(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定筒部と、この固定筒部の外周面に対して回動可能に装着した操作リングと、前記固定筒部の内周面に対して回動可能に装着したカム筒部と、前記操作リングの回動操作による回動変位を伝達部材を介して前記カム筒部に伝達する伝達機構部とを有してなるレンズ鏡筒を備えるレンズ装置において、前記操作リングと前記固定筒部間に、当該操作リングの回動端位置で係止して回動変位を規制するストッパ機構部を設けるとともに、移動方向の回動端位置における前記伝達部材と前記固定筒部における前記伝達部材の周方向への移動をガイドする周方向ガイドスリットの端部間に、前記ストッパ機構部による前記回動端位置における前記操作リングに対する回動変位の規制時に生じる所定の隙間を設けてなることを特徴とするレンズ装置。
前記ストッパ機構部は、前記操作リングの内周面に沿って設けた凹形状部と、前記固定筒部の外周面に設けた凸形状部の組合わせにより構成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレンズ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1で開示される従来のレンズ装置は、次のような解決すべき課題が存在した。
【0006】
第一に、回動筒部(操作リング)の回動端、例えば、ズームリングの場合、テレ端(望遠端)とワイド端(広角端)において、回動筒部の回動を規制する必要があり、特許文献1の場合、規制ガイドスリットの両端部を伝達コロ部材に対するストッパ部として機能させている。したがって、回動筒部の操作により伝達コロ部材がストッパ部に当たった際には少なからず衝撃が発生し、この衝撃は、伝達コロ部材からカム筒部を介してレンズに直接伝達される。この衝撃は、手に持ったスチルカメラや手動操作によるレンズユニットでは、さほど問題にならないが、設置したプロジェクタ、特に、光学系における高い安定性能が要求されるプロジェクタでは、画面(画像)のズレや揺れ等として発生し、無視できない問題となる。
【0007】
第二に、上述したストッパ部は規制ガイドスリットの一部として形成されるため、規制ガイドスリットにガイドされる伝達コロ部材はストッパ部に直接衝突する。この場合、伝達コロ部材は円滑に移動できるように、いわば別体のコロ体をネジにより取付けたローラ状に構成される。したがって、使用を繰り返した場合、少なからず伝達コロ部材の劣化要因(円滑移動性の低下要因)になるとともに、ストッパ部が規制ガイドスリットの一部として形成されることから設計自由度の低下要因ともなる。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したレンズ装置及びプロジェクタの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレンズ装置1,1eは、上述した課題を解決するため、固定筒部2と、この固定筒部2の外周面2fに対して回動可能に装着した操作リング3と、固定筒部2の内周面2iに対して回動可能に装着したカム筒部4と、操作リング3の回動操作による回動変位を伝達部材5tを介してカム筒部4に伝達する伝達機構部5とを有してなるレンズ鏡筒Cを備えるレンズ装置を構成するに際して、操作リング3と固定筒部2間に、当該操作リング3の回動端位置Xp,Xqで係止して回動変位を規制するストッパ機構部6を設けるとともに、移動方向の回動端位置Xp,Xqにおける伝達部材5tと固定筒部2における伝達部材5tの周方向Ffへの移動をガイドする周方向ガイドスリット11の端部11p,11q間に、ストッパ機構部6による回動端位置Xp,Xqにおける操作リング3に対する回動変位の規制時に生じる所定の隙間Csを設けてなることを特徴とする。
【0010】
