【文献】
山口 昌也,教えあいに基づく作文支援システムTEachOtherSの実現と予備的評価,言語処理学会第14回年次大会発表論文集 Proceedings of The Fourteenth Annual Meeting of The Association for Natural Language Processing,日本,言語処理学会 The Association for Natural Language Processing,2008年 6月 4日,650-653頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記解答入力手段による生徒の解答入力中に、同時並行的に、解答表示手段が教師あるいは添削担当者に対して前記生徒の解答の途中経過を表示し、前記コメント入力手段が教師あるいは添削担当者のコメントを読み取って、前記コメント送信手段が前記生徒用端末に送信する手順を、コンピューターに実行させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の第一の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
(システムの全体構成)
図1を参照しながら説明する。ネットワーク(101)は典型的には無線LANであるが、有線LANであってもよく、また、インターネットなどの広域ネットワークであってもよい。広域ネットワークを利用すれば、本発明を遠隔教育に適用することができる。
【0023】
各生徒が使用する生徒用端末(102)は、典型的にはiPad(登録商標)などのタブレット型端末装置であるが、従来型のパーソナルコンピュータ、スマートフォン、もしくは、その他の情報表示と入力手段とネットワーク通信機能とを備えた任意の電子機器、または、そのような電子機器の組み合わせであってよい。
【0024】
教師が使用する教師用端末(103)は、典型的にはiPad(登録商標)などタブレット型端末装置であるが、電子黒板と呼ばれる大型のディスプレイを備えた入出力装置、従来型のパーソナルコンピュータ、スマートフォン、もしくは、その他の情報表示と入力手段とネットワーク通信機能とを備えた任意の電子機器、または、そのような電子機器の組み合わせであってよい。
また教師は、リアルタイムで授業を行い、その授業の映像を生徒端末(102)に配信してもよいし、またオンデマンドで授業の映像を配信してもよい。
【0025】
ファイルサーバ(104)は教材、教材の中で課題として選択された部分(教材の一部又は全部)、課題に対する各生徒の解答、および、各解答に対する教師のコメントを保存する手段である。
ファイルサーバはネットワーク(101)に接続された独立した機器であってもよいが、教師用端末(103)あるいは生徒用端末(102)の一機能として端末内に内蔵されていてもよい。また、組織内外で提供されるクラウドサービスなどの情報保存手段であってもよい。
なお、教材は教師が担当する授業と関連付けて記憶しておくことができる。
【0026】
教材イメージ取得機器(105)は、物理的な書籍、物体、黒板への板書などを撮影、あるいは、スキャンし、各生徒用端末(102)に配信する教材とするための機器である。教材イメージ取得機器(105)は、独立したデジタルカメラ機器やスキャナー装置であってもよいし、教師用端末(103)に内蔵されたカメラあるいはスキャナー機能等であってもよい。なお、教材がテキストデータ形式である場合には、教材イメージ取得機器(105)を使用せず、教師用端末(103)の一機能である課題選択モジュール(202)を使用して、生徒に配信する教材を作成することができる。
【0027】
大型ディスプレイ/電子黒板(106)は全生徒に対して情報を表示するための機器であり、ネットワーク(101)あるいは教師用端末(103)に接続される。大型ディスプレイ/電子黒板(106)は、情報の表示機能に加えて、画面のタッチ操作等による入力機能を備えていてもよい。この場合には、大型ディスプレイ/電子黒板(106)が教師用端末(103)の機能の一部、あるいは、全部を代替することになる。
【0028】
上記に加えてひとつ以上の添削者用端末(107)を使用してもよい。添削者用端末(107)は教師とは別の添削担当者が使用する端末である。
この添削者は、あらかじめ生徒に対して所定の添削者が割り振られて、サーバの記憶手段に記憶されている。したがって、例えば、数学という科目に対して教師A、添削者としてB、C、Dなどの複数の添削者が存在し、生徒1〜10までがいると、教師は一人であるが、生徒1〜3は添削者B,生徒4〜6は添削者B,生徒7〜10は添削者Cが担当するように割り振られている。添削者は、添削者用端末(107)を使用することで、生徒の解答の監視と添削作業を教師と一人以上の添削者で分業して行なうことができ、より多数の生徒に対応できる。
【0029】
(機能ブロック図)
