の他端部10f側を支持ベース部4の上部の左右中央部位Xmに設けた上ガイド支持部11を通して引張操作可能に構成する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7