(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は多くの異なる形態で実施可能である。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0026】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る表示制御装置について、
図1ないし
図7を用いて説明する。本実施形態に係る表示制御装置は、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の技術を用いて、被撮像対象に対する作業中の状態を表示して確認することができるものである。また、作業後の被撮像対象の表示についても行うと共に、各種センサを用いて利用者の動作に伴って様々な状態で被撮像対象を表示制御することができるものである。
【0027】
本実施形態においては、例えば、建築現場における地盤改良や建物の建築の状態をARやVRの技術を用いて表示制御するものとする。なお、建築現場に限らず、様々な場所(例えば、製造を行う工場、植栽等の現場、飲食店等)において本実施形態に係る表示制御装置を適用することが可能である。
【0028】
図1は、地盤改良を行う場合の現地を模式的に示した図である。ここでは、仮に、南北に流れる河川と東西に通過する道路とに囲まれた領域について地盤改良を行うものとする。地盤改良は通常、
図1に示すように、対象領域を格子状に区画し各区画ごとに作業を行う。作業は、建機のアーム先端に取り付けられた攪拌機の回転により地面を掘削しながら土砂や固化材を攪拌して行われる。対象領域を格子状に区画することで、作業対象の領域や作業が完了している領域を区分して識別することができるが、現地に実際に格子状の区画線を描画する必要があり作業効率の低下の原因となっている。
【0029】
本実施形態においては、利用者の位置、姿勢の情報から、当該利用者の視点から見た地盤改良の状態を3次元仮想モデルで作成し、現実の撮像に重ねて表示する。そうすることで、現地に実際に区画線等を行う必要がなく、また、作業管理もコンピュータ上で容易に行うことが可能となる。
【0030】
図2は、本実施形態に係る表示制御装置の構成を示す機能ブロック図である。表示制御装置1は、カメラ21で撮像された撮像データを入力する撮像データ入力部2と、センサ部22で測定されたカメラ21又は当該カメラ21を保持する利用者の位置及び姿勢の情報を入力する位置姿勢入力部3と、被撮像対象に変化を生じさせる要素に関する要素情報23を入力する要素情報入力部4と、記憶部7に記憶された被撮像対象の3次元仮想モデルを読み出し、入力された位置・姿勢情報及び要素情報からカメラ21の視点から見た3次元状態仮想モデルを生成し、当該生成した3次元状態仮想モデルと入力された撮像データとを合成する演算部5と、演算された合成画像をディスプレイ24に表示する表示制御手段6とを備える。
【0031】
カメラ21は、
図1の地盤改良の場合、建機の外側又は運転席内の任意の位置を視点とし、所定の方向を撮像するように固定して設置されている。所定の方向とは、例えば、作業を行う対象物がある方向であり、この場合は建機の前方となる。すなわち、カメラ21は常時、作業領域の方向を動画又は静止画で撮像している。
図3(A)に、カメラ21で撮像された静止画像の一例を示す。
図1における建機の運転席から作業対象となる地盤の方向、すなわち建機の前方方向を撮像した画像である。
【0032】
センサ部22もカメラ21と同様に建機の外側又は運転席内の任意の位置に設置され、カメラ21の位置(例えば、GPSレシーバを利用)及び姿勢(例えば、加速度センサやジャイロセンサを利用)を測定する。このとき、各センサはカメラ21自体に設置することが困難であるため、建機の位置及び姿勢の変化を測定してカメラ21の位置及び姿勢の情報に置き換えるものとする。
【0033】
なお、建機の運転席内にGPSレシーバを設置した場合には位置情報を取得できない可能性もあるため、GPSレシーバは建機の外側に設置されることが望ましい。その場合、GPSレシーバが設置された位置とカメラ21が設置された位置との相対関係に基づいて、GPSレシーバが取得した位置情報を後述する演算部5の処理により補正することで、カメラ21の正確な位置情報を取得できるようにしてもよい。
【0034】
要素情報23は、攪拌機が移動した経路や深さの情報であり、これらの情報は、建機のアーム先端に取り付けられたセンサから取得してもよいし、建機の操作履歴からアームの移動を計算して要素情報23としてもよい。すなわち、要素情報23は、被撮像対象である地盤に変化を生じさせる要素(ここでは、攪拌機)に関する情報(ここでは、移動情報)である。
【0035】
演算部5は、記憶部7に格納されている地盤改良の3次元仮想モデルを読み出し、位置姿勢入力部3が入力したカメラ21の位置及び姿勢の情報と、要素情報入力4が入力した攪拌機の移動情報とに基づいて、カメラ21から見た地盤改良の3次元状態仮想モデルを生成する。
