(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、視度調整ギアや視度調整カムギア等の部品同士を精確に噛み合わせるためには、上蓋を撮影装置本体に精度良く組み付ける必要がある。しかし、撮影装置本体や上蓋のような大型なパーツ同士を精度良く組み付けるのは製造上容易ではない。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、カバー部材を撮影装置本体部に組み付ける構成において、カバー部材、撮影装置本体部のそれぞれに設けられた部品同士を精度良く組み付けるのに好適な撮影装置の組立方法及び該撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る撮影装置は、その内部機構を覆うカバー部材と、カバー部材に形成された所定の開口形状から見える位置で撮影装置本体部に設けられた連結ギアと、支軸を介して連結ギアと連結し、ユーザによる回転操作に伴い連結ギアを回転させる操作ダイヤルと、視度調節用レンズを含むファインダ光学系と、連結ギアの回転を視度調節用レンズに伝達させて視度調節用レンズを光軸方向に移動させることにより、ファインダ光学系の焦点を変化させる駆動伝達部と、連結ギアと操作ダイヤルとの間で支軸に通された状態でカバー部材の開口形状周辺の取り付けしろに取り付けられている軸受部材であって、操作ダイヤルが持つ突起部と当て付くことにより、操作ダイヤルの回転可能な角度範囲を規制するストッパ部を持つものとを備える。取り付けしろは、支軸の軸線方向と直交する面内における軸受部材の位置ずれを吸収できるように軸受部材の外形よりも広い領域を持つ。
【0009】
本実施形態によれば、撮影装置本体部に設けられた連結ギアと、カバー部材に取り付けられた軸受部材は、撮影装置本体部とカバー部材との組立誤差に起因する軸ずれが軸受部材と取り付けしろとの外形の差内で吸収されているため、互いが同軸となる位置に固定されている。このように、本実施形態に係る撮影装置は、カバー部材を撮影装置本体部に組み付ける構成において、カバー部材、撮影装置本体部のそれぞれに設けられた部品同士が精度良く組み付けられる構成となっている。
【0010】
軸受部材は、開口形状に差し込まれる差し込み部を有する構成としてもよい。この場合、開口形状は、支軸の軸線方向と直交する面内における軸受部材の位置ずれを吸収できるように差し込み部よりも径が大きい。
【0011】
本実施形態の撮影装置において、例えば、周辺形状に対して一段落とし込まれた凹部の底面が取り付けしろである。
【0012】
連結ギアは、所定の棒状治具の先端に設けられた先端係合部が係合する第一の係合部を有する構成であってもよい。また、軸受部材は、棒状治具の側面に設けられた側面係合部が係合する第二の係合部を有する構成であってもよい。この場合、支軸の軸線方向と直交する面内における軸受部材の取付位置は、第一の係合部が先端係合部と係合され且つ第二の係合部が側面係合部と係合されたときの位置である。
【0013】
例えば、第一の係合部及び第二の係合部により、連結ギアと軸受部材との相対的な回転位置が所定の1つの関係に決まる。
【0014】
本実施形態の撮影装置の組立方法は、可動レンズを光軸方向に移動させるための連結ギアを含む光学装置が設けられた撮影装置本体部にカバー部材を嵌め込むステップと、撮影装置本体部に嵌め込まれたカバー部材の所定の開口形状を通して連結ギアの係合部に、所定の棒状治具の先端に設けられた先端係合部を係合させるステップと、先端係合部が連結ギアの係合部に係合された状態で、操作ダイヤルの回転可能な角度範囲を規制するストッパ部を持つ軸受部材の軸挿通孔を、棒状治具の側面に設けられた側面係合部に係合させた上で軸受部材を棒状治具に通すステップと、棒状治具に通された軸受部材をカバー部材の開口形状周辺の取り付けしろに取り付けるステップと、棒状治具を連結ギア及び軸受部材から取り外すステップと、操作ダイヤルの支軸を軸受部材を通して連結ギアと連結させることにより、操作ダイヤルを、操作ダイヤルが持つ突起部がストッパ部と当て付くことにより操作ダイヤルの回転角度範囲を規制することが可能な位置に組み込むステップとを含む方法である。
【0015】
連結ギアは、例えば、回転位置を示す所定の指標を有しており、可動レンズの光軸方向の位置に対応付けて指標が所定の回転位置に来るようにファインダ装置本体部の軸受に取り付けられる。
