【実施例】
【0056】
・貴金属担持セラミックス(粉末状)の製造
(1)実施例1:炭化ジルコニウム
シリカ(SiO2)が35.5%、H2Oが64.5%の組成に配合されたコロイダルシリカ10質量部と、体積平均粒子径5nm程度の白金ナノコロイド分散液(アプト社製、白金含有量20μg/0.1g:白金微粒子の体積平均粒径5μm、コロイド化剤:クエン酸)12質量部とを純水100質量部と共に混合したものに、平均粒子径10μm程度の炭化ジルコニウムからなる基材を100質量部混合して基材の表面に白金ナノコロイド微粒子が付着した付着物(分散液)を得た(付着工程)。
【0057】
付着物に対し噴霧乾燥機を使って噴霧乾燥工程を行った。噴霧乾燥の条件は180℃〜250℃程度の温度の槽内に付着物を噴霧することにより行った。得られた粉末を回収し、その後、セラミックス質の容器(鞘)に入れて、電気炉にて約900〜1000℃、1時間加熱した(加熱工程)。加熱工程を行った結果、コロイド化剤としてのクエン酸は酸化・揮散して、体積平均粒径5nm程度の白金ナノ微粒子が10μm程度の炭化ジルコニウム表面に固着し、耐水性のある微粉末状の複合セラミックス材料(実施例1の試験試料)が得られた。
【0058】
(2)実施例2:酸化ジルコニウム
シリカ(SiO2)が35.5%、H2Oが64.5%の組成に配合されたコロイダルシリカ10質量部と、体積平均粒子径5nm程度の白金ナノコロイド分散液(アプト社製、白金含有量20μg/0.1g:白金微粒子の体積平均粒径5μm、コロイド化剤:クエン酸)12質量部とを純水100質量部と共に混合したものに、平均粒子径10μm程度の酸化ジルコニウムからなる基材を100質量部混合して基材の表面に白金ナノコロイド微粒子が付着した付着物(分散液)を得た(付着工程)。
【0059】
付着物に対し噴霧乾燥機を使って噴霧乾燥工程を行った。噴霧乾燥の条件は180℃〜250℃程度の温度の槽内に付着物を噴霧することにより行った。得られた粉末を回収し、その後、セラミックス質の容器(鞘)に入れて、電気炉にて約900〜1000℃、1時間加熱した(加熱工程)。加熱工程を行った結果、コロイド化剤としてのクエン酸は酸化・揮散して、体積平均粒径5nm程度の白金ナノ微粒子が10μm程度の酸化ジルコニウム表面に固着し、耐水性のある微粉末状の複合セラミックス材料(実施例2の試験試料)が得られた。
【0060】
(3)参考例1:シリカ
シリカ(SiO2)が35.5%、H2Oが64.5%の組成に配合されたコロイダルシリカと、体積平均粒子径5nm程度の白金ナノコロイド分散液(アプト社製、白金含有量20μg/0.1g:白金微粒子の体積平均粒径5μm、コロイド化剤:クエン酸)とを50:50(質量比)で加えて混合したものに、平均粒子径1μm程度のシリカからなる基材を質量比(分散液:セラミックス粉末)が70:30となるように混合して基材の表面に白金ナノコロイド微粒子が付着した付着物(分散液)を得た(付着工程)。
【0061】
付着物に対し噴霧乾燥機を使って噴霧乾燥工程を行った。噴霧乾燥の条件は180℃〜250℃程度の温度の槽内に付着物を噴霧することにより行った。得られた粉末を回収し、その後、セラミックス質の容器(鞘)に入れて、電気炉にて約900〜1000℃、1時間加熱した(加熱工程)。加熱工程を行った結果、コロイド化剤としてのクエン酸は酸化・揮散して、体積平均粒径5nm程度の白金ナノ微粒子が1μm程度のシリカ表面に固着し、耐水性のある微粉末状の複合セラミックス材料(参考例1の試験試料)が得られた。
【0062】
・試験1(安定性)
実施例の粉末は水中に分散させても、その外観は長期間変化なく安定であった。それに対して、原料として用いたそれぞれの白金ナノコロイド分散液は希釈、他の物質への添加、pHの変化などにより速やかに沈殿してしまった。従って、セラミックスに固着させることにより、高い安定性が実現できた。以下に試験においては、白金ナノコロイド分散液をそのまま利用することは安定性の観点からは困難であったため、実施例の試験試料のみを用いて試験を行った。
【0063】
・試験2(炊飯器への応用)
内蓋表面のフッ素コート内に白金担持セラミックス粒子を導入した炊飯器の評価(食味官能試験)
試験炊飯器1:炊飯器(象印NP−ST10型)を用い、実施例1の複合セラミックス材料粉末を7.5質量%の濃度でフッ素樹脂に添加して内蓋に塗布した。