図3(B)に、生成された3次元状態仮想モデルの一例を示す。斜線領域は攪拌機が移動した経路、すなわち地盤改良の作業が完了した領域を示している。
図3(B)において、区画31〜区画33は、攪拌機が改良を必要とする最大深度を通過して作業が行われたことを示しており、区画34及び区画35については、攪拌機が改良を必要とする最大深度の2/3を通過して作業が行われたことを示し、区画36及び区画37については、攪拌機が改良を必要とする最大深度の1/3を通過して作業が行われたことを示している。すなわち、区画31〜区画33については、地盤改良の作業が完了し、区画34〜区画37については途中段階であり、その他の区画については未着手であることを3次元状態仮想モデルで示している。
【0036】
そして、演算部5は、カメラ21で撮像された撮像データと3次元状態仮想モデルを合成し、当該合成された画像は表示制御部6によりディスプレイ24に表示される。
図4は、合成画像の表示の一例を示す図である。
図4に示すように、現実の撮像データと仮想の3次元状態仮想モデルを重ね合わせることで、ARによる地盤改良の作業状態を表示することができる。
【0037】
なお、カメラ21、センサ部22、攪拌機に関する情報を要素情報23として測定するセンサ、ディスプレイ24等は、建機に一体的に備え付けられてもよいし、外付けで設置されてもよい。同様に、表示制御装置1自体も、建機と一体的な装置と捉えてもよいし、別体として設置されてもよい。
【0038】
次に、建物を建築する場合の本実施形態に係る表示制御装置の処理について具体例を挙げて説明する。
図5(A)は、カメラ21で撮像された静止画像の一例を示す図である。これは、建築予定となる土地に住宅の基礎のみが出来上がった状態を撮像したものである。
図5(B)は、演算部5が生成した3次元状態仮想モデルを示している。この3次元状態仮想モデルは、入力された位置及び姿勢に関する情報と要素情報23とに基づいて生成されるが、ここでは、要素情報23として被撮像対象である住宅を構成する部材に関する情報が入力されている。すなわち、
図5(B)の例では、設計図等の情報に基づいて、住宅の1階部分の躯体を構成する木材の種類と数量の情報が要素情報23として入力され、それらの部材により構成される被撮像対象の3次元状態仮想モデルが生成されている。
【0039】
そして、
図6に示すように、演算部5が、カメラ21で撮像された撮像データと3次元状態仮想モデルを合成し、当該合成された画像は表示制御部6によりディスプレイ24に表示される。現実の撮像データと仮想の3次元状態仮想モデルを重ね合わせることで、ARによる建物建築の作業状態を表示することができる。
【0040】
図7は、本実施形態に係る表示制御装置の動作を示すフローチャートである。まず、位置姿勢入力部3が、各センサ部22からの測定結果をカメラの位置及び姿勢の情報として入力する(S1)。要素情報入力部4が、被撮像対象の変化を生じる要素の情報(例えば、地盤改良の場合はアーム先端部の動作情報、建物の建築の場合は当該建物を構成する部材等の情報)を要素情報23として入力する(S2)。演算部5は、予め被撮像対象の3次元モデルが格納されている記憶部7から当該3次元モデルを読み込み(S3)、入力されたカメラの位置及び姿勢の情報と、要素の情報とに基づいて、カメラ21の視点から見た3次元モデルの現在の状態を演算して3次元状態仮想モデルを生成する(S4)。撮像データ入力部2が、カメラの映像を撮像データとして入力し(S5)、演算部5が、生成された3次元状態仮想モデルと入力された撮像データとを合成し、表示制御部6が合成された合成画像をディスプレイ24に表示して(S6)、処理を終了する。
【0041】
このように、本実施形態に係る表示制御装置1によれば、カメラの位置と姿勢に関する情報、及び、被撮像対象の状態に変化を生じさせる要素に関する要素情報23、並びに、予め記憶部7に記憶された被撮像対象の3次元仮想モデルの情報に基づいて、カメラの撮像方向から見た場合の被撮像対象の状態を示す3次元状態仮想モデルを演算し、カメラ21で撮像された撮像データと演算された3次元状態仮想モデルとを合成した合成画像を表示することで、被撮像対象の状態をARで確認することができ、作業効率の向上に役立てることができる。
【0042】
また、カメラ21の位置と姿勢とに関する情報、及び、被撮像対象の状態に変化を生じさせる要素の動作情報や被撮像対象を構成する部材の情報に基づいて、3次元状態仮想モデルが演算されるため、利用者の視点でリアルなARを表示することが可能になると共に、実際の現実を見ながらAR画像を見て効率よく作業を行うことができる。
【0043】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る表示制御装置について、
