(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182777
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】使い捨て手袋の手袋束
(51)【国際特許分類】
A41D 19/015 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
A41D19/015 610B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-210726(P2014-210726)
(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公開番号】特開2016-79521(P2016-79521A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2015年6月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591234352
【氏名又は名称】株式会社サンヤマト
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】西浦 秀哉
【審査官】
田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0150996(US,A1)
【文献】
実開平07−033929(JP,U)
【文献】
特開2006−240290(JP,A)
【文献】
特開平11−314689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/00−19/04
B65D 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製薄材を手の形状に形成した一方の薄片とこの薄片と同一形状で手首側が延長された他方の薄片とを重ねて外周縁を溶着し、一方の薄片の手首側縁部と他方の薄片との間に開口部が形成された使い捨て手袋片を、同じ向きに重ねて延長部の延長端側を接続し、延長部の延長端側には、外部の固定側鉤部に係止される係止部が形成された掛け吊るし部を設け、この掛け吊るし部と開口部との間の延長部には、延長部の接続側と手袋部とを切り離し可能な線状の切り離し部を開口部に沿って形成するとともに、切り離し部の両端のうち少なくともいずれか一方には、素材の自重により開口部が広がるような切り込み深さを有する切り込み部を形成したことを特徴とする使い捨て手袋の手袋束。
【請求項2】
切り離し部を開口部から所定の寸法隔てて形成したことを特徴とする請求項1に記載の使い捨て手袋の手袋束。
【請求項3】
掛け吊るし部を延長して構成し、掛け吊るし部に複数の手袋束を接続したことを特徴とする請求項1または2に記載の使い捨て手袋の手袋束。
【請求項4】
重ねられた手袋には、全体の枚数から順次切り離されて所定の枚数の手袋に達すると、残数または残数の少ないことを知らせる表示部が設けられることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の使い捨て手袋の手袋束。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て手袋の手袋束に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、作業時、液体や汚濁物、薬品等から手の皮膚を保護したり、食品を取り扱う際の衛生管理の観点から、ポリエチレンフィルム等の合成樹脂製の使い捨て手袋が用いられる。このような使い捨て手袋は、一枚ずつ分離された複数の手袋を袋詰めして販売されることがある。この場合、袋から手袋を取り出し手に装着する際、手袋は薄い構成樹脂製の素材から構成されているため、滑りやすく、装着しにくいという課題がある。このため、従来、合成樹脂製の使い捨て手袋を複数枚重ねて、手首側に取り付け部を取り付けた手袋束として構成し、取り付け部と手を差し入れる開口部との間に横方向の切り取り線を形成した使い捨て手袋着用システムが提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