試験炊飯器2:参考例1の複合セラミックス材料を試験炊飯器1と同様に内釜に導入した。
試験炊飯器3:炭化ジルコニウムを試験炊飯器1と同様に内釜に導入した。
【0064】
・米を使った炊飯時及び分析
米を3合量り取り、500mLのイオン交換水で3回洗浄した。それぞれ各試験炊飯器内に入れた後、所定の水量に調節した後、炊飯した(モードとして「ふつう」を選択)。炊き上がったご飯を被験者(11人)で評価した。評価は二重盲検法にて行った。評価項目は香り、外観、硬さ、粘り、甘み、総合である。評価は両者を比較したときに、どちらかが優れている又は両者同程度との判断を行い、優れていると判断された方に+1した結果を算出したときに、実施例1の結果から参考例1の結果を引いたものを結果として表1に示す。つまり、11人全員が実施例1のご飯が優れていると判断した項目は+11になり、反対に11人全員が参考例1のご飯が優れていると判断した項目は−11になる。
【0065】
【表1】
【0066】
表1より明らかなように香りを除き、概ね実施例1のご飯の方が優れているとの結果を得た。特に総合的な判断としては実施例1の方が優れていると60%以上の被験者が判断した。
【0067】
実施例1及び参考例1のご飯について凍結乾燥を行い、表面をSEMにて観察した。その結果、実施例1のご飯の方が参考例1のご飯よりも表面が滑らかであった。また、それぞれのご飯について3DマイクロX線CT(株式会社rigaku製)により断面を観察したところ、実施例1のご飯は内部に空隙を有し、その他のご飯では空隙がないことがわかった。このような物理的な形態の相違が食感に影響を与えたものと推測される。
【0068】
・複合セラミックス材料の熱放出試験
実施例1及び参考例1の複合セラミックス材料を表面に塗布したアルミニウム板(厚み1.6mm)と何も塗布しないアルミ板(対照)とを用意した。
【0069】
熱源として表面から60mmの距離に配置した電気コンロを用いた。表面に複合セラミックス材料を塗布した面から加熱する場合(試験A:
図1)と、塗布した面とは反対の面から加熱する場合(試験B:
図2)とで比較した。
【0070】
図より明らかなように、実施例1の試料では加熱側に塗布することで試料の外側の温度が他の試料よりも高くなり、熱の放射を抑制して保温性が高いことが分かった。反対に加熱側と反対に塗布することにより他の試料よりも温度が低くなり加熱側と反対側から熱を効果的に放出していることが分かった。
【0071】
つまり、加熱側に塗布することにより加熱側の熱が逃げることが抑制でき、加熱側と反対に塗布することにより熱を速やかに放出できた。炊飯器用内釜の内面に塗布した場合には外側から加熱した熱が速やかに内容物(米)に伝達できることを意味する。先述の食味試験で望ましい効果を発現した一因であると考える。加熱側の温度を保持する効果は衣類などに応用したときに体温を保持する効果が期待できることを意味する。
【0072】
なお、比較例の結果から明らかなように、比較例の複合セラミックス材料はどちらの面から加熱しても温度が対照の試料よりも高くなり、単純な断熱効果が発現しているものと推測できる。
【0073】
・試験3
〔貴金属担持セラミックス(粉末状)の製造〕
シリカ(SiO2)が35.5%、H2Oが64.5%の組成に配合されたコロイダルシリカ10質量部と、所定量の触媒成分とを純水100質量部と共に混合したものに、平均粒子径10μm程度の所定の基材を100質量部混合して基材の表面に触媒成分が付着した付着物(分散液)を得た(付着工程)。
【0074】
付着物に対し噴霧乾燥機を使って噴霧乾燥工程を行った。噴霧乾燥の条件は180℃〜250℃程度の温度の槽内に付着物を噴霧することにより行った。得られた粉末を回収し、その後、セラミックス質の容器(鞘)に入れて、電気炉にて約900〜1000℃、1時間加熱した(加熱工程)。加熱工程を行った結果、触媒成分が基材の表面に固着し、耐水性のある微粉末状の複合セラミックス材料が得られた。
【0075】
触媒成分としては、Ag、Pt、Au、ダイヤモンド(「Dia」と記載、株式会社ナノ炭素研究所製、ナノアマンド)、CuWO