【0016】
本実施形態の回転操作機構は、装置の内部機構を覆うカバー部材と、カバー部材の内側に配置された連結ギヤと、カバー部材の外側に配置され、連結ギヤを回転駆動させるためにユーザに回転操作される操作ダイヤルと、カバー部材とは別体で所定の径の穴を有する軸受部材とを備える。連結ギヤと操作ダイヤルとは、軸受部材とカバー部材を挟んで軸受部材の穴を通して連結軸で連結される。軸受部材は、カバー部材に対する固定位置が連結軸の軸線方向に対して垂直な所定の面範囲内の任意の位置に調節されることを許容する形状を持つ。連結ギヤと操作ダイヤルは、連結ギヤと操作ダイヤルとの偏芯を吸収する位置に調節され固定された軸受部材の穴を通された連結軸を介して連結される。
【0017】
例えば、軸受部材の穴の径と連結軸との径は略等しい。カバー部材は、例えば、連結ギヤと軸受部材とで挟まれて位置する。操作ダイヤルと軸受部材との間には、連結軸の径より大きくかつ操作ダイヤルより小さな径を有する環状の止水部材が挟まれていてもよい。
【0018】
操作ダイヤルは、環状の止水部材を傘状に覆うような状態で連結軸を介して連結ギヤと連結される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本実施形態によれば、カバー部材、撮影装置本体部のそれぞれに設けられた部品同士を精度良く組み付けるのに好適な撮影装置の組立方法及び該撮影装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本発明の一実施形態として、撮影装置(例えばデジタル一眼レフカメラ)について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態の撮影装置1の外観を示す背面図である。
図1においては、主に、ファインダ装置10の周辺を示す。ファインダ装置10は、カメラ本体部1aと上カバー1bとが規定するスペース内に組み込まれており、一部の構成が撮影装置1の外観(背面側)に現れている。具体的には、
図1に示されるように、ファインダ装置10は、視度調節ダイヤル102、接眼レンズ104及び接眼レンズ枠106が外観に現れている。ユーザは、接眼レンズ104を覗きつつ視度調節ダイヤル102を操作することにより、ファインダ装置10の視度を自身に合う視度に調節することができる。
【0023】
図2(a)は、ファインダ装置10単体の背面図を示し、
図2(b)及び
図2(c)は、ファインダ装置10単体の斜視図を示す。
図2(a)〜
図2(c)の各図においては、便宜上、視度調節ダイヤル102及び接眼レンズ枠106の図示を省略する。
【0024】
図2に示されるように、ファインダ装置10は、視度調節ダイヤル102、接眼レンズ104及び接眼レンズ枠106に加えて、ケース108、上板110、ダイヤルクリック板バネ112、一対の止めねじ114、対物レンズ116、円筒リブカム118、伝達ギア120、ギア部122、レンズガイド軸124及びレンズ付勢バネ126を備えている。
【0025】
上板110は、止めねじ114によってケース108に取り付けられることにより、ケース108から対物レンズ116等の内蔵物が脱落するのを防ぐ。ダイヤルクリック板バネ112も止めねじ114によってケース108に取り付けられる。
図3は、止めねじ114の各々が弛められて上板110及びダイヤルクリック板バネ112がケース108から取り外されたときのファインダ装置10単体の斜視図を示す。
図3に示されるように、ケース108内には、ファインダ光学系を構成する、接眼レンズ104、対物レンズ116及び調節レンズ128が収容されている。
【0026】
図4に、調整レンズ128及びその周辺の斜視図を
図3から抽出して示す。
図4に示されるように、調節レンズ128の側面にガイド部128aが一体に形成されている。ガイド部128aには、ガイド穴128aA(図面上不可視)が空けられている。
【0027】
ガイド穴128aAにはレンズガイド軸124が挿入され通されている。ガイド穴128aAは、内周面がレンズガイド軸124との摺動面となっている。レンズガイド軸124は、
図3中矢印方向(光軸方向)に延びており、両端がケース108に固定されている。
【0028】