一方、本発明に係るプロジェクタMは、上述した課題を解決するため、上述した本発明に係るレンズ装置1,1eを備えることにより、光源部から射出された光束を画像情報に応じて変調し、拡大投射することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は好適な態様により、伝達部材5tは、操作リング3に設けた孔部(又は凹部)3hに係合させることができる。この際、移動方向における孔部(又は凹部)3hと伝達部材5t間には、所定の隙間Cr又はクッション材5tgを介在させてもよい。一方、操作リング3は、手動操作又は電動駆動により操作可能に構成することができるとともに、この操作リング3には、ズームリング3z,フォーカスリング3f,アイリスリング、の一又は二以上を含ませることができる。一方、ストッパ機構部6は、操作リング3の内周面3iに沿って設けた凹形状部12と、固定筒部2の外周面2fに設けた凸形状部13の組合わせにより構成することができる。なお、凸形状部13は、固定筒部2に対して一体形成してもよいし、又はストッパ体13mを取付けて構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係るレンズ装置1,1e及びプロジェクタMによれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 操作リング3を回動端位置Xp,Xqまで操作した場合であっても、回動変位は操作リング3と固定筒部2間に設けたストッパ機構部6により規制されるため、回動端位置Xp,Xqの衝突に伴う衝撃は、いわば固定筒部2により吸収されることになり、カム筒部4側への直接的伝達が回避される。したがって、高い安定性能が要求される光学系であっても、衝撃による画面(画像)のズレや揺れ等の発生を排除できる。しかも、独立したストッパ機構部6として構成できるため、関連する他の機構である操作リング3のガイド機構や伝達機構等の設計自由度を高めることができる。
【0014】
(2) 固定筒部2には、伝達部材5tの周方向Ffへの移動をガイドする周方向ガイドスリット11を設けたため、移動方向の回動端位置Xp,Xqにおける伝達部材5tと周方向ガイドスリット11の端部11p,11q間に所定の隙間Csを設けることが可能になり、伝達部材5tによる周方向ガイドスリット11の端部11p,11qへの衝突を回避できる。したがって、例えば、伝達部材5tを別体に形成したコロ体をネジにより取付けてローラ状に構成する場合であっても、伝達部材5tの劣化要因(円滑移動性の低下要因)を排除できる。
【0015】
(3) 好適な態様により、伝達部材5tを、操作リング3に設けた孔部(又は凹部)3hに係合させるとともに、この際、移動方向における孔部(又は凹部)3hと伝達部材5t間に、所定の隙間Cr又はクッション材5tgを介在させれば、回動端位置Xp,Xqの衝突に伴う衝撃が操作リング3を介して伝達部材5tに伝わることが回避されるため、衝撃による画面(画像)のズレや揺れ等の発生をより確実に排除できる。
【0016】
(4) 好適な態様により、操作リング3を、手動操作又は電動駆動により操作可能に構成すれば、ストッパ機構部6により操作リング3の操作方式に左右されることなく同様の効果を得ることができる。特に、画面(画像)のズレや揺れ等が発生しやすい電動駆動により操作する場合であっても、発生する衝撃による悪影響を有効に回避できる。
【0017】
(5) 好適な態様により、操作リング3に、ズームリング3z,フォーカスリング3f,アイリスリング、の一又は二以上を含ませれば、いずれに適用した場合であっても、同様の構造を有する場合には有効な効果を得ることができる。特に、ズームリング3zの場合、画面(画像)のズレや揺れ等が目立ちやすいテレ端(望遠端)における有効な改善効果を確保できる。
【0018】
(6) 好適な態様により、ストッパ機構部6を、操作リング3の内周面3iに沿って設けた凹形状部12と、固定筒部2の外周面2fに設けた凸形状部13の組合わせにより構成すれば、既存構造に設計変更を加える程度で容易に実施できるとともに、無用な大型化や構造の複雑化を招く不具合を回避できる。
【0019】
(7) 好適な態様により、固定筒部2に対して凸形状部13を一体形成すれば、別部品を付加することなく、上述した既存構造の形状変更のみで低コストに実施できる。
【0020】
(8) 好適な態様により、固定筒部2に対してストッパ体13mを取付けることにより凸形状部13を構成すれば、別素材を用いたストッパ体13mの使用により衝撃吸収機能を付加できるなど、より機能性を高めることができる。
【0021】
(9) 好適な態様により、プロジェクタMに、本発明に係るレンズ装置1を備えて構成すれば、高い安定性能が要求される光学系を有するプロジェクタMにおけるセッティング時の画面(画像)のズレや揺れ等の発生を排除でき、プロジェクタMの品質性及び商品性をより高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
まず、本実施形態に係るレンズ装置1の全体の概略構成について、
図1,
図3及び
