(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両端が開放された筒状に設けられて一方の開放端部と他方の開放端部とを備えるティートカップシェルと、該ティートカップシェルに挿入されて頭部が前記一方の開放端部に係止されると共に胴部が引っ張られた状態で前記他方の開放端部に係合されるように該胴部からの延長側に係合部が設けられたティートカップライナーとを備える搾乳機のティートカップにおいて、前記ティートカップライナーの外表面であって、該ティートカップライナーの頭部からミルククローへの接続口であるミルク排出口の方向へ所要の間隔を離した位置に、目印部が備えられ、
前記ティートカップライナーの劣化を測定する際には、該ティートカップライナーの頭部が前記ティートカップシェルの一方の開放端部に係止した状態を維持し、該ティートカップライナーの胴部の引っ張られた状態が解除されるように該ティートカップライナーの前記他方の開放端部との係合部による係合を外した状態とし、
前記ティートカップライナーの目印部が前記ティートカップシェルの基準位置部との位置関係において、前記他方の開放端部側へ所定の基準を超えて位置することにより、該ティートカップライナーの交換時期とするように判定することを特徴とするティートカップライナーの劣化判定方法。
両端が開放された筒状に設けられて一方の開放端部と他方の開放端部とを備えるティートカップシェルと、該ティートカップシェルに挿入されて頭部が前記一方の開放端部に係止されると共に胴部が引っ張られた状態で前記他方の開放端部に係合されるように該胴部からの延長側に係合部が設けられたティートカップライナーとを備える搾乳機のティートカップであって、
前記ティートカップライナーの頭部が前記ティートカップシェルの前記一方の開放端部に係止した状態を維持し、該ティートカップライナーの胴部の引っ張られた状態が解除されるように該ティートカップライナーの係合部による前記他方の開放端部との係合を外した状態において、該ティートカップライナーが劣化していない場合には前記ティートカップシェルの該一方の開放端部から該他方の開放端部の側へ所要の間隔を置いて設定された基準位置部を超えない位置にあって、該ティートカップライナーが劣化して伸びた場合には前記ティートカップシェルの前記基準位置部を超える位置にあることで、該ティートカップライナーの交換時期を判定できるように、該ティートカップライナーの外表面であって、該ティートカップライナーの頭部からミルククローへの接続口であるミルク排出口の方向へ所要の間隔を離した位置に目印部が備えられていることを特徴とする搾乳機のティートカップ。
前記ティートカップライナーの目印部が前記ティートカップライナーの胴部に設けられ、前記ティートカップシェルの少なくとも一部が前記ティートカップライナーの目印部が視認できるように透明に設けられていると共に前記ティートカップシェルの基準位置部が該ティートカップシェルの透明の部位であって前記ティートカップライナーの目印部との位置関係を視認できる位置に設けられていることを特徴とする請求項2記載の搾乳機のティートカップ。
前記ティートカップシェルの基準位置部が、該ティートカップシェルの周壁部に線状でリング状に設けられていることを特徴とする請求項3記載の搾乳機のティートカップ。
前記ティートカップライナーの目印部が前記ティートカップライナーの胴部よりもミルク排出口側に設けられ、前記ティートカップシェルの基準位置部が該ティートカップシェルの他方の開放端部の端面であることを特徴とする請求項2記載の搾乳機のティートカップ。
前記ティートカップライナーの目印部が前記ティートカップライナーの外表面に一体成型で凸状に設けられていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の搾乳機のティートカップ。
【背景技術】
【0002】
従来から、搾乳機のティートカップライナーはゴム材による成形体であり、その胴部が、繰り返しの圧力変化によって開閉する搾乳動作、搾乳(乳脂肪)や洗浄(洗剤、オゾンなど)による化学的曝露、さらに殺菌の際の紫外線曝露によって経時的に劣化する。そこで、ティートカップの使用者は、そのティートカップライナーの劣化について監視する必要があり、ティートカップライナーが規定の基準以上に劣化したものと判定した場合には、新品のティートカップライナーと交換する必要がある。なお、ティートカップライナーは劣化すると、元の形状に戻ろうとする復元力が減衰し、軸方向(長さ方向)については伸びて元の長さに復帰できなくなる。
【0003】