ガイド穴128aAの内周面とレンズガイド軸124との摺動によりガイド部128aがレンズガイド軸124沿いに移動すると、ガイド部128aと一体に形成された調節レンズ128は、ケース108内を光軸方向にスライドする。これに対し、接眼レンズ104及び対物レンズ116は、ケース108内に固定されている。本実施形態では、調節レンズ128のみが光軸方向にスライドすることにより、接眼レンズ104、対物レンズ116及び調節レンズ128よりなるファインダ光学系の焦点が変化する(視度が変化する)。
【0029】
ガイド部128aの先端には、カムフォロア128aBが形成されている。カムフォロア128aBは、ケース108内に回転可能に支持された円筒リブカム118と係合している。円筒リブカム118の後端には、伝達ギア120が一体に形成されている。
【0030】
図5(a)、
図5(b)はそれぞれ、ギア部122単体の背面図、斜視図を示す。
図5に示されるように、ギア部122は、連結ギア122a、クリック溝円柱122b、仕切壁122c及び軸部122dよりなる一体形成品であり、ケース108の軸受108aに回転可能に支持されている。
【0031】
連結ギア122aはインボリュートギアであり、伝達ギア120と噛み合う。クリック溝円柱122bは、円柱部122bAの外周面に所定の角度間隔で形成されたクリック溝122bBを持つ円柱状部材である。連結ギア122aとクリック溝円柱122bは、同軸かつ互いに隣接する位置に一体形成されており、連結ギア122aの歯底円直径と円柱部122bAの直径とが等しい。
【0032】
連結ギア122aは、視度調節ダイヤル102と連結する(詳しくは後述)。そのため、視度調節ダイヤル102が時計回り又は反時計回りに回転操作されると、連結ギア122aも一体となって回転する。連結ギア122aの回転が伝達ギア120に伝達されると、円筒リブカム118が伝達ギア120と一体となって回転する。円筒リブカム118の回転動作は、カムフォロア128aBとの間で光軸方向の直進動作に変換される。そのため、カムフォロア128aBと一体に形成された調節レンズ128は、光軸方向にスライドする。
【0033】
より詳細には、カムフォロア128aBは、レンズガイド軸124に掛けられたレンズ付勢バネ126により背面側(接眼レンズ104側)に付勢されている。視度調節ダイヤル102が時計回りに回転操作されると、カムフォロア128aBが円筒リブカム118との係合により、レンズ付勢バネ126の付勢力に抗して前進する。これにより、カムフォロア128aBと一体に形成された調節レンズ128は、前面側(対物レンズ116側)にスライドする。また、視度調節ダイヤル102が反時計回りに回転操作されると、カムフォロア128aBと円筒リブカム118との係合位置が後退する。そのため、カムフォロア128aBは、レンズ付勢バネ126の付勢力により後退する。これにより、カムフォロア128aBと一体に形成された調節レンズ128も背面側(接眼レンズ104側)にスライドする。視度は、視度調節ダイヤル102が時計回りに回転操作されるほどマイナス端側に変化し、視度調節ダイヤル102が反時計回りに回転操作されるほどプラス端側に変化する。
【0034】
上板110及びダイヤルクリック板バネ112は金属製の板状部材であり、それぞれが止めネジ114によってケース108に取り付けられている。ダイヤルクリック板バネ112は、止めねじ114によってケース108に取り付けられたとき、
図2に示されるように、クリック溝122bBに当て付き、クリック溝122bBを円柱部122bA側へ付勢する。ダイヤルクリック板バネ112は、クリック溝円柱122bが回転されたときにクリック溝122bBを乗り越えることで、ユーザによって視度調節ダイヤル102が回転操作された際のクリック感を生じさせる。
【0035】
クリック溝円柱122bは、ユーザによる視度調節ダイヤル102の回転操作時に連結ギア122aと一体となって回転するが、視度調節ダイヤル102の回転操作が行われていないときには、ダイヤルクリック板バネ112によりクリック溝122bBに軽負荷が掛かる位置で停止する。ここで、クリック溝円柱122bは、連結ギア122a、伝達ギア120、円筒リブカム118、カムフォロア128aB及びガイド部128aを介して調節レンズ128と連動する。そのため、クリック溝122bBに軽負荷が掛かる位置(クリック溝円柱122bの停止位置)を増やすことにより、調節レンズ128の停止位置を増やすことができる。調節レンズ128の停止位置を増やすことにより、ファインダ光学系で調節可能な視度の範囲(例えば−3.0Dptr〜+1.8Dptr)を狭めることなく視度の分解能を細かくすることができる。視度の分解能は、視度調節ダイヤル102を1クリック分操作したときに変化する視度の値を示し、本実施形態では0.2Dptr〜0.3Dptrの範囲に設定される。