図2を参照して、本発明の実施例の機能ブロックを説明する。なお、各機能ブロックは必ずしも個々の物理的な装置に内蔵されている必要はなく、ネットワーク上の他の機器、あるいは組織外のクラウドサービス上に存在していてもよい。このようにネットワークを介して接続された別の機器上の機能をあたかも内蔵機器であるかのように使用できるのは周知技術である。なお、ここでモジュールとはプロセッサ、メモリ、外部ストレージなどから構成されるハードウェア上で稼働するソフトウェア・プログラムの機能単位を指す。
【0030】
(教師用端末に属する機能モジュール)
教材表示モジュール(201)は、ファイル・サーバ(104)から教材を読み出し、教師用端末に表示する機能を実行する。ここで、教材はePub、PDF、マイクロソフトWord形式、HTMLなどの広く普及した標準形式で記述された文書であることが望ましいが、イメージや動画などの他の形式であってもよい。
【0031】
課題選択モジュール(202)は、教師用端末(103)に表示された教材から生徒に配布する課題部分を教師に選択させ、該当部部分を読み取る機能を実行する。教師による課題部分の選択はタッチ操作、マウス、あるいは、キーボード入力などの周知の方法で行なえる。また、教材がイメージ形式の場合には、タブレット端末のオペレーティング・システムで標準的に提供されている画面コピープログラム(スニッピング・ツール)を使用してもよい。さらに、教材が物理的な書籍、物体、黒板上の板書である場合には、教材イメージ取得機器(105)によって教材を取得してもよい。テキスト形式の課題を教師用端末(103)に表示し、課題部分を教師が選択した状態を
図3に示す。この状態で課題配信のボタンをクリックすると課題配信モジュール(203)が起動し、課題部分を各生徒の生徒用端末(102)に配信する。
【0032】
課題配信モジュール(203)は、教師により選択された課題を複数の生徒用端末(102)に配布する機能を実行する。
【0033】
解答受信モジュール(204)は、各生徒が生徒用端末(102)で入力した解答を受信する機能を実行する。ここで受信は生徒が入力の終了操作を行なったタイミングで行なってもよいが、教師が臨機応変の対応を取れるようにするために、生徒が解答を作成している状況を時々刻々とリアルタイムで監視できることが望ましい。このようなリアルタイム監視はリモート・デスクトップ・プロトコルなどの周知の技術によって行なえる。このように各生徒の解答状況をリアルタイムで表示し、選択した生徒の解答状況をリアルタイムで監視し、コメントを入力するための教師用端末(102)の画面例を
図4に示す。
【0034】
解答表示モジュール(205)は生徒用端末(102)から受信した解答を表示する機能を実行する。前段落に述べたように各生徒の解答中の画面イメージをリアルタイムで表示することが望ましい。また、生徒の最終解答を教師用端末(103)だけではなく、大型スクリーン/電子黒板(106)に表示し、全生徒が閲覧可能なようにしてもよい。
【0035】
コメント入力モジュール(206)は各生徒の解答に対する教師のコメント(評価)を読み取る機能を実行する。
【0036】
コメント送信モジュール(207)は、コメント入力モジュール(206)が読み取った各生徒の解答に対する教師のコメントを当該生徒の生徒用端末(102)に送信する機能を実行する。
【0037】
解答・コメント保存モジュール(208)は各生徒の解答とその解答に対する生徒のコメントを互いに対応づけ、また、課題と対応づけた状態でファイルサーバ(104)あるいは教師用端末(103)に内蔵の記憶域、あるいは、組織外のクラウドサービスなどに保存する機能を実行する。
【0038】
教材ハイパーリンク付加モジュール(209)は、教材の中で教師により課題として選択された部分、あるいは、イメージ形式の課題として取得した部分をハイパーリンクに置き換え、そのリンクをクリックすることで、当該課題部分に対応する保存された各生徒の解答とその解答に対応する教師のコメントにアクセスできるようにする機能を実行する。ハイパーリンクへの置き換えはマークアップ言語の文字列操作などの周知の技術によって実現できる。
【0039】
(生徒用端末の機能モジュール)
次に、生徒用端末(102)の機能モジュールについて説明する。教師用端末(103)の場合と同様に、各モジュールは物理的機器としての生徒用端末(102)上で実行されてもよいし、生徒用端末(102)と連携して動作する他の機器、あるいは、組織内外のクラウドサービス上で実行されてもよい。
【0040】
教材表示モジュール(210)は、ファイルサーバ(104)あるいは生徒用端末の内蔵ストレージから読み出した教材、あるいは、事前に教師用端末(103)から送信しておいた教材を生徒用端末(102)に表示する機能を実行する。
【0041】
課題受信モジュール(211)は、教師用端末(103)の課題配信モジュール(203)が配信した課題を受信する機能を実行する。
【0042】