図8及び
図9を用いて説明する。なお、本実施形態において、前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0044】
図8(A)の場合は、利用者の顔向き方向を撮像するカメラ21と利用者の目側に画像を出力するディスプレイ24を眼鏡80に配設し、利用者がその眼鏡80を掛けた状態で被撮像対象の撮像や表示を行う。
図8(A)においては、検出装置81に、眼鏡80を掛けた利用者の位置及び姿勢を検知するセンサ(GPSレシーバ、加速度センサ、ジャイロセンサ等)が内蔵されており、各測定が行われる。測定データやその他データの管理、各処理の制御、通信の制御等については、検出装置81が行うようにしてもよいし、必要に応じて利用者が制御装置82を保持することで、制御装置82が行うようにしてもよい。
【0045】
この場合、利用者が保持している検出装置81からの測定情報に基づいて、演算部5が3次元状態仮想モデルを生成し、カメラ21で撮像された利用者の顔向き方向の撮像データと合成する。合成された合成画像は、眼鏡80に配設されたディスプレイ24に表示される。利用者は、現実の風景とディスプレイ24に表示されたARの画像を見比べながら作業等を行うことができる。
【0046】
図8(B)においては、利用者の顔向き方向を撮像するカメラ21と利用者の目側に画像を出力する単眼ディスプレイ24とを眼鏡80に配設しており、さらに、GPSレシーバ83、加速度センサ84及びジャイロセンサ85を備える構成となっている。また、各装置を管理するための制御装置82又は検出装置81を利用者が保持しておく。この場合、眼鏡80に配設されている各センサの情報に基づいて、演算部5が3次元状態仮想モデルを生成し、カメラ21で撮像された利用者の顔向き方向の撮像データと合成する。合成された合成画像は、眼鏡80に配設された単眼のヘッドマウントディスプレイ24に表示される。利用者は、現実の風景とディスプレイ24に表示されたARの画像を見比べながら作業等を行うことができる。
【0047】
いずれの構成においても、必要な装置を利用者が身につけることができるため、装置構成を簡素化することができると共に、位置及び姿勢等の検出を正確に行うことが可能となる。また、検出装置81や制御装置82として、現在著しく進歩している携帯端末を利用することで、装置の製造工程を簡素化すると共に、アプリケーションに応じて各装置をフレキシブルに利用することができる。
【0048】
図9は、本実施形態に係る表示制御装置を身につけた状態での、位置及び姿勢の変化による表示画像の動作の一例を示す図である。ここでは、3次元の仮想の建物の中にいる状態での利用者から見た情景の3次元状態仮想モデルの一例を示したものである。
図9(A)は、利用者が上を見上げた場合、
図9(B)は利用者が下を見下ろした場合を示している。それぞれ、建物の天井部分と床部分とが表示されており、利用者の姿勢に応じて3次元状態仮想モデルが対応して変化していることがわかる。
【0049】
図9(C)は利用者が左に転回した場合、
図9(D)は利用者が右に転回した場合の3次元状態仮想モデルを示している。
図9(A)、(B)の場合と同様に、利用者の姿勢に応じて3次元状態仮想モデルが対応して変化していることがわかる。
【0050】
図9(E)は利用者が後退した場合、
図9(F)は利用者が前進した場合の3次元状態仮想モデルを示している。利用者の位置が変わることで、それに応じて3次元状態仮想モデルが対応して変化していることがわかる。
【0051】
図9(G)は1階のフロアが表示されており、
図9(H)は2階のフロアが表示されたものである。これは、利用者が実際に高さ方向に移動できない場合が多いため、ジャンプの操作を検出する。利用者がジャンプすることで、その振動と方向を検知し、同一位置における2階フロアの3次元状態仮想モデルが生成される。なお、さらにジャンプすることで、より上層階への移動操作を行うことができ、最上階においてジャンプすると下層への移動操作を行うことができるようにしてもよい。
【0052】
このように、本実施形態に係る表示制御装置においては、眼鏡80に、利用者の顔向き方向を撮像するカメラ21、利用者の位置及び姿勢、又は、眼鏡80の位置及び姿勢を検知し、当該検知した情報をカメラ21の位置及び姿勢の情報として取得する各種センサ、撮像データと生成された3次元状態仮想モデルとを合成した合成画像を表示するヘッドマウントディスプレイが装着されており、利用者の視点でリアルなARを表示することが可能になると共に、実際の現実を見ながらAR画像を見て効率よく作業を行うことができる。
【0053】
なお、第1の実施形態で説明した地盤改良において本実施形態に係る表示制御装置1を適用する場合、利用者は建機の運転席内にいるため、眼鏡80に配設されたGPSレシーバが運転席内に存在し、位置情報を取得できない可能性がある。その場合、建機の外側にGPSレシーバを設置し、GPSレシーバの位置と運転席の位置との相対関係からカメラ21の位置情報を割り出してもよい。