【0036】
軽負荷によるクリック溝円柱122bの停止位置(以下、「クリック停止位置」と記す。)の数は、クリック溝122bBの数と一致する。そのため、クリック溝122bBを増やすことにより、クリック停止位置が増加する。クリック溝122bBを増やす方法として、例えば、クリック溝122bBの一つ一つを小さく設計することが考えられる。しかし、クリック溝122bBを小さく設計しすぎると、クリック溝円柱122bの回転を停止させるに足る軽負荷の確保が難しいと共にクリック溝122bBの耐久性が低下する。そのため、クリック溝122bBを小さく設計するという方法は安易には採用できない。
【0037】
そこで、本実施形態では、円柱部122bAの直径が連結ギア122aの歯底円直径と同一のサイズに設計されている。すなわち、本実施形態では、特許文献1に記載の構成と比べて、クリック溝122bBが形成される面(円柱部122bAの外周面の長さ)が長く設計されている。これにより、例えば、クリック溝122bBのサイズを維持しつつより多くのクリック溝122bBを形成することが可能となる。
【0038】
本実施形態において、連結ギア122aの歯及びクリック溝122bBは、連結ギア122aの歯底面上、円柱部122bAの外周面上のそれぞれに、同一の数だけ形成されている。また、連結ギア122aの歯及びクリック溝122bBは、連結ギア122aの歯底面上、円柱部122bAの外周面上のそれぞれに、同位相で(同一の角度間隔でかつ同一の角度位置に)形成されている。
【0039】
別の実施形態では、クリック溝122bBの数は、連結ギア122aの歯数より多くてもよい。また、連結ギア122aの歯とクリック溝122bBとの形成位置は、同位相でなくてもよい。
【0040】
円柱部122bAの直径を連結ギア122aの歯底円直径と同一のサイズにしたことで、ダイヤルクリック板バネ112による連結ギア122a側への機械的干渉(ダイヤルクリック板バネ112が連結ギア122a上にずれたり脱落したりすること)が懸念される。そこで、本実施形態では、連結ギア122aとクリック溝円柱122bとの間に、連結ギア122aとクリック溝円柱122bとを仕切る仕切壁122cが形成されている。仕切壁122cの高さは、クリック溝122bBの山の頂点よりも高い。そのため、ダイヤルクリック板バネ112は、クリック溝122bB上において連結ギア122a側へずれると、ダイヤルクリック板バネ112の側面が仕切壁122cに当たり、連結ギア122a上への移動が規制される。
【0041】
図6(a)及び
図6(b)は、ギア部122の組み付けを説明するための図である。
図6(a)に示されるように、ギア部122は、軸部122dが背面側(接眼レンズ104側)からケース108の軸受108aに組み付けられる。ここで、本実施形態では、限られたスペース内で調節レンズ128のスライド量を確保するため、円筒リブカム118の後端を上カバー1bの内壁面に近い側まで延ばすことにより、円筒リブカム118のガイド長を長く設計している。一方、ダイヤルクリック板バネ112は、ファインダ装置10の小型化のため、円筒リブカム118の後端を上カバー1bの内壁面に近い側まで延ばすことにより生じた円筒リブカム118上方の空きスペースに設置される。そのため、ギア部122は、クリック溝円柱122bがダイヤルクリック板バネ112の設置スペース下方に配置されるように、軸部122dが背面側(接眼レンズ104側)から軸受108aに向けて差し込まれ、仕切壁122cが伝達ギア120を乗り越える位置まで組み付けられる(
図6(b)参照)。
【0042】
しかし、
図5(a)に示されるように、仕切壁122cは、高さが連結ギア122aの歯よりも高い。そのため、仕切壁122cと伝達ギア120とが機械的に干渉し、仕切壁122cが伝達ギア120を乗り越えられないという不都合が懸念される。
【0043】
