【実施例】
【0044】
毛根では、毛髪細胞の細胞供給源である毛根ケラチノサイト幹細胞と、毛色をつくるメラノサイトの供給源である毛根メラノサイト幹細胞の相互作用がメラノサイト幹細胞の消失を誘発し、白髪が発症することは既に報告されている(Rabbani P et al., Cell 145, 941-955, 2011; Tanimura S, et al., Cell Stem Cell 8, 177-187 2011)。一方、毛根ケラチノサイトの幹細胞は、毛髪の再生に重要であるため、それが維持されなくなると脱毛が生じることが報告されている(Nishie W., et al., Nature Medicine 13 (3), 378-383, 2011)。しかし、加齢とともに進行する白髪・脱毛を含む皮膚老化を誘発する毛根ケラチノサイト幹細胞や毛根メラノサイト幹細胞の表現型(制御分子の発現または活性レベル)は、未知である。そこで、毛根ケラチノサイト幹細胞や毛根メラノサイト幹細胞の消失の原因として細胞老化に注目し、脱毛・白髪化或いは皮膚老化(皮膚エイジング)との間の関連性を明らかにすべく、以下の実験を行った。
【0045】
<方法と材料>
1.免疫組織化学
(1)p16陽性細胞の検出
皮膚を採取し4%PFA液中にて4℃で一晩固定した。4μmのパラフィン切片を作製し、1/1200希釈したp16マウスモノクローナル抗体 (Santacruz biotechnology, California, USA)を滴下し4℃で一晩反応させた。2次抗体反応および3.3’-diaminobenzidine chromogenによる発色は、EnVision System-HRP (DAKO, California, USA)キットを用いて行った。
【0046】
(2)p16とcytokeratin15(CK15)、p16とDctの二重染色
皮膚を採取し4%PFA液中にて4℃で一晩固定し、4μmのパラフィン切片を作製し、1/1200希釈したp16マウスモノクローナル抗体(Santacruz biotechnology, California, USA)と1/1000に希釈したCK15 ニワトリ抗体(Covance, California, USA)、あるいは、1/500に希釈したDctヤギ抗体(Santacruz biotechnology, California, USA)を滴下、4℃で一晩反応させた。二次抗体は、Alexa594-抗マウス抗体、Alexa488-抗ニワトリ抗体、Alexa488-抗ヤギ抗体(Invitrogen, Oregon, USA)を用い、室温で10分反応させた。二次抗体の希釈率は、すべて1/1000とした。核は、4',6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)を用いて染色した。
【0047】
(3)p53陽性細胞の検出
皮膚を採取し4%PFA液中にて4℃で一晩固定した。4μmのパラフィン切片を作製し、1/100希釈したp53ウサギ抗体 (Santacruz biotechnology, California, USA)を滴下し4℃で一晩反応させた。2次抗体反応および3.3’-diaminobenzidine chromogenによる発色は、EnVision System-HRP (DAKO, California, USA)キットを用いて行った。
【0048】
2.SA-β-gal活性の検出
採取した皮膚を0.25%グルタルアルデヒド溶液にて4℃で一晩固定した。凍結切片を作製したのち、pH6に調整されたX-gal溶液中で37℃にて一晩反応させた。反応液はSenescence Detection Kit(Medical & Biological Laboratories, Nagoya, Japan)のプロトコールに従って調整した。ヘマトキシリンにより核染色を行った。
【0049】
<結果>
1.SA-β-gal活性の検出
SA-β-gal活性を調べた。その結果、加齢性の脱毛及び白髪化がみられる12ヶ月齢マウスでは、毛根バルジに存在する約5%(白毛毛根)及び約3%(脱毛毛根)のSA-β-gal陽性細胞が観察された(