図5を参照して説明する。
【0025】
図3は、本実施形態に係るレンズ装置1の全体構成を示す。レンズ装置1は、大別して、レンズ鏡筒Cとこのレンズ鏡筒Cの内部に配したレンズ群Lとからなる。レンズ鏡筒Cは、固定筒部2を備えるとともに、さらに、この固定筒部2の後部外周面に固定した外筒部21、固定筒部2の前部(前端)に固定したカバー部22を備える。これにより、カバー部22と固定筒部2間には所定のリング状空間Srが形成される。なお、外筒部21は後述するプロジェクタMの外装内に取付けられる。
【0026】
一方、固定筒部2の外周面2fにはズームリング3z(操作リング3)を回動可能に装着する。そして、このズームリング3zの外周面3zfにおける前側に、周方向に沿った被動ギア24を形成するとともに、カバー部22の内周面には駆動モータ25を取付け、この駆動モータ25の回転出力軸25sに取付けた駆動ギア26を、被動ギア24に噛合させる。これにより、ズームリング3zは電動駆動により操作可能となる。
【0027】
また、固定筒部2の内周面2iにはカム筒部4を回動可能に装着するとともに、このカム筒部4の外周面には、三つの伝達部材5t…を周方向に沿って等間隔置きに設ける。したがって、この伝達部材5t…に対応する固定筒部2には、
図5に示すように、三つの周方向ガイドスリット11…を周方向に沿って等間隔置きに形成する。なお、
図5には、二つの周方向ガイドスリット11…が現れている。例示の伝達部材5tは、
図1に示すように、別体に形成した円柱形(円筒形)のコロ体27をネジ28により取付けてローラ状に構成する。各伝達部材5t…は、それぞれカム筒部4の外周面から放射方向に突出するため、各周方向ガイドスリット11…を挿通させた後、ズームリング3zに形成した孔部(又は凹部)3hに嵌合させる。これにより、伝達機構部5が構成され、ズームリング3zが回動変位すれば、この回動変位は各伝達部材5t…を介してカム筒部4に伝達され、カム筒部4はズームリング3zと一体に回動変位する。
【0028】
さらに、ズームリング3zの前方に位置する固定筒部2の外周面2fには、フォーカスリング3f(操作リング3)を回動可能に装着する。そして、このフォーカスリング3fの外周面3ffにおける後側には、周方向に沿った被動ギア31を形成するとともに、カバー部22の内周面には仮想線で示す駆動モータ32を取付け、この駆動モータ32の回転出力軸32sに取付けた駆動ギア33を、被動ギア31に噛合させる。これにより、フォーカスリング3fは電動駆動により操作可能となる。
【0029】
一方、フォーカスリング3fの位置に対応する固定筒部2の内周面2iには伝達筒部34を回動可能に装着するとともに、この伝達筒部34の外周面には、上述した伝達部材5tと同様に構成した三つの伝達部材36t…を周方向に沿って等間隔置きに設ける。したがって、この伝達部材36t…に対応する固定筒部2には、三つの周方向ガイドスリット35…を等間隔置きに形成し、伝達筒部34の外周面から放射方向に突出する各伝達部材36t…は、各周方向ガイドスリット35…を挿通させた後、フォーカスリング3fに形成した円孔部(又は円凹部)37に嵌合させる。これにより、伝達機構部が構成され、フォーカスリング3fが回動変位すれば、この回動変位は各伝達部材36t…を介して伝達筒部34に伝達され、伝達筒部34はフォーカスリング3fと一体に回動変位する。
【0030】
他方、レンズ鏡筒Cの内部に配するレンズ群Lは、複数のレンズ群Lf,La,Lb,Lc,Ld,Lrからなり、各レンズ群Lf,La…Lrには、一枚又は二枚以上のレンズが含まれる。例示のレンズ群Lf…Lrは七群であるが、この群数は任意である。例示の場合、最前端位置に配するレンズ群Lfは枠体41に保持され、固定筒部2の前端部に固定される。二番目に位置するレンズ群Laは、枠体42に保持される。この枠体42の前側外周面には、三つの係合コロ部材43…を周方向に沿って等間隔置きに取付け、伝達筒部34の光軸方向に形成した三つの直線ガイドスリット44…にそれぞれ係合させる。また、カム筒部4の内周面4iには中間筒部45を回動可能に装着し、
図1に示すように、この中間筒部45の内周面に形成したヘリコイドネジ45sと枠体42の外周面に形成したヘリコイドネジ42sを螺合させる。さらに、カム筒部4には、螺旋方向となる三つの傾斜ガイドスリット47…を周方向に沿って等間隔置きに形成するとともに、固定筒部2には、光軸方向となる三つの直線ガイドスリット48…を周方向に沿って等間隔置きに形成する。