このティートカップライナーの劣化の判定について、先に本出願人は、ティートカップライナーの搾乳性能低下判定方法及び手段として、「搾乳機のティートカップライナーの胴部の先端から約70mmの位置に、軸方向に延びた長方形状の突起からなる測定手段を設け、ティートカップシェルから外した後一定時間内に長方形突起の両端にノギス状の治具をさしわたし突起の両端を挟めるかどうかをみることにより、残留変形が許容値以下であるかどうかを判定する。」もの(特許文献1参照)を提案している。これによれば、「複雑な装置を使用せずに、ティートカップライナーの使用による劣化、特に胴部(ボア部)の永久変形及び弾力性の低下を簡単に測定し、ティートカップライナーの交換時期を判断できる」ため、適切な搾乳作業を行うことができる。
【0004】
しかしながら、上記のティートカップライナーの搾乳性能低下判定方法では、ティートカップライナーの長方形突起の両端にノギス状の治具をさしわたして判断するため、ティートカップシェルに挿入・装着されていたティートカップライナーを、そのティートカップシェルから完全に取り外して分離する必要がある。また、そのノギス状の治具を、ティートカップライナーに当てるという作業工程が必要となり、ティートカップライナーをティートカップシェルから分離する工程と合わせて、手間がかかっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ティートカップライナーの劣化判定方法及び搾乳機のティートカップに関して解決しようとする問題点は、その判定のための作業工程をより簡略化して、ティートカップライナーの劣化を正確且つより簡便に検知できる方法及び手段が提案されていないことにある。
そこで本発明の目的は、ティートカップライナーの劣化を、正確且つより簡便に検知できるティートカップライナーの劣化判定方法及び搾乳機のティートカップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係るティートカップライナーの劣化判定方法の一形態によれば、両端が開放された筒状に設けられて一方の開放端部と他方の開放端部とを備えるティートカップシェルと、該ティートカップシェルに挿入されて頭部が前記一方の開放端部に係止されると共に胴部が引っ張られた状態で前記他方の開放端部に係合されるように該胴部からの延長側に係合部が設けられたティートカップライナーとを備える搾乳機のティートカップにおいて、前記ティートカップライナーの外表面であって、該ティートカップライナーの頭部からミルククローへの接続口であるミルク排出口の方向へ所要の間隔を離した位置に、目印部が備えられ、前記ティートカップライナーの劣化を測定する際には、該ティートカップライナーの頭部が前記ティートカップシェルの一方の開放端部に係止した状態を維持し、該ティートカップライナーの胴部の引っ張られた状態が解除されるように該ティートカップライナーの前記他方の開放端部との係合部による係合を外した状態とし、前記ティートカップライナーの目印部が前記ティートカップシェルの基準位置部との位置関係において、前記他方の開放端部側へ所定の基準を超えて位置することにより、該ティートカップライナーの交換時期とするように判定する。
【0008】
また、本発明に係る搾乳機のティートカップの一形態によれば、両端が開放された筒状に設けられて一方の開放端部と他方の開放端部とを備えるティートカップシェルと、該ティートカップシェルに挿入されて頭部が前記一方の開放端部に係止されると共に胴部が引っ張られた状態で前記他方の開放端部に係合されるように該胴部からの延長側に係合部が設けられたティートカップライナーとを備える搾乳機のティートカップであって、前記ティートカップライナーの頭部が前記ティートカップシェルの前記一方の開放端部に係止した状態を維持し、該ティートカップライナーの胴部の引っ張られた状態が解除されるように該ティートカップライナーの係合部による前記他方の開放端部との係合を外した状態において、該ティートカップライナーが劣化していない場合には前記ティートカップシェルの該一方の開放端部から該他方の開放端部の側へ所要の間隔を置いて設定された基準位置部を超えない位置にあって、該ティートカップライナーが劣化して伸びた場合には前記ティートカップシェルの前記基準位置部を超えるように位置することで、該ティートカップライナーの交換時期を判定できるように、該ティートカップライナーの外表面であって、該ティートカップライナーの頭部からミルククローへの接続口であるミルク排出口の方向へ所要の間隔を離した位置に目印部が備えられている。
【0009】
また、本発明に係る搾乳機のティートカップの一形態によれば、上記ティートカップライナーの劣化判定方法に用いられる手段であって、前記ティートカップライナーの目印部が前記ティートカップライナーの胴部に設けられ、前記ティートカップシェルの少なくとも一部が前記ティートカップライナーの目印部が視認できるように透明に設けられていると共に前記ティートカップシェルの基準位置部が該ティートカップシェルの透明の部位であって前記ティートカップライナーの目印部との位置関係を視認できる位置に設けられていることを特徴とすることができる。
