特許第6182756号(P6182756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182756
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ねじ緩め装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   B23P19/06 J
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-142122(P2013-142122)
(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公開番号】特開2015-13350(P2015-13350A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】592019877
【氏名又は名称】富士通周辺機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤本 博
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−117837(JP,U)
【文献】 特開平08−019923(JP,A)
【文献】 特開平08−309628(JP,A)
【文献】 特開昭62−004575(JP,A)
【文献】 特開平05−023928(JP,A)
【文献】 特開平04−141332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビットと、
前記ビットをねじの緩め方向及び締め方向に回転させるビット駆動部と、
前記ビットを緩める対象となるねじに対して接近及び離間する方向に移動させる軸動駆動部と、
前記ビットの先端部が前記ねじのねじ頭に形成されたねじ溝に入り込んでいるか否かの嵌合状態を検出する嵌合状態検出部と、
前記軸動駆動部により前記ビットを前記ねじに向かって所定位置まで移動させた後、前記軸動駆動部の駆動を解除して、前記ビットの先端部を前記ねじ溝に入り込ませる操作を行い、前記嵌合状態検出部により前記ビットの先端部が前記ねじ溝に入り込んでいることが確認されないときに、前記ビット駆動部により前記ビットを回転させて前記ビットの先端部を前記ねじ溝と嵌合させ、前記嵌合状態検出部によって前記ビットと前記ねじとの嵌合が確認された後、前記ビット駆動部により前記ビットをねじの緩め方向に回転させる制御部と、
を備えるねじ緩め装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ビット駆動部により前記ビットを回転させて前記ビットの先端部を前記ねじ溝と嵌合させるときに、前記ビットを、ねじ締め作業時の回転速度よりも低速の回転速度でネジ締め方向に回転させる請求項1に記載のねじ緩め装置
【請求項3】
前記嵌合状態検出部は、前記軸動駆動部の駆動を解除した状態で前記ビット駆動部により前記ビットをねじの締め方向に回転させたときに前記ビットに作用するトルクを検出するトルク検出部を含む請求項1又は2に記載のねじ緩め装置。
【請求項4】
前記嵌合状態検出部は、前記軸動駆動部の駆動を解除した後の前記ビットの高さ位置情報を取得する位置情報取得部を含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載のねじ緩め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ緩め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークにねじを締めつける際にワークやねじを損傷させないように雄ねじとビット軸の先端との嵌合状態を適切なものとすべく、所定の押圧力が設定された状態で、ビット軸を逆転駆動するねじ締め装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、ビット軸先端の位置データを参照することによって、雄ねじとビット軸の先端とが適切に嵌合しているか否かを判断する。また、ビットとねじとの嵌合状態を検出するものとして、ビットでねじを吸着したときのねじの下端位置を検出することにより、ねじの保持状態を判定することも知られている(特許文献2参照)。また、部材を締結しているねじのねじ山やねじ頭部をつぶすことなくねじ緩めを行うねじ緩め装置が知られている(特許文献3参照)。特許文献3には、ねじ緩め開始時にはエアシリンダで強くビットをねじに押圧し、ねじ緩め開始後には圧縮コイルスプリングで小さい力で押圧する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−223130号公報
