特許第6182746号(P6182746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6182746発泡成形用金型およびそれを用いた成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182746
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】発泡成形用金型およびそれを用いた成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20170814BHJP
   B29C 33/04 20060101ALI20170814BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
   B29C44/00
   B29C33/04
   B29K105:04
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-204311(P2013-204311)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-66862(P2015-66862A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】591209361
【氏名又は名称】DAISEN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】井田 清孝
(72)【発明者】
【氏名】林 重希
(72)【発明者】
【氏名】楯 泰貴
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−023669(JP,A)
【文献】 特開昭56−117632(JP,A)
【文献】 特開2004−106236(JP,A)
【文献】 特開2011−245685(JP,A)
【文献】 特開2003−033938(JP,A)
【文献】 特開2008−188857(JP,A)
【文献】 特開平03−124429(JP,A)
【文献】 特開2004−050623(JP,A)
【文献】 特開平06−182787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00
B29C 33/04
B29K 105/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接離自在な一対の枠状のフレームと、このフレームに外周が固定された一対のインナープレートと、このインナープレートの一方に配置された複数の凹型金型部材、及びインナープレートの他方に配置された複数の凸型金型部材を有し、前記対向する一対の凹凸型金型部材を閉じて成形用キャビティを形成し、1サイクルの成形操作で複数個の発泡成形品を成形するようにした発泡成形用金型であって、前記それぞれの凹型金型部材及び凸型金型部材に、インナープレートに対する取付位置を調整するための位置調整機構を設け、成形用キャビティを形成した際に、パーティングラインにおける隙間や段差が生じないように、あるいは製品厚み方向の誤差が生じないように各凹型金型部材及び凸型金型部材ごとに取付位置の調整を可能としたことを特徴とする発泡成形用金型。
【請求項2】
位置調整機構は、位置決め用ブラケットと位置決め用ボルトで構成され、上下方向用と左右方向用の2種類を有している請求項1に記載の発泡成形用金型。
【請求項3】
位置調整機構は、凹凸型金型部材を引き出したり、押し込んだりすることにより製品厚み方向の調整を行うことができるものである請求項2に記載の発泡成形用金型。
【請求項4】
凹型金型部材及び凸型金型部材の上端部と下端部の温度差が所定値を超えないように、前記凹型金型部材及び凸型金型部材を冷却制御する冷却制御装置が取り付けてある請求項1〜3のいずれかに記載の発泡成形用金型。
【請求項5】
凹型金型部材及び凸型金型部材は、断熱材を介してインナープレートに取り付けてある請求項1〜4のいずれかに記載の発泡成形用金型。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の発泡成形用金型用いた成形方法であって、対応するそれぞれの凹型金型部材と凸型金型部材を閉じて成形キャビティを形成し、この成形キャビティ内に発泡ビーズを充填後、金型内に加熱蒸気を導入して発泡ビーズを発泡、融着させて所定形状の発泡樹脂成形品を成形する成形方法において、成形品に生じるバリや段差が0.1mm以下か否かを判定し、0.1mmを超える場合には該当する凹型金型部材及び凸型金型部材のインナープレートに対する取付位置の調整を各金型ごとに行い、発生するバリや段差が0.1mm以下になるまでこの位置調整を繰り返して、平滑な表面を有する発泡樹脂成形品を成形するようにしたことを特徴とする成形方法。
【請求項7】