また、本発明に係る搾乳機のティートカップの一形態によれば、前記ティートカップシェルの基準位置部が、該ティートカップシェルの周壁部に線状でリング状に設けられていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る搾乳機のティートカップの一形態によれば、上記ティートカップライナーの劣化判定方法に用いられる手段であって、前記ティートカップライナーの目印部が前記ティートカップライナーの胴部よりもミルク排出口側に設けられ、前記ティートカップシェルの基準位置部が該ティートカップシェルの他方の開放端部の端面であることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る搾乳機のティートカップの一形態によれば、前記ティートカップライナーの目印部が前記ティートカップライナーの外表面に凸状に設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るティートカップライナーの劣化判定方法及び搾乳機のティートカップによれば、ティートカップライナーの劣化を、正確且つより簡便に検知できるという特別有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るティートカップライナーの劣化判定方法及び手段の形態例を添付図面(
図1〜7)に基づいて詳細に説明する。
図1などから明らかなように、本発明に係る搾乳機のティートカップの搾乳動作に関連する基本的な構成は、既存のものと同等に設けられている。
【0015】
先ず、本発明に係る搾乳機のティートカップの基本的な構成とその作動について、
図1〜4に基づいて説明する。
本発明に係る搾乳機のティートカップは、両端が開放された筒状に設けられて一方の開放端部21と他方の開放端部22とを備えるティートカップシェル20と、そのティートカップシェル20に挿入されて頭部31が一方の開放端部21に係止されると共に胴部32が引っ張られた状態で他方の開放端部22に係合されるようにその胴部32からの延長側に係合部33が設けられたティートカップライナー30とを備える。なお、ティートカップシェル20としては、例えばステンレスや樹脂などで、耐圧性を有しているものを用いることができ、ティートカップライナー30としては、例えば合成ゴムを基材とする弾性体を用いることができる。
【0016】
このティートカップシェル20の一方の開放端部21では、筒状のティートカップシェル20の内径に相当する大きさの開口が形成されている。これに対して、ティートカップシェル20の他方の開放端部22では、筒状のティートカップシェル20の内側へフランジ状に張り出された絞り部22aを備える開口が形成されている。これにより、一方の開放端部21の開口の方が大きく、他方の開放端部22の開口の方が小さくなっている。また、他方の開放端部22の絞り部22a(
図1及び3参照)に、ティートカップライナー30の係合部33に設けられた嵌着用のリング溝部33a(
図1及び4参照)が嵌って装着されるように設けられている。
【0017】
そして、本発明に係るティートカップライナー30にあっては、
図4〜7に示すように、そのティートカップライナー30の外表面であって、ティートカップライナー30の頭部31からミルククロー(図示せず)への接続口であるミルク排出口34aの方向へ所要の間隔を離した位置に、頭部31が一方の開放端部21に係止されて係合部33が他方の開放端部22に係合されていない状態でティートカップシェル20にある基準位置部25(25A1、25A2、25B)と所定の位置関係となる部位に設けられた目印部35(35A、35B)が備えられている。
【0018】
なお、ティートカップライナー30の頭部31はボア部(胴部32)に比して大径に形成さており、そのティートカップライナー30の頭部31がティートカップシェル20の一方の開放端部21に係止されている状態とは、
図1、
図5〜7にも明らかなように、頭部31の乳頭に接する側とは反対側の面であるフランジ形状の裏面側にあって、スカート部31bが形成されることで溝状に設けられた底面である溝底受面31cに、ティートカップシェル20の一方の開放端部21の端面21a(
図2及び3参照)が接して嵌った状態(
図1参照)で、その状態が維持されている状況のことである。
【0019】
また、ティートカップライナー30の係合部33がティートカップシェル20の他方の開放端部22に係合されていない状態とは、
図5及び