【特許文献2】特開平3−221331号公報
【特許文献3】特開平5−23928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1や特許文献3は、ビット軸の先端を雄ねじに適切に嵌合させるために、雄ねじへビットによる押圧力を作用させている。このため、場合によっては、雄ねじを傷つけたり、つぶしたりする可能性がある。特許文献1や特許文献2では、ビット軸先端の位置データやねじの下端位置を検出することによりビットの先端と雄ねじとの嵌合状態を確認することができるが、適切な嵌合状態に至るまでに雄ねじを損傷させる可能性がある。
【0005】
そこで、本明細書開示のねじ緩め装置は、ねじを緩める際に、ねじを損傷することなくビットとねじ溝とが適切に嵌合した状態を実現することを課題とする。なお、前記課題に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の課題の1つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書開示のねじ緩め装置は、ビットと、前記ビットをねじの緩め方向及び締め方向に回転させるビット駆動部と、前記ビットを緩める対象となるねじに対して接近及び離間する方向に移動させる軸動駆動部と、前記ビットの先端部が前記ねじのねじ頭に形成されたねじ溝に入り込んでいるか否かの嵌合状態を検出する嵌合状態検出部と、前記軸動駆動部により前記ビットを前記ねじに向かって所定位置まで移動させた後、前記軸動駆動部の駆動を解除して、前記ビットの先端部を前記ねじ溝に入り込ませる操作を行い、前記嵌合状態検出部により前記ビットの先端部が前記ねじ溝に入り込んでいることが確認されないときに、前記ビット駆動部により前記ビットを回転させて前記ビットの先端部を前記ねじ溝と嵌合させ、前記嵌合状態検出部によって前記ビットと前記ねじとの嵌合が確認された後、前記ビット駆動部により前記ビットをねじの緩め方向に回転させる制御部と、を備える。
【0007】
ビットとねじとが嵌合する際に、軸動駆動部の駆動を解除することでビットが重力により下降する。これにより、ビットが過度にねじに押し付けられることがなく、ねじを損傷することなくビットとねじ溝とが適切に嵌合することができる。
【発明の効果】
【0008】
本明細書開示のねじ緩め装置によれば、ねじを緩める際に、ねじを損傷することなくビットとねじ溝とが適切に嵌合した状態を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は実施形態のねじ緩め装置の概略構成を示す説明図である。
図2図2は実施形態のねじ緩め装置の主要部のブロック図である。
図3図3は実施形態のねじ緩め装置によるねじ緩め作業の一例を示すフロー図である。
図4図4(a−1)〜(b−1)は、ビットの先端部とねじ溝との関係の変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては、説明の都合上、実際には存在する構成要素が省略されている場合がある。
【0011】
(実施形態)
図1は実施形態のねじ緩め装置100の概略構成を示す説明図である。図2は実施形態のねじ緩め装置100の主要部のブロック図である。なお、以下の説明において、XYZ方向は、図1に示す方向として説明する。Y方向は、X方向、Z方向と直交する方向であり、紙面と垂直となる方向である。
【0012】
ねじ緩め装置100は、携帯電話端末機や、タブレット型のパーソナルコンピュータ、ノート型のパーソナルコンピュータ等に用いられているねじを緩めることができる。図1を参照すると、ねじ緩め装置100は、土台となる箱状の制御部収納部1を備える。制御部収納部1内には、後に詳述する制御部に相当するマイクロコンピュータ20や、電源が収納されている。制御部収納部1には、支柱2が立設している。支柱2には、板状のサーボアンプ実装部3が設けられている。また、支柱2にはX方向に延びるX方向移動レール4が装着されている。X方向移動レール4は、水平方向に沿って伸びている。X方向移動レールには、このX方向移動レールに沿って移動可能なようにZ方向移動レール5が装着されている。Z軸方向移動レール5は、垂直方向に沿って延びている。Z方向移動レール5には、軸動部材6がZ軸方向移動レール5に沿って移動可能に装着されている。軸動部材6には、ビット先端部高さ測定センサ6aが設けられている。ビット先端部高さ測定センサ6aは、後に詳述するビット8の先端部とねじ12との嵌合状態を検出する嵌合状態検出部、さらには、ビット8の高さ位置情報を取得する位置情報取得部に相当する。軸動部材6には、電動ドライバ部7が設けられている。電動ドライバ部7の下端部、すなわち、Z方向の下端部には、ビット8が装着されている。制御部収納部1の上側には、Y方向移動レール9が敷設されている。Y方向移動レール9には、ワークセット台10がY方向移動レール9に沿って移動可能に装着されている。ワークセット台10には、ワーク11がセットされる。