そこで、本実施形態において、仕切壁122cは、連結ギア122a及びクリック溝円柱122bの全周には亘っておらず、一部が切り欠かれた形状となっている。具体的には、
図5(a)に示されるように、仕切壁122cは、切り欠き122cAを有している。切り欠き122cAが形成されている角度範囲に対応する円柱部122bAの外周面上の角度範囲(以下、「切り欠き対応範囲」と記す。)には、クリック溝122bBが形成されていない、又はクリック溝122bBに代えて連結ギア122aと同一のダミー形状が形成されている。なお、何れの場合も、切り欠き対応範囲以外の角度範囲には、クリック溝122bBが形成されている。
【0044】
伝達ギア120、ギア部122にはそれぞれ、指標120a、122eが刻印されている。
図2(a)に示されるように、伝達ギア120とギア部122とを指標同士が合う位置に向けたとき、伝達ギア120に最も近接する位置に切り欠き122cAが位置する。このとき、伝達ギア120の投影とギア部122の投影とが重ならない。そのため、ギア部122は、仕切壁122cと伝達ギア120とが機械的に干渉することなく、軸部122dが軸受108aに差し込まれ、仕切壁122cが伝達ギア120を乗り越える位置まで組み付けられる。これにより、
図6(b)に示されるように、クリック溝円柱122bがダイヤルクリック板バネ112の設置スペース下方に配置されると共に連結ギア122aが伝達ギア120と噛み合う。
【0045】
指標120aと指標122eとが合う位置に伝達ギア120が回転されると、調節レンズ128は、対物レンズ126と近接する所定位置に移動する。このときのファインダ光学系の視度を一定値、例えばプラス端(+1.8Dptr)となるように設計することで、ファインダ光学系の視度値及び伝達ギヤ120と連結ギヤ122aとの相対的な回転位置が製品の個体毎にばらつくことなく所定の1つの関係に決まる。
【0046】
図7(a)〜
図7(f)は、ファインダ装置10の組み付けを説明するための図である。
図7(a)〜
図7(f)の各図においては、撮影装置1の背面図及び斜視図を用いて各工程を示す。
【0047】
ファインダ装置10は、カメラ本体部1aに取り付けられる。この時点のファインダ装置10は、
図2に示される構成に接眼レンズ枠106を取り付けたものであり、視度調節ダイヤル102を備えない未完成品である。次に、カメラ本体部1aに上カバー1bが嵌め込まれて、ねじ止め等により固定される。これにより、ファインダ装置10は、カメラ本体部1aと上カバー1bとが規定するスペース内に組み込まれる。
【0048】
図7(a)に示されるように、上カバー1bにはダイヤル用開口部1bAが空けられている。ダイヤル用開口部1bAは、視度調節ダイヤル102が嵌め込まれる穴部である。ファインダ装置10は、カメラ本体部1aと上カバー1bとが規定するスペース内に、ギア部122(連結ギア122a)がダイヤル用開口部1bAから見える位置で固定される。なお、ダイヤル用開口部1bAは穴形状に限らず、例えば切り欠き等の別の形状であってもよい。
【0049】
ギア部122は、ダイヤルクリック板バネ112によりクリック溝122bBに軽負荷が掛けられた状態で軸部122dが軸受108aに差し込まれているだけであるため、スラスト方向に若干量移動可能である。ギア部122は、上カバー1bをカメラ本体部1aに嵌め込む際、上カバー1bからスラスト方向に離れた位置に移動させておくことが望ましい。ギア部122を上カバー1bからスラスト方向に離れた位置に移動させておくことで、ギア部122と上カバー1bとのクリアランスがより多く確保される。これにより、組立時におけるギア部122と上カバー1bとの機械的干渉が避けやすくなり、上カバー1bをカメラ本体部1aにスムーズに嵌め込むことができる。
【0050】
カメラ本体部1aに上カバー1bが嵌め込まれて固定されたとき、製造誤差や組立誤差のため、カメラ本体部1aに取り付けられたギア部122と、上カバー1bに空けられたダイヤル用開口部1bAとが必ずしも同軸に位置しない。ギア部122とダイヤル用開口部1bAとが軸ずれした状態では視度調節ダイヤル102をダイヤル用開口部1bAに嵌めてギア部122に連結させることが難しい。ギア部122とダイヤル用開口部1bAとの軸ずれを抑えるためには、カメラ本体部1aに対して上カバー1bを高精度に取り付ける必要がある。しかし、カメラ本体部1a及び上カバー1bのような大型なパーツ同士を高精度に取り付けるのは製造上容易ではない。