図7にも明らかなように、他方の開放端部22の絞り部22aから係合部33が外された状態であって、ティートカップライナー30のショートミルクチューブ34の側が自由端になっている状況を意味している。また、ティートカップライナー30の構成としては、頭部31にリップ部31aを備え、頭部31の真空室12に開いた開口が、乳頭挿入口11になっており、
図1及び4などに示すように、頭部31、胴部32、ショートミルクチューブ34が一体に成型され、ショートミルクチューブ34の末端がミルククロー(図示せず)に接続されるように設けられている。
【0020】
このようなティートカップ10を用いた機械搾乳では、ミルククロー内は常に真空であり、これに連結されるティートカップライナー30の内部は真空室12となっている。ティートカップライナー30とティートカップシェル20の間の空間である脈動空圧室13に、ティートカップシェル20に設けられた接続口24を介してパルセータ(図示せず)の真空が伝わると、ティートカップライナー30の胴部32が開いて「搾乳期」となり、接続口24を介してパルセータから大気が入るとティートカップライナー30の胴部32が閉じて「マッサージ期」となる。すなわち、ティートカップライナー30の胴部32は、開いた状態から扁平に潰れ、その扁平の状態から開いた状態に復元するという搾乳動作を繰り返すことになる。ティートカップライナー30の交換が不適切な場合であって、ティートカップライナー30の消耗・劣化が生じる状況では、ティートカップライナー30の胴部32が伸びて弾力性がなくなることで、ティートカップライナー30の胴部32の開きが遅くなり搾乳性が低下し、ティートカップライナー30の胴部32の閉じる動きが遅くなることでマッサージ効果が低下する。このような状態になると、過搾乳やマッサージ不足によって、牛乳の品質が低下し、乳牛の健康を害することになる。なお、接続口24に接続されるパルセータとは、真空と大気圧を交互に切換えて搾乳動作を生じさせるように作動するものであり、既知の技術を用いればよい。
【0021】
次に、本発明に係る以上の基礎的な構成を備えるティートカップ10について、ティートカップライナー30の劣化を判定する際の作業方法を
図5などに基づいて説明する。
先ず、ティートカップライナー30の頭部31がティートカップシェル20の一方の開放端部21に係止した状態を維持し、ティートカップライナー30の胴部32の(軸方向へ)引っ張られた状態が解除されるようにティートカップライナー30の係合部33による絞り部22aに対する係合を外した状態とする。すなわち、ティートカップライナー30は、ティートカップシェル20に挿入された状態が維持されており、ティートカップシェル20から取り外されてはいない。
【0022】
次に、ティートカップライナー30の目印部35(35A又は35B)がティートカップシェル20の基準位置部25(25A1、25A2又は25B)との位置関係において、他方の開放端部22側へ所定の基準を超えて位置することにより、本形態例では基準以上に位置することを視認することで、ティートカップライナー30の交換時期とするように判定する。すなわち、ティートカップシェル20を長さ方向の基準にして一種の測定器(ゲージ)として用い、ティートカップライナー30の目印部35(35A又は35B)の位置関係を目視するだけで、ティートカップライナー30が劣化しているか否かを判定する。なお、上記位置関係を判定するのは、目視以外の手段、例えば光学電子装置を用いても良い。
【0023】
これによれば、ティートカップシェル20に挿通・装着されていたティートカップライナー30を、そのティートカップシェル20から取り外して分離する必要がない。また、先行技術のノギス状の治具をティートカップライナー30に当てるという作業工程が不要となり、ティートカップライナー30の劣化による伸びを直接的に視認することができる。従って、正確且つ非常に簡便にティートカップライナー30の劣化を判定することができるという特別有利な効果を奏する。
【0024】
次に、ティートカップライナーの劣化判定方法に用いられる手段の具体例、及びその構成による劣化判定の方法について、
図5〜7に基づいて以下に詳細に説明する。
先ず、ティートカップライナー30の目印部35がティートカップライナー30の胴部32に設けられている場合、ティートカップシェル20の少なくとも一部がティートカップライナー30の目印部35(胴部外表面の目印部35A)が視認できるように透明に設けられていると共に、ティートカップシェル20の基準位置部25(後述する第1のリング状の線による基準位置部25A1)がそのティートカップシェル20の透明の部位であってティートカップライナー30の胴部外表面の目印部35Aとの位置関係を視認できる位置に設けられている。
【0025】