課題表示モジュール(212)は、課題受信モジュール(211)が受信した課題を生徒用端末(102)に表示する機能を実行する。
【0043】
解答入力モジュール(213)は、課題表示モジュール(212)が表示した課題に対して生徒が入力した解答を読み取る機能を実行する。生徒用端末に課題が表示され、生徒が解答を入力可能になっている状態の生徒用端末(201)の画面例を
図5に示した。
【0044】
解答送信モジュール(214)は、解答入力モジュール(213)が読み取った解答を教師用端末(103)に送信する機能を実行する。なお、前述のとおり、生徒が完全に解答した後に解答を送信してもよいが、解答作成中の生徒の画面を教師用端末(103)からリアルタイムで監視でき、教師が生徒の入力作業と同時並行的にコメントを入力できるようになっていることが望ましい。また、文字によるコメントだけではなく、リモート・デスクトップ・プロトコルなどの周知の技術により、教師用端末(103)から生徒用端末の画面に直接図形を描画できるようにしてもよい。
【0045】
コメント受信モジュール(215)は、教師用端末(103)のコメント送信モジュールが送信した生徒の解答に対するコメントを受信する機能を実行する。
【0046】
解答・コメント保存モジュール(216)は、課題に対する生徒の解答、その解答に対する教師のコメントを対応づけた状態でファイルサーバ(104)、生徒用端末(102)のストレージ、あるいは、組織内外で管理されたクラウドサービスなどの情報保存手段に保存する機能を実行する。
【0047】
教材ハイパーリンク追加モジュール(217)は、教材の中で教師により課題として選択された部分をハイパーリンクに置き換え、そのリンクをクリックすることで、解答保存モジュール(216)が保存した当該課題部分に対する保存された各生徒の解答とそれに対する教師のコメントにアクセスできるようにする機能を実行する。この画面の例を
図6に示す。なお、通常は、解答とコメントは、教師と解答を作成した生徒本人のみがアクセスできるが、教師の判断により、他の生徒の解答にも参考情報としてアクセスできるようなアクセス制御を行なえるようにしてもよい。
【0048】
(課題配布処理フロー)
図7に教師がリアルタイムで課題を出し、生徒が解答し、その解答に対して教師が添削するするフローを示す。
【0049】
(ステップ701)教師はファイルサーバ(104)などの教材保存手段に保存されていた教材を呼び出し、教師用端末(103)に表示する。なお、教材が物理的な書籍、物体、黒板への板書、授業の映像などである場合にはこのステップは実行しなくてもよい。
【0050】
(ステップ702)教師により選択された課題部分を教師用端末(103)が複数の生徒用端末)(102)のそれぞれに送信する。教材が、たとえば、ePub形式やPDF形式によって電子的に記述されたテキストである場合の教師用の画面の例を
図3に示す。
【0051】
(ステップ703)各生徒用端末(102)に教師が選択した課題部分を表示する。教材が、たとえば、ePub形式やPDF形式によって電子的に記述されたテキストである場合の教師用の画面の例を
図6に示す。
【0052】
(ステップ704)各生徒用端末(102)は、そのユーザーである生徒の課題に対する解答を読み取る。課題の入力はキーボート、ペン、あるいは、指によるタッチなどの周知技術で行なうことができる。なお、教師が選択した生徒の入力をリアルタイムで教師用端末(103)に表示してもよい。この場合の教師用端末(103)の画面例を
図4に示す。
図4−Aでは各生徒の解答状況が表示されており、教師は、解答中の生徒の中から特にリアルタイムで監視したい生徒を選択できるようにしてよい。そして、
図4−Bに示したように、教師が生徒の解答状況を表示し、それに対するコメントを入力することで、選択した生徒の生徒用端末(102)上に教師のコメントを表示できるようにしてもよい。これは、リモートデスクトップなどの周知技術で行なうことができる。こうすることで、教師がリアルタイムに生徒の理解度を把握して、臨機応変に対応することができる。
【0053】
(ステップ705)各生徒用端末(102)が、各生徒の課題の解答を教師用端末(103)に送信する。
【0054】
(ステップ706)教師用端末(103)が、各生徒用端末(102)から送られて来た各生徒の解答を表示する。各生徒の解答は教師だけが閲覧できるようにしてもよいし、全生徒が確認できるように大型モニターや電子黒板(106)などに表示するようにしてもよい。また、教師が選んだ解答のみを全生徒が閲覧できるように大型モニターや電子黒板(106)などに表示してもよい。また、課題が択一式である場合には、解答の統計情報を教師のみ、あるいは、教師と生徒全員に対して表示してもよい。
【0055】
(ステップ707)教師用端末(103)が、教師による各生徒の解答に対するコメントを読み取る。
【0056】
(ステップ708)教師用端末(103)が、読み取ったコメントを対応する生徒用端末(201)に送信する。