3、酸化銅−酸化チタンから選択した。これらはすべてナノメートルオーダーの粒径をもつ材料である。基材としてはシリカ、炭化ジルコニウム、炭化ケイ素、塊状カーボン−ホウ化ランタン複合体から選択した。これらはすべて10μm程度の粒径をもつ粒子材料である。
【0076】
製造した試料の組み合わせを表2に示す。表2中、「単体」とあるのは触媒成分が1種類であることを意味し、「複合体」とあるのは2種類以上の触媒成分についてそれぞれ所定の基材の表面に担持した後、得られた粉末を混合したことを意味し、「結合体」とは2以上の触媒成分を同一の基材の表面に担持したことを意味する。
【0077】
ここで、試料22〜24においてガラスコートとは粒子の表面に以下の方法により多孔質のケイ酸カリウムからなるガラス被膜を形成したものであることを意味する。ガラスコートは粒子表面にガラス質になりうる異種材料としてのケイ酸ナトリウムを担持(固着)させ、それを焼成して表面の担持成分だけを溶解させてガラス被膜を得る方法にて行った。具体的には、粒子と、その粒子の径のおよそ1/50程度の径をもつ珪酸カリウムとを水と共に混合してスラリーを調製した後、スプレードライヤーを使って担持させた。その後、その生成物を焼成して担持物を溶融固化させて、粒子表面にガラス質の皮膜を形成させた。このときに形成されるガラス被膜は焼成後、冷却する過程において分相が生じさせて多孔質化した。分相を生じさせるためにスラリー中には炭酸カルシウムを含有させた。
【0078】
表2に示す各試料について抗菌性を評価した。抗菌性の評価は、まず純水5mLと菌(Geobacillus stearothermophilus)とを試験管に入れて菌液とした。その後、表2に記載の濃度にて各試料を添加した。試料12についは60℃、その他の試料については100℃に保持し、30分間経過した後、冷水にて速やかに冷却した。処理後の菌液を培養し、菌液中に存在する菌数を算出した。結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
表より明らかなように、同じ触媒成分を同じ基材に担持しても抗菌性が異なることが分かった。
表2には各試料について期待できる効果を記載した。
【0081】
・試験4(炊飯器への応用)
内釜表面のフッ素コート内に試験試料1のセラミックス粒子を導入した炊飯器の評価(食味官能試験)
試験炊飯器1:炊飯器(象印NP−NC10型)を用い、試験試料1の複合セラミックス材料粉末を10質量%の濃度でフッ素樹脂に添加して内釜に塗布した。
試験炊飯器2:試験の供した炊飯器に付属の内釜(試験例6の複合セラミックス材料に相当:5%含有)をそのまま使用した。
【0082】
・米を使った炊飯時及び分析
米を3合量り取り、500mLのイオン交換水で3回洗浄した。それぞれ各試験炊飯器内に入れた後、所定の水量(加水量645mL)に調節した後、炊飯した(モードとして「ふつう」を選択)。炊き上がったご飯を被験者(11人)で評価した。評価は二重盲検法にて行った。評価項目は香り、外観、硬さ、粘り、甘み、総合である。評価は両者を比較したときに、どちらかが優れている又は両者同程度との判断を行い、優れていると判断された方に+1した結果を算出したときに、試験炊飯器1の結果から試験炊飯器2の結果を引いた数値を求めた。
【0083】
その結果、香りが−2、外観が0、硬さが−2、粘りが−3、甘みが−4、総合が−5と低い結果になった。これは試験炊飯器1は試験炊飯器2と比べてプラチナを含有していないことに起因すると思われる。例えば、試験試料2を添加することによりAgに起因する除菌効果とPtに起因するご飯のおいしさ上昇効果とが両立できることが期待される。
【0084】
・試験5(抗酸化作用の評価)
内釜表面のフッ素コート内に試験試料7、8のセラミックス粒子を導入した炊飯器の評価
試験炊飯器3:炊飯器(象印NP−NC10型)を用い、試験試料7の複合セラミックス材料粉末を7.5質量%の濃度でフッ素樹脂に添加して内釜に塗布した。
【0085】
試験炊飯器4:炊飯器(象印NP−NC10型)を用い、試験試料7の複合セラミックス材料粉末よりナノダイヤの添加量が10倍多い複合セラミックス材料を7.5質量%の濃度でフッ素樹脂に添加して内釜に塗布した。
【0086】
試験炊飯器5:試験炊飯器3の組成に加え、試験試料6の複合セラミックス材料粉末を7.5質量%の濃度でフッ素樹脂に添加して内釜に塗布した。