図1)。1ヶ月齢のマウスの毛根バルジ領域ではSA-β-gal陽性細胞検出されなかった(
図1)。
【0050】
2.p53およびp16タンパクの検出
SA-β-galと共に細胞老化関連マーカーとして良く用いられているp53発現を調べたところ、SA-β-galと同様、毛根バル時領域で検出された(
図2A)。1ヶ月齢の黒毛毛根では、バルジ領域におけるp53陽性細胞の割合は1.3%であったのに対し、12ヶ月齢の白毛毛根では20.5%、脱毛毛根では18.7%であった。12ヶ月齢マウスの白毛および脱毛毛根におけるp53陽性細胞の割合は、1ヶ月齢のマウスの黒毛毛根におけるp53陽性細胞の割合に比べて有意に高かった(
図2B)。もうひとつの細胞老化関連マーカーであるp16陽性細胞のバルジ領域における割合は、12ヶ月齢マウスでは、34.3%(白毛毛根)及び51.4%(脱毛毛根)であった (
図3A)。一方、1ヶ月齢のマウスの黒毛毛根におけるp16陽性細胞の割合は5.3%(黒毛毛根)であった (
図3A)。12ヶ月齢マウスの白毛および脱毛毛根におけるp16陽性細胞の割合は、1ヶ月齢のマウスの黒毛毛根におけるP16陽性細胞の割合に比べて有意に高かった(
図3B)。
【0051】
毛根バルジ領域には、ケラチノサイト幹細胞とメラノサイト幹細胞が両方存在する(Cotsarelis G et al., Cell 61,1329-1337, 1990; Nishimura EK et al., Nature 416, 854-860, 2002)。どちらの幹細胞が老化したのかを確かめるために、ケラチノサイト幹細胞およびメラノサイト幹細胞のそれぞれのマーカーであるサイトケラチン15(CK15)およびDctに対する抗体を用いて、p16と二重免疫染色を行った(
図4)。その結果、12ヶ月齢マウスにおいて検出されたp16陽性シグナルはCK15陽性細胞の核内で発現していることが分かった(
図4)。一方、p16陽性シグナルはDct陽性細胞、つまりメラノサイト幹細胞では発現していなかった(
図4B)。
【0052】
3.幹細胞の細胞老化と脱毛および白髪化との関連
毛根ケラチノサイトの老化と加齢性の脱毛及び白髪化との関連を明らかにするために、まずは毛根ケラチノサイト幹細胞の老化の進行と毛根ケラチノサイト幹細胞の数との相関を調べた。その結果、毛根ケラチノサイト幹細胞の老化と毛根ケラチノサイト幹細胞の数の間に負の相関が認められた(
図5A)。次に、毛根ケラチノサイト幹細胞の老化と白髪化との相関を調べたところ、毛根ケラチノサイト幹細胞の老化と白髪率との間に正の相関が認められた(
図5B)。
【0053】
4.角化異常および表皮層肥厚(肌荒れ)を伴う皮膚におけるp16陽性細胞の検出(
図6、7)
12ヶ月齢のマウスの皮膚では、角質層の重層および錯角化等の角化異常および表皮層の肥厚化を伴う肌荒れ(接触性皮膚炎様皮膚障害、乾皮症性湿疹様皮膚障害、尋常性乾癬様皮膚障害等)が観察された(
図6、7)。そこで、角化異常および表皮層の肥厚化がみられた皮膚におけるp16の発現を免疫染色により調べた。その結果、1ヶ月齢の正常皮膚では、p16陽性細胞はほとんど検出されなかったのに対し(
図7A, a)、12ヶ月齢の角化異常を伴う皮膚では、毛根バルジ領域にp16陽性細胞が検出された(
図7B, b, c, d)。
【0054】
<考察>
加齢に伴って発症した白髪毛根及び脱毛毛根のバルジ領域に存在するケラチノサイト幹細胞において細胞老化関連マーカー(SA-β-gal、p53、p16)陽性シグナルが観察された。また、p16陽性の老化細胞の数の増加に伴い、ケラチノサイト幹細胞の減少、白髪率の増加が確認された。これらの結果より、バルジ領域のケラチノサイト幹細胞の老化が、ケラチノサイト幹細胞の消失を伴う脱毛・白髪化に関連することが示唆された。
【0055】