【0057】
(ステップ709-1)教師用端末(103)が、各生徒の解答とそれに対する教師のコメントを対応づけて保存する。保存先はファイルサーバ(104)、教師用端末(103)の内蔵ストレージ機能、あるいは、その他の情報保存手段であってよい。
【0058】
(ステップ709-2)教師用端末(103)が、教材中の課題として選択された部分をハイパーリンクに変更し、ステップ709-1で保存された各生徒の解答とそれに対する教師のコメントへのリンクとする。教師は、後になって、このハイパーリンクをクリックすることで、この部分に対する各生徒の解答、および、それに対して自分が書き込んだコメントを再チェックできる。
【0059】
(ステップ709-2)生徒用端末(102)が、課題、その課題に対する生徒の解答、および、その解答に対する教師のコメントを対応づけて保存する。保存先はファイルサーバ(104)、教師用端末(103)の内蔵ストレージ機能、あるいは、その他の情報保存手段であってよい。
【0060】
(ステップ710-2)生徒用端末(102)が、教材中の課題として選択された部分をハイパーリンクに変更し、ステップ709-2で保存された生徒の解答とそれに対する教師のコメントへのリンクとする。生徒は、後になって、教材中のこのハイパーリンクをクリックすることで、この部分に対する自分の解答、および、それに対して教師が書き込んだコメントを再チェックできる。これにより、従来は個別に管理されていた教材、課題、教師コメントを一元的に管理できるようになり、生徒の復習の効率性を向上できる。
【0061】
ステップ709-1とステップ709-2は逐次的に実行する必要はなく、同時並行的に実行して良い。
【0062】
上記に、解答中の各生徒の解答状況を教師用端末(103)に表示し、教師がリアルタイムで解答状況を把握し、適宜、テキスト。あるいは、描画によって指導を行えるようにするためのステップを追加しても良い。
【0063】
次に、教師とは別に添削担当者を用意した実施形態の例について説明する。この実施形態の概念図を
図8に示す。
【0064】
この実施形態では、講師とは別の一人以上の添削者がそれぞれ添削者用端末(107)を操作し、生徒の解答を添削する。すなわち、講師は授業の提供と問題の作成・配信を行い、添削者が添削を行なうという役割分担することになる。このような方式を採用することにより、教師の負担を軽減し、より大規模な授業に対応できる。
【0065】
図8に示したように、各添削担当者は予め割り当てられた生徒のグループの添削を担当させることが望ましい。なお、講師が講師用端末(103)を使用して一部の生徒グループに対する添削作業を行なってもよい。
【0066】
添削者用端末(107)は、教師用端末(103)の機能のうち、解答受信モジュール(204)、解答表示モジュール(205)、コメント入力モジュール(206)、コメント送信モジュール(207)、解答・コメント保存モジュール(208)、教材ハイパーリンク追加モジュール(209)を備えていることが望ましい。
【0067】
添削者用端末(107)上でも、
図4に示したように、添削者が選択した生徒の解答状況をリアルタイムで表示し、添削者がリアルタイムでコメントを入力できるようにしてよい。
【0068】
添削担当者端末(107)を使用している場合でも、教師は全生徒の解答状況を表示する、あるいは、リアルタイムで監視できるようにしてよい。あるいは、各添削担当者が模範解答として指定した生徒の解答だけを表示するようなアクセス制御を行なってもよい。
【0069】
(顕著な技術的効果)
本発明に係る集合教育システムの実現により、以下のような顕著な技術的効果が得られる。第一に、教師用端末から、リアルタイムで全ての生徒の解答状況を一覧で見て、特定の生徒個人の解答に対してコメントや添削を入力できる。これにより、教師は、生徒が正答あるいは誤答に至るまでのプロセスを把握することができ、適切な指導ができる。生徒が解答に困難を感じていたり、解答の方向性を完全に間違っているような場合には、先んじて個別の指導を行なうことができる。また、特定の生徒用端末に教師用端末から書き込んだコメントを直接表示することで、生徒に余分なプレッシャーを与えることなく個別の指導を行なうことができる。
【0070】
第二に、教材中の課題部分に対して、各生徒が作成した解答、および、それに対する教師のコメントがリンク付けされて保存されることで、授業後の復習が容易になる。教師は各生徒の解答とそれに対する自分のコメントを評価できる。また、生徒は、教材の課題部分と自分の解答を自動的に対応づけて保存することで復習に役立てることができる。
【0071】
第三に、もともと電子学習用に作られていないテキスト教材を使用して、タブレット端末等を使用した対話型の集合学習が可能になる。これにより、利用できる教材の選択肢が大幅に拡大する。また、たとえば、通常の書籍や黒板の板書でも、撮影装置を使用することでタブレットによる集合教育の教材として活用できる。