図5に、一つの直線ガイドスリット48を示す。そして、中間筒部45の外周面には、三つの係合コロ部材46…を周方向に沿って等間隔置きに取付け、放射方向に突出する各係合コロ部材46…は、傾斜ガイドスリット47…を通して直線ガイドスリット48…に係合させる。
【0031】
一方、三,四,五番目に位置するレンズ群Lb,Lc,Ldは、枠体49,50,51にそれぞれ保持される。各枠体49…の外周面には、三つの係合コロ部材53…,54…,55…をそれぞれ周方向に沿って等間隔置きに取付ける。また、カム筒部4には、螺旋方向となる三つの傾斜ガイドスリット57…,58…,59…をそれぞれ周方向に沿って等間隔置きに形成する。そして、放射方向に突出する各係合コロ部材53…は、各傾斜ガイドスリット57…を通して直線ガイドスリット48…に係合させる。さらに、最後端位置に配するレンズ群Lrは、外筒部21の後端部に固定される。
【0032】
次に、本実施形態に係るレンズ装置1の要部構成について、
図1〜
図5を参照して説明する。
【0033】
本実施形態に係るレンズ装置1は、
図1及び
図4に示すように、ズームリング3zと固定筒部2間に、当該ズームリング3zの回動端位置Xp,Xq(テレ端,ワイド端)で係止して回動変位を規制するストッパ機構部6を設けたものであり、具体的には、固定筒部2の外周面2fに凸形状部13を設けるとともに、
図4に示すように、ズームリング3zの内周面3iに沿った凹形状部12を設けて構成する。このようなストッパ機構部6は、いわば独立したストッパ機構部6として構成できるため、関連する他の機構であるズームリング3zのガイド機構(周方向ガイドスリット11)や伝達機構(伝達機構部5)等の設計自由度を高めることができる。
【0034】
この場合、凸形状部13は、
図5に示すように、直方体形の突起形状を固定筒部2の外周面2fに一体形成する。このように、凸形状部13を、固定筒部2に対して一体形成すれば、別部品を付加することなく、上述した既存構造の形状変更のみで低コストに実施できる利点がある。また、凹形状部12は、
図1及び
図4に示すように、凸形状部13よりも稍大きい断面(段差面)となるように選定し、凸形状部13の移動を許容するとともに、ズームリング3zの回動範囲(ワイド端からテレ端)に対応する長さ分を周方向に沿って形成する。これにより、凸形状部13は、凹形状部12の周方向両側に形成される内面端部12p,12qに当接(係止)可能となる。したがって、この内面端部12p,12qが、ズームリング3zの回動端位置Xp,Xqに対応する。このように、ストッパ機構部6を、操作リング3の内周面3iに沿って設けた凹形状部12と、固定筒部2の外周面2fに設けた凸形状部13の組合わせにより構成すれば、既存構造に設計変更を加える程度で容易に実施できるとともに、無用な大型化や構造の複雑化を招く不具合を回避できる利点がある。
【0035】
一方、移動方向の回動端位置Xpにおける伝達部材5tとカム筒部4間には、
図2に示すように、所定の隙間Csを設ける。この場合、伝達部材5tは、周方向ガイドスリット11に係合するため、伝達部材5tとカム筒部4間は、伝達部材5tと周方向ガイドスリット11の一方の端部11p間となる。したがって、前述したズームリング3zの回動端位置Xpでは、ストッパ機構部6によりズームリング3zの回動変位が規制されるも、伝達部材5tは、周方向ガイドスリット11の一方の端部11pに対して当接することはなく、伝達部材5tと周方向ガイドスリット11の一方の端部11p間には、所定の隙間Csが存在する。
【0036】
また、伝達部材5tの移動方向が反対方向の場合には、ズームリング3zの他方の回動端位置Xqにおいて、ストッパ機構部6によりズームリング3zの回動変位が規制されるも、伝達部材5tは、周方向ガイドスリット11の他方の端部11qに対して当接することはなく、伝達部材5tと周方向ガイドスリット11の他方の端部11q間に、所定の隙間Csが存在することになる。
【0037】
次に、本実施形態に係るレンズ装置1の要部の機能(作用)について、
図1〜
図6を参照して説明する。
【0038】
本実施形態に係るレンズ装置1は、
図6に示すように、光源部から射出された光束を画像情報に応じて変調し、拡大投射するプロジェクタ、特に光学系における高い安定性能が要求されるプロジェクタMに用いて最適である。
【0039】