【0051】
本実施形態では、上記の問題を解消するため、棒状治具200が用いられる。
図8(a)は、棒状治具200の正面図を示し、
図8(b)及び
図8(c)は、棒状治具200の斜視図を示す。
図8に示されるように、棒状治具200は、円柱本体部200aを備えている。円柱本体部200aの先端面には、凸状のギア係合キー200bが形成されている。ギア係合キー200bの先端面には、先端円柱部200cが形成されている。円柱本体部200aの側面には、円柱本体部200aの一端から他端に亘り、凸状の軸受係合キー200dが形成されている。
【0052】
図5に示されるように、ギア部122の中心には、連結ギア122a及びクリック溝円柱122bを貫通する深穴122fが形成されている。また、深穴122fの周辺であって連結ギア122aの中央部分には、先端係合キー溝122gが形成されている。
【0053】
図7(b)に示されるように、棒状治具200は、ダイヤル用開口部1bAに挿入される。ダイヤル用開口部1bAに挿入された棒状治具200は、ギア係合キー200b、先端円柱部200cのそれぞれが、先端係合キー溝122g、深穴122fに係合されるので、棒状冶具200と連結ギヤ122aとの相対的な回転位置が製品の個体毎にばらつくことなく所定の1つの関係に決まる。言い換えれば、棒状治具200は、ギア部122が所定の回転位置(指標120aと指標122eとが合う位置)にセットされていれば、常に一定の向きで係合する。
【0054】
図7(c)に示されるように、ギア部122に係合された棒状治具200を所定の回転位置にした状態で棒状治具200に軸受ストッパ部130が貫装される。
図9(a)は、軸受ストッパ部130単体の背面図を示し、
図9(b)及び
図9(c)は、軸受ストッパ部130単体の斜視図を示す。
図9に示されるように、軸受ストッパ部130は、円環体130aを備えている。円環体130aの中心穴130aCは、一部が切り欠かれている。中心穴130aCの切り欠きは、側面係合キー溝130bをなす。円環体130aの背面130aAには凸状のストッパ130cが形成されている。円環体130aの前面130aBには、円環体130aより前方に突出する差し込みリブ130dが形成されている。側面係合キー溝130bは、円環体130aから差し込みリブ130dまで延びている。具体的には、
図9(c)に示されるように、差し込みリブ130dは、一部の側面が切り欠かれている。差し込みリブ130dの側面の切り欠きが側面係合キー溝130bをなす。
【0055】
軸受ストッパ部130は、中心穴130aC、側面係合キー溝130bがそれぞれ、円柱本体部200a、軸受係合キー200dと係合された状態で棒状治具200に挿入される。棒状治具200に挿入された軸受ストッパ部130は、差し込みリブ130dがダイヤル用開口部1bAに差し込まれ且つ前面130aBがダイヤル用開口部1bA周辺に設けられた取り付けしろ1bBと接触する位置まで通される。前面130aBには、予め両面テープが貼付され又は接着剤が塗布されている。そのため、軸受ストッパ部130は、前面130aBが取り付けしろ(軸受ストッパ部130が接着される領域であり、接着しろ)1bBに接着されることにより、上カバー1bに固定される。これによって、ファインダ光学系の視度値と凸状のストッパ130cとの回転位置が製品の個体毎にばらつくことなく所定の1つの関係に決まる。なお、本実施形態では、軸受ストッパ部130を上カバー1bに接着固定させやすくする便宜上、周辺形状に対して一段落とし込まれた凹部の底面が取り付けしろ1bBとなっている。
【0056】
ここで、上カバー1bが製造誤差等によりカメラ本体部1aに対してずれて固定されたとき、上述したように、ギア部122とダイヤル用開口部1bAとが同軸に位置しない。この場合、ギア部122に係合された棒状治具200は、ダイヤル用開口部1bAに対して偏心した位置に配置される。そのため、棒状治具200に挿入され通された軸受ストッパ部130がダイヤル用開口部1bAの周縁部と機械的に干渉し、取り付けしろ1bBに取り付けられないという問題が懸念される。
【0057】