これによれば、ティートカップシェル20が透明に設けられているため、ティートカップシェル20の内部に挿入されているティートカップライナー30の胴部32を容易に視認・観察することができことから、ティートカップライナー30をティートカップシェル20から取り外す必要がなく、非常に簡便にティートカップライナー30の劣化を判定することができる。
なお、本形態例のティートカップシェル20は、透明な樹脂材によって一体的に形成されているため、ティートカップシェル20の全体が透明であるが、これに限定されることはなく、部分的に透明に形成された形態であってもよい。また、ティートカップシェル20をステンレスなどの金属で構成した場合には、基準位置部付近を、透明材をはめ込むことなどで部分的に透明に構成しても良い。
【0026】
また、本形態例では、ティートカップライナー30の目印部35Aがティートカップライナー30の外表面に一体成型で凸状に突起した形態に設けられている。このように目印部35Aが設けられることで、プリントなどによる目印の形成方法に比べ、消失や位置変位の心配がなく、信頼性を高めることができると共に、効率良く生産できる利点がある。さらに本形態例の目印部35Aは、軸方向に長い形態の長方形(短冊形状)に形成されている。このように目印部35Aが軸方向に長い形態であることで、ティートカップライナー30の胴部32の開閉動作については抵抗力を生じにくい形状であり、その胴部32の開閉動作に対して悪影響を与えない利点がある。しかしながら、目印部35Aの形状はこれに限定されるものではなく、種々の形態を取ることができる。例えば、その形状は、点状、線状、或いは長方形以外の面状など、適宜選択的に採用できるのは勿論である。
【0027】
透明なティートカップシェル20の基準位置部25が、一つの形態として、そのティートカップシェル20の周壁部23に線状でリング状に設けられており、本形態例では、第1のリング状の線による基準位置部25A1及び第2のリング状の線による基準位置部25A2という2本の基準位置部25が設けられている。これによれば、ティートカップシェル20にティートカップライナー30を装着する際に、周方向の位置を合わせる必要がなく、ティートカップシェル20の全周方向のいずれの位置に対応するようにティートカップライナー30の目印部35Aがセットされた場合でも、基準位置部25(25A1、25A2)との位置関係を視認することができる。すなわち、ティートカップライナー30をティートカップシェル20に周方向について任意の位置で装着ができ、その装着に係る作業性を向上できる。
【0028】
なお、このティートカップシェル20の周壁部23に設けられる基準位置部25(25A1、25A2)は、内表面と外表面のどちらであってもよく、その基準位置を示すための標識となる形態は、特に限定されることはなく、位置を特定することができる手段であれば、種々の形態を取ることができる。例えば、凸部や凹部を形成すること、凹部の一種であるが溝を形成すること、特定の位置を示す線や面の境界線をプリントで表すこと、また、その基準位置部25を構成する形状が面状、線状、点であることなど、既知の技術や形態を応用して用いることができる。なお、本形態例では、ティートカップシェル20の周壁部23の内面に、小さい段部を設けることで、第1のリング状の線による基準位置部25A1及び第2のリング状の線による基準位置部25A2が設けられている。
【0029】
以上のように設けられたリング状の線による基準位置部(25A1、25A2)について、その用い方を
図5〜7に基づいて以下に説明する。
図5は、新品或いは劣化していないティートカップライナー30をティートカップシェル20に挿入し、頭部31が一方の開放端部21に係止された状態を示している。
次に、
図6は、
図5の状態からティートカップライナー30の胴部32が引っ張られた状態で他方の開放端部22に係合されるように、係合部33が絞り部22aに嵌って係合した状態を示している。
そして、
図7は、
図6の状態で搾乳作業がなされた後のティートカップライナー30が劣化した状況を示すもので、ティートカップライナー30の頭部31がティートカップシェル20の一方の開放端部21に係止した状態を維持し、ティートカップライナー30の胴部32の引っ張られた状態が解除されるようにティートカップライナー30の係合部33による係合を外した状態となっている。
【0030】
図5に示す状況では、ティートカップライナー30が劣化していないため、第1のリング状の線による基準位置部25A1に対して、胴部外表面の目印部35Aがティートカップライナー30の頭部31側に位置している。
そして、