【0013】
図2を参照すると、ねじ緩め装置100は、制御部に相当するマイクロコンピュータ20を備える。マイクロコンピュータ20は、ROM(Read Only
Memory)20aやRAM(Random Access Memory)20bを備える。マイクロコンピュータ20には、スタートスイッチ21が電気的に接続されている。マイクロコンピュータ20は、緩める対象となるねじに関するデータを読み込むことができる。ねじに関するデータには、ワーク11に締め込まれたねじの座標情報が含まれる。すなわち、ねじに関するデータには、ねじのX位置、Y位置、Z位置の座標情報が含まれる。なお、Z位置の座標には、ねじ頭12aの頂部の座標と、ねじ頭12aに設けられたねじ溝12bの底部12b1の座標が含まれる。マイクロコンピュータ20には、ビット先端部高さ測定センサ6aが接続されている。ビット先端部高さ測定センサ6aは、ビット8の基端側の高さ位置を測定することにより、ビット8の先端部の位置を認識することができるようになっている。
【0014】
マイクロコンピュータ20には、X方向移動サーボアンプ26、Y方向移動サーボアンプ24、Z方向移動サーボアンプ27及びビット駆動サーボアンプ28が電気的に接続されている。X方向移動サーボアンプ26、Y方向移動サーボアンプ24、Z方向移動サーボアンプ27及びビット駆動サーボアンプ28は、サーボアンプ実装部3に実装されている。
【0015】
X方向移動サーボアンプ22には、X方向移動サーボモータ23が電気的に接続されている。X方向移動サーボモータ23は、エンコーダ23aを備えており、X方向移動サーボモータ23の回転数が把握されるようになっている。X方向移動サーボモータ23は、電動ドライバ部7を有する軸動部材6が装着されたZ軸方向移動レール5をX方向移動レール4に沿って移動させる。
【0016】
Y方向移動サーボアンプ24には、Y方向移動サーボモータ25が電気的に接続されている。Y方向移動サーボモータ25は、エンコーダ25aを備えており、Y方向移動サーボモータ25の回転数が把握されるようになっている。Y方向移動サーボモータ23は、ワークセット台10をY方向移動レール9に沿って移動させる。
【0017】
Z方向移動サーボアンプ26には、Z方向移動サーボモータ27が電気的に接続されている。Z方向移動サーボモータ27は、エンコーダ27aを備えており、Z方向移動サーボモータ27の回転数が把握されるようになっている。Z方向移動サーボモータ23は、電動ドライバ部7を有する軸動部材6をZ方向移動レール5に沿って移動させる。Z方向移動サーボモータ27は、ビット8(軸動部材6)を緩める対象となるねじ12に対して接近及び離間する方向に移動させる軸動駆動部の一例である。
【0018】
ビット駆動サーボアンプ28には、ビット駆動サーボモータ29が電気的に接続されている。ビット駆動サーボモータ29は、エンコーダ29aを備えており、ビット駆動サーボモータ29の回転数が把握されるようになっている。ビット駆動サーボモータ29は、ビット8をねじ12の緩め方向及び締め方向に回転させるビット駆動部に相当する。すなわち、ビット駆動サーボモータ29は、正回転及び逆回転することができる。ビット駆動サーボモータ29は、さらに、速度調整が可能である。ビット駆動サーボモータ29は、トルク検出部30を備える。トルク検出部30は、マイクロコンピュータ20に電気的に接続されている。トルク検出部30は、ビット駆動サーボモータ29の回転トルクを検出することができる。トルク検出部30は、ビット8とねじ12との嵌合状態を検出する嵌合状態検出部に含めることができる。トルク検出部30は、Z方向移動サーボモータ27の駆動を解除した状態でビット駆動サーボモータ29によりビット8をねじの締め方向に回転させたときにビット8に作用するトルクを検出することができる。このトルクの検出値によってビット8とねじ12との嵌合状態を検出することができる。すなわち、ビット8を締め方向へ回転させ、ねじ12の規定の締めつけトルク以上の値が検出されればビット8とねじ12とが適切に嵌合していると判断することができる。
【0019】