成形中における凹型金型部材及び凸型金型部材の上端部と下端部の温度を測定し、この温度差が30℃を超えるか否かを判定し、30℃を超える場合には金型冷却水の供給量の増減を行い、温度差が30℃以下となるまで金型冷却水の供給量の増減を繰り返すようにした請求項6に記載の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティングラインにおけるバリの発生を防止し、あるいはバリを極力小さくすることができ、更には製品の厚み方向の誤差も極力小さくすることができる発泡成形用金型およびそれを用いた成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリスチレンやポリプロピレンやポリウレタン等の熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂製品は、例えば電化製品や精密機器等の各種製品の緩衝材として、あるいは車両用の内装材として広く使用されている。このような発泡樹脂製品の成形方法としては、熱可塑性樹脂を予備発泡して予備発泡粒子を製造し、この予備発泡粒子を一対の凹凸型で形成したキャビティ内に充填し、蒸気等によって加熱し、発泡融着させて所望形状の成形品とする方法が知られている。
【0003】
前記の従来の成形方法では、凹凸型のあわせ目(パーティングラインと称される)において、わずかな隙間や段差が生じることがあり、この結果、成形品の横方向(X軸)、縦方向(Y軸)、厚み方向(Z軸)とすると、金型の縦方向と横方向のズレにより成形品にバリと称される突起や段差を発生させることがあった。
機能部材としては、表面にバリや段差が全く無いか、若しくは存在しても0.1mm以下を要求されている。しかし、緩衝材や内装材等の用途にあっては、梱包資材としての機能を発揮すれば十分であり、小さなバリや段差は何ら問題とされていなかった。例えば、0.5mm未満のバリや段差を有していても梱包資材としての機能に問題はなく、また見栄えも問題ないと判断して不良品扱いをしていないのが普通であった。
ところが最近では、高品質の電化製品等の場合、緩衝材といえども目に見えるようなバリや段差があるのは意匠的に好ましくないとの考え方がでてきており、表面にバリや段差が全く無いか、若しくは存在しても0.1mm以下で、目視的にはほとんど平滑に見える程度まで抑えることが要求されるようになってきた。更に、製品の厚み方向の誤差も極力小さくすることが要求されるようになってきた。
【0004】
一方、バリの発生を防止する方法としては、金型を取り付けるインナープレートに長孔を設けておき、この長孔を利用して金型とフレームとの位置関係の微調整を行い金型の合わせ目を一致させるようにするのが一般的である。しかしながら、フレームに複数の金型が取り付けられている多数個取りの成形機の場合は、それぞれの金型の熱膨張や取付条件等が異なっているため、1枚の取付プレートの微調整のみで全ての金型の位置調整を行うことは不可能であった。そのため、前記のバリ発生防止方法で全ての金型のバリや段差の発生を防止する(あるいは、0.1mm以下とする)ことは困難であった。
【0005】
その他にもバリ発生の防止方法として、特許文献1〜3に示されるように、種々の提案がされている。特許文献1は、凹金型の熱膨張をインナープレートで抑制する構造を開示し、特許文献2は、凹凸型の当接面を傾斜面として隙間の発生を防止する構造を開示し、特許文献3は、凸型の端面に輪郭に沿う突条を設けて凹型との隙間の発生を防止する構造を開示している。
しかしながら、特許文献1〜3に記載のものは、いずれも金型構造が複雑で金型制作費が高くなるという問題や、バリの発生を完全に防止する(あるいは、0.1mm以下とする)ことはできないという問題があった。また、いずれもフレームに金型が1個だけ取り付けられている構造を示すものであり、複数個取りの成形機にそのまま適用することはできなかった。
【0006】
一方、従来から製品の厚み方向(Z軸)の誤差を極力小さくするということは着目されておらず、Z軸方向について微調整が可能な金型は提案されていないのが現状である。 しかし、本発明者の研究によれば、成形機の成形可能な平面に対して、各部位の厚みを測定した結果、平面の中央部分では厚みが不足し、平面の外周では厚みが大きくなってしまう傾向があることを究明した。例えば、厚みが20mmの板製品の場合、その外周部分では0.5mm程度厚みが増し、逆に中央部分では0.5mm程度厚みが薄くなることを確認したが、従来はこれを調整することは行っていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−33938号公報
【特許文献2】特開2004−338252号公報