【0087】
試験炊飯器6:試験炊飯器4の組成に加え、試験試料6の複合セラミックス材料粉末を7.5質量%の濃度でフッ素樹脂に添加して内釜に塗布した。
【0088】
それぞれの試験炊飯器の内釜に水を入れて炊飯動作を行った。炊飯動作の各工程(内釜に水を入れてから12時間経過後、予熱行程、沸騰直後)において内釜内の水をサンプリングして酸化還元電位(ORP)及びpHを測定した。酸化還元電位の測定はHORIBA製のpH/ION METER D−23を用いた。プローブとしてORPの測定は型式9300、pHの測定は型式承認第S8721 6366を用いた。結果を表3に示す。なお、ORPの単位はmVである。
【0089】
【表3】
【0090】
表より明らかなように、ナノダイヤモンドについてもプラチナと同程度がそれ以上の抗酸化作用を発揮することが分かった。特にナノダイヤモンドとプラチナとを併用することにより更に高い効果が発現できた。
【0091】
・試験6(炊飯器への応用)
内蓋表面のフッ素コート内に試験試料7のセラミックス粒子を導入した炊飯器の評価(臭い防止効果の検討)
試験炊飯器2〜6を用いて炊飯を行い、保温した。保温前後での臭いの増加の程度を評価した。
【0092】
・米を使った炊飯時及び分析
米を3合量り取り、500mLのイオン交換水で3回洗浄した。それぞれ各試験炊飯器内に入れた後、所定の水量(加水量645mL)に調節した後、炊飯した(モードとして「ふつう」を選択)。炊き上がったご飯が存在する条件で、内釜中の空気における臭気を、炊飯直後と、24時間保温した後とについてにおいセンサ(コスモス電機製、XP−329)にて測定した。空気中の水分の影響を減らすため、内釜中の空気をいったん冷却して水分をある程度除去した後に測定した。結果を表4に示す。臭気の強さは相対的なもので数値が大きいほど臭気が強いことを表している。
【0093】
【表4】
【0094】
表より明らかなように、ナノダイヤモンドを添加した試験炊飯器3〜6はナノダイヤモンドを添加していない試験炊飯器2と比べて臭気の強さが炊飯直後及び24時間保温後のいずれにおいても臭気が少なく、ナノダイヤモンドの添加が臭気の抑制に効果を発揮できることが分かった。
【0095】
・試験7(炊飯器への応用)
内釜表面のフッ素コート内に試験試料11のセラミックス粒子を導入した炊飯器の評価
(食味官能試験)
試験炊飯器7:炊飯器(象印NP−NC10型)を用い、試験試料11の複合セラミックス材料粉末を2.5質量%の濃度でフッ素樹脂に添加して内釜に塗布した。
試験炊飯器8:炊飯器(象印NP−NC10型)を用い、試験試料11の複合セラミックス材料粉末を5.0質量%の濃度でフッ素樹脂に添加して内釜に塗布した。
試験炊飯器9:炊飯器(象印NP−NC10型)を用い、試験試料11の複合セラミックス材料粉末を7.5質量%の濃度でフッ素樹脂に添加して内釜に塗布した。
試験炊飯器10:炊飯器(象印NP−NC10型)を用い、試験試料11の複合セラミックス材料粉末を10.0質量%の濃度でフッ素樹脂に添加して内釜に塗布した。
【0096】
・米を使った炊飯時及び分析
米を3合量り取り、500mLのイオン交換水で3回洗浄した。それぞれ各試験炊飯器2,7〜10内に入れた後、所定の水量(加水量645mL)に調節した後、炊飯した(モードとして「ふつう」を選択)。炊き上がったご飯を被験者(11人)で評価した。評価は二重盲検法にて行った。評価項目は香り、外観、硬さ、粘り、甘み、総合である。評価は両者を比較したときに、どちらかが優れている又は両者同程度との判断を行い、優れていると判断された方に+1した結果を算出したときに、試験炊飯器7〜10の結果から試験炊飯器2の結果を引いた数値を求めた。
【0097】
その結果、試験炊飯器7(2.5%)では、香りが1、外観が−1、硬さが0、粘りが3、甘みが0、総合が2であり、試験炊飯器8(5.0%)では、香りが2、外観が0、硬さが−2、粘りが4、甘みが4、総合が4であり、試験炊飯器9(7.5%)では、香りが1、外観が0、硬さが−2、粘りが1、甘みが4、総合が4であり、試験炊飯器10(10.0%)では、香りが0、外観が0、硬さが0、粘りが4、甘みが−2、総合が1であった。
【0098】