【0054】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係る表示制御装置について、
図10及び
図11を用いて説明する。なお、本実施形態において、前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0055】
図10は、本実施形態に係る表示制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
図10において、前記第1の実施形態における
図2の場合と異なるのは、視線カメラ9で撮像された目の画像に基づいて視線方向の演算を行って、利用者の入力指示を特定する視線演算部8を備えることである。
【0056】
視線演算部8は、視線カメラ9で撮像された目の画像データに基づいて利用者の視線方向を演算して、入力指示を特定し、当該特定された入力指示情報を演算部5に送る。演算部5は、取得した入力指示情報に応じて3次元状態仮想モデルの演算や合成画像の補正を行う。
【0057】
視線演算部8の処理について、より詳細に説明する。
図11は、本実施形態に係る表示制御装置における視線演算部8の構成を示す機能ブロック図である。視線演算部8は、眼鏡80の目側を撮像する視線カメラ9の撮像データを入力する視線情報入力部11と、入力された目の撮像データから視線方向を特定する視線方向検出部12と、検出された視線方向と、予め登録された視線方向に対応する入力指示情報を記憶する視線入力記憶部14とに基づいて、利用者が視線で入力した入力指示情報を特定する入力指示特定部13とを備える。視線方向の検出は、既存の技術を用いて行うことが可能であり、例えば、黒目部分の動作を検出してもよいし、白目部分の領域の変化に基づいて視線方向を検出してもよい。
【0058】
演算部5は、特定された入力指示情報に基づいて、3次元状態仮想モデルの演算や合成画像の補正を行う。例えば、入力情報として視点位置、視点方向が特定された場合には、その特定された視点位置及び視点方向から見た3次元状態仮想モデルを生成する。その際、カメラ21で撮像された撮像データと生成された3次元状態仮想モデルは視点が一致しないため、ここでは画像の合成を行わず、VRでの表示制御が行われる。また、例えば、カメラ21で撮像した撮像データと3次元状態仮想モデルの合成画像にズレを生じているような場合には、視線により補正情報を入力することで(例えば、3次元状態仮想モデルの位置、角度を視線の向きに応じて変化させることで)、合成画像の表示状態が補正され、撮像データとの整合性を取ることができる。
【0059】
このように、本実施形態に係る表示制御装置1においては、利用者の視線を検出し、視線による入力指示を特定するため、利用者の操作が簡単となり、例えば他の作業中であっても目線の移動のみでディスプレイの表示状態を制御することができる。
【0060】
また、利用者からの任意の視点及び視線方向の入力指示を特定した場合に、特定された視点及び視線方向から見た状態仮想モデルを演算し、状態仮想モデルのみをディスプレイに表示するため、利用者が指定した任意の視点や視線方向からの撮像対象の状態をVRで確認することができ、作業効率を上げることができる。
【0061】
(本発明の第4の実施形態)
本実施形態に係る表示制御装置について、
図12を用いて説明する。なお、本実施形態において、前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0062】
図12は、本実施形態に係る表示制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
図12において、前記第1の実施形態における
図2の場合と異なるのは、記憶部7に被撮像対象に対する作業の作業工程に関する情報を格納していることである。作業工程に関する情報は、例えば、いつまでにどの程度の作業を完了させるかのスケジュール情報である。また、各スケジュールに付加して使用する材料や部品等を関連付けておいてもよい。
【0063】
演算部5は、要素情報23の一つとして入力された時期に関する情報(例えば、○○月××日、○○日後、○○時間後等の経時的な要素を含む情報)に基づいて、この時期に当てはまる作業状態を記憶部7に格納された作業工程情報から演算し、当該作業状態となるように3次元状態仮想モデルを生成する。生成されたモデルは、上記と同様に撮像データと合成されてディスプレイ24に表示される。
【0064】
このように、本実施形態に係る表示制御装置においては、被撮像対象に対する作業工程に関する情報を記憶し、当該作業工程に関する情報に基づいて、所定の作業工程における状態仮想モデルを演算するため、作業工程ごとに被撮像対象の状態をARで確認することができ、作業効率を上げることができる。