この従来の使い捨て手袋着用システムでは、表面側の手袋を指で摘んで引っ張ると、切り取り線が切断され手袋側と取り付け部の手首側とが切り離され、切り離された手袋を片手に持って他方の手に装着するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2001/0037516号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の使い捨て手袋着用システムでは、薄手の手袋が合成樹脂から構成されているため、静電気が起こりやすく、手を差し入れる開口部が掌側と手の甲側とでぴったりとくっついてしまい片手を装着しにくく、装着に時間がかかるという問題がある。また、指で引っ張って一枚ずつ取り外すようにしているので、複数枚重なった場合、複数枚同時に取り外してしまい、無駄が発生するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡素な構成で、ワンタッチで簡単に手に装着することができる使い捨て手袋の手袋束を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る使い捨て手袋の手袋束は、合成樹脂製薄材を手の形状に形成した一方の薄片とこの薄片と同一形状で手首側が延長された他方の薄片とを重ねて外周縁を溶着し、一方の薄片の手首側縁部と他方の薄片との間に開口部が形成された使い捨て手袋片を、同じ向きに重ねて延長部の延長端側を接続し、延長部の延長端側には、外部の固定側鉤部に係止される係止部が形成された掛け吊るし部を設け、この掛け吊るし部と開口部との間の延長部には、延長部の接続側と手袋部とを切り離し可能な線状の切り離し部を開口部に沿って形成するとともに、切り離し部の両端のうち少なくともいずれか一方には
、素材の自重により開口部が広がるような切り込み深さを有する切り込み部を形成したことを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項1に係る使い捨て手袋の手袋束では、合成樹脂製薄材を手の形状に形成した一方の薄片とこの薄片と同一形状で手首側が延長された他方の薄片とを重ねて外周縁を溶着し、一方の薄片の手首側縁部と他方の薄片との間に開口部が形成された使い捨て手袋片を、同じ向きに重ねて延長部の延長端側を接続し、延長部の延長端側には、外部の固定側鉤部に係止される係止部が形成された掛け吊るし部を設け、この掛け吊るし部と開口部との間の延長部には、延長部の接続側と手袋部とを切り離し可能な線状の切り離し部を開口部に沿って形成するとともに、切り離し部の両端のうち少なくともいずれか一方には、予め所定寸法切り込
み、素材の自重により開口部が広がるような切り込み深さを有する切り込み部を形成したことにより、外部の固定側鉤部に掛け吊るし部を係止させ、手袋束の表側手袋片の開口部に手を差し入れ、そのまま差し入れ方向に力を加えると、切り離し部が切断されるので、ワンタッチで手に手袋を装着することができる。しかも、表側手袋の開口部のうち切り込み部が形成された側は、手袋部側の自重により垂れが生じ隙間が形成されるので、隙間から手を差し入れやすくなる。
【0011】
本発明の請求項
2に係る使い捨て手袋の手袋束は、切り離し部を開口部から所定の寸法隔てて形成したことを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項
2に係る使い捨て手袋の手袋束では、切り離し部を開口部から所定の寸法隔てて形成したことにより、手袋に手を差し入れる際、切り離し部には、固定された掛け吊るし部側に対して手袋全体の差し入れ方向の力が逆方向への力として集中し、切り離し部は切断しやすくなる。
【0013】
本発明の請求項
3に係る使い捨て手袋の手袋束は、掛け吊るし部を延長して構成し、掛け吊るし部に複数の手袋束を接続したことを特徴としている。
【0014】
本発明の請求項
3に係る使い捨て手袋の手袋束では、掛け吊るし部を延長して構成し、掛け吊るし部に複数の手袋束を接続したことにより、一度に両手に手袋を装着することができる。
【0015】
本発明の請求項
4に係る使い捨て手袋の手袋束は、重ねられた手袋には、全体の枚数から順次切り離されて所定の枚数の手袋に達すると、残数または残数の少ないことを知らせる表示部が設けられることを特徴としている。
【0016】
本発明の請求項
4に係る使い捨て手袋の手袋束では、重ねられた手袋には、全体の枚数から順次切り離されて所定の枚数の手袋に達すると、残数または残数の少ないことを知らせる表示部が設けられるようにしたことにより、表示部により残数が表示されるので、交換時期を容易に知ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る使い捨て手袋の手袋束は、合成樹脂製薄材を手の形状に形成した一方の薄片とこの薄片と同一形状で手首側が延長された他方の薄片とを重ねて外周縁を溶着し、一方の薄片の手首側縁部と他方の薄片との間に開口部が形成された使い捨て手袋片を、同じ向きに重ねて延長部の延長端側を接続し、延長部の延長端側には、外部の固定側鉤部に係止される係止部が形成された掛け吊るし部を設け、この掛け吊るし部と開口部との間の延長部には、延長部の接続側と手袋部とを切り離し可能な線状の切り離し部を開口部に沿って形成するとともに、切り離し部の両端のうち少なくともいずれか一方には、予め所定寸法切り込