以上の結果からプラチナと炭化ジルコニウムとを併用することにより、甘み、粘り、総合の各項目で評価が向上することが分かった。特に順位を付けると、試験炊飯器9(7.5%)>試験炊飯器8(5.0%)>試験炊飯器7(2.5%)≒試験炊飯器10(10.0%≒試験炊飯器2であった。試験炊飯器9について試験炊飯器2と比較すると、炊いたご飯に含まれるアミノ酸の量は10%増加し、還元糖の量は60%増加した。
・試験8(炊飯器の内蓋への応用)
炊飯時に発生する蒸気は内蓋に付着して水滴になる。内蓋についた水滴はそのままではご飯の上に滴下されて炊き上がったご飯の食感などを低下させる。
【0099】
そこで、内蓋の表面を親水化して水滴の付着の態様を変化させて炊き上がったご飯上に滴下されることを抑制することを検討した。
【0100】
内蓋の表面に試験試料18の複合セラミックス材料を10%の濃度でフッ素樹脂に添加して内蓋に塗布した。
【0101】
内蓋の表面に試験試料19の複合セラミックス材料を10%の濃度でフッ素樹脂に添加して内蓋に塗布した。
【0102】
内蓋の表面に試験試料6の複合セラミックス材料を10%の濃度でフッ素樹脂に添加して内蓋に塗布した。
【0103】
これらの内蓋について霧吹きで水を拭きかけたところ、試験試料18>試験試料19>試験試料2の大小で親水性効果が認められた。また、これらの内蓋の上に水を60μL滴下した状態で光照射を行うと、試験試料18及び試験試料19については内蓋上の水滴の径が6.8mmから7.2mm以上に拡がり、光照射による親水性の更なる向上が認められた。種々の波長の光のうち、特に青色光の照射が親水性向上への効果が高かった。
【0104】
・試験9(炊飯器への応用)
内蓋表面のフッ素コート内に試験試料18〜20のセラミックス粒子を導入した炊飯器(試験炊飯器18〜20)の評価(臭い防止効果の検討)
試験炊飯器2、18〜20を用いて炊飯を行い、保温した。保温前後での臭いの増加の程度を評価した。
【0105】
・米を使った炊飯時及び分析
米を3合量り取り、500mLのイオン交換水で3回洗浄した。それぞれ各試験炊飯器内に入れた後、所定の水量(加水量645mL)に調節した後、炊飯した(モードとして「ふつう」を選択)。炊き上がったご飯が存在する条件で、内釜中の空気における臭気を、炊飯直後と、24時間保温した後とについてにおいセンサ(コスモス電機製、XP−329)にて測定した。空気中の水分の影響を減らすため、内釜中の空気をいったん冷却して水分をある程度除去した後に測定した。結果を表5に示す。臭気の強さは相対的なもので数値が大きいほど臭気が強いことを表している。
【0106】
【表5】
【0107】
表より明らかなように、銅酸化タングステンを添加した試験炊飯器18〜20は銅酸化タングステンを添加していない試験炊飯器2と比べて臭気の強さが炊飯直後及び24時間保温後のいずれにおいても臭気が少なく、銅酸化タングステンの添加が臭気の抑制に効果を発揮できることが分かった。特に銅酸化タングステンと共にプラチナを同一の粉体上に担持させた試験試料20(結合体と称している)の方が別々の粉体上に担持させた試験試料19(複合体と称している)よりも臭気低減効果が高いことが分かった。
【0108】
・試験10(抗酸化作用の評価)
内釜表面のフッ素コート内に種々の試験試料(試験試料4、5、8、9、14、15)のセラミックス粒子を導入した炊飯器(試験炊飯器10−4、10−5、10−8、10−9、10−14、10−15)の評価
それぞれの試験炊飯器の内釜に水を入れて炊飯動作を行った。対照試験として複合セラミックス材料を添加していないフッ素樹脂をそのまま塗布した内釜を試験に供した。炊飯動作の各工程(内釜に水を入れてから12時間経過後、予熱行程、沸騰直後)において内釜内の水をサンプリングして酸化還元電位(ORP)及びpHを測定した。酸化還元電位の測定はHORIBA製のpH/ION METER D−23を用いた。プローブとしてORPの測定は型式9300、pHの測定は型式承認第S8721 6366を用いた。結果を表6に示す。なお、ORPの単位はmVである。
【0109】
【表6】
【0110】
表より明らかなように、2つの成分を添加するに際して同じ粒子に担持させる場合(結合体)と、別々に担持させた粉体を混合する場合(複合体)とでどちらの効果が高いか一概に決定できず、組み合わせの種類により適正なものが異なることが分かった。