制御部に相当するマイクロコンピュータ20は、ビット8を所望の位置に移動させる。また、マイクロコンピュータ20は、Z方向移動サーボモータ27によりビット8をねじ12に向かって所定位置まで移動させた後、Z方向移動サーボモータ27の駆動を解除する。これにより、ビット8を重力により、落下させる。そして、ビット8とねじ12との嵌合が確認された後、ビット駆動サーボモータ29によりビット8をねじ12の緩み方向に回転させる。また、マイクロコンピュータ20は、ビット8とねじと12の嵌合状態が確認されないときに、ビット駆動サーボモータ29によりビット8を回転させてビット8をねじ12と嵌合させることができる。
【0020】
つぎに、以上のようなねじ緩め装置100を用いたねじ緩め作業の一例を、図3図4を参照しつつ説明する。図3は実施形態のねじ緩め装置100によるねじ緩め作業の一例を示すフロー図である。図4(a−1)〜(b−1)は、ビット8の先端部8aとねじ溝12との関係の変化を示す説明図である。ねじ緩め作業における制御は、マイクロコンピュータ20によって主体的に行われる。
【0021】
まず、ステップS1において、ねじ12のX、Y座標、ねじ頭12aの頂部のZ座標を読み込む。そして、ステップS2において、ビット8のX、Y座標がねじ12のX、Y座標と一致するように、X方向移動サーボモータ23及びY方向移動サーボモータ25を稼動させる。そして、ステップS2に引き続き行われるステップS3において、Z方向移動サーボモータ27を稼動させ、図4(a−1)、(b−1)で示すようにビット8をねじ12に向かって所定位置まで移動させる。ここで、所定位置とは、ねじ頭12aの頂部のZ座標よりも上側の位置である。すなわち、ビット8は、その先端部8aがねじ頭12aと接触することがない位置まで下降される。
【0022】
ステップS3に引き続き行われるステップS4では、Z方向移動サーボモータ27の駆動が解除される。具体的に、Z方向移動サーボモータ27への通電がカットされ、励磁オフの状態とされる。すると、図4(a−2)に示すようにビット8が重力により緩やかに落下する。このような状態でステップS5において、ビット8の先端部8aの高さ位置を検出する。ビット8は、重力により緩やかに落下するので、ビット8がねじ頭12aに強く押し付けられることを回避することができ、これにより、ねじ頭12aの損傷を回避することができる。
【0023】
ステップS5に引き続き行われるステップS6では、ビット8の先端部8aがねじ溝12bの底部12b1の高さ(Z座標)と一致したか否かを判断する。ビット8を重力により落下させたときに、図4(a−3)や図4(b−3)に示すようにビット8の向きとねじ溝12bの向きが一致していると、ビット8の先端部8aとねじ溝12bとが適切に嵌合することができる。このとき、ビット8の先端部8aのZ座標は、ねじ溝12bの底部12b1のZ座標と一致する。この場合、ステップS6でYesと判断し、ステップS8へ進む。
【0024】
一方、ビット8を重力により落下させたときに、図4(a−2)や図4(b−2)に示すようにビット8の向きとねじ溝12bの向きが一致していないと、ビット8の先端部8aとねじ溝12bとが適切に嵌合することができない。この場合、ビット8の先端部8aのZ座標は、ねじ溝12bの底部12b1のZ座標よりも高い位置を示す。この場合、ステップS6でNoと判断し、ステップS7へ進む。ステップS7では、ねじ締め方向にビット8を低速で回転させ、ビット8の向きとねじ溝12bの向きとを一致させる。ここで、低速とは、例えば、100rpm以下の回転速度とすることができる。これは、通常、ねじを締める際の速度よりも低速とする趣旨である。例えば、ねじを締める際の回転速度が3,000rpm程度であるのに対し、ステップS7における回転では、100rpm以下の回転速度とする。このように、低速でビット8を回転させることにより、ビット8の先端部8aがねじ溝12bに中途半端に嵌合した状態で勢いよくビット8が回転し、ねじ12を損傷することを回避することができる。また、この際も、Z方向移動サーボモータ27の駆動は解除されており、ビット8がねじ12に強く押し付けられていないため、ビット8は、スムーズに回転することができ、ねじ頭12aの損傷を抑制することができる。また、Z方向移動サーボモータ27の駆動が解除されていることにより、ビット8の向きとねじ溝12bの向きとが一致した状態となると、ビット8の先端部8aは、滑らかにねじ溝12a内に入り込むことができる。さらに、ビット8の回転方向をねじ締め方向とすることにより、より安定した状態でビット8の向きとねじ溝12bの向きとが一致する状態を探索することができる。仮に、ビット8をねじ緩め方向に回転させると、ビット8がねじ溝12bに不完全な状態で嵌合し、ねじ12が回り始めてしまい、ねじ12を損傷してしまう可能性がある。ビット8の回転方向をねじ締め方向とすることにより、このような事態を回避することができる。ここで、ビット8を回転させる角度は、ねじ溝12bの形状に応じて決定することができる。例えば、ねじ溝12bが90°ずつ隔てた溝を有する十字形状であるとき、回転させる角度を90°としておけば、ビット8とねじ溝12bが適切に嵌合する状態を探し出すことができる。また、例えば、三又状のねじ溝の場合は、回転角度を120°としておけばよい。