み、素材の自重により開口部が広がるような切り込み深さを有する切り込み部を形成したので、手袋束の表側から順にワンタッチで簡単に手袋を装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態である使い捨て手袋の手袋束を示す斜視図である。
【
図2】(A)および(B)はそれぞれ、第1実施形態の使い捨て手袋の手袋片を形成する説明図および切り離し部が形成された手袋片を示す平面図である。
【
図3】(A)ないし(C)はそれぞれ、第1実施形態の手袋束を構成する使い捨て手袋を示す平面図、使い捨て手袋を重ねた状態を示す斜視図および掛け吊るし部を重ねた使い捨て手袋の延長部に溶着する状態を示す説明図である。
【
図4】第1実施形態の使い捨て手袋の手袋束を示す一部省略断面図である。
【
図5】第1実施形態の切り離された手袋を示す説明図である。
【
図6】本発明の第2実施形態である使い捨て手袋の手袋束を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
簡素な構成で、使い捨て手袋をワンタッチで簡単に手に装着するという目的を、合成樹脂製薄材を手の形状に形成した一方の薄片とこの薄片と同一形状で手首側が延長された他方の薄片とを重ねて外周縁を溶着し、一方の薄片の手首側縁部と他方の薄片との間に開口部が形成された使い捨て手袋片を、同じ向きに重ねて延長部の延長端側を接続し、延長部の延長端側には、外部の固定側鉤部に係止される係止部が形成された掛け吊るし部を設け、この掛け吊るし部と開口部との間の延長部には、延長部の接続側と手袋部とを切り離し可能な線状の切り離し部を形成し、切り離し部の両端のうち少なくともいずれか一方を予め所定寸法切り離して構成したことにより実現した。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態である使い捨て手袋の手袋束を示す斜視図である。
【0021】
本発明の第1実施形態に係る使い捨て手袋の手袋束2は、複数の手袋片3を重ね、手首側延長部の延長側を溶着して構成される。手袋片3は、
図2の(A)に示すように、ポリエチレン等の合成樹脂製フィルム(合成樹脂製薄材)を手形状にカットした短寸の薄片(一方の薄片)3Aと、この手形状薄片3Aと同じ形状の手形状部Hとこの手形状部Hから連続し手首側が延長された延長部Eとを有する長寸の薄片(他方の薄片)3Bとを重ね合わせて外周縁を溶着して構成される。
【0022】
短寸薄片3Aの手首側縁部3Cと長寸薄片3Bとの間には開口部4が形成される。手袋片3は、
図2の(B)に示すように、開口部4から手首側に所定寸法L1隔てて直線状に切り離し部5が横方向に形成される。切り離し部5は点線状の孔が穿設されて形成される。切り離し部5は手袋片3の縦方向両端側に力が加えられると、切り離されるようになっている。この切り離し部5の両端には、切り込み部6が形成される。切り込み部6は、手袋片3が指側を下に手首側を上にして吊り下げられた際、素材の自重により開口部4が押し広げられて隙間Sができるようになっている。なお、切り込み部6は、開口部4に隙間Sを確保するものであれば、切り離し部5の両端に限らず、どちらか一方に形成してもよい。切り込み部6の切り込み深さ寸法M1は、素材の性質や単位当たり重量に応じて決定される。
【0023】
手袋片3は、
図3の(A)に示す手袋片3を開口部4を表側にして同じ向きに上下に重ねられる。重ねられるn個(nは自然数)の手袋片3のうち、最も下側の手袋片3L(上から第n番目の手袋片(3‐n))から数えて所定の枚数(例えば5枚)上側の手袋片3Xには、残数または残数の少ないことを知らせるシール(表示部)7が延長部Eの切り離し部5より延長端側に貼り付けられるようになっている。例えば、残数が少なくなったことを知らせるには、「残少」という表示、残りの数を知らせるには「残り5枚」「残り○○枚」という表紙、あるいは単に赤色等の警告を示す色彩が施された表示がされるようになっている(
図3の(B)参照)。このため、交換時期を容易に知ることができる
【0024】
こうして積み重ねられた手袋片3は、延長部Eの延長端側に、掛け吊るし部8が設けられる。掛け吊るし部8は、硬質の合成樹脂製薄板材を折曲し、折曲端側の内側両面をそれぞれ、積み重ねられた手袋片3の表側の手袋片3Fの延長部Eと下側の手袋片3Lの延長部Eとに重ね合わせ、重ねられた手袋片3と一体に溶着されるようになっている(