今、レンズ装置1を装着したプロジェクタMにおいて、使用者がズーミング調整を行う場合を想定する。この場合、使用者がリモコン等におけるズーミング調整ボタンをONすれば、駆動モータ25が回転し、この回転は駆動ギア26を介して被動ギア24に伝達される。被動ギア24の回転によりズームリング3zも回動変位し、このズームリング3zの回動変位は、伝達部材5tを介してカム筒部4に伝達されることにより、カム筒部4はズームリング3zと一体に回動変位する。この際、カム筒部4に形成した各傾斜ガイドスリット57…には各係合コロ部材53…が係合するとともに、さらに、この係合コロ部材53…は直線ガイドスリット48…に係合しているため、カム筒部4の回動変位に対応して、各係合コロ部材53…は、それぞれ傾斜ガイドスリット57…の傾斜角度の大きさに対応して光軸方向に変位し、これにより、ズーミング調整が行われる。なお、ズームリング3zが回動変位する際、伝達部材5tは固定筒部2に形成される周方向ガイドスリット11により光軸方向の位置が一定となるようにガイドされる。
【0040】
他方、使用者がリモコン等におけるズーミング調整ボタンをONし続けた場合を想定する。この場合、ズームリング3z及びカム筒部4は、共に回動し続け、ズームリング3zが、
図2及び
図4に示すように、一方の回動端位置Xpに達すれば、ズームリング3zに形成した凹形状部12の内面端部12pが凸形状部13の側面に当接して停止する。したがって、
図2に示すように、内面端部12pと凸形状部13間の隙間Coはゼロになる。また、この際、周方向ガイドスリット11にガイドされる伝達部材5tは、周方向ガイドスリット11の端部11pに達する手前で停止し、伝達部材5tが当該端部11pに当接することはない。即ち、
図2に示すように、伝達部材5tは、端部11pに対して隙間Csだけ手前で停止する。
【0041】
このように、固定筒部2に、伝達部材5tの周方向Ffへの移動をガイドする周方向ガイドスリット11を設ければ、移動方向の回動端位置Xp,Xqにおける伝達部材5tと周方向ガイドスリット11の端部間に所定の隙間Csを設けることが可能になるため、伝達部材5tによる周方向ガイドスリット11の端部への衝突を回避できる。したがって、例えば、伝達部材5tを別体に形成したコロ体をネジにより取付けてローラ状に構成する場合であっても、伝達部材5tの劣化要因(円滑移動性の低下要因)を排除できる利点がある。
【0042】
なお、ズームリング3zを、一方の回動端位置Xpへ回動変位させた場合を示したが、反対方向となる他方の回動端位置Xqへ回動変位させた場合も同様となり、この場合、ズームリング3zが反対方向に回動変位し、他方の回動端位置Xqに達すれば、ズームリング3zに形成した凹形状部12の他方の内面端部12qが凸形状部13の反対側に位置する側面に当接して停止する。また、周方向ガイドスリット11にガイドされる伝達部材5tは、周方向ガイドスリット11の他方の端部11qに達する手前で停止するとともに、この際、伝達部材5tは、周方向ガイドスリット11の端部11qに対して隙間Csだけ手前で停止する。
【0043】
よって、このような本実施形態に係るレンズ装置1によれば、ズームリング3zを回動端位置Xp,Xqまで操作した場合であっても、回動変位はズームリング3zと固定筒部2間に設けたストッパ機構部6により規制されるため、回動端位置Xp,Xqの衝突に伴う衝撃は、いわば固定筒部2により吸収されることになり、カム筒部4側への直接的伝達が回避される。したがって、高い安定性能が要求される光学系であっても、衝撃による画面(画像)のズレや揺れ等の発生を排除できる。
【0044】
特に、例示のように、本発明に係るレンズ装置1をプロジェクタMに用いれば、高い安定性能が要求される光学系を有するプロジェクタMにおけるセッティング時の画面(画像)のズレや揺れ等の発生を排除でき、プロジェクタMの品質性及び商品性をより高めることができる。加えて、例示のように、ズームリング3zを、画面のズレや揺れ等が発生しやすい電動駆動により操作する場合であっても、発生する衝撃による悪影響を有効に回避することができるとともに、テレ端(望遠端)で目立ちやすい画面のズレや揺れ等を防止又は大幅に低減できる。
【0045】
次に、本発明の変更実施形態に係るレンズ装置1eの構成及び機能について、
図7〜
図9を参照して説明する。
【0046】
図7に示すレンズ装置1eは、
図1に示したレンズ装置1に対して次の点、即ち、ストッパ機構部6を配設する位置とストッパ機構部6の具体的構造が異なる。まず、ストッパ機構部6を配設するに際し、
図1に示したレンズ装置1では、被動ギア24と伝達機構部5間に配したが、