p16陽性細胞は、角化異常および表皮層の肥厚化を伴う肌荒れ(接触性皮膚炎様皮膚障害、乾皮症性湿疹様皮膚障害、尋常性乾癬様皮膚障害等)がみられる皮膚の毛根バルジ領域でも確認された。毛根ケラチノサイトは、毛根(毛髪)の再生時だけでなく、表皮の再生時においても細胞供給源となっていることが示唆されており、毛根ケラチノサイト幹細胞は、表皮を正常に保つためにも重要であると考えられる。従って、加齢に伴う毛根ケラチノサイト幹細胞の老化が、角化異常および表皮層の肥厚化を伴う肌荒れ(接触性皮膚炎様皮膚障害、乾皮症性湿疹様皮膚障害、尋常性乾癬様皮膚障害等)の原因となる可能性が示唆される。毛根ケラチノサイト幹細胞の老化を抑えられれば、脱毛および白髪だけでなく、皮膚の健康も保たれる事が示唆される。
【0056】
以上の通り、ケラチノサイト幹細胞の老化により加齢性の脱毛及び白髪化が促進することが明らかとなった。この結果は、加齢性の脱毛及び白髪化の指標として、毛根ケラチノサイト幹細胞の老化が有用且つ重要であることを示す。毛根ケラチノサイト幹細胞の老化を指標とすればin vitroレベル、ex vivoレベル及びin vivoレベルで脱毛及び白髪化の予防・治療剤のスクリーニングが可能となる。一方、角化異常及び表皮層の肥厚化を伴う肌荒れにもケラチノサイト幹細胞の老化が関与することが示された。この知見を踏まえると、毛根ケラチノサイト幹細胞の老化を指標としたスクリーニング法は、皮膚エイジングに対する予防・治療剤のスクリーニングにも利用できる画期的な技術といえる。
【0057】
ところで、膨大な薬剤ライブラリーから候補分子を絞り込むための第一スクリーニングとしては、試験効率やコスト面から、培養細胞を用いたin vitroスクリーンングが特に有効である。さらに、in vitroスクリーニングの結果をex vivoおよびin vivoスクリーニング結果と合わせて評価することでより信頼性の高い薬剤開発が可能である。ケラチノサイトの老化を標的としたin vitroスクリーニングには初代培養ケラチノサイトを用いることができる。しかしながら、個体差の問題、分裂回数の限界、同じヒト由来の細胞の安定供給が困難であること、培養操作が容易でないこと、細胞が高価であること等から、再現性、試験効率、コストの面を考慮して、ヒト皮膚ケラチノサイトから樹立された不死化ケラチノサイトを使用することもできる。不死化ケラチノサイトは、SV40等の遺伝子を導入等による不死化処理をして新たに作製しても良いし、HaCaT細胞 (Boukamp P, et al. J Cell Biol 106: 761-771, 1988)を使用することもできる。HaCaT細胞は非腫瘍形成性でありながら安定した増殖性を示す事から、ヒトの皮膚ケラチノサイトの機能解析に広く用いられている。そこで、以下に示す通り、HaCaT細胞を用いて細胞老化を標的としたアンチエイジング剤のin vitroスクリーニング系を確立する事を目的とし、第一に、HaCaT細胞に細胞老化が誘導されるかどうかを検討した。第二に、HaCaT細胞における細胞老化が、アンチエイジング剤のスクリーニングの標的として有効であるかどうかを確かめるために、老化を誘導したHaCaT細胞におけるエイジング関連分子の発現変化を調べた。
【0058】
<方法>
1.HaCaT細胞における過酸化水素曝露実験
0.25 x 10
5 cellsのHaCaT細胞 (Boukamp P, et al. J Cell Biol 106: 761-771, 1988)を10%ウシ胎児血清(FBS)含有Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium (DMEM)が3ml入った6ウェルプレートに播種した。6時間後に10%FBS-DMEM培地を除き、1%FBS-DMEM培地に置き換えた。24時間後、0μM、60μM、あるいは360μMの過酸化水素を含有した1%FBS-DMEM培地に置き換え、2時間インキュベートした。
【0059】
2.蛍光細胞免疫染色