図3の(C)参照)。この掛け吊るし部8の折り曲げ部8Aは手袋片3の延長部Eから外側に突出される。この突出部8Bには、穴(係止部)9が形成され、外部の壁や設置台等の固定側支持材10に設けられた一対の鉤部11に係止されるようになっている。こうして形成された手袋束2は、開口部4を表側に向け固定側支持材10の鉤部11に掛け吊るし部8の穴9を引っ掛けて、指側を下方に手首側を上方に向けて設置されるようになっている。掛け吊るし部8は、穴9を固定側支持材10の鉤部11に引っ掛けて係止するようにしているがこれに限られるものではなく、紐を掛けたり、固定側の突起に係止される切り欠き等を形成してもよく、固定側に係止される構造を有するものであればよい。
【0025】
こうして鉤部11に吊り下げられた手袋束2に対し、表側の手袋片3Fに開口部4から使用者が手を差し入れ、そのまま下方の差し入れ方向に力を加えると、切り離し部5が切断され、手袋部3S(
図5参照)が分離されるので、ワンタッチで手に手袋部3Sを装着することができる。このとき、開口部4には、切り込み部6により隙間Sが形成されているので、手を開口部4に差し入れしやすくなっている。また、切り離し部5は開口部4から所定寸法L1延長端側に隔てられて形成されている。このため、手が下方の差し入れ方向に押し下げられて手袋片3に下方の力が加えられると、切り離し部5全体に均等に下方への力が加えられる。つまり、切り離し部5には、固定された掛け吊るし部8側に対して手袋全体の差し入れ方向の力が逆方向への力として集中するので、切り離し部8は切断しやすくなる。しかも、切り込み部6が形成されているため、切り込み部6側から切り離しを導くように切断が始まるので、切り離し部5はスムーズに切り離されるようになっいている。このように、本実施形態に係る使い捨て手袋の手袋束2は、手袋片3を指で摘むことなく、表側の手袋片3F(3‐1)の開口部に手を差し込むだけで手袋部3Sを手に円滑に装着させることができる。しかも、切り離された手袋部3Sの後には、次の手袋片3F(3‐2)が準備されているので、効率良く装着することができる。
【0026】
次に、第1実施形態に係る使い捨て手袋の手袋束2の作用について説明する。手袋束2を、支持部材10の鉤部11に引っ掛けて吊すと、手袋束2は、指側を下方に手首側を上方に向けて設置される。手袋部3Sを手に装着する際は、手袋束2の表側の手袋片3Fの隙間Sを有する開口部4に手を差し入れ、そのまま差し入れ方向に力を加えると、切り離し部5が切断されるので、ワンタッチで手に手袋部3Sを装着することができる。このように、第1実施形態に係る使い捨て手袋の手袋束2では、手袋を摘み上げたり、指で開口部を押し広げたりすることなく、ワンタッチで手に手袋部3Sを装着することができるので、ユーザがストレスを感じることなく装着することができる。
【0027】
次に、本発明の第2実施形態に係る使い捨て手袋の手袋束22について説明する。本発明の第2実施形態に係る手袋束22は、上記第1実施形態に係る手袋束2が重ねられた手袋片3‐1〜3‐n一山毎に掛け吊るし部8を設けているのに対し、
図6に示すように、掛け吊るし部28を延長して構成し、掛け吊るし部28の延長端側にそれぞれ積み重ねられた手袋片3、3を接続した点が異なる外は、上記第1実施形態に係る使い捨て手袋の手袋束2とほぼ同一の構成を備えている。
【0028】
すなわち、第2実施形態に係る使い捨て手袋の手袋束22では、掛け吊るし部28が、一対の重ねられた手袋片3、3を親指側を向かい合わせにし、両手が同時に差し入れられた際、窮屈にならない程度の間隔を隔てて配置されるようにし、このように配置された一対の手袋片3、3の山に対して両延長部E、Eに溶着される長さ寸法に形成される。掛け吊るし部28には上部に固定側支持材(図示せず)の鉤部31、31に引っ掛けられる穴(係止部)29、29が形成される。本実施形態に係る手袋束22はこのように構成されているので、両手を同時に一対の表側手袋片3F、3Fに差し入れて、これら両手袋部3S、3Sをほぼ同時に切り離し、一度で両手に手袋部3S、3Sを装着することができるようになっている。なお、本実施形態では、掛け吊るし部28に一対の手袋片3、3の山を接続するようにしているが、これに限られるものではなく、2組以上の手袋片3の山を接続し、多人数でも利用できるようにしてもよい。
としている。
【符号の説明】
【0029】
2 手袋束
3 手袋片
3A 一方の薄片
3B 他方の薄片
3C 一方の薄片の手首側縁部
4 開口部
5 切り離し部
8 掛け吊るし部
9 穴(係止部)
11 鉤部(固定側鉤部)
E 延長部