【特許文献3】特開2007−261190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような問題点を解決して、パーティングラインにおけるバリや段差の発生を防止し、あるいはバリや段差を極力小さくすることができ、更には製品の厚み方向の誤差も極力小さくすることができる発泡成形用金型およびそれを用いた成形方法を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の発泡成形用金型は、接離自在な一対の枠状のフレームと、このフレームに外周が固定された一対のインナープレートと、このインナープレートの一方に配置された複数の凹型金型部材、及びインナープレートの他方に配置された複数の凸型金型部材を有し、前記対向する一対の凹凸型金型部材を閉じて成形用キャビティを形成し、1サイクルの成形操作で複数個の発泡成形品を成形するようにした発泡成形用金型であって、前記それぞれの凹型金型部材及び凸型金型部材に、インナープレートに対する取付位置を調整するための位置調整機構を設け、成形用キャビティを形成した際に、パーティングラインにおける隙間や段差が生じないように、あるいは製品厚み方向の誤差が生じないように各凹型金型部材及び凸型金型部材ごとに取付位置の調整を可能としたことを特徴とするものである。
【0010】
前記位置調整機構は、位置決め用ブラケットと位置決め用ボルトで構成され、上下方向用と左右方向用の2種類を有しているものが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0011】
更に、前記位置調整機構は、凹凸型金型部材を引き出したり、押し込んだりすることにより製品厚み方向の調整を行うことができるものが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【0012】
また、前記凹型金型部材及び凸型金型部材の上端部と下端部の温度差が所定値を超えないように、前記凹型金型部材及び凸型金型部材を冷却制御する冷却制御装置が取り付けてあることが好ましく、これを請求項4に係る発明とする。
【0013】
また、凹型金型部材及び凸型金型部材は、断熱材を介してインナープレートに取り付けてあることが好ましく、これを請求項5に係る発明とする。
【0014】
更に、請求項1〜5のいずれかに記載の発泡成形用金型用いた成形方法であって、対応するそれぞれの凹型金型部材と凸型金型部材を閉じて成形キャビティを形成し、この成形キャビティ内に発泡ビーズを充填後、金型内に加熱蒸気を導入して発泡ビーズを発泡、融着させて所定形状の発泡樹脂成形品を成形する成形方法において、成形品に生じるバリや段差が0.1mm以下か否かを判定し、0.1mmを超える場合には該当する凹型金型部材及び凸型金型部材のインナープレートに対する取付位置の調整を各金型ごとに行い、発生するバリや段差が0.1mm以下になるまでこの位置調整を繰り返して、平滑な表面を有する発泡樹脂成形品を成形するようにしたことを特徴とするものを請求項6に係る発明とする。
【0015】
また、成形中における凹型金型部材及び凸型金型部材の上端部と下端部の温度を測定し、この温度差が30℃を超えるか否かを判定し、30℃を超える場合には金型冷却水の供給量の増減を行い、温度差が30℃以下となるまで金型冷却水の供給量の増減を繰り返すようにすることが好ましく、これを請求項7に係る発明とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、接離自在な一対の枠状のフレームと、このフレームに外周が固定された一対のインナープレートと、このインナープレートの一方に配置された複数の凹型金型部材、及びインナープレートの他方に配置された複数の凸型金型部材を有し、前記対向する一対の凹凸型金型部材を閉じて成形用キャビティを形成し、1サイクルの成形操作で複数個の発泡成形品を成形するようにした発泡成形用金型であって、前記それぞれの凹型金型部材及び凸型金型部材に、インナープレートに対する取付位置を調整するための位置調整機構を設け、成形用キャビティを形成した際に、パーティングラインにおける隙間や段差が生じないように、あるいは製品厚み方向の誤差が生じないように各凹型金型部材及び凸型金型部材ごとに取付位置の調整を可能としたので、従来のようにインナープレート全体の位置合わせを行うのと異なり、各凹型金型部材及び凸型金型部材がそれぞれ正確な位置を保持することができてパーティングラインに隙間や段差、あるいは製品厚み方向の誤差が生じるのを防止することが可能となる。
【0017】
請求項2に係る発明では、位置調整機構は、位置決め用ブラケットと位置決め用ボルトで構成され、上下方向用と左右方向用の2種類を有しているので、位置決め用ボルトの締め付け量のみで位置調整を簡単に行うことができ、また上下・左右ともに調整できるため正確な調整が行える。
【0018】