過酸化水素処理したHaCaT細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗った後、2% パラホルムアルデヒド/PBS溶液を用いて、4℃にて15分間固定した。固定後、HaCaT細胞を0.1% tween20含有PBSにて3回洗った後、0.2%ゼラチン含有1%ウシ血清アルブミン(BSA)/PBS溶液により、室温で30分間ブロッキング処理を行った。抗p16 マウスポリクローナル抗体 (1:1000, Santacruz, CA, USA)、および抗エンドセリン1/2/3抗体 (1:100, santacruz, CA, USA)を4℃で一晩反応させた後、2次抗体として、Alexa Fluor 594抗ウサギIgG、およびAlexa Fluor 488抗マウスIgG (1:1000, Invitrgen, Oregon, USA)を室温で10分反応させた。核染色には、4',6-diamidine-2'-phenylindole dihydrochloride (DAPI) (和光純薬工業株式会社)を用いた。
【0060】
3.画像解析ソフトによる計測
蛍光細胞免疫染色によって染色された蛍光シグナル強度の定量は、WinRoof画像解析ソフト(三谷商事株式会社)を用いて行った(Ohgami et al., PNAS, 2010)。
【0061】
4.ELISA解析
0μMあるいは360μMの過酸化水素で処理したHaCaT細胞の培地を無血清DMEMに置き換え、3日間培養した後、上清を回収した。Endothelin EIA Kit (Cayman, MI, USA)を用いて上清中に分泌されたエンドセリン1/2/3タンパク量の測定を行った。酵素基質反応産物は、マイクロプレートリーダー(Bio Rad, model 680)を用いて定量した。
【0062】
<結果と考察>
初代培養ケラチノサイトでは、分裂回数が限界に達すると老化することが知られている(David Bernard et al., CANCER RESEARCH 64, 472-481, 2004))。そこで、初代培養ケラチノサイトの継代培養を繰り返したところ、SA-β-gal陽性の細胞が出現した(
図8A)。さらに、細胞老化は、紫外線、酸化剤、放射線等によっても誘発される事が知られている(Xiao-Yong Wang et al., Photodermatology, Photoimmunology & Photomedicine 27, 203-212, 2011; David Bernard et al., Cancer Research 64, 472-481, 2004)。本試験では、簡便かつ最も主要な酸化剤として知られる過酸化水素を用いて、HaCaTに細胞老化を誘導できるかどうか検討した。HaCaT細胞に0μM、60μM、あるいは360μMの過酸化水素を2時間作用させ、細胞老化マーカーのひとつであるp16陽性細胞の割合を調べた。p16陽性細胞の割合は、過酸化水素処理をしていないコントロールのものと比較し、60μM過酸化水素の曝露では約1.4倍、360μM過酸化水素の曝露では約2倍と濃度依存的に増加した(
図8B)。
【0063】
次に、初代培養ケラチノサイトおよびHaCaT細胞における細胞老化がアンチエイジング剤のスクリーニングの標的として有効であるかどうかを確かめるために、老化した初代培養ケラチノサイトおよびHaCaT細胞における皮膚エイジング関連分子の発現変化を調べた。皮膚エイジング関連分子とは、加齢に伴う皮膚変化、例えば、白髪、脱毛、角化異常、表皮層の肥厚化を伴う肌荒れ(接触性皮膚炎様皮膚障害、乾皮症性湿疹様皮膚障害、尋常性乾癬様皮膚障害等)の発症に関連する分子を指す。中でも本試験では、白髪化に着目して検証を行った。白髪化は、毛髪にメラニンを供給するメラノサイトが生存出来なくことが原因で起こることが報告されている(Emi K. Nishimura, et al. Science 307, 720, 2005)。また、メラノサイトはケラチノサイトの近傍に存在し、ケラチノサイトが発現・分泌した生存因子を受けとることによってその生存が維持されることが報告されている(Emi K. Nishimura, Cell Stem Cell 6, 130-140, 2010; Imokawa et al., PIGMENT CELL RES 17: 96-110. 