そこで、ダイヤル用開口部1bA、取り付けしろ1bBはそれぞれ、ギア部122とダイヤル用開口部1bAとの軸ずれを吸収できるように、差し込みリブ130d、円環体130aよりも径が大きい。そのため、棒状治具200がダイヤル用開口部1bAに対して偏心する場合も、差し込みリブ130dは、ダイヤル用開口部1bAに差し込まれ、円環体130aの前面130aBは、取り付けしろ1bB内に接着される。
【0058】
図7(d)に示されるように、棒状治具200は、ギア部122及び軸受ストッパ部130から取り外される。ギア部122と軸受ストッパ部130は、ギア部122とダイヤル用開口部1bAとの軸ずれがダイヤル用開口部1bAと差し込みリブ130dとの径の差(及び円環体130aと取り付けしろ1bBとの径の差)内で吸収されるため、互いが同軸となる位置に固定されている。
【0059】
なお、棒状治具200が取り外された後も、ギア部122と軸受ストッパ部130との向きは、ギア部120が回転されない限り一定の関係に保たれる。
【0060】
図9に示されるように、円環体130aの背面130aAには円環リブ130eが形成されている。
図7(e)に示されるように、円環リブ130eには、防塵・防滴のためのOリング132が係合される。
【0061】
図10は、視度調節ダイヤル102単体の斜視図を示す。
図10に示されるように、視度調節ダイヤル102は、ダイヤル本体102a及び支軸102bを備えている。支軸102bの先端には連結キー102cが形成されている。支軸102bの根元には突起部102dが形成されている。
【0062】
視度調節ダイヤル102は、棒状治具200が取り外された後、支軸102bが軸受ストッパ部130の中心穴130aCに差し込まれる。視度調節ダイヤル102が更に差し込まれると、連結キー102cがギア部122の先端係合キー溝122gと係合する。連結キー102cと先端係合キー溝122gとが係合された状態で視度調節ダイヤル102が止めねじ134によってねじ止めされることにより、視度調節ダイヤル102とギア部122とが連結する。ギア部122は、ねじ止めによって上カバー1bの内壁面側に引き込まれることによりスラスト方向への移動が規制され、位置が安定する。
【0063】
なお、連結キー102cと先端係合キー溝122gは、互いの向きが一定の関係にあるときのみ係合する。すなわち、視度調節ダイヤル102は、ギア部122(及びギア部122に対して一定の向きに配置された軸受ストッパ部130)に対して常に一定の向きで係合する。
【0064】
調節レンズ128は、視度調節ダイヤル102と連動するため、視度調節ダイヤル102の回転可能な角度範囲を規制しなければ、接眼レンズ104や対物レンズ116と衝突する虞がある。そこで、本実施形態では、連結キー102cと先端係合キー溝122gとが係合されたとき、視度調節ダイヤル102の回転操作時における突起部102dの回転軌跡と、軸受ストッパ部130のストッパ130cの位置とが干渉する構成となっている。そのため、視度調節ダイヤル102が回転操作されると、ある角度位置において突起部102dとストッパ130cとが当て付く。これにより、視度調節ダイヤル102の回転可能な角度範囲が規制される。上述したように、ファインダの視度値と凸状のストッパ130cとの回転位置が製品の個体毎にばらつくことなく所定の1つの関係に決まるため、視度調節ダイヤル102を回転可能な角度範囲の一端から他端に回転させることで、ファインダ光学系の視度値を調節可能な視度範囲内で正確に変化させることが可能となる。
【0065】
本実施形態において、視度調節ダイヤル102の回転可能な角度範囲は300°である。ギア部122は、視度調節ダイヤル102と連結するため、同じく300°の範囲内で回転可能である。クリック溝122bBは、少なくとも300°の範囲に亘り形成されており、ギア部122の回転に拘わらずダイヤルクリック板バネ112によって常時付勢される。仕切壁122cは、ダイヤルクリック板バネ112による連結ギア122a側への機械的干渉を避けるため、クリック溝122bBと同じ角度範囲に形成されている。
【0066】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0067】
本実施形態では、円柱部122bAの直径が連結ギア122aの歯底円直径と同一のサイズに設計されているが、別の実施形態では、より多くのクリック溝122bBを形成するため、円柱部122bAの直径が連結ギア122aの歯底円直径より大きく設計されてもよい。