請求項3に係る発明では、前記位置調整機構は、凹凸型金型部材を引き出したり、押し込んだりすることにより製品厚み方向の調整を行うことができるものとしたので、製品厚み方向の誤差が生じるのを防止することができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、凹型金型部材及び凸型金型部材の上端部と下端部の温度差が所定値を超えないように、前記凹型金型部材及び凸型金型部材を冷却制御する冷却制御装置が取り付けてあるので、金型温度をできるだけ均一かつ温度ムラがないように制御することができ、均一な発泡成形を行うことでパーティングラインに隙間や段差が生じるのを防止することができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、凹型金型部材及び凸型金型部材は、断熱材を介してインナープレートに取り付けてあるので、インナープレートからの熱移動を防止して金型の局部的な加熱を防止することができる。
【0021】
請求項6に係る発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の発泡成形用金型用いた成形方法であって、対応するそれぞれの凹型金型部材と凸型金型部材を閉じて成形キャビティを形成し、この成形キャビティ内に発泡ビーズを充填後、金型内に加熱蒸気を導入して発泡ビーズを発泡、融着させて所定形状の発泡樹脂成形品を成形する成形方法において、成形品に生じるバリや段差が0.1mm以下か否かを判定し、0.1mmを超える場合には該当する凹型金型部材及び凸型金型部材のインナープレートに対する取付位置の調整を各金型ごとに行い、発生するバリや段差が0.1mm以下になるまでこの位置調整を繰り返して、平滑な表面を有する発泡樹脂成形品を成形するようにしたので、各凹型金型部材及び凸型金型部材の全てを正確に位置合わせすることができてパーティングラインに隙間や段差が生じるのを防止し、また製品厚み方向の誤差が生じるのを防止しつつ成形が可能となる。
【0022】
請求項7に係る発明では、成形中における凹型金型部材及び凸型金型部材の上端部と下端部の温度を測定し、この温度差が30℃を超えるか否かを判定し、30℃を超える場合には金型冷却水の供給量の増減を行い、温度差が30℃以下となるまで金型冷却水の供給量の増減を繰り返すようにしたので、金型温度をできるだけ均一かつ温度ムラがないように制御することができ、均一な発泡成形を行うことでパーティングラインに隙間や段差が生じるのを防止しつつ成形が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の金型を装着した成形機を示す概略図である。
図2】本発明の金型を示す要部の断面説明図である。
図3】複数の金型の配置例を示す正面図である。
図4】金型部材を示す正面図である。
図5】位置調整機構の制御工程の一例を示すフロー図である。
図6】金型の冷却制御装置を示す概略図である。
図7】冷却制御装置の制御工程の一例を示すフロー図である。
図8】金型部材の位置調整方向を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、発泡成形機を示す概略図、図2は本発明の金型を示す要部の断面説明図である。図中、1は発泡樹脂成形品の成形装置を示し、2a、2bは接離自在な一対の枠状のフレームである。また、2aは移動側のフレーム、2bは固定側のフレームを示し、3a、3bはこれらのフレーム2a、2bをそれぞれ支持するダイプレートである。また、4a、4bは各フレームの背面側を塞ぐ背板である。
【0025】
前記フレームには、一対のインナープレート5a、5bが外周が固定されるようにして取り付けられている。また、移動側のインナープレート5aには複数の凸型金型部材6が配置され、一方、固定側のインナープレート5bには複数の凹型金型部材7が配置されていて、これら一対の凹凸型金型部材6、7を閉じて成形用キャビティ8を形成するように構成されている。また、凹凸型金型部材6、7の裏面側は、背板4a、4bで塞がれて凸型蒸気室9a、凹型蒸気室9bが形成されている。
【0026】
なお図において、10は移動側のフレーム2aを前後動して凸型金型部材6を開閉するための型開閉用シリンダ、11は発泡ビーズの原料ホッパー、12は充填器、13は成形終了後において成形品を型外へ押し出すための離型ピンである。
また、前記凸型蒸気室9a及び凹型蒸気室9bには、成形に必要な各種の用役ノズル(図示せず)が連結されており、各種用役の供給、排出が行われる構造であることは従来のこの種の成形機と同じである。ここで用役とは、原料である発泡ビーズの成形過程で加熱、融着、冷却、脱水などを行うための加熱蒸気、冷却水の供給の他、減圧ポンプによる減圧操作、加圧空気による加圧操作、ドレン排出などの運転要素を意味する。また、用役ノズルは、これらの運転要素の供給、排出のための接続管を意味する。
【0027】
本発明の発泡成形用金型では、前記一対のインナープレートのうち、移動側のインナープレート5aには複数の凸型金型部材6が配置されており、一方、固定側のインナープレート6bには複数の凹型金型部材7が配置されていて、前記対向する一対の凹凸型金型部材6、7を閉じて成形用キャビティ8を形成し、1サイクルの成形操作で複数個の発泡成形品を成形するよう構成されている(多数個取り金型という)。