図7に示すレンズ装置1eでは、ストッパ機構部6と被動ギア24間に伝達機構部5が位置するようにレイアウトした。
【0047】
また、ストッパ機構部6を構成するに際し、
図1に示したレンズ装置1では、凸形状部13を固定筒部2に対して一体形成したが、
図7に示すレンズ装置1eでは、凸形状部13を別体に形成したものであり、具体的には、別体のストッパ体13mを用意し、このストッパ体13mを固定ネジ71により固定筒部2に取付けて構成した。このように、凸形状部13を、固定筒部2に対してストッパ体13mを取付けて構成すれば、別素材を用いたストッパ体13mの使用により衝撃吸収機能を付加できるなど、より機能性を高めることができる利点がある。なお、
図7において、2x,2yは、固定筒部2を構成する外層部,内層部をそれぞれ示すとともに、72は、操作リング3と被動ギア24を別体に形成した際における一体化させるための固定ネジを示す。その他、
図7において、
図1及び
図3と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0048】
図8及び
図9は、いずれも、伝達部材5tと操作リング3に設けた孔部(又は凹部)3h間の係合構造を変更したものである。
図4及び
図7に示した伝達部材5tと操作リング3に設けた孔部3h間の係合構造は一般的な連結構造である。したがって、移動方向における孔部(又は凹部)3hと伝達部材5t間にはほとんど隙間が存在しない。これに対して、
図8は、移動方向における孔部(又は凹部)3hと伝達部材5t間に、所定の隙間Crを介在させたものである。この場合、伝達部材5tの断面形状を円形にするも孔部(又は凹部)3hの断面形状を移動方向にやや長い小判形に形成することができる。これにより、操作リング3に振動が発生しても、この隙間Crにより吸収されるため、伝達部材5t側への伝達が回避される。また、
図9は、移動方向における孔部(又は凹部)3hと伝達部材5t間に、所定のクッション材5tgを介在させたものである。例示の場合、衝突時の振動吸収が最も効果的となる伝達部材5tの移動方向前面のみに設けた例を示す。即ち、構成的には、
図8における隙間Crを埋めるゴム等のクッション材5tgを伝達部材5tの移動方向前面のみに設けたものである。なお、必要により伝達部材5tを内側に配する円柱形の部材本体とこの部材本体の外周面を覆う円筒形に形成したゴム等のクッション材(5tg)との組合わせにより構成することも可能である。したがって、操作リング3に振動が発生しても、このクッション材5tgにより吸収されるため、伝達部材5t側への伝達が回避される。
【0049】
このように、
図8及び
図9に示した変更実施形態では、伝達部材5tを、操作リング3に設けた孔部(又は凹部)3hに係合させるとともに、この際、移動方向における孔部(又は凹部)3hと伝達部材5t間に、所定の隙間Cr又はクッション材5tgを介在させたため、回動端位置Xp,Xqの衝突に伴う衝撃が操作リング3を介して伝達部材5tに伝わることが回避され、もって、衝撃による画面(画像)のズレや揺れ等の発生をより確実に排除できる。なお、隙間Crの大きさやクッション材5tgの弾性率特性等は精度とのバランスを考慮して選定することが望ましい。
図8及び
図9において、
図4と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0050】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0051】
例えば、操作リング3(ズームリング3z,フォーカスリング3f)は電動により操作可能な電動駆動方式により構成した場合を示したが、手動により操作可能な手動操作方式により構成してもよい。このように、操作リング3を、手動操作又は電動駆動により操作可能に構成した場合であっても、ストッパ機構部6により操作リング3の操作方式に左右されることなく同様の効果を得ることができる。また、操作リング3として、主にズームリング3zを例示して説明したが、フォーカスリング4fやアイリスリング(不図示)であってもよい。いずれに適用した場合であっても、同様の構造を有する場合には有効な効果を得ることができる。一方、ストッパ機構部6は、操作リング3の内周面3iに沿って設けた凹形状部12と、固定筒部2の外周面2fに設けた凸形状部13の組合わせにより構成した場合を示したが、同様のストッパ機能を有するものであれば、他の構成を排除するものではない。