図7に示す状況では、ティートカップライナー30が劣化し、第1のリング状の線による基準位置部25A1に対して、胴部外表面の目印部35Aの先端(ショートミルクチューブ34側の一端)が、ティートカップライナー30のショートミルクチューブ34側(図面上において基準位置部25A1の下側)に位置している。すなわち、目印部35Aの先端が基準位置部25A1のラインを越えており、これによってティートカップライナー30が伸びて劣化していることを目視によって確認することができる。
【0031】
また、第2のリング状の線による基準位置部25A2は、胴部外表面の目印部35Aの位置がよりショートミルクチューブ34側に位置して設けられているティートカップライナー30に対応できる。この場合、胴部外表面の目印部35Aの先端が、第1のリング状の線による基準位置部25A1と第2のリング状の線による基準位置部25A2との間にある場合は、ティートカップライナー30の劣化が許容範囲であり、使用できる範囲にあたるように設定することができる。これによれば、胴部外表面の目印部35Aの先端が、第1のリング状の線による基準位置部25A1を超すことで、新品の場合は、ティートカップライナー30の頭部31が一方の開放端部21に適切に係止したことを確認できる。そして、胴部外表面の目印部35Aの先端が、第2のリング状の線による基準位置部25A2を超すことで、ティートカップライナー30の劣化を確認できるように用いることができる。
【0032】
次に、ティートカップライナーの劣化判定方法に用いられる別の形態について、
図5〜7に基づいて以下に説明する。
先ず、ティートカップライナー30の目印部35が、上述したティートカップライナー30の胴部32でなく、そのティートカップライナー30の胴部32よりもミルク排出口34a側に設けられ、ショートミルクチューブ付根部外表面の目印部35Bとして構成されている。
そして、ティートカップシェル20の基準位置部25が、そのティートカップシェル20の他方の開放端部22の端面によって構成され、他方の端面による基準位置部25Bとなっている。
【0033】
これによっても、ティートカップライナー30をティートカップシェル20から取り外す必要がなく、非常に簡便にティートカップライナー30の劣化を判定することができる。
また、この構成によれば、ティートカップシェル20が透明な部材である必要はなく、従前の金属製のティートカップシェル20を利用することもできる。
さらに、本形態例のショートミルクチューブ付根部外表面の目印部35Bも、前述した胴部外表面の目印部35Aと同様に、ティートカップライナー30の外表面に凸状に突起した状態に設けられており、同様の効果を奏する。
【0034】
次に、上記の他方の端面による基準位置部25Bと、ショートミルクチューブ付根部外表面の目印部35Bについて、その用い方を
図5〜7に基づいて以下に説明する。
図5に示す状況では、ティートカップライナー30が劣化していないため、他方の端面による基準位置部25Bに対して、ショートミルクチューブ付根部外表面の目印部35Bがティートカップライナー30の頭部31側に位置している。
【0035】
そして、
図7に示す状況では、ティートカップライナー30が劣化し、基準位置部25Bに対して、目印部35Bの先端(ショートミルクチューブ34側の一端)が、ティートカップライナー30のショートミルクチューブ34側(図面上において基準位置部25Bの下側)に位置している。すなわち、目印部35Bの先端が基準位置部25Bのラインを越えており、これによってティートカップライナー30が伸びて劣化していることを目視によって確認することができる。
【0036】
なお、36はアンチツイストマーク(
図4参照)であって、頭部31のスカート部31bに、ショートミルクチューブ付根部外表面の目印部35Bとして用いられるマークと対になって、ティートカップライナー30の捩じれが出ないように確認するためのマークとして設けられている。このアンチツイストマーク36も、目印部35Bと同様に凸状に設けられている。これによれば、目印部35Bがアンチツイストマークの一方を兼用しており、合理的な構成になっている。なお、ティートカップライナー30を捩じれた状態で使用すると、ティートカップライナー30の劣化が早まるばかりか、乳房疾患の要因になるため、このアンチツイストマーク36は重要な役割を有している。
【0037】
以上、ティートカップライナーの劣化判定方法について説明したが、ティートカップライナー30の目印部35Aとリング状の線による基準位置部(25A1、25A2)との組み合わせによる方式と、ティートカップライナー30の目印部35Bと他方の端面による基準位置部25Bとの組み合わせによる方式とについて、いずれか一つの方式を用いても良いし、併用して用いても良いのは勿論である。
【0038】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。