【0028】
なお、図3に示すものでは、移動側のインナープレート5aに4個の凸型金型部材6を配置し、固定側のインナープレート6bに4個の凹型金型部材7を配置してあり、1サイクルの成形操作で4個の発泡成形品が得られる構成となっている。
ただし、図1、2においては、説明を簡便にするため、1組のインナープレートに1組の型金型部材を配置したものを例示している。
【0029】
図3に示すように、前記それぞれの凹型金型部材7及び凸型金型部材6には、インナープレート5a、5bに対する取付位置を調整するための位置調整機構が設けられている。この位置調整機構は、従来の調整機構のように、フレームに対するインナープレート全体の取付位置を調整するのと異なり、個々の金型部材に設けられており、成形用キャビティを形成した際に、パーティングラインにおける隙間や段差が生じないように各凹型金型部材6及び凸型金型部材7ごとに取付位置の調整が行える構造となっている。
図8に、金型部材の位置調整方向を示す。成形品の横方向(X軸方向)、縦方向(Y軸方向)、厚み方向(Z軸方向)について、それぞれ各凹型金型部材6及び凸型金型部材7ごとに取付位置の微調整が行えるように構成されている。
【0030】
前記の位置調整機構は、図4に示すように、X方向の位置調整機構15とY方向の位置調整機構16からなる。X方向の位置調整機構15は水平方向に配置した2個で1組であり、図示のものでは、凸型金型部材6の上下端部の2ヶ所に設けられている。また、Y方向の位置調整機構16は垂直配置した2個で1組であり、図示のものでは、凸型金型部材6の左右端部の2ヶ所に設けられている。
また、X方向の位置調整機構15は調整ボルト15aと固定ブラケット15bからなり、調整ボルト15aの締め付け具合でX方向の微妙な位置を調整できる構造となっている。同様に、Y方向の位置調整機構16は調整ボルト16aと固定ブラケット16bからなり、調整ボルト16aの締め付け具合でY方向の微妙な位置を調整できる構造となっている。
このように、X方向の位置調整機構15およびY方向の位置調整機構16によって、個々の金型部材6、7の取付位置を微調整することができ、パーティングラインにおける隙間や段差の発生を防止できる。
なお図4は、凸型金型部材6について説明したが、凹型金型部材7にも同様の位置調整機構が設けられている。
【0031】
更に、前記の位置調整機構は、凹凸型金型部材6、7を引き出したり、押し込んだりすることにより製品厚み方向(Z軸方向)の調整を行うことができるように構成されている。
例えば、成形機の成形可能な平面に対して、平面の中央部分では厚みが不足しているとき凹型金型部材7の外部より又は凸型金型部材6の外部より製品の厚みを増すよう位置調整機構で金型を引き出すように調整を行う。また、平面の外周部分では厚みが増しているとき凹型金型部材7の外部より又は凸型金型部材6の外部より製品の厚みを縮めるよう位置調整機構で金型を押し込むように調整を行う。
前記の引き出し、あるいは押し込み構造としては、例えば、外部に取り付けたロッド(図示せず)を螺合式の調整機構で引き出し、あるいは押し込みの微調整を行う構造等、周知の技術を適用することができる。また、前記引き出し、あるいは押し込み機構は、凹凸型金型部材のいずれか、あるいは双方に取り付けることができる。
【0032】
図6に示すように、前記凹型金型部材7(NO.4)、及び凸型金型部材6(NO.4)には、金型の上端部と下端部の温度差が所定値を超えないように、前記凹型金型部材を冷却制御する冷却制御装置20が取り付けてある。
これは、本発明者が凹凸型のあわせ目(パーティングラインと称される)における隙間や段差の発生を防止について研究した結果、成形用キャビティを形成する金型の温度ムラをなくすと効果があることを究明したことによる。また温度差は、実験の結果、30℃以内が望ましいことが判明した。
具体的には、凹凸型金型部材6、7の温度を測定し、その温度差が30℃以内であるか否かを判断して、却制御装置20の制御に基づき金型冷却水の供給量を供給弁21a、21bで増減して冷却水シャワー22a、22bから供給する。更に、温度差が30℃以下となるまで金型冷却水の供給量の増減をコントロールしつつ供給し、金型の温度ムラの少ない状態で成形を持続させる。
【0033】
また、図2に示すように、前記凹型金型部材6及び凸型金型部材7は、断熱材14を介してそれぞれインナープレート5a、5bに取り付けてある。断熱材14としては、断熱性や耐久性や密封性に優れたポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂を用いることができる。
この、断熱材14は、インナープレート5a、5bからの熱伝導を遮断して凹凸型金型部材6、7の局部的な温度変化を防止して温度ムラを少なくするものである。
【0034】