【0025】
ビット8の先端部8aがねじ溝12bと合致すると、ビット8の先端部8aの高さ位置が下がり、ビット8の先端部8aのZ座標は、ねじ溝12bの底部12b1のZ座標と一致する。これにより、ステップS6でYesと判断することができる。なお、ビット8の先端部8aがねじ溝12bと合致すると、ビット8の先端部8aの高さ位置が下がるので、このような高さ位置の変化が検出されたときにビット8とねじ溝12bとが適切に嵌合したと判断するようにしてもよい。
【0026】
ステップS7の処理の後は、再びステップS6の処理を行う。ステップS6でYesと判断したときは、ステップS8へ進む。ステップS8では、ねじ締め方向へビット8を回転させる。そして、ステップS9において、ステップS8で行った回転における回転トルクの検出値が、ねじ12の規定の締め付けトルク以上であるか否かを判断する。これは、締められたねじ12をさらに締めるときにトルク検出部30によって検出される回転トルクにより、ビット8とねじ溝12bとの嵌合状態を検出する措置である。この措置により、回転トルクの検出値がねじ12の規定の締め付けトルク以上であれば、ビット8とねじ12溝12bとは適切な嵌合状態であると判断する。このように、ビット8の先端部8aとねじ溝12bとの嵌合状態を検出するために、ビット8の先端部8aの高さ位置に関する情報と、回転トルクに関する情報を併用することで、より正確な嵌合状態の判定をすることができる。なお、ビット8とねじ溝12bとの嵌合状態を検出するために、いずれかの措置のみを採用することもできる。
【0027】
ステップS9でYesと判断したときは、ステップS10へ進む。ステップS10では、ねじ12が緩められる。すなわち、図4(a−4)や図4(b−4)に示すように、ビット8は、緩め方向に回転する。これにより、ねじ12は、損傷することなく、緩められる。その後、処理は、リターンとなる。
【0028】
ステップS9でNoと判断したときは、ステップS11へ進む。ステップS11では、リトライ回数が2回以上であるか否か判断する。ステップS11でNoと判断したときは、ステップS1からの処理を繰り返す。ステップS11でYesと判断したときは、ステップS12において、エラー判定とする。その後、処理はリターンとなる。
【0029】
以上のように、本実施形態のねじ緩め装置100は、ビット8をねじ溝12bと嵌合するときにZ方向移動サーボモータ27の駆動を解除しているので、ねじ12の損傷を抑制し、スムーズに両者を嵌合させることができる。また、両者の嵌合状態を検出する際のねじ12の損傷も抑制される。このように、本実施形態のねじ緩め装置100によれば、ねじ12を損傷することなくビット8とねじ溝12bとが適切に嵌合した状態を実現することができる。
【0030】
本実施形態のねじ緩め装置100は、携帯電話端末機や、タブレット型のパーソナルコンピュータ、ノート型のパーソナルコンピュータ等を対象としているが、ねじを緩めることが必要となるどのような機器、どのような場面にも応用して用いることができる。また、本実施形態のねじ緩め装置100は、各部にサーボモータを用いているが、各部を動作させるために、他の公知の動力源を用いることもできる。このような場合、ビットをねじに嵌合させる際にZ軸方向の駆動を解除するために、動力源の種類に応じて、適宜クラッチを装備したり、エア圧の開放機構を装備したりすることができる。
【0031】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。例えば、上記実施形態では、各部の駆動機構として、サーボモータとサーボアンプとを組み合わせ機構を用いているが、従来公知の駆動機構、例えば、アクチュエータやステッピングモータを採用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 制御部収納部
6a ビット先端部高さ測定センサ(嵌合状態検出部/位置情報取得部)
7 電動ドライバ部
8 ビット
9 Y方向移動レール
10 ワークセット台
20 マイクロコンピュータ(制御部)
23 X方向移動サーボモータ
25 Y方向移動サーボモータ
27 Z方向移動サーボモータ(軸動駆動部)
29 ビット駆動サーボモータ(ビット駆動部)
30 トルク検出部(嵌合状態検出部)
100 ねじ緩め装置
図1
図2
図3
図4