2004)。ケラチノサイトにおいて発現・分泌されるメラノサイトの生存に関わる分子としては、エンドセリン1/2/3、Stem cell factor (SCF) (Imokawa et al., PIGMENT CELL RES 17: 96-110. 2004)、TGF-β(Emi K. Nishimura et al., Cell Stem Cell 6, 130-140, February 5, 2010) などがある。本研究では、エンドセリン1/2/3に着目し、老化を誘導したHaCaT細胞における発現を調べた。もし、老化したHaCaT細胞において、エンドセリン1/2/3の発現・分泌が低下していれば、HaCaT細胞の老化によりメラノサイトの生存が低下し、白髪が発症することになる。つまり、HaCaT細胞の老化を抑制することを標的にすることで白髪を予防・改善するようなアンチエイジング剤のスクリーニングが可能である。そこで、老化を誘導した初代培養ケラチノサイトおよびHaCaT細胞における、エンドセリン1/2/3の発現を免疫染色により検出した。その結果、初代培養ケラチノサイトにおいて、SA-β-gal活性を示す老化細胞では、エンドセリン1/2/3の発現は検出されなかった。一方、SA-β-gal活性を示さないケラチノサイトでは、明瞭なエンドセリン1/2/3のシグナルが検出された(
図8A)。次に、360μMの過酸化水素によって老化を誘導したHaCaT細胞において、p16およびエンドセリン1/2/3の発現を蛍光細胞免疫染色により調べた。その結果、蛍光顕微鏡観察において、p16陰性細胞では、エンドセリン1/2/3の発現が観察されたが、p16陽性細胞ではエンドセリン1/2/3の非常に低いシグナルが観察されなかった(
図8C)。蛍光免疫染色によって検出されたp16陰性およびp16陽性細胞におけるエンドセリン1/2/3の蛍光レベルをWinRoof画像解析ソフトにより測定した所、p16陽性HaCaT細胞におけるエンドセリン1/2/3蛍光レベルは、p16陰性HaCaT細胞における蛍光レベルと比べて、約77%低いことが分かった(
図8D)。さらに、各HaCaT細胞におけるp16およびエンドセリン1/2/3の蛍光レベルを測定し、p16蛍光強度とエンドセリン1/2/3の蛍光強度の相関関係を調べた所、統計学的に有意な負の相関がみられた(R
2 = 0.67)(
図8E)。つまり、p16の発現が高い細胞では、エンドセリン1/2/3の発現量が低く、p16の発現量が低い細胞では、エンドセリン1/2/3の発現量が高いという相関が示された。さらに、エンドセリン1/2/3の分泌量についてELISA法により調べた(
図8F)。その結果、360μMの過酸化水素水で老化を誘導したHaCaT細胞のエンドセリン1/2/3の分泌量は、過酸化水素を処理していないHaCaT細胞と比べて、約70%低かった(
図8F)。これらの結果より、過酸化水素によってHaCaT細胞にp16の発現上昇を伴う細胞老化が誘導されること、また、過酸化水素によって細胞老化を誘導したHaCaT細胞では、メラノサイトの生存に重要なエンドセリン1/2/3の発現・分泌が低下していることが分かった。
【0064】
以上より、初代培養ケラチノサイトおよびHaCaT細胞の細胞老化を抑制する事が、白髪を予防・改善するようなアンチエイジング剤のスクリーニングの標的として有効であることが示された。さらに、先に明らかにしたように、毛根ケラチノサイト幹細胞の老化が生じている皮膚では、白髪だけでなく、脱毛・角質層の重層および錯角化等の角化異常及び表皮層の肥厚化を伴う肌荒れ(接触性皮膚炎様皮膚障害、乾皮症性湿疹様皮膚障害、尋常性乾癬様皮膚障害等)などが生じている事を鑑みると、初代培養ケラチノサイトおよびHaCaT細胞の老化を指標とした上述のin vitroスクリーニング法は、白髪だけでなく、これらの皮膚トラブルにも効果のある薬剤開発、薬剤の皮膚に対する毒性の評価に有効であるといえる。