以下に、本発明の発泡成形用金型用いた成形方法について説明する。
図1に示すように、対応するそれぞれの凹型金型部材7と凸型金型部材6を閉じて成形キャビティ8を形成し、この成形キャビティ8内に充填器12より発泡ビーズを充填する。次いで、金型内に加熱蒸気を導入して発泡ビーズを発泡、融着させて所定形状の発泡樹脂成形品を成形する。以上の工程は、従来の発泡成形品の成形方法と基本的に同じである。
【0035】
本発明では、全ての金型の成形品についてバリや段差の検査を行い、バリや段差が0.1mm以下か否かを判定する。0.1mm以下であれば、問題ないとして生産を続行するが、0.1mmを超える場合には、図5に示すように、該当する凹型金型部材及び凸型金型部材のインナープレートに対する取付位置の調整を各金型ごとに行い、発生するバリや段差が0.1mm以下になるまでこの位置調整を繰り返して、平滑な表面を有する発泡樹脂成形品を成形するように調整を行う。
具体的には、バリや段差の発生状況から、X方向の位置調整機構15の調整ボルト15aおよび/またはY方向の位置調整機構16の調整ボルト16aを、締めたり緩めたりして金型部材のインナープレートに対する取付位置の微調整を行い、凹型金型部材と凸型金型部材とが合わせ目で完全に一致するようにする。 このように、個々の凹型金型部材及び凸型金型部材について全て取付位置の調整を行うことで、全ての成形品のバリや段差を0.1mm以下として、優れた外観品質の成形品を得ることができる。また、このように正確に位置合わせした金型部材は、その後は正しい位置を保持し続けるので、バリや段差が0.1mm以下の成形品の生産を継続することができる。
【0036】
更に本発明では、成形機の成形可能な平面に対して、平面の中央部分では厚みが不足しているとき凹型金型部材の外部より又は凸型金型部材の外部より製品の厚みを増すよう調整機構で金型の中央部分を引き出す。逆に、平面の外周部分では厚みが増しているとき凹型金型部材の外部より又は凸型金型部材の外部より製品の厚みを縮めるよう調整機構で金型の外周部分を押し込む調整を行う。例えば、板製品の外周部分が0.5mm厚みを増している場合は、その増した分だけ外部から金型を押し込む。逆に、中央部分が0.5mm厚みを薄くしている場合は、その薄くなった分だけ金型を引きだすように調整を行うことで、厚み方向の誤差が生じないように成形することができる。
従来、の製品の厚み方向(Z軸)の誤差を極力小さくすることは意識されておらず、厚み方向(Z軸方向)の位置調整を行うことが可能な発泡成形用金型はなく、本発明が初めて提案するものである。
【0037】
また、図6に示すように、成形中における凹型金型部材及び凸型金型部材の上端部と下端部の温度を測定して、温度ムラが生じていないかをチェックする。この温度差が30℃を超えない場合は、問題ないとして生産を続行するが、30℃を超える場合には、金型冷却水の供給量の増減を行い、温度差が30℃以下となるまで金型冷却水の供給量の増減を繰り返す。
具体的には、図7に示すように、温度差が30℃を超える場合で型温度が高いときは型冷却時間を増やし、型温度が低いときは型冷却時間を減らして型温度を調整し、温度ムラが30℃以下となるように制御する。これにより、均一な発泡成形が行われてパーティングラインに隙間や段差が生じるのを有効に防止することができる。
【0038】
以上の説明からも明らかなように、本発明は多数個取り金型において、それぞれの凹型金型部材及び凸型金型部材に、インナープレートに対する取付位置を調整するための位置調整機構を設け、成形用キャビティを形成した際に、パーティングラインにおける隙間や段差が生じないように各凹型金型部材及び凸型金型部材ごとに取付位置の調整を可能としたので、各凹型金型部材及び凸型金型部材がそれぞれ正確な位置を保持することができてパーティングラインに隙間や段差が生じるのを防止することができ、表面にバリや段差が全く無いか、若しくは存在しても0.1mm以下で、目視的にはほとんど平滑に見える程度の意匠性が高く、外観品質に優れた発泡成形品を得ることができることとなる。
【符号の説明】
【0039】
1 成形装置
2a 移動側のフレーム
2b 固定側のフレーム
3a 移動側のダイプレート
3b 固定側のダイプレート
4a 移動側の背板
4b 固定側の背板
5a 移動側のインナープレート
5b 固定側のインナープレート
6 凸型金型部材
7 凹型金型部材
8 成形用キャビティ
9a 凸型蒸気室
9b 凹型蒸気室
10 型開閉用シリンダ
11原料ホッパー
12 充填器
13 離型ピン
14 断熱材
15 X方向の位置調整機構
15a 調整ボルト
15b 固定ブラケット
16 Y方向の位置調整機構
16a 調整ボルト
16b 固定ブラケット
20 冷却制御装置
21a 供給弁
21b 供給弁
22a 冷却水シャワー
22b 